農林水産省は、農業移住者等の営農の安定に必要な資金等の調達を円滑にするため、農業移住者等を資金面で援護しようとする者が金融機関から資金を借り入れる際の債務の保証等を8県に所在する財団法人農業拓植基金協会等(以下「地方基金協会」という。)及び社団法人中央農業拓植基金協会(以下「中央基金協会」という。)に行わせる海外農業移住交流事業を、これらの協会に国庫補助金を交付して基金を造成させることにより実施している。本事業の一環として中央基金協会等が造成した基金について検査したところ、近年、新規の債務保証が行われず、保証債務残高も大きく減少していることなどから、その基金規模が保証需要に比較して著しく過大となっている事態や、地方基金協会の解散等の後に運用益が農業移住者等に係る債務保証業務の経費に使用されないことになっている事態が見受けられた。
したがって、農林水産省において、今後の海外農業移住交流事業の実施の在り方について、事業の終了も視野に入れて十分に検討するとともに、中央基金協会等が造成した基金のうち、国庫補助金相当額については原則として国庫に返還させ、また、地方基金協会の解散時等における運用益の取扱いを明確に定めて、農業移住者等に係る債務保証業務を行っている地方基金協会等に周知する処置を講ずるよう、農林水産大臣に対して平成21年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
本院は、農林水産本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、農林水産省は、本院指摘の趣旨に沿い、21年11月に中央基金協会の基金のうち、今後需要が見込まれない基金に係る国庫補助金相当額を国庫へ返還させるとともに、 地方基金協会が解散等する場合には、国庫補助金額、運用益に係る国庫補助金相当額を合算した合計額を国庫に返還させるなどの取扱いを明確に定めて関係各県知事を通じて地方基金協会に対して周知するなどの処置を講じていた。また、今後の海外農業移住交流事業の在り 方について検討した結果、本件事業を終了することとして、事業の終了等を行った8地方基金協会の基金に係る国庫補助金相当額を24年6月までに国庫へ返還させるとともに、同月に解散した中央基金協会の基金に係る国庫補助金相当額を同年8月までに国庫へ返還させる 処置を講じていた。