1 本院が要求した是正改善の処置
厚生省では、健康保険法(大正11年法律第70号)等の医療保険各法及び老人保健法(昭和57年法律第80号)に基づき、国、市町村等が行う医療給付に要する費用の一部を負担している。この医療給付には、医療機関における療養の給付に代えて支給される療養費の一つとして柔道整復師に係る施術料がある。
柔道整復師に係る施術料は、医療機関の治療を受けている負傷部位については支給対象とならず、また、神経痛等の内因性疾患については施術対象とはならないとされている。そして、施術は療養上必要な範囲及び限度で行うものとし、長期又は濃厚な施術とならないよう努めなければならないとされている。また、施術に係る療養費については、患者からの受領委任を受けた柔道整復師に支給することが認められている。
しかし、柔道整復師の施術料について調査したところ、療養費が、柔道整復師の施術の対象とならない傷病について請求されていたり、患者の療養上必要な範囲及び限度を超えて行われた施術について請求されていたりなどしている事態が多数見受けられた。
このような事態が生じているのは、柔道整復師、保険者等が療養費制度及び受領委任制度の趣旨を十分認識していなかったこと、柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準等が不備であること、保険者等による審査が十分行われていないことなどによると認められた。
柔道整復師の施術に係る療養費について、その適正な支給を期するため、次のとおり、厚生大臣に対し平成5年12月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を要求した。
(ア) 柔道整復師、保険者等に対し、療養費制度及び受領委任制度の趣旨を周知徹底させること
(イ) 不適正な請求を防止するために算定基準等について所要の改正を行うこと
(ウ) 審査委員会を設置し、審査基準を明確にするなど審査体制の整備を図ること
(エ) 施術所に対する指導、監査の体制の整備を図ること
2 当局が講じた是正改善の処置
厚生省では、本院指摘の趣旨に沿い、上記の(ア)、(イ)、(ウ)については、10年7月までに、算定基準等を改正するなどしてそれぞれ所要の処置を講じてきた。そして、上記の(エ)については、11年10月に、指導及び監査の実施方法、実施後の措置等に関する基準を定めるなど指導、監査の体制の整備を図り、柔道整復師の施術に係る療養費の適正な支給を期するための処置を講じた。