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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
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  • 平成24年10月

独立行政法人における不要財産の認定等の状況に関する会計検査の結果について


第2 検査の結果

1 政府出資及び保有資産の状況

(1) 政府出資等の状況

 国は、通則法に基づき、独立行政法人に対して、経営基盤の安定又は事務・事業の的確な遂行を図るために、出資を行ったり、運営費交付金、国庫補助金等を交付したりしている。
 通則法第8条では、独立行政法人は、その業務を確実に実施するために必要な資本金その他の財産的基礎を有しなければならないとされ、政府は、その業務を確実に実施させるために必要があると認めるときは、個別法で定めるところにより、各独立行政法人に出資することができるとされている。
 設立時の政府出資金の額は、13年4月に国の機関から移行した独立行政法人では、承継する資産の価額の合計額に相当する金額を政府出資金としている一方、その後、特殊法人から移行するなどした独立行政法人では、承継する資産の価額から負債の金額を差し引いた額を政府出資金とするなどしている。
 また、通則法第46条では、政府は、予算の範囲内において、独立行政法人に対し、その業務の財源に充てるために必要な金額の全部又は一部に相当する金額を交付することができるとされており、毎年度、多くの独立行政法人に対して、法人の業務運営の財源に充てるため、運営費交付金、国庫補助金等が交付されている。

ア 政府出資金、総資産等の推移

 検査対象とした102法人(19年度から21年度までは96法人。以下同じ。)の19年度から23年度までの間の年度末における政府出資金、地方公共団体等出資金及び総資産の合計額の推移をみると、図表1-1のとおりとなっている。

図表1-1 政府出資金、地方公共団体等出資金及び総資産の推移(平成19年度末〜23年度末)
(単位:百万円)

平成19年度末
20年度末
21年度末
22年度末
23年度末
政府出資金
16,123,626
23,905,070
24,460,039
23,880,718
24,068,952
地方公共団体等出資金
1,300,905
1,351,382
1,402,315
1,453,934
1,510,110
総資産
414,710,715
384,143,763
369,986,765
340,488,898
324,459,409
政府出資金/総資産
3.88%
6.22%
6.61%
7.01%
7.41%
地方公共団体等出資金/総資産
0.31%
0.35%
0.37%
0.42%
0.46%
(注)
 平成22、23両年度における法人別内訳は、巻末別表1 参照

 政府出資金についてみると、23年度末で102法人のうち96法人において計上されており、その額は計24兆0689億円となっていて、19年度末の計16兆1236億円と比較して7兆9453億円増加している。また、地方公共団体等出資金についてみると、23年度末で計1兆5101億円となっていて、19年度末の計1兆3009億円と比較して2092億円増加している。一方、総資産については、23年度末の合計で324兆4594億円となっていて、19年度末の合計414兆7107億円と比較して90兆2513億円と大幅に減少している。
 なお、総資産額が多額に上っている主な法人としては年金積立金管理運用(23年度末の総資産額113兆6119億円)及び郵便貯金・簡易生命保険管理機構(23年度末の総資産額51兆7394億円)がある。年金積立金管理運用の資産の主なものは金銭等の信託113兆6111億円、郵便貯金・簡易生命保険管理機構の主なものは預金35兆1391億円及び貸付金15兆8368億円であり、いずれも政府出資等に係る資産ではない。
 そして、19年度末に比べて23年度末に政府出資金が減少した法人は34法人となっていて、全法人(19年度末現在の96法人。以下同じ。)の35%を占めており、増加した法人は14法人となっていて、全法人の14%を占めている。総資産が減少した法人は62法人となっていて、全法人の64%を占めており、増加した法人は34法人となっていて、全法人の35%を占めている。
 政府出資金が19年度末から20年度末にかけて増加したのは、主に国際協力機構が旧国際協力銀行の海外経済協力部門と統合し、7兆3908億円増加したことによるものである。また、総資産が19年度末から23年度末にかけて減少したのは、主に郵便貯金・簡易生命保険管理機構が保有する資産が82兆8173億円減少したことによるものである。これは、同機構が日本郵政公社から承継した特別貯金が払い戻されるなどしたことが大きな要因となっている。
 また、政府出資金が21年度末から23年度末にかけて24兆4600億円から24兆0689億円へと減少している要因は、22年の通則法の改正による不要財産の国庫納付に伴い政府出資金9353億円が減少したことなどが挙げられる。

イ 政府支出額等の推移

 検査対象とした102法人の19年度から23年度までの政府支出額等(運営費交付金、施設整備費補助金及びその他の国庫補助金等)の合計額の推移をみると、図表1-2 のとおりとなっている。

図表1-2 政府支出額等の推移(平成19年度〜23年度)
(単位:百万円)

科目
平成19年度
20年度
21年度
22年度
23年度
運営費交付金
1,573,511
1,561,537
1,602,565
1,536,739
1,540,729
施設整備費補助金
103,768
100,289
123,988
138,763
92,850
その他の国庫補助金等
1,212,631
1,173,512
2,006,902
1,582,023
1,697,379
2,889,912
2,835,339
3,733,456
3,257,526
3,330,960

 政府支出額等は、図表1-2 のとおり、23年度で計3兆3309億円となっていて、19年度の計2兆8899億円に比較して4410億円増加している。21年度以降にその他の国庫補助金等が増加しているのは、住宅金融支援機構が行う証券化支援事業(フラット35)の低金利融資に係る費用について、政府出資金の運用益を充てる方法から、補助金により毎年度所要額を措置する方法に改められたことが大きな要因となっている。
 また、19年度に比べて23年度に上記の政府支出額等が減少した法人は56法人、増加した法人は32法人となっている。

(2) 保有資産の状況

 前記のとおり、独立行政法人は、通則法第8条第1項において、「その業務を確実に実施するために必要な資本金その他の財産的基礎を有しなくてはならない」とされている。また、通則法第8条第2項において、「政府は、その業務を確実に実施させるために必要があると認めるときは、個別法で定めるところにより、各独立行政法人に出資することができる」とされている。これらに基づき、各法人は、土地、建物等の固定資産、あるいは現金預金、有価証券、貸付金等の金融資産を保有している。その状況を全102法人についてみると以下のとおりとなっている。なお、金融資産については、過去の検査結果や不要財産の国庫納付の実績等を踏まえて、現金預金、有価証券、関係会社株式、敷金・保証金(以下「敷金等」という。)を記載している。

ア 法人が保有する土地及び建物の状況

 図表1-3 のとおり、102法人のうち100法人が、土地又は建物を保有しており、23年度末における価額は、全体で土地計21兆2211億円、建物計5兆9084億円、合計27兆1296億円となっており、同年度末における102法人の総資産額324兆4594億円の8.36%(土地又は建物を保有する100法人の総資産額324兆3974億円の8.36%)となっていた。

図表1-3  法人が保有する土地及び建物の価額等(平成23年度末)
(単位:百万円)

平成23年度末
土地 保有する法人数
85法人
価額 (a)
21,221,163
建物 保有する法人数
100法人
価額 (b)
5,908,475
土地、建物の合計 保有する法人数
100法人
価額 (c) = (a) + (b)
27,129,639
総資産額
(d)
 
324,459,409
土地又は建物を保有する法人の総資産額 (e)
324,397,445
土地、建物の合計価額が占める割合 総資産額に対する割合(%) (c)/(d)×100
8.36%
土地又は建物を保有する法人の総資産額に対する割合(%) (c)/(e)×100
8.36%

 これらの土地及び建物には、法人がその目的とする事業を実施するために保有しているもののほか、法人の役員や職員に使用させるための宿舎及び宿泊施設、体育施設等(以下「福利厚生施設」という。)の用に供するために保有しているものもある。
 今回、法人が保有する土地及び建物の現況及び利用状況を確認するに当たり、宿舎については政府等で見直しの議論がなされていることなどから、事業用の土地及び建物(販売用の資産を除く。)に加えて、宿舎に係る土地及び建物が適切に処分又は有効に利用されているかなどについてその現況を検査した。なお、土地については、建物を取り壊した跡地や新たに施設を建設する予定で承継するなどした土地(以下「跡地等」という。)を含めて検査した。また、福利厚生施設については、稼働状況等を検査した。

(ア) 法人が保有する土地及び建物の現況

 法人が保有する資産のうち、政府出資等に係る不要財産が国庫納付の対象となることから、今回、独立行政法人の保有資産の状況に係る検査の一環として、政府出資等に係る土地及び建物の現況について、法人別にみたところ、以下のとおりとなっていた。

a 事業用の土地及び建物について

 図表1-4 のとおり、23年度末において、法人が保有する事業用の土地及び建物が1年以上にわたり有効に利用されていない事態が9法人において見受けられた。

図表1-4 事業用の土地及び建物が有効に利用されていないもの(平成23年度末)
法人名
所在地
面積m2

帳簿価額(千円)

期間
国際協力機構 東京都千代田区
<事例1-1> 参照
建物
2,763.43
78,544
平成21年〜
土地
352.83
1,869,127
国立青少年教育振興機構 広島県江田島市
<事例1-2> 参照
土地
968.62
48,720
18年〜
高齢・障害・求職者雇用支援機構 千葉市
土地
5,276.00
648,204
16年〜
国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 群馬県高崎市
土地
2,235.77
37,717
22年〜
労働者健康福祉機構 北海道美唄市
土地
5,825.00
55,255
21年〜
和歌山県和歌山市
土地
1,236.00
15,759
21年〜
北九州市
土地
946.54
45,782
16年〜
国立病院機構 茨城県土浦市
建物
2,056.20
0
17年〜
土地
4,651.71
102,315
茨城県土浦市
土地
2,000.00
43,990
16年〜
茨城県土浦市
土地
1,509.00
33,190
16年〜
茨城県那珂郡東海村
建物
418.72
0
16年〜
土地
2,717.68
14,076
茨城県那珂郡東海村
土地
864.00
4,475
16年〜
栃木県宇都宮市
建物
279.33
0
16年〜
土地
3,676.25
86,023
栃木県宇都宮市
土地
7,000.00
163,799
16年〜
千葉市
建物
1,373.55
0
17年〜
土地
5,087.60
54,428
東京都清瀬市

建物

6,005.92
0
20年〜
土地
24,749.89
1,554,348
東京都清瀬市
土地
812.16
37,196
16年〜
東京都武蔵村山市
建物
572.00
27
16年〜
土地
3,377.08
225,348
長野県長野市<事例1-3(1)> 参照
建物
3,199.24
0
16年〜
土地
5,193.00
130,318
石川県加賀市
土地
300.00
3,086
16年〜
浜松市
建物
2,235.28
0
21年〜
土地
9,017.04
131,648
浜松市
建物
195.00
0
17年〜
土地
2,462.08
35,946
浜松市<事例1-3(2)> 参照
土地
9,469.56
138,254
16年〜
滋賀県甲賀市
土地
600.00
10,778
16年〜
兵庫県三田市
建物
4,531.44
0
21年〜
土地
30,572.88
1,381,895
兵庫県三田市
建物
9,012.89
0
21年〜
土地
14,977.90
677,009
兵庫県三田市
建物
65.96
0
20年〜
土地
406.20
18,360
兵庫県三田市
建物
9.20
0
20年〜
土地
56.65
2,560
広島県東広島市
建物
1,987.93
0
20年〜
土地
2,395.39
83,007
山口県柳井市
土地
11,000.00
131,999
16年〜
佐賀県神埼郡吉野ヶ里町
土地
3,000.00
46,081
16年〜
宮崎県宮崎市
建物
2,242.57
0
16年〜
土地
8,289.04
77,917
宮崎県宮崎市
土地
6,000.00
56,400
16年〜
農業・食品産業技術総合研究機構 札幌市
土地
2,605,558.00
2,501,335
18年〜
森林総合研究所 福島県福島市
土地
287.33
9,197
20年〜
水資源機構 千葉県東金市
土地
1,300.02
110,110
17年〜
愛知県犬山市
土地
2,384.80
51
16年〜
計(9法人)
建物
36,948.66
78,571
土地
2,786,556.02
10,585,719
注(1)  建物面積は、延べ面積を記載している。
注(2)  期間欄は、有効に利用されていない期間を記載しているが、法人発足前から有効に利用されていない場合には、法人発足時期を記載している。ただし、高齢・障害・求職者雇用支援機構の土地は、平成23年10月に解散した雇用・能力開発機構が保有していたものであり、雇用・能力開発機構が発足した16年としている。

 上記の事業用の土地及び建物が有効に利用されていない事態について、事例を示すと次のとおりである。

 国際協力機構は、平成20年10月に国際協力銀行の一部である海外経済協力部門と統合した際に、東京都千代田区に所在する15階建てのビルのうち7階、8階、9階等を事務室等(専有面積4,037.10m )として承継した。そして、同機構は、23年10月から8階の一部等(1,273.67m )を研修室、会議室等として利用しているものの、当該部分を除いた部分(2,763.43m 、これに係る土地面積352.83m 、建物及び土地に係る帳簿価額19億4767万余円)については、事務用品、調度品、資料等を置いた状態のままで、事務室等としての利用を21年9月及び22年5月に段階的に中止していて有効に利用していない。

<事例1-2>
 国立青少年教育振興機構(平成18年4月設立)は、平成13年4月に同機構の前身の国立青年の家が設立された際に、広島県江田島市(16年10月以前は安芸郡江田島町)に所在する国立江田島青年の家(18年4月以降は国立江田島青少年交流の家)の職員宿舎の北側に面した土地(面積968.62m 、帳簿価額4872万円)を国から承継した。この土地は、国が5年に江田島市から土地の交換により庁舎用地として取得していたものを「野外活動センター(仮称)」の建設予定地として保有していたものである。そして、この建設予定地は、江田島青年の家の利用者のために、古鷹山登山の際の休憩所やサイクリング等の際の中継施設を整備するとして、13年4月から18年3月までの間は国立青年の家が、18年4月以降は同機構が管理している。
 しかし、この土地は、5年の取得時から更地となっており、同機構は、18年4月の法人設立時から施設等を整備することなく管理しており、有効に利用していない。

<事例1-3>
 国立病院機構は、公衆衛生の向上及び増進に寄与することを目的として、全国144か所の病院等において、医療の提供、技術者の研修等の業務を行っている。このうち、
(1) 長野県長野市にある東長野病院は、14年4月に附属の看護学校を閉校した後、教室等(延べ面積3,199.24m 、土地面積5,193.00m 、建物及び土地に係る帳簿価額1億3031万余円)を有効に利用していない。
(2) 浜松市の天竜病院は、結核病棟の閉鎖により、平成13年に建物を取り壊して更地としたものの、施設を整備することなく更地のまま保有していて有効に利用していない(土地面積9,469.56m 、帳簿価額1億3825万余円)。

b 宿舎の跡地等について

 図表1-5 のとおり、23年度末において、法人が保有する宿舎の跡地等が1年以上にわたり有効に利用されていない事態が7法人において見受けられた。

図表1-5 宿舎の跡地等が有効に利用されていないもの(平成23年度末)

法人名
所在地
土地面積(m2
帳簿価額(千円)
期間
国立印刷局 東京都北区
722.44
147,000
平成15年〜
国立高等専門学校機構<事例1-4> 参照 北海道函館市
1,037.00
45,493
16年〜
北海道苫小牧市
4,492.10
34,113
23年〜
青森県八戸市
5,889.43

162,495

23年〜
秋田県秋田市
161.00
5,634
16年〜
福島県いわき市
747.77
22,499
23年〜
福島県いわき市
1,510.87
82,948
21年〜
福島県いわき市
480.69
26,799
23年〜
栃木県小山市
1,944.00
13,547
16年〜
新潟県長岡市
276.36
14,999
22年〜
富山県富山市
290.00
14,346
21年〜
石川県河北郡津幡町
3,274.06
196,224
16年〜
静岡県沼津市
288.19
30,799
23年〜
三重県鈴鹿市
1,631.58
42,197
16年〜
香川県高松市
7,606.00
237,231
22年〜
福岡県久留米市
220.00
17,682
16年〜
福岡県大牟田市
2,400.54
44,169
22年〜
福岡県大牟田市
657.00
13,337
16年〜
福岡県大牟田市
284.39
17,631
22年〜
福岡県大牟田市
292.76
16,686
22年〜
熊本県荒尾市
116.00
2,099
23年〜
長崎県佐世保市
1,452.24
68,782
22年〜
宮崎県都城市
439.36
9,868
21年〜
鹿児島県霧島市
1,559.88
56,615
21年〜
沖縄県名護市
927.00
24,027
16年〜
日本原子力研究開発機構 茨城県那珂郡東海村
2,600.00
56,550
17年〜
茨城県那珂郡東海村
3,300.00
36,286
17年〜
茨城県那珂郡東海村
2,100.00
63,730
17年〜
茨城県東茨城郡大洗町
20,800.00
310,003
19年〜
茨城県水戸市
4,000.00
125,756
17年〜
労働者健康福祉機構 北海道釧路市
941.00
27,577
16年〜
秋田県大館市
788.80
7,454
16年〜
福島県いわき市
3,699.00
92,106
16年〜
堺市<事例1-5> 参照
3,677.70
420,889
16年〜
国立病院機構 名古屋市
1,261.22
44,142
20年〜
名古屋市
1,680.87
58,830
20年〜
広島県東広島市
5,000.00
174,999
16年〜
広島県東広島市
3,000.00
104,999
16年〜
宮崎県児湯郡川南町
2,516.08
23,651
16年〜
森林総合研究所 茨城県取手市
785.50
31,225
20年〜
奈良県奈良市
94.04
4,463
20年〜
水資源機構 群馬県沼田市
1,229.92
14,814
15年〜
千葉県香取市
810.00
6,052
15年〜

千葉県香取市

1,772.35
12,654
15年〜
佐賀県三養基郡みやき町
691.35
23,534
15年〜
計(7法人)
99,448.49
2,986,952
(注)
 期間欄は、有効に利用されていない期間を記載しているが、法人発足前から有効に利用されていない場合には、法人発足時期を記載している。

 宿舎の跡地等が有効に利用されていない事態を事例として示すと次のとおりである。

<事例1-4>
 国立高等専門学校機構は、職業に必要な実践的かつ専門的な知識及び技術を有する創造的な人材を育成するとともに、我が国の高等教育の水準の向上と均衡ある発展を図ることを目的として、全国51か所に国立高等専門学校を設置している。このうち、函館工業高等専門学校ほか17高等専門学校において、老朽化等のために宿舎等を取り壊して更地としたもの(土地面積計37,978.22m 、帳簿価額計12億0023万余円)があり、当該更地について、売却等の処分をしたり施設等を整備したりすることなく、更地のまま保有していて有効に利用していない。

<事例1-5>
 労働者健康福祉機構大阪労災病院は、同機構の前身である労働福祉事業団が昭和41年に購入した堺市に所在する同病院の榎元町宿舎の敷地の一部3,677.70m (帳簿価額4億2088万余円)を承継している。しかし、同機構は、当該土地が文化財保護法(昭和25年法律第214号)第93条第1項に基づく「周知の埋蔵文化財包蔵地」に当たるため、売却等の処分をしたり、宿舎等を整備したりすることなく、同機構が発足した平成16年4月以降も更地のまま保有していて有効に利用していない。

 これら有効に利用されていない事業用の土地及び建物並びに宿舎の跡地等については、全てが直ちに売却等が可能なものではないが、各法人において、その取扱いを検討し、具体的な利用の計画がないなど将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がないと認められる場合は、速やかに不要財産と認定するなどして現物納付、譲渡収入の納付等を行うべきであると認められる。
 また、上記の有効に利用されていない事業用の土地及び建物並びに宿舎の跡地等の中には、利用されている敷地内の一部が有効に利用されていないものが含まれている。一方、法人によっては、事業所等の敷地内に所在する運動場や駐車場の一部について、今までの利用状況の確認や今後の利用予測等を行い、当該部分について今後の利用見込みがないと判断して、当該一部について現物納付や譲渡収入の納付を行っている事例が見受けられた。
 したがって、土地の全体でなく、その一部が有効に利用されていない場合であっても、当該部分の保有の必要性について不断に見直しを実施し、今後の利用見込みがなく、当該部分が公道に面しているなどの場合には、現物納付、譲渡収入の納付等を検討する必要がある。

(イ) 法人が保有する宿舎の入居の状況及び福利厚生施設の稼働状況等

 合理化計画、基本方針等において、不要資産として国庫返納を行うなどとされた資産の中には、各法人が保有する宿舎、保養所、運動場等が多く含まれている。また、23年度に国家公務員宿舎について削減計画が取りまとめられ、更なる削減努力を行うこととなったことも踏まえ、24年4月に政府の行政改革実行本部は、「独立行政法人の職員宿舎の見直し計画」を決定して、独立行政法人の宿舎についても、改めてその必要性を厳しく見直す必要があるとしている。
 このような状況を踏まえ、法人が保有する資産の中で、政府出資等に係る宿舎については入居の状況等を分析し、福利厚生施設については稼働状況等を分析することにした。

a 宿舎について

 宿舎の入居の状況についてみたところ、23年度末で1年以上にわたり入居者がいない宿舎が、図表1-6 のとおり、11法人において727戸あった。これらの宿舎の23年度末の帳簿価額は、土地計53億円、建物計4億円、合計58億円となっている。

図表1-6  1年以上にわたり入居者がいない宿舎の状況(平成23年度末)
法人名 宿舎形態 戸数 面積(m2 帳簿価額(千円)
国際協力機構
戸建型
1
建物
81.63 4,384
土地
1,891.91 7,834
国際交流基金
区分所有型
1
建物
72.22 3,853
土地
35.71 12,300
集合住宅型
28
建物
1,303.38 0
土地
3,208.87 286,400
日本学生支援機構
区分所有型
<事例1-6> 参照
8
建物
555.76 10,493
土地
459.76 31,906
36
建物
1,859.14 10,493
土地
3,668.63 318,306
国立高等専門学校機構
戸建型
65
建物
3,957.85 1,820
土地
16,618.60 707,756
日本原子力研究開発機構
<事例1-7> 参照
集合住宅型
41
建物
2,540.17 61,986
土地
15,042.99 511,070
戸建型
8
建物
1,009.32 27,292
土地
- -
49
建物
3,549.49 89,279
土地
15,042.99 511,070
高齢・障害・求職者雇用支援機構
集合住宅型
20
建物
849.92 1,927
土地
1,477.68 118,228
戸建型
19
建物
1,525.44 11,359
土地
4,114.24 187,105
39
建物
2,375.36 13,286
土地
5,591.92 305,334
福祉医療機構
戸建型
2
建物
261.85 58,378
土地
317.30 51,300
国立重度知的障害者総合施設のぞみの園
集合住宅型
72
建物
3,443.30 0
土地
16,675.92 281,322
労働者健康福祉機構
集合住宅型
61
建物
4,457.08 26,358
土地
9,994.08 384,421
戸建型
15
建物
1,759.31 23,196
土地
4,645.72 163,699
76
建物
6,216.39 49,555
土地
14,639.80 548,121
国立病院機構
<事例1-8> 参照
集合住宅型
247
建物
9,535.82 86,443
土地
29,808.21 1,119,326
戸建型
91
建物
5,978.13 22,156
土地
48,074.03 1,068,380
338
建物
15,513.95 108,600
土地
77,882.24 2,187,707
水資源機構
集合住宅型
34
建物
1,566.48 67,860
土地
8,596.18 220,100
戸建型
14
建物
952.26 70,629
土地
4,826.86 218,330
48
建物
2,518.74 138,490
土地
13,423.04 438,430
計 (11法人)
7法人
集合住宅型
503
建物
23,696.15 244,577
土地
84,803.93 2,920,870
8法人
戸建型
215
建物
15,525.79 219,218
土地
80,488.66 2,404,407
2法人
区分所有型
9
建物
627.98 14,347
土地
495.47 44,206
727
建物
39,849.92 478,142
土地
165,788.06 5,369,484
注(1)  建物面積は、延べ面積を記載している。
注(2)  施設別内訳は、巻末別表2 参照

 また、入居者がいない宿舎を形態別にみると、図表1-7 のとおり、集合住宅型宿舎は7法人において503戸、戸建型宿舎は8法人において215戸、マンションの一室等の区分所有型宿舎は2法人において9戸となっており、各形態別の入居者がいない宿舎が、入居者がいない宿舎全体に占める割合(戸数ベース)は、集合住宅型で69.1%、戸建型で29.5%、区分所有型で1.2%となっている。

図表1-7  1年以上にわたり入居者がいない宿舎の形態別の状況(平成23年度末)
法人名
集合住宅型
戸建型
区分所有型
戸数
割合(%)
戸数
割合(%)
戸数
割合(%)
戸数
国際協力機構 - - 1 100 - - 1
国際交流基金 - - - - 1 100 1
日本学生支援機構 28 77.7 - - 8 22.2 36
国立高等専門学校機構 - - 65 100 - - 65
日本原子力研究開発機構 41 83.6 8 16.3 - - 49
高齢・障害・求職者雇用支援機構 20 51.2 19 48.7 - - 39
福祉医療機構 - - 2 100 - - 2
国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 72 100 - - - - 72
労働者健康福祉機構 61 80.2 15 19.7 - - 76
国立病院機構 247 73.0 91 26.9 - - 338
水資源機構 34 70.8 14 29.1 - - 48
計 (11法人) 503 69.1 215 29.5 9 1.2 727

 そして、入居者がいない727戸について、入居者がいない期間別に分類したところ、図表1-8 のとおり、2年以上3年未満のものが210戸(28.8%)と最も多くなっており、次いで5年以上のものが209戸(28.7%)となっている。

図表1-8  入居者がいない宿舎の期間別の状況 (平成23年度末)
法人 1年以上2年未満 2年以上3年未満 3年以上4年未満 4年以上5年未満 5年以上
戸数 割合(%) 戸数 割合(%) 戸数 割合(%) 戸数 割合(%) 戸数 割合(%) 戸数
国際協力機構 - - 1 100 - - - - - - 1
国際交流基金 - - 1 100 - - - - - - 1
日本学生支援機構 - - - - 1 2.7 3 8.3 32 88.8 36
国立高等専門学校機構 20 30.7 12 18.4 11 16.9 6 9.2 16 24.6 65
日本原子力研究開発機構 - - 7 14.2 14 28.5 - - 28 57.1 49
高齢・障害・求職者雇用支援機構 17 43.5 6 15.3 - - 2 5.1 14 35.8 39
福祉医療機構 2 100 - - - - - - - - 2
国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 - - 72 100 - - - - - - 72
労働者健康福祉機構 14 18.4 19 25.0 2 2.6 10 13.1 31 40.7 76
国立病院機構 99 29.2 87 25.7 39 11.5 39 11.5 74 21.8 338
水資源機構 8 16.6 5 10.4 17 35.4 4 8.3 14 29.1 48
計 (11法人) 160 22.0 210 28.8 84 11.5 64 8.8 209 28.7 727

  長期にわたり入居者がいない状態となっている宿舎について、事例を示すと次のとおりである。

<事例1-6>
 日本学生支援機構が保有する宿舎のうち、名古屋市に所在する区分所有型の宿舎である田代宿舎(4戸、建物面積計289.12m 、帳簿価額計735万余円、土地面積計211.64m 、帳簿価額計1700万余円)及び大阪府枚方市に所在する区分所有型宿舎であるさつき丘宿舎(4戸、建物面積計266.64m 、帳簿価額計314万余円、土地面積計248.12m 、帳簿価額計1489万余円)は、老朽化等により、田代宿舎4戸のうちの3戸は平成16年4月の同機構設立以降、残り1戸は18年1月以降、さつき丘宿舎4戸のうちの2戸は20年4月以降、残り2戸はそれぞれ20年2月及び6月以降、いずれも入居者がいない状態となっていた。また、入居者がいない期間に係る宿舎管理費や修繕積立金等は、田代宿舎分計1047万余円、さつき丘宿舎分計389万余円、合計1436万余円となっていた。

<事例1-7>
 日本原子力研究開発機構は、原子力に関する基礎的研究等を行うことを目的としている。そのため、職員等の職務の能率的な遂行を確保し、もって法人の事務及び事業の円滑な運営に資することを目的として、緊急時対応等の観点から事業用地の近隣等に宿舎を設置している。
 これらの宿舎の入居状況をみると、老朽化等のため、同機構が保有する宿舎3,479戸のうち、1年以上にわたり入居者がいない状態で売却等の処分の決定がなされていない宿舎は49戸となっており、これらに係る平成23年度末の帳簿価額は、土地計5億1107万余円、建物計8927万余円、合計6億0035万余円となっている。このうち、5年間以上の長期にわたり入居者がいない宿舎は28戸あり、入居者がいない宿舎の戸数全体に占める割合は57.1%(これらに係る23年度末の帳簿価額は、土地計3億0656万余円、建物計7298万余円、合計3億7954万余円)となっている。

 1年以上にわたり入居者がいない宿舎以外にも、法人が保有する宿舎の利用状況をみると、23年度末の保有戸数に対する入居戸数の割合(以下「入居率」という。)が50%未満であり、かつ、23年4月から24年3月までの12か月間の入居率も50%未満となっている宿舎(23年4月から24年3月までの期間を通じて入居者がいない宿舎を除く。)が、図表1-9 のとおり、15法人において2,295戸あった。これらの宿舎の23年度末の帳簿価額は、土地計140億円、建物計34億円、合計175億円となっている。

図表1-9 平成23年4月から24年3月までの入居率が50%未満(同期間を通じて入居者がいないものを除く。)となっている宿舎
法人名 宿舎形態 戸数 面積(m2 ) 帳簿価額(千円)
国際協力機構
集合住宅型
26
建物
1,663.97 86,797
土地
6,435.60 396,190
国際交流基金
区分所有型
2
建物
147.49 8,321
土地
77.21 18,348
造幣局
集合住宅型
24
建物
1,393.56 46,387
土地
4,201.72 193,426
国立印刷局
集合住宅型
210
建物
10,062.26 285,684
土地
19,608.29 3,122,180
理化学研究所
集合住宅型
6
建物
144.67 44
土地
296.35 13,658
国立高等専門学校機構
集合住宅型
30
建物
1,868.44 11,899
土地
5,340.06 120,688
戸建型
12
建物
709.66 0
土地
3,101.59 129,022
42
建物
2,578.10 11,899
土地
8,441.65 249,710
日本原子力研究開発機構
集合住宅型
285
建物
15,913.85 785,660
土地
59,678.85 1,877,212
高齢・障害・求職者雇用支援機構
集合住宅型
110
建物
7,007.11 93,769
土地
12,590.79 992,560
戸建型
6
建物
369.19 1,040
土地
908.41 33,088
116
建物
7,376.30 94,810
土地
13,499.20 1,025,649
福祉医療機構
戸建型
1
建物
70.28 321
土地
111.13 21,500
国立重度知的障害者総合施設のぞみの園
集合住宅型
14
建物
1,031.20 28,187
土地
4,308.46 72,683
労働者健康福祉機構
集合住宅型
374
建物
17,854.09 492,244
土地
23,541.09 751,390
国立病院機構
<事例1-8> 参照
集合住宅型
1,000
建物
30,987.05 871,360
土地
98,440.59 4,021,505
戸建型
2
建物
111.59 538
土地
16,231.30 575,731
1,002
建物
31,098.64 871,898
土地
114,671.89 4,597,236
国立国際医療研究センター
集合住宅型
78
建物
3,206.02 12,411
土地
1,174.40 124,694
日本貿易振興機構
集合住宅型
24
建物
1,656.08 24,632
土地
1,457.05 243,000
水資源機構
集合住宅型
89
建物
5,049.70 710,594
土地
17,443.06 1,310,320
戸建型
2
建物
154.46 9,424
土地
683.11 18,806
91
建物
5,204.16 720,018
土地
18,126.17 1,329,127
計 (15法人)
13法人
集合住宅型
2,270
建物
97,838.00 3,449,674
土地
254,516.31 13,239,511
5法人  
戸建型
23
建物
1,415.18 11,324
土地
21,035.54 778,148
1法人
区分所有型
2
建物
147.49 8,321
土地
77.21 18,348
2,295
建物
99,400.67 3,469,321
土地
275,629.06 14,036,008
注(1)  建物面積は、延べ面積を記載している。
注(2)  施設別内訳は、巻末別表3 参照
注(3)  宿舎の規模別内訳は、巻末別表4 参照

 これらの入居率が50%未満の宿舎について、その入居率の状況をみると、図表1-10 のとおり、30%以上40%未満のものが全体の28.1%と最も多くなっている。

図表1-10  平成23年4月から24年3月までの入居率が50%未満(同期間を通じて入居者がいないものを除く。)となっている宿舎の入居率別の内訳
法人名 10%未満 10%以上20%未満 20%以上30%未満 30%以上40%未満 40%以上50%未満
戸数 割合(%) 戸数 割合(%) 戸数 割合(%) 戸数 割合(%) 戸数 割合(%) 戸数
国際協力機構 - - - - 8 30.7 18 69.2 - - 26
国際交流基金 - - - - - - 1 50.0 1 50.0 2
造幣局 - - - - - - - - 24 100 24
国立印刷局 - - - - 18 8.5 148 70.4 44 20.9 210
理化学研究所 - - - - - - 6 100 - - 6
国立高等専門学校機構 9 21.4 13 30.9 5 11.9 10 23.8 5 11.9 42
日本原子力研究開発機構 66 23.1 32 11.2 56 19.6 69 24.2 62 21.7 285
高齢・障害・求職者雇用支援機構 3 2.5 9 7.7 5 4.3 87 75.0 12 10.3 116
福祉医療機構 - - - - - - - - 1 100 1
国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 - - - - - - 14 100 - - 14
労働者健康福祉機構 - - 67 17.9 16 4.2 97 25.9 194 51.8 374
国立病院機構 105 10.4 233 23.2 367 36.6 172 17.1 125 12.4 1,002
国立国際医療研究センター - - 6 7.6 72 92.3 - - - - 78
日本貿易振興機構 - - - - 16 66.6 - - 8 33.3 24
水資源機構 11 12.0 30 32.9 5 5.4 24 26.3 21 23.0 91
計 (15法人) 194 8.4 390 16.9 568 24.7 646 28.1 497 21.6 2,295

  宿舎の入居率が50%未満となっているなどの事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例1-8>
 国立病院機構は、全国の病院等に勤務する職員等の職務の能率的な遂行を確保するなどのため、職員等宿舎を設置している。
 これらの宿舎の入居状況をみると、老朽化等のため入居を希望する者がいないことなどにより、平成23年度末で入居者がいない宿舎は338戸(これらに係る23年度末の帳簿価額は、土地計21億8770万余円、建物計1億0860万円、合計22億9630万余円)となっている。また、これらを除く入居率50%未満となっている宿舎は1,002戸(同、土地計45億9723万余円、建物計8億7189万余円、合計54億6913万余円)なっている。

 入居者がいない宿舎及び入居率が低い宿舎については、全てが直ちに売却等が可能なものではないが、各法人において、それらの廃止や集約等その取扱いを検討し、将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がないと認められる場合は、速やかに不要財産と認定するなどして現物納付、譲渡収入の納付等を行うべきであると認められる。
 なお、入居者がいない宿舎等の中には、事業所の敷地内にある宿舎もあり、敷地外の宿舎に比べると、そのような宿舎を不要財産として現物納付したり、譲渡収入の納付を行ったりすることは容易ではない。しかし、事業所の敷地内の宿舎についても、その保有の必要性について不断に見直しを実施し、今後の利用見込みがなく、当該部分が公道に面しているなどの場合には、現物納付、譲渡収入の納付等を事業用の土地及び建物並びに宿舎の跡地等と同様に検討する必要がある。

b 福利厚生施設について

 福利厚生施設の保有状況についてみると、図表1-11 のとおり、23年度末において、検査対象の102法人のうち22法人が福利厚生施設を保有していた。施設の種類別にみると、主に職員が業務に伴う出張等で使用する宿泊施設を保有する法人が2法人で10施設(帳簿価額、土地計2億円、建物計1億円、合計3億円)、主に職員の健康増進等のためテニスコート等の体育施設を保有する法人が20法人で172施設(同、土地計218億円、建物計25億円、合計244億円)、主に職員が集会所として利用する会合施設を保有する法人が6法人で26施設(同、土地計27億円、建物計2億円、合計30億円)となっている。

図表1-11  法人別の福利厚生施設の保有状況(平成23年度末)
法人名 宿泊施設 体育施設 会合施設
施設数 面積(m2 ) 帳簿価格(千円) 施設数 面積(m2 ) 帳簿価格(千円) 施設数 面積(m2 ) 帳簿価格(千円)
酒類総合研究所
建物
1
建物
建物
土地
土地
648.00 30,781
土地
造幣局 1
建物
1,302.94 28,391 14
建物
22,290.45 1,103,852 1
建物
349.92 0
土地
394.60 65,958
土地
28,668.67 3,688,825
土地
942.52 47,491
国立印刷局
建物
25
建物
12,294.50 560,455 11
建物
3,936.69 208,247
土地
土地
65,513.78 4,963,999
土地
6,732.76 918,621
物質・材料研究機構
建物
5
建物
建物
土地
土地
28,801.00 2,693,759
土地
防災科学技術研究所
建物
2
建物
建物
土地
土地
7,853.66 475,146
土地
放射線医学総合研究所
建物
1
建物
建物
土地
土地
1,463.30 96,244
土地
理化学研究所
建物
6
建物
1,481.39 138,923 1
建物
86.20 31
土地
土地
30,979.24 880,122
土地
297.69 13,720
宇宙航空研究開発機構
建物
4
建物
823.77 38,319
建物
土地
土地
25,953.34 346,241
土地
海洋研究開発機構
建物
4
建物
建物
土地
土地
8,866.00 687,377
土地
国立高等専門学校機構 9
建物
2,323.82 113,403
建物
1
建物
340.00 2,841
土地
5,638.32 182,913
土地
土地
340.00 7,649
日本原子力研究開発機構
建物
43
建物
13,480.31 521,666 10
建物
2,351.39 83,886
土地
土地
175,657.29 2,137,225
土地
63,120.50 1,301,930
労働安全衛生総合研究所
建物
2
建物
建物
土地
土地
2,418.00 195,857
土地
家畜改良センター
建物
5
建物
565.66 119,000
建物
土地
土地
159,362.57 144,028
土地
農業・食品産業技術総合研究機構
建物
33
建物
建物
土地
土地
99,306.19 1,565,891
土地
農業生物資源研究所
建物
3
建物
建物
土地
土地
8,506.00 329,185
土地
農業環境技術研究所
建物
2
建物
建物
土地
土地
8,430.00 372,125
土地
国際農林水産業研究センター
建物
1
建物
建物
土地
土地
1,258.00 57,204
土地
森林総合研究所
建物
6
建物
630.00 127
建物
土地
土地
15,212.08 518,213
土地
水産総合研究センター
建物
4
建物
建物
土地
土地
3,232.00 232,995
土地
産業技術総合研究所
建物
10
建物
2,046.78 113,437
建物
土地
土地
47,085.78 2,343,460
土地
自動車事故対策機構
建物
1
建物
建物
土地
土地
1,475.00 119,854
土地
国立環境研究所
建物
建物
2
建物
2,471.00 8
土地
土地
土地
9,132.00 483,275
計 (22法人) 10
建物
3,626.76 141,794 172
建物
53,612.86 2,595,782 26
建物
9,535.20 295,015
土地
6,032.92 248,872
土地
720,689.90 21,878,541
土地
80,565.47 2,772,690
(注)
 建物面積は、延べ面積を記載している

 これらの法人が保有する福利厚生施設のうち宿泊施設の23年度の稼働状況(年間宿泊可能人日数に対する実際の利用人日数(以下「稼働率」という。))についてみると、図表1-12 のとおり、2法人の10施設は、いずれも稼働率が40%を下回っていた。

図表1-12 法人が保有する福利厚生施設のうち、宿泊施設の稼働率が40%を下回っているもの(平成23年度)
法人名 所在地 面積(m2 ) 帳簿価格(千円) 客室数 稼働率(%)
造幣局 大阪市
建物
1,302.94 28,391 4 18.1
土地
394.60 65,958
国立高等専門学校機構 群馬県前橋市
建物
94.38 0 4 0.2
土地
683.62 19,004
富山県富山市
建物
229.79 2,268 4 1.6
土地
1,009.68 20,420
富山県射水市
建物
74.00 20,408 2 23.5
土地
269.00 4,982
石川県河北郡津幡町
建物
204.85 6,000 4 2.2
土地
370.41 22,200
三重県鳥羽市
建物
666.77 45,143 4 32.1
土地
257.61 48,372
三重県鳥羽市
建物
115.20 5,782 5 9.2
土地
79.20 14,871
山口県大島郡周防大島町
建物
193.20 4,642 7 15.2
土地
256.00 3,839
愛媛県新居浜市
建物
151.28 7,858 3 3.5
土地
685.00 28,906
愛媛県越智郡上島町
建物
594.35 21,300 8 10.5
土地
2,027.80 20,316
計 (2法人)
建物
3,626.76 141,794 45
土地
6,032.92 248,872
(注)
 建物面積は、延べ面積を記載している。

 また、法人の中には福利厚生施設として、テニスコート、運動場、体育館、弓道場等の体育施設及び談話や集会のための会合施設を保有している法人がある。これらの施設は、ほとんどが事業所又は宿舎と同一敷地内に設置されているものである(法人が保有する体育施設及び会合施設の設置状況については巻末別表5 参照)。
 これらの施設の管理状況についてみると、法人において利用状況を確認することとしていないなどのため、利用状況の確認ができないとする施設が、図表1-13 のとおり、12法人において57施設見受けられた。

図表1-13 体育施設及び会合施設の利用の把握状況
法人名 体育施設    
     
テニスコート 利用状況を把握していない施設数 運動場・体育館 利用状況を把握していない施設数 その他 利用状況を把握していない施設数 会合施設 利用状況を把握していない施設数 利用状況を把握していない施設数
酒類総合研究所 1 1 - - - - - - 1 1
造幣局 3 - 6 - 5 - 1 - 15 -
国立印刷局 5 1 10 - 10 6 11 2 36 9
物質・材料研究機構 3 3 2 2 - - - - 5 5
防災科学技術研究所 1 1 1 1 - - - - 2 2
放射線医学総合研究所 1 - - - - - - - 1 -
理化学研究所 3 1 2 - 1 1 1 - 7 2
宇宙航空研究開発機構 2 - 2 1 - - - - 4 1
海洋研究開発機構 2 - 2 - - - - - 4 -
国立高等専門学校機構 - - - - - - 1 - 1 -
日本原子力研究開発機構 16 7 18 7 9 5 10 1 53 20
労働安全衛生総合研究所 1 - 1 - - - - - 2 -
家畜改良センター 2 1 3 1 - - - - 5 2
農業・食品産業技術総合研究機構 23 - 9 - 1 - - - 33 -
農業生物資源研究所 2 2 1 1 - - - - 3 3
農業環境技術研究所 1 - 1 - - - - - 2 -
国際農林水産業研究センター 1 - - - - - - - 1 -
森林総合研究所 4 - 2 - - - - - 6 -
水産総合研究センター 4 - - - - - - - 4 -
産業技術総合研究所 7 7 3 2 - - - - 10 9
自動車事故対策機構 1 1 - - - - - - 1 1
国立環境研究所 - - - - - - 2 2 2 2
計(22法人) 83 25 63 15 26 12 26 5 198 57

 また、法人が保有する福利厚生施設の中には、自法人で利用するよりも自法人以外の者に多く利用されている場合が見受けられた。そこで、保有する体育施設及び会合施設の全部又は一部について、利用状況が確認できた16法人についてみると、図表1-14 のとおり、自法人以外の者の利用が50%を超えている施設が、7法人において19施設見受けられた。

図表1-14 体育施設及び会合施設のうち、自法人以外の者の利用が50%を超えているもの
法人名 体育施設    
     
テニスコート 自法人以外の者の利用が50%超の施設数 運動場・体育館 自法人以外の者の利用が50%超の施設数 その他 自法人以外の者の利用が50%超の施設数 会合施設 自法人以外の者の利用が50%超の施設数 自法人以外の者の利用が50%超の施設数
造幣局 3 1 6 3 5 - 1 1 15 5
国立印刷局 5 - 10 1 10 - 11 - 36 1
理化学研究所 3 1 2 1 1 - 1 - 7 2
日本原子力研究開発機構 16 1 18 4 9 - 10 1 53 6
労働安全衛生総合研究所 1 1 1 - - - - - 2 1
家畜改良センター 2 - 3 1 - - - - 5 1
農業・食品産業技術総合研究機構 23 - 9 2 1 1 - - 33 3
計(7法人) 53 4 49 12 26 1 23 2 151 19

 体育施設及び会合施設については、利用状況の確認ができないとする法人が見受けられたが、基本方針を踏まえると、これらの施設を保有する場合は、その必要性を厳しく検証することなどが求められていると考えられることから、利用状況を把握するなど不断の見直しのための体制を整備する必要がある。そして、これにより得られた稼働率、自法人以外の者の利用状況等も踏まえ、福利厚生施設の保有の必要性を検討する必要がある。

イ 金融資産の状況

(ア)  現金預金、有価証券、関係会社株式、敷金等の推移

 法人が保有する金融資産のうち、過去の検査結果や不要財産の国庫納付の実績等を踏まえ、現金預金、有価証券、関係会社株式、敷金等に着目して、19年度から23年度までの間の年度末における金額の推移を示すと、図表1-15 のとおりである。

図表1-15 現金預金、有価証券、関係会社株式、敷金等の推移(平成19年度〜23年度)
(単位:百万円)
項目 平成19年度 20年度 21年度 22年度 23年度
現金預金
金額
111,786,782 79,250,653 66,447,177 48,950,779 38,262,948
法人数
96 96 96 102 102
総資産に占める割合(%)
26.95 20.63 17.95 14.37 11.79
有価証券
金額
12,916,717 12,350,195 13,324,522 13,595,149 12,568,966
法人数
45 46 49 50 49
総資産に占める割合(%)
3.11 3.21 3.60 3.99 3.87
関係会社株式
金額
141,845 284,118 262,556 295,372 320,832
法人数
9 10 9 9 9
総資産に占める割合(%)
0.03 0.07 0.07 0.08 0.09
敷金等
金額
44,344 47,069 37,458 32,857 39,106
法人数
51 52 55 53 52
総資産に占める割合(%)
0.01 0.01 0.01 0.00 0.01
総資産 414,701,715 384,143,763 369,986,765 340,488,899 324,459,409
(注)
 貸借対照表上の長期性預金は現金預金に、投資有価証券は有価証券にそれぞれ含めている。

 現金預金については、全ての法人が保有しており、23年度末における金額は38兆2629億円で、総資産に占める割合は11.79%となっている。金額では総額で減少傾向にあるが、郵便貯金・簡易生命保険管理機構が保有する現金預金の減少が主たる要因であり、当該要因を除くとほぼ横ばいとなっている。
 有価証券については、23年度末で49法人が保有しており、同年度末における金額は12兆5689億円で、総資産に占める割合は3.87%となっている。その金額は、13兆円前後で推移している。
 関係会社株式については、23年度末で9法人が保有しており、同年度末における金額は3208億円で、総資産に占める割合は0.09%となっている。19年度から20年度にかけての主な増加要因は、国際協力機構が旧国際協力銀行の海外経済協力部門と統合したことである。
 敷金等については、23年度末で52法人が保有しており、同年度末における金額は391億円である。総資産に占める割合は0.01%となっており、総資産に占める割合は僅少なものとなっている。
 なお、独立行政法人が保有する資産の運用に関しては、一部の法人においては個別法で規定されているが、多くの法人においては通則法第47条の定めるところによっている。通則法第47条では、独立行政法人が業務上の余裕金を運用する方法として、同条第1号で「国債、地方債、政府保証債(その元本の償還及び利息の支払について政府が保証する債券をいう。)その他主務大臣の指定する有価証券の取得」、同条第2号で「銀行その他主務大臣の指定する金融機関への預金」、同条第3号で「信託業務を営む金融機関(金融機関の信託業務の兼営等に関する法律(昭和18年法律第43号)第1条第1項の認可を受けた金融機関をいう。)への金銭信託」とそれぞれ明記されており、独立行政法人は、これらによる場合を除くほか、業務上の余裕金を運用してはならないとされている。

(イ) 現金預金及び政府出資等に係る金融資産の状況

a 現金預金の保有状況

 現金預金の年度末における保有状況を検査したところ、使用を想定していない現金預金が独立行政法人設立以降23年度末まで留保されていた事態が以下の とおり見受けられた。

<事例1-9>
 北方領土問題対策協会は、平成15年10月に特殊法人であった北方領土問題対策協会(以下「旧協会」という。)の権利及び義務を承継して設立された際に、旧協会の同年9月30日現在の貸借対照表において、負債の内訳科目である退職給与引当金に見合う資産として保有していた現金預金1773万余円及び資本剰余金の内訳科目である国庫補助金に見合う資産として保有していた現金預金196万余円の計1969万余円について、独立行政法人北方領土問題対策協会資産評価委員会の決定等に基づき、同年10月1日現在の同協会の開始貸借対照表において、政府出資金見合いの現金預金として一般業務勘定で承継していた。
 そして、同協会は、この設立時より保有していた政府出資金見合いの現金預金計1969万余円に、同協会設立後の18年7月に一般業務勘定で返戻を受けた政府出資金見合いの敷金等14万円を加えた合計1983万余円については、政府出資に係る現金預金として、他の現金預金とは区別して管理していた。
 しかし、同協会は、政府出資金見合いとして承継するなどしたこの資金を、同協会が行う事務・事業に使用することを想定しておらず、同協会内部に預金等として留保していた。
 なお、同協会は、会計検査院の検査を踏まえて、当該資金について不要財産に該当するか否かを検討した結果、当該資金を不要財産として認定し、国庫納付することとした。

 また、主要な事業が終了した業務に係る前中期目標期間繰越積立金について、当該事業終了後も継続して保有し、通則法の改正の趣旨及び基本方針等にのっとって速やかに国庫納付することを十分に検討していなかった結果、今中期目標期間の終了する年度まで留保されることが見込まれる状況となっていた事態が以下のとおり見受けられた。

<事例1-10>
 中小企業基盤整備機構は、繊維産業構造改善事業協会等をその前身とする中小企業総合事業団等の権利及び義務を承継して、平成16年7月に設立された。同機構は、第2期中期目標期間(21年度から25年度まで)の期首に、同中期目標期間における繊維関連業務(情報調査等業務及び債務保証業務)に要する費用の財源に充てるために、同事業団から承継した資金のうち13億8098万余円を経済産業大臣の承認を受けて繰り越して、繊維関連業務に係る前中期目標期間繰越積立金として計上しており、23年度末における同積立金の額は8億7260万余円となっていた。
 そして、情報調査等業務については22年5月末に終了し、また、債務保証業務については保証残高が23年1月に0円となり、それ以降は当該債務保証から生じた求償権の管理業務のみを行っていた。
 しかし、同機構は、主要な事業が終了した繊維関連業務に係る前中期目標期間繰越積立金について、通則法の改正の趣旨及び基本方針等にのっとって速やかに国庫納付することを十分に検討していなかった。その結果、前記の資金の大部分が第2期中期目標期間の終了する25年度末まで同機構内部に留保されることが見込まれる状況となっていた。
 なお、同機構は、会計検査院の検査を踏まえて、経済産業省と協議するなどして、23年度末における上記の前中期目標期間繰越積立金の額から第2期中期目標期間中に支出が見込まれる求償権の管理業務に要する費用の額1560万円を控除した額に相当する資金8億5700万余円を不要財産として認定し、国庫納付した。

 さらに、法人が保有している23年度末の現金預金について、年度末で計上される未払金や運営費交付金債務等の負債項目及び積立金等の資本項目との対応関係をみたところ、年度末で保有している現金預金の具体的な用途(未払金の支払、中期目標期間終了時の積立金の国庫納付等)が定まっているものがある一方で、具体的な用途が定まっていないものが見受けられた。そこで、具体的な用途が定まっていないこの現金預金について、その財源(政府出資金、運営費交付金等)をみたところ、全て明らかにしていた法人や明らかにしていなかったものの法人内における現金預金の管理状況を基に会計実地検査時までに明らかにした法人が見受けられた。一方で、現金預金の財源を把握するための十分な管理がなされていなかったことから、会計実地検査時に財源を明らかにできず、財源の把握に時間を要していた法人が以下のとおり見受けられた。

<事例1-11>
 自動車事故対策機構について、平成24年3月に会計実地検査を実施するなどして検査したところ、同機構が保有する現金預金のうち、その財源を明らかにできずに不明となっていたものがあり、その額は、23年度末で2億5191万余円となっていた。
 財源が明らかにできない状況下では、財源の性質に応じて通常想定される用途が判明しないことから、当該現金預金はその財源の性質に応じた用途を決めることが困難であると考えられる。また、現金預金の必要額を検討の上、不要額を不要財産として処分しようとしても、当該現金預金が通則法第46条の2第1項の規定による国庫納付の前提となる政府出資等に係る現金預金であるかどうか不明であるため、通則法に基づく不要財産としての国庫納付を 行うことは困難となる。これらのことから、保有する現金預金の財源を必要に応じて明らかにできるように管理を行う必要があるが、同機構は、管理を十分に行っていなかったため、財源不明の現金預金があることを認識しておらず、その結果、当該現金預金は、用途が検討されないまま、同機構内部に留保されている状況となっていた。
 なお、同機構は、会計検査院の検査を踏まえて、保有する現金預金の全てについて調査を実施し、その結果、23年度末に保有していた現金預金のうち2億2583万余円の財源が政府出資金であることを確認するなどして、全ての財源を明らかにした。

b 政府出資等に係る定期預金の保有状況

 政府出資等に係る定期預金を保有している法人数は、23年度末で28法人となっていて、その額は計7303億円となっている。これらの定期預金について、23年度末から満期日までの期間別の金額を示すと図表1-16 のとおりであり、満期日までの残存期間が1年以内の定期預金が全体の約92%を占めており、大部分が 余裕金の一時的な運用のための保有となっている。
 一方、独立行政法人の評価の期間的な単位となる中期目標期間の上限である5年を超える定期預金を保有している法人が4法人(重複を除く。)あり、特に当該中期目標期間を大幅に超える、満期まで約25年となる定期預金を保有している法人が1法人見受けられた。

図表1-16  定期預金の残存期間別保有状況(平成23年度末)
(単位:百万円)
金額・法人数
1年以内
1年超5年以内
5年超10年以内
10年超20年以内
20年超
金額 675,322 42,069 1,700 10,100 1,200 730,392
法人数 24

6

3 1 1 28
注(1)  複数の残存期間の預金を保有している法人があるため、法人数の計は、各期間ごとの法人数を集計したものと一致しない。
注(2)  法人別内訳は、巻末別表6 参照

 残存期間が5年超の定期預金について更にみたところ、デリバティブ(金融派生商品)が組み込まれた預金を保有している法人が見受けられた。これらの法人の中には、為替相場やTIBOR(Tokyo Inter-Bank Offered Rate。東京の銀行間取引金利)といった指標により利率が変動したり、銀行が満期日前に払い戻す権利(中途解約権)を有していたりする預金(以下「仕組預金」という。)を保有している法人が見受けられた。この仕組預金は、主に以下のような特性も有している金融商品である。
・払込み、利払い及び払戻しが日本円で行われ、預入期間が約10年から約30年と長期に及ぶ。
・利払日における利率が、固定のものがある一方、変動のものもある。
・利率の上限(キャップ)及び下限(フロアー)が定められているものもある。
・法人側から満期日前に解約することが困難であり、仮に解約できた場合でも、預入金額(投資元本)を払戻額が下回るリスクを有している。
 23年度末で、政府出資等に係る仕組預金を保有している法人は、図表1-17 のとおり3法人となっており、同年度末の保有口数の合計は9口、貸借対照表価額は計123億円となっている。

図表1-17  仕組預金の保有状況(平成23年度末)
法人名
口数
貸借対照表価額
(百万円)
預入時期
保有目的
日本芸術文化振興会
7
11,300
平成16年10月〜24年3月

利息収入を助成事業及び公演事業の事業費に充てるため

医薬基盤研究所
1
500
24年3月
利息収入を承継勘定における管理業務の経費に充てるため
農業・食品産業技術総合研究機構
1
500
23年12月
利息収入を民間研究促進業務勘定における経費に充てるため
9
12,300

c 政府出資等に係る有価証券(債券)の保有状況

 政府出資等に係る債券を保有している法人数は、23年度末で30法人となっていて、その額は計1兆7611億円となっている。これらの債券について、種類別、残存償還期間別の保有状況を示すと図表1-18 のとおりである。

図表1-18 政府出資等に係る債券の種類別及び残存償還期間別保有状況(平成23年度末)
(単位:百万円)
種類・法人数

1年以内

1年超5年以内
5年超10年以内
10年超20年以内
20年超
国債
73,133
124,102
59,590
342,616
7,198
606,641
地方債
11,718
95,158
124,737
66,229
697
298,541
政府保証債
8,278
51,573
44,690
4,080
-
108,622
その他主務大臣の指定する有価証券
93,063
345,127
227,983
47,311
33,833
747,319
  うち外国債券
-
4,923
2,511
9,930
33,233
50,600
うち外国債券以外
93,063
340,204
225,471
37,380
600
696,719
186,193
615,962
457,001
460,238
41,729
1,761,125
法人数
24
25
17
13
9
30
注(1)  複数の残存償還期間の債券を保有している法人があるため、法人数の計は、各期間ごとの法人数を集計したものと一致しない。
注(2)  法人別内訳は、巻末別表7 参照

 上記の債券は、通則法第47条に基づく主務大臣の指定する有価証券として保有するものが7473億円と最も多額となっており、その内容は主に社債となっている。
 また、独立行政法人の評価の期間的な単位となる中期目標期間の上限である5年を大幅に超えて、償還までに20年を超える債券を保有している法人が9法人見受けられた。なお、当該債券の中には、独立行政法人に移行する前の中期目標期間の定めがない特殊法人当時に購入されたものが含まれている。
 債券の保有状況を更にみたところ、デリバティブ(金融派生商品)が組み込まれた債券を保有している法人が見受けられ、これらの法人が保有する債券を分析したところ、主に外国債券で為替相場の変動に応じて債券の利率が変化する条件で発行された債券(以下「仕組債」という。)を保有している法人が見受けられた。23年度末で、政府出資等に係る仕組債を保有している法人の状況は、図表1-19 のとおり6法人で計36銘柄、23年度末貸借対照表価額は計431億円となっている。これらの仕組債は、主に外国債券であり、通貨による分類では、払込み、利払い及び償還が日本円で行われる円建外債に分類されている。

図表1-19  仕組債の保有状況 (平成23年度末)
法人名 銘柄数 貸借対照表価額
(百万円)
取得時期 保有目的
日本スポーツ振興センター
12
9,075
平成17年9月〜23年11月
利息収入をスポーツ振興基金の助成事業費に充てるため
日本芸術文化振興会
15
19,232
14年1月〜23年7月
利息収入を助成事業及び公演事業の事業費に充てるため
農業・食品産業技術総合研究機構
3
4,800
14年10月〜16年1月
利息収入を民間研究促進業務及び農業機械化促進業務における経費に充てるため
新エネルギー・産業技術総合開発機構
1
5,000
15年4月
利息収入を基盤技術促進勘定における経費に充てるため
情報処理推進機構
1
872
18年3月
プログラム開発業務に充当するまでの運用のため
環境再生保全機構
4
4,200
14年6月〜16年9月
利息収入を健康被害予防事業の事業費に充てるため
36
43,179
(注)
 上記債券の中には、独立行政法人に移行する前の中期目標期間の定めがない特殊法人当時に購入されたものが含まれている。

 仕組債を保有する6法人のうち、情報処理推進機構を除く5法人は、債券から得られる利息収入を事業の原資に充てる目的で保有している。
 これらの仕組債の利払日における利率は、一定の日における為替相場の水準による一定の算式(図表1-20 参照)に基づいて決定されるが、上限(キャップ)及び下限(フロアー)が定められているものもある。このため、上限利率及び下限利率の範囲では、為替相場の変動により利払日の利率が変動するリスクを有しており、仕組債の保有期間を通じて安定した利息収入を得られるとは限らない。また、一定水準を超えて円高になった場合には、利率が0%となり利息収入を全く得ることができなくなる一方で、円安になった場合でも上限利率を超える利息収入を得ることができないというリスクも有している。なお、仕組債の発行後、半年から3年程度は、利率が上限(キャップ)又はそれに近い水準で固定される期間が設けられている。

図表1-20  一定の日における為替相場の水準による一定の算式例
  米ドルの為替相場の水準により利払日における利率が決定される仕組債の場合
 (算式例) 利払日における利率=米ドル金利×利率決定時為替相場÷基準為替相場-円金利
 (計算上の条件) 米ドル金利:14%(一定) 円金利:10% (一定)
            基準為替相場:115円(一定)
            上限利率:4% 下限利率:0%
 上記の条件を算式に当てはめると、
            利払日における利率=14%×利率決定時為替相場÷115円-10%
 となり、利払日における利率は、為替相場が115円以上のときに上限利率4%、為替相場が約82.14円以下のときに下限利率0%となり、その間、為替相場1円/米ドルの変動につき利率は約0.12%変化する。当該内容をグラフにすると以下のとおりである。

独立行政法人における不要財産の認定等の状況に関する会計検査の結果についての図1

(注)
 上記の算式例は、法人が保有している仕組債に実際に適用されている算式ではなく、モデルとして例示したものである。

 そこで、仕組債の23年度末における適用利率の状況についてみたところ、仕組債が有する為替水準の変動による利率変動リスクが顕在化したために、利率が0%となっていて、利息を全く受け取れなくなっている仕組債が見受けられ、その状況は、図表1-21 のとおり3法人で計9銘柄、貸借対照表価額は計164億円となっている。

図表1-21 利息を全く受け取れなくなっている仕組債(平成23年度末)
(単位:百万円)

法人名 銘柄名 利率決定の基準となる通貨 銘柄数 貸借対照表価額
日本芸術文化振興会 25年ニュー・サウス・ウェールズ財務公社
米ドル
1
2,000
30年ドイツ復興金融公庫
3
3,000
30年バーデンヴュルテンベルク州立開発銀行
1
1,000
30年欧州投資銀行
1
2,000
農業・食品産業技術総合研究機構 第24回国際復興開発銀行

米ドル

1
1,500
第5回国際金融公社
1
1,900
新エネルギー・産業技術総合開発機構 第25回国際復興開発銀行米ドル・円金利差額型変動利付円貨債券
米ドル
1
5,000
9
16,400

 また、23年度末で適用利率が1%以下となっている仕組債が、図表1-22 のとおり、4法人で計8銘柄、貸借対照表価額は計112億円となっている。

図表1-22 適用利率が1%以下となっている仕組債(平成23年度末)
(単位:百万円)
法人名
銘柄名
利率決定の基準となる通貨
利率
貸借対照表価額
日本スポーツ振興センター ドイツ復興金融公庫
米ドル
0.357% 500
国際復興開発銀行
米ドル
0.973% 1,259
日本芸術文化振興会 30年ドイツ復興金融公庫
米ドル
0.100% 1,000
30年欧州投資銀行
米ドル
0.179% 965
30年国際金融公社(IFC)
ユーロ
0.277% 1,000
25年国際金融公社(IFC)
米ドル
0.420% 3,000
農業・食品産業技術総合研究機構 第6回国際金融公社円貨債券
米ドル
0.838% 1,400
環境再生保全機構 アジア開発銀行
米ドル
0.964% 2,100
11,224

 前記のとおり、仕組債を保有している6法人のうち、情報処理推進機構を除く5法人では、事業を行う財源として債券の運用による利息収入を得ることを目的として仕組債を保有しているが、その中に利息収入を得られない又はほとんど得られない状況になっている銘柄が見受けられた。同様に、前記図表1-17 に示す仕組預金も米ドルの為替相場の影響を受けており、利率が0%となっているものはないが、0.001%と低くなっているものが見受けられた。
 保有している仕組債及び仕組預金(以下「仕組債等」という。)の利率が0%となっているなどの事態について、事例を示すと以下のとおりである。

<事例1-12>
 日本芸術文化振興会は、政府出資金541億円等を原資として形成した基金(以下「芸術文化振興基金」という。)から得られる運用益を財源に、広く我が国の文化の振興又は普及を図るための活動に対する援助を行っている。また、政府出資金108億円を原資として得られる運用益、運営費交付金及び自己収入を財源に、我が国古来の伝統的な芸能の保存及び振興を図るとともに、我が国における現代の舞台芸術の振興及び普及を図ることなどを目的とした事業を行っている。
 同振興会は、平成23年度末において、政府出資等に係る運用資産として、債券639億円(金額は額面。以下、本事例において同様)及び長期性預金113億円を保有している。そして、その運用資産の一部として、利息の受取額が主に為替相場により変動する条件となっている仕組債193億円(15銘柄)及び仕組預金108億円(6口)を保有しているほか、利率が固定で繰上償還条項が組み込まれていない外国債券10億円(1銘柄)及び利率が固定で繰上償還条項が組み込まれた仕組預金を5億円(1口)保有している。
 このうち、利息の受取額が変動する仕組債等は、主に利払日の数営業日前の為替相場により利率が決定され、円高になるほど利率は低くなり、円安になるほど利率が高くなる条件となっている。
 そして、昨今の米ドル及びユーロの為替相場の円高の影響を受けて、23年度末において、利率が0%となっている仕組債が計80億円、0.100%から0.420%となっている仕組債が計60億円、0.001%から0.681%となっている仕組預金が計27億円となっている。
 20年度下期における急激な円高により仕組債等が有する利率変動リスクが顕在化したことを踏まえて、同振興会は、21年3月31日に、芸術文化振興基金における仕組債等を可能な限り圧縮するよう努力するという運用方針を理事長が最終決裁している。その後の同振興会が保有する仕組債等の法人全体での合計金額は、20年度末に333億円であったものが、21年度末で298億円、22年度末で321億円、23年度末で306億円となっていて、当該決裁後においても新たに仕組債等を取得している年度もあり、23年度末までの減少額は1割程度にとどまっている。
 仕組債等の取得に当たっての同振興会における決裁の状況についてみたところ、取得に係る事後的な報告書はあるものの、仕組債等の取得に係る決裁文書を作成しておらず、決裁を受けたことが文書により確認できない仕組債等が計149億円(23年度末における保有額)あった。また、決裁文書により決裁日が確認できたものについてみたところ、仕組債の約定日(契約日)及び仕組預金の契約日が決裁日以前となっていたものがあり、そのような仕組債 等の額は、計122億円(23年度末における保有額)となっていた。

 また、仕組債は、利率の変動リスク以外に、主に以下のような特性も有している。
・一般に流通している債券ではなく、発行体と購入者の相対の取引により発行される債券であり、債券の発行から償還までの期間が約20年から約30年と長期に及ぶ。
・債券の発行体が、償還日前に早期償還できる権利(オプション)を保有している。
・償還日前に売却又は解約することが困難であり、仮に売却又は解約できた場合でも、市場の状況によっては、投資元本を下回り、損失が発生するリスクを有している。
 そして、図表1-19 のうち、債券から得られる利息収入を事業の原資に充てる目的で保有している5法人以外で、事業経費等に資金を直接充当することを予定する勘定において仕組債を保有している情報処理推進機構の状況を示すと以下のとおりである。

<事例1-13>
 情報処理推進機構は、一般勘定のプログラム開発業務経理で1銘柄、額面金額10億円(平成23年度貸借対照表価額8億7200万円)の仕組債を保有している。この仕組債は、従前は同じ一般勘定の信用保証業務経理で保有していたもので、プログラム開発業務経理との間で有価証券の銘柄を交換することによりプログラム開発業務経理に属することになったものである。
 プログラム開発業務に充当を予定する資金のうち、23年度末で債券及び定期預金で運用している貸借対照表価額の合計額は約128億円となっており、この中には上記の仕組債が含まれている。この資金の運用期間は、定期預金の預入期間が2か月から3か月となっており、この仕組債を除く債券は、27年度までに償還されることになっている。しかし、この仕組債は、償還日が48年3月28日となっており、同経理で保有している他の債券と比較して償還日までの残存償還期間が長くなっているが、市場性がないため途中売却が容易にできるとは限らないものである。なお、この仕組債には、発行体による早期償還ができる権利(オプション)が付いている。
 また、この仕組債は、同機構が財務収益を増やすことが重要と認識して、高い利回りを期待して手元に残したものであるが、米ドルの為替相場の変動に応じて上限利率4%と下限利率0%の範囲内で利率が変動するものとなっている。なお、この仕組債は、発行体が早期償還ができる権利(オプション)が付いているため、仮に円安に伴い利率が上昇したとしても権利行使されると高い利率のメリットを享受できないリスクを有している債券である。

  これら仕組債等の23年度末における時価の状況は、以下の図表1-23 及び図表1-24 のとおりとなっている。

図表1-23  仕組債の時価の状況(平成23年度末)
(単位:百万円)

法人名
利率決定の基準となる通貨
銘柄数
貸借対照表価額(A)
時価
(B)
差引
((B)-(A))
日本スポーツ振興センター
米ドル

3

2,259
1,976
△283
ユーロ
1
688
675
△12
豪ドル
8
6,127
5,923
△204
日本芸術文化振興会
米ドル
12
16,232
12,977
△3,255
ユーロ
1
1,000
759
△240
豪ドル
2
2,000
1,774
△225
農業・食品産業技術総合研究機構
米ドル
3
4,800
3,961
△838
新エネルギー・産業技術総合開発機構
米ドル
1
5,000
3,347
△1,653
情報処理推進機構
米ドル
1
872
872
-
環境再生保全機構
米ドル
4

4,200

3,434
△765
米ドル
24
33,363
26,568
△6,794
ユーロ

2

1,688
1,435
△252
豪ドル
10
8,127
7,698
△429
36
43,179
35,702
△7,477
(注)
 時価については、各法人が金融機関等から提供を受けた金額を記載している。


図表1-24  仕組預金の時価の状況(平成23年度末)
(単位:百万円)

法人名
口数
貸借対照表価額(A)
時価(B)
差引
((B)-(A))
日本芸術文化振興会

7

11,300
10,581
△718
医薬基盤研究所
1
500
-
-
農業・食品産業技術総合研究機構
1
500
494
△5

9

12,300
11,075
△724
注(1)  時価については、各法人が金融機関等から提供を受けた金額を記載している。
注(2)  医薬基盤研究所が保有する仕組預金は、医薬基盤研究所が中途解約しなければ元本保証されているものであり、時価という概念がなく、金融機関から時価に関する情報の提供を受けられなかったことから、時価欄を「-」としている。
注(3)  医薬基盤研究所の仕組預金の「時価」欄が「-」となっているため、「計」欄の「差引」欄の金額「△724」は、時価の計「11,075」から貸借対照表価額の計「12,300」を控除した計算結果と一致しない。

 図表1-23 に示す仕組債の時価の状況をみると、利率が米ドルの為替相場で決定される仕組債の時価が貸借対照表価額を総額で約67億円下回っており、昨今の円高の影響を受けて利率が低下していることによる影響を受けていると考えられる。なお、銘柄数では、36銘柄中、30銘柄で時価が貸借対照表価額を下回っている。
 時価が貸借対照表価額を下回っている状況は、図表1-23 のとおりであるが、仕組債を保有している法人のうち、情報処理推進機構を除く法人は、有価証券の分類上、満期保有目的の債券として仕組債を保有しており、「「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」」(平成12年2月独立行政法人会計基準研究会策定。以下「会計基準等」という。)では時価評価が行われないため、貸借対照表価額と時価との差額が損益計算書に損失として計上されていない(減損処理が行われる場合を除く。)。また、図表1-24 の仕組預金についても、時価評価が行われないため、貸借対照表価額と時価との差額が損益計算書に損失として計上されていない。
 なお、情報処理推進機構を除く他の法人は、上記のとおり、満期保有目的の債券に分類して、償却原価法(注1) を適用して算出した金額を貸借対照表価額としているが、情報処理推進機構では、保有する仕組債をその他有価証券に分類しており、時価のあるものは期末日の市場価格等に基づく時価法(評価差額は全部純資産直入法(注2) により処理し、売却原価は移動平均法により算定)によっているため、貸借対照表価額と時価が一致している。

(注1)
 償却原価法  取得価額と債券金額との差額を償還期に至るまで毎期一定の方法で取得価額に加減する方法
(注2)
 全部純資産直入法  評価差額(評価差益又は評価差損)の合計額を純資産の部に計上する方法

 仕組債を保有する法人は、通則法第47条に基づく主務大臣の指定する有価証券として円建外債の指定を受けており、これに該当する債券として仕組債を購入している。ただし、主務大臣の指定内容が記載された文書には、円建外債の内容は記載されているものの、仕組債といったデリバティブ(金融派生商品)が組み込まれた円建外債が指定対象となっているかどうかは明記されておらず、仕組債の購入は各法人の判断に委ねられている。仕組債は、購入当初、国内債券の利率に比べると高い利率に固定される期間があり、各法人では、その後も国内債券より多くの利息収入を得られることを見込んで購入していたものである。

d 仕組債等の問題点等について

 以上のように、仕組債等は、多くのリスクを有する金融資産であり、一部の銘柄においては利率変動リスクが顕在化している。
 仕組債等は、高い利率が保証される期間はあるものの、安定かつ確実な利息収入が継続して得られるとは限らない債券等であり、政府出資等に係る仕組債等において利率変動リスクが顕在化した場合は、出資目的に沿った効果が十分に発現しないものとなる。また、流動性が低いことから、仕組債等を購入等した法人が何らかの対応を自主的に執ることが困難である。そして、償還等までの期間が長期間であることから、特殊法人当時から仕組債を保有している法人もあり、また、同期間が中期目標期間を大幅に超えていることから、法人の事業見直しなどに伴い事業原資の整理等を行う必要が生じた場合に支障を来すおそれがある。
 既に仕組債等を保有している法人においては、効果的な対応を執ることは困難と考えられるが、各法人は、資金の運用に当たっては、金融資産が内包するリスクについて適切に評価することができる体制を確立すること、金融資産の購入や処分等の条件を明確に整理して規程化するなど資金運用・管理の方針を明確にすること、購入しようとする金融資産が独立行政法人の事務・事業と整合するものであるかどうか検討すること、資金運用に係る意思決定を適切に行うことなどが必要であると認められる。

(ウ) 関係会社株式等の保有状況

 法人が保有する政府出資等に係る関係会社株式等の23年度末における状況は、図表1-25 のとおりとなっている。

図表1-25  関係会社株式等の状況(平成23年度末)
(単位:百万円)

法人名
取得価額と実質価額の比較
会社数
取得価額
(A)
実質価額
(B)
差引
((B)-(A))
情報通信研究機構
取得価額>実質価額
1

440

32
△407
取得価額≦実質価額
2
380
531
150
法人計
3
820
563
△256
国際協力機構
取得価額>実質価額
6
36,461
34,650
△1,811
取得価額≦実質価額

7

68,163
81,631
13,468
法人計
13
104,625
116,282
11,656
医薬基盤研究所
取得価額>実質価額
1
268
53
△214
農業・食品産業技術総合研究機構
取得価額>実質価額
2
450
14
△435
取得価額≦実質価額
3
426
475
49
法人計

5

876
489
△386
農畜産業振興機構
取得価額>実質価額
9
4,106
3,412
△693
取得価額≦実質価額
17
5,387
14,176
8,788
法人計
26
9,493
17,589
8,095
情報処理推進機構
取得価額>実質価額
11
4,400
3,245
△1,154
取得価額≦実質価額
3
1,200
1,340
140
法人計
14
5,600
4,586
△1,013
石油天然ガス・金属鉱物資源機構
取得価額>実質価額
34
108,644
51,337
△57,307
取得価額≦実質価額
15
94,784
97,159
2,374
法人計
49
203,429
148,496
△54,932
中小企業基盤整備機構
取得価額>実質価額
33
22,563
16,851
△5,712
取得価額≦実質価額
26
21,681
22,877
1,196
法人計
59
44,245
39,729
△4,515
合計
取得価額>実質価額
97
177,334
109,598
△67,736
取得価額≦実質価額
73
192,024
218,192
26,168
法人合計
170
369,359
327,790
△41,568

 関係会社株式等を保有している法人数が8法人、出資先の会社数の合計は170社(投資事業組合等を含む。)となっており、取得価額の合計は3693億円で、その実質価額(出資先の純資産価額に法人の出資割合を乗じた金額)の合計は3277億円となっている。
 関係会社株式等を最も多額に保有している法人は、石油天然ガス・金属鉱物資源機構であり、出資先の会社数は49社、取得価額は2034億円、その実質価額は1484億円となっていて、取得価額と実質価額との差額についても8法人の中で最も多額となっている。差額が生じている主な要因は、同機構の会計方針として、探鉱中の事業についてはその成否を判断することが困難であるため、探鉱等出資事業に関する関係会社株式を、成否の結果が出るまでの間は取得価額を50%評価減したものを実質価額としていることによるものである。これにより、石油天然ガス勘定における探鉱等の出資事業(36社)及び海外地質構造調査の実施に必要な出資事業(5社)(計41社に対する出資額は取得価額で1593億円)において、計32社の株式について取得価額よりも実質価額を計551億円低く評価している。
 図表1-25 に示した関係会社株式等のうち、実質価額が取得価額を大幅に超過しているものの、出資先から受取配当金収入を得ていない株式が以下のとおり見受けられた。

<事例1-14>
 農畜産業振興機構は、牛乳及び乳製品の製造・販売を行うよつ葉乳業株式会社(以下「よつ葉乳業」という。)の株式を関係会社株式として9,000株(取得価額9億円)保有しているが、このうち4,000株は配当が他の普通株主に劣後する条件となっている後配株式である。よつ葉乳業の株主のうち後配株式を保有しているのは同機構のみである。
 この後配株式は、当初、同機構の前身である畜産振興事業団が、昭和48年、酪農主産地である北海道から大消費地に向けた濃縮乳の安定供給を通じて生乳の需給調整を図ることを目的として国からの交付金を財源に出資し、普通株式として取得したものである。よつ葉乳業は、当該出資により得た資金を季節的、年次的な需給の変動が大きく、施設の安定的な稼働が困難な全脂濃縮乳部門の施設整備に使用した。その後、当該普通株式は、同部門における損失の状況及び経営に与える影響を勘案し、50年の株主総会での議決を経て4,000株が後配株式に転換された。
 この後配株式は、濃縮乳生産事業が正常な経営状態となった場合には、同社と同機構との間で転換等について協議することとなっている。
 よつ葉乳業の平成19年度から23年度までの間の売上高は約902億円から約952億円、当期純利益は約2億円から約10億円で推移している。23年度末における利益剰余金は約218億円となっており、よつ葉乳業の純資産価額に同機構の保有株式(9,000株)の出資割合を乗じた実質価額は約72億円となっている。そして、普通株式へは毎年度継続的に配当が行われているが、同機構が保有する後配株式へは、これまで一度も配当が行われていない。
 したがって、よつ葉乳業への出資後約40年が経過し、同社は民間の株式会社として普通株式への配当を継続していることを踏まえ、同機構が保有する資産を有効に活用するために、現在保有している後配株式について、よつ葉乳業と普通株式への転換条件等に関する協議を行い、転換における具体的な考え方やその転換の具体的な条件を整理し、同社及び他の株主と認識を共有する必要があると考えられる。また、出資目的の達成状況についても、毎年度、継続して評価する必要があると考えられる。

 一方、関係会社株式等のうち、出資先の会社において余裕資金の一時的な運用のために購入した債券の発行体が債務不履行に陥ったため、出資先が計上した債券の評価損による純資産価額の減少が原因となって実質価額が減少したものが以下のとおり見受けられた。

<事例1-15>
 農業・食品産業技術総合研究機構の前身である生物系特定産業技術研究推進機構は、新農 業機械実用化促進株式会社(以下「新農機」という。)に対して、平成5年に3億円、6年に3 億円、計6億円の出資を行い、その後の数度の統廃合を経て、18年4月1日に農業・食品産業技 術総合研究機構が出資に係る権利を承継した。当該出資は、高性能農業機械実用化促進事業- における金型製作等に充てることを目的として行われたものであり、新農機は、現在、製作 費計約11億円の金型を58機種保有し、その金型をメーカーに貸し付けている。
 新農機は、本来の事業である金型製作等に係る資金に余裕がある場合には、債券等で一時 的に運用することとしており、当該出資金の一部に加え、民間出資等の他の資金を財源とし て、19年10月22日にカウプシング銀行第1回円貨社債を額面1億円で購入したが、当該債券の 発行体は、20年10月27日に債務不履行に陥った。そして、新農機は、カウプシング銀行の清 算による最終確定を待つこととし、20年度の当該債券の決算処理として、その全額を評価損 として計上した。
 したがって、農業・食品産業技術総合研究機構が保有している新農機の株式の実質価額 は、当該評価損に出資割合を乗じた金額が減少した状態が継続しており、また、当該部分の 資金は、新農機において、金型製作費に充てる資金として使用できず、出資効果の発現が期 待できない状況となっていた。