国の財政活動は、国会の議決を受けた予算に従って、各府省等が国の各般の需要を満たすための様々な支出等によって行われている。そして、その執行実績として決算が作成され、本院の検査を経て国会に提出され、その審議を受けることとされている。
歳出予算の執行は、支出の原因となる契約その他の行為を行う支出負担行為担当官と契約の相手方等に支出を行う支出官により行われる。そして、予算執行を統制する観点から、支出負担行為担当官については、各省各庁の長(衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官、会計検査院長並びに内閣総理大臣及び各省大臣をいう。以下同じ。)から示達された各科目ごとの金額の限度内で支出負担行為を行うこととされており、また、支出官については、各省各庁の長から示達された支払計画に定める部局等及び「項」の金額を超えて支出してはならないなどとされている。
これまでの一般会計歳出予算の執行状況について、元年度から14年度までの決算資料を基に、その概況をみると、次のとおりである。
元年度から14年度までの一般会計歳出予算及びその執行状況の推移は、表1及び図1のとおりである。
表1 一般会計歳出予算の執行状況の推移(元年度〜14年度)
(単位:億円)
区分
\ 年度
|
歳出予算現額 (A)
|
左のうち補正予算額 | 支出済歳出額 (B)
(B)/(A)
|
(B)の対前年度の増△減率 | 翌年度繰越額 (C)
(C)/(A)
|
不用額 (D)
(D)/(A)
|
元 | 669,772 | 58,976 | 658,589 98.3% |
7.1% | 7,38 1.1% |
3,793 0.6% |
2 | 703,901 | 34,143 | 692,686 98.4% |
5.2% | 8,466 1.2% |
2,747 0.4% |
3 | 714,601 | 2,660 | 705,471 98.7% |
1.8% | 7,691 1.1% |
1,437 0.2% |
4 | 722,588 | △7,283 | 704,974 97.6% |
△0.1% | 9,607 1.3% |
8,006 1.1% |
5 | 783,982 | 50,826 | 751,024 95.8% |
6.5% | 26,230 3.3% |
6,727 0.9% |
6 | 760,535 | 3,488 | 736,136 96.8% |
△2.0% | 20,965 2.8% |
3,433 0.5% |
7 | 801,305 | 70,468 | 759,385 94.8% |
3.2% | 36,773 4.6% |
5,147 0.6% |
8 | 814,485 | 26,663 | 788,478 96.8% |
3.8% | 23,495 2.9% |
2,511 0.3% |
9 | 808,826 | 11,431 | 784,703 97.0% |
△0.5% | 16,993 2.1% |
7,130 0.9% |
10 | 896,908 | 103,223 | 843,917 94.1% |
7.5% | 44,305 4.9% |
8,684 1.0% |
11 | 934,494 | 71,587 | 890,374 95.3% |
5.5% | 38,019 4.1% |
6,101 0.7% |
12 | 935,721 | 47,831 | 893,210 95.5% |
0.3% | 35,550 3.8% |
6,960 0.7% |
13 | 899,075 | 37,001 | 848,111 94.3% |
△5.0% | 41,551 4.6% |
9,412 1.0% |
14 | 878,441 | 24,589 | 836,742 95.3% |
△1.3% | 32,273 3.7% |
9,425 1.1% |
図1 一般会計歳出予算の執行状況の推移(元年度〜14年度)
〔1〕 歳出予算現額
歳出予算現額は、歳出予算額(当初予算額、補正予算額及び予算移替額(注2) の合計)に、前年度繰越額(注3) 、予備費使用額(注4) 及び流用等増減額(注5) を加えたものである。
(注2) | 予算移替額 予算成立後において予算の所管又は組織を移動させた金額 |
(注3) | 前年度繰越額 前年度の歳出予算のうち、その年度内に支出が終わらず、繰越しを行った金額 |
(注4) | 予備費使用額 予備費として予算に計上した金額のうち、閣議で又は財務大臣が決定して、新しい項に計上し又は既定の項に追加して計上した金額 |
(注5) | 流用等増減額 歳出予算の移用及び流用を行った金額 |
5年度まで伸び続けていた歳出予算現額は、6年度において減少し、その後は、9年度を除き増加を続けたが、12年度の93.5兆円をピークに、財政構造改革を一層推進するとの基本的考え方の下、13、14両年度は減少し、14年度は87.8兆円となっている。
このうち、補正予算額については、年度によって大きな違いがあるが、最大の額となったのは10年度の10.3兆円である。
〔2〕 支出済歳出額
支出済歳出額は、歳出予算現額のうち、年度内(出納整理期間(注6) を含む。以下同じ。)に支出済みとなった歳出額、すなわち、支出官において実際に支出を行った金額である。
支出済歳出額の推移についてみても、ピークは12年度であり、14年度は83.6兆円となっている。そして、支出済歳出額の歳出予算現額に対する割合をみると、3年度が98.7%と最も高く、一方、補正予算額が最大となった10年度が94.1%と最も低くなっており、11年度以降は95%前後で推移している。
〔3〕 翌年度繰越額
翌年度繰越額は、1会計年度内に使用されなかった歳出予算を不用額とせずに、繰越手続を執った上、その歳出額を翌会計年度に移動して使用する金額である。
翌年度繰越額の歳出予算現額に対する割合(以下「繰越率」という。)の推移をみると、4年度までは1%台であったのに比べて5年度以降は割合が高くなり、補正予算が最大であった10年度は4.9%(翌年度繰越額4.4兆円)と最も高くなっている。
〔4〕 不用額
不用額は、歳出予算現額のうち、支出されなかった金額であり、歳出予算現額から支出済歳出額及び翌年度繰越額を控除した額である。
不用額の推移をみると、最も多くなっているのは14年度の0.9兆円、最も少なくなっているのは3年度の0.1兆円であり、不用額の歳出予算現額に対する割合(以下「不用率」という。)はそれぞれ1.1%、0.2%となっている。
歳出予算の各「目」には、予算の内容について多角的な分析を行うため、主要経費別、使途別等の経費の性質等を明らかにするコード番号が付されている。
以下、このコード番号に従い、各「目」を、〔1〕 主要経費別(主としてその時の重点施策に対する予算内容を示すもの)、〔2〕 使途別(財政支出の経済的性質を示すもの)及び〔3〕 科目種類別(経費の最終支出対象を示すものとして同種の「目」をまとめたもの)に分類し、これらの分類と所管別区分によって支出済歳出額の内訳及びその推移をみることとする。
(ア)主要経費別にみた支出済歳出額
主要経費について元年度から14年度までの支出済歳出額の推移をみると、図2のとおりである。また、14年度における主要経費別の構成比は図3のとおりであり、社会保障関係費、地方財政関係費(注7) 、国債費、公共事業関係費等の割合が高くなっている。
図2 主要経費別支出済歳出額の推移(元年度〜14年度)
図3 支出済歳出額の主要経費別構成比(14年度)
(イ)所管別にみた支出済歳出額
中央省庁再編以後の12年度から14年度までの支出済歳出額を所管別にみると、表2のとおりである。
表2 所管別支出済歳出額(12年度〜14年度)
(単位:億円)
所管 | 12年度 | 13年度 | 14年度 | ||
金額 | 金額 | 対前年度 増△減率 |
金額 | 対前年度 増△減率 |
|
皇室費 | 93 | 74 | △20.9% | 70 | △4.3% |
国会 | 1,469 | 1,546 | 5.2% | 1,343 | △13.2% |
裁判所 | 3,273 | 3,225 | △1.4% | 3,138 | △2.7% |
会計検査院 | 161 | 182 | 13.0% | 165 | △9.3% |
内閣 | 965 | 1,163 | 20.5% | 922 | △20.7% |
内閣府 | 55,192 | 56,000 | 1.5% | 54,672 | △2.4% |
(うち警察庁) | 2,952 | 2,745 | △7.0% | 2,533 | △7.7% |
(うち防衛庁) | 49,148 | 49,787 | 1.3% | 49,315 | △0.9% |
総務省 | 177,462 | 183,980 | 3.7% | 180,161 | △2.1% |
法務省 | 6,258 | 6,144 | △1.8% | 6,188 | 0.7% |
外務省 | 8,129 | 8,137 | 0.1% | 7,691 | △5.5% |
財務省 | 236,072 | 180,771 | △23.4% | 193,342 | 7.0% |
文部科学省 | 68,551 | 65,847 | △3.9% | 65,856 | 0.0% |
厚生労働省 | 181,909 | 198,885 | 9.3% | 200,557 | 0.8% |
農林水産省 | 37,809 | 35,417 | △6.3% | 31,732 | △10.4% |
経済産業省 | 11,241 | 10,810 | △3.8% | 9,923 | △8.2% |
国土交通省 | 100,930 | 91,777 | △9.1% | 78,251 | △14.7% |
環境省 | 3,689 | 4,143 | 12.3% | 2,722 | △34.3% |
計 | 893,210 | 848,111 | △5.0% | 836,742 | △1.3% |
各年度とも、社会保障関係費の執行の中心となっている厚生労働省、国債費を執行している財務省、地方財政関係費を執行している総務省、公共事業関係費の執行の中心となっている国土交通省において、支出済歳出額が大きい状況となっており、14年度ではこの4省分で全体の8割近くを占めている。
(ウ)使途別及び科目種類別にみた支出済歳出額
歳出予算の各「目」の使途別分類及び科目種類別分類の関係は、表3のとおりである。
使途別分類 | 科目種類別分類 |
人件費 | 議員歳費の類、職員基本給の類、職員諸手当の類、超過勤務手当の類、雑手当の類 |
旅費 | 旅費の類 |
物件費 | 庁費の類、原材料費の類、立法事務費の類 |
施設費 | 施設費の類、その他 |
補助費・委託費 | 委託費の類、補助金の類、その他 |
他会計へ繰入 | 他会計への繰入の類、その他 |
その他 | 雑給与の類、報償費の類、交際費の類、賠償償還及び払戻金の類、保証金の類、補償金の類、年金・恩給・保険金の類、貸付金の類、出資金の類、供託金利子の類、その他 |
注(1) | この表は、決算書に記載されているコード番号により分類したものである。 |
注(2) | 科目種類別分類の「その他」は主に公共事業関係費であり、使途別分類の「施設費」、「補助費・委託費」、「他会計へ繰入」等に分かれている。 |
注(3) | 13年度においては、上記の科目種類のほか、「物件費」に分類される「渡切費の類」がある。 |
13、14両年度の支出済歳出額を使途別及び科目種類別にみると、表4及び表5のとおりである。
表4 使途別支出済歳出額(13、14両年度)
(単位:億円)
使途別分類 | 13年度 | 14年度 | |||
金額 | 構成比 | 金額 | 構成比 | 対前年度 増△減率 |
|
他会計へ繰入 | 490,998 | 57.9% | 490,642 | 58.6% | △0.1% |
補助費・委託費 | 245,175 | 28.9% | 240,721 | 28.8% | △1.8% |
人件費 | 41,946 | 4.9% | 41,370 | 4.9% | △1.4% |
物件費 | 26,352 | 3.1% | 26,586 | 3.2% | 0.9% |
施設費 | 13,166 | 1.6% | 11,658 | 1.4% | △11.5% |
旅費 | 1,030 | 0.1% | 1,051 | 0.1% | 2.0% |
その他 | 29,441 | 3.5% | 24,712 | 3.0% | △16.1% |
計 | 848,111 | 100% | 836,742 | 100% | △1.3% |
表5 科目種類別支出済歳出額(13、14両年度)
(単位:億円)
科目種類別分類 | 13年度 | 14年度 | |||
金額 | 構成比 | 金額 | 構成比 | 対前年度 増△減率 |
|
他会計への繰入の類 | 435,105 | 51.3% | 443,065 | 53.0% | 1.8% |
補助金の類 | 191,873 | 22.6% | 196,921 | 23.5% | 2.6% |
庁費の類 | 26,227 | 3.1% | 26,527 | 3.2% | 1.1% |
職員基本給の類 | 22,801 | 2.7% | 22,746 | 2.7% | △0.2% |
年金・恩給・保険金の類 | 14,245 | 1.7% | 13,567 | 1.6% | △4.8% |
職員諸手当の類 | 11,856 | 1.4% | 11,317 | 1.4% | △4.5% |
施設費の類 | 11,209 | 1.3% | 9,687 | 1.2% | △13.6% |
出資金の類 | 10,269 | 1.2% | 6,567 | 0.8% | △36.0% |
雑手当の類 | 5,972 | 0.7% | 5,999 | 0.7% | 0.4% |
委託費の類 | 4,227 | 0.5% | 3,309 | 0.4% | △21.7% |
雑給与の類 | 1,639 | 0.2% | 1,800 | 0.2% | 9.8% |
超過勤務手当の類 | 1,143 | 0.1% | 1,154 | 0.1% | 1.0% |
旅費の類 | 1,030 | 0.1% | 1,051 | 0.1% | 2.0% |
貸付金の類 | 1,127 | 0.1% | 1,000 | 0.1% | △11.2% |
賠償償還及び払戻金の類 | 819 | 0.1% | 575 | 0.1% | △29.8% |
議員歳費の類 | 172 | 0.0% | 153 | 0.0% | △11.3% |
補償金の類 | 582 | 0.1% | 110 | 0.0% | △81.0% |
渡切費の類 | 64 | 0.0% | / | ||
立法事務費の類 | 56 | 0.0% | 55 | 0.0% | △0.8% |
報償費の類 | 61 | 0.0% | 51 | 0.0% | △17.6% |
交際費の類 | 6 | 0.0% | 6 | 0.0% | △8.3% |
供託金利子の類 | 4 | 0.0% | 3 | 0.0% | △11.6% |
保証金の類 | 5 | 0.0% | 2 | 0.0% | △44.2% |
原材料費の類 | 2 | 0.0% | 2 | 0.0% | 2.1% |
その他 | 107,604 | 12.7% | 91,063 | 10.9% | △15.4% |
計 | 848,111 | 100% | 36,742 | 100% | △1.3% |
使途別に支出済歳出額をみると、多額に上っているのは他会計へ繰入及び補助費・委託費である。
14年度では、他会計へ繰入は49.0兆円(支出済歳出額総額に占める割合は58.6%)となっており、主な繰入先は、表6のとおりである。
表6 他会計へ繰入の繰入先(14年度)
(単位:億円)
繰入先 | 繰入額 |
交付税及び譲与税配付金特別会計 | 164,791 |
国債整理基金特別会計 | 156,003 |
厚生保険特別会計 | 52,524 |
道路整備特別会計 | 27,026 |
産業投資特別会計 | 20,335 |
国立学校特別会計 | 16,331 |
国民年金特別会計 | 15,628 |
治水特別会計 | 11,130 |
その他 | 26,872 |
計 | 490,642 |
また、補助費・委託費は24.0兆円(同28.8%)となっており、主な所管別の内訳は、厚生労働省11.9兆円、文部科学省4.6兆円、国土交通省2.8兆円、農林水産省2.1兆円である。