1 本院が要求した改善の処置
労働者災害補償保険の診療費(以下「労災診療費」という。)の算定については、各都道府県等によって区々とならないように労働省労働基準局長が「労災診療費算定基準について」(昭和51年基発第72号。以下「算定基準」という。)を定めている。この算定基準によれば、労災診療費は健康保険法に基づく診療報酬点数表の点数に12円(公立病院等については11円50銭)を乗ずるなどして算定することとしている。
しかし、労災診療費の算定について調査したところ、18労働基準局において、算定基準と異なる割高な料金(以下「地域特掲料金」という。)を地元医師会等と協定を結ぶなどして設定し労災診療費を算定しており、算定基準の制定の経緯及び趣旨からみて適切でないと認められた。
このような事態が生じているのは、労働省において、各労働基準局における労災診療費の算定の実態把握が十分でなく、指導、監督が適切に行われていなかったこと、各労働基準局において、算定基準制定の趣旨に対する認識が十分でなく、地域特掲料金を解消する方策が適切に執られていなかったことなどによると認められた。
地域特掲料金の解消を図るために、速やかに、各労働基準局における労災診療費の算定の実態を調査し、各労働基準局に対し具体的な方策を指示するなどするよう、労働大臣に対し平成2年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
2 当局の処置状況
労働省では、本院指摘の趣旨に沿い、通達を発して地域特掲料金の早期解消等を指示するとともに、前記18労働基準局のほかに同省の実態調査で地域特掲料金を設定していることが判明した6労働基準局を合わせた24労働基準局に対し、労働基準局ごとに地域特掲料金の解消を図るために必要な具体的方策を指示するなどした。その結果、6年10月までに20労働基準局において解消され、さらに7年10月までに1労働基準局において解消された。
しかし、残りの3労働基準局については、複数項目設定されている地域特掲料金の一部が6年10月までに解消されたものの、残りの項目については、現在関係団体等と協議中である。