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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成25年9月

裁判所における会計経理等に関する会計検査の結果について


第3 検査の結果に対する所見

1 検査の結果の概要

(1) システム関連の調達に係る契約方式、落札率等の状況

ア 契約方式、落札率等の状況

システム関連の調達を契約方式別にみた場合、競争契約の占める割合は、件数で56.1%(年間支払金額1000万円以上の契約では48.3%)、金額で59.3%(同59.0%)となっていて、23年報告(件数で56.6%、金額で72.2%)と比べて低い状況となっていた。このような状況となっているのは、不落随契を除いた随意契約の大半が実質的な複数年度契約となっていたことによるものである(1013参照)。

契約方式別の平均落札率は、随意契約で99.6%(年間支払金額1000万円以上の契約では99.8%)と、競争契約の79.6%(同81.6%)と比較すると高くなっており、23年報告(競争契約で87.3%、随意契約で98.6%)と比べて競争契約の場合は低く、随意契約の場合はほぼ同等となっていた。このような状況となっているのは、随意契約の大半を占めている実質的な複数年度契約において、調達の際に契約期間全体の総額で入札を行っていることから、初年度の契約の時点で次年度以降の支払金額も定まっているため、予定価格と契約金額が同じになっていたり、不落随契において、予定価格の制限に達した価格の入札がないときに最低価格で入札した者と予定価格の範囲内で価格交渉が行われるため、予定価格と契約金額の差が小さくなっていたりすることによると考えられる(参照 1013-11 1013-22)。

競争契約のうち、1者応札の割合は40.1%(年間支払金額1000万円以上の契約では49.3%)と、23年報告(66.4%)に比べて低くなっていたが、平均落札率は95.4%(同95.0%)と、23年報告(96.0%)と同等の高い比率となっていた。また、仕様書において、応札可能な業者が明確に限定されるような記載は見受けられなかった(参照 1013-31 1013-42)。

イ 予定価格の算定

最高裁判所は、予定価格の算定に当たって、独自技術者単価等を用いて積算した積算額と入札参加予定業者から徴した参考見積書の見積金額を比較するなどして予定価格を算定している。また、年間支払金額1000万円以上の契約147件を対象に、予定価格の内訳に不合理な点はないか、予定価格の算定の際に不適切な手順が採られていないかなどについて、予定価格調書の内訳や算定の手順を確認するなどして検査したところ、特に報告すべき事態は見受けられなかった(参照 1013-51 1013-62)。

ウ 競争性の確保の取組

最高裁判所は、情報システムに係る契約において、競争入札等への移行に努めたり、業者が広く参加できるよう仕様の見直しを図ったり、入札の公告期間等を長くしたりするなどして、競争性の確保に取り組んでいる(1013-6参照)。

(2) 請求書、納品書等の会計書類の管理の状況

ア 会計書類の日付の記載

最高裁判所及び下級裁判所においては、24年度以降、最高裁業務要領に基づくなどして日付の記載のない請求書及び見積書を受理しないよう改善に取り組んでおり、会計実地検査を実施した最高裁判所及び38高地家裁の請求書の件数を確認したところ、日付の記載のない請求書の件数は23年度分12,315件、24年度分は3,381件となっていて、請求書全体(23年度分53,124件、24年度分50,390件)に対する日付の記載のないものの割合は23年度23.2%、24年度6.7%となっていた。見積書については、最高裁判所及び8高等裁判所が見積合わせで徴した見積書23年度分1,575件、24年度分731件について検査したところ、日付の記載のない見積書の件数は、23年度分519件、24年度分20件となっており、その割合は23年度33.0%、24年度2.7%となっていた。また、23年1月以降、納品書の取扱いについても給付を終了した日付等を明確にするよう改善に取り組んでいて、最高裁判所及び38高地家裁の会計実地検査の際に検査した範囲では、受付日付印が押印されるなど受理日が明らかになっていた。しかし、24年度においてもなお日付の記載のない請求書及び見積書を受理している事態が見受けられた(1022-1参照)。

イ 調達手続の適正性

随意契約において、特定の1業者と契約することを前提として、当該業者に対して、見積書の提出の際に他の任意の2業者分の見積書も合わせて提出するよう依頼している事態が、3裁判所において23、24両年度に計176件、契約金額計2606万余円見受けられた。このような事態は、会計法令の趣旨に照らして適切を欠くと認められる。また、会計書類の作成手続、保存等が適切でなかったり、履行の完了前に検査調書を作成するなど検査の内容や検査調書の作成が適切でなかったりしていたものが、12裁判所において23、24両年度に計19件、契約金額計1億4837万円見受けられた(1022-2参照)。

(3) 検察審査会の運営に伴う公費の支出状況

ア 審査員等に係る旅費等の支出状況

42検審(25地方裁判所)において、22、23両年度における審査員等延べ24,510人の旅費等は全て金融機関の口座への振り込みにより支払われており、ほぼ全ての振り込みについて、振込先は審査員等と同じ氏名の名義の口座となっていた。審査員等の氏名と異なる名義の口座への振り込みは、5人の審査員等について見受けられ、このうち4人については、審査員等本人からの申出による当該審査員等の親族への振り込みであるとされていて、残る1人に係る振り込みについては、氏名が同じ漢字であった別人の口座へ誤って振り込んだものであった(1032-1参照)。

審査員等が実在の人物であったのかという点については、会計検査院が調査票を直接郵送して調査したところ、回答があった全員から検察審査会へ出頭した実績がある旨及び旅費等の振り込みを受けている旨の回答を得た。そして、審査員等の出頭状況については、事件審査を行わなかった会議に係るものなどの一部の会議については、請求書以外に記録が残される仕組みとなっていなかった(1032-2参照)。

日当の額については、適正な額の決定に資するために参考にするようにされている支給基準において、審査員の会議の関与時間等を勘案して決定することとされているが、審査員等の関与時間の記録を作成し保存することとはされていなかった(1032-3参照)。

イ 証人等及び審査補助員に対する旅費等の支出状況

証人等及び審査補助員に対する旅費等の支出について、検査した範囲では、請求書等と関係書類の記録との整合性が取れていない事態は見受けられなかった(参照 1032-41 1032-52)。

ウ 検察審査会に係る庁費の支出状況

「(項)検察審査費(目)庁費」の支出済歳出額は、22年度4909万余円、23年度4442万余円、24年度3853万余円となっていて、地方裁判所のほかに、最高裁判所等においても支出がある。また、これ以外に「(項)下級裁判所(目)庁費」からも備品、消耗品等の購入経費や光熱水料といった経費が地方裁判所等の経費と区別なく支出されていて、決算上、これらの経費について検察審査会の運営に伴う分を把握することはできない状況となっている。そこで、検察審査会で使用している備品の購入等に要した経費について物品管理のデータ等に基づいて集計したところ、22年度499万余円、23年度423万余円、24年度603万余円となっていた(1032-6参照)。

エ 事務局職員の人件費の支出状況

事務局職員の人件費は、地方裁判所等の職員の人件費と一括して計上されており、決算上、事務局職員の人件費の額を把握することができない状況となっている。そこで、事務局職員の給与簿を基に集計したところ、人件費の額は、22年度47億3925万余円、23年度48億3661万余円、24年度44億8661万余円となっていた。このうち、裁判所への併任発令を受けていない事務局職員に係る人件費は、22年度8億3670万余円、23年度8億1701万余円、24年度7億3409万余円となっており、併任発令を受けている事務局職員に係る人件費は、22年度39億0255万余円、23年度40億1960万余円、24年度37億5252万余円となっている(1032-7参照)。

2 所見

(1) システム関連の調達に係る契約方式、落札率等の状況

最高裁判所においては、随意契約について国庫債務負担行為を活用した競争契約に移行したり、1者応札について仕様の見直しを図ったりなどしているが、今後も、政府内での情報システムに関する議論等の動向を踏まえながら、システム関連の調達における契約の透明性の向上、競争性の確保、適切な予定価格の算定等について引き続き努力する必要がある。

(2) 請求書、納品書等の会計書類の管理の状況

各裁判所においては、最高裁業務要領に基づき、日付の記載のない請求書について、引き続き改善に取り組む必要がある。また、随意契約において、特定の1業者と契約することを前提として、当該業者に対して、見積書の提出の際に他の任意の2業者分の見積書も合わせて提出するよう依頼していた事態は、会計法令の趣旨に照らして適切を欠くと認められることから、今後、同様な事態が起こらないよう改善する必要がある。さらに、会計書類の作成手続や保存等が適切でなかったり、検査の内容や検査調書の作成が適切でなかったりしている事態については、裁判所全体として改善する必要がある。

(3) 検察審査会の運営に伴う公費の支出状況

各検察審査会においては、旅費等の支給の適正性を事後的に確認できるように、請求書以外に記録が残される仕組みとなっていない事件審査を行わなかった会議等に係る審査員等の出頭状況や日当の額を決定するに当たって重要な要素となっている審査員等の会議への関与時間について、適切に記録し保存する体制を整備することが肝要である。

以上のとおり報告する。

会計検査院としては、以上の結果に留意しつつ、今後とも裁判所の会計経理等が適正か つ適切に実施されているかについて、多角的な観点から引き続き検査していくこととする。