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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成22年8月

牛肉等関税を財源とする肉用子牛等対策の施策等に関する会計検査の結果について


2 機構、機構の補助金交付先等に造成されている資金等の状況

(1) 機構に造成されている資金及び補助金等交付先に造成されている基金の状況

ア 機構に造成されている資金の状況

 機構に造成されている資金のうち、牛関交付金を財源とする資金の流れに関連する畜産勘定の調整資金及び畜産業振興資金(以下、両資金を合算したものを「畜産勘定資金」という。)における収入支出及び資金保有額の推移をみると、図表16 のとおりとなっている。
 すなわち、畜産勘定資金について、3年度から20年度までの各年度末における資金保有額及び各年度における支出額をみると、3年度からBSEが発生する以前の12年度までにおいては、資金保有額の平均額は2761億円となっていて、この額は支出額の平均額である1031億円と比較して2.6倍となっている。
 BSEが発生した13年度以降15年度までは、BSE対策を講じたことにより支出額が増加したため資金保有額は急激に減少したが、BSE対策がほぼ終了した16年度以降19年度までは、肉用子牛価格が比較的高値で推移したことなどにより支出額が減少したため資金保有額は増加している。20年度は配合飼料価格の高騰への対策を講じたことにより支出額が増加したため資金保有額は再び減少したものの、17年度から20年度までの各年度末における資金保有額はいずれも1500億円を超えている。また、BSE対策がほぼ終了した16年度以降20年度までの各年度末における資金保有額の平均額は1728億円となり、この額は同期間の各年度における支出額の平均額である956億円と比較して1.8倍となっている。

図表16  調整資金及び畜産業振興資金における収入支出及び資金保有額の推移
(単位:億円)
項目 年度
平成3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 合計
調整資金 収入額 牛関交付金 801 791 799 801 951 1,011 1,061 1,041 1,041 1,000 1,425 925 1,048 973 952 717 720 590 16,657
支出額 377 582 816 937 931 557 616 1,104 1,171 860 1,613 1,961 1,126 883 501 410 624 906 15,984
期末資金保有額 872 1,081 1,064 928 948 1,403 1,848 1,785 1,656 1,796 1,608 572 493 583 1,034 1,341 1,437 1,120
畜産業振興資金 収入額 一般交付金 55 54 53 52 130 100 96 94 99 90 89 77 49 35 50 81 130 102 1,442
機構への補助金等返還金 24 104 5 19 30 34 8 44 28 123 24 40 74 265 124 102 405 244 1,707
運用益等 786 226 68 33 57 99 32 54 39 71 51 29 30 6 6 12 17 32 1,657
866 385 127 105 218 233 137 193 167 285 166 147 153 307 182 196 553 379 4,806
支出額 156 206 302 328 243 301 236 200 259 120 301 498 434 305 200 186 263 502 5,047
期末資金保有額 1,651 1,829 1,654 1,431 1,406 1,338 1,239 1,233 1,141 1,306 1,170 820 539 541 523 533 823 700
両資金の合計
(畜産勘定資金)
収入額 1,668 1,177 926 906 1,170 1,245 1,199 1,235 1,209 1,286 1,591 1,072 1,201 1,280 1,134 913 1,273 970 21,463
支出額 533 789 1,119 1,265 1,174 859 853 1,304 1,430 981 1,915 2,459 1,560 1,188 702 596 888 1,409 21,031
期末資金保有額 2,523 2,911 2,718 2,360 2,355 2,741 3,087 3,018 2,798 3,102 2,778 1,392 1,033 1,125 1,557 1,874 2,260 1,821
(注)
 畜産業振興資金については、平成15年度以降においては、機構の財務諸表の金額と図表中の期末資金保有額とは一致する。一方、14年度以前においては、機構の財務諸表の金額は、15年度以降とは会計処理方針が異なるため公益法人への出資金を含むものとなっているが、図表中の期末資金保有額は15年度以降の機構の財務諸表と同様これを除いた金額としているため、財務諸表の金額と図表中の期末資金保有額とは一致しない。

(調整資金及び畜産業振興資金における支出額及び資金保有額の推移)
機構、機構の補助金交付先等に造成されている資金等の状況の図1
(調整資金及び畜産業振興資金における収入支出の推移)
機構、機構の補助金交付先等に造成されている資金等の状況の図2

(ア) 調整資金

 調整資金には、肉用子牛等対策の財源に充てるために農林水産省から交付される牛関交付金が充てられている。牛関交付金は、食肉等についての畜産業振興事業補助等や肉用子牛生産者補給金業務に必要な経費の財源に充てられており、BSEの発生等の異常な事態にも機動的に対応するため一定規模の資金を保有しておく必要があるとして、調整資金には毎年度多額の資金が保有されている。そして、調整資金の収入支出及び資金保有額の推移をみると、図表17 のとおりとなっている。
 すなわち、牛肉等関税の収入を財源とする牛関交付金は、3年度に801億円だったものが8年度には1000億円を超えている。一方、各年度末における資金保有額は、8、9両年度は肉用子牛価格が比較的高値で推移したことなどにより支出額が減少したため9年度末には最高の1848億円となっており、その後13年度末まで1500億円を超える水準を保っている。
 BSEが発生した13年度以降15年度までは、BSE対策を講じたことにより支出額が増加したため資金保有額は急激に減少したが、BSE対策がほぼ終了した16年度以降19年度までは、肉用子牛価格が比較的高値で推移したことなどにより支出額が減少したため資金保有額は増加している。20年度は配合飼料価格の高騰への対策を講じたことにより支出額が増加したため資金保有額は再び減少したものの、17年度から20年度までの各年度末における資金保有額はいずれも1000億円を超えており、また、20年度末の資金保有額1120億円は15年度末の資金保有額493億円より627億円多くなっている。

図表17 調整資金の収入支出及び資金保有額の推移
(単位:億円)
項目 年度
平成3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 合計
調整資金 収入額 牛関交付金 801 791 799 801 951 1,011 1,061 1,041 1,041 1,000 1,425 925 1,048 973 952 717 720 590 16,657
支出額 377 582 816 937 931 557 616 1,104 1,171 860 1,613 1,961 1,126 883 501 410 624 906 15,984
期末資金保有額 872 1,081 1,064 928 948 1,403 1,848 1,785 1,656 1,796 1,608 572 493 583 1,034 1,341 1,437 1,120
機構、機構の補助金交付先等に造成されている資金等の状況の図3

(イ) 畜産業振興資金

 畜産業振興資金には、農林水産省から交付される一般交付金や機構への補助金等返還金等が充てられている。これらの一般交付金等は、学校給食用牛乳供給事業補助、酪農関係事業等の畜産全般に係る畜産業振興事業補助等に必要な経費の財源に充てられている。そして、畜産業振興資金の収入支出及び資金保有額の推移をみると、図表18 のとおりとなっている。
 すなわち、3年度からBSEが発生する以前の12年度までにおいては、資金保有額は減少傾向にあったものの、各年度末における資金保有額の平均額は1423億円となっていて、この額は各年度における支出額の平均額である235億円と比較して6.0倍となっている。
 BSEが発生した13年度以降15年度までは、BSE対策を講じたことにより支出額が増加したため資金保有額は急激に減少したが、BSE対策がほぼ終了した16年度以降20年度までは、各年度末における資金保有額の平均額は624億円となっていて、この額は各年度における支出額の平均額である291億円と比較して2.1倍となっている。

図表18 畜産業振興資金の収入支出及び資金保有額の推移
(単位:億円)
項目 年度
平成3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 合計
畜産業振興資金 収入額 一般交付金 55 54 53 52 130 100 96 94 99 90 89 77 49 35 50 81 130 102 1,442
機構への補助金等返還金 24 104 5 19 30 34 8 44 28 123 24 40 74 265 124 102 405 244 1,707
運用益等 786 226 68 33 57 99 32 54 39 71 51 29 30 6 6 12 17 32 1,657
866 385 127 105 218 233 137 193 167 285 166 147 153 307 182 196 553 379 4,806
支出額 156 206 302 328 243 301 236 200 259 120 301 498 434 305 200 186 263 502 5,047
期末資金保有額 1,651 1,829 1,654 1,431 1,406 1,338 1,239 1,233 1,141 1,306 1,170 820 539 541 523 533 823 700
機構、機構の補助金交付先等に造成されている資金等の状況の図4

 このように、BSEの発生等の異常な事態が生じていない間においては、調整資金及び畜産業振興資金において、支出額と比較して多額の資金を長期間保有している状況となっている。
 なお、21年度に実施された基金の見直しの結果、同年度に畜産業振興資金へ多額の補助金等が返還されている。また、農林水産省及び機構が、行政刷新会議の事業仕分けの評価結果を踏まえるなどして、所要額を除き機構へ返還させることとしている基金があるため、22年度以降、畜産業振興資金へ多額の補助金等が返還されることが予想される。

イ 補助金等交付先に造成されている基金の状況

 農林水産省及び機構において肉用子牛等対策として実施された事業には、補助金等として支出された資金を財源として補助金等交付先に基金が造成されている事業がある。そこで、農林水産省から肉用子牛等対策として交付された補助金の支出額と、機構の畜産勘定資金の支出額とについて、補助金等交付先において基金を造成するために用いられたことが把握できた金額の割合をみると、図表19 のとおり、16年度から20年度までの平均は、農林水産省の事業で15.4%、機構の事業で57.4%となっており、合計では51.0%と過半を占めている。

図表19 補助金等交付先において基金を造成するために用いられた支出額の割合
(単位:億円、%)
年度 平成16 17 18 19 20 平均
農林水産省から肉用子牛等対策として交付された補助金の支出額 327 159 98 106 170 172
  (割合) (A) (100) (100) (100) (100) (100) (100)
  基金造成   40 25 1 2 62 26
(割合) (12.5) (15.9) (1.9) (2.0) (36.5) (15.4)
機構の畜産勘定資金の支出額 1,188 702 596 888 1,409 956
  (割合) (B) (100) (100) (100) (100) (100) (100)
  基金造成   608 406 324 584 825 549
(割合) (51.1) (57.8) (54.4) (65.7) (58.5) (57.4)
合計(A)+(B) 1,516 861 694 994 1,579 1,129
  (割合)   (100) (100) (100) (100) (100) (100)
  基金造成   649 431 326 586 888 576
(割合) (42.8) (50.0) (47.0) (58.9) (56.2) (51.0)
(注)
 検査を実施していない414団体(613基金)への支出額等は把握できなかったため、「基金造成」には含めていない。

 同様に、把握できた範囲で、農林水産省及び機構の補助金等交付先に造成されている基金(3年度から20年度までの間に存在していて20年度末に存続している25法人の60基金及びこの間に廃止された基金。以下「全基金」という。)について、法人数、基金数、収入支出、資金保有額及び基金総額(資金保有額に貸付残高を加えた額)の推移をみると、図表20 のとおりとなっている。
 すなわち、全基金の各年度末における資金保有額及び基金総額は、13年度のBSE発生後においても、機構の資金でみられたような急激な減少は見受けられず、比較的なだらかに推移している。これは、各基金は、農林水産省や機構が定める基金事業の実施要綱に従って特定の目的のために造成及び使用されるものであるのに対して、機構の資金は、より多様な目的に使用することが可能であるという、両者の役割あるいは性格の違いから、BSEの発生等の異常な事態への対応に差が生じたためであると考えられる。
 そして、全基金の3年度から20年度までの各年度末における資金保有額及び各年度における事業費をみると、資金保有額の平均額は2525億円となっていて、この額は事業費の平均額である666億円と比較して3.7倍となっている。また、事業費が最高となったのは20年度であり、事業を実施した後の20年度末において、資金保有額が最低となっているが、なお事業費の最高額(1218億円)を上回る1540億円もの資金を保有している。
 このように、全基金において、事業費と比較して多額の資金を長期間保有している状況となっている。

図表20 全基金の法人数、基金数、収入支出、資金保有額及び基金総額の推移
(単位:法人、基金、億円)
年度 平成3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
法人数 26 26 26 27 28 30 28 29 29 30 31 30 29 29 29 28 25 25
基金数 57 63 66 66 60 64 72 79 82 87 88 81 75 77 73 69 62 60
期首資金保有額 2,496 2,677 2,705 2,674 2,520 2,838 2,475 2,709 2,878 3,026 2,980 2,887 2,675 2,506 2,244 2,186 2,175 1,759
収入額合計 520 498 528 840 819 456 725 802 764 716 859 861 746 962 614 501 1,059 1,226
  補助金等 227 269 261 450 325 251 477 512 646 587 707 750 626 649 431 326 586 888
運用益等 181 135 99 79 56 31 29 32 21 19 17 15 15 19 21 17 25 27
回収額等 75 82 128 236 413 169 82 102 54 60 87 84 85 283 123 111 445 250
その他 36 11 38 74 24 5 136 155 43 49 47 11 19 11 37 46 2 60
支出額合計 339 469 561 993 502 820 487 634 617 762 952 1,073 916 1,226 672 512 1,474 1,445
  事業費 336 415 539 892 442 779 375 476 575 614 771 961 711 966 505 374 1,034 1,218
補助金等返還金 - 53 0 14 29 30 17 59 39 147 176 100 144 258 131 96 439 221
その他 3 0 20 86 30 9 95 98 2 - 3 11 60 1 34 41 0 5
期末資金保有額 2,677 2,705 2,674 2,520 2,838 2,475 2,709 2,878 3,026 2,980 2,887 2,675 2,506 2,244 2,186 2,175 1,759 1,540
期末基金総額 2,896 2,939 2,993 2,985 3,036 2,560 2,767 2,921 3,240 3,251 3,209 3,053 2,977 2,871 2,787 2,761 2,399 2,333
(注)
 金額の確認に必要な帳簿等の整備保存期間が経過しているなどのため、期首資金保有額に当該年度の収入額及び支出額を加減しても期末資金保有額と一致しないことがある。

金額の確認に必要な帳簿等の整備保存期間が経過しているなどのため、期首資金保有額に当該年度の収入額及び支出額を加減しても期末資金保有額と一致しないことがある。

ウ 機構への補助金等返還金の状況

 補助金等返還金は、畜産業振興資金に充てられ、畜産全般に係る畜産業振興事業補助等に必要な経費の財源に充てられている。
 機構の畜産勘定資金を財源とする補助事業全体(補助金等交付先に基金が造成されずに実施された事業を含む。)について、16年度から20年度までの補助金等返還金の状況をみると、図表21 のとおり、合計で1142億円となっており、同期間の畜産業振興資金の収入全体(1618億円)の70%を占めている。このように、近年、畜産業振興資金の収入は、補助金等返還金が大宗を占める状況となっている。
 また、上記期間の補助金等返還金のうち牛関交付金を財源とするものは、合計で901億円と多額に上っており、同期間の畜産業振興資金の収入全体の55%と過半を占めている。

図表21 補助金等返還金の状況
(単位:百万円、%)
年度 平成16 17 18 19 20 補助金等返還金の合計
牛関交付金を財源とするもの 基金事業 24,890 5,777 6,895 37,749 13,977 89,290
(割合) (93.7) (46.3) (67.3) (93.1) (57.1) (78.1)
基金事業以外 495 76 25 127 96 821
(割合) (1.8) (0.6) (0.2) (0.3) (0.3) (0.7)
25,386 5,854 6,921 37,876 14,074 90,112
(割合) (95.6) (46.9) (67.6) (93.4) (57.5) (78.8)
牛関交付金以外を財源とするもの 基金事業 927 6,555 3,305 2,618 10,381 23,787
(割合) (3.4) (52.5) (32.3) (6.4) (42.4) (20.8)
基金事業以外 229 56 4 36 12 338
(割合) (0.8) (0.4) (0.0) (0.0) (0.0) (0.2)
1,157 6,611 3,309 2,654 10,393 24,126
(割合) (4.3) (53.0) (32.3) (6.5) (42.4) (21.1)
補助事業
合計
基金事業 25,818 12,332 10,200 40,368 24,359 113,078
(割合) (97.2) (98.9) (99.7) (99.5) (99.5) (98.9)
基金事業以外 725 132 30 163 109 1,160
(割合) (2.7) (1.0) (0.2) (0.4) (0.4) (1.0)
26,543 12,465 10,231 40,531 24,468 114,239
(割合) (100) (100) (100) (100) (100) (100)

 多額の補助金等返還金が生じている事業の事例を示すと、次のとおりである。

<事例>

〔1〕  社団法人中央畜産会(以下「中央畜産会」という。)は、機構から補助金等の交付を受けて「肉用牛肥育経営安定基金」を造成している(平成13年度設置。20年度末資金保有額932万円(補助金等相当額同額、うち牛関財源相当額同額))。
 本基金による事業は、機構と生産者が3対1の拠出割合で基金を造成し、牛肉の枝肉価格が低下して、推定所得が基準家族労働費(直近3か年の家族労働費の平均)を下回った場合に、基金から生産者に補てん金を交付するものであり、基金の残額は、事業期間(3年間)の終了の都度、機構及び生産者に返還されている。
 本基金については、牛関交付金を財源とする補助金等が機構から中央畜産会に対して13年度から15年度までに579億円、16年度から18年度までに342億円、計921億円交付されている。一方、各事業期間の終了に伴い、基金の残額のうち機構拠出分相当額16年度193億円、19年度313億円、計506億円が機構の畜産業振興資金に返還されている。

 しかし、特定財源として毎会計年度の牛肉等関税の収入見込額に相当する金額が肉用子牛等対策の財源に充てられていることを踏まえると、補助金等返還金のうち牛関交付金を財源とするものについては、これを調整資金に充てることとして、牛関交付金の使途を明らかにすることが望まれる。

エ 資金等の全体の状況

 機構に造成されている畜産勘定資金と補助金等交付先に造成されている基金を全体としてみた場合、その収入支出及び資金保有額の推移は、図表22 のとおりとなっている。
 すなわち、畜産勘定資金及び全基金における収入支出のうち、機構と基金相互間の資金のやりとりである機構から基金への補助金等及び基金から機構への補助金等返還金を除き、両者を一体として、3年度から20年度までの各年度における収入支出をみると、支出については、最高額2837億円(14年度)と最低額688億円(18年度)との差が2149億円であるのに対して、収入については、最高額2044億円(3年度)と最低額994億円(18年度)との差が1050億円となっているなど、支出に比べて収入は比較的安定的に推移しており、主として支出の増減によって資金保有額が変動している状況となっている。畜産勘定資金及び全基金を全体としてみた場合、同期間の各年度末における資金保有額の平均額は4829億円となっており、この額は同期間の各年度における支出額の平均額である1453億円と比較して3.3倍となっていて、支出額と比較して多額の資金を長期間保有している状況となっている。

図表22 畜産勘定資金及び全基金における収入支出及び資金保有額の推移
(単位:億円)
年度 平成3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
期首資金保有額 畜産勘定資金 1,389 2,523 2,911 2,718 2,360 2,355 2,741 3,087 3,018 2,798 3,102 2,778 1,392 1,033 1,125 1,557 1,874 2,260
全基金 2,496 2,677 2,705 2,674 2,520 2,838 2,475 2,709 2,878 3,026 2,980 2,887 2,675 2,506 2,244 2,186 2,175 1,759
合計 3,886 5,201 5,616 5,393 4,881 5,193 5,217 5,797 5,897 5,824 6,083 5,666 4,068 3,540 3,370 3,744 4,050 4,020
収入額 畜産勘定資金 1,668 1,177 926 906 1,170 1,245 1,199 1,235 1,209 1,286 1,591 1,072 1,201 1,280 1,134 913 1,273 970
  うち返還金 24 104 5 19 30 34 8 44 28 123 24 40 74 265 124 102 405 244
全基金 520 498 528 840 819 456 725 802 764 716 859 861 746 962 614 501 1,059 1,226
2,044 1,433 1,271 1,357 1,707 1,489 1,542 1,582 1,388 1,383 1,809 1,239 1,297 1,376 1,217 994 1,343 1,148
支出額 畜産勘定資金 533 789 1,119 1,265 1,174 859 853 1,304 1,430 981 1,915 2,459 1,560 1,188 702 596 888 1,409
全基金 339 469 561 993 502 820 487 634 617 762 952 1,073 916 1,226 672 512 1,474 1,445
729 1,016 1,495 1,868 1,395 1,467 959 1,483 1,463 1,124 2,226 2,837 1,826 1,547 843 688 1,373 1,807
期末資金保有額 畜産勘定資金 2,523 2,911 2,718 2,360 2,355 2,741 3,087 3,018 2,798 3,102 2,778 1,392 1,033 1,125 1,557 1,874 2,260 1,821
全基金 2,677 2,705 2,674 2,520 2,838 2,475 2,709 2,878 3,026 2,980 2,887 2,675 2,506 2,244 2,186 2,175 1,759 1,540
合計 5,201 5,616 5,393 4,881 5,193 5,217 5,797 5,897 5,824 6,083 5,666 4,068 3,540 3,370 3,744 4,050 4,020 3,362
注(1)  収入支出の「計」欄の金額は、機構と基金相互間の資金のやりとりである機構から基金への補助金等及び基金から機構への補助金等返還金を除いているため、畜産勘定資金及び全基金を合計した金額と一致しない。
注(2)  金額の確認に必要な帳簿等の整備保存期間が経過しているなどのため、期首資金保有額に当該年度の収入額及び支出額を加減しても期末資金保有額と一致しないことがある。
(畜産勘定資金及び全基金における支出額及び資金保有額の推移)
機構、機構の補助金交付先等に造成されている資金等の状況の図5
(畜産勘定資金及び全基金における収入支出の推移)
機構、機構の補助金交付先等に造成されている資金等の状況の図6

 このように、資金等を造成して事業を実施することは、BSEの発生等の異常な事態が生じた場合等においては、より機動的かつ弾力的な事業実施を可能にするなどのメリットがある一方、生ずる頻度が低い異常な事態に備えて長期間にわたり多額の資金を個別の基金として保有することになり、財政資金の有効活用という面でデメリットが生じ得ると考えられる。
 すなわち、各基金が農林水産省や機構が定める基金事業の実施要綱に従って特定の目的のために造成及び使用されるものであることや、BSEの発生等の異常な事態が生ずる時期を予測することは困難であり、また、実際に生じた頻度が低く、異常な事態の生じていない期間が長期にわたることにかんがみると、BSEの発生等の異常な事態が生じた場合に対応するとして、各基金ごとに必要な資金をすべて保有しようとすることは、財政資金の有効活用という面で問題がある。そして、機構の資金が、より多様な目的に使用することが可能になっているという点にかんがみると、生ずる頻度が高く多額の資金を必要としない事態に対しては個別の基金により対応するとしても、BSEの発生等の異常な事態には機構の資金等を充てることとするなどの手法が、財政資金の有効活用という面で望ましいと考えられる。
 また、前記第2の2(1)ア(ア) のとおり、17年度から20年度までの各年度末における調整資金の資金保有額は1000億円を超えて推移しており、また、前記第2の1(1)ウ のとおり、牛関未使用額も20年度末で523億円となっているなど、肉用子牛等対策の財源に充てることができる資金には余裕がある状況となっている。さらに、前記第2の2(1)ウ のとおり、16年度から20年度までの牛関交付金を財源とする補助金等返還金が901億円と多額に上っている状況をみると、BSEの発生等の特殊な状況を除けば、牛肉等関税の収入の規模は、必要とされる肉用子牛等対策の規模を上回っているとも考えられる。

(2) 基金の運営状況

 検査の対象とした25法人の60基金について、20年度末における資金保有額をみると、図表23 のとおり、1540億円(うち補助金等相当額1473億円(国庫補助金相当額115億円、機構からの補助金等相当額1358億円))となっている。

図表23 60基金における資金保有額(平成20年度末)
(単位:法人、基金、千円)
法人数 基金数 資金保有額 左のうち補助金等相当額 左のうち牛関財源相当額
国所管基金 3 4 10,984,317 11,501,536 4,106,835
機構所管基金 25 56 143,099,439 135,801,386 41,253,805
25 60 154,083,757 147,302,923 45,360,640
注(1)  国所管基金を保有している3法人は、すべて機構所管基金を保有している25法人に含まれている。
注(2)  国所管の4基金のうち1基金は農林水産省からの補助金と(社)全国配合飼料供給安定基金等から納付される積立金とにより造成されており、それぞれ補助金勘定及び積立金勘定で経理されている。このうち積立金勘定において、平成20年度末に一時的に資金不足が生じたため、補助金相当額(補助金勘定残高)が資金保有額(補助金勘定残高+積立金勘定残高(△5億1783万円))を上回っている。

ア 基金の分類

(ア) 使途別分類

 基金を使用して実施する事業の内容をみると、次のように分類することができる。

a 貸付事業基金

 貸付けや一時立替えの事業の財源として基金を使用するもの

b 債務保証事業基金

 借入金に対する債務を保証し不測の事態が発生したときに生ずる費用を弁済する事業の信用力の基盤となる財源として基金を使用するもの

c 利子助成事業基金

 借入金に係る利子の一部を助成するなどの事業の財源として基金を使用するもの

d 補助・補てん事業基金

 各種事業への補助金や農畜産物の価格差に対する補てん金を交付する事業の財源として基金を使用するもの

e 調査等その他事業基金

 法人自らが行う調査、研究、普及、保管等の事業の財源として基金を使用するもの

(イ) 運営形態別分類

 基金の運営形態をみると、次のように分類することができる。

a 取崩し型

 基金を利子助成、補助・補てん、調査、研究等の事業の財源に充てることによって費消していくもの

b 回転型

 主として、使途別分類の貸付事業基金がこれに該当し、基金を繰り返し回転させて使用するもの

c 保有型

 主として、使途別分類の債務保証事業基金がこれに該当し、基金を債務保証の信用力の基盤となる財源として保有するもの

d 運用型

 基金を運用元本として、その運用益を補助・補てん等の事業の財源に充てていくもの

 60基金について、基金の使途及び運営形態により分類すると、図表24 のとおりとなる。

図表24 60基金の使途別及び運営形態別の分類
(単位:法人、基金、千円)
使途 法人数 基金数
平成20年度末資金保有額
運営形態
取崩し型 回転型 保有型 運用型
貸付け 6 10
78,894,594
3
13,427,149
7
65,467,445
0
-
0
-
債務保証 2 2
1,335,095
1
4,669
0
-
1
1,330,426
0
-
利子助成 4 15
21,437,278
15
21,437,278
0
-
0
-
0
-
補助・補てん 12 25
48,476,827
24
37,701,004
0
-
0
-
1
10,775,823
調査等その他 7 8
3,939,960
8
3,939,960
0
-
0
-
0
-
25 60
154,083,757
51
76,510,062
7
65,467,445
1
1,330,426
1
10,775,823
注(1)  使途別分類の異なる複数の基金(例えば補助・補てん事業基金と調査等その他事業基金)を保有する法人があるため、使途別の各欄の法人数を加えても「計」欄の数とは一致しない。
注(2)  この表中、国所管基金は、補助・補てん事業基金の取崩し型で3基金(3法人)、調査等その他事業基金の取崩し型で1基金(1法人)となっており、これらの平成20年度末資金保有額の計は109億8431万円で、他はすべて機構所管基金である。

イ 基金の収入支出及び資金保有額の状況

 60基金を全体として、3年度から20年度までの各年度末における資金保有額及び各年度における事業実績額(注5) をみると、図表25 のとおり、資金保有額の平均額2176億円は、事業実績額の平均額483億円と比較して4.5倍となっていて、多額の資金を長期間保有している状況となっている。また、事業実績額が最高となったのは20年度であり、事業を実施した後の20年度末において、資金保有額が最低となっているが、なお事業実績額の最高額(1189億円)を上回る1540億円もの資金を保有している。なお、19、20両年度に事業実績額が多額となっているのは、配合飼料価格が高騰したため価格差補てん事業を行った(19年度561億円、20年度436億円)ことなどによるものである。

 事業実績額  基金事業の内容には種々のものがあり、例えば、貸付事業基金については、基金の貸付け、貸付金の管理、貸付金の回収等が、債務保証事業基金については、債務保証の引受け、債務保証額の管理、代位弁済等がある。本報告の分析において各年度の事業実績額としているのは、基金の使用と直接に結び付くものとして、貸付事業基金については新規貸付額、債務保証事業基金については代位弁済額、利子助成事業基金については利子助成支払額、補助・補てん事業基金については補助金等の支払額、調査等その他事業基金については調査、研究等に係る費用の支払額としている。なお、事務の処理に要する経費は含まれていない。

図表25 60基金の収入支出及び資金保有額の推移
(単位:億円)
年度 平成3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 平均
(3年度〜20年度)
収入額合計 353 313 374 511 685 338 420 421 388 478 661 742 620 869 491 479 1,045 1,226 579
  機構等からの補助金等 118 114 141 205 221 138 185 185 276 361 542 633 510 557 346 307 573 888 350
その他収入 234 198 232 305 463 199 235 236 111 117 118 109 110 311 145 172 472 338 228
支出額合計 198 250 363 698 329 640 171 322 289 486 612 791 717 1,103 509 438 1,448 1,431 600
  事業実績額 180 229 334 664 279 610 147 240 237 327 499 727 529 819 378 311 988 1,189 483
機構等への補助金等返還金 0 13 29 133 73 27 87 249 100 83 428 209 79
その他支出 17 21 28 33 50 30 23 68 22 25 40 36 100 34 30 43 30 32 37
期末資金保有額 2,075 2,135 2,148 1,960 2,316 2,014 2,260 2,361 2,461 2,454 2,503 2,454 2,357 2,124 2,107 2,148 1,746 1,540 2,176
(注)
 金額の確認に必要な帳簿等の整備保存期間が経過しているなどのため、前年度の期末資金保有額に当該年度の収入額及び支出額を加減しても当該年度の期末資金保有額と一致しないことがある。

機構、機構の補助金交付先等に造成されている資金等の状況の図1

 これらを使途別及び運営形態別にみると、それぞれ次のとおり、60基金を全体としてみた場合における収入支出及び資金保有額の状況と同様に、多額の資金を長期間保有している状況となっている。

(ア) 使途別の収入支出及び資金保有額の状況

a 貸付事業基金

 貸付事業基金(10基金)をみると、このうち融資準備財産において、4年度から6年度まで、肉用子牛価格の低落に伴い肉用子牛生産者補給金の一部に充てるために指定協会に積み立てられた積立金に不足が生じ、この不足額に充当するために多額の資金の貸付けが行われたため、図表26 のとおり、資金保有額は6年度末には当該年度の事業実績額を下回る額にまで減少している。しかし、7年度から20年度までの各年度末における資金保有額及び各年度における事業実績額をみると、資金保有額の平均額735億円は、事業実績額の平均額177億円と比較して4.1倍となっている。また、20年度末においては基金総額1580億円に対して資金保有額は788億円となっており、基金総額の49%が未使用のままとなっている。この788億円のうち535億円は上記の積立金の不足額に充当するために資金の貸付けを行っていた上記融資準備財産に係るものである。

図表26 貸付事業基金の収入支出及び資金保有額の推移
(単位:億円)
年度 平成3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 平均
(7年度〜20年度)
収入額合計 126 115 140 242 407 168 122 123 224 277 277 201 315 415 237 235 335 447 270
  機構からの補助金等 15 20 11 13 6 13 53 60 162 210 211 111 225 306 122 119 199 318 151
その他収入 111 95 128 228 400 155 69 63 61 67 66 89 89 109 115 116 135 128 119
支出額合計 88 126 242 399 176 59 56 149 149 250 244 248 358 484 187 224 261 468 237
  事業実績額 74 110 224 378 135 39 43 136 125 178 185 205 290 416 113 129 142 344 177
機構への補助金等返還金 8 57 42 27 39 52 60 76 103 107 40
その他支出 13 16 17 21 40 20 13 13 14 14 16 16 28 16 13 18 15 17 18
期末資金保有額 589 576 476 317 548 659 721 697 773 800 833 786 743 676 726 737 810 788 735
期末基金総額 647 674 683 695 683 704 763 739 987 1,071 1,155 1,164 1,214 1,302 1,327 1,321 1,368 1,580 1,099
(注)
 金額の確認に必要な帳簿等の整備保存期間が経過しているなどのため、前年度の期末資金保有額に当該年度の収入額及び支出額を加減しても当該年度の期末資金保有額と一致しないことがある。

機構、機構の補助金交付先等に造成されている資金等の状況の図2

b 債務保証事業基金

 債務保証事業基金(2基金)をみると、図表27 のとおり、10年度から15年度までに機構からの補助金等により基金が造成(15年度末資金保有額27億円)されたが、16、19、20各年度に機構へ補助金等を返還(16年度3億円、19年度8億円、20年度0.8億円)し、20年度末には資金保有額を13億円に減少させている。また、事業実績額は15、16、19各年度の計2億円のみとなっている。

図表27 債務保証事業基金の収入支出及び資金保有額の推移
(単位:億円)
年度 平成3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 合計
収入額合計 4 3 3 12 0 3 0 0 0 0 0 29
  機構からの補助金等 4 3 3 10 3 23
その他収入 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 5
支出額合計 0 0 3 0 8 1 15
  事業実績額 0 0 0 2
機構への補助金等返還金 3 8 0 11
その他支出 0 0 0 0 1 1
期末資金保有額 4 8 12 24 24 27 23 23 23 15 13
機構、機構の補助金交付先等に造成されている資金等の状況の図3

c 利子助成事業基金

 利子助成事業基金(15基金)をみると、図表28 のとおり、3年度から11年度までの各年度末における資金保有額は250億円を上回っており、12、17両年度に機構へ補助金等を返還(12年度76億円、17年度39億円)するなどしたため17年度末には89億円となったが、19、20両年度に機構から補助金等を受け入れたため、20年度末では214億円となっている。そして、3年度から20年度までの各年度末における資金保有額及び各年度における事業実績額をみると、資金保有額の平均額233億円は、事業実績額の平均額16億円と比較して14.4倍となっており、また、資金保有額の最低額85億円(18年度末)は、事業実績額の最高額25億円(7年度)と比較しても3.3倍となっている。

図表28 利子助成事業基金の収入支出及び資金保有額の推移
(単位:億円)
年度 平成3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 平均
(3年度〜20年度)
収入額合計 17 16 65 47 43 30 26 78 1 0 16 2 16 0 0 7 80 68 29
  機構からの補助金等 35 32 32 23 20 16 2 16 0 0 0 77 65 17
その他収入 17 16 30 15 11 6 6 78 1 0 0 0 0 0 0 6 2 2 11
支出額合計 9 14 31 29 31 30 29 85 43 97 43 17 15 14 52 10 9 10 32
  事業実績額 8 13 23 24 25 25 23 21 19 18 16 14 12 11 9 7 6 7 16
機構への補助金等返還金 13 20 76 24 39 9
その他支出 1 1 7 5 5 5 5 51 3 3 3 3 2 3 2 2 2 2 6
期末資金保有額 276 278 313 330 342 342 340 332 291 194 167 152 153 140 89 85 156 214 233
機構、機構の補助金交付先等に造成されている資金等の状況の図4

d 補助・補てん事業基金

 補助・補てん事業基金(25基金)の3年度から20年度までの各年度末における資金保有額及び各年度における事業実績額をみると、図表29 のとおり、資金保有額の平均額1165億円は、事業実績額の平均額228億円と比較して5.1倍となっており、また、資金保有額の最低額484億円(20年度末)を事業実績額が超えたのは、配合飼料価格の高騰により価格差補てん事業を行った19、20両年度(各年度における事業実績額832億円及び831億円)のみとなっている。すなわち、19、20両年度のように異常な事態が生じない限り、多額の資金を長期間保有している状況となっている。

図表29 補助・補てん事業基金の収入支出及び資金保有額の推移
(単位:億円)
年度 平成3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 平均
(3年度〜20年度)
収入額合計 124 100 85 138 149 69 204 150 88 124 287 480 232 406 225 231 624 704 246
  機構等からの補助金等 24 16 15 78 99 34 45 58 42 77 238 463 214 206 197 184 291 498 154
その他収入 100 83 70 59 49 35 159 91 45 47 49 17 17 199 28 47 332 205 91
支出額合計 19 30 13 190 47 480 16 21 31 67 247 454 287 555 221 197 1,162 924 275
  事業実績額 17 27 11 186 44 477 13 18 27 61 221 437 171 347 208 169 832 831 228
機構等への補助金等返還金 0 7 0 48 193 0 6 317 82 36
その他支出 1 2 2 4 2 3 3 3 4 5 19 16 68 14 12 21 11 10 11
期末資金保有額 1,128 1,198 1,271 1,218 1,320 910 1,098 1,227 1,283 1,341 1,381 1,407 1,352 1,204 1,207 1,242 705 484 1,165
機構、機構の補助金交付先等に造成されている資金等の状況の図5

e 調査等その他事業基金

 調査等その他事業基金(8基金)をみると、図表30 のとおり、3年度から16年度までの各年度末における資金保有額は80億円を上回っているが、17、20両年度に大幅に減少しており、20年度末は39億円となっている。一方、18年度以降は事業実績額が極端に減少し、各年度5億円となっている。

図表30 調査等その他事業基金の収入支出及び資金保有額の推移
(単位:億円)
年度 平成3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 平均
(3年度〜20年度)
収入額合計 84 80 82 83 85 69 66 64 70 72 67 57 51 45 27 5 5 5 57
  機構等からの補助金等 79 77 79 80 83 67 65 63 67 70 66 56 49 43 26 3 3 4 55
その他収入 5 3 2 2 1 1 1 1 2 1 1 1 2 2 1 1 1 1 2
支出額合計 81 79 76 78 74 70 68 66 65 70 76 71 55 45 47 6 5 25 59
  事業実績額 80 77 75 76 73 68 67 64 64 69 75 70 54 43 47 5 5 5 56
機構等への補助金等返還金 0 0 0 0 0 0 0 19 1
その他支出 1 1 1 1 1 1 1 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1
期末資金保有額 80 82 88 93 103 102 101 99 104 105 96 83 80 80 60 59 59 39 84
機構、機構の補助金交付先等に造成されている資金等の状況の図6

(イ) 運営形態別の収入支出及び資金保有額の状況

 運営形態別のうち、回転型及び保有型はそれぞれ前記の貸付事業基金及び債務保証事業基金とおおむね同様な動きとなること、運用型は1基金であり「第2の2(3) 基金に関する個別の事態 」で取り上げることから、ここでは取崩し型のみを記述することとする(回転型、保有型及び運用型の図表は巻末別表6 参照)。
 取崩し型51基金をみると、主なものは補助・補てん事業基金及び利子助成事業基金であり、3年度から20年度までの各年度末における資金保有額及び各年度における事業実績額をみると、図表31 のとおり、資金保有額の平均額1392億円は、事業実績額の平均額316億円と比較して4.4倍となっている。
 また、同期間の各年度末における資金保有額の最低額765億円(20年度末)を同期間の各年度における事業実績額が超えたのは、19、20両年度(各年度における事業実績額844億円及び1162億円)のみとなっている。これは、19、20両年度に機構等への補助金等返還金(19年度325億円、20年度103億円)が多額であったことや、配合飼料価格が高騰したため価格差補てん事業を行った(19年度561億円、20年度436億円)ことが主な要因であるが、機構等への補助金等返還金を除くと19、20両年度の収支はおおむね均衡している。また、51基金の中には、配合飼料価格の高騰等の異常な事態が生じたために特定の年度において事業実績額が多額に上って資金保有額が大きく減少しているものもあるが、51基金を全体としてみると、各基金における事業実績額の年度ごとの変動は一定程度平準化されて、異常な事態が生じた場合の影響が緩和されることになる。

図表31 取崩し型の収入支出及び資金保有額の推移
(単位:億円)
年度 平成3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 平均
(3年度〜20年度)
収入額合計 219 189 226 261 270 166 295 290 159 197 383 539 303 452 252 243 842 1,097 355
  機構等からの補助金等 103 94 130 191 215 125 132 121 110 148 331 521 284 250 224 188 507 888 253
その他収入 115 95 95 70 55 41 163 168 48 48 51 18 18 201 28 54 335 209 101
支出額合計 108 119 111 287 149 579 112 171 133 230 367 542 358 617 320 212 1,185 1,281 382
  事業実績額 105 115 100 277 140 569 102 103 105 145 313 521 238 402 263 181 844 1,162 316
機構等への補助金等返還金 0 13 20 76 31 0 48 197 40 7 325 103 47
その他支出 3 4 10 10 9 9 9 55 7 9 23 19 71 17 16 24 14 15 18
期末資金保有額 1,374 1,444 1,559 1,532 1,654 1,241 1,425 1,544 1,570 1,536 1,551 1,549 1,494 1,328 1,260 1,291 948 765 1,392
機構、機構の補助金交付先等に造成されている資金等の状況の図7

ウ 基金保有倍率

 個々の基金は、設置目的、事業内容、利用対象者、基金規模等を異にするため、それぞれの資金保有量を同一の尺度で比較しにくいという面がある。そこで、本報告においては、各基金を統一的に比較するために、直近の資金保有額を直近3年間の平均事業実績額で除して得た数値である基金保有倍率を用いることとする。基金保有倍率は、事業実績からみて資金保有量がどの程度の水準にあるかを表そうとするもので、この数値が1倍に近い基金ほど、単年度当たりの事業実績に対応した基金規模となっていると考えられる。
 60基金のうち、基金保有倍率が算定できない23基金(注6) を除いた37基金について、20年度末の基金保有倍率をみると、図表32 のとおりとなっている。すなわち、10倍以上のものが14基金あり、その内訳は、使途別では利子助成事業基金3基金、補助・補てん事業基金8基金及び調査等その他事業基金3基金、運営形態別では取崩し型13基金及び運用型1基金となっている。また、100倍以上のものは4基金あり、その内訳は、使途別では補助・補てん事業基金4基金、運営形態別では取崩し型3基金及び運用型1基金となっている。
 そして、基金保有倍率が10倍以上の14基金の資金保有額298億円は、基金保有倍率を算定できた37基金の資金保有額631億円の47%を占めており、さらに、この14基金の資金保有額298億円に基金保有倍率が算定できない23基金のうち直近3年間の平均事業実績額が0円である3基金の資金保有額553億円を加えた17基金の資金保有額851億円は、60基金の資金保有額1540億円の過半を占めている。
 このように、基金保有倍率の高い基金や直近3年間の平均事業実績額が0円であるために基金保有倍率が算定できない基金は、事業実績額と比較すると多額の資金を保有している。そして、これら基金の資金保有額が60基金の資金保有額の過半を占めていることは、財政資金の有効活用という面において問題があると考えられる。

 23基金  事業実施期間が3年間に満たないため直近3年間の平均事業実績額が算定できないものが20基金、異常な事態が生じた場合に事業を実施するためのものであるなどのため直近3年間の平均事業実績額が0円であるものが3基金ある。

図表32 使途別及び運営形態別の基金保有倍率(平成20年度末)
(基金数) (単位:基金)
1倍未満 1倍以上5倍未満 5倍以上10倍未満 10倍以上   基金保有倍率が算定できないもの 合計
30倍以上100倍未満 100倍以上 事業実施期間が3年間に満たないもの 直近3年間の平均事業実績額が0円のもの
使途 貸付け 1 4 1 0 0 0 3 1 10
債務保証 1 0 0 0 0 0 0 1 2
利子助成 0 0 3 3 1 0 9 0 15
補助・補てん 6 1 2 8 2 4 7 1 25
調査等その他 1 2 1 3 2 0 1 0 8
運営形態 取崩し型 8 3 6 13 5 3 20 1 51
回転型 1 4 1 0 0 0 0 1 7
保有型 0 0 0 0 0 0 0 1 1
運用型 0 0 0 1 0 1 0 0 1
合計 9 7 7 14 5 4 20 3 60
(資金保有額) (単位:千円)
1倍未満 1倍以上5倍未満 5倍以上10倍未満 10倍以上   基金保有倍率が算定できないもの 合計
30倍以上100倍未満 100倍以上 事業実施期間が3年間に満たないもの 直近3年間の平均事業実績額が0円のもの
使途 貸付け 5,070,012 3,698,381 3,163,495 - - - 13,427,149 53,535,555 78,894,594
債務保証 4,669 - - - - - - 1,330,426 1,335,095
利子助成 - - 4,121,298 3,050,283 1,035,329 - 14,265,696 - 21,437,278
補助・補てん 11,080,050 496,342 5,042,720 23,504,293 3,633,861 19,301,236 7,901,140 452,279 48,476,827
調査等その他 62,397 443,904 111,102 3,315,932 3,187,246 - 6,622 - 3,939,960
運営形態 取崩し型 11,147,117 940,247 9,275,121 19,094,686 7,856,437 8,525,412 35,600,609 452,279 76,510,062
回転型 5,070,012 3,698,381 3,163,495 - - - - 53,535,555 65,467,445
保有型 - - - - - - - 1,330,426 1,330,426
運用型 - - - 10,775,823 - 10,775,823 - - 10,775,823
合計 16,217,129 4,638,628 12,438,617 29,870,509 7,856,437 19,301,236 35,600,609 55,318,262 154,083,757

 また、基金保有倍率については、事業実施期間が3年間に満たないことから算定できない基金が20基金と多く見受けられた。そこで、60基金について、16年度から20年度までの各年度の事業実績額に対する各年度末の資金保有額の倍率をみると、図表33 のとおり、100倍以上のものは、16年度の7基金から20年度には2基金減少してはいるものの、いまだ5基金が残っており、10倍以上のものは、16年度の18基金から20年度には4基金増加し、22基金となっている。さらに、20年度の事業実績額が0円である基金も13基金ある。
 このように、基金保有倍率が算定できない基金を含めた60基金についてみても、基金保有倍率の分析と同様に事業実績額と比較すると多額の資金を保有している基金が多く、財政資金の有効活用という面において問題があると考えられる。

図表33 各年度の事業実績額に対する各年度末の資金保有額の倍率
(基金数) (単位:基金)
年度 1倍未満 1倍以上5倍未満 5倍以上10倍未満 10倍以上   当該年度に事業実績額が0円のもの 合計
30倍以上100倍未満 100倍以上
平成16年度 6 4 6 18 6 7 4 38
17年度 6 5 6 15 5 5 6 38
18年度 6 7 4 16 8 5 7 40
19年度 8 7 5 16 7 3 12 48
20年度 11 9 5 22 7 5 13 60
(資金保有額) (単位:千円)
年度 1倍未満 1倍以上5倍未満 5倍以上10倍未満 10倍以上   当該年度に事業実績額が0円のもの 合計
30倍以上100倍未満 100倍以上
平成16年度 10,903,649 5,562,975 93,913,447 99,481,995 10,549,730 76,625,208 2,620,391 212,482,459
17年度 1,589,650 17,124,633 13,156,522 39,253,829 7,442,654 25,457,526 139,649,041 210,773,676
18年度 3,290,013 23,100,181 7,196,670 41,008,459 9,987,084 24,869,169 140,293,250 214,888,576
19年度 39,115,476 6,936,730 7,287,137 30,290,536 9,524,246 13,555,549 90,994,446 174,624,328
20年度 11,390,484 15,385,670 8,188,443 48,609,189 14,727,006 18,579,576 70,509,969 154,083,757

 基金保有倍率の高い基金の事例を示すと、次のとおりである。

<事例>

〔2〕  社団法人全国畜産経営安定基金協会は、農林水産省から補助金の交付を受けて「畜産経営維持安定特別対策基金」を造成している(平成14年度設置。20年度末資金保有額35億8978万円(補助金相当額同額、うち牛関財源相当額同額))。
 本基金による事業は、BSE等の重大な家畜疾病の発生により経済的に影響を受けた畜産経営の維持・安定に必要な資金を円滑に融通するため、その債務保証を行う農業信用基金協会に対して保証債務の代位弁済に伴う損失を補てんするものである。
 本基金の20年度末の資金保有額は35億8978万円、直近3年間の平均事業実績額は9600万円であり、基金保有倍率は37.3倍と高くなっている。また、直近3年間において事業実績額が最大であった20年度の事業実績額に事務の処理に要する経費を加えても1億2442万円であり、20年度末の資金保有額はこの額の28.8倍となっている。

表 畜産経営維持安定特別対策基金の基金保有倍率
事業実績額 (単位:千円) 20年度末資金保有額 基金保有倍率
  平均事業実績額(A) (B)(単位:千円) (B)/(A)(単位:倍)
平成18年度 66,532 96,003 3,589,786 37.3
19年度 98,841
20年度 122,637

エ 事業実績額に対する事務費の割合

 基金を財源とする事業の実施に当たって必要となる人件費(調査、研究等に係る直接人件費のように事業実績額に含まれる人件費は除く。)その他事務の処理に要する経費(以下、これらを合わせて「事務費」という。)については、農林水産省又は機構が定めた実施要綱において、基金の運用益又は基金そのものを充てることが認められている。
 そこで、60基金について、事業実績額に対する事務費の割合をみると、図表34 のとおり、20年度において50%以上のものが12基金あった。
 同様に、直近5年間の各年度についてこの割合をみると、50%以上のものは各年度において8基金から12基金あり、このうち100%以上のものは16、17、20各年度でそれぞれ5基金、18年度で4基金、19年度で3基金となっていた。また、事業実績額が0円で事務費だけを支出しているものが16年度の2基金(事務費支出額計3478万円)から20年度は10基金(事務費支出額計1億0485万円)と増加している。

図表34 各年度における事業実績額に対する事務費の割合
(基金数) (単位:基金)
年度 事務費/事業実績額 当該年度に事業実績額が0円のもの 合計
10%未満 10%以上30%未満 30%以上50%未満 50%以上  
100%以上   事務費だけを支出しているもの
平成16年度 12 9 3 10 5 4 2 38
17年度 11 9 4 8 5 6 4 38
18年度 11 7 5 10 4 7 3 40
19年度 14 8 5 9 3 12 9 48
20年度 20 5 10 12 5 13 10 60
(事務費支出額) (単位:千円)
年度 事務費/事業実績額 当該年度に事業実績額が0円のもの 合計
10%未満 10%以上30%未満 30%以上50%未満 50%以上  
100%以上
平成16年度 2,398,118 365,011 272,181 322,469 162,696 34,781 3,392,562
17年度 884,999 1,307,528 123,719 349,225 180,491 351,417 3,016,890
18年度 1,229,345 970,249 740,771 138,720 91,889 294,372 3,373,459
19年度 2,004,967 439,610 344,972 89,947 27,745 190,401 3,069,899
20年度 952,313 79,829 403,985 1,380,174 1,012,229 104,852 2,921,155

 また、60基金を使途別、運営形態別にみると、図表35 のとおり、20年度において事業実績額に対する事務費の割合が50%以上となっている基金は、使途別では貸付事業基金2基金、利子助成事業基金5基金、補助・補てん事業基金4基金及び調査等その他事業基金1基金、運営形態別では取崩し型10基金及び回転型2基金となっている。
 さらに、事業実績額別にみると、事業実績額が1億円未満と最も少額な区分において、事業実績額に対する事務費の割合が50%以上のものが9基金となっている。このほか、この区分に属する基金には同年度の事業実績額が0円で事務費だけを支出しているものも10基金と多く、これらを合わせると19基金となって、この区分に属する36基金の5割を占めている。
 事務費は事業の実施に当たって必要な人件費等であるが、上記の36基金には、事業実績額に対する事務費の割合が高い基金や事業実績額が0円で事務費だけを支出している基金が多く、事業の効率的実施や財政資金の有効活用という面において問題があると考えられる。

図表35 使途別、運営形態別、事業実績額別の事業実績額に対する事務費の割合(平成20年度)
(基金数) (単位:基金)
事務費/事業実績額 事業実績額が0円のもの 合計
10%未満 10%以上30%未満 30%以上50%未満 50%以上  
100%以上   事務費だけを支出しているもの
使途 貸付け 5 0 2 2 1 1 1 10
債務保証 0 0 0 0 0 2 2 2
利子助成 2 1 4 5 3 3 3 15
補助・補てん 9 3 3 4 1 6 3 25
調査等その他 4 1 1 1 0 1 1 8
運営形態 取崩し型 18 4 8 10 4 11 8 51
回転型 2 0 2 2 1 1 1 7
保有型 0 0 0 0 0 1 1 1
運用型 0 1 0 0 0 0 0 1
事業実績額 1億円未満 5 4 5 9 4 13 10 36
1億円以上5億円未満 6 1 5 1 0 0 0 13
5億円以上 9 0 0 2 1 0 0 11
合計 20 5 10 12 5 13 10 60
(事務費支出額) (単位:千円)
事務費/事業実績額 事業実績額が0円のもの 合計
10%未満 10%以上30%未満 30%以上50%未満 50%以上  
100%以上
使途 貸付け 102,327 - 128,359 1,233,615 965,314 66,636 1,530,938
債務保証 - - - - - 8,671 8,671
利子助成 3,949 1,147 195,160 60,093 45,807 27,654 288,005
補助・補てん 830,653 73,112 70,677 78,465 1,108 565 1,053,474
調査等その他 15,382 5,569 9,788 8,000 - 1,325 40,066
運営形態 取崩し型 900,790 65,211 275,626 146,559 46,915 34,166 1,422,354
回転型 51,523 - 128,359 1,233,615 965,314 66,636 1,480,133
保有型 - - - - - 4,050 4,050
運用型 - 14,617 - - - - 14,617
事業実績額 1億円未満 5,931 22,397 43,783 84,115 46,915 104,852 261,079
1億円以上5億円未満 46,402 57,432 360,202 62,444 - - 526,481
5億円以上 899,979 - - 1,233,615 965,314 - 2,133,594
合計 952,313 79,829 403,985 1,380,174 1,012,229 104,852 2,921,155

オ 基金の運用状況

 基金の運用について、国は「公益法人の設立許可及び指導監督基準」(平成8年9月20日閣議決定)に基づき、運用財産の管理運用は、当該法人の健全な運営に必要な資産(現金、建物等)を除き、元本が回収できる可能性が高くかつなるべく高い運用益が得られる方法で行うこととしている。
 また、機構は「畜産業振興事業により造成された基金等の管理運用等について」(平成18年18農畜機第23号)に基づき、造成された基金は、万全を期するため、元本保全を第一義とし、加えて、安全・確実・有利を基本とした効率的運用に努めるものとしている。そして、運用方法については、短期の金融商品は普通預金等、長期の金融商品は国債、地方債、定期預金等とし、満期保有を原則としている。
 60基金のうち普通預金等の短期の金融商品のみにより運用されている14基金を除いた46基金について、20年度末における金融商品(国債、地方債、定期預金等)による運用状況をみると、図表36 のとおり、制度の趣旨から長期の運用が想定される運用型1基金を除いた45基金のうち、1年以上の運用が行われているものが12基金あった。このうち5年以上の運用が行われているものは5基金で、この中には10年以上の長期間にわたって運用が行われているものも3基金(資金運用額計10億1620万円)あった。これらの基金については、当面の資金に余裕が生じているために長期間の運用が行われているとも考えられる。

図表36 運営形態別の基金の運用状況
(基金数) (単位:基金)
運営形態 基金数 運用期間
1年未満 1年以上  
3年以上  
5年以上 左のうち10年以上
取崩し型 39 34 8 6 2 1
回転型 5 5 3 3 2 1
保有型 1 1 1 1 1 1
小計 45 40 12 10 5 3
運用型 1 1 1 1 1 1
合計 46 41 13 11 6 4
(注)
 1基金で複数の運用期間による運用が行われているものがあるため、「1年未満」と「1年以上」の欄を合計しても「基金数」とは一致しない。

(運用額) (単位:千円)
運営形態 運用額 運用期間
1年未満 1年以上  
3年以上  
5年以上 左のうち10年以上
取崩し型 71,289,782 67,285,549 4,004,232 3,624,122 1,012,968 546,478
回転型 64,379,800 48,280,110 16,099,689 14,890,013 797,933 400,000
保有型 1,266,841 35,014 1,231,827 1,138,628 349,560 69,730
小計 136,936,424 115,600,674 21,335,749 19,652,765 2,160,461 1,016,208
運用型 10,780,000 5,300,073 5,479,926 4,482,446 4,482,446 1,989,235
合計 147,716,424 120,900,747 26,815,676 24,135,211 6,642,908 3,005,443

 また、運用型1基金も含めて1年以上の運用が行われている13基金の運用状況をみると、各基金事業の実施要綱で定める事業の実施期間を越えて運用が行われているものが4基金あり、これらはいずれも運用期間が5年以上で、このうち10年以上が3基金ある。4基金のうち、畜産新技術開発活用促進基金(社団法人畜産技術協会)については、20年度末に事業が終了して21年度に基金残額が全額機構に返還されている。しかし、残りの3基金が運用している資金計50億1444万円(図表37 参照)については、事業終了の際に補助金等の返還が必要となる場合には、満期償還前の売却等による損失が発生して、返還に必要な額を確保できない可能性がある。

図表37 事業の実施期間を越えて運用が行われている3基金の運用状況
基金名 法人名 運用額(単位:千円) 運用方法 運用期間
食肉価格安定基金 (財)沖縄県畜産振興基金公社 4,482,446 国債 約10年
貸付機械取得資金 日本ハム・ソーセージ工業協同組合 400,000 定期預金 20年
畜産関係情報提供衛星通信推進事業基金 (財)競馬・農林水産情報衛星通信機構 132,000 社債 約8年
5,014,446

 これら基金の事例を示すと、次のとおりである。

<事例>

〔3〕  日本ハム・ソーセージ工業協同組合は、機構から補助金等の交付を受けて「貸付機械取得資金」を造成している(平成元年度設置。20年度末資金保有額31億6349万円(補助金等相当額15億8174万円、うち牛関財源相当額5億0687万円))。
 本基金による事業は、食肉加工業者等に対して、国産食肉及び畜産副生物の新規用途開発、製品等の品質・衛生管理並びに環境対策のために必要な成型機等の機械施設の貸付けを行うものである。
 また、事業の実施期間(新規貸付け)が実施要綱において24年度までとされていることから、本基金は、25年度以降は新規貸付けを目的とする資金を保有する必要はない。
 しかし、20年度末における資金保有額の運用状況をみると、運用額32億4511万円(注) (普通預金4515万円、定期預金13億5500万円、国債12億0866万円、地方債3億3525万円及び農林債3億0104万円)のうち、定期預金4億円(運用期間20年(16年3月から36年3月))については、満期日が25年度以降であり事業の実施期間である24年度を越えて運用されている。また、当該定期預金の規定等には、中途解約は原則としてできないことや、やむを得ない理由により中途解約する場合は中途解約清算金を支払うこととなり、その結果、元本欠損が生ずるリスクを有することなどが明記されている。

 平成20年度末の運用額32億4511万円には未払金等が含まれているため、20年度末資金保有額31億6349万円とは一致しない。

(3) 基金に関する個別の事態

ア 基金事業としての在り方について検討を要するもの

 農林水産省、機構及び22法人において、基金が保有している資金の状況や基金に係る事業の実施状況等について実地に検査したところ、14法人の37基金(20年度末資金保有額1294億円、補助金等相当額1227億円)において、次のような事態が見受けられた。

(ア) 配合飼料価格の高騰等の異常時に備えるためとして、必要以上に多額の資金を保有しているもの(5基金、20年度末資金保有額708億円、補助金等相当額698億円)

図表38 5基金の概要
(単位:千円)
基金名 法人名 使途 運営形態 所管 平成20年度末資金保有額
  補助金等相当額
  牛関財源相当額
異常補てん積立基金 注(1) (社)配合飼料供給安定機構 補助・補てん 取崩し型 7,084,537 7,602,376 488,479
備蓄基金 (社)配合飼料供給安定機構 調査等その他 取崩し型 304,771 304,151 23,346
融資準備財産 (社)全国肉用牛振興基金協会 貸付け 回転型 機構 53,535,555 53,535,555
子牛生産拡大奨励事業基金 (社)全国肉用牛振興基金協会 補助・補てん 取崩し型 機構 6,705,531 6,705,531 3,155,504
家畜防疫互助基金 (社)全国家畜畜産物衛生指導協会 注(2) 補助・補てん 取崩し型 機構 3,252,264 1,737,423 1,144,400
70,882,660 69,885,039 4,811,731
注(1)  異常補てん積立基金は農林水産省からの補助金と(社)全国配合飼料供給安定基金等から納付される積立金とにより造成されており、それぞれ補助金勘定及び積立金勘定で経理されている。このうち積立金勘定において、平成20年度末に一時的に資金不足が生じたため、補助金相当額(補助金勘定残高)が資金保有額(補助金勘定残高+積立金勘定残高(△5億1783万円))を上回っている。
注(2)  (社)全国家畜畜産物衛生指導協会は、21年4月に(社)中央畜産会に統合されている。

 これら5基金は、配合飼料価格の高騰や病害の発生等の異常な事態が生じたときに、各法人が実施する価格差補てん交付金の交付や生産者の経済的損失の補償等に充てられるものである。
 しかし、上記のような異常な事態が生ずる時期を予測することは困難であり、また、実際に生ずる頻度は低く、異常な事態が生じていない期間は長期にわたることが多い。そして、3年度から20年度までの期間について、これらの基金の状況をみると、上記のような異常な事態が実際に生じた頻度は低く、期間の大宗を占める通常時においては、事業実績額が0円であったり、資金保有額と比較して著しく少額であったりなどしている。
 また、配合飼料価格の高騰や病害の発生等といった互いに異なる事態は、必ずしも同時期に発生するわけではなく、異なる時期に発生する可能性の方が高いと考えられる。このような場合、各々の事態に対応するために必要な資金をすべて各基金ごとに保有するよりも、例えば、生ずる頻度が比較的高く多額の資金を必要としない事態には個別の基金により対応して、一定規模以上の事態に対しては機構の資金で対応することとしたり、各基金を統合して対応したりなどといったように、一つの資金で複数の事態に対応することとする方が、リスクの平準化が図られて、全体として必要な資金量を縮減することができることになる。
 現に、これら5基金を全体としてみると、各基金における事業実績額の年度ごとの変動が一定程度平準化されて、いずれの年度においても年度末の資金保有額は当該年度の事業実績額を上回っている。
 すなわち、3年度から20年度までの各年度末における資金保有額及び各年度における事業実績額をみると、19、20両年度の事業実績額がそれぞれ568億円及び441億円と多額に上ったため、この2年間の事業を実施した後の20年度末における資金保有額が708億円と最低になっているが、それでも19、20両年度の事業実績額や、最高額である6年度の事業実績額(575億円)をも上回る資金を保有している。また、資金保有額の平均額と事業実績額の平均額との比較では、事業実績額(202億円)の7.4倍に相当する1499億円もの資金を保有していることになる(図表39 参照)。

図表39 異常補てん積立基金等5基金を全体としてみた場合の資金保有額及び事業実績額の推移

図表39異常補てん積立基金等5基金を全体としてみた場合の資金保有額及び事業実績額の推移

 このように、これら5基金において、配合飼料価格の高騰や病害の発生等の異常な事態が実際に生じた頻度は低いのに、生ずる可能性の低い異常な事態に備えて、長期間にわたり個別の基金として必要以上に多額の資金を保有している事態は適切とは認められない。
 したがって、これら5基金に係る事業のうち今後も実施されるものについては、財政資金の有効活用を図るために、例えば、補助金等相当額を国又は機構に返還させた上で、必要に応じて年度ごとに補助金等を交付することにより事業を実施し、異常な事態に対応するための財源が必要な場合には機構の資金等を充てることとする可能性や、各基金の統合等によりリスクを平準化して資金保有額の縮減を図る可能性等も含めて、事業の在り方について幅広く検討する必要があると認められる。
 このような基金の事例を示すと、次のとおりである。

<事例>

〔4〕  社団法人全国肉用牛振興基金協会は、機構から補助金等の交付を受けて「融資準備財産」を造成している(昭和47年度設置。平成20年度末資金保有額535億3555万円(補助金等相当額同額、うち牛関財源相当額0円))。
 本基金による事業は、肉用子牛生産者補給金制度の健全な運営を図るため、指定協会において肉用子牛生産者補給金の一部に充てるための生産者積立金に不足が生じた場合に、指定協会に対して資金の貸付けを行うものである。

 (事業実績額及び資金保有額)
 3年度から7年度までの各年度における事業実績額をみると、平均額は129億7401万円であり、特に5、6両年度には、牛肉の輸入自由化の影響を受けて肉用子牛生産者補給金が増加したことに伴い生産者積立金が不足したため、168億3441万円及び335億1346万円と多額に上っている。このため3年度末には523億2045万円であった資金保有額は6年度末には207億1587万円と当該年度の事業実績額を下回る額にまで減少している。
 しかし、8年度から20年度までの各年度における事業実績額をみると、事業実績があるのは、BSEの発生による影響等があった11年度から16年度までであり、この間の事業実績額は最高額でも27億1967万円(15年度)となっている。一方、同期間の各年度末における資金保有額をみると、最低額500億0257万円(15年度末)は、同期間の各年度における事業実績額の最高額27億1967万円(15年度)と比較して18倍となっており、また、平均額520億6962万円は、事業実績額の平均額2億2986万円と比較して226倍となっていて、必要以上に多額の資金を保有している。
 なお、直近3年間における事業実績額が0円であることから基金保有倍率は算定できない。

 (基金の見直しなどの状況)
 本基金については、21年度に社団法人全国肉用牛振興基金協会が実施した基金の見直しの結果、同年度に437億3827万円を機構へ返還している。しかし、本基金は、20年度末資金保有額535億3555万円から、この返還額を差し引いても、なお97億9728万円に上る多額の資金を保有していることとなる。

図 融資準備財産の状況

図融資準備財産の状況

(イ) 当面使用する見込みのないなどの多額の資金を保有しているもの(24基金、20年度末資金保有額345億円、補助金等相当額343億円)

図表40 24基金の概要
(単位:千円)
基金名 法人名 使途 運営形態 所管 平成20年度末資金保有額
  補助金等相当額
  牛関財源相当額
畜産経営維持安定特別対策基金 (社)全国畜産経営安定基金協会 補助・補てん 取崩し型 3,589,786 3,589,786 3,589,786
畜産特別資金融通円滑化基金 (社)中央畜産会 補助・補てん 取崩し型 機構 1,317,320 1,317,320 430,448
畜産特別資金融通円滑化特別基金 (社)中央畜産会 補助・補てん 取崩し型 機構 452,279 452,279 99,879
大家畜経営体質強化基金 (社)中央畜産会 利子助成 取崩し型 機構 952,557 952,557 1,061
大家畜経営活性化基金 (社)中央畜産会 利子助成 取崩し型 機構 3,108,282 3,108,282 1,188,246
養豚経営活性化基金 (社)中央畜産会 利子助成 取崩し型 機構 60,458 60,458 21,826
大家畜経営改善支援基金 (社)中央畜産会 利子助成 取崩し型 機構 1,864,853 1,864,853 1,760,599
養豚経営改善支援基金 (社)中央畜産会 利子助成 取崩し型 機構 150,100 150,100 150,100
大家畜特別支援基金 (社)中央畜産会 利子助成 取崩し型 機構 5,799,005 5,799,005 5,799,005
養豚特別支援基金 (社)中央畜産会 利子助成 取崩し型 機構 622,756 622,756 622,756
畜産経営支援指導機能強化基金 (社)中央畜産会 補助・補てん 取崩し型 機構 44,075 44,075 44,075
大規模公共牧場肉用牛資源供給拡大対策基金 (社)中央畜産会 補助・補てん 取崩し型 機構 502,560 502,560 170,839
産業動物獣医師修学資金基金 (社)中央畜産会 補助・補てん 取崩し型 機構 205,956 205,956 205,956
家畜疾病経営維持基金 (社)中央畜産会 利子助成 取崩し型 機構 1,035,329 1,035,329 784,541
家畜飼料特別支援基金 (社)中央畜産会 利子助成 取崩し型 機構 7,657,446 7,657,446 7,657,446
家畜飼料債務保証円滑化基金 (社)中央畜産会 補助・補てん 取崩し型 機構 2,476,688 2,476,688 2,476,688
鳥インフルエンザ防疫強化対策基金 (社)全国家畜畜産物衛生指導協会 (注) 補助・補てん 取崩し型 機構 363,238 363,238 242,066
広域生乳需給調整基金 (社)中央酪農会議 補助・補てん 取崩し型 機構 1,790,456 1,790,456
広域生乳流通体制確立基金 (社)中央酪農会議 補助・補てん 取崩し型 機構 246,731 246,731
酪農ヘルパー事業円滑化対策基金(全国事業基金) (社)酪農ヘルパー全国協会 調査等その他 取崩し型 機構 1,400,275 1,260,247
酪農ヘルパー利用拡大中央基金 (社)酪農ヘルパー全国協会 補助・補てん 取崩し型 機構 496,342 496,342 64,404
畜産関係情報提供衛星通信推進事業基金 (財)競馬・農林水産情報衛星通信機構 調査等その他 取崩し型 機構 139,132 139,132 139,132
生乳検査精度管理強化基金 (財)日本乳業技術協会 調査等その他 取崩し型 機構 128,686 128,686
乳製品国際規格策定活動支援基金 (財)日本乳業技術協会 調査等その他 取崩し型 機構 111,102 111,102
34,515,425 34,375,396 25,448,863
 (社)全国家畜畜産物衛生指導協会は、平成21年4月に(社)中央畜産会に統合されている。

 これら24基金は、あらかじめ複数年度分の所要額を基金として造成したことなどにより複数年度分の事業実績額に相当する資金を保有している。
 しかし、これら24基金のうち、畜産経営者等に対して一定の条件で貸付けを行う融資機関に対して利子補給金を交付する事業や、貸付けに対する債務保証を行う農業信用基金協会に対して保証債務の代位弁済に伴う損失を補てんする事業等に充てられる基金では、利子補給や債務保証の対象となる貸付けに係る貸付残高、貸付期間、利子補給率等を把握することなどにより、次年度以降各年度に必要となる資金量を一定程度予測することが可能であるのに、この各年度に必要になると見込まれる資金量ではなく、当該事業が終了するまでに必要になると見込まれる資金量を基金設置当初から保有するなどしていて、当面使用する見込みのない多額の資金を保有している。
 こうしたことから、上記の利子補給や保証債務の代位弁済に伴う損失補てんなどを行う基金を含めたこれら24基金について資金保有額や事業実績額の推移をみると、多くの基金において各年度末の資金保有額は当該年度の事業実績額を大きく上回るものとなっている。
 これら24基金を全体として、3年度から20年度までの各年度末における資金保有額及び各年度における事業実績額をみると、資金保有額の最低額215億円(18年度末)は、事業実績額の最高額60億円(13年度)と比較して3.5倍となっており、また、資金保有額の平均額333億円は、事業実績額の平均額33億円と比較して9.9倍となっている(図表41 参照)。

図表41 畜産経営維持安定特別対策基金等24基金を全体としてみた場合の資金保有額及び事業実績額の推移

図表41畜産経営維持安定特別対策基金等24基金を全体としてみた場合の資金保有額及び事業実績額の推移

 このように、これら24基金において、必要以上に多額の資金を保有している事態は適切とは認められない。
 したがって、これら24基金に係る事業のうち今後も実施されるものについては、財政資金の有効活用を図るために、例えば、各事業の将来にわたる資金需要をより的確に把握して資金保有額の縮減を図る可能性や、補助金等相当額を国又は機構に返還させた上で必要に応じて年度ごとに補助金等を交付することにより事業を実施する可能性等も含めて、事業の在り方について幅広く検討する必要があると認められる。
 このような基金の事例を示すと、次のとおりである。

<事例>

〔5〕  社団法人全国畜産経営安定基金協会は、農林水産省から補助金の交付を受けて「畜産経営維持安定特別対策基金」を造成している(平成14年度設置。20年度末資金保有額35億8978万円(補助金相当額同額、うち牛関財源相当額同額))。
 本基金による事業は、BSE等の重大な家畜疾病の発生により経済的に影響を受けた畜産経営の維持・安定に必要な資金を円滑に融通するため、その債務保証を行う農業信用基金協会に対して保証債務の代位弁済に伴う損失を補てんするものである。そして、農業信用基金協会が融資機関に対して保証債務の代位弁済を行った場合、その代位弁済額から独立行政法人農林漁業信用基金からの保険金受領額を除いた額の一部を農業信用基金協会に対して交付するものである。

 (事業実績額及び資金保有額)
 本基金が設置された14年度以降20年度までの各年度における事業実績額をみると、補てんの対象となる代位弁済の発生率が見込みに比べて低かったなどのため、最高額でも1億2263万円(20年度)となっている。一方、同期間の各年度末における資金保有額をみると、最低額35億8978万円(20年度末)は、同期間の各年度における事業実績額の最高額1億2263万円(20年度)と比較して29倍となっており、また、平均額38億1833万円は、事業実績額の平均額6690万円と比較して57倍となっている。そして、20年度末においても基金保有倍率は37倍となっていて、必要以上に多額の資金を保有している。

図 畜産経営維持安定特別対策基金の状況

図畜産経営維持安定特別対策基金の状況

〔6〕  社団法人中央畜産会は、機構から補助金等の交付を受けて「家畜飼料特別支援基金」を造成している(平成19年度設置。20年度末資金保有額76億5744万円(補助金等相当額同額、うち牛関財源相当額同額))。
 本基金による事業は、畜産の生産基盤の維持と安定的発展を図るために、配合飼料価格が一定の水準を上回った場合に畜産経営者等に対して飼料購入に必要な家畜飼料特別支援資金を貸し付ける融資機関に対して、利子補給を行うものである。
 本基金による利子補給の対象となる貸付けは、19年度から21年度までの3年間に行われるもので、貸付枠は3年間の合計で680億円とされている。そして、本基金は、19年度に、貸付枠680億円に利子補給率の見込みを乗ずることなどにより算定された76億1968万円の補助金等の交付を受けて造成されている。

 (事業実績額、資金保有額等)
 19年度から21年度までの事業実績額をみると、利子補給は通常貸付け後1年以上経過した後に行われることや、19年度第2四半期まで配合飼料価格が一定の水準を上回らなかったことから、19、20両年度は0円、21年度は実績報告書によれば1億2539万円となっている。そして、20年度末の資金保有額76億5744万円は、21年度の事業実績額1億2539万円と比較して61倍となっている。
 さらに、22年度以降の各年度に必要になると見込まれる資金量を、21年度末における利子補給の対象となる貸付けの合計額534億0924万円(計画承認額(注) )に基づき推計すると、これらに対する利子補給率が貸付けの時期により1.25%から2.15%となっていることから、上記の534億0924万円に利子補給率の最大値2.15%を乗じた11億4829万円が上限額となる。そして、20年度末の資金保有額76億5744万円は、当該上限額11億4829万円と比較して6.6倍となっている。
 このように、本基金は、各年度に必要になると見込まれる資金量ではなく、事業が終了するまでに必要になると見込まれる資金量を保有していて、当面使用する見込みのない多額の資金を保有している。

 (基金の見直しなどの状況)
 本基金については、22年3月17日に農林水産省が機構に発した「平成22年度畜産業振興事業の実施について」(平成22年21生畜第1919号農林水産省生産局長通知)において、利子補給の対象となる貸付けの期間を22年度まで延長することとしている。

 家畜飼料特別支援資金の貸付けは、畜産経営者等が作成する生産性向上計画を都道府県知事が承認した後に行われる。計画承認額として記述しているのは、都道府県知事が承認した生産性向上計画における借入希望額である。なお、計画承認額は貸付けの限度額であり、実際の貸付額は必ずしも計画承認額とは一致しない。

図 家畜飼料特別支援基金の状況

図家畜飼料特別支援基金の状況

(ウ) 事業実績額等の支出が借受者からの貸付金の回収額等の収入を下回るなどしていて必要以上に多額の資金を保有しているもの(6基金、20年度末資金保有額119億円、補助金等相当額101億円)

図表42 6基金の概要
(単位:千円)
基金名 法人名 使途 運営形態 所管 平成20年度末資金保有額
  補助金等相当額
  牛関財源相当額
肥育素牛導入基金 (社)全国畜産経営安定基金協会 貸付け 回転型 機構 842,907 842,907
貸付機械取得資金 (社)日本ハンバーグ・ハンバーガー協会 貸付け 回転型 機構 341,243 161,114
生乳流通効率化リース基金 (財)畜産環境整備機構 貸付け 回転型 機構 1,138,289 1,138,289
食肉リース基金 (財)畜産環境整備機構 貸付け 回転型 機構 1,375,940 1,375,940 482,817
畜産環境整備リース基金 (財)畜産環境整備機構 貸付け 回転型 機構 5,070,012 5,070,012 4,034,182
貸付機械取得資金 日本ハム・ソーセージ工業協同組合 貸付け 回転型 機構 3,163,495 1,581,747 506,871
11,931,889 10,170,012 5,023,871

 これら6基金は、畜産経営者等に対する貸付けやリースを行う事業に充てられるものである。そして、これら6基金による事業は、借受者からの貸付金の回収額等の収入を新たな貸付けやリースの財源とする回転型としての貸付事業となっている。
 しかし、これら6基金は、資金保有額が事業実績額である新規貸付額と比較して多額になっていたり、事業実績額等の支出が回収額等の収入を下回っていたりなどしている。
 また、回転型の貸付事業基金における資金保有額、事業実績額等の状況をみるため、これら6基金のうち、過去に回転型の貸付事業ではない補助付きリース(注7) を実施していた食肉リース基金及び畜産環境整備リース基金(注8) を除く4基金を全体として、3年度から20年度までの各年度末における資金保有額や各年度における事業実績額等をみると、各基金における事業実績額の年度ごとの変動が一定程度平準化されており、いずれの年度においても年度末の資金保有額は当該年度の事業実績額を上回っている。そして、当該期間内の資金保有額の平均額と事業実績額の平均額との比較では、事業実績額(15億円)の4.6倍に相当する70億円もの資金を保有していることになり、さらに、事業実績額(注9) の平均額と回収額等の平均額との比較では、事業実績額(注9) が回収額等を1901万円下回っている(図表43 参照)。

(注7)
 補助付きリース  リースの対象となる機械施設の取得価額の一部に補助金を充てて、取得価額と補助金の差額を回収額等の算定の基礎として貸付けを行うものである。
(注8)
 食肉リース基金及び畜産環境整備リース基金  食肉リース基金は平成12、13両年度に、畜産環境整備リース基金は9年度から19年度まで、それぞれ補助付きリースを実施していた。
(注9)
 事業実績額  貸付機械取得資金については、回収額等に利子に相当する附加貸付料等を含んでいることから、事業実績額に附加貸付料等で賄うこととなる事務費を加えている。

図表43 肥育素牛導入基金等4基金を全体としてみた場合の資金保有額、事業実績額等の推移

図表43肥育素牛導入基金等4基金を全体としてみた場合の資金保有額、事業実績額等の推移

 このように、これら4基金を含めた前記6基金において、資金保有額が事業実績額と比較して多額になっていたり、事業実績額等の支出が回収額等の収入を下回っていたりなどしていて、必要以上に多額の資金を保有している事態は適切とは認められない。
 したがって、これら6基金に係る事業については、財政資金の有効活用を図るために、例えば、各事業における回収額等を考慮することにより事業の資金需要をより的確に把握して資金保有額の縮減を図る可能性や、各基金の統合等により資金需要を平準化して資金保有額の縮減を図る可能性等も含めて、事業の在り方について幅広く検討する必要があると認められる。
 このような基金の事例を示すと、次のとおりである。

<事例>

〔7〕  日本ハム・ソーセージ工業協同組合は、機構から補助金等の交付を受けて「貸付機械取得資金」を造成している(平成元年度設置。20年度末資金保有額31億6349万円(補助金等相当額15億8174万円、うち牛関財源相当額5億0687万円))。
 本基金による事業は、食肉加工業者等に対して、国産食肉及び畜産副生物の新規用途開発、製品等の品質・衛生管理並びに環境対策のために必要な成型機等の機械施設の貸付けを行うものである。そして、借受者から回収する基本貸付料(注1) 等を新たな貸付けの財源とする回転型としての貸付事業となっている。

 (事業実績額及び資金保有額)
 3年度から20年度までの各年度末における資金保有額や各年度における事業実績額等を平均してみると、事業実績額(6億4999万円)の3.9倍に相当する25億7533万円もの資金を保有していることになり、さらに、事業実績額(注2) が回収額等を1173万円下回っている(図2 参照)。そして、20年度末においても基金保有倍率は6.0倍となっていて、多額の資金を保有している。

 (基金の見直しなどの状況)
 本基金については、21年度に同組合が実施した基金の見直しの結果、同年度に補助金等相当額3億1560万円を機構へ返還している。なお、20年度末の資金保有額31億6349万円から21年度に機構等へ返還した6億3121万円(上記補助金等相当額3億1560万円を含む。)を除いた金額25億3227万円により基金保有倍率を算定しても、なお4.8倍となる。

(注1)
 基本貸付料  機械施設の取得価額等を貸付期間で除して得た額
(注2)
 事業実績額  貸付機械取得資金については、回収額等に利子に相当する附加貸付料等を含んでいることから、事業実績額に附加貸付料等で賄うこととなる事務費を加えている。

図1 貸付機械取得資金の状況(1)

図1貸付機械取得資金の状況(1)

図2 貸付機械取得資金の状況(2)

図2貸付機械取得資金の状況(2)

〔8〕  財団法人畜産環境整備機構は、機構から補助金等の交付を受けて「生乳流通効率化リース基金(平成19年度までは牛乳輸送施設リース基金)」を造成している(昭和57年度設置。平成20年度末資金保有額11億3828万円(補助金等相当額同額、うち牛関財源相当額0円))。
 本基金による事業は、集送乳の合理化及び生乳等の流通の効率化を図るため、生乳輸送業者等に対して、生乳等の輸送等に必要なミルクタンクローリー等の機械施設の貸付けを行うものである。そして、借受者から回収する基本貸付料(注) 等を新たな貸付けの財源とする回転型としての貸付事業となっている。

 (事業実績額及び資金保有額)
 3年度から5年度までの各年度及び15年度における事業実績額(10億0114万円(3年度)、6億3677万円(4年度)、6億4645万円(5年度)及び20億1552万円(15年度))は、それぞれ当該年度末における資金保有額(7694万円(3年度末)、1億4393万円(4年度末)、1億7070万円(5年度末)及び11億0379万円(15年度末))を超えている。特に事業実績額の最高額20億1552万円(15年度)は3年度から17年度までの各年度末における資金保有額を超えるものとなっている。
 しかし、16年度から20年度までの各年度末における資金保有額及び各年度における事業実績額をみると、資金保有額の最低額11億3828万円(20年度末)は、事業実績額の最高額5億5372万円(17年度)と比較して2.0倍となっており、また、資金保有額の平均額19億3103万円は、事業実績額の平均額4億2467万円と比較して4.5倍となっている。
 さらに、3年度から20年度までの各年度における事業実績額及び回収額等を平均してみると、事業実績額が回収額等を423万円下回っている(図2 参照)。そして、機構は20年度に今後の所要額を見直して13億9809万円を返還させているが、20年度末においても基金保有倍率は3.0倍となっていて、なお多額の資金を保有している。

 基本貸付料  機械施設の取得価額等を貸付期間で除して得た額

図1 生乳流通効率化リース基金の状況(1)

図1生乳流通効率化リース基金の状況(1)

図2 生乳流通効率化リース基金の状況(2)

図2生乳流通効率化リース基金の状況(2)

(エ) 基金の運用益により事業を実施しているため、近年の低金利により縮小している事業規模と比較して著しく多額の資金を保有しているもの(1基金、20年度末資金保有額107億円、補助金等相当額71億円)

図表44 食肉価格安定基金の概要
(単位:千円)
基金名 法人名 使途 運営形態 所管 平成20年度末資金保有額
  補助金等相当額
  牛関財源相当額
食肉価格安定基金 (財)沖縄県畜産振興基金公社 補助・補てん 運用型 機構 10,775,823 7,183,882

 この基金は、基金の運用益を財団法人沖縄県畜産振興基金公社が実施する県産食肉の安定供給等に係る補助・補てん事業に充てるものである。
 この基金では、近年の低金利状況下で運用益が資金保有額と比較して著しく少額なものとなり、その結果、事業規模は縮小して、資金保有額が事業実績額と比較して著しく多額となっている。このように多額の資金を有効に使用することなく保有している事態は適切とは認められない。
 したがって、運用型基金に係る事業については、財政資金の有効活用を図るために、当該基金に係る補助金等相当額を機構に返還させた上で必要に応じて年度ごとに補助金等を交付することにより事業を実施する可能性等も含めて、事業の在り方について幅広く検討する必要があると認められる。
 上記の事態を示すと、次のとおりである。

〔9〕  財団法人沖縄県畜産振興基金公社は、機構から補助金等の交付を受けて「食肉価格安定基金」を造成している(平成2年度設置。20年度末資金保有額107億7582万円(補助金等相当額71億8388万円、うち牛関財源相当額0円))。
 本基金による事業は、沖縄県産食肉の安定供給、県内食肉価格の安定及び県内食肉生産基盤の拡大を図るための事業に対して補助するもので、基金の運用益をこれらの財源としている。

 (事業実績額及び資金保有額)
 本基金の20年度末における資金保有額は107億7582万円であり、20年度の運用益1億0053万円に対して事業費は1億0012万円(事業実績額8550万円、事務費1461万円)となっている。
 本基金の各年度末における資金保有額の推移をみると、3年度から20年度までの間を通して110億円前後となっている。これに対して各年度の運用益の推移をみると、3年度から7年度までは平均で7億6955万円、8年度から10年度までは平均で2億5965万円、そして11年度から20年度までは平均で1億0936万円となっている。こうしたことから、事業実績額が大きく減少した13年度以降20年度までの各年度末における資金保有額及び各年度における事業実績額をみると、資金保有額の最低額105億7998万円(14年度末)は、事業実績額の最高額9389万円(18年度)と比較して112倍となっており、また、資金保有額の平均額106億9680万円は、事業実績額の平均額7010万円と比較して152倍となっている。そして、20年度末においても基金保有倍率は126倍となっていて、多額の資金を有効に使用することなく保有している。

図 食肉価格安定基金の状況

図食肉価格安定基金の状況

(オ) 事業実施に充てることが可能な法人の自主財源等の規模を考慮すると事業実施に必要な水準を超えた多額の資金を保有しているもの(1基金、20年度末資金保有額13億円、補助金等相当額11億円)

図表45 保証基金の概要
(単位:千円)
基金名 法人名 使途 運営形態 所管 平成20年度末資金保有額
  補助金等相当額
  牛関財源相当額
保証基金 (社)日本家畜商協会 債務保証 保有型 機構 1,330,426 1,103,691 1,103,691

 この基金は、社団法人日本家畜商協会が実施する、傘下の会員組合による肉用子牛の導入に必要な資金の融通の円滑化を図るための債務保証及び代位弁済に充てられるものである。
 しかし、事業実施要領の規定や事業実績額等をみると、同協会の基本財産等だけで事業実施に必要な資金量を満たしており、事業実施に必要な水準を超えた多額の資金を保有していて適切とは認められない。
 したがって、この基金に係る事業については、財政資金の有効活用を図るために、補助金等相当額を機構に返還させる可能性等も含めて、事業の在り方について幅広く検討する必要があると認められる。
 上記の事態を示すと、次のとおりである。

〔10〕  社団法人日本家畜商協会は、機構から補助金等の交付を受けて「保証基金」を造成している(平成10年度設置。20年度末資金保有額13億3042万円(補助金等相当額11億0369万円、うち牛関財源相当額同額))。
 本基金による事業は、同協会の傘下の会員組合が実施する肉用子牛の導入に必要な資金の融通の円滑化を図るため、その債務保証を行うものである。

 (債務保証限度額及び債務保証残高)
 事業実施要領によれば、本基金による債務保証残高は、本基金と同協会の基本財産等の額との合計額の15倍相当額(以下「実施要領上の債務保証限度額」という。20年度末の場合254億1510万円)を超えてはならないとされている。
 しかし、同協会は、実務上、債務保証残高が59億6370万円(以下、この金額を「実務上の債務保証限度額」という。)を超えないよう事業を運営しており、20年度末の債務保証残高は48億5572万円となっている。そして、20年度末の実施要領上の債務保証限度額について、本基金の額を0円と仮定して同協会の基本財産等の額のみで試算すると、その額は72億4320万円となり、実務上の債務保証限度額を上回っている。

 (事業実績)
 同協会が債務保証を行うに当たっては、同協会の業務方法書において当該債務について組合理事長を含む過半数の理事の連帯保証人を立てる必要があるとされていること、債務保証の対象は個々の畜産農家ではなく会員組合であるため保証を受ける組合の財務状況を把握しやすいことなどから、代位弁済のリスクは低く、現に、本基金が設置された10年度以降20年度までに代位弁済を行った実績はない。

図 保証基金の状況

図保証基金の状況

 なお、会計検査院は、上記(ア)から(オ)の各事態で取り上げた基金のうち16基金が保有する資金について有効活用を図るよう22年8月25日に農林水産大臣及び独立行政法人農畜産業振興機構理事長に対して、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。

イ 経理等が適切を欠いていたもの

 農林水産省、機構及び22法人において、基金の造成や経理の状況等について実地に検査したところ、次のように適切を欠いている事態が見受けられた。

(ア) 基金事業から生じた収入を機構の承認を受けて支出することとした経費に充てていなかったなどのもの

 3法人(5基金)において、基金事業から生じた収入の一部について、機構の承認を受けて支出することとした経費に充てていなかったり、基金として管理する収入から除外して取り扱っていたりしていた。
 このような事態の事例を示すと、次のとおりである。

<事例>

〔11〕  財団法人畜産環境整備機構(以下「畜環機構」という。)は、機構から補助金等の交付を受けて「畜産環境整備リース基金」等3基金を造成している(昭和51年度から57年度までの間に設置。平成20年度末資金保有額計75億8424万円(補助金等相当額同額、うち牛関財源相当額45億1699万円))。
 本基金による事業は、たい肥化施設等の整備の推進を図るなどのため、畜産経営者等に対して、たい肥化施設等の機械施設の貸付けを行うものである。そして貸付事業の実施に当たっては、畜環機構の一般会計と区分して特別会計で経理することとし、基金を取り崩して貸付事業に要する経費に充てるとともに、機械施設の借受者から徴収する基本貸付料(注1) 、附加貸付料(注2) 等を基金に繰り入れている。
 また、畜環機構は、実施要綱等により、次の場合を除き、基金を取り崩してはならないとされている。

ア 貸付事業に要する経費に充てる場合

イ 基金の資金運用により果実を得たとき及び機械施設の借受者から附加貸付料を得たとき、それらの額の合計額を限度として機構の理事長の承認を受けて支出する経費に充てる場合

 畜環機構は、5年度から20年度まで(10年度から14年度まで及び17年度を除く。)の毎年度、貸付事業から生じた附加貸付料等の収入の一部を貸付事業を推進するための経費に充てるとして機構の理事長の承認を受けて基金を取り崩し、畜環機構の一般会計に計10億6750万円(補助金等相当額同額)を繰り入れていた。
 しかし、畜環機構が一般会計に繰り入れた上記の金額計10億6750万円のうち、1658万円については、機構の理事長の承認を受けて支出することとした貸付事業を推進するための経費とは関係のない経費に充てられていた。また、5億4000万円については、機構の理事長の承認を受けて支出することとした貸付事業を推進するための経費に充てられることなく一般会計に積み立てられたままとなっていた。
 したがって、本基金から取り崩した計10億6750万円のうち5億5658万円(補助金等相当額同額)は、機構の理事長の承認を受けて支出することとした経費に充てられていなかった。

(注1)
 基本貸付料  機械施設の取得価額等を貸付期間で除して得た額
(注2)
 附加貸付料  機械施設の取得価額から前年度までに納付された基本貸付料を控除するなどして得た額に、畜環機構が別に定める利率を乗ずるなどして得た額
〔12〕  社団法人日本家畜商協会は、機構から補助金等の交付を受けて「保証基金」を造成している(平成10年度設置。20年度末資金保有額13億3042万円(補助金等相当額11億0369万円、うち牛関財源相当額同額))。
 本基金による事業は、同協会の傘下の会員組合が実施する肉用子牛の導入に必要な資金の融通の円滑化を図るため、その債務保証を行うものである。そして、同協会は、事業の実施に当たり、被保証者から保証金額に応じた保証料の徴収を行っている。
 本基金による事業の実施要綱においては、基金を他の勘定と区分して経理しなければならないこととなっているが、保証料については基金に繰り入れるべき収入とするとの規定はない。このため、同協会は10年度から20年度までの本基金による事業に関する保証料収入計3億0418万円を会計処理上基金として管理する収入から除外して取り扱っており、その他の事業の収入と合わせて同協会の一般会計で経理していた。

(イ) 補助金の交付手続に問題があったもの

 農林水産省において、補助事業者に対して当該年度内に補助事業が完了していないのに完了したこととする事実と異なる実績報告書を提出させ、これにより補助金の額の確定を行っていた。
 上記の事態を示すと、次のとおりである。

〔13〕  社団法人配合飼料供給安定機構(以下「安定機構」という。)は、農林水産省から補助金の交付を受けて「異常補てん積立基金」を造成している(昭和49年度設置。平成20年度末資金保有額70億8453万円(補助金相当額76億0237万円(注) 、うち牛関財源相当額4億8847万円))。
 本基金による事業は、配合飼料価格安定対策事業実施要綱等に基づき、安定機構が、輸入原料価格が著しく高騰して配合飼料価格が大幅に値上がりした場合において、その畜産経営者に及ぼす影響を緩和するため、畜産経営者に対する価格差補てんを行う社団法人全国配合飼料供給安定基金等3法人(以下「配合飼料基金3法人」という。)に、本基金を財源として異常補てん交付金を交付するものである。
 そして、本基金は、同省からの補助金のほか、安定機構が配合飼料基金3法人から納付させる異常補てん積立金(以下「積立金」という。)により造成されており、配合飼料基金3法人が納付する額は、上記の要綱等により、原則として同省の補助金の額を下限として農林水産省生産局長が定める額とされている。
 同省は、安定機構に対して、20年度において、本基金120億円の造成に要する経費として国庫補助金60億円を、また、20年度第1次補正予算の成立に伴い、本基金170億円の造成に要する経費として国庫補助金85億円を、それぞれ20年9月30日、21年3月25日に概算払し、同年4月28日に国庫補助金の額を145億円として確定している。
 しかし、同省は、実際には配合飼料基金3法人が積立金を20年度内に納付することは困難な状況にあるとして、安定機構に対して、21年3月10日に〔1〕 第1次補正予算に係る国庫補助金に対応する積立金85億円については、21年度に配合飼料基金3法人から納付させるものとして別途21年度に通知する予定であり、農林水産省生産局長が定める20年度積立金の額は60億円に据え置くこととしたこと、〔2〕 他方、交付要綱に基づく提出書類については、国庫補助金及び積立金の額を、それぞれ20年度第1次補正予算に係る国庫補助金85億円を含めた145億円で記載願いたいこと、を通知していた。
 このため、安定機構は、上記の通知を踏まえて、配合飼料基金3法人から積立金85億円を納付させておらず、また、国庫補助金85億円については仮受金としており、20年度内に基金170億円を造成していなかったが、同省に対して、異常補てん積立基金290億円の造成を行ったとの、事実と異なる内容の実績報告書を提出していた。そして、同省はこの実績報告書に基づき、補助事業が完了していないことを知りながら補助金の額を確定していた。
 なお、安定機構は、21年度に同省から発出された通知に基づいて、当該国庫補助金85億円及び21年度に同省から交付された国庫補助金50億円とを合わせた135億円に係る積立金135億円を配合飼料基金3法人から21年度中に納付させ、本基金として造成している。

 本基金は農林水産省からの補助金と社団法人全国配合飼料供給安定基金等3法人から納付される積立金とにより造成されており、それぞれ補助金勘定及び積立金勘定で経理されている。このうち積立金勘定において、平成20年度末に一時的に資金不足が生じたため、補助金相当額(補助金勘定残高)が資金保有額(補助金勘定残高+積立金勘定残高(△5億1783万円))を上回っている。

(4) 基金の見直し、基本的事項の公表等

ア 基金に関する基準

 18年8月に、補助金等の交付により造成した基金等を保有する団体が基金により実施している事業に関して、所管府省が補助金交付要綱等に基づく指導監督を行う場合の基準として、「補助金等の交付により造成した基金等に関する基準」が閣議決定された。
 一方、機構は、国における基準の策定等を踏まえて、19年3月に、機構が交付した補助金等により造成した基金の管理に関する指導の基準として、「畜産業振興事業の実施のために独立行政法人農畜産業振興機構からの補助金の交付により造成した基金の管理に関する基準」(平成19年18農畜機第4545号)を定めている。
 これらの基準においては、団体が保有している基金のうち、当該団体において2か年度以上にわたり事業を実施していくための基金を対象とするなどとされており、基金の見直し及び基本的事項の公表について、以下の事項等が規定されている。

(ア) 基金の見直し

a 見直しの時期等

 団体は、国所管基金については少なくとも5年に1回、機構所管基金については3年に1回、定期的な見直しを行うこと(ただし、機構の18年度の見直しにおいては、見直しの対象から事業実施期間の最終年度が18年度である基金が除外されている。)
 そして、団体は、実施した見直しの概要及び次回見直しの時期について、ホームページへ掲載するなど適切な手段により公表すること

b 基金の保有に関する基準

 団体は、定期的な見直しの際に、基金事業の今後の見通し又はこれまでの実績からみて基金の規模が過大となっていないかなどの状況を客観的に把握するために、「基金の保有割合(基金事業に要する費用に対する保有基金額等の割合)」を合理的な事業見通し又は実績を用いて算出すること
 そして、基金の使途、運営形態により分類された次の8つの基金それぞれについて保有割合の算出式が例示されている。
 〔1〕 貸付事業(回転型)、〔2〕 債務保証事業(保有型)、〔3〕 利子補給事業(取崩し型)、〔4〕 利子補給事業(運用型)、〔5〕 補助・補てん事業(取崩し型)、〔6〕 補助・補てん事業(運用型)、〔7〕 調査等その他事業(取崩し型)、〔8〕 調査等その他事業(運用型)

c 使用見込みの低い基金に関する基準

 基金の保有割合が1を大幅に上回っている基金、前回の見直し以降事業実績がない基金、直近3か年以上事業実績がない基金等使用見込みの低い基金を保有する団体は、定期的な見直しの際に、基金の財源となっている補助金等の国庫や機構への返還等基金の取扱いを検討し、検討結果について適切な手段により公表すること

(イ) 基金の基本的事項の公表

 団体は、基金の名称、基金額、基金のうち補助金等相当額、基金事業の概要、定期的な見直しの時期等の基本的事項について、基金造成後速やかに公表すること
 そして、既に設置されている基金については、初回の見直しにあわせて、これらの基本的事項を公表するとともに、所管府省及び機構においても、同様の公表を行うこと

イ 基準に基づく基金の見直しの状況

(ア) 国所管基金

 19年3月に、国所管基金4基金(3団体)に係る基準に基づく見直しの結果が農林水産省及び各団体において公表されている。
 さらに、「補助金等の交付により造成した基金、公益法人の行う融資等業務及び特別の法律により設立される法人の見直し等について」(平成18年12月24日行政改革推進本部決定)により21年度に予定されていた再見直しが、20年7月の閣僚懇談会において内閣総理大臣から各大臣に「無駄遣い撲滅対策」を確実に実施するよう要請があったことから前倒しとなり、20年度中に実施されることとなった。そして、国所管基金4基金に係るこの見直しの結果が農林水産省及び各団体において21年5月に公表されている。なお、これらの見直しによる国庫への返還は行われていない(図表46 参照)。

図表46 国所管基金の平成18、20両年度の見直し
(平成18年度) (単位:百万円)
番号 基金名 団体名 基金額
(平成18.4.1現在)
保有割合 補助金返還額
  補助金相当額
1 畜産経営維持安定特別対策基金 (社)全国畜産経営安定基金協会 3,813 3,813 1.0
2 畜産生産技術高度化機械リース助成基金 (社)中央畜産会 43 43 1.0
3 異常補てん積立基金 (社)配合飼料供給安定機構 85,650 46,896 0.9
4 備蓄基金 (社)配合飼料供給安定機構 377 377 0.47
4基金 89,883 51,129
(平成20年度) (単位:百万円)
番号 基金名 団体名 基金額
(平成20.4.1現在)
保有割合 補助金返還額
  補助金相当額
1 畜産経営維持安定特別対策基金 (社)全国畜産経営安定基金協会 3,679 3,679 1.0
2 畜産生産技術高度化機械リース助成基金 (社)中央畜産会 8 8 1.1
3 異常補てん積立基金 (社)配合飼料供給安定機構 38,182 23,145 0.4
4 備蓄基金 (社)配合飼料供給安定機構 299 299 0.5
4基金 42,168 27,131
注(1)  本表は公表資料等を基に作成したものである。基金額には、団体により資金保有額又は基金総額が用いられている。
注(2)  保有割合の考え方は、基金額を事業実施に必要な額で除したものである。

(イ) 機構所管基金

 19年5月に、機構所管基金29基金(12団体)に係る基準に基づく見直しの結果が機構及び各団体において公表されている。そして、この見直しにより3基金(3団体)から合計10億6208万円が機構に返還されている。これら3基金のうち2基金は保有割合が2を超えたものであり、食肉処理販売等緊急特別対策基金(社団法人中央畜産会)から19年度に1181万円が、中堅外食事業者資金融通円滑化基金(社団法人日本フードサービス協会)から19年度に8億1065万円、20年度に8087万円、計8億9153万円が、それぞれ返還されている。残りの1基金は酪農ヘルパー事業円滑化対策補助基金(社団法人酪農ヘルパー全国協会)であり、今後事業の見込みがないとして19年度に1億5874万円が返還されている(図表47 参照)。

図表47 機構所管基金の平成18年度の見直し
(単位:百万円)
番号 基金名 団体名 基金残高
(平成18.4.1現在)
保有割合 補助金等返還額
  補助金等相当額
1 家畜改良体制整備基金 (社)家畜改良事業団 196 196 1.0
2 肥育素牛導入基金 (社)全国畜産経営安定基金協会 2,562 2,434 1.4
3 融資準備財産 (社)全国肉用牛振興基金協会 50,626 50,626 0.8
4 子牛生産拡大奨励事業基金 (社)全国肉用牛振興基金協会 11,512 11,512 0.8
5 畜産特別資金融通円滑化基金 (社)中央畜産会 920 920 1.5
6 畜産特別資金融通円滑化特別基金 (社)中央畜産会 444 444 0.8
7 大家畜経営体質強化基金 (社)中央畜産会 1,655 1,655 1.2
8 大家畜経営活性化基金 (社)中央畜産会 4,209 4,209 1.2
9 養豚経営活性化基金 (社)中央畜産会 106 106 1.2
10 大家畜経営改善支援基金 (社)中央畜産会 2,365 2,365 0.7
11 養豚経営改善支援基金 (社)中央畜産会 176 176 0.8
12 畜産経営支援指導機能強化基金 (社)中央畜産会 66 66 1.1
13 産業動物獣医師修学資金基金 (社)中央畜産会 242 242 1.1
14 家畜疾病経営維持基金 (社)中央畜産会 396 396 0.3
15 食肉処理販売等緊急特別対策基金 (社)中央畜産会 13 13 2.6 11
16 畜産関係団体運営基盤強化中央基金 (社)中央畜産会 251 251 1.0
17 生乳検査体制強化基金 (社)中央酪農会議 100 100 1.0
18 畜産副産物需給安定基金 (社)日本畜産副産物協会 190 190 0.7
19 貸付機械取得資金 (社)日本ハンバーグ・ハンバーガー協会 504 252 0.9
20 中堅外食事業者資金融通円滑化基金 (社)日本フードサービス協会 1,072 965 2.3 891
21 酪農ヘルパー事業円滑化対策基金(全国事業基金) (社)酪農ヘルパー全国協会 1,470 1,323 1.8
22 酪農ヘルパー事業円滑化対策補助基金 (社)酪農ヘルパー全国協会 158 158 158
23 酪農ヘルパー利用拡大中央基金 (社)酪農ヘルパー全国協会 1,077 1,077 1.0
24 畜産関係情報衛星通信システム運営基盤強化基金 (財)競馬・農林水産情報衛星通信機構 1,006 1,006 1.0
25 食肉リース基金 (財)畜産環境整備機構 4,254 4,254 1.0
26 畜産環境整備リース基金 (財)畜産環境整備機構 61,602 61,602 通常リース分0.6、補助付きリース分0.9、補助取崩分0.2
27 牛乳輸送施設リース基金 (財)畜産環境整備機構 3,684 3,684 1.1
28 畜産環境特別対策基金 (財)畜産環境整備機構 588 588 0.6
29 貸付機械取得資金 日本ハム・ソーセージ工業協同組合 3,351 1,676 1.2
29基金 154,795 152,486 1,062
注(1)  本表は公表資料等を基に作成したものである。基金残高には、団体により資金保有額又は基金総額が用いられている。
注(2)  保有割合の考え方は、基金残高を事業実施に必要な額で除したものである。
注(3)  番号16の畜産関係団体運営基盤強化中央基金は図表1 の番号17の大規模公共牧場肉用牛資源供給拡大対策基金として、番号24の畜産関係情報衛星通信システム運営基盤強化基金は図表1 の番号40の畜産関係情報提供衛星通信推進事業基金として、番号27の牛乳輸送施設リース基金は図表1 の番号43の生乳流通効率化リース基金として、平成20年度末にはそれぞれ存続している。
注(4)  番号15の食肉処理販売等緊急特別対策基金は18年度に、番号1の家畜改良体制整備基金、番号17の生乳検査体制強化基金、番号18の畜産副産物需給安定基金、番号22の酪農ヘルパー事業円滑化対策補助基金及び番号28の畜産環境特別対策基金は19年度に廃止されていることから、20年度末に存続している基金を記載した図表1にはない。

 21年10月に、機構所管基金316基金(157団体)に係る基準に基づく見直しの結果が機構及び各団体において公表されている。そして、この見直しにより保有割合が1を超えるなどした9基金(6団体)から、合計456億7423万円が21年度に機構へ返還されている。これら9基金のうち肥育素牛導入基金(社団法人全国畜産経営安定基金協会)等7基金は保有割合が1を超えたものであり、計451億0626万円が返還されている。残りの2基金のうち畜産特別資金融通事業基金(社団法人中央畜産会)からは事業の一部を終了したため5億2385万円が、畜産経営支援指導機能強化基金(社団法人中央畜産会)からは目的を達したことから事業を終了するとして4411万円が、それぞれ返還されている(図表48 及び図表49 参照)。

図表48 機構所管基金の平成21年度の見直し(1)
(単位:百万円)
番号 基金名 団体名 基金残高
(平成21.4.1現在)
保有割合 補助金等返還額
  補助金等相当額
1 肥育素牛導入基金 (社)全国畜産経営安定基金協会 2,283 2,283 1.1 98
2 融資準備財産 (社)全国肉用牛振興基金協会 53,836 53,836 5.0 43,738
3 子牛生産拡大奨励事業基金 (社)全国肉用牛振興基金協会 6,706 6,706 0.9
4 畜産特別資金融通事業基金 (社)中央畜産会 14,328 14,328 ※1 1.0 523
5 畜産経営支援指導機能強化基金 (社)中央畜産会 44 44 ※2 44
6 大規模公共牧場肉用牛資源供給拡大対策基金 (社)中央畜産会 503 503 1.8 226
7 産業動物獣医師修学資金基金 (社)中央畜産会 206 206 0.8
8 家畜疾病経営維持基金 (社)中央畜産会 1,106 1,106 0.9
9 家畜飼料特別支援資金 (社)中央畜産会 10,134 10,134 0.9
10 家畜防疫互助基金 (社)中央畜産会 3,252 1,737 1.0
11 鳥インフルエンザ防疫強化対策基金 (社)中央畜産会 363 363 0.9
12 広域生乳需給調整基金 (社)中央酪農会議 1,790 1,790 0.6
13 加工原料乳生産者経営安定基金 (社)中央酪農会議 7,915 5,972 1.0
14 広域生乳流通体制確立基金 (社)中央酪農会議 247 247 1.0
15 保証基金 (社)日本家畜商協会 1,330 1,104 0.9
16 貸付機械取得資金 (社)日本ハンバーグ・ハンバーガー協会 484 231 1.2 50
17 中堅外食事業者資金融通円滑化基金 (社)日本フードサービス協会 4 4 ※2
18 事業準備財産 (社)配合飼料供給安定機構 29,196 29,196 1.0
19 酪農ヘルパー事業円滑化対策基金(全国事業基金) (社)酪農ヘルパー全国協会 1,400 1,260 1.7 568
20 酪農ヘルパー利用拡大中央基金 (社)酪農ヘルパー全国協会 496 496 1.2 109
21 畜産関係情報提供衛星通信推進事業基金 (財)競馬・農林水産情報衛星通信機構 139 139 0.9
22 たい肥調整・保管施設リース基金 (財)畜産環境整備機構 2,577 2,577 1.0
23 畜産経営生産性向上支援リース基金 (財)畜産環境整備機構 12,486 12,486 1.0
24 生乳流通効率化リース基金 (財)畜産環境整備機構 2,286 2,286 1.0
25 食肉リース基金 (財)畜産環境整備機構 3,654 3,654 1.0
26 畜産環境整備リース基金 (財)畜産環境整備機構 44,536 44,536 0.9
27 生乳検査精度管理強化基金 (財)日本乳業技術協会 129 129 1.0
28 乳製品国際規格策定活動支援基金 (財)日本乳業技術協会 111 111 1.0
29 リース基金 全国肉牛事業協同組合 5 5 ※3
30 リース基金 全国農業協同組合連合会 53 53 ※3
31 リース基金 全国酪農業協同組合連合会 72 72 ※3
32 貸付機械取得資金 日本ハム・ソーセージ工業協同組合 4,586 2,293 1.1 315
32基金 206,257 199,887 45,674
注(1)  本表は、機構が中央団体としている団体が保有する32基金について公表した資料等を基に作成したものである。基金残高には、団体により資金保有額又は基金総額が用いられている。
注(2)  基金残高は、生産者等が拠出した金額も含まれている。
注(3)  保有割合の考え方は、基金残高を事業実施に必要な額で除したものである。
注(4)  番号4の畜産特別資金融通事業基金とは、平成18年度における機構所管基金の見直し時の畜産特別資金融通円滑化基金、畜産特別資金融通円滑化特別基金、大家畜経営体質強化基金、大家畜経営活性化基金、養豚経営活性化基金、大家畜経営改善支援基金及び養豚経営改善支援基金を合わせたものに、20年度に設置された大家畜特別支援基金及び養豚特別支援基金を加えて公表しているものである。
注(5)  保有割合欄の※1は、事業の一部を終了予定
注(6)  保有割合欄の※2は、21年度内に前倒しで事業終了予定のため、保有割合を算出していない。
注(7)  番号9の家畜飼料特別支援資金は、家畜飼料特別支援基金と家畜飼料債務保証円滑化基金とを合わせて公表しているものである。
注(8)  保有割合欄の※3は、既に事業を終了しているため、保有割合を算出していない。
図表49 機構所管基金の平成21年度の見直し(2)
(単位:百万円)
番号 基金名 団体名 基金残高
(平成21.4.1現在)
保有割合 補助金等返還額
  補助金等相当額
1 地域肉用牛肥育経営安定基金 47地方団体 8,379 6,252
2 都道府県事業基金 46地方団体 8,749 4,491
3 運営特別基金 46地方団体 6,590 6,590
4 運営基盤強化基金 44地方団体 1,701 1,701
5 地域肉豚生産安定基金 43地方団体 3,644 3,644
6 拡大基金 31地方団体 4,267 1,008
7 酪農ヘルパー利用拡大基金 25地方団体 68 68
8 食肉価格安定基金 (財)沖縄県畜産振興基金公社 10,776 7,184 1.0
9 リース基金 ホクレン農業協同組合連合会 2,573 2,573 1.0
284基金 46,747 33,511
注(1)  本表は、機構が地方団体としている団体(都道府県に所在する畜産協会、農業信用基金協会等)が保有する284基金について公表した資料等を基に作成したものである。基金残高には資金保有額が用いられている。
注(2)  基金残高は、生産者等が拠出した金額も含まれている。
注(3)  保有割合の考え方は、基金残高を事業実施に必要な額で除したものである。
注(4)  保有割合欄の※については、各地方団体ごとに算出しているため略している。

ウ 基準に基づく基金の見直しにおける問題点

 国所管基金及び機構所管基金のそれぞれ18、20両年度及び18、21両年度の基金の見直しの内容等について実地に検査したところ、以下のような事態が見受けられた。

(ア) 基金の保有割合の算出

 前記のとおり、基準は、「基金の保有割合(基金事業に要する費用に対する保有基金額等の割合)」を合理的な事業見通し又は実績を用いて算出することとしている。
 しかし、各団体が保有割合の算出に用いた資料に基づき、その算出過程を検証したところ、次の事由等により、保有割合の算出が必ずしも合理的なものとなっていないと認められる基金が図表50 のとおり計8基金見受けられた。

a 「基金事業に要する費用」の算定

 基準は、「基金事業に要する費用」について、利子補給事業(取崩し型)では「事業が完了するまでに要する利子補給額及び管理費」、調査等その他事業(取崩し型)では「事業が完了するまでに必要となる事業費及び管理費」などと例示している。しかし、「基金事業に要する費用」について、事業の終期を越えた時期までの額としたり、近年の事業実績額と比較して著しく額の大きい過去最高の事業実績額を用いて算定したりなどしていた。

b 「保有基金額等」の算定

 貸付事業(回転型)の場合、基金の保有割合の算出式は「直近年度末の基金額÷(貸付残高+貸付見込額-回収見込額+管理費)」となっている。そして、この算出式における「直近年度末の基金額」には、借受者から回収された附加貸付料(注10) や、将来の貸付けの原資となり得る貸付残高を含むことになっている。
 しかし、「直近年度末の基金額」に附加貸付料や貸付残高を含めずに保有割合を算出していた。

 附加貸付料  機械施設の取得価額から前年度までに納付された基本貸付料を控除するなどして得た額に、貸付事業を行う団体が別に定める利率を乗ずるなどして得た額

図表50 保有割合の算出が合理的なものとなっていないもの
所管 団体名 基金名 見直し年度 見直しの結果の保有割合 態様
「基金事業に要する費用」の算定が合理的なものとなっていないもの 「保有基金額等」の算定が合理的なものとなっていないもの
(社)全国畜産経営安定基金協会 畜産経営維持安定特別対策基金 平成20 1.0  
機構 (社)全国肉用牛振興基金協会 融資準備財産 18 0.8
21 5.0  
(社)中央畜産会 家畜疾病経営維持基金 21 0.9  
(社)日本ハンバーグ・ハンバーガー協会 貸付機械取得資金 18 0.9
21 1.2  
(社)酪農ヘルパー全国協会 酪農ヘルパー事業円滑化対策基金(全国事業基金) 18 1.8  
21 1.7  
(財)畜産環境整備機構 生乳流通効率化リース基金(19年度まで牛乳輸送施設リース基金) 18 1.1
21 1.0
食肉リース基金 18 1.0
21 1.0
日本ハム・ソーセージ工業協同組合 貸付機械取得資金 18 1.2
21 1.1  

 保有割合の算出が合理的なものとなっていないと認められるこれらの基金について、会計検査院が直近5年間の平均事業実績額に基づくなどして基金事業に要する費用を超える額等を試算すると、図表51 のとおりであり、21年度の見直しでは、20年度末の資金保有額等のうち基金事業に要する費用を超える額の合計は7基金で582億円(補助金等相当額576億円)になる計算となる。

図表51 基金事業に要する費用を超える額等
(単位:百万円)
所管 団体名 基金名 見直し年度 基金額又は基金残高 見直しの結果の保有割合 21年度の見直しによる補助金等返還額 会計検査院試算
保有割合 基金事業に要する費用 基金事業に要する費用を超える額 左のうち補助金等相当額
  補助金等相当額
(社)全国畜産経営安定基金協会 畜産経営維持安定特別対策基金 平成20 3,679 3,679 1.0 6.5 565 3,112 3,112
機構 (社)全国肉用牛振興基金協会 融資準備財産 18 50,626 50,626 0.8 14.6 3,615 49,296 49,296
21 53,836 53,836 5.0 43,738 101.5 530 53,305 53,305
(社)中央畜産会 家畜疾病経営維持基金 21 1,106 1,106 0.9 5.1 215 890 890
(社)日本ハンバーグ・ハンバーガー協会 貸付機械取得資金 18 504 252 0.9 18.0 30 526 262
21 484 231 1.2 50 1.7 274 209 99
(社)酪農ヘルパー全国協会 酪農ヘルパー事業円滑化対策基金(全国事業基金) 18 1,470 1,323 1.8 9.6 151 1,318 1,186
21 1,400 1,260 1.7 568 10.1 138 1,262 1,135
(財)畜産環境整備機構 生乳流通効率化リース基金(19年度まで牛乳輸送施設リース基金) 18 3,684 3,684 1.1 1.2 3,204 953 953
21 2,286 2,286 1.0 1.8 1,513 1,237 1,237
食肉リース基金 18 4,254 4,254 1.0 2.2 2,561 3,122 3,122
21 3,654 3,654 1.0 1.1 3,126 564 564
日本ハム・ソーセージ工業協同組合 貸付機械取得資金 18 3,351 1,676 1.2 3.2 1,437 3,206 1,602
21 4,586 2,293 1.1 315 1.2 3,789 796 398
7団体
見直し年度別の内訳
18年度:5団体
20年度:1団体
21年度:6団体
8基金
見直し年度別の内訳
18年度:6基金
20年度:1基金
21年度:7基金
18 63,889 61,815 10,998 58,421 56,421
20 3,679 3,679 565 3,112 3,112
21 67,352 64,666 44,672 9,585 58,263 57,628
(注)
 本表は公表資料等を基に作成したものである。基金額又は基金残高には、団体により資金保有額又は基金総額が用いられている。

 これらについて事例を示すと、次のとおりである。

<事例>

[基金事業に要する費用の算定が合理的なものとなっていないもの]

〔14〕  家畜疾病経営維持基金(社団法人中央畜産会、機構所管基金)

 平成21年度の見直しにおいて、社団法人中央畜産会は、利子補給見込額の算定に用いる貸付見込額について、あらかじめ定めた貸付枠の上限額まで貸し付けることとして算定するなどして、保有割合を0.9としていた。
 しかし、利子補給の対象となる貸付けの実績額は貸付枠を大きく下回っており、直近5年間の平均の事業実績額及び事務費を用いるなどして保有割合を試算すると次表のとおり5.1となる。

表 平成21年度の見直しに係る保有割合の算出
団体の算出 会計検査院の試算
直近年度末の基金残高(1) 1,106百万円 平成20年度末 1,106百万円 20年度末
事業が完了するまでに必要となる事業費及び管理費(2) 1,168百万円 21、22両年度の貸付枠の上限額と既貸付額との合計額に基づき必要な利子補給額等を算定 215百万円 直近5年間の利子補給額等の平均額を用いて事業の終期までの7年間を対象として算定
保有割合(1)/(2) 0.9 5.1

[基金事業に要する費用の算定及び保有基金額等の算定が合理的なものとなっていないもの]

〔15〕  融資準備財産(社団法人全国肉用牛振興基金協会、機構所管基金)

 平成18年度の見直しにおいて、社団法人全国肉用牛振興基金協会は、直近年度末の基金残高に貸付残高を含めずに、また、事業の終期(新規採択の最終年度)が19年度であるのに終期を越えた20年度までを対象期間とし、かつ、過去の最高額である5年度から7年度までの3か年の貸付実績の合計額に基づき貸付見込額を算定するなどして、保有割合を0.8としていた。
 しかし、上記の過去最高額の貸付実績は近年の実績を大きく上回っていることから13年度から17年度までの直近5年間の平均事業実績額に基づき事業終期である19年度までの貸付見込額を算定し、直近年度末の基金残高に貸付残高を含めるなどして保有割合を試算すると表1 のとおり14.6となる。

表1 平成18年度の見直しに係る保有割合の算出
団体の算出 会計検査院の試算
直近年度末の基金残高(1) 50,626百万円 平成17年度末(貸付残高を含めていない) 52,912百万円 17年度末(貸付残高を含む)
貸付残高(2) 2,286百万円 17年度末 2,286百万円 17年度末
貸付見込額(3) 60,267百万円 過去貸付最大の3か年(5年度から7年度まで)の貸付総額 1,176百万円 直近5年間の貸付額の平均額の2年間分(事業の終期までの期間)
回収見込額(4) 738百万円 18年度から20年度までの回収見込額 35百万円 18、19両年度の回収見込額
管理費(5) 1,739百万円 過去貸付最大の3か年(5年度から7年度まで)の額 187百万円 直近5年間の平均額の2年間分(事業の終期までの期間)
保有割合
(1)/((2)+(3)-(4)+(5))
0.8 14.6

 そして、20年4月に、本事業の終期は24年度とされたが、21年度の見直しにおいて、同協会は、貸付見込額の算定方法を、牛の品種区分ごとの直近7年間における平均売買価格の動向を用いるなどして生産者積立金で賄うべき肉用子牛生産者補給金の額を算定し、このうち生産者積立金で不足する部分を貸付見込額とすることに変更して、保有割合を5.0としていた。
 しかし、本事業は17年度以降の事業実績がないので、16年度から20年度までの直近5年間の平均事業実績額に基づいて事業終期までの貸付見込額を算定するなどして保有割合を試算すると表2 のとおり101.5となる。

表2 平成21年度の見直しに係る保有割合の算出
団体の算出 会計検査院の試算
直近年度末の基金残高(1) 53,836百万円 平成20年度末 53,836百万円 20年度末
貸付残高(2) 301百万円 20年度末 301百万円 20年度末
貸付見込額(3) 10,322百万円 直近7年間の肉用子牛の取引価格に基づくなどして貸付見込額を算定 141百万円 直近5年間の貸付額の平均額の4年間分(事業の終期までの期間)
回収見込額(4) 301百万円 事業終期の24年度までに貸付残高を回収 301百万円 事業終期の24年度までに貸付残高を回収
管理費(5) 388百万円 直近5年間の平均額の4年間分(事業の終期までの期間) 389百万円 直近5年間の平均額の4年間分(事業の終期までの期間)
保有割合
(1)/((2)+(3)-(4)+(5))
5.0 101.5

 なお、同協会は、21年度の見直しの結果、同年度に437億3827万円を機構に返還している。

(イ) 保有割合が1を超えるものの取扱い

 国所管基金については、18、20両年度の見直しにおいて基金の保有割合が1を超えた基金は、20年度の見直しにおける畜産生産技術高度化機械リース助成基金(社団法人中央畜産会)1基金である。同基金について、社団法人中央畜産会は、当該見直しに係る公表資料において、22年度に後年度負担が終了することから終了後速やかに基金残高を国庫に返還するとしている。
 一方、機構所管基金については、機構は、前記のように、18年度の見直しにおいて基金の保有割合が2を超えた食肉処理販売等緊急特別対策基金及び中堅外食事業者資金融通円滑化基金の2基金について補助金等の一部を返還させているが、基金の保有割合が1を超えて2以下となっている10基金については補助金等を返還させていない。この理由について、機構は、18年度の見直しにおいては、基金の保有割合が1を大幅に上回っている場合とは保有割合が2を超えることであるとしていたためであるとしている。なお、機構は、21年度の見直しにおいて基金の保有割合が1を超えた7基金について、図表48 のとおり、補助金等の一部を返還させている。
 国及び機構における基金の見直しにおいて基金の保有割合が1を超えているが補助金等の返還を行っていないものについて、見直しの対象とした年度末の資金保有額等のうち基金事業に要する費用を超える額に係る補助金等相当額を計算すると、図表52 のとおりである。

図表52 基金の保有割合が1を超えているが補助金等の返還を行っていないもの
(国所管基金、平成20年度の見直し) (単位:百万円)
番号 基金名 団体名 基金額
(平成20.4.1現在)
見直しの結果の保有割合 基金額のうち基金事業に要する費用を超える額 左のうち補助金相当額
  補助金相当額
1 畜産生産技術高度化機械リース助成基金 (社)中央畜産会 7.7 7.7 1.1 0.4 0.4
(機構所管基金、平成18年度の見直し) (単位:百万円)
番号 基金名 団体名 基金残高
(平成18.4.1現在)
見直しの結果の保有割合 基金残高のうち基金事業に要する費用を超える額 左のうち補助金等相当額
  補助金等相当額
1 肥育素牛導入基金 (社)全国畜産経営安定基金協会 2,562 2,434 1.4 830 788
2 畜産特別資金融通円滑化基金 (社)中央畜産会 920 920 1.5 323 323
3 大家畜経営体質強化基金 1,655 1,655 1.2 331 331
4 大家畜経営活性化基金 4,209 4,209 1.2 769 769
5 養豚経営活性化基金 106 106 1.2 21 21
6 産業動物獣医師修学資金基金 242 242 1.1 40 40
7 畜産経営支援指導機能強化基金 66 66 1.1 7 7
8 酪農ヘルパー事業円滑化対策基金(全国事業基金) (社)酪農ヘルパー全国協会 1,470 1,323 1.8 672 604
9 牛乳輸送施設リース基金 (財)畜産環境整備機構 3,684 3,684 1.1 396 396
10 貸付機械取得資金 日本ハム・ソーセージ工業協同組合 3,351 1,676 1.2 609 304
10基金 5団体 18,265 16,315 3,998 3,583
注(1)  本表は公表資料等を基に作成したものである。基金額又は基金残高には、団体により資金保有額又は基金総額が用いられている。
注(2)  番号9の牛乳輸送施設リース基金は20年度から生乳流通効率化リース基金となっている。

(ウ) 見直しを実施していなかったもの及び見直しの対象とならなかったもの

 機構所管基金において、1団体の1基金が18年度の見直しを実施しておらず、また、18年度が事業実施期間の最終年度であるとして同年度の見直しの対象とならなかった基金のうち、19年度以降も引き続き事業を実施しているものが7団体の10基金ある(図表53 参照)。
 上記のうち、見直しを実施していなかった1団体の1基金は、機構の補助金等や生産者積立金により基金を造成し、家畜伝染病が発生した場合の経済的損失を補償するための仕組みを支援する事業を主に行うものである。本基金事業の実施要綱では、事業全体の実施期間は10年度から17年度までとされ、主たる部分に係る事業の実施期間は15年度から17年度までとされていたが、18年度に実施要綱が改正され、事業全体の実施期間は20年度までに延長され、主たる部分に係る事業の実施期間は18年度から20年度までの3年間とされた。これにより同団体は、18年度に改めて機構の補助金等や生産者積立金により基金を造成したことから、17年度までの事業については既に終了しているとして、この事業に係る基金を18年度の見直しの対象としていない。
 しかし、実施要綱によれば事業全体の実施期間が10年度から20年度までとされたことから、このように継続して実施する事業に係る基金については、その規模が適正なものになっているかなどを客観的に把握するための一助として、見直しの対象とすべきであったと考えられる。なお、機構は、21年度の見直しにおいては、基金を20年度で終了するものとせず、見直しの対象としている。

図表53 機構所管基金において、平成18年度の見直しを実施していなかったもの及び見直しの対象とならなかったが19年度以降も引き続き事業を実施しているもの
(平成18年度の見直しの対象とすべきであった基金であるが見直しを実施していなかったもの) (単位:百万円)
番号 基金名 団体名 使途 資金保有額(平成17年度末)
  補助金等相当額
1 家畜防疫互助基金 (社)全国家畜畜産物衛生指導協会 (注) 補助・補てん 2,816 1,383
 (社)全国家畜畜産物衛生指導協会は、平成21年4月に(社)中央畜産会に統合されている。

(平成18年度が事業終期であることから18年度の見直しの対象とならなかったが、19年度以降も引き続き事業を実施しているもの) (単位:百万円)
番号 基金名 団体名 使途 資金保有額(平成17年度末)
  補助金等相当額
1 改良増殖基金 (社)家畜改良事業団 調査等その他 48 48
2 増頭振興基金 (社)全国肉用牛振興基金協会 補助・補てん 748 748
3 畜産新技術開発活用促進基金 (社)畜産技術協会 調査等その他 1,858 1,858
4 肉用牛肥育経営安定基金 (社)中央畜産会 補助・補てん 96 96
5 新規参入円滑化基金 補助・補てん 374 374
6 広域生乳需給調整基金 (社)中央酪農会議 補助・補てん 2,212 2,212
7 加工原料乳生産者経営安定基金 補助・補てん 67 67
8 広域生乳流通合理化基金 補助・補てん 162 162
9 保証基金 (社)日本家畜商協会 債務保証 1,293 1,072
10 生乳検査精度管理強化基金 (財)日本乳業技術協会 調査等その他 710 710
10基金 7団体 7,573 7,352

エ 基準に基づく基本的事項の公表の状況

 前記のとおり、団体は、基金の基本的事項を基金造成後速やかに、また、既に設置されている基金については初回の見直しに合わせて、公表することとされている。
 国所管基金を保有する3団体は、18、20両年度の見直しの公表資料により4基金の基本的事項を公表している。
 一方、機構所管基金を保有する12団体は、18年度の見直しの公表資料により29基金の基本的事項を公表している。しかし、18年度の見直しを実施していなかったり、18年度の見直しの対象とならなかったりした8団体の11基金、18年度の見直し以降に基金を造成した10団体の16基金(図表54 参照)について、当該団体は、基準に基づく公表を行っていない。
 また、機構も団体に対して指導を行っていないことから、21年度の見直しの公表前に閉鎖された7基金の基本的事項は公表されず、それ以外の基金の基本的事項も21年度の見直しまで公表されていない。なお、機構は、今後は、基金造成後速やかに公表するよう団体を指導していくとしている。

図表54 機構所管基金において、平成18年度以降に設置した基金で基本的事項の公表がされていないもの
(単位:百万円)
番号 基金名 設置年度 団体名 使途 資金保有額等(基金設置年度末)
  補助金等相当額
1 大家畜特別支援基金 平成20年度 (社)中央畜産会 利子助成 5,799 5,799
2 養豚特別支援基金 20年度 利子助成 622 622
3 肥育牛生産者収益性低下緊急対策基金 20年度 補助・補てん 228 228
4 家畜飼料特別支援基金 19年度 利子助成 7,619 7,619
5 家畜飼料債務保証円滑化基金 19年度 補助・補てん 2,456 2,456
6 鳥インフルエンザ防疫強化対策基金 18年度 (社)全国家畜畜産物衛生指導協会 (注) 補助・補てん 397 397
7 生乳需要構造改革基金 18年度 (社)中央酪農会議 補助・補てん 1,628 1,628
8 広域生乳流通体制確立基金 19年度 補助・補てん 139 139
9 草地資源活用増頭振興基金 19年度 (社)日本草地畜産種子協会 調査等その他 7 7
10 事業準備財産 20年度 (社)配合飼料供給安定機構 貸付け 29,195 29,195
11 たい肥調整・保管施設リース基金 20年度 (財)畜産環境整備機構 貸付け 2,582 2,582
12 畜産経営生産性向上支援リース基金 19年度 貸付け 13,409 13,409
13 リース基金 20年度 全国肉牛事業協同組合 補助・補てん 122 122
14 リース基金 20年度 全国農業協同組合連合会 補助・補てん 484 484
15 リース基金 20年度 全国酪農業協同組合連合会 補助・補てん 485 485
16 リース基金 20年度 ホクレン農業協同組合連合会 補助・補てん 3,857 3,857
16基金 10団体 69,036 69,036
 (社)全国家畜畜産物衛生指導協会は、平成21年4月に(社)中央畜産会に統合されている。

オ 基準に基づく基金の見直し後の状況

 「行政刷新会議の設置について」において、国民的な観点から、国の予算、制度その他国の行政全般の在り方を刷新するとともに、国、地方公共団体及び民間の役割の在り方の見直しを行うために、内閣府に行政刷新会議を設置することとされた。
 行政刷新会議において、機構所管基金のうち、畜産特別資金融通事業基金(注11) (社団法人中央畜産会)、産業動物獣医師修学資金基金(社団法人中央畜産会)、畜産関係情報提供衛星通信推進事業基金(財団法人競馬・農林水産情報衛星通信機構)及び融資準備財産(社団法人全国肉用牛振興基金協会)の4基金がいわゆる事業仕分けの対象となった。
 そして、農林水産省及び機構は、行政刷新会議の事業仕分けの評価結果を踏まえて、上記4基金のうち畜産特別資金融通事業基金及び産業動物獣医師修学資金基金の2基金については、基金の残額を機構へ返還させ22年度の所要額は別途要求することとし、また、畜産関係情報提供衛星通信推進事業基金及び融資準備財産の2基金については、22年度の所要額を除き機構へ返還させることとしている。なお、上記に基づく返還は、21年度には行われていない。
 また、農林水産省は、22年3月17日に機構に発した「平成22年度畜産業振興事業の実施について」(平成22年21生畜第1919号農林水産省生産局長通知)において、事業仕分けの対象となった畜産特別資金融通事業基金及び産業動物獣医師修学資金基金を含む27基金について、閉鎖や事業の統合等を行うとしている。
 このほか21年度末までに事業を終了した基金もあり、60基金のうち、22年度において事業を継続している基金は、図表55 のとおり、国所管基金4基金、機構所管基金19基金、計23基金となっている。

 畜産特別資金融通事業基金  畜産特別資金融通円滑化基金、畜産特別資金融通円滑化特別基金、大家畜経営体質強化基金、大家畜経営活性化基金、養豚経営活性化基金、大家畜経営改善支援基金、養豚経営改善支援基金、大家畜特別支援基金及び養豚特別支援基金の9基金を合わせたものである。

図表55 60基金に係る基金の見直し後の状況
(国所管基金) (単位:百万円)
番号 基金名 団体名 使途 運営形態 平成20年度末資金保有額 見直しの結果等による21年度の補助金返還額 20年度末補助金相当額から見直しの結果等による補助金返還額を除いた額 事業仕分けの評価結果の反映において返還するとしている補助金相当額 22年度に事業を継続している基金
  補助金相当額
1 畜産経営維持安定特別対策基金 (社)全国畜産経営安定基金協会 補助・補てん 取崩 3,589 3,589 3,589
2 畜産生産技術高度化機械リース助成基金 (社)中央畜産会 補助・補てん 取崩 5 5 5
3 異常補てん積立基金 (社)配合飼料供給安定機構 補助・補てん 取崩 7,084 7,602 7,602
4 備蓄基金 調査等その他 取崩 304 304 304
4基金 3団体 10,984 11,501 11,501 4基金
(機構所管基金) (単位:百万円)
番号 基金名 団体名 使途 運営形態 20年度末資金保有額 見直しの結果等による21年度の補助金等返還額 20年度末補助金等相当額から見直しの結果等による補助金等返還額を除いた額 事業仕分けの評価結果の反映において機構に返還するとしている補助金等相当額 22年度に事業を継続している基金
  補助金等相当額
1 改良増殖基金 (社)家畜改良事業団 調査等その他 取崩 62 62 62 0  
2 肥育素牛導入基金 (社)全国畜産経営安定基金協会 貸付け 回転 842 842 98 744
3 融資準備財産 (社)全国肉用牛振興基金協会 貸付け 回転 53,535 53,535 43,738 9,797 5,304
4 子牛生産拡大奨励事業基金 補助・補てん 取崩 6,705 6,705 6,705
5 増頭振興基金 補助・補てん 取崩 551 551 560 △ 8  
6 畜産新技術開発活用促進基金 (社)畜産技術協会 調査等その他 取崩 1,786 1,786 1,812 △ 25  
7 畜産特別資金融通円滑化基金 (社)中央畜産会 補助・補てん 取崩 1,317 1,317 523 13,803 13,154  
8 畜産特別資金融通円滑化特別基金 補助・補てん 取崩 452 452  
9 大家畜経営体質強化基金 利子助成 取崩 952 952  
10 大家畜経営活性化基金 利子助成 取崩 3,108 3,108  
11 養豚経営活性化基金 利子助成 取崩 60 60  
12 大家畜経営改善支援基金 利子助成 取崩 1,864 1,864  
13 養豚経営改善支援基金 利子助成 取崩 150 150  
14 大家畜特別支援基金 利子助成 取崩 5,799 5,799  
15 養豚特別支援基金 利子助成 取崩 622 622  
16 畜産経営支援指導機能強化基金 補助・補てん 取崩 44 44 44 0  
17 大規模公共牧場肉用牛資源供給拡大対策基金 補助・補てん 取崩 502 502 226 275  
18 肉用牛肥育経営安定基金 補助・補てん 取崩 9 9 9 0  
19 産業動物獣医師修学資金基金 補助・補てん 取崩 205 205 205 177  
20 肥育牛生産者収益性低下緊急対策基金 補助・補てん 取崩 228 228 228 0  
21 家畜疾病経営維持基金 利子助成 取崩 1,035 1,035 1,035
22 家畜飼料特別支援基金 利子助成 取崩 7,657 7,657 7,657
注(1)
23 家畜飼料債務保証円滑化基金 補助・補てん 取崩 2,476 2,476 2,476
注(1)
24 家畜防疫互助基金 (社)全国家畜畜産物衛生指導協会 注(2) 補助・補てん 取崩 3,252 1,737 637 1,099
25 鳥インフルエンザ防疫強化対策基金 補助・補てん 取崩 363 363 363  
26 広域生乳需給調整基金 (社)中央酪農会議 補助・補てん 取崩 1,790 1,790 1,790  
27 加工原料乳生産者経営安定基金 補助・補てん 取崩 206 206 206  
28 生乳需要構造改革基金 補助・補てん 取崩 3,222 3,222 3,235 △ 12  
29 広域生乳流通体制確立基金 補助・補てん 取崩 246 246 246  
30 保証基金 (社)日本家畜商協会 債務保証 保有 1,330 1,103 1,103
31 経営基盤強化利子補給基金(20年度造成) (社)日本食肉市場卸売協会 利子助成 取崩 64 43 43  
32 経営基盤強化利子補給基金(19年度造成) 利子助成 取崩 21 14 14  
33 草地資源活用増頭振興基金 (社)日本草地畜産種子協会 調査等その他 取崩 6 6 6 0  
34 貸付機械取得資金 (社)日本ハンバーグ・ハンバーガー協会 貸付け 回転 341 161 50 110
35 中堅外食事業者資金融通円滑化基金 (社)日本フードサービス協会 債務保証 取崩 4 4 4  
36 事業準備財産 (社)配合飼料供給安定機構 貸付け 取崩
37 酪農ヘルパー事業円滑化対策基金(全国事業基金) (社)酪農ヘルパー全国協会 調査等その他 取崩 1,400 1,260 568 692  
38 酪農ヘルパー利用拡大中央基金 補助・補てん 取崩 496 496 109 387  
39 食肉価格安定基金 (財)沖縄県畜産振興基金公社 補助・補てん 運用 10,775 7,183 7,183
40 畜産関係情報提供衛星通信推進事業基金 (財)競馬・農林水産情報衛星通信機構 調査等その他 取崩 139 139 139 64
41 たい肥調整・保管施設リース基金 (財)畜産環境整備機構 貸付け 取崩 2,455 2,455 2,455
注(3)
42 畜産経営生産性向上支援リース基金 貸付け 取崩 10,971 10,971 10,971
注(3)
43 生乳流通効率化リース基金 貸付け 回転 1,138 1,138 1,138
注(3)
44 食肉リース基金 貸付け 回転 1,375 1,375 1,375
注(3)
45 畜産環境整備リース基金 貸付け 回転 5,070 5,070 5,070
注(3)
46 生乳検査精度管理強化基金 (財)日本乳業技術協会 調査等その他 取崩 128 128 128  
47 乳製品国際規格策定活動支援基金 調査等その他 取崩 111 111 111  
48 卸売経営体質強化基金(20年度造成) 全国食肉業務用卸協同組合連合会 利子助成 取崩 88 59 59  
49 卸売経営体質強化基金(19年度造成) 利子助成 取崩 3 2 2  
50 食肉小売経営体質強化基金(20年度造成) 全国食肉事業協同組合連合会 利子助成 取崩 8 5 5  
51 食肉小売経営体質強化基金(19年度造成) 利子助成 取崩 0 0 0  
52 リース基金 全国肉牛事業協同組合 補助・補てん 取崩 122 122 122  
53 リース基金 全国農業協同組合連合会 補助・補てん 取崩 484 484 484  
54 リース基金 全国酪農業協同組合連合会 補助・補てん 取崩 485 485 485  
55 貸付機械取得資金 日本ハム・ソーセージ工業協同組合 貸付け 回転 3,163 1,581 315 1,266
56 リース基金 ホクレン農業協同組合連合会 補助・補てん 取崩 3,857 3,857 3,857
56基金 25団体 143,099 135,801 52,227 83,574 18,699 19基金
注(1)  家畜飼料特別支援基金と家畜飼料債務保証円滑化基金の2基金は、平成22年度に家畜飼料特別支援資金融通事業基金に統合されている。
注(2)  (社)全国家畜畜産物衛生指導協会は、21年4月に(社)中央畜産会に統合されている。
注(3)  たい肥調整・保管施設リース基金、畜産経営生産性向上支援リース基金、生乳流通効率化リース基金、食肉リース基金及び畜産環境整備リース基金の5基金は、22年度に畜産高度化支援リース基金に統合されている。