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  • 平成20年9月

独立行政法人日本スポーツ振興センターが実施しているスポーツ振興くじに関する会計検査の結果について


3 販売システムの運用経費及び開発規模

(1) 第A期

ア 開発規模の決定方法等

(ア) スポーツ振興投票の実施に関するアンケート調査の実施

 文部科学省は、スポーツ振興投票に関する世論を把握し、スポーツ振興投票の円滑な導入に役立てることを目的として、財団法人日本開発構想研究所に委託して、10年7月から同年8月にかけて、スポーツ振興投票に関するアンケート調査を実施し、このアンケート調査の結果を基に、スポーツ振興投票の市場規模の推計を行わせていた。
 このアンケート調査の報告書によれば、調査の実施方法、回収状況等は次のとおりとなっていた。

調査地域 : 全国
調査対象 : 満19歳以上の男女個人
標本数  : 2,040
調査期間 : 平成10年7月23日〜8月2日
有効回収数(率) : 1,523(74.7%)

(イ) 購入意向の調査結果

a 「サッカーくじ」の購入意向

 「サッカーくじ」の購入意向については、全体の2.9%が「ぜひ買ってみたい」、15.9%が「機会があれば買ってみたい」、9.8%が「どちらともいえない」と回答していた。

b 「サッカーくじ」が導入された場合の購入意向

 回答者の購入意向をより真意に近く把握するために、アンケートの後半部分で再度同趣旨の質問を行ったところ、全体の3.9%が「購入する」、10.4%が「たぶん購入する」、14.9%が「半々である」と回答していた。

(ウ) 調査結果に基づく市場規模の推計

 上記のアンケート調査によって得られた結果を用いて、市場規模(需要者数、需要総額)を次のように推計していた。

a 需要者数

 需要者数の推計に当たっては、まず「サッカーくじ」が導入された場合の購入意向の調査結果を使用して需要意向を次の3タイプに分類していた。

タイプA:「購入する」と答えたもの
タイプB:「たぶん購入する」と答えたもの
タイプC:「半々である」と答えたもの

 次に、各タイプを男女別に分類し、さらに、それぞれの場合についてケース1「基礎的需要」(回答購入意向をそのまま反映したもの)とケース2「調整後需要」(意思表示に対する実際に購入する可能性(調整係数)を乗じたもの)を想定していた。
 この推計において使用された調整係数は次のとおりであった。

販売システムの運用経費及び開発規模の図1

 そして、以上のデータを基に、需要者数を表8のとおり推計していた。

表8 需要者数推計結果
(単位:万人)
ケース1
ケース2
男性
女性
合計
男性
女性
合計
タイプA
300
82
382
220
60
280
タイプB
700
328
1,028
514
242
756
タイプC
773
707
1,480
567
522
1,089
合計
1,773
1,117
2,890
1,301
824
2,125

b 年間購入単価

 年間購入単価の推計に当たっては、需要者数の推計で分類したタイプAからCと、「もし購入する場合、平均月どれほどの予算か」という質問に対するアンケート結果をクロス集計してタイプ別に算出した結果、年間購入単価は、次のとおりとなっていた。

タイプA:「購入する」と答えたもの21,600円
タイプB:「たぶん購入する」と答えたもの23,500円
タイプC:「半々である」と答えたもの14,800円

c 年間需要総額

 年間需要総額は、指定試合調整数及びタイプ別購入頻度の調査結果を用いて推計し、推計結果は表9のとおりとなっていた。

表9 年間需要総額推計結果
(単位:億円)
ケース1
ケース2
男性
女性
合計
男性
女性
合計
タイプA
378
103
481
277
76
353
タイプB
719
337
1,056
528
248
776
タイプC
333
305
638
244
225
469
合計
1,430
745
2,175
1,049
549
1,598

 以上の推計結果に基づき、報告書では、年間需要総額を1600億円から2200億円と推計していたが、報告書には推計数値の算出過程の記載がない部分があり、会計検査院は、この点について文部科学省に確認したが、同省からは、資料が存在しないため算出過程については不明である旨の返答があった。

(エ) スポーツ振興くじの発売総額の想定と開発規模の決定

 文部科学省は、これらの市場規模の推計結果等を基に、スポーツ振興くじの発売総額を2000億円と想定し、発売総額2000億円に対応可能な販売システムを開発することを前提に以下の試算を行った。
 スポーツ振興くじの売りさばきなどの業務は、当初から投票法等で銀行等に委託することを想定していたことから、年間実施回数を50回、1人1回当たりの購入額を1000円、販売箇所を全国で10,000箇所(発券端末機は故障時の代替用を含め13,000台製造)との前提で、広告代理店2社による積算を参考に初期投資額、年間固定費額及び発売総額2000億円の際の年間変動費率を計算し、銀行等に委託するに当たっての初期投資額や年間の運営費の額を試算した。
 その結果、初期投資額、年間固定費は表10-1・2のとおりとなり、端数処理してそれぞれ365億円、110億円とされた。また、年間変動費は表10-3のとおり190億円となり、変動費率はこれを2000億円で除した数値を基に9.55%とされた。

表10-1 初期投資額内訳
(単位:百万円)
内容
金額
〔1〕  情報システム経費
29,551
〔2〕  情報システムテスト経費
573
〔3〕  販売促進経費等
778
〔4〕  集中的広報経費等
4,200
小計
35,103
〔5〕  センター経費
1,406
合計
36,509
表10-2 年間固定費内訳
(単位:百万円)
内容
金額
〔1〕  情報システム経費
3,854
〔2〕  販売調査費
47
〔3〕  広報宣伝費
2,566
〔4〕  センター経費
4,905
合計
11,374
表10-3 年間変動費内訳
(単位:百万円)
内容
金額
〔1〕  販売手数料
10,500
〔2〕  払戻手数料
630
〔3〕  広報宣伝費
2,100
〔4〕  消耗品費
2,698
〔5〕  通信費
875
〔6〕  配送、保管費
184
〔7〕  諸経費
2,100
合計
19,088

(オ) 開発規模の妥当性

 前記のとおり、文部科学省はスポーツ振興投票の年間実施回数を50回として発売総額を2000億円と想定し、発売総額2000億円に対応可能な販売システムを開発するための初期投資額(センター経費を除く。)を351億円と積算していた。
 しかし、JSALは、販売店数、1回当たりの販売限度額等を考慮して検討した結果、13試合3通りのスポーツ振興投票のみでは、年間実施回数は30回程度となるため、2000億円を売り上げるのは実質的に不可能であると判断した。このため、運営協議会の幹事会において、文部科学省の想定を大幅に下回る発売総額1200億円に対応可能な販売システムを開発することにした。
 そして、りそな銀行は、販売システムの中核となるセンターシステムについては、新たなくじが発売されても、システムの変更が実施しやすく、販売量の増加にも対応できるシステムを開発し、システムの信頼性を重視して高性能なサーバーを導入したとしている。
 センターシステムのアプリケーションを開発するために必要なシステム・エンジニア、プログラマーなどの工数は、IBMが独自に算出したものであるが、IBMは工数を算出する方法については公表しておらず、センターではこれを検証できなかった。

イ 販売システムの運用経費

(ア) 販売システム構築のための初期投資額の調達方法及び投資額

 センターは、スポーツ振興投票業務を実施するために必要な施設、設備等(初期投資)の調達財源を有していなかった。このため、委託を受けた銀行等に初期投資額を負担させ、毎事業年度支払う委託料に、初期投資額の償還分を含めて支払うこととした。
 りそな銀行からセンターに提出された第A期の初期投資額の内訳は、表11のとおりである。

表11 第A期の初期投資額内訳
(単位:百万円)
内容
金額
JSALの委託先
〔1〕  販売システム関連費
27,191
 
 
センターシステム
7,334
IBM
デビットくじ決済システムほか
2,096
JTBほか
新くじ関連費
1,229
IBMほか
端末関連費
16,531
株式会社東芝ほか
〔2〕  広告宣伝業務費
3,949
株式会社博報堂ほか
〔3〕  りそな銀行及びJSAL経費
1,920
〔4〕  その他
2,333
合計
35,395
(注)
 合計金額が353億円となっているが、りそな銀行との契約により初期投資の総額は351億円とされた。

(イ) 初期投資額の妥当性

 センターは、販売システムの価額が高額で、初期投資額の大宗を占めていたことから、13年8月、第三者のシステム開発会社に依頼して全国販売開始までに必要な販売システムに係る費用を積算させていた。その結果、りそな銀行の申告額(187億円)が上記会社の積算額(209億円)より低額となっていたことから、りそな銀行の申告額は妥当であると判断したとしている。
 一方、全国販売開始後に必要とされた費用でも、センターとりそな銀行の協議により初期投資額に含まれている費用があるが、最終的にセンターが初期投資額として承認した額のうち、販売システムに係る額は271億円であり、文部科学省が積算したシステム関連費用の初期投資額295億円より低額となっている。ただし、文部科学省の積算は発売総額を2000億円と想定したものであり、実際の販売システムは発売総額を1200億円と想定したものであることから、初期投資額の積算額と実績額は、直接に比較できる性質の数字ではない。
 また、表11の初期投資額には、次に掲げる費用も含まれていた。

a SLT(専用端末機)の付加機能に係る開発費

 SLT(Sports Lottery Terminal)は、スポーツ振興くじの販売専用端末機であるが、JTBは、販売店で通常扱っているスポーツ振興くじ以外の商品についても、SLTによってデビットカードを使用した決済ができる「店頭棚商品システム」を1億4753万円をかけて開発していた。そして、センターは、この開発費を前記の初期投資額に含めることを承認していた。

b MMS(多機能端末機)の旅行商品券等の「コンテンツ販売システム」の開発費

 MMS(Multi Media Station)は、スポーツ振興くじの販売のほかスポーツ振興くじ以外の商品の販売も可能な多機能端末機である。そして、JTBは同社の扱う旅行商品券等の販売のための「コンテンツ販売システム」を開発していた。そして、センターは、この開発費1億5271万円を、前記の初期投資額に含めることを承認していた。
 初期投資額に含める費用については、センターとりそな銀行との間で結ばれた合意書により、両者間の協議で決定することとなっており、りそな銀行から報告があった費用について両者で協議の結果、センターが承認していた。
 センターは、SLTの「店頭棚商品システム」及びMMSの「コンテンツ販売システム」は、スポーツ振興投票の普及を図るため、販売店での限られたスペースにSLT及びMMSをオフシーズンも含め設置してもらうために必要と判断してその開発費を初期投資額に含めたとしている。
 しかし、スポーツ振興くじの販売とは直接の関係がない販売システムなどの開発費については、端末機普及のために必要な経費負担であったという面を否定できないとしても、同システムの受益者との間で適正な負担割合についての交渉等をすべきであったと認められ、センターが、これらの開発費の全額を初期投資額に含めることを承認していたことは適切とは認められない。

(ウ) 運営費等の年度別実績額

 第A期の運営費等の年度別実績額は表12のとおりとなっており、売上金額に対する運営費の比率は、本格的な発売開始事業年度の13事業年度こそ36.3%にとどまっていたものの、16事業年度には91.1%まで悪化している。ただし、17事業年度は、第B期に向けての費用が前倒しで発生しているため単純比較はできない。

表12 第A期の運営費等の年度別実績額
(単位:百万円、%)
事業年度
平成12
13
14
15
16
17
運営費
1,918
23,329
20,485
17,357
14,305
14,781
 
販売システムの運用経費
委託料(対りそな銀行)
1,623
22,637
19,743
16,798
13,798
11,505
直営化に伴う費用
2,748
情報システム関連費
468
販売払戻手数料
136
広告宣伝費
757
経営管理業務費
844
減価償却費
108
その他
434
その他
295
693
743
559
506
527
売上金額
3,063
64,266
36,058
19,877
15,694
14,905
売上金額に対する比率
62.6
36.3
56.8
87.3
91.1
99.1
(注)
 りそな銀行に対する委託料の契約が変更されるなどしたため(参照) 、運営費は、算式 による金額とはなっていない。

(エ) 販売システムの運用経費と運営費の限度額との関係

 運営費の限度額は、旧センター法第25条の2及びセンター法第19条で次のように定められている(旧センター法第25条の2とセンター法第19条は全く同じ内容のため、センター法第19条に基づき記載する。)。

第19条 次に掲げる業務に係る運営費の金額は、スポーツ振興投票券の発売金額に応じて当該発売金額の100分の15を超えない範囲内において文部科学省令で定める金額(スポーツ振興投票券の発売金額が文部科学省令で定める金額に達しない場合にあっては、文部科学省令で定める期間内に限り、別に文部科学省令で定める金額)を超えてはならない。
(1) スポーツ振興投票券の発売
(2) 投票法第十三条の払戻金の交付
(3) 投票法第十七条第三項の返還金の交付
(4) 前三号に掲げる業務に附帯する業務

 センター法第19条の「100分の15を超えない範囲内において文部科学省令で定める金額」は、センター省令第29条で定められているが、第A期においては、発売総額が過少であったため、18年9月改正前のセンター省令附則第3条に基づき文部科学大臣の告示によって運営費の限度額が定められることとなった。その結果、13事業年度にはスポーツ振興くじの発売総額の9.55%に相当する金額に183億円を加えた金額、14事業年度から16事業年度までは発売総額の53%の金額、17事業年度は発売総額の50%の金額が運営費の限度額と定められた。
 一方、りそな銀行との基本契約書には、初期投資額を委託料に含めて支払う旨の記載があり、それに従って各事業年度の委託料契約書等に委託料の算式が定められていたが、13事業年度以降は結果的に発売総額が過少となったため当初の委託料契約を変更して最終的に表13のように決められていた。
 特に、15事業年度以降の委託料については、発売総額が14事業年度以降減少しており、委託料の支払に支障が出ていたことから、センターは、15年4月にりそな銀行との間で、15事業年度の委託料の減額を14億円を目途とする旨の覚書を交わしていた。そして、同年9月に、15事業年度は、JSALの人員の大幅な削減や、システム、保守、販売促進等に係る経費の削減により15億円、16事業年度以降は、それに加えて、全国規模のテレビコマーシャルの中止やタレントを起用するコマーシャルの中止等により最低でも40億円の経費の削減を求めていた。その後、センターは、16年11月にもりそな銀行との間で、16事業年度の委託料の減額を40億円を目途とする旨の覚書を交わしていた。

表13 りそな銀行との委託料契約書等による委託料の算式
事業年度
委託料の算定方法
平成12
売上金額の総額×53%
13
発売総額×9.55%+183億円-20億円+2億円
14
発売総額×9.55%+183億円-20億円
15〜17
発売総額×9.55%+183億円-20億円-(交渉による減額)
注(1)
 委託料の算定方法は、発売総額等により異なっているが、上記の算定方法は、当該事業年度の発売総額等の場合の算定方法である。また、平成15事業年度〜17事業年度の交渉による減額は
注(2)
 平成13事業年度の2億円は、新くじの開発に伴う情報システムの外部設計に係る委託料である。

 この算定方法による14事業年度から17事業年度までの間の委託料の額は、表14のとおり、いずれも運営費の限度額を超えていた。

表14 りそな銀行との契約に基づく委託料と運営費の限度額
(単位:百万円)
項目\事業年度
平成12
13
14
15
16
17
運営費の限度額(A)
1,623
24,437
19,110
10,534
8,318
7,452
委託料(B)
1,623
22,637
19,743
16,798
13,798
11,505
(A)-(B)
1,800
▲632
▲6,263
▲5,480
▲4,052

 このことについて、文部科学省は、センター法第19条及びセンター省令第29条は、各事業年度において、スポーツ振興投票業務について、当該事業年度の発売総額から支出可能な現金会計上の運営費の上限額を定めているだけのものであるとして、現金支出が運営費の限度額を超えなければ法令上の問題はないとしている。

(2) 第B期

ア 開発規模

(ア) スポーツ振興くじの発売総額の想定と開発規模の決定

 第B期においては、前記のとおり、これまでの委託方式から、センターが直接運営する方式に改めることとした。
 第A期の販売システムは、JSALがリース契約により調達したものであったため、センターには所有権がなく、また、耐用年数も経過していた。さらに、センターは、このシステムで新たなくじを発売するためには、相当の時間と費用が必要であると判断した。
 このことから、センターは、第A期のシステムを引き継がずに、多様なくじに対応できる新たなシステムを開発することとした。そして、システムの設計に当たっては、既往年度の最大の発売総額が642億円(13事業年度)であったことから、第B期の想定発売総額を600億円とした。
 なお、第A期中にJSALに蓄積されたデータなどで、第B期のスポーツ振興投票の運営に当たって必要なものについては、公認会計士の算定評価を基に3150万円で譲り受けた。

(イ) 開発規模の妥当性

 前記のとおり、第A期と比較すると、第B期の想定発売総額は、大幅な見直しが行われており、販売システムの開発規模もそれに伴った見直しが行われた。
 ソフトウェアの開発規模の見積りは、一般的に、ファンクションポイント法(情報システムが提供する機能数を一定の方法で定量化し、見積り尺度とする方法)等により行われているが、センターは、システム開発の契約を締結する前の段階では、開発規模についてファンクションポイント法等による見積りを行っていなかった。そして、センターは、システム開発の契約を締結した後において、日本ユニシスほかシステム開発に関連する各社が算出した見積りについて、センターが経営管理業務を委託している経営管理コンサルタント(日本ユニシスの社員)と打合せの上、開発規模の妥当性についての検証を行ったとしているにすぎない状況であった。

イ 販売システムの運用経費

(ア) 販売システム構築のための初期投資額の調達方法及び投資額

 第B期においても、第A期と同様にスポーツ振興投票事業に係る予算措置が講じられていなかったことから、第B期の初期投資額についても、第B期開始後の売上げから支払うこととし、情報処理システム等一式はリース契約により調達し、それ以外の初期投資額の支払についても基本的に第B期の売上げから支払うこととした。
 そして、前記のとおり、直営化に当たり、経営管理業務及び情報処理システム開発運用管理業務については、日本ユニシスに委託することとし、17年2月に基本契約、同年4月以降に情報処理システム開発基本契約等を締結して、同社により情報処理システムの開発が実施された。
 上記日本ユニシスとの契約を含めた初期投資額は127億円となっており、その内訳は表15のとおりである。

表15 第B期の初期投資額内訳
(単位:百万円)
内容
金額
委託先
〔1〕  情報システム及び発券端末機のリース総額
10,563
日本ユニシス
〔2〕  経営管理業務費
844
日本ユニシス
〔3〕  広告宣伝業務費
718
株式会社アサツーディ・ケイ
〔4〕  コンビニエンスストア用のくじ販売システムの開発等
354
JTB
〔5〕  その他
292
合計
12,773
注(1)
 情報システム及び発券端末機のリース総額には、情報システム開発費、センターシステム機器及び端末機器並びにプログラム使用料及び導入サービス費用が含まれている。
注(2)
 経営管理業務費及び広告宣伝業務費は平成18年3月末までに発生したものである。

(イ) 初期投資額の妥当性

a 初期投資額

 初期投資額に関するセンターと日本ユニシスとの間の契約書等によると、契約金額は、次のように決定されていた。

〔1〕  情報処理システム開発業務については、各業務に応じた技術水準を有するシステム・エンジニア等別の人件費単価(円/人月)に必要な工数(人月)を乗じた額の合計額をもって契約額とする。
〔2〕  センターシステム機器及び端末機器並びにプログラム使用料については、機器及びプログラムごとに数量及び単価が日本ユニシスから示され、それぞれの数量と単価を乗じた額の合計額をもって契約額としていた。また、機器やプログラムの導入サービスについては、導入サービスの内容別にサービス料金の総額が示され、その合計額をもって契約額とする。
〔3〕  経営管理業務については、各業務に応じた技術水準を有するコンサルタント等別の人件費単価(円/人月)に必要な工数(人月)を乗じた額の合計額に諸経費の額を加えた額をもって契約額とする。

b 初期投資額の妥当性の検証

 センターは、上記について、事前に見積りなどの提示を受け、個別に検証したり、日本ユニシスと必要に応じて適宜打合せを行ったりして、提出された企画書の内容が実現されていることをもって初期投資額の妥当性を確認したとしている。しかし、センターは、日本ユニシスとの契約の中で基礎資料等により実績等を確認・検証する規定を定めておらず、作業日報や賃金台帳等の実働時間、人件費単価、機器の単価等を把握できる資料の提出を受けて確認しているとは認められなかった。

(ウ) 運営費の年度別実績額

 第B期においては、センター自らが運営を行う直営方式に改めたため、第A期に比べて機動的になり、費用対収益を重視する予算管理も、直接行うことができるようになった。また、初期投資額が127億円と第A期の約3分の1になったことで、各事業年度の固定費の負担も軽減された。
 このような理由から、第B期の運営費の額は表16のとおり18事業年度89億円、19事業年度126億円と第A期と比べて大幅に減少し、第A期には90%を超えたこともある売上金額に対する運営費の比率も、19事業年度には、売上金額が急増したことによる要因もあるものの、20%を下回っている。

表16 第B期の運営費等の年度別実績額
(単位:百万円、%)
事業年度
平成18
19
運営費
8,972
12,683
 
直営化に伴う費用
(販売システムの運営費)
8,075
11,887
 
情報システム関連費
2,226
2,342
販売払戻手数料
772
3,601
広告宣伝費
2,204
2,113
経営管理業務費
664
926
減価償却費
1,319
1,475
その他
888
1,428
その他
897
796
売上金額
13,470
63,711
売上金額に対する比率
66.6
19.9

 なお、第B期における固定費、変動費率及び損益分岐点を運営費の実績から算定すると、18事業年度は86億円、9.49%、213億円、19事業年度は79億円、7.93%、187億円となり、第A期に比べて低下している。

(エ) システム障害の発生原因及び講じた対策

 19年5月、「BIG」のキャリーオーバーが10億円を超え、最高額である6億円が当たる可能性が高くなってきたことが報道されたことなどから、同月12日の第277回の販売最終日に一時的に購入申込みが集中してアクセスエラーが発生し、一部の販売店で販売システムが停止する事態となった。
 そして、翌週14日の第278回のスポーツ振興くじの販売に当たり、前回以上に申込みが集中したことにより販売システムが不安定な状態となり販売終了時間前に販売を中止し、翌15日も販売を停止した。
 また、コンビニエンスストアについては、6月4日まで販売を中止したため、第279回の販売が全くできない事態となった。
 障害発生の原因は、ゲートウェイ・サーバーの処理能力不足及びデータベース・サーバーの運用面の問題と考えられたため、センター及び日本ユニシスはゲートウェイ・サーバーのハードウェアを上位機種に交換しデータベース・サーバーの設定を変更する対策を講じた。この結果、それ以降システム障害は発生していない。

(3) 第A期と第B期の比較

 第A期においては、想定発売総額を2000億円としたものの、売上げが低迷し、最も多かった事業年度でも発売総額は642億円にとどまった。一方、多額の初期投資に伴い、発売総額に関係なく多額の固定費負担が発生することにより、累積欠損金が増大した。
 第B期においては、想定発売総額を600億円として、販売システムを開発したことなどにより、初期投資額が第A期の3分の1程度で済み、また、販売システムの開発に当たり、くじの種類の多様化等を想定してそれに対応しやすいシステムを開発したため、第A期と比べ固定費負担が減少した。
 そして、第B期の初年度である18事業年度は対前事業年度比で売上金額が減少したものの、19事業年度においては、新たなくじ「BIG」の投入の効果等により売上金額が637億円となった。
 したがって、これまでのところ、センターが18年9月に策定した収支計画(案)(参照) は達成されているが、これは第B期になって固定費負担が減少したこと及び19事業年度に売上げが増加したことという2つの要因によるものである。
 なお、想定事業規模、初期投資額及び販売システムの運用経費の年間平均額について、第A期と第B期とを比較すると、表17のとおりである。

表17 第A期と第B期の比較
区分
第A期
第B期
想定事業規模
 
 
 
(販売店数)
10,000箇所
18,000箇所
(発売総額)
2,000億円
600億円
初期投資額
351億円
127億円
販売システムの運用経費の年間平均額
166億円
(りそな銀行への支払委託料)
97億円
(直営化に伴い発生した費用)
注(1)
 前記のとおり、第A期の想定事業規模(発売総額)について、システム開発等の初期投資は1200億円を想定して行われている。
注(2)
 第B期の想定事業規模(販売店数)については、インターネット販売を除く。
注(3)
 販売システムの運用経費の年間平均額は、発売期間に必要とした販売システムの運用経費の合計額を発売期間で除して会計検査院が算出した額である。

 また、センターがスポーツ振興くじの発売を開始した12事業年度から19事業年度までの、売上金額、払戻金額、運営費、助成準備金繰入額、国庫納付金等を一表にまとめると表18のとおりとなる。

表18 スポーツ振興投票の実績推移
(単位:百万円)
項目\事業年度
平成
12
13
14
15
16
17
18
19
売上金額(A)
3,063
64,266
36,058
19,877
15,694
14,905
13,470
63,711
払戻金額(B)
1,439
30,205
16,947
9,342
7,376
7,452
6,735
31,855
時効金等収入等(C)
79
1,606
331
147
192
420
497
くじ収入(D)=(A)-(B)+(C)
1,623
34,141
20,717
10,866
8,465
7,645
7,156
32,353
運営費(E)
1,918
23,329
20,485
17,357
14,305
14,781
8,972
12,683
 
委託料(対りそな銀行)
1,623
22,637
19,743
16,798
13,798
11,505
直営化に伴う費用
2,748
8,075
11,887
その他
295
692
742
559
506
527
897
796
くじ収入-運営費
(F)=(D)-(E)
▲295
10,811
231
▲6,490
▲5,839
▲7,135
▲1,816
19,669
助成等(G)
10,651
2,423
331
147
134
145
2,183
 
助成準備金繰入額
7,100
1,615
220
98
89
96
1,455
国庫納付金
3,550
807
110
49
44
48
727
財務費用(H)
4
5
2
0
106
496
1,185
624
臨時損益等(I)
0
▲0
2
25
▲0
4
投票勘定損益
(F)-(G)-(H)+(I)
▲298
154
▲2,195
▲6,819
▲6,068
▲7,766
▲3,147
16,866
繰越欠損金
433
278
2,474
9,436
15,504
29,270
26,417
9,551
(注)
 平成14、15両事業年度は、委託料の未払額を委託料に含めており、17事業年度は18事業年度に減額した60億円を委託料から控除しているため、センターの財務諸表とは一致しない部分がある。
 また、繰越欠損金は前事業年度の繰越欠損金に当事業年度の投票勘定損益を加減した額となるが、15事業年度は、更に独立行政法人化に伴う繰越欠損金の増加1億4215万円が加算されている。