ページトップ
  • 平成15年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 国土交通省|
  • 不当事項|
  • 補助金(164)−(177)

補助金


(174)土地区画整理事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、ボックスカルバートの所要の安全度が確保されていない状態になっているもの

会計名及び科目 道路整備特別会計 (項)地方道路整備臨時交付金
部局等の名称 福岡県
補助の根拠 道路整備緊急措置法(昭和33年法律第34号)
補助事業者 福岡県北九州市
間接補助事業者
(事業主体)
北九州市上葛原第二土地区画整理組合
補助事業 北九州都市計画事業上葛原第二土地区画整理
補助事業の概要 河川を付け替えるため、平成14年度にボックスカルバートの築造等を行うもの
事業費 410,775,750円 (うち国庫補助対象額408,057,700円)
上記に対する国庫補助金交付額 224,431,735円  
不当と認める事業費 48,565,000円 (うち国庫補助対象額48,243,000円)
不当と認める国庫補助金交付額 26,533,650円  

1 補助事業の概要

 この補助事業は、北九州市上葛原第二土地区画整理組合(以下「組合」という。)が、土地区画整理事業の一環として、同市小倉南区上葛原地区において、区画整理地区内を流れる葛原川を付け替えるなどのため、平成14年度に、ボックスカルバート(延長計610.1m。以下「カルバート」という。)の築造等を工事費410,775,750円(国庫補助対象額408,057,700円、これに対する国庫補助金224,431,735円)で実施したものである。
 上記カルバートは、鉄筋コンクリート構造で工場製作した上、葛原川の機能を維持するための水路として築造するもので、このうち、内空断面の幅2.0m(高さ2.5m、延長112.7m、土被り厚0.40m〜0.54m)及び幅2.5m(高さ2.0m、延長87.1m、土被り厚0.22m〜1.15m)のカルバートは、道路下にその道路に沿って施工されている。
 そして、幅2.0m及び幅2.5mのカルバートについては、次のように設計し、これにより施工していた。
(1)カルバート上面には、自動車による活荷重(注1) が、カルバートの横方向と縦方向にそれぞれ次のように作用することとして、カルバートの設計計算を行っていた。
(ア)横方向については、カルバートに載荷される自動車は1台で、その片側車輪がカルバート中央に位置する場合が応力計算上最も不利な条件であるとし、この場合、左右両輪の間隔(1.75m)がカルバート中央から側壁の中心までの距離(幅2.5mのカルバートの場合1.35m)より広いことから、もう一方の車輪はカルバートの外側に位置することになるため、自動車0.5台分を基に計算した活荷重がカルバートに作用するとしていた(参考図1参照)
(イ)縦方向については、活荷重が分布する幅をカルバート上の土被り厚にかかわりなく一律1mとしていた(参考図1参照)
(2)カルバートの配筋図によると、底版等に配置する主鉄筋のうち、幅2.0m及び幅2.5mのカルバートの底版上面側については、カルバートの長さ1.5m当たり、次のとおり配置することとしていた。
(ア)幅2.0mのカルバートには、径13mmの鉄筋を12本配置する。
(イ)幅2.5mのカルバートには、径16mmの鉄筋を12本配置する。

2 検査の結果

 検査したところ、カルバートの設計が次のとおり適切でなかった。
(1)カルバートが道路に沿って施工される場合の活荷重の計算については、「共同溝設計指針」(社団法人日本道路協会編)を用いることとされており、これによると、カルバート上面には、活荷重が次のように作用することとなる。
(ア)横方向には、自動車1台分を基に計算した活荷重が自動車の幅2.75mに均等に分布し、カルバートにはその分布した活荷重のうちカルバートの幅分だけ作用するとされている(参考図2参照) 。このため、幅2.0mのカルバートには自動車0.8台分(計算上、活荷重が作用する幅である側壁の中心間隔2.22mを2.75mで除した割合分)を基に計算した活荷重が、また、幅2.5mのカルバートには自動車0.98台分(同様に活荷重が作用する幅2.7mを2.75mで除した割合分)を基に計算した活荷重がそれぞれ作用する。
(イ)縦方向には、活荷重が路面から下方に45度の角度で広がり、土被り厚に応じた幅に分布するため、カルバートに作用する活荷重の大きさは、その分布幅に応じて変化することとなる(参考図2参照) 。したがって、土被り厚が小さい場合は、分布幅が小さいので単位面積当たりの活荷重は大きくなるが、土被り厚が大きい場合は分布幅が大きいので単位面積当たりの活荷重は小さくなる。
 しかし、本件カルバートの設計において、活荷重を算定する際、横方向については、前記のとおり算定の基となる自動車の台数を0.8台分又は0.98台分とすべきところ0.5台分としたため、自動車の台数が過小となっていた。
 また、縦方向については、上記のとおり下方に45度の角度で広がる活荷重の分布幅は土被り厚の大小により大きくなったり小さくなったりすることから、前記のとおり土被り厚にかかわらず一律とした分布幅は、土被り厚が大きい場合には、前記指針に基づいて計算した分布幅よりも小さく見込んだことになり、単位面積当たりの活荷重を過大に、また、土被り厚が小さい場合には、分布幅を大きく見込んだことになり、単位面積当たりの活荷重を過小に計算していたこととなる。
 これらの結果、本件カルバートのうち土被り厚が小さい区間では、カルバートに作用する活荷重が過小に計算されていた。
(2)本件カルバートの設計の基礎となっている設計計算書によれば、底版等に配置する主鉄筋のうち、幅2.0m及び幅2.5mのカルバートの底版上面側については、カルバートの長さ1.5m当たり、次のとおりに主鉄筋を配置すれば、主鉄筋に生ずる引張応力度(注2) (常時(注3) )が鉄筋の許容引張応力度(注2) (常時)を下回ることなどから、応力計算上安全であるとしていた。
(ア)幅2.0mのカルバートには、径13mm及び16mmの鉄筋をそれぞれ6本ずつ計12本配置する。
(イ)幅2.5mのカルバートには、径16mm及び19mmの鉄筋をそれぞれ6本ずつ計12本配置する。
 しかし、配筋図を作成する際、誤って前記1(2)の(ア)及び(イ)のとおりに配置することとしていた。
 そこで、本件カルバートについて、改めて応力計算を行うと、底版上面側の主鉄筋に生ずる引張応力度(常時)が、幅2.0mのカルバートの全延長112.7mでは、最大で243.8N/mm となり、幅2.5mのカルバート延長87.1mのうち土被り厚が0.62m以下となっている延長32.5mでは、最大で347.7N/mm となって、いずれも許容引張応力度(常時)180.0N/mm を大幅に上回るなどしていて、応力計算上安全な範囲を超えている。
 このような事態が生じていたのは、組合において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことによると認められる。
 したがって、本件カルバートは、設計が適切でなかったため、幅2.0mのカルバートの全延長112.7m及び幅2.5mのカルバートのうち延長32.5m(これらの工事費相当額48,565,000円、うち国庫補助対象額48,243,000円)は、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額26,533,650円が不当と認められる。

(注1) 活荷重 自動車等が構造物上を移動する際に作用する荷重
(注2) 引張応力度・許容引張応力度 「引張応力度」とは、材に外から引張力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容引張応力度」という。
(注3) 常時 地震時などに対応する表現で、土圧など常に作用している荷重及び輪荷重など作用頻度が比較的高い荷重を考慮する場合をいう。

(参考図1)

(参考図1)

(参考図2)

(参考図2)

補助金 | 平成15年度決算検査報告 | 1

補助金 | 平成15年度決算検査報告 | 2

補助金 | 平成15年度決算検査報告 | 3

補助金 | 平成15年度決算検査報告 | 4

補助金 | 平成15年度決算検査報告 | 5

補助金 | 平成15年度決算検査報告 | 6

補助金 | 平成15年度決算検査報告 | 7

補助金 | 平成15年度決算検査報告 | 8

補助金 | 平成15年度決算検査報告 | 9

補助金 | 平成15年度決算検査報告 | 10

補助金 | 平成15年度決算検査報告 | 11

補助金 | 平成15年度決算検査報告 | 12

補助金 | 平成15年度決算検査報告 | 13

補助金 | 平成15年度決算検査報告 | 14

補助金 | 平成15年度決算検査報告 | 15