ページトップ
  • 平成6年度|
  • 第3章 特定検査対象に関する検査状況

中央省庁発注の印刷物の調達について


第6 中央省庁発注の印刷物の調達について

 本院では、厚生省社会保険庁発注の支払通知書等貼付用シールの入札に関し、指名業者が競売入札妨害罪で起訴されたことを踏まえ、平成5年に国の印刷物について横断的に検査を実施したところ、社会保険庁発注の支払通知書等貼付用シールの調達契約等については、割高な積算額に基づいて契約が締結されているなどの事態が見受けられた。
 一方、支払通知書等貼付用シールの調達契約については、落札業者に対し不当利得の返還を求める民事訴訟が係争中であるため、社会保険庁に係る検査業務は、平成5年度決算検査報告の作成時点でも完結できなかった。
 社会保険庁では、6年度までに印刷物の積算基準を整備するなどの改善の処置を講じている。

1 昨年までの検査状況

 平成4年11月、東京地方検察庁は、厚生省社会保険庁発注の支払通知書等貼付用シールの入札に関し、指名業者である大日本印刷株式会社ほか3社の関係者を競売入札妨害罪で東京地方裁判所に起訴した。
 本院では、このような事態を踏まえ、上記のシールを含む国の印刷物調達の適正を図るという観点から、定型的で大量かつ継続的に調達される印刷物について横断的に検査を実施した。検査したところ、上記の検査の契機となった社会保険庁発注の支払通知書等貼付用シールの調達契約等については、割高な積算額に基づいて調達契約が締結されていたり、業者の受注能力等について十分な調査が行われていなかったりしているなどの事態が見受けられた。
 一方、社会保険庁では法務省に依頼して、国が原告となり大日本印刷株式会社、小林記録紙株式会社及びトッパン・ムーア株式会社を被告として、支払通知書等貼付用シールの調達契約について不当利得の返還を求める民事訴訟を5年12月17日に東京地方裁判所に提起した。そして、本件訴訟に係る口頭弁諭が6年11月までに4回行われているものの結審に至っておらず係争中であった。このため、上記の事態に係る不適切な契約金額、原因等がこの民事訴訟において争われることとの関連で、本件調達契約等に係る社会保険庁に対する検査業務は、平成5年度決算検査報告の作成時点で完結できなかった。

2 検査の状況

 社会保険庁では、支払通知書等貼付用シールの調達契約等に関し、6年度までに、従来指名競争により行っていた入札を一般競争により行うことにしたり、適切な積算額になるよう印刷物の積算基準を整備したり、業者から製造実績等の証明書を提出させることにしたりなどして、改善の処置を講じている。
 なお、不当利得の返還を求める民事訴訟は、その後、口頭弁論が4回行われたものの現時点においても係争中である。