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  • 平成23年度|
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  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

木造住宅等の整備に係る補助事業について、完了実績報告書等に記載すべき事項や補助対象の範囲を明確にするなどして、補助金の交付が適切に行われるよう是正改善の処置を求めたもの


(3) 木造住宅等の整備に係る補助事業について、完了実績報告書等に記載すべき事項や補助対象の範囲を明確にするなどして、補助金の交付が適切に行われるよう是正改善の処置を求めたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)国土交通本省 (項)住宅防災事業費
部局等 国土交通本省
補助の根拠 予算補助
補助事業者
(事業主体)
地方公共団体8、住宅生産者13、団体1、計22事業者
間接補助事業者
(事業主体)
203住宅生産者
補助事業 地域住宅モデル普及推進事業
補助事業の概要 長寿命の住宅の普及に資するため、定住促進等のための展示住宅や生活体験施設の整備等を行うもの
展示住宅等の整備に係る国庫補助金
48億5331万余円
(平成20、21両年度)

補助金の額の算定が誤っていたもの 10事業者
上記に係る補助対象事業費相当額(1)
3463万余円
(平成20、21両年度)

上記に対する国庫補助金相当額
3201万円
 

最低限必要な設備以外の設備等を補助の対象に含めていたもの 76事業者
上記に係る補助対象事業費相当額(2)
1億1732万余円
(平成20、21両年度)

上記に対する国庫補助金相当額
7056万円
 

(1)及び(2)の計
1億5196万余円
(平成20、21両年度)

上記に対する国庫補助金相当額
1億0257万円
 

 (前掲の「地域住宅モデル普及推進事業において補助の対象とならないもの及び補助対象限度額を超えていたなどのもの」 参照)

【是正改善の処置を求めたものの全文】

 木造住宅等の整備に係る補助事業について

(平成24年10月26日付け 国土交通大臣宛て)

 標記について、下記のとおり、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求める。

1 事業の概要

(1) 木造住宅等の整備に係る補助事業の概要

 貴省は、地域建材の活用による木造住宅等の整備による住宅市場の活性化を図ることなどを目的として、木造の長期優良住宅等を整備する住宅生産者等に対して、直接又は間接に補助金を交付している。そして、貴省は、超長期住宅先導的モデル事業の一環として、平成20、21両年度に、地域住宅モデル普及推進事業を実施し、22年度以降も引き続き、住宅生産者等に対する補助事業を実施している。
 地域住宅モデル普及推進事業は、地域の特性に応じた長寿命の住宅の普及に資するため、地域の建材の活用、気候風土等に配慮した展示住宅の整備、定住促進等のための地域での生活体験の滞在施設(以下「生活体験施設」という。)の整備等に要する費用の一部について補助するものである。
 そして、貴省は、8地方公共団体及び217住宅生産者等(以下、地方公共団体及び住宅生産者等を合わせて「事業者」という。)が実施した展示住宅194棟及び生活体験施設89棟の整備に係る国庫補助金48億5331万余円について、当該事業者に対して、直接又は地方公共団体若しくは一般社団法人工務店サポートセンター(注1) (以下「センター」という。)を通じて交付している。

 一般社団法人工務店サポートセンター  工務店をサポートするために設立された団体で、加盟している工務店の中から選定された者が実施する地域住宅モデル普及推進事業に係る事務手続を行っている。

(2) 補助対象の範囲

 地域住宅モデル普及推進事業は、超長期住宅先導的モデル事業補助金交付要綱(平成20年国住市第753号。以下「交付要綱」という。)等に基づき実施することとされており、補助金の額は、整備事業費と附帯事業費の合計の額とされている。そして、整備事業費は展示住宅及び生活体験施設(以下、これらを合わせて「展示住宅等」という。)を新築又は改修により整備するために要する費用を基に、附帯事業費は建築設計費及び整備した展示住宅等の普及促進等に要する費用を基に、それぞれ算出することとされており、展示住宅等の整備に最低限必要な設備以外の設備等の整備費や外構等関連施設・設備の整備費は、補助の対象にならないとされている。

(3) 補助金交付の仕組み

 事業者は、補助事業が完了したときは、交付要綱に従い完了実績報告書を貴省に提出することとされている。そして、貴省は、提出を受けた完了実績報告書について審査して、必要に応じて現地調査を行い、報告に係る補助事業の成果が交付決定の内容に適合すると認められる場合には、交付すべき補助金の額を確定し、補助金を交付することとしている。

2 本院の検査結果

 (検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、合規性、経済性等の観点から、補助金の額の算定、完了実績報告書の審査は適切かなどに着眼して検査を実施した。
 検査に当たっては、超長期住宅先導的モデル事業補助金について、貴省から直接交付された11事業者並びに22県市町村(注2) を通じて交付された108事業者及びセンターを通じて交付された25事業者、計144事業者が、20、21両年度に地域住宅モデル普及推進事業により整備した展示住宅134棟及び生活体験施設66棟、計200棟(事業費計49億7418万余円、補助対象事業費計45億8837万余円、国庫補助金計33億9877万余円)を対象に、完了実績報告書等の書類及び現地を確認するなどして会計実地検査を行った。

 22県市町村  青森、秋田、新潟、山梨、長野、岐阜、兵庫、鳥取、徳島、熊本各県、甲州、京都、宍粟、松江、益田、宮古島各市、金山、最上、富士河口湖、神河、吉賀各町、諸塚村

 (検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 完了実績報告書の記載内容について

 交付要綱によれば、事業者は、補助事業が完了した際に、補助対象事業費の算出根拠を明確に把握するため、人件費、旅費及び庁費の科目別に金額及びその額の内訳を詳細に記載した経費執行実績報告書を完了実績報告書に添付して提出することとされている。
 しかし、事業者から提出された経費執行実績報告書についてみたところ、整備事業費については、いずれも庁費として建設費等の合計額が記載されていただけで、内訳まで記載されていなかった。また、附帯事業費については、普及促進のために作成したパンフレット等に係る数量、単価等が記載されていたものが一部にあったものの、内訳が記載されていたものはなく、パンフレット一式等としてその合計額のみが記載されていたものが大半となっていた。
 また、貴省が、完了実績報告書を審査する際に、補助対象事業費の算出根拠が明確に把握できない状況となっていても、それを把握するための補足資料として契約金額の内訳書、領収書等の根拠資料の提出を求めるなどの措置を執っていなかった。
 そこで、本院が、事業者から契約金額の内訳書、領収書等の根拠資料の提出を受けてその内容を確認したところ、表1 のとおり、補助対象事業費に補助事業の実施期間以降に実施した普及促進等に係る費用を含めていたり、外構等関連施設・設備の整備費を含めていたり、補助事業の実施期間内に事業が完了しなかったりなどしていて、補助金の額の算定が誤っていたのに、そのまま補助金を交付していた事態が、10事業者において補助対象事業費計3463万余円、国庫補助金計3201万余円あった。

表1  補助金の額の算定が誤っていた事態
事態 事業者数 過大となっていた補助対象事業費 過大となっていた国庫補助金相当額
補助事業の実施期間以降に実施したものに係る費用を含めていたもの 5 千円 千円
6,352 6,351
補助対象外の外構等の費用を含めていたもの 2 2,387 1,626
交付限度額を超えて補助金が交付されていたもの 2 5,366 5,100
他の費用と明確に区分されていない費用を含めていたもの 1 3,725 3,725
事業目的に適合していないものを含めていたもの 1 2,929 2,929
補助事業の実施期間内に事業が完了していなかったもの 1 13,873 12,286
10 34,634 32,018

注(1) 複数の事態に該当している事業者があるため、合計は一致しない。

注(2) 千円未満を切り捨てているため、合計は一致しない。

(2) 補助対象の範囲について

 交付要綱によると、展示住宅等の整備に最低限必要な設備以外の設備等の整備費は、補助対象にならない費用とされているものの、展示住宅等の整備に最低限必要な設備の範囲が明確に規定されていないため、太陽光発電設備、薪ストーブ、CO ヒートポンプ式給湯設備等を補助の対象から除外していた事業者が見受けられる一方、それらを補助対象に含めていた事業者が見受けられた。
 しかし、地域建材の活用による木造住宅の整備による住宅市場の活性化や長寿命の住宅の普及に資するための展示住宅等を整備するという本件補助事業の目的に照らすと、上記の設備は建物の建設工事に直接必要なものではなく、補助の対象にならないと認められるのに、それらの設備等を補助の対象に含めていた事態が、表2 のとおり、76事業者において計164台、補助対象事業費計1億1732万余円、国庫補助金計7056万余円あった。

表2  補助の対象にならないと認められる設備等
設置数 左のうち補助対象に含めているもの
事業者数 台数 事業者数 台数 台数の
割合
過大となっていた補助対象事業費 過大となっていた国庫補助金相当額
          千円 千円
CO2 ヒートポンプ式給湯設備 66 70 47 50 71.4 23,790 14,466
太陽光発電設備 47 51 27 31 60.8 54,838 30,834
薪ストーブ 30 32 17 19 59.4 15,601 12,317
蓄熱暖房機 25 67 13 46 68.7 9,753 4,640
ペレットストーブ 11 15 6 6 40.0 3,135 2,030
セキュリティシステム 7 7 5 5 71.4 1,114 700
ヒートポンプ式温水暖房機 3 3 3 3 100.0 3,056 1,049
風力発電設備 1 1 1 1 100.0 2,320 1,491
ホームエレベータ 1 1 1 1 100.0 2,030 1,827
紙すき道具 1 1 1 1 100.0 906 875
漆塗り費用 1 1 1 1 100.0 781 326
111 249 76 164 65.9 117,326 70,560

注(1) 複数の設備等に該当している事業者があるため、合計は一致しない。

注(2) 千円未満を切り捨てているため、合計は一致しない。

 (是正改善を必要とする事態)

 以上のように、補助対象事業費の算出方法の審査を十分に行っておらず補助金の額の算定が誤っているのに、そのまま補助金を交付していたり、最低限必要な設備に該当しないと認められるのに、それらの設備等を補助の対象に含めていたりする事態は適切とは認められず、是正改善の要があると認められる。

 (発生原因)

 このような事態が生じているのは、貴省において、次のことなどによると認められる。

ア 補助事業に不慣れな民間の住宅生産者等が多いにもかかわらず、完了実績報告書等に記載すべき内容を具体的に示していないため、十分な審査ができていないこと

イ 補助対象の範囲を交付要綱等に明確に規定していないこと

3 本院が求める是正改善の処置

 今後も木造住宅等の整備による住宅市場の活性化のための住宅生産者等に対する本件事業と同種の補助事業を実施していくことが見込まれる。
 ついては、貴省において、木造住宅等の整備に係る補助事業において、補助金の交付が適切に行われるよう、次のとおり是正改善の処置を求める。

ア 補助対象事業費の算出方法等について十分な審査ができるよう完了実績報告書等の記載内容を具体化して、必要に応じて根拠資料の提出を求めること

イ 補助対象の範囲を交付要綱等に明確に規定すること