会計名及び科目 | 空港整備特別会計(項)北海道空港整備事業費 |
部局等の名称 | 運輸省航空局 |
補助の根拠 | 空港整備法(昭和31年法律第80号) |
事業主体 | 北海道旭川市 |
補助事業 | 旭川空港整備 |
補助事業の概要 | 滑走路を新設するため、平成4年度に、既設の排水路の付け替えとしてボックスカルバートを施工するもの |
事業費 | 67,774,000円 |
上記に対する国庫補助金交付額 | 45,182,666円 |
不当と認める事業費 | 49,363,000円 |
不当と認める国庫補助金交付額 | 32,908,666円 |
1 補助事業の概要
この補助事業は、北海道旭川市が、旭川空港整備事業の一環として、同市西神楽地区及び上川郡東神楽町千代ヶ岡地区に新滑走路を建設するため、平成4年度に、既設の排水路の付け替えとして、場周道路(注1)
の下を横断し、着陸帯(注2)
にかかるボックスカルバート(以下「カルバート」という。)4基の築造を工事費67,774,000円(国庫補助金45,182,666円)で実施したものである。
上記のカルバート4基は、いずれも長さ15m、内空断面の幅、高さとも4.5mの鉄筋コンクリート構造とし、頂版(厚さ70cm)の下面側及び底版(厚さ80cm)の上面側に配置する主鉄筋については径16mmの鉄筋を、側壁(厚さ70cm)の外面側に配置する主鉄筋については径19mmの鉄筋を、それぞれ25cm間隔に配置する設計とし、これにより施工していた(参考図参照)
。
そして、設計計算書によれば、カルバートには活荷重(注3)
として自動車荷重が作用することとし、上記のとおり設計すれば、主鉄筋に生ずる引張応力度(注4)
(常時)(注5)
は、いずれも鉄筋の許容引張応力度(注4)
(常時)を下回っていることから、応力計算上安全であるとしていた。
2 検査の結果
(1) 検査したところ、本件カルバートの設計が次のとおり適切でなかった。
(ア) 着陸帯の下にかかるカルバート1基については、運輸省航空局制定の「空港土木施設設計基準」等(以下「基準」という。)によると、活荷重としては航空機荷重を用いて設計することとなっているのに、これを考慮していなかった。
(イ) 場周道路の下にかかるカルバート2基については、本件空港に大型消防車が導入されることが明らかであったことから、基準に従って、活荷重としては大型消防車の荷重を用いて設計すべきであったのに、これを考慮していなかった。
(2) このため、上記により適正な活荷重を用いて、改めて応力計算を行うと次のとおりとなる。
(ア) 着陸帯の下にかかる1基の主鉄筋に生ずる引張応力度(短期)(注6) は、頂版の下面側では6,859kg/cm2 、底版の上面側では8,090kg/cm2 、側壁の外面側では3,634kg/cm2 となり、いずれも鉄筋の許容引張応力度(短期)2,970kg/cm2 を大幅に上回っていて、応力計算上安全な範囲を超えている。
(イ) 場周道路の下にかかる2基の主鉄筋に生ずる引張応力度(常時)は、頂版の下面側では2,195kg/cm2 、底版の上面側では2,871kg/cm2 、側壁の外面側では1,808kg/cm2 となり、鉄筋の許容引張応力度(常時)1,600kg/cm2 を大幅に上回っていて、応力計算上安全な範囲を超えている。
(3)したがって、本件カルバート3基(工事費相当額49,363,000円)は、設計が適切でなかったため不安定な状態になっており、これに係る国庫補助金相当額32,908,666円が不当と認められる。
(注1) 場周道路 空港用地の周囲に管理、保安のために配置されている道路
(注2) 着陸帯 離着陸時に航空機が滑走路を逸脱した場合などにその安全を確保するために設置されるもので、滑走路の両側に一定の幅と長さを有する長方形の区域
(注3) 活荷重 航空機、自動車等が構造物上を移動する際に作用する荷重
(注4) 引張応力度・許容引張応力度 「引張応力度」とは、材に外から引張力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容引張応力度」という。
(注5) 常時 地震時などに対応する表現で、土圧など常に作用している荷重及び活荷重など作用頻度が比較的高い荷重を考慮する場合をいう。
(注6) 短期 航空機が滑走路から逸脱したときの一時的な荷重を考慮する場合をいう。
(参考図)