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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成21年9月

国土交通省の地方整備局等における庁費等の予算執行に関する会計検査の結果について


第3 検査の結果に対する所見

(1) 検査の結果の概要

 会計検査院は、国土交通省の地方整備局等における庁費等の予算の執行について、参議院から検査の要請を受けて検査を実施した。
 検査に当たっては、国会等の議論や20年次に会計検査院が国土交通大臣に対し行った意見表示を踏まえて、特に車両管理業務の契約の状況に留意して検査するとともに、一般会計と特別会計の計上区分及び執行の状況については、一般会計から人件費を支出している厚生労働本省職員に対して労働特会からタクシー使用金額が支出されていたことなどが国会で議論され今回の要請となった経緯を踏まえて、厚生労働省についても併せて検査することとした。
 検査においては、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から要請の事項、すなわち契約方法、契約手続などの状況、契約内容、契約金額などの状況、契約相手方の状況、一般会計と特別会計における計上区分及び執行の状況に着眼して検査を実施した。
 検査は、国土交通本省のほか8地方整備局、北海道開発局、10地方運輸局等、2地方航空局、4航空交通管制部、さらに、地方整備局及び北海道開発局管内の108事務所等を対象とした。また、厚生労働省は、厚生労働本省のほか47労働局を対象とした。
 検査の結果は次のとおりである。

ア 契約方法、契約手続などの状況

(ア) 18年度以降、20年度(12月まで)までの対象契約全体でみると、企画競争等を経ない随意契約、指名競争契約の件数割合は低下する一方、一般競争契約の件数割合は上昇しており、国土交通省の随意契約の見直しによる効果が見受けられた。しかし、一般競争契約及び企画随契の応札(応募)者数は、1者応札(応募)の割合が40%以上を占め、一般競争契約においては増加傾向が見受けられる(2か所参照    )。
(イ) 一般競争契約の入札参加資格要件を必要以上に限定していて応札者の範囲が制限される可能性があると認められるもの、競争入札への参加や企画競争への提案書の提出の判断の決定等の資料となる説明書、仕様書等に十分業務内容等が記載されていないものなどが見受けられた(参照 )。

イ 契約内容、契約金額などの状況

(ア) 年間では多額となる事務用消耗品の購入を個別に少額随契等により行っているものが見受けられた(参照 )。
(イ) 契約内容の発注単位の設定について、経済性、競争性の点で集約化を検討すべきものが見受けられた(参照 )。
(ウ) 契約した業務範囲の設定が適切でないものや業務の実施方法について検討すべきものが見受けられた。また、広報誌の調達等について、多くの種類の広報誌を多数調達し、配布している状況が見受けられたが、20年度からその多くが調達を取りやめるなどしていた(参照 )。
(エ) 経済性等を考慮した仕様の設定を検討すべきもの、電話の契約料金について経済的な料金プランの利用を検討すべきものが見受けられた(参照 )。
(オ) 予定価格の算定について、参考見積りの徴取先を既契約者等に限定していたもの、予定数量の算出を誤ったものなどが見受けられた(参照 )。

ウ 契約相手方の状況

(ア) 「所管公益法人」が契約相手方となった契約は、企画競争等を経ない随意契約から企画随契や一般競争契約へと移行してきているが、応札(応募)者数については、いずれも「民間企業」が契約相手方となった契約と比較して、1者応札又は1者応募となっている割合が多く、落札率も高くなっていた(参照 )。
(イ) 指名競争契約及び企画競争等を経ない随意契約について、その適用理由に疑問があり、一般競争契約への移行を検討すべきものがあった(参照 )。
(ウ) 車両管理業務は、その多くが少数の応札者による指名競争契約となっており、また、一般競争契約についても、入札参加資格要件において公的機関との契約実績等を求めているものが見受けられた。これらについては、20年7月に通知を発し、8月以降に締結する契約からすべて入札参加資格要件に契約実績を求めない一般競争契約とすることとされ、通知前は15%程度あった1者応札がなくなり、平均応札者数が増加している。
  また、談合が行われていた地方整備局(港湾空港関係を除く。)及び北海道開発局について、談合認定期間内とそれ以降の契約の応札者数及び落札率をみると、談合認定期間以降の契約は平均応札者数が増加し、平均落札率が低下していた(参照 )。

エ 一般会計と特別会計における計上区分及び執行の状況

(ア) 一般会計と特別会計における計上割合は、地方整備局及び北海道開発局においては、庁費的経費の支払が多くなっていることから特別会計の計上割合が高くなっており、組織別では、本局よりも事務所等においてその計上割合が高くなっていた。また、文書事務経費については、一般会計からの支払がほとんどなく特別会計からの支払がほとんどとなっているものや会計別の計上割合等が同様の組織でも大きく異なっていて、庁費的経費の支払が真に工事等に必要なものだけに限定されているのか確認できないものも見受けられた(参照 )。
(イ) タクシー使用金額の計上区分については、職員の所属会計と異なる会計から支出している状況となっていたが、本省においては20年6月以降タクシー乗車券の使用を取りやめるなどしていた(参照 )。
(ウ) 前渡資金の交付に当たり、手持ちすることができる対象経費とその限度額の取扱いが適切でなく、限度額を上回る金額の交付を受けていたもの、また、各年度末に相当額の金券類が保有されているものがあった(参照 )。
(エ)厚生労働省のタクシー使用金額及び超過勤務手当については、これらの支出会計と職員の所属会計とが異なる状況となっていたが、21年4月までに、タクシー使用金額及び超過勤務手当は、当該職員の所属会計から支出するよう方針を変更している。一方、労働局の共通経費については、計上区分が合理的とは認められない事態が見受けられた(参照 )。

(2) 所見

 昨今の厳しい財政状況の下で、我が国の行政は、改めて納税者の視点に立って無駄を省き、効率化を進めることが求められている。
 国土交通省においても、16年度に「国土交通省行政効率化推進計画」を、18年度に「随意契約見直し計画」を定めるなど、効率化等を図ることとしてきたが、19年度中の道路整備特別会計における暫定税率の延長などに関連して、改めて道路関係業務の執行のあり方、ひいては特別会計の支出について、国会をはじめ各方面で様々な議論がなされた。
 庁費等については、行政コストの中でも行政の基本的な活動の基礎となる継続的な経費であることから、当該コストをより経済的、効率的なものとすることは行政の効率化を進めていく上で最も基本的な課題であるが、継続的な支出であるが故に、安易に前例を踏襲しがちで、新たな視点からの提案を内部から提起しにくい側面もある。国土交通省においては、「道路関係業務の執行のあり方改革本部」の最終報告書等に基づいて、行政全般について各種の方策を実施している。また、21年度歳出予算では、真に工事等に関連した執行となるよう、庁費的経費から事務費関係の庁費等へ予算の組換えを行っているが、更に次のような点に留意することにより、経済的、効率的な庁費等の執行に努める必要がある。
ア 今後とも契約方式の見直しに努め、一般競争契約の実施に当たっては、公正性、競争性等の確保に配慮して、必要以上に応札者の範囲を制限しないように入札参加資格要件を定めるとともに、競争入札への参加や企画競争への提案書の提出を希望する者に業務内容等について正確な情報を提供できるよう努める。
イ 年間の使用量の多い事務用消耗品の購入に当たっては、個別に少額随契を行うことなく、単価契約による一括化を行うことにより、一般競争契約への移行に努める。契約発注単位の設定では、集約化により経済的かつ効率的な発注となるよう十分配慮する。業務の実施に当たっては、業務範囲の設定や業務の実施方法について財政状況等も考慮して継続の可否の検討や内容の見直し等に努める。また、購入品の仕様を経済的なものとするとともに、電話利用契約のうち、固定電話発携帯電話着の通話についても経済的な料金プランの利用に努める。積算基準等が整備されておらず参考見積りを基に予定価格を決定する場合は、市場価格を適切に反映した予定価格とするため、参考見積りの徴取先は原則として複数とし、特定の相手方に偏らないように配慮する。
ウ 企画競争等を経ない随意契約から一般競争契約や企画随契等へ移行した契約についても、所管公益法人との契約に多く見られるような応札(応募)者がこれまでの契約相手方のみの契約とならないよう、入札参加資格要件の設定、契約内容の明示や発注単位の設定等、契約内容を検討するなどして、競争性の確保に努める。また、一般競争契約以外の契約を適用する場合、契約相手方の決定に当たっては、特に客観性の確保に配慮して合理的なものとなるように努める。
エ 談合を行っていたとされた車両管理業務については、国土交通省では、20年8月以降に入札手続を開始する契約から違約金条項を付すこととしている。談合を行っていたとされた契約は、20年7月以前の契約であり、早急に談合等により生じた損害額の調査を行い、損害賠償請求権に係る時効が3年であることなども念頭に置きつつ、早期の損害回復に努める。さらに、入札談合等関与行為が排除されたことを確保するために必要な改善措置を速やかに講ずる。
オ 庁費等の支払に当たっては、特別会計の設置目的、事業に沿った合理的な計上区分を行い、工事等との関連性等について第三者の理解が得やすい明確な内容とするよう努める。前渡資金の交付に当たっては、定められた経費が手持ち限度額の範囲で交付されるよう資金管理を徹底するとともに、金券類については使用状況等を十分勘案した上で適切な購入を行い、多額の金額に相当する金券類を常時保有することのないよう適切な管理を行う。
 また、厚生労働省については、一般会計と労働特会間における労働局の共通経費の計上区分を合理的なものとなるよう、両会計の適切な負担について検討する必要がある。

 以上のとおり報告する。
  会計検査院としては、今後とも、庁費等の予算執行において、契約の公正性、競争性及び透明性の確保に向けた取組が着実に行われ、庁費等の支出が適正なものとなっているかなどについて、多角的な観点から引き続き検査していくこととする。