ページトップ
  • 昭和63年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第4 厚生省|
  • 不当事項|
  • 保険給付

健康保険及び船員保険の傷病手当金の支給が適正でなかったもの


(18) 健康保険及び船員保険の傷病手当金の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目 (1) 厚生保険特別会計(健康勘定) (項)保険給付費
(2) 船員保険特別会計 (項)保険給付費
部局等の名称 (1) 宮城県ほか13都府県(35社会保険事務所)
(2) 京都府ほか3県(1保険課及び3社会保険事務所)
支給の相手方 (1) 健康保険 186人
(2) 船員保険 8人
傷病手当金の支給額の合計 (1) 健康保険 68,982,316円
(2) 船員保険 5,323,100円

 健康保険では、上記の186人に傷病手当金68,982,316円を支給しているが、支給に当たって、請求に対する調査確認及び指導が十分でなかったため、36,804,363円が不適正に支給されていた。また、船員保険では、上記の8人に傷病手当金5,323,100円を支給しているが、支給に当たって、請求に対する調査確認及び指導が十分でなかったため、4,137,811円が不適正に支給されていた。これらについては、本院の注意により、すべて返還の処置が執られた。これを都府県ごとに集計して健康保険及び船員保険の別に掲げると別表1 及び別表2 のとおりである。
 これは、健康保険については北海道ほか26都府県の74社会保険事務所において傷病手当金の支給を受けた11,698人について、また、船員保険については北海道ほか13府県の7保険課及び8社会保険事務所において傷病手当金の支給を受けた1,581人について本院が調査した結果である。

(説明)

1 健康保険の傷病手当金について

  健康保険(前掲の「健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもの」の説明参照 )において行う給付のうち、傷病手当金は、被保険者が療養のため労務に服することができなくなった日から起算して4日目から1日につき標準報酬日額(注) の100分の60(被扶養者のいない被保険者が入院した場合は100分の40)に相当する額を1年6箇月を限度として支給することとなっているが、労務に服することができなかった期間について事業主から報酬が支給された者については、その報酬の額が傷病手当金の額以上のときは支給せず、報酬の額が傷病手当金の額より少ないときにはその差額を支給することとなっている。また、その支給事由と同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病に関し障害厚生年金等の年金の支給を受けている間は、当該年金の額を360で除した額が、傷病手当金の額以上のときは支給せず、傷病手当金の額より少ないときはその差額を支給することとなっている。

 傷病手当金の支給に当たっては、都道府県は、被保険者(被保険者資格の喪失の際、現に給付を受け又は給付を受けることができる者を含む。以下この項において同じ。)から労務に服することができなかった期間及びその期間の報酬、障害厚生年金等の額等並びにこれらについての事業主の証明及び医師の意見を記載した傷病手当金請求書の提出を受け、その記載内容を調査確認することとなっている。
 しかして、傷病手当金の支給の適否について検査したところ、前記の27都道府県のうち宮城県ほか13都府県では、被保険者及び事業主が制度を十分に理解していなかったり、誠実でなかったりして、被保険者が障害厚生年金等の年金を受給しているのに受給していないとしていたり、労務に服することができなかった期間について事業主から報酬を受けているのに受けていないとしていたりしていて傷病手当金請求書の記載内容が事実と相違しているものなどがあったにもかかわらず、これに対する調査確認及び指導が十分でないまま支給の決定を行ったため、本院が調査した受給者6,846人分の支給のうち186人分68,982,316円について36,804,363円が不適正に支給されていた。

2 船員保険の傷病手当金について

 船員保険(前掲の「船員保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもの」の説明参照 )において行う給付のうち、傷病手当金は、被保険者又は被保険者であった者(以下「被保険者等」という。)が、被保険者期間中の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病の療養のため職務に服することができなくなった日から、職務上の事由による疾病等の場合には、1日につき標準報酬日額(4箇月を超えた場合はその100分の80)こ相当する額を職務に服することができるようになるまで、職務外の事由による場合には、1日につき標準報酬日額の100分の60(被扶養者のいない受給者が入院した場合は100分の50)に相当する額を3年を限度として支給することとなっている。また、その支給事由と同一の疾病等に関し障害厚生年金等の年金の支給を受けている間は、当該年金の額を360で除した額が、傷病手当金の額以上のときは支給せず、傷病手当金の額より少ないときはその差額を支給することなどとなっている。

 傷病手当金の支給に当たっては、都道府県は、被保険者等から職務に服することができなかった期間及びその期間の障害厚生年金等の額等並びにこれらについての医師の意見等を記載した傷病手当金請求書の提出を受け、その記載内容を調査確認することとなっている。
 しかして、傷病手当金の支給の適否について検査したところ、前記の14道府県のうち京都府ほか3県では、被保険者等が誠実でなかったなどして、障害厚生年金等の年金を受給しているのに受給していないとしていて傷病手当金請求書の記載内容が事実と相違しているものなどがあったにもかかわらず、これに対する調査確認及び指導が十分でないまま支給の決定を行ったため、本院が調査した受給者237人分の支給のうち8人分5,323,100円について4,137,811円が不適正に支給されていた。

(注)  標準報酬日額 標準報酬月額の等級区分により、第1級2,270円から第39級23,670円とされている。

(別表1)   健康保険

都府県名 社会保険事務所 本院が調査した受給者数 不適正受給者数 左の受給者に支給した傷病手当金 左のうち不適正傷病手当金
千円 千円
宮城県 仙台北ほか2社会保険事務所 437 9 4,507 3,369
茨城県 水戸南ほか1社会保険事務所 118 12 2,039 747
栃木県 宇都宮ほか2社会保険事務所 448 9 6,907 3,882
千葉県 千葉ほか1社会保険事務所 220 20 8,759 5,239
東京都 神田ほか1社会保険事務所 318 7 1,085 623
神奈川県 神奈川ほか4社会保険事務所 1,134 25 14,132 7,017
山梨県 甲府ほか1社会保険事務所 471 13 1,687 536
愛知県 名古屋北ほか1社会保険事務所 482 5 3,325 1,966
京都府 上京ほか2社会保険事務所 704 28 8,284 3,233
奈良県 奈良ほか1社会保険事務所 113 10 3,795 2,355
岡山県 岡山東ほか3社会保険事務所 1,302 15 5,428 2,548
高知県 高知東ほか1社会保険事務所 164 5 1,629 1,120
福岡県 西福岡社会保険事務所 72 2 1,219 687
宮崎県 宮崎ほか1社会保険事務所 863 26 6,179 3,477
 計 35箇所 6,846 186 68,982 36,804

(別表2)   船員保険

府県名 課・社会保険事務所 本院が調査した受給者数 不適正受給者数 左の受給者に支給した傷病手当金 左のうち不適正傷病手当金
千円 千円
京都府 上京社会保険事務所 8 2 2,043 1,414
兵庫県 保険課 189 4 1,274 826
島根県 出雲社会保険事務所 1 1 1,050 942
沖縄県 浦添社会保険事務所 39 1 954 954
 計 4箇所 237 8 5,323 4,137