科目 | (項)公害健康被害予防業務費 | |
部局等 | 独立行政法人環境再生保全機構 | |
契約名 | 成人気管支ぜん息患者の重症度等に応じた健康管理支援、保健指導の実践及び評価手法に関する調査研究の業務委託 | |
契約の概要 | ぜん息患者の症状に合わせて、診療ガイドラインに沿った適切な長期管理が実行されるための保健指導に関する調査研究を行うもの | |
契約の相手方 | 学校法人帝京大学医学部に所属する研究者A | |
契約 | 平成18年11月、19年7月 随意契約 | |
支払額 | 34,741,848円 | (平成18、19両年度) |
不当と認める委託費の支払額 | 3,953,800円 | (平成18、19両年度) |
独立行政法人環境再生保全機構(以下「機構」という。)は、大気汚染の影響による健康被害の予防に寄与するため、国や地方公共団体が行っているぜん息等に対する対策や大気汚染の改善に関する施策を補完し、地域住民の健康の確保を図ることを目的として、公害健康被害予防事業を実施している。
そして、この事業のうち、大気汚染の影響による健康被害の予防に関する調査研究については、大学等の試験研究機関等又は個人を相手方として業務委託契約を締結して行われている。
機構は、平成18、19両年度に、成人気管支ぜん息患者の重症度等に応じた健康管理支援、保健指導の実践及び評価手法に関する調査研究の委託契約を、学校法人帝京大学医学部に所属する研究者Aとの間で締結しており、委託費として18年度16,825,818円、19年度17,916,030円、計34,741,848円を支払っている。
研究者Aは、上記の委託契約に基づき委託業務実施計画書(以下「実施計画書」という。)を作成した上、実施計画書に従って研究者Aを含む12名の研究者からなる研究グループを組織して受託業務を実施している。そして、12名の研究者は受託業務をそれぞれ分担して実施しており、その一人である公立大学法人和歌山県立医科大学に所属する研究者F(注)
は、研究者Aから分担した業務の実施に必要な経費として、18年度に2,000,000円、19年度に2,100,000円の配分を受けている。
機構が作成している「公害健康被害予防事業及び地球環境基金事業に係る委託契約事務取扱要領」(平成16年4月細則第11号)等(以下「事務取扱要領等」という。)によると、委託費の対象経費は諸謝金、旅費、業務費等から構成され、このうち業務費は、研究に使用する消耗品等(以下「研究用物品」という。)の購入に係る経費等とされている。
本院は、合規性等の観点から、委託費が事務取扱要領等に従って適切に管理されているかなどに着眼して、機構等において会計実地検査を行い、また、研究者Fが分担して実施した業務について調査を行った。そして、納品書、請求書等の書類により検査するとともに、委託費の管理が適切でないと思われる事態があった場合には、機構及び受託者である研究者Aに報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。
検査したところ、研究者Fは、分担した業務の実施に要した経費の額を研究者Aに報告する際に、実施計画書に記載していた研究用物品の購入費は、18年度1,853,800円、19年度2,100,000円、計3,953,800円であったとして、それらに係る納品書、請求書等を提出していた。
しかし、上記の納品書等に記載された研究用物品を購入した事実は一切なく、実際は、研究者Fが、随時、業者に他の研究用物品を納入させた上で、後日、その購入代金の支払に当たり、業者に指示して、実施計画書に記載していた研究用物品が納入されたとする虚偽の納品書、請求書等を提出させていた。
したがって、前記の物品購入費計3,953,800円は、本件委託業務に要した経費とは認められず、同額の委託費が過大に支払われていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、本件委託業務を分担して実施した研究者Fにおいて、事実に基づく適正な会計経理を行うという基本的な認識が欠けていたこと、また、受託者である研究者Aにおいて、研究者Fから提出を受けた報告内容の確認が十分でなかったこと、機構において、受託者に対して委託費の不正使用の防止について必要な措置の導入や指導を行っていたものの、その周知徹底が十分でなかったことによると認められる。