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  • 平成18年度|
  • 第4章 国会及び内閣に対する報告並びに国会からの検査要請事項に関する報告等|
  • 第2節 国会からの検査要請事項に関する報告

国会からの検査要請事項に関する報告


<参考:報告書はこちら>

第1 政府開発援助(ODA)に関する会計検査の結果について

要請を受諾した年月日
平成17年6月8日
検査の対象
外務省、国際協力銀行、独立行政法人国際協力機構
検査の内容
政府開発援助(ODA)についての検査要請事項
報告を行った年月日
平成19年9月12日

1 検査の背景

(1) 検査の要請の内容

 会計検査院は、平成17年6月8日、参議院から、国会法第105条の規定に基づき下記事項について会計検査を行いその結果を報告することを求める要請を受けた。これに対し同日検査官会議において、会計検査院法第30条の3の規定により検査を実施してその検査の結果を報告することを決定した。

一、会計検査及びその結果の報告を求める事項

(一) 検査の対象

 外務省、独立行政法人国際協力機構(JICA)、国際協力銀行(JBIC)

(二) 検査の内容

政府開発援助(ODA)についての次の各事項

1 開発コンサルタント、NPO等への委託契約の状況について

特に

・対コスタリカODAにおける株式会社パシフィックコンサルタンツインターナショナル(PCI)に係る不祥事の概要、同種事案の有無

・外務省、JICA及びJBICのPCI等日本の開発コンサルタント会社に対する事務・業務の委託契約の状況

2 草の根・人間の安全保障無償援助の実施状況について

3 スマトラ沖地震の緊急援助の実施状況について


(2) 平成15年度決算審査措置要求決議の内容

 参議院決算委員会は、17年6月7日に検査を要請する旨の上記の決議を行っているが、同日に「平成15年度決算審査措置要求決議」を行っている。
 このうち、上記検査の要請に関する項目の内容は、次のとおりである。

12 ODAにおける不正事案について

 昨年9月、コスタリカへのODA事業「テンピスケ川中流域農業総合開発計画」で、同国政府機関「国土地理院」への再委託料として(株)パシフィックコンサルタンツインターナショナル(PCI)に支払われた約231,000ドル(約2,500万円)のうち、コスタリカ側に支払われた約59,000ドルを除いた約172,000ドル(約1,8000万円)が政府機関の口座に入金されないまま使途不明になっていることが、独立行政法人国際協力機構(JICA)の調査で明らかになった。JICAは、「不正又は不誠実な行為」があったとして、同年12月、指名停止6か月の処分を行った。なお、PCIは、コスタリカ側に支払われた約59,000ドルを除いた約172,000ドル(プラス利息分)を今年1月JICAに返還した。
 上記事案を受けてJICAは、PCIが過去5年間に受注した類似の案件について調査を実施し、本委員会においてその結果を聴取した。それによれば、調査の結果4か国4案件において実態と異なる再委託契約を行いJICAに対して不正な請求を行っていたことが新たに判明したことを踏まえて、JICAはPCIに対して新たに9か月の指名停止措置をとり、不正請求額合計1,527万円相当及び利息分の返還を請求した。
 ODAの実施に際して、再度開発コンサルタント会社の不祥事が起きることのないよう、外務省は、再発防止のためにより透明性の高い事業を遂行するように指導監督すべきであり、またJICAは、再委託契約手続の各段階を見直して、再委託先に関する情報のJICA在外事務所への報告の徹底、入札時の同事務所員による立会いの励行、再委託契約にかかわるすべての会計書類のJICAへの提出、JICA在外事務所が設置されていない地域への現地調査団派遣など監督体制強化の措置を講ずべきである。
 PCIを始めとするODAに関するコンサルタント会社への委託業務についての会計検査については、過去に不正事案がなかったかなどの実態を十分に調査した上、実施すべきである。

13 草の根・人間の安全保障無償について

 グローバル化が急進する中、感染症、環境問題といった国境を超える問題が世界中で広がっている。また、多発する地域紛争や経済的な要因により、難民や国内避難民などの非自発的な人の移動が大きな問題となっている。こうした問題を克服するためには、人間の生存、生活、尊厳を直接に脅かす深刻かつ広範な脅威から人々を保護し、個人やコミュニティが自立するための能力を育成することが必要である。これが「人間の安全保障」の考え方であり、我が国は、人間の安全保障分野における取組を推し進めるために、1999年3月国連に「人間の安全保障基金」を設置し、積極的に支援を行ってきた。
 平成15年度予算から、開発途上国の現地住民に直接裨益するきめ細かな援助として高い評価を得てきている草の根無償資金協力(平成14年度予算100億円)に、人間の安全保障の考えをより強く反映させ、「草の根・人間の安全保障無償」として、主にNGOを被供与団体とし、迅速な実施が求められる緊急の支援にも対応していくこととした(平成15年度草の根・人間の安全保障無償資金協力予算150億円)。
 供与限度額の原則1,000万円以下は草の根無償資金協力時と変更はないが、最大供与額を従来の5,000万円から1億円に引き上げた。
 政府は、15年度から実施した「草の根・人間の安全保障無償」について、それまでの草の根無償と比較して、その意義、効果等について調査・検討する必要がある。

15 スマトラ沖地震に対する緊急援助の実施状況について

 昨年末に発生したスマトラ沖地震及びインド洋津波被害に関し、我が国は5億ドルを限度とする協力を関係国及び国際機関等に対して無償で供与することを決定した。このうちの半分の2億5,000万ドルはユニセフ、世界食糧基金等の国際機関経由で、残りの2億5,000万ドルはインドネシア、スリランカ等の被災国に直接送金されている。しかし、後者の二国間供与分については、資金が相手側に届いているにもかかわらず、調達がまだ実施されていない部分がある。
 政府は、今後の緊急支援においてその趣旨が生かされないというものがないよう、スマトラ沖地震に関し緊急支援として供与した援助について、その実施状況を調査する必要がある。


(3) 前回の会計検査の実施状況

 前記の要請により実施した会計検査の結果について、18年9月21日、会計検査院長から参議院議長に対して報告した(以下、この報告を「18年報告」という。)。 
 18年報告のうち、「第2 開発コンサルタント、NPO等への委託契約の状況について」及び「第4 スマトラ沖地震の緊急援助の実施状況について」は、18年報告の検査の結果に対する所見において、引き続き検査を実施する必要があるものの検査の結果については、取りまとめが出来次第報告することとした。

2 開発コンサルタント、NPO等への委託契約の状況について

(1) 18年報告の概要

ア 18年報告の検査の対象、観点、着眼点及び方法

 18年報告の検査の対象、観点、着眼点及び方法は、次のとおりである。

(ア) 18年報告の検査の対象、観点及び着眼点

 本院は、18年次において、開発コンサルタント会社、特定非営利活動法人(Non Profit Organization。以下「NPO」という。)等(以下、これらを総称して「コンサルタント」という。)への委託契約の状況について、我が国の援助実施機関である外務省、国際協力銀行(Japan Bank for International Cooperation。以下「JBIC」という。)及び独立行政法人国際協力機構(Japan International Cooperation Agency。以下「JICA」という。)が12年度から16年度までの5年間にコンサルタントと締結した事務・業務の委託契約を対象として検査した。
 JICAがコスタリカ共和国(以下「コスタリカ」という。)で実施した開発調査「テンピスケ川中流域農業総合開発計画」において、JICAが株式会社パシフィックコンサルタンツインターナショナル(以下「PCI」という。)と締結した委託契約に係る業務の一部の再委託契約の実施に関し不祥事が発覚した。この不祥事は、PCIがコスタリカ国土地理院と締結した再委託契約に係る経費の一部が使途不明となったというものである。本院は、JICAに対して事実関係及び現地における調査の結果について説明を求めるとともに、合規性等の観点から、委託契約及び精算の適否に着眼して検査した。
 また、同種事案の有無については、JICA及びJBIC(以下「JICA等」という。)がPCIと締結した委託契約のうち、現地で再委託契約が締結されているもののすべてを対象とし、現地における調査をJICA等に求めるとともに、合規性等の観点から、委託契約及び精算の適否に着眼して検査した。さらに、PCI以外のコンサルタントと締結した契約についても、PCIに対すると同様の現地における調査を行うようJICA等に求めた。

(イ) 18年報告の検査の方法

 本院は、18年次に、外務本省、JBIC本店、JICA本部等において、会計実地検査を行い、我が国の援助実施機関がコンサルタントと締結した委託契約の状況について、各援助実施機関から決算書等の関係書類に基づき業務実施等に関する説明を聴取した。
 対コスタリカODAにおけるPCIに係る不祥事や同種事案の有無については、JICA等から委託契約書、PCIから提出された再委託契約書、領収書、成果品等関係する証憑の提示を受けるなどして国内での書類審査の状況を聴取するとともに、JICA等に対し現地での再委託先に対する調査を実施するよう求めた。
 また、PCIに対しては、本社に赴き、社員から社内の会計処理について関係書類に基づき説明を聴取し、また、同社が保存している本件「テンピスケ川中流域農業総合開発計画」に関する銀行の出入金の記録等の証憑を精査するなどして実地に検査した。
 さらに、本院は、コスタリカに職員を派遣し、再委託先等の関係者から事情を聴取するとともに、関係書類を確認した。

イ 18年報告の検査の結果に対する所見

 18年報告の検査の結果に対する所見は、次のとおりである。

 ODAにおいては、対象となる分野が多岐にわたっており、高い技術力と援助ニーズの多様化に伴う専門性が従来にも増して要求されていることから、コンサルタントの果たす役割とそれに対する信頼が不可欠となっている。特に、JICAが開発調査等を実施するためにコンサルタントと締結する業務実施契約においては、その過半において再委託契約が締結される現状となっている。そうした中で、コンサルタントが現地で締結した再委託契約の精算に当たって、JICAにおいて、対コスタリカODAのPCIに係る不祥事が発覚し、さらに、4箇国4案件について適正を欠く事態があり、また、JBICにおいて1箇国2案件について適切でなかった事態があったことは遺憾である。
 コンサルタントは、JICAから事前に承認を得て現地で再委託契約を締結することとされていたが、JICAは、承認後は、再委託先及び再委託契約の実施状況の把握を十分行っていなかった。上記の事態を踏まえ、JICAは、ガイドラインを定め、再委託契約締結後の契約の確認の徹底と再委託契約業務完了後の第三者機関による抽出検査の導入等を図っているところである。また、JBICは、運用指針に則した精算を行うよう指導を徹底しているところである。
 JICA等においては、再委託契約を伴うコンサルタントとの委託契約についてガイドライン等に沿って、適正な契約の履行の確保に徹底を期する必要がある。また、外務省においては、このような事態が生じることがないように、JICA等に対し指導監督等を十分に行う必要がある。
 会計検査院としては、今後とも、ODAに関するコンサルタントとの委託契約について、特に再委託契約に関しては、JICA等が講じた再発防止策が有効に機能して、適正な契約の履行が確保されているか、引き続き注視していく。
 そして、今回の検査によって、再委託契約に係る経理処理や精算手続が事実と異なっていることが判明したJICAとPCIとの委託契約に係る11箇国13案件については、今後、JICAによる精査の結果の報告を踏まえ、引き続き検査を実施する必要がある。
 また、PCI以外のコンサルタントとの委託契約について、現地での再委託契約の精算の適否について報告を求めたところ、JICAでは39箇国における20コンサルタントに係る60案件、JBICでは7箇国における8コンサルタントに係る11案件の再委託契約の精算の適否について、特に問題がなかった旨の報告を受けている。これらの71案件については、JICA等の報告における調査内容を検証する必要がある。
 したがって、これらPCIに係る13案件の検査及びPCI以外のコンサルタントに係る71案件の検証の結果については、取りまとめが出来次第報告することとする。


(2) 19年次の検査における検査の対象、観点、着眼点及び方法

ア 検査の対象

 18年報告の検査の結果に対する所見において、引き続き検査するとした次の案件を対象として検査した。
(ア) JICAがPCIと締結した委託契約について、現地での再委託契約が締結されているもののすべてを対象として現地での再委託契約の精算の適否を調査するようJICAに求めたところ、再委託契約に係る経理処理や精算手続が事実と異なっていることが判明した11箇国13案件
(イ) JICA等がPCI以外のコンサルタントと締結した委託契約について、現地での再委託契約の精算の適否を調査するようJICA等に求めたところ、特に問題がなかった旨の報告を受け、その内容を検証する必要があるとした71案件

イ 検査の観点及び着眼点

(ア) JICAとPCIとの委託契約11箇国13案件については、合規性等の観点から、JICAが各案件の再委託契約の精査を行ってPCIから返還を受けたと報告してきた返還金額について、その適否等に着眼して検査した。
(イ) JICA等とPCI以外のコンサルタントとの委託契約に係る71案件96契約については、合規性等の観点から、JICA等の再委託契約に関する調査内容及びその精算の適否等に着眼して検査した。

ウ 検査の方法

(ア) JICAとPCIとの委託契約に係る11箇国13案件の検査の方法
 11箇国13案件に係る返還金については、JICA本部において会計実地検査を行い、PCIから提出を受けていた精算報告書及びJICAが再委託先を現地で調査した際に徴した領収書等の関係資料の提出を受けるなどして検査した。また、PCIの本社に赴き、PCIの社員から、JICAへ提出した精算報告書の作成方法、社内の経理処理等について説明を聴取し、これに係る書類の提示を受けるなどして実地に検査した。
(イ) JICA等とPCI以外のコンサルタントとの委託契約に係る71案件の検査の方法
 JICAの委託契約に係る60案件85契約については、JICA本部において会計実地検査を行い、JICAから再委託契約に関する調査内容の説明を聴取するとともに、コンサルタントに赴くなどして再委託契約に関する調査の内容、JICAに対する精算及び社内の経理処理の説明を聴取し、支払に係る関係書類の提示を受けるなどして、実地に検査した。また、タイ王国、インドネシア共和国及びグアテマラ共和国の各国に職員を派遣して、再委託先の協力の下に再委託先に対し実地に調査した。
 JBICの委託契約に係る11案件11契約については、JBIC本店において会計実地検査を行い、再委託契約に関する調査内容について説明を聴取し、JBICが再委託先を現地で調査した際に再委託先で徴した領収書等の関係書類の提出を受けるなどして検査した。また、タイ王国及びインドネシア共和国に職員を派遣して、再委託先の協力の下に再委託先に対し実地に調査した。
 本院は、19年次に実施した本件事案の検査において、在庁して関係書類の分析等の検査を行ったほか、102.5人日を要して、外務本省、JBIC本店、JICA本部等に対する会計実地検査及び上記の3箇国における現地調査を行った。

(3) 検査の結果

ア JICAとPCI等との委託契約11箇国13案件

(ア) JICAから報告を受けたPCIの返還金額

a 18年報告では、JICAとPCIとの委託契約について、次のように記述した。
 「本院は、12年度から16年度までに、JICAがPCIと締結した業務実施契約のうち、再委託契約が締結されているものすべてを対象として、JICAに対し、国内において会計書類を再度審査するとともに、再委託先に赴くなどして、現地で調査を実施し、その結果を報告するよう求めた。(中略)その結果、新たに11箇国13案件に係る再委託契約36件で、JICAに提出されていた再委託契約書の額よりも少額の再委託契約書が存在したり、JICAに提出されていた再委託契約書に記載された再委託先と実際には契約が締結されていなかったりしていて、経理処理や精算手続が事実と異なり適切でなかったものがあった。(中略)今後、JICAは、PCIとの業務実施契約で経理処理や精算手続が適切でなかった11箇国13案件について、PCIが実施した業務の内容、証憑等の精査を引き続き行い、返還請求の要否の検討及びその額の確定をすることにしている。」
b 18年報告の後に、JICAにおいてこれらの再委託契約について精査した結果、実際の再委託契約の金額が確定するなどしたため、経理処理や精算手続が事実と異なり適切でない再委託契約の件数は2件増え、36件から38件となった。そして、JICAは、再委託契約ごとの契約金額を上限として精算を行った精算金額と精査の結果判明した支払金額との差額を返還金額として認定することとした。また、JICAは、コスタリカの「テンピスケ川中流域農業総合開発計画」等と同様に、PCIがJICAと協議を行うことなく、JICAとPCIとの契約に基づく仕様書で示された再委託業務をPCI自ら行ったり、仕様書で示されていない業務を行ったりした場合は、それらの経費は委託経費と認めないこととした。
 JICAは、上記38件のうち、精算金額を上回る支払が行われていたことから返還を要しなかった3件を除いた35件について、PCIに対し、不正請求額計85,576,635円及び利息分等の返還を請求し、18年10月27日までにPCIから117,663,041円を返還させた。

(イ) 本院の検査により新たに判明した事態

 本院は、JICA本部において会計実地検査を行い、PCIから提出を受けた精算報告書及びJICAが現地調査で徴した領収書等の関係資料の提出を受けて上記の返還金額について検査した。また、PCIの本社に赴き、PCIの社員から、JICAへ提出した精算報告書の作成方法等や社内の経理処理について説明を聴取し、これに係る書類の提示を受けるなどして実地に検査した。
 今回の検査で、JICAがPCIから返還を受けた上記の11箇国13案件に係る再委託契約35件のうちPCIが適切でない経理処理や精算手続を行っていたのは34件であり、トルコ共和国の案件に係る1件については、PCIと共同企業体を構成していた応用地質株式会社(以下「応用地質」という。)が適切でない経理処理や精算手続を行っていたことが判明した。
 本院は、上記のとおり、応用地質が再委託契約に関し適切でない経理処理や精算手続を行っていたことが判明したため、応用地質が12年度から16年度の間にJICAと契約した業務実施契約のうち、再委託契約が締結されているもの4案件7契約(応用地質が15年3月に営業譲渡したコンサルタントに係る1案件1契約を含む。)について実地に検査した。
 その結果、11箇国13案件に含まれるトルコ共和国の13年度の「イスタンブール地震防災計画基本調査(第1年次)」(契約金額226,783,200円)に係るボーリング、土質試験、物理探査の再委託契約において、次のとおり、JICAが応用地質に対して4,841,881円を過大に支払っていると認められる事態が、前記35件のほか更に1件判明した。
 すなわち、応用地質は、PCIと共同企業体を構成してこの調査を実施していた。応用地質は、ボーリング等の再委託契約について450,100米ドルを支払ったとして、共同企業体の代表者であるPCIを通じて、精算報告書に再委託契約書、領収書等を添付してJICAに提出し、JICAはこの額で精算を行っていた。
 検査したところ、実際は、PCIを通じてJICAに提出された領収書は偽造されたものであり、応用地質は再委託契約書記載の額よりも少額の支払に関する書類を保存していて、応用地質が再委託先に実際に支払った金額は410,728.71米ドルであった。
 したがって、本件再委託契約は精算金額に比べ39,371.29米ドル低額で実施されており、JICAは応用地質に対し4,841,881円(39,371.29米ドル相当)を過大に支払っていたと認められる。
 JICAでは、19年8月末現在、共同企業体の代表者であるPCIに対し、不正請求額4,841,881円及び利息分等の返還を請求することとした。

(ウ) 本院が確認した返還金額

 本院は、JICAが精査し返還を受けた11箇国13案件に係る再委託契約35件(うち1件は応用地質の再委託契約)及び上記応用地質の再委託契約1件、計36件(PCIの再委託契約34件、応用地質の再委託契約2件)について検査し、その返還金額計90,418,516円の妥当性について確認した。

(エ) 11箇国13案件に係る再委託契約39件の事態の態様等

 11箇国13案件に係る再委託契約39件の適切を欠く事態について、態様別に示すと以下のとおりである。

a 再委託業務が精算金額に比べ低額で実施されていたもの

27件



 JICAに提出されていた再委託契約書の額よりも少額の再委託契約書等が存在していて、これに基づき実際の支払が行われているため、再委託業務が、実際には精算金額に比べ低額で実施されていた。


b 再委託業務が実施されていなかったもの

9件



 再委託契約が、実際には締結されておらず、当該再委託業務が実施されていなかった。

c 返還すべき差額が生じなかったもの

3件



 再委託先により再委託契約の金額より低額で再委託業務が実施されるなどしていたが、別途、仕様書に定められた再委託業務の一部を、再委託先以外の者が実施しているなどしていて、前記のとおり精算金額を上回る支払が行われていたことから、結果としてJICAのPCIに対する過大な支払とはなっていなかった。

(オ) 発生原因

 18年報告では、JICAが開発調査を実施したコスタリカの「テンピスケ川中流域農業総合開発計画」及び4箇国4案件に係る適正を欠く事態の発生原因として、「JICAにおいて、再委託契約の事前の審査・承認や提出された精算報告書、証憑の形式的な審査確認は行われていたが、海外に存在する再委託先の選定、再委託契約の実施状況等についての実質的な把握が十分行われていなかったこと」と記述したほか、「PCIにおいて、再委託に関し、現地の事情の変化により調査方法の変更や経費の流用等の必要が生じた場合は、JICAと協議して契約を変更する要があったのに、開発調査等は比較的短期間に調査を終える必要があることから、業務主任者等が、手続に時間を要すると考えてこれを行わずに、再委託契約書、領収書等を偽造したり、支払を証明する領収書等を廃棄したりするなど、適正な会計処理を行っていなかったこと。また、本社でも、調査の実施とともに現地における支払について業務主任者の裁量に任せており、この支払に対するチェック体制が確立されていなかったこと」と記述した。
 そこで、本院は、19年次の検査において、PCIの本社で、11箇国13案件に係る再委託契約39件のうちPCIが再委託契約の当事者となっていた37件について、PCIがJICAへ提出した精算報告書の作成方法、社内の経理処理の状況の説明を聴取するとともに、JICAが提出を受けていた領収書等とPCIの社内の伝票等を照合するなどして実地に検査した。

a PCIの業務主任者の精算の報告に対する本社の審査状況

 本院は、11箇国13案件に係る精算報告書に対するPCI本社の審査状況について実地に検査した。
 前記の再委託契約37件のうち、23件については、PCIの現地における業務主任者はPCI社内の経理担当(以下「経理担当」という。)には事実に基づく報告を行うなどしていた。しかし、その一方で、PCI社内のJICAに対する精算担当(以下「精算担当」という。)には虚偽の精算の報告を行っていた。このため、社内の経理においては実際の支払額が現地再委託の経費として計上されていたが、精算担当では、この虚偽の報告に基づき精算報告書を作成し、これを社内で特段の審査等を行わないままJICAに提出していた。
 残りの14件については、業務主任者が虚偽の報告を経理担当及び精算担当の両者に行っていた。

b 現地再委託経費の支払方法

 PCIの本社から現地の再委託先の銀行口座へ銀行送金を行うことにより、再委託先への支払が確実なものとなり、事後の確認も容易となると考えられることから、本院は、現地再委託経費の支払方法について検査した。
 前記の37件の再委託契約のうち、再委託業務が実施されていなかった9件を除く28件について、PCIでは、次の二つの方法で支払を行ったとしていた。

〔1〕 本社から現地の再委託先の銀行口座へ銀行送金する方法

 本社から現地の再委託先の銀行口座へ銀行送金する場合は、業務主任者から送付された請求書等を本社で審査し、社内の経理としては、経理担当が再委託先の銀行口座へ銀行送金する際に委託事業の経費に計上する。そして、JICAに対する精算に当たっては、精算担当が、事業完了後、再委託先から提出された領収書を証拠書類として添付して提出する。

〔2〕 業務主任者等が現地で再委託先に支払う方法

 業務主任者、会計担当者(以下「業務主任者等」という。)が本社から事前に渡されていた資金から現地で再委託先に支払うのは、再委託先が現金での支払を求めたり、本社から再委託先の銀行口座や現地へ銀行送金ができなかったりする場合等である。そして、業務主任者等が現地経費に係る領収書等の精算書類を取りまとめ、精算担当には原本を、経理担当にはその写しを、それぞれ提出する。

 そして、〔1〕の方法のみで支払を行ったとしていたものは2件、〔1〕及び〔2〕の方法で支払を行ったとしていたものは2件、〔2〕の方法のみで支払を行ったとしていたものは24件であった。
 PCIは、再委託先への支払に当たっては、盗難等による事故を防ぐため、上記〔1〕の本社から銀行送金する方法が望ましいとしていたが、開発調査等は比較的短期間に調査を終える必要があることなどから、再委託先の調査を円滑に行わせるなどのため上記〔2〕の業務主任者等が現地で支払う方法が大半となっていた。

 このように、11箇国13案件については、業務主任者の精算の報告に対する本社の審査体制が十分整備されていなかったり、支払が確実なものとされる本社からの再委託先の銀行口座への支払が、再委託契約28件のうち4件と少なく、大半は業務主任者等が再委託先に支払う方法となっていたりしていた。

(カ) PCIの再発防止策

 PCIでは、現地で再委託契約を締結した時点では、従来は業務主任者が再委託契約書等を本社に提出することとなっていなかったが、これを新たに本社に提出することとするなどして、再委託契約に対する審査体制を強化したり、JICAに提出する精算報告書の作成に当たっては新たに監査部署が監査を行うこととして、精算の報告に対する審査体制を強化したりするなどした。また、PCIでは、再委託先への支払に当たっては、再委託先の銀行口座への銀行送金を原則とすることとし、業務主任者は再委託先への支払について本社の承認を受けた後に、経理担当に対し本社からの再委託先の銀行口座への銀行送金を依頼することとするなど、本社からの銀行送金の徹底を図るとするなどして再発防止に取り組んでいる。

イ JICA等とPCI以外のコンサルタントとの委託契約に係る71案件96契約

(ア) JICAの委託契約

a 本院が求めたJICA及びコンサルタントの調査の状況

(a) 18年報告では、JICAとPCI以外のコンサルタントとの委託契約について、次のように記述した。
 「本院は、PCI以外のコンサルタントについてもPCIと同様に、再委託契約を含む委託契約について、現地における調査を実施するようJICA等に求めた。(中略)そして、JICAは、PCI以外のコンサルタントと締結した契約で、再委託契約が締結されていたもののうち、受注実績が上位を占めるコンサルタントとの契約や在外事務所が存在しない国において実施された案件で再委託契約が1000万円以上のものである19案件について、再委託先に赴いて再委託契約の有無及び契約金額の確認を行うなどの現地における調査を実施した。それに加えて、JICAが上記現地における調査の対象とした案件に係るコンサルタント各社に対して、その他の案件についても自ら調査を行い、その結果をJICAに報告するよう求めたものが41案件ある。(中略)本院は、これらの調査の結果として、契約又は精算に当たり適切を欠いていた事態は見受けられなかったとの報告を18年5月までに受けた。」
(b) 18年報告の後に、本院は、JICA本部において会計実地検査を行うなどして、JICAの委託契約に係る上記の計60案件の再委託契約について、JICA及びコンサルタントから再委託契約に係る調査の方法及び内容について説明を聴取するなどして、引き続き検査した。
 JICAでは、本院が、前記のとおり、現地における調査を実施するよう求めたことに応じ、19案件について調査した。JICAの調査の方法は、現地の再委託先を訪問して調査したものが19案件中14案件、電話又はファックス等により調査したものが4案件、訪問及び電話等の両方を実施したものが1案件となっていた。そして、調査の内容は、契約書、領収書等を確認したとしていたものが17案件、確認が困難などとしていたものが2案件であった。
 また、前記のとおり、本院が調査を実施するよう求めたことに応じて、JICAがコンサルタント各社に対して、その他の案件についても自ら調査を行うよう求め、コンサルタントが調査したものが41案件ある。これらのすべてについて、コンサルタントは、社内で契約書、領収書等の経理書類による確認を行い、それに加えて、調査の方法として業務主任者からの聞取り調査を行った案件が22案件、電話、ファックス又はメールにより確認を行った案件は2案件であった。
 なお、これらの60案件には、JICAの調査した案件で再委託先の確認が取れなかったものや、コンサルタントが調査した案件で一部の再委託契約のみを調査したものも含まれていた。

b 本院の検査の状況

 本院は、60案件に係る20コンサルタントの本社に赴くなどして、JICAに対する再委託契約の精算方法や社内の経理処理の状況について説明を聴取するとともに、JICAが提出を受けていた領収書等とコンサルタントが保存していた社内の伝票等の経理書類とを照合するなどして、実地に検査した。
 本院がコンサルタント20社に赴くなどして今回検査した範囲では、現時点で返還を要すると認められる事態は見受けられなかった。
 ただし、本院による検査の過程で、2案件において再委託先に対する前払等の支払について、JICAが提出を受けていた領収書がコンサルタントの社内の経理処理に用いられた実際の領収書と異なっていて、JICAに対する精算報告書の内容が事実と相違していたものが見受けられた。再委託先への支払額の総額は再委託契約に係る精算金額と一致していたが、上記のとおり事実と相違した領収書がJICAに提出され、JICAの精算に用いられていたことは適切とは認められない。
 なお、PCIと同様に、コンサルタントの業務主任者等の精算の報告に対する審査状況、現地再委託経費の支払方法について検査したところ、次のとおりであった。
 コンサルタントにおける審査状況については、精算担当と経理担当が異なり、両者において再委託契約に係る領収書等を確認した上で社内の経理処理を行っているとしたものが、20社のうち19社と大半を占めていた。
 再委託先への支払方法については、原則としてコンサルタントの本社等から銀行送金する方法で支払を行っているとしたものが20社のうち15社を占めていた。また、JICA及びコンサルタントが調査した60案件85契約については、本社等から銀行送金する方法のみで支払を行っていたものが29契約、業務主任者等が現地で支払う方法のみで支払を行っていたものが43契約、両方の方法で支払を行っていたものが13契約となっていた。
 また、本院では、再委託先の協力の下に5案件の再委託契約について、タイ王国、インドネシア共和国及びグアテマラ共和国の3箇国に職員を派遣して、次の点に留意して再委託先に対し、実地に調査した。
〔1〕 再委託契約書及び領収書の署名者が実在の人物で、それぞれの署名は本人の署名に間違いないか。
〔2〕 コンサルタントがJICAに提出した領収書に記載された金額と再委託先が実際にコンサルタントから受け取った金額に相違はないか。
〔3〕 再委託業務が契約どおりに実際に行われ、成果品がコンサルタントに納入されているか。
 本院が再委託先を今回調査した範囲では、現時点で特に報告すべき事項は見受けられなかった。

(イ) JBICの委託契約

a 本院が求めたJBICの調査の状況

(a) 18年報告では、JBICとPCI以外のコンサルタントとの委託契約について、次のように記述した。
 「本院は、PCI以外のコンサルタントについてもPCIと同様に、再委託契約を含む委託契約について、現地における調査を実施するようJBICに求めた。(中略)そして、JBICは、PCI以外のコンサルタントと締結した契約金額が3000万円以上の契約で、再委託契約が締結されていたもののうち11案件について、JBICが保存していた精算報告時に提出されていた契約書、領収書等を各駐在員事務所に送付し、各事務所が再委託先に赴くなどして再委託契約の有無及び契約金額の確認を行うなどの現地における調査を実施した。(中略)本院は、これらの調査の結果として、契約又は精算に当たり適切を欠いていた事態は見受けられなかったとの報告を18年5月までに受けた。」 
(b) 18年報告の後に、本院は、JBIC本店において会計実地検査を行い、JBICから再委託契約に係る調査方法及び内容について説明を聴取した。
 JBICでは、本院が、前記の現地における調査を実施するよう求めたことに応じて調査した11案件11契約について、コンサルタントから提出を受けた再委託契約書、領収書等と再委託先が保存していた契約書、領収書等の照合を駐在員事務所を通じて行わせた。その調査の方法は、現地の再委託先を訪問するなどして確認したものが10案件、訪問等及び電話により調査したものが1案件となっていた。また、その調査の内容は、契約書及び領収書を確認したものが全11案件であった。

b 本院の検査の状況

 本院は、JBIC本店において会計実地検査を行い、11案件すべてについて、JBICに精算報告時に提出されていた再委託契約書、領収書等と、JBICが再委託先を調査した際に確認した再委託契約書、領収書等の関係書類を照合した。また、コンサルタントから、社内の経理で計上されている再委託契約の支払額等について、JBICを通じて報告を受けて、上記のJBICが提出を受けていた領収書等と照合した。
 本院がJBICなどを今回検査した範囲では、現時点で特に報告すべき事項は見受けられなかった。
 なお、再委託先への支払方法について検査したところ、次のとおりであった。
 コンサルタントの本社から銀行送金する方法のみで支払を行っていたものが6案件、業務主任者等が現地で支払う方法のみで支払を行っていたものが1案件、両方の方法で支払を行っていたものが4案件となっていた。JBICでは、16年4月に制定した「経費支出に伴う契約・支払いに係る積算・精算の運用指針」のなかで、契約先に対しては、支払の確認を確実に行うため、可能な場合には銀行送金などによる支払を推奨している。
 また、本院は、再委託先の協力の下に2案件の再委託契約について、タイ王国及びインドネシア共和国の2箇国に職員を派遣し、前記のJICAの委託契約についての調査と同様の点に留意して再委託先に対し、実地に調査した。
 そして、JBIC駐在員事務所において、再委託契約の相手方に面会し、JBICに提出されていた再委託契約書、領収書等と再委託先が保存していた再委託契約書、領収書等について、契約内容、契約金額を照合するなどし、また、成果品について確認をするなどした。
 本院が再委託先を今回調査した範囲では、現時点で特に報告すべき事項は見受けられなかった。

ウ JICAにおける再発防止策の実施状況等

 JICAは、再発を防止するために、検討委員会を発足させ、検討を進めた結果、事後チェックの強化と事前手続の合理化、効率化等の面から手続の見直しを行い、17年12月に前記のガイドラインを制定した。
 このガイドラインにおいては、コンサルタントが再委託契約を締結した後、速やかに監督職員に対し、再委託先の選定経緯の報告を行ったり、再委託契約書の写しを提出したりするなどして、再委託先への確認を徹底することなどとしている。また、再委託契約業務完了後の第三者機関による抽出検査を導入することなどとしている。
 そして、このガイドラインに示された再委託契約の確認のための項目の19年6月末までの実施状況は、表1のとおりとなっている。

表1 JICAにおけるガイドラインの実施状況(19年6月末現在)
項目
対象契約件数
実施、確認件数
〔1〕 再委託契約締結後の監督職員への報告と契約書写しの提出
495件
495件
〔2〕 再委託契約締結後における監督職員による事実確認
495件
495件
〔3〕 1000万円以上の契約又は入札を行う場合の立会い
122件
113件
〔4〕 再委託業務終了後の業務完了報告と成果品の確認
495件
495件
〔5〕 再委託契約業務完了後の第三者機関による抽出検査
495件
0件

 JICAは、1000万円以上の契約又は入札を行う場合に立会いができなかった9件については、後日再委託先への電話により再委託契約の内容等について確認を行ったとしている。また、第三者機関による抽出検査については、19年8月に3箇国を対象に開始された。
 また、JICAは、ガイドラインを18年6月に改正し、現地再委託契約に係る支払を確実なものとするため、支払に当たっては、現金によらず可能な限り銀行振込によるよう求めている。

(4) 検査の結果に対する所見

 本院は、JICAとPCIとの委託契約のうち、18年報告において再委託契約に係る経理処理や精算手続が事実と異なっていることを記述した11箇国13案件について、引き続き検査を実施した。その結果、PCI以外に、PCIと1案件2契約において共同企業体を構成していた応用地質においても、適切でない経理処理や精算手続を行っていたことが判明した。このように、PCI及び応用地質が現地で締結した再委託契約の精算に当たって適正を欠く事態があったことは遺憾である。
 また、本院は、JICA等とPCI以外のコンサルタントとの委託契約のうち、18年報告においてJICA等から再委託契約の精算の適否について特に問題がなかった旨の報告を受け、その内容を検証する必要があるとした71案件について、JICA等及びコンサルタントの調査内容を検査した。本院が今回検査した範囲では、現時点で返還を要すると認められる事態は見受けられなかったが、JICAがコンサルタントから提出を受けていた精算報告書の再委託契約に関する支払の内容が事実と相違していたものが見受けられ、コンサルタントから精算に関して事実に即した的確な報告を受ける必要があると認められる。
 JICA等においては、今回のPCIの不祥事にかんがみ、再委託契約を伴うコンサルタントとの委託契約について、ガイドライン等を改正するなどしているところであるが、コンサルタントの業務主任者等の精算報告に対する社内の審査体制と確実な支払方法とされている銀行送金による支払の状況にも留意して、適正な契約の履行の確保に努める必要があると認められる。
 外務省、JICA等においては、このような事態が生じることのないよう、引き続き不正等に対する取組を一層強化するとともに再発防止に努める必要がある。
 「開発コンサルタント、NPO等への委託契約の状況について」については、以上のとおり報告する。そして、本院としては、今後とも、ODAに関するコンサルタントとの委託契約について、特に再委託契約に関しては、JICA等が講じた再発防止策が有効に機能して、適正な契約の履行が確保されているか、引き続き検査していくこととする。

3 スマトラ沖地震の緊急援助の実施状況について

(1) 18年報告の概要

ア 18年報告の検査の対象、観点、着眼点及び方法

 18年報告の検査の対象、観点、着眼点及び方法は、次のとおりである。

(ア) 18年報告の検査の対象

 本院は、16年12月26日に発生したスマトラ沖地震及びインド洋津波被害(以下「津波等災害」という。)に際して、我が国が無償で供与することを決定した5億米ドルのうち、二国間供与分の緊急援助としてインドネシア共和国、モルディブ共和国、スリランカ民主社会主義共和国(以下「スリランカ共和国」という。)及びタイ王国の4箇国(以下「4箇国」という。)に供与した次の財政的支援2億5000万米ドル相当を対象として検査した。
〔1〕 JICAが4箇国に対して実施した緊急援助物資供与
〔2〕 外務省が4箇国のうちタイ王国を除く3箇国(以下「3箇国」という。)に対して実施した緊急無償資金協力事業及びノン・プロジェクト無償資金協力事業(以下「ノンプロ無償資金協力事業」という。)

(イ) 18年報告の検査の観点及び着眼点

 本院は、有効性等の観点から、次の点に着眼して検査した。
〔1〕 津波等災害に対する被災国及び国際機関からの要請に対し、我が国政府はどのようにして財政的支援の規模、方法を決定したか。
〔2〕 緊急援助物資供与及び緊急無償資金協力事業については、相手国においてどのように受け入れられ実施されているか、供与された物資や資金は、その趣旨に沿って使用されているか。
〔3〕 ノンプロ無償資金協力事業として供与された資金(以下「ノンプロ無償資金」という。)については、国別に、
a 相手国において援助がどのように受け入れられ実施されているか、被災地における需要の把握及び事業内容の決定がどのようになされているか、
b 供与された資金は交換公文、附属文書等に従って使用されているか、各案件については決定された事業内容に従って契約手続が執られ資金の支払が行われているか、契約手続や資金の支払が遅延しているものはないか、
c 援助の対象となった施設及び機材は、当初決定された事業内容に即し被災地においてその趣旨に沿って使用されているか。

(ウ) 18年報告の検査の方法

 本院は、外務本省及びJICA本部において会計実地検査を行い、我が国政府の対応状況、援助の制度的枠組み、実施手順等について説明を聴取したほか、在外公館及びJICAの在外事務所からの報告資料等に基づき説明を聴取した。また、職員を3箇国に派遣し、在外公館及びJICAの在外事務所において会計実地検査を行い、相手国の実施機関等から提出された報告書等の関係書類に基づき事業の実施状況について説明を聴取した。
 また、相手国の協力が得られた範囲で、事業の実施状況について相手国の実施機関等から説明を聴取した。さらに、一部の案件については、外務省の職員等の立会いの下に、事業の進ちょく状況を確認するなど実地に調査した。


イ 18年報告の検査の結果に対する所見

 18年報告の検査の結果に対する所見は、次のとおりである。

 我が国は、4箇国を始めとしてインド洋沿岸諸国が大規模な被害を受けた前例のない津波等災害に対して、相手国の要請及び緊急首脳会議における支援措置等の合意などを受けて当面の復旧・復興に必要となる支援額としての援助の規模を決定した。
 このうち4箇国に対する緊急援助物資供与については、会計検査院は、我が国が援助の要請に応じて供与した物資が、災害発生直後の17年1月5日までに4箇国に対してすべて引き渡されていたことを、関係書類等で確認した。そして、これらの物資は、被災地に届けられその趣旨に沿って使用されているとの説明を受けた。
 また、3箇国に対する緊急無償資金協力については、我が国が援助の要請に応じて供与した資金は、使途報告書によれば、スリランカ共和国では17年4月、モルディブ共和国では同年6月までにその趣旨に沿って使用されたとしていた。そして、インドネシア共和国については、18年1月に提出された使途報告書によれば、17年2月1日に我が国から供与された資金は全額支出済であるとしていたが、我が国以外から供与された資金も合わせた全体額について、津波等災害に関する援助のために使用されたとする報告となっており、我が国の供与した資金の具体的使途等を特定することができない状況となっていた。
 3箇国に対するノンプロ無償資金協力事業については、17年1月にインドネシア共和国に対しては146億円、モルディブ共和国に対しては20億円、スリランカ共和国に対しては80億円が供与されて以来、3箇国とも交換公文に定められた使用期限である12箇月以内に調達口座へ資金の移動がすべてなされ、我が国と各相手国との間における政府間協議会によって、分野の別に実施する案件の内容が決定されていた。
 そして、案件実施のために締結した契約の実績額について、資金供与額に対する契約締結済額の割合である契約締結率は、18年3月末現在、モルディブ共和国及びスリランカ共和国では90%以上であるのに比べて、インドネシア共和国では58.4%となっている。
 ノンプロ無償資金による事業の内容は、3箇国とも、施設の工事に係る契約が多く契約締結に先立って工事前の詳細設計等が必要であり時間を要すること、また契約締結後も工事の完了までに相応の工期を要し、工事の進ちょくに応じて資金を支払うことになっていることから、資金供与額に対する支払済額の割合である支払率は、インドネシア共和国では20.5%、モルディブ共和国では30.2%、スリランカ共和国では42.8%となっていた。
 また、3箇国とも、供与されたノンプロ無償資金はすべて政府口座から調達口座に移動されていたが、調達口座における残高状況をみると、ノンプロ無償資金が供与されて1年2箇月を経過した18年3月末において、インドネシア共和国では約116億円、モルディブ共和国では約14億円、スリランカ共和国では約46億円が残されていた。
 ノンプロ無償資金協力事業は、津波等災害に対する緊急援助として実施されたものであるため、相手国において、速やかに、必要な施設が建設され機材が調達されて、被災地等で災害復旧・復興のために使用されることが必要である。
 したがって、会計検査院としては、本件ノンプロ無償資金協力事業によって施設が建設され、機材が調達されて完了することとなる事業について、施設の建設や機材の調達のための資金の執行状況について引き続き検査を実施し、取りまとめが出来次第報告することとする。
 また、今回実施されたノンプロ無償資金協力事業は、従来のノンプロ無償資金協力事業と比べて大規模なものであり、対象となった事業のうちには、中長期的な事業効果が期待される施設の案件も含まれている。外務省においては、17年12月に中間評価を公表し、さらに、今後とも同様な評価を行うことにしている。
 そして、会計検査院としては、緊急援助の最終受益者である被災地の住民に援助が届き、また、中長期的な事業効果が発現されるかどうか、外務省が行う本件ノンプロ無償資金協力事業に対する評価を踏まえた上で、今後の利活用の状況について注視していく。
 なお、会計検査院は、我が国を含めた各国等からインドネシア共和国政府に供与された津波等災害の援助資金による復興再建事業に対して同国会計検査院が行う会計検査活動を支援するための国際会議等に参加し、協力を行ってきている。


(2) 19年次の検査における検査の対象、観点、着眼点及び方法

ア 検査の対象

 18年報告の検査の結果に対する所見で記述したとおり、外務省が3箇国に対して実施したノンプロ無償資金協力事業を対象として19年次においても引き続き検査した。

イ 検査の観点及び着眼点

 18年報告において記述したノンプロ無償資金協力事業の検査の観点及び着眼点と同様に、有効性等の観点から次の点に着眼して検査した。
〔1〕 相手国において援助がどのように受け入れられ実施されているか、被災地における需要の把握及び事業内容の決定がどのようになされているか。
〔2〕 供与された資金は交換公文、附属文書等に従って使用されているか、各案件については決定された事業内容に従って契約手続が執られ資金の支払が行われているか、契約手続や資金の支払が遅延しているものはないか。
〔3〕 援助の対象となった施設及び機材は、当初決定された事業内容に即し被災地においてその趣旨に沿って使用されているか。

ウ 検査の方法

 18年報告において記述した検査の方法と同様に、検査に当たっては、外務本省及びJICA本部において会計実地検査を行い、我が国政府の対応状況、援助の制度的枠組み、実施手順等について説明を聴取したほか、在外公館及びJICAの在外事務所からの報告資料等に基づき説明を聴取した。また、職員を3箇国に派遣し、在外公館及びJICAの在外事務所において会計実地検査を行い、相手国の実施機関等から提出された報告書等の関係書類に基づき事業の実施状況について説明を聴取した。
 また、相手国の協力が得られた範囲で、事業の実施状況について相手国の実施機関等から説明を聴取した。さらに、一部の案件については、外務省の職員等の立会いの下に、事業の進ちょく状況を確認するなど実地に調査した。
 本院は、19年次に実施した本件事案の検査において、在庁して関係書類の分析等の検査を行ったほか、44.3人日を要して、外務本省、JICA本部等に対する会計実地検査及び3箇国における現地調査を行った。

(3) 検査の結果

 ア 3箇国に対するノンプロ無償資金協力事業の概要

(ア) ノンプロ無償資金協力事業の制度的枠組み

 我が国は、今回の津波等災害の甚大さ及び緊急性にかんがみ、津波等災害による損害に対処するための事業の実施に迅速に貢献することを目的として、昭和62年度から行われてきたノンプロ無償資金協力事業の枠組みにより資金供与を実施することにした。そして、その際、迅速な調達を行うことを可能にするため、従来認められていなかった被援助国内における現地調達を認めることにした。また、ノンプロ無償資金協力事業は原則として物品の調達を対象としていたが、被災状況に応じた柔軟かつ的確な支援を行うことを可能にするため、施設の建設のほか輸送、医療活動など役務の調達を認めることにした。さらに、ノンプロ無償資金協力事業で調達した物品が無償で被災者等に配布されたり、公共事業に使われたりすることを想定して、調達した資機材を相手国内で売却するなどして得た対価を積み立てる見返り資金の積立義務を免除するなど枠組みに変更を加えた。

(イ) 事業の実施手順

 平成17年1月17日に閣議決定され、外務省が、同日に3箇国と取り交わした交換公文及び附属文書によれば、資金は、相手国政府が開設した日本国内の銀行口座(以下「政府口座」という。)に、17年3月末までに円貨で支払うこととなっている。
 そして、相手国政府は、この資金(この資金から発生した利息を含む。以下同じ。) による必要な資機材等の調達に当たっては、附属文書の規定によって、事業の円滑な実施と適切な調達の実施が確保できるように、調達代理機関を選定することとなっている。そして、相手国政府と調達代理機関とが締結した契約(以下「調達代理契約」という。)に基づき、調達代理機関が相手国政府に代わって資機材等の調達に必要な業務を行い、相手国政府は調達代理手数料を支払うこととなっている。
 ノンプロ無償資金協力事業は、特定の事業の実施を前提として資金を供与するものではなく、また、より迅速な援助を実施するとの観点から、一般プロジェクト無償資金協力事業で行われている事前調査としてのJICAによる基本設計調査は行われていない。しかし、今回のノンプロ無償資金協力事業では、多くの施設の設置や修復案件を対象にしていることから、JICAは、別途実施していた緊急開発調査等において、相手国政府の要請を受けて必要に応じ、ノンプロ無償資金協力事業で対象としている施設の設計等を取り込んで実施した。
 外務省は、調達代理機関として財団法人日本国際協力システム(Japan International Cooperation System。以下「JICS」という。)を推薦し、17年1月及び2月に3箇国はJICSと調達代理契約を締結し、このうち、インドネシア共和国は19年2月に変更契約を締結した。そして、JICSは、相手国政府から調達を希望する資機材等の品目の提示を受けた後、資機材等の代金の支払に必要な資金を政府口座から調達代理機関であるJICSの口座(以下「調達口座」という。)に受け入れ、調達口座から、業者に代金を支払うこととなっている。そして、JICSは、調達代理機関として行ったすべての支払や調達口座における資金の残高についての定期報告書、資金の使用がすべて終わった後の最終報告書を相手国政府と我が国外務省に提出することとなっている。また、外務省は、JICSから上記の報告書の提出を受けるほか、事業の進ちょく状況や契約の実績についても報告を受けることとなっている。これらを通じて、相手国政府及び外務省は、契約の履行や事業の進ちょく状況を確認することができることになっている。

(ウ) 援助の実施

 外務省は、3箇国から我が国に対して援助の要請を受けたとして、16年度予算一般会計の(項)経済協力費(目)政府開発援助経済開発等援助費から、246億円を17年1月19日に支出し、表2のとおり、同日に3箇国の政府口座に資金の供与を行った。

表2 ノンプロ無償資金協力事業による支援
(単位:億円)
国名
内訳
インドネシア共和国
モルディブ共和国
スリランカ共和国
供与額
146
20
80
246
送金完了時期
17年1月19日
17年1月19日
17年1月19日

イ ノンプロ無償資金協力事業の実施状況

(ア) 資金の執行状況

 19年3月末現在で案件実施のために締結した契約の契約締結率(資金供与額に対する契約締結済額の割合)、支払率(資金供与額に対する支払済額の割合)及び調達口座における残高等の推移についてみると表3のとおりとなっていた。

表3 3箇国の資金の執行状況の推移
国名
年月
政府口座から調達口座への受入金額(円)
調達口座での資金の執行状況
契約
支払
支払後の残高(無単位は円、$は米ドル)
件数
金額(円)
契約締結率(%)
金額(円)
支払率(%)
インドネシア共和国
18年3月末
14,600,059,325
108
8,526,959,242
58.4
2,990,672,270
20.5
11,609,387,055
19年3月末
14,600,059,325
169
13,106,386,978
89.8
9,156,431,271
62.7
5,443,628,054
モルディブ共和国
18年3月末
2,000,002,235
20
1,956,669,286
97.8
604,208,723
30.2
136,066,407
$10,504,212.91
邦貨換算額計
1,396,571,956
19年3月末
2,000,002,235
21
1,891,686,658
94.6
1,617,101,824
80.9
5,633,264
$3,182,777.54
邦貨換算額計
387,566,568
スリランカ共和国
18年3月末
8,000,009,316
86
7,506,743,290
93.8
3,423,649,226
42.8
4,576,364,911
19年3月末
8,000,009,316
96
7,778,198,010
97.2
6,201,120,890
77.5
1,798,893,247
注(1)
 契約件数にはJICSとの調達代理契約が含まれ、契約金額にはその概算額(上限額)が含まれる。
注(2)
 「政府口座から調達口座への受入金額」には我が国から供与された資金の他に、政府口座において発生し調達口座に入金された利息(インドネシア共和国59,325円、モルディブ共和国2,235円、スリランカ共和国9,316円)を含む。
注(3)
 モルディブ共和国及びスリランカ共和国における「支払後の残高」は、調達口座において発生した利息が含まれているため、「政府口座から調達口座への受入金額」から「支払」欄の金額を差し引いた金額とは一致しない。
注(4)
 インドネシア共和国及びモルディブ共和国については、一部の案件において締結された既存の契約が解除され、これに代わり新規に契約を締結するなどしているものがあり、モルディブ共和国では、18年3月末現在と比べ、契約締結率は低下している。
注(5)
 「契約締結率(%)」及び「支払率(%)」は小数点第2位以下を四捨五入している。

(イ) 案件に係る契約の進ちょく状況

 19年3月末現在で案件に係る契約の進ちょく状況の推移についてみると、表4のとおりとなっていた。

表4 3箇国の案件に係る契約進ちょく状況の推移
国名
年月
案件数
予定契約件数
契約進ちょくの段階
契約相手方の選定開始件数
契約締結の終了件数
契約に基づく給付の完了件数
インドネシア共和国
18年3月末
14
123
111
107
45
19年3月末
15
174
171
168
129
モルディブ共和国
18年3月末
3
19
19
19
8
19年3月末
3
20
20
20
15
スリランカ共和国
18年3月末
14
94
85
85
26
19年3月末
14
96
96
95
54

ウ 外務省におけるノンプロ無償資金協力事業の実施に関する評価等

 外務省は、18年報告で記述したように、津波等災害の発生から1年後の17年12月に、「スマトラ沖大地震及びインド洋津波被害2国間無償資金協力に係る中間評価報告書」を公表し、その報告書において、ノンプロ無償資金協力事業の案件の進ちょく状況、案件の妥当性、施設及び機材の活用度、案件完了後に期待される効果等についての中間評価を行った。外務省は、ノンプロ無償資金協力事業が完了していないことから、その後、事後評価を行っていないが、事業の完了後において事後評価を実施する予定であり、その具体的な時期、内容等について検討中であるとしている。
 本院としては、19年3月末現在、ノンプロ無償資金協力事業が実施中であり、外務省による事後評価が行われていないため、援助の対象となった施設及び機材は当初決定された事業内容に即し被災地においてその趣旨に沿って使用されているかについて検査する段階にないが、同事業が完了した後において、中長期的な事業効果が発現されるかどうか、外務省が実施する事後評価を踏まえて、今後の利活用の状況について検査していくこととする。

(4) 検査の結果に対する所見

ア 本院は、我が国が17年1月にインドネシア共和国に対して146億円、モルディブ共和国に対して20億円、スリランカ共和国に対して80億円の資金を供与したノンプロ無償資金協力事業の実施状況について、18年次に引き続き19年次においても、施設の建設や機材の調達のために供与された資金の執行状況を中心に、有効性等の観点から検査した。
 案件実施のために締結した契約についてみると、資金供与額に対する契約締結済額の割合である契約締結率は、19年3月末現在、モルディブ共和国及びスリランカ共和国では18年3月末現在と同様に90%以上となっており、インドネシア共和国では18年3月末現在の58.4%から89.8%に上昇していた。
 資金供与額に対する支払済額の割合である支払率は、19年3月末現在、インドネシア共和国では62.7%、モルディブ共和国では80.9%、スリランカ共和国では77.5%となっていた。これは、ノンプロ無償資金による事業の内容は、施設の工事に係る契約が多く、契約締結後も工事の完了までに相応の工期を要し、工事の進ちょくに応じて資金を支払うことになっているため、18年3月末現在に比べて工事が進ちょくし、3箇国の19年3月末現在の支払率が上昇したことによるものである。そして、調達口座における残高は、19年3月末において、インドネシア共和国では約54億円、モルディブ共和国では約4億円、スリランカ共和国では約18億円に減少していた。

イ ノンプロ無償資金協力事業の中には、契約が締結されたが給付が完了に至っていない案件や、一部の案件において締結された既存の契約が解除され、これに代わり新規に契約を締結するなどしているものも見受けられる。これらの案件については、外務省において、被災地における需要等に応じた的確な実施や給付の早期完了に向けて相手国政府と一層連携し、また、相手国政府に働きかけを継続して行うことが必要である。
 ノンプロ無償資金協力事業は、津波等災害に対する緊急援助として実施されたものであるため、相手国において、速やかに必要な施設が建設され機材が調達されて、これらの施設や機材が被災地等で災害復旧・復興のために使用されることが必要である。
 したがって、本院としては、本件ノンプロ無償資金協力事業によって施設が建設され、機材が調達されて完了することとなる事業に係る資金の執行状況について引き続き検査し、取りまとめが出来次第報告することとする。

 また、事業が更に進ちょくし、ノンプロ無償資金協力事業が完了することとなった場合には、中長期的な事業効果が期待される災害復興のための施設の案件も含まれていることなどから、外務省においては、事業効果の評価を的確に行うことが必要である。
 そして、本院としては、緊急援助の最終受益者である被災地の住民に援助が届き、また、中長期的な事業効果が発現されるかどうか、外務省が行う本件ノンプロ無償資金協力事業に対する評価を踏まえた上で、今後の利活用の状況について引き続き検査していくこととする。

 

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