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  • 平成4年度|
  • 第1章 検査結果の概要|
  • 第2節 検査結果の大要|
  • 第1 事項等別の検査結果

事項等別の検査結果


(2) 特定検査対象に関する検査状況の概要

(ア) 政府開発援助について

 我が国は、開発途上国の健全な経済発展を実現することを目的として、その自助努力を支援するため、政府開発援助を実施している。その額は無償資金協力や直接借款などいずれも毎年度多額に上っている。この政府開発援助について、本院は、外務省等の援助実施機関に対して検査を行うとともに、平成5年中に、5箇国の72事業について現地調査を実施した。これらの援助に対する検査は、相手国に対して本院の検査権限が及ばないことや事業現場が海外にあることなどの制約の下で実施したものであるが、現地調査を行った事業の大部分については、おおむね順調に推移していると認められた。しかし、援助の対象となった施設が機能を発揮していなかったり、関連する他の援助事業が大幅に遅延していたりなどしていて、援助の効果が十分発現していない事態が見受けられることから、今後も相手国の自助努力を絶えず促すとともに、相手国が実施する事業に対する支援のための措置をより一層充実させることが重要である。

(イ) 湾岸平和基金に対する拠出金について

 我が国は、平成2年のイラクのクウェイト侵攻に関し、国際連合安全保障理事会の決議を基礎に問題の解決が図られるべきであるとの立場から、湾岸の平和と安定の回復に向けて活動している各国を支援するため、湾岸アラブ諸国協力理事会との交換公文に基づき、2、3両年度に、同理事会の湾岸平和基金に対して資金を拠出した。そして、本院は、昨年までに、我が国からの基金に対する拠出金の支出については、すべて予算、法令等に従い適正に行われたことを確認した。一方、基金を運用する運営委員会における拠出金の使用については、本院の検査権限は同委員会に及ばないので、基金のすべての支払完了後に同委員会から我が国に提出される基金の財務に関する報告書の作成・提出をまって、外務省から同報告書の提示を求めるなどして調査することとした。そして、今回、5年8月に上記の報告書が作成・提出されたので、外務省が別途同委員会から随時受領していた基金の支払に関する資料と併せ提示を受けるとともに、外務省の説明を聴取するなどして調査を行った。このように調査した限りにおいては、同報告書に記載されている使途及び金額で、上記の資料等による基金の支払と相違しているものはなく、交換公文の規定に違背するものは見受けられなかった。

(ウ) 中央省庁発注の印刷物の調達について

 厚生省社会保険庁発注の支払通知書等貼付用シールを含む国の印刷物調達が適正に行われているかという観点から、印刷物に係る契約事務量が比較的多いと認められる6省庁について、その予定価格の積算の妥当性を重点とし、併せて契約事務の執行状況についても横断的に検査を行った。
 検査したところ、一部の契約については、契約締結後の履行状況を十分調査、把握していないなどのため、割高になっている事態が見受けられたが、これらのほとんどは軽微な事態であった。
 しかし、社会保険庁のシールの調達契約に関しては、原反製造会社から提出された著しく高額な用紙の価格に基づいて契約が行われていたり、業者の受注能力や履行の実態などを把握できないでいたりなどしていた。本件調達契約については、これに係る訴訟との関連で、本院の検査業務は現時点では完結していない。なお、郵政省の調達契約の一部に見受けられた印刷加工費等の積算が適切でない事態については、「第2章 個別の検査結果」に掲記した。
 以上のように、契約事務の適切な執行の確保を図る上で必ずしも十分でない事態が見受けられたので、印刷物の調達を引き続き実施する各省庁においては、それぞれの発注状況等の実態を速やかに調査、点検した上で、今後の契約事務の改善について検討を行う要があると認められる。