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  • 平成11年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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補助金


(233)街路事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため橋台等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの

会計名及び科目 道路整備特別会計 (項)地方道路整備臨時交付金
部局等の名称 山梨県
補助の根拠 道路整備緊急措置法(昭和33年法律第34号)
補助事業者
(事業主体)
山梨県甲府市
補助事業 都市計画道路愛宕町下条線道路改築
補助事業の概要 橋りょうを架け替えるため、平成9年度から11年度までに、橋台、上部工等を施工するもの
事業費 209,756,400円 (うち国庫補助対象額171,180,350円)
上記に対する国庫補助金交付額 94,149,194円
不当と認める事業費 98,131,000円 (全額国庫補助事業対象額)
不当と認める国庫補助金交付額 53,972,050円

1 補助事業の概要

 この補助事業は、山梨県甲府市が、都市計画道路愛宕町下条線の街路事業の一環として、同市塩部地区の1級河川相川に架かる橋りょうを新橋(橋長21m、幅員22m)に架け替えるため、平成9年度から11年度までに、橋台2基の築造、プレストレストコンクリート桁(以下「PC桁」という。)の製作・架設等を工事費計209,756,400円(うち国庫補助対象額171,180,350円、これに対する国庫補助金94,149,194円)で実施したものである。
 このうち、橋台とPC桁との接点である支承部については、次のとおり設計図面を作成し、これにより施工していた(参考図参照)
(ア) 左岸側を温度変化等によるPC桁の伸縮に追従できる可動支承部、右岸側を橋台とPC桁とを一体化する固定支承部とし、両橋台とPC桁との間に支承板を設置する。
(イ)地震による落橋を防止するなどのため、両岸の橋台にアンカーバー(径42mmの鉄筋)を埋め込み、その上部に、左岸側の可動支承部においては小判形断面(内径100.5mm×46mm)のアンカーキャップを、右岸側の固定支承部においては円形断面(内径52.9mm)のアンカーキャップをそれぞれかぶせたうえ、PC桁とPC桁との間の間詰コンクリート部分に埋め込む(片側29箇所、計58箇所)。

2 検査の結果

 検査したところ、橋台の設計の基礎となっている設計計算書によれば、左岸側の支承部を固定、右岸側の支承部を可動とし、縦壁に配置する主鉄筋については、左岸側には径19mm、右岸側には径16mmの鉄筋を12.5cm間隔で配置することとして橋台の応力計算等を行った結果、主鉄筋に生ずる引張応力度(注) が許容引張応力度(注) を下回っていることなどから安全であるとしていた。
 しかし、設計図面を作成する際、誤ってこれとは逆に左岸側の支承部を可動、右岸側の支承部を固定とし、前記のとおり施工していた。
 このため、誤って固定支承部とした右岸側橋台については、地震時において、橋台に作用する水平力が、設計計算書において可動支承部として計算していた数値より増加することになる。そこで改めて応力計算を行うと、縦壁の主鉄筋に生ずる引張応力度は3,607kgf/cm2 となり、許容引張応力度2,700kgf/cm2 を大幅に上回っていて、応力計算上安全な範囲を超えている。
 このような事態が生じていたのは、同市において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検収が十分でなかったことによると認められる。
 したがって、本件橋りょうは設計が適切でなかったため、右岸側橋台及びこれに架設されたPC桁等(これらの工事費相当額98,131,000円)は所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額53,972,050円が不当と認められる。

引張応力度・許容引張応力度 「引張応力度」とは、材に外から引張力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容引張応力度」という。

(参考図)

(参考図)

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