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科学研究費補助金の経理が不当と認められるもの


(840)—(854)科学研究費補助金の経理が不当と認められるもの

科目 (項)科学研究費補助事業費
部局等 独立行政法人日本学術振興会(平成15年9月30日以前は日本学術振興会)
補助の根拠 独立行政法人日本学術振興会法(平成14年法律第159号)(平成15年9月30日以前は日本学術振興会法(昭和42年法律第123号))
補助事業者
(事業主体)
大学長1、研究代表者15、計16事業主体
補助事業 科学研究費補助
補助事業の概要 我が国の学術を振興するために、あらゆる分野における優れた独創的・先駆的な学術研究を行うもの
上記に対する国庫補助金交付額の合計 110,030,000円(平成14年度〜19年度)
不当と認める国庫補助金交付額  38,977,323円(平成14年度〜19年度)

1 補助金の概要

(1) 科学研究費補助金の概要

 独立行政法人日本学術振興会(平成15年9月30日以前は日本学術振興会。以下「振興会」という。)は、独立行政法人日本学術振興会法(平成14年法律第159号。15年9月30日以前は日本学術振興会法(昭和42年法律第123号))等に基づき、文部科学省が所掌する科学研究費補助金の交付対象となる一部の研究種目等について、11年度から国の補助金を財源として、科学研究費補助金(以下「補助金」という。)を交付している。
 この補助金は、我が国の学術を振興するために、人文・社会科学から自然科学まであらゆる分野における優れた独創的・先駆的な研究を格段に発展させることを目的として交付するものであり、交付対象となる研究種目等には基盤研究等がある。
 この補助金の交付の申請をすることができる者は、「独立行政法人日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究等)取扱要領」(平成15年規程第17号)等(以下「取扱要領」という。)により、〔1〕 大学、大学共同利用機関等の学術研究を行う機関(以下「研究機関」という。)に所属する研究者が1人で科学研究を行う場合は、当該研究機関の代表者、〔2〕 研究者2人以上が同一の研究課題について共同して科学研究を行う場合は、当該研究者の代表者(以下「研究代表者」という。)又は研究代表者の所属する研究機関の代表者(16年度からは、〔1〕 、〔2〕 いずれの場合も研究代表者)等とされている。
 補助の対象となる経費は、「科学研究費補助金(科学研究費及び学術創成研究費)の取扱いについて」(平成15年文科振第92号文部科学省研究振興局長通知)等(以下「局長通知」という。)により、研究で使用する消耗品等(以下「研究用物品」という。)の購入費等の研究計画の遂行等に必要な経費(直接経費)のほか、一部の研究種目については、研究の実施に伴い研究機関において必要となる管理等に係る経費(間接経費)とされている。

(2) 補助金の管理方法

 交付された補助金の管理方法については、局長通知等により、研究代表者等は、所属する研究機関に補助金の管理を行わせることとされている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性等の観点から、交付された補助金が研究機関において取扱要領、局長通知等に従って適切に管理されているかなどに着眼して、振興会及び33研究機関に係る569事業主体(1大学長及び568研究代表者等)において会計実地検査を行った。そして、これらの事業主体が行っている984研究課題について納品書、請求書等の書類により検査するとともに、補助金の管理が適切でないと思われる事態があった場合には、研究機関に報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(2) 検査の結果

 検査したところ、次のとおり不適正な経理処理を行っている事態が見受けられた。
 振興会は、公立大学法人和歌山県立医科大学(18年3月31日以前は和歌山県立医科大学)に所属する研究者Aを研究代表者とする研究課題を対象として、15、16両年度に補助金計9,200,000円を交付しており、同大学が補助金の管理を行っていた。そして、同大学は、研究代表者から研究用物品を8,988,593円で購入したとする納品書、請求書等の提出を受けるなどして、その購入代金を業者に支払っていた。
 しかし、その全額の8,988,593円について、研究代表者Aは業者に架空の取引を指示して虚偽の納品書、請求書等を作成させ同大学に架空の取引に係る購入代金を支払わせて、これを業者に預けて別途に経理していた。また、研究代表者Aを含む15名の研究代表者は、14年度から19年度までの間に研究用物品の購入代金計29,988,747円について、随時、業者に研究用物品を納入させた上で、後日、納入された研究用物品とは異なる物品の請求書等を提出させて、これらの物品が納入されたとする虚偽の内容の関係書類を作成することなどにより同大学にその購入代金を支払わせるなどしていた。このため、補助金計38,977,323円が過大に交付されていて不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、同大学の大学長及び上記15名の研究代表者において、補助金の原資は税金等であり、事実に基づく適正な会計経理を行うという基本的な認識が欠けていたこと、補助金を管理する同大学において、研究用物品の納品検査等が十分でなかったこと、振興会において、研究代表者及び研究機関に対して補助金の不正使用の防止について必要な措置の導入や指導を行っていたものの、その周知徹底が十分でなかったことによると認められる。
 これを研究代表者( )等別に示すと、以下のとおりである。

  研究機関名 研究代表者等 年度 事業数
補助金交付額
千円
不当と認める補助金額
千円
(840) 公立大学法人和歌山県立医科大学 大学長及び研究代表者A 14〜16 3 10,800 10,588
(841)
 
研究代表者d 16〜18 3 6,300 4,345
(842)
 
大学長及び研究代表者k 14〜18 5 32,150 3,210
(843)
 
研究代表者l 18、19 2 3,890 2,427
(844)
 
大学長及び研究代表者j 14〜18 5 15,400 2,282
(845)
 
大学長及び研究代表者m 14、16〜19 5 5,740 2,239
(846)
 
研究代表者g 17〜19 3 5,970 2,197
(847)
 
大学長及び研究代表者n 14〜16 3 3,100 1,775
(848)
 
大学長及び研究代表者o 14、15、17、18 4 4,700 1,760
(849)
 
大学長及び研究代表者p 15、18、19 3 5,290 1,643
(850)
 
大学長及び研究代表者q 14〜17 4 6,100 1,640
(851)
 
大学長及び研究代表者r 15、16 2 3,600 1,334
(852)
 
研究代表者s 16、17 2 2,100 1,271
(853)
 
研究代表者t 18、19 2 3,890 1,258
(854)
 
研究代表者b 19 1 1,000 1,000
(840)—(854)の計
 
47 110,030 38,977
 研究代表者  公立大学法人和歌山県立医科大学については、本件以外にも不当事項(4か所参照 1  2  3  4 )を掲記しており、同一の研究(代表)者名を同一のアルファベット(A〜G、a〜t)で表示している。