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  • 平成19年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第10 農林水産省|
  • 平成18年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

農業災害補償制度(農作物共済)の運営について


農業災害補償制度(農作物共済)の運営について

(平成18年度決算検査報告 参照)

1 本院が表示した意見

(検査結果の概要)

 農林水産省は、農業災害補償法(昭和22年法律第185号)に基づき、農業者が不慮の事故によって受ける損失を補てんして農業経営の安定を図り、農業生産力の発展に資することを目的として、農業災害補償制度(前掲の「牛に係る家畜共済事業の運営において、農業共済組合連合会等が共済金算定の基礎となる基準単価を適切に設定できるようにすることにより、共済金が適切に算定されるよう改善させたもの」 参照)を運営している。
 この制度において、国は、農業共済組合又は市町村(以下「組合等」という。)と共済関係の存する組合員等の負担軽減を図るために、共済掛金の一部を共済掛金国庫負担金(以下「国庫負担金」という。)として負担することとしており、組合員等は組合等に共済掛金から国庫負担金を差し引いた額(以下「組合員等負担共済掛金」という。)を支払い、組合等は農業共済組合連合会(以下「連合会」という。)に保険料を支払い、連合会は国に再保険料を支払う仕組みとなっている。
 この制度のうち農作物共済事業及び農作物保険事業は、水稲、陸稲及び麦を対象としていて、組合等及び連合会は、これら農作物に気象上の原因による自然災害等の共済事故が発生した場合に、その損害の程度に応じて組合員等又は組合等に対して共済金又は保険金を支払うものとされている。そして、農作物共済事業及び農作物保険事業は、単年度でみると損害の程度に応じて剰余や不足が生ずることとなる。組合等及び連合会は農業災害補償法等により、不足の補てんに備えるために、毎事業年度の剰余を不足金てん補準備金及び特別積立金として積み立てなければならないこととなっていて、農林水産省は特別積立金について、損害防止活動や組合員等に対する無事戻し(注1) などといった不足の補てん以外の使途に充てることを認めている。
 そこで、有効性等の観点から、組合等が保有している共済掛金(以下「組合等手持掛金」という。)及び連合会が保有している保険料(以下「連合会手持保険料」という。)の状況等に着眼して検査したところ、次のような事態が見受けられた。
ア 組合等及び連合会が共済金又は保険金の支払財源としている組合等手持掛金及び連合会手持保険料は、共済金のうち組合等が負担する額及び保険金のうち連合会が負担する額の支払に使用されているものの、多額の剰余が生じていた。
イ 組合等及び連合会は、剰余を特別積立金として積み立て、無事戻しなどの支払に特別積立金を取り崩していて、この際に、将来不足の補てんなどに窮するおそれについては十分に検討していなかった。
 このような事態が生じているのは、農林水産省において、組合等手持掛金及び連合会手持保険料から生ずる多額の剰余の発生を防止するための処置を講じていないこと、組合等及び連合会に将来不足の補てんなどに窮するおそれがあるかを十分に検討させていないことによると認められた。

(検査結果により表示した意見)

 本院は、組合等及び連合会における農作物共済事業及び農作物保険事業の運営がより適切なものとなるよう、次のとおり、農林水産大臣に対して平成19年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
(ア) 国庫負担金及び組合員等負担共済掛金を原資とした組合等手持掛金及び連合会手持保険料から多額の剰余が生じないよう処置を講ずること
(イ) 上記(ア)の処置を講ずることに伴って、今後は剰余の発生が抑制されることになることから、組合等及び連合会が特別積立金を取り崩す際に、将来不足の補てんなどに窮するおそれがあるか否かをより一層検討することが肝要となり、このためその検討ができるよう具体的な方策を示して、連合会に対して指導すること、及び、都道府県に対して組合等を指導するよう助言すること

2 当局が講じた処置

 本院は、農林水産本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
 検査の結果、農林水産省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 組合等手持掛金及び連合会手持保険料から多額の剰余が生じている組合等及び連合会について、20年2月に、多額の剰余が生じないよう農作物基準共済掛金率(注2) を低減して告示を行った。
イ 20年度以降組合等及び連合会が特別積立金を取り崩す際に、将来不足の補てんなどに窮するおそれがあるか否かをより一層検討するよう19年11月に連合会及び都道府県に通知するとともに、20年3月にその具体的な方策を連合会及び都道府県に示して、連合会に対して指導するとともに、都道府県に対して組合等を指導するよう助言した。

 無事戻し  組合員等が、一定年間組合等から共済金の支払を受けないとき、又は支払を受けた共済金が一定の額に満たないときに、当該組合員等に対して組合員等負担共済掛金の一部に相当する金額を払い戻すこと

 農作物基準共済掛金率  農林水産大臣が過去一定年間(原則20年間)における被害率を基礎として定める率で、共済掛金率を組合等が共済規程等で定める際に下限となる率