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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書

国が公益法人等に補助金等を交付して設置造成させている資金等に関する会計検査の結果について


(1)資金の概況

 検査の対象とした前記の78法人、138資金のうち、16年度末現在で設置されている資金(注2) は、表1-1のとおり、70法人、116資金となっている(各資金の事業内容等については、巻末の別表参照 )。
 116資金の内訳は、〔1〕13年次検査資金94資金のうち事業を終了したなどの22資金を除いた72資金、〔2〕新規資金の44資金である。
 そして、上記116資金に対して、資金の最初の設置年度である昭和37年度から平成16年度までの間に交付された資金造成のための国庫補助金や受益者からの出えん金等の累計額(以下「造成額累計」という。)は、5兆9677億余円(国庫補助金相当額4兆4731億余円)に上っている。このうち事業において費消された額を除いた16年度末現在の資金保有額は、1兆5409億余円(同1兆3126億余円)となっている。
 所管府省別の内訳をみると、農林水産省所管が33法人、61資金、経済産業省所管が18法人、28資金となっており、両省の所管分だけで資金数の76.7%を占めていて、13年次に検査した際の状況とほぼ同様となっている。また、新規資金の資金数についてみると、農林水産省所管が17法人、24資金で、新規資金の54.5%を占めている。

16年度で事業が終了し、精算手続を17年度に終えたものについては除いている。

 

表1-1 各府省別の法人数、資金数及び資金保有額の状況

(単位:件、千円、%)

府省名 法人数 資金数 資金保有額 (16年度末) 資金数内訳
件数
(構成比)
件数
(構成比)
金額
(構成比)
13年次検査資金 新規
資金
12年度末 終了等 16年度末
内閣府 1
(1.4)
1
(0.8)
230,349
(0.0)
1 0 1 0
総務省 1
(1.4)
1
(0.8)
4,338,805
(0.2)
1 0 1 0
財務省 1
(1.4)
2
(1.7)
47,390,000
(3.0)
0 0 0 2(0)
文部科学省 1
(1.4)
1
(0.8)
1,920,477
(0.1)
4
終了
△3

1 0
厚生労働省 3
(4.2)
3
(2.5)
361,122,282
(23.4)
5
終了
△2

 
3 0
農林水産省 33
(47.1)
61
(52.5)
850,581,831
(55.1)
48
終了 △12(1)
分離 1
統合 △1
   
37 24(18)
経済産業省 18
(25.7)
28
(24.1)
162,205,353
(10.5)
25
終了
△5 (1)

21 7(6)
国土交通省 9
(12.8)
14
(12.0)
84,020,303
(5.4)
7 △1 6 8(5)
環境省 3
(4.2)
5
(4.3)
29,169,121
(1.8)
3
終了
△1

2 3(3)
合計
〔国庫補助金相当額〕
70
(100)
116
(100)
1,540,978,521
(100)
〔1,312,680,071〕

94
終了 △23(2)
分離 1
統合 △2

72

44(32)
注(1) 「資金数内訳」の「13年次検査資金」の「終了等」のうち農林水産省(1)及び経済産業省(1)については、資金事業を終了しているが他法人に承継して同一の事業を実施しているため、16年度末の資金数に含めている。
注(2) 「新規資金」の( )は、12年度以降に設置された資金数で内書きである。

 また、12年度以降16年度までの各年度末現在における法人数、資金数、当該資金に係る新規造成額及び資金保有額の推移は、表1-2のとおりとなっていて、資金数及び新規造成額は14年度までは増加している。14年度の新規造成額(6626億余円)が他の年度より多額となっているのは、不良債権処理の影響で離職を余儀なくされた者を雇用した場合などに奨励金の支給等を行う資金に追加造成が行われたことなどによるものである。

表1-2 法人数、資金数、新規造成額及び資金保有額の推移

(単位:件、千円、%)

年度 法人数 13年次検査資金 新規資金 資金数(A) (A)の対12年度比率 新規造成額(B)
〔うち国庫補助金相当額〕
(B)の対12年度比率 資金保有額(C)
〔うち国庫補助金相当額〕
(C)の対12年度比率
12 69 94 21 115 100 209,824,651
〔166,425,681〕
100
〔100〕
1,542,098,766
〔1,144,321,173〕
100
〔100〕
13 72 90 33 123 106.9 324,761,059
〔277,513,859〕
154.7
〔166.7〕
1,490,032,729
〔1,107,321,385〕
96.6
〔96.7〕
14 75 87 41 128 111.3 662,600,691
〔619,260,337〕
315.7
〔372.0〕
1,785,537,405
〔1,462,207,696〕
115.7
〔127.7〕
15 73 77 44 121 105.2 229,621,475
〔175,768,673〕
109.4
〔105.6〕
1,615,903,621
〔1,391,877,158〕
104.7
〔121.6〕
16 70 72 44 116 100.8 181,434,657
〔146,178,442〕
86.4
〔87.8〕
1,540,978,521
〔1,312,680,071〕
99.9
〔114.7〕

(2)資金の設置根拠等

 116資金について、その設置根拠をみると、法律に基づき設置されているものは13資金であり、それ以外の103資金は補助金交付要綱等に基づき設置されている。また、国が資金を設置造成するため、法人に交付している補助金等を会計別にみると、一般会計からのものが95資金、特別会計からのものが21資金となっている。
そして、資金事業が終了したときの残余資金の精算方法をみると、補助金交付要綱等において、国に返納したり、所管大臣と協議したりするなどの精算規定を設けているものが93資金、精算規定を設けていないものが23資金となっている。

(3)資金の分類

 116資金について、資金の使途及び運営形態から分類すると、表1-3のとおりとなっている。

表1-3 資金の使途別及び運営形態別の分類

(単位:上段件、下段千円)

使途別 法人数 資金数 左の運営形態別内訳 造成額累計(B)
16年度末
保有額(A)
取崩し型 回転型 保有型 運用型   うち費消額
(B)-(A)
貸付け 6 9 0 9 0 0 9 9
162,956,343 0 162,956,343 0 0 178,726,472 15,770,129
債務保証 22 27 0 0 27 0 27 27
107,008,764 0 0 107,008,764 0 138,334,034 31,325,270
利子助成 10 15 14 0 0 1 15 15
293,989,558 278,989,558 0 0 15,000,000 394,255,431 100,265,873
補助・
補てん
40 51 47 0 0 4 51 51
902,693,612 821,024,292 0 0 81,669,320 4,972,601,627 4,069,908,015
調査等
その他
12 14 7 0 0 7 14 14
74,330,244 45,038,595 0 0 29,291,649 283,831,300 209,501,056
合計 70 116 68 9 27 12 116 116
1,540,978,521 1,145,052,445 162,956,343 107,008,764 125,960,969 5,967,748,864 4,426,770,343
注(1) 一つの資金が複数の使途別分類又は運営形態別分類に該当する場合は、事業実績額((注4)参照) の多い分類に区分している。
注(2) 同一法人が分類の異なる複数の資金を有するものがあるため、各欄の法人数を加えても合計とは一致しない。

ア 使途別分類

 造成された資金を財源として使用する事業の種類をみると、次のように分類できる。

〔1〕 貸付事業資金

 貸付けや一時立替えの事業の財源として資金を使用するものである。農業経営の規模拡大、海外漁場の確保等のために貸付け等の事業を実施するに当たって、償還金等を再び貸付け等の財源に充当し、繰り返し使用する必要があるなどとして設置造成されている。これに該当するものは9資金あり、造成額累計1787億余円から貸付金の回収不能による償却額等を除いた16年度末資金保有額は1629億余円となっている。

〔2〕 債務保証事業資金

 借入金に対する債務を保証する事業や不測の事態が発生したときに生ずる費用を保証する事業の信用力の基盤となる財源として資金を使用するものである。新たな分野の創造の促進、経営の合理化、体質改善強化等のために債務等の保証事業を実施するに当たって、長期間にわたる借入れに対する代位弁済等に備えて安定的に財源を確保しておく必要があるなどとして設置造成されている。これに該当するものは27資金あり、造成額累計1383億余円から代位弁済に伴う求償権の償却額等を除いた16年度末資金保有額は1070億余円となっている。

〔3〕 利子助成事業資金

 借入金に係る利子の一部を助成したり、補給したりする事業の財源として資金を使用するものである。農家負担の軽減、構造改善の推進等のために利子助成等の事業を実施するに当たって、事業採択した利子助成等に係る翌年度以降に負担することになる助成額について確実に財源を確保しておく必要があるなどとして設置造成されている。これに該当するものは15資金あり、造成額累計3942億余円から利子助成済額等を除いた16年度末資金保有額は2939億余円となっている。

〔4〕 補助・補てん事業資金

 各種事業への補助金や農産物等の価格差に対する補てん金を交付したり、不慮の事故による被害者に対して給付金を支給したりする事業の財源として資金を使用するものである。雇用情勢に対応した支援、生産者の経営の安定、需給及び価格の安定等のために補助・補てん等の事業を実施するに当たって、社会条件、自然条件等により大きく変動する資金需要に対応する必要があるなどとして設置造成されている。これに該当するものは51資金あり、造成額累計4兆9726億余円から補助金、補てん金等の額を除いた16年度末資金保有額は9026億余円となっている。この補助・補てん事業資金だけで資金数の43.9%、資金保有額の58.5%を占めている。

〔5〕 調査等その他事業資金

 法人自らが行う調査、研究、普及、保管等の事業の財源として資金を使用するものである。様々な事業を法人自ら実施するに当たって、長期・継続的に事業を行う必要があるなどとして設置造成されている。これに該当するものは14資金あり、造成額累計2838億余円から実施した事業の費用等を除いた16年度末資金保有額は743億余円となっている。

イ 運営形態別分類

 造成された資金の運営形態をみると、次のように分類できる。

〔1〕 取崩し型資金

 資金を利子助成、補助・補てん、調査・研究等の事業の財源に充てることにより費消していくもので、68資金がこれに該当し、16年度末資金保有額は1兆1450億余円となっている。この取崩し型資金だけで資金数の58.6%、資金保有額の74.3%を占めている。

〔2〕 回転型資金

 使途別分類の貸付事業資金がこれに該当し、資金を繰り返し回転して使用するものである。

〔3〕 保有型資金

 使途別分類の債務保証事業資金がこれに該当し、資金を債務保証等の信用力の基盤となる財源として保有するものである。

〔4〕 運用型資金

 資金を運用元本として、その運用益を利子助成、補助・補てん、調査・研究等の事業の財源に充てていくもので、12資金がこれに該当し、16年度末資金保有額は1259億余円となっている。

(4)資金設置経過年数

 表1-4のとおり、116資金のうち、近年設置されている資金もある一方、設置から20年以上経過しているものが38資金(32.7%)ある。
近年設置されている資金についてみると、経過年数10年未満のものは、取崩し型資金では68資金のうち40資金(58.8%)となっているのに対して、運用型資金では12資金のうちの2資金(16.6%)となっており、さらに経過年数5年未満のものは運用型資金にはない状況である。これは、近年の金利低下の影響で事業の財源に充てる運用益を十分に確保することが困難となってきていることによると考えられる。

表1-4 運営形態別の資金設置経過年数

(単位:件)

経過年数 取崩し型 回転型 保有型 運用型 合計
30年以上 7 3 3 2 15
25年以上30年未満 6 2 7 1 16
20年以上25年未満 4 0 2 1 7
15年以上20年未満 8 1 1 4 14
10年以上15年未満 3 1 5 2 11
5年以上10年未満 15 0 4 2 21
5年未満 25 2 5 0 32
合計 68 9 27 12 116