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  • 平成15年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 第9 農林水産省|
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補助金


(147) 地域用水環境整備事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、洪水吐等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)農林水産本省 (項)農村整備事業費
部局等の名称 九州農政局
補助の根拠 予算補助
補助事業者
(事業主体)
福岡県
補助事業 地域用水環境整備
補助事業の概要 ため池の洪水吐を改修するため、平成13、14両年度に洪水吐本体工、橋りょう工等を施工するもの
事業費 203,164,500円
上記に対する国庫補助金交付額 101,582,250円
不当と認める事業費 47,403,836円
不当と認める国庫補助金交付額 23,701,917円

1 補助事業の概要

 この補助事業は、福岡県が、地域用水環境整備事業の一環として、直方市内ヶ磯地区において、老朽化したため池の洪水吐(注1) を改修するため、平成13、14両年度に洪水吐の築造、洪水吐を横断する橋りょうの架け替え等の工事を工事費203,164,500円(国庫補助金101,582,250円)で実施したものである。
 このうち洪水吐の築造工事は、ため池の既設の洪水吐を取り壊し、新たに鉄筋コンクリート構造の洪水吐(延長106.9m、底幅6.0m〜7.8m、高さ4.5m〜8.4m)を築造するもので、全延長を15のコンクリート打設区間に分割して施工したものである。また、この工事に伴う橋りょうの架け替えは、新設した洪水吐の上流側から2番目と3番目の打設区間(両区間の延長計13.4m。以下「橋りょう設置部」という。)に橋りょう(橋長12.3m、幅4.0m)を建設するもので、洪水吐両側壁の背面に橋台を築造し、これに桁を架設するなどして施工したものである(参考図参照)
 同県では、本件洪水吐の設計については、洪水吐の自重、水圧、洪水吐の側壁に作用する土圧のほか、側壁の背面に作用する荷重(以下「載荷重」という。)としては、側壁の背面上に人が立ち入ることがあるため群集荷重(3kN/m )を考慮して応力計算を行っていた。そして、橋りょう設置部については、底版厚を80cm、側壁厚を25cmから105.2cmとし、底版下面及び側壁外側に配置する主鉄筋は、径29mmと径32mmの鉄筋をそれぞれ20cm間隔で配置することとすれば応力計算上安全であるとし、これにより施工していた。

2 検査の結果

 検査したところ、洪水吐のうち橋りょう設置部の設計が次のとおり適切でなかった。
 すなわち、橋りょう設置部については、洪水吐両側壁の背面側60cmと近接した位置に橋台を築造し、橋台の背面に盛土をした上で桁を架設していることから、洪水吐の載荷重としてはこれらの橋りょう、盛土等の荷重を考慮しなければならないのに、これらを考慮していなかった。
 そこで、載荷重として橋りょう、盛土等の荷重を考慮するなどして改めて応力計算を行うと次のような結果となり、洪水吐の橋りょう設置部は常時(注2) において応力計算上安全な範囲を超えている。
(ア)底版のコンクリートに生じる曲げ圧縮応力度(注3) は最大で11.9N/mm 、底版下面の主鉄筋に生じる引張応力度(注4) は最大で251.2N/mm となり、コンクリートの許容曲げ圧縮応力度(注3) 8N/mm 、鉄筋の許容引張応力度(注4) 157N/mm をそれぞれ大幅に上回っている。
(イ)側壁外側の主鉄筋に生じる引張応力度は最大で177.2N/mm 、せん断応力度(注5) は最大で0.46N/mm となり、鉄筋の許容引張応力度157N/mm 、許容せん断応力度(注5) 0.42N/mm をそれぞれ上回っている。
 このような事態が生じていたのは、同県において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことによると認められる。
 したがって、本件洪水吐の橋りょう設置部は設計が適切でなかったため、洪水吐(延長13.4m)、洪水吐を横断して建設された橋りょう等(これらの工事費相当額47,403,836円)は、所要の安全度が確保されていない状態となっており、これに係る国庫補助金相当額23,701,917円が不当と認められる。

(注1) 洪水吐 ため池の越流水を安全に放流するための水路
(注2) 常時 地震時などに対応する表現で、土圧など常に作用している荷重及び輪荷重など作用頻度が比較的高い荷重を考慮する場合をいう。
(注3) 曲げ圧縮応力度・許容曲げ圧縮応力度 「曲げ圧縮応力度」とは、材の外から曲げようとする力がかかったとき、そのために材の内部に生じる力のうち圧縮側に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容曲げ圧縮応力度」という。
(注4) 引張応力度・許容引張応力度 「引張応力度」とは、材に外から引張力がかかったとき、そのために材の内部に生じる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容引張応力度」という。
(注5) せん断応力度・許容せん断応力度 「せん断応力度」とは、外力が材に作用し、これを切断しようとする力がかかったとき、そのために材の内部に生じる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容せん断応力度」という。

(参考図)

(参考図)

補助金の図1

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