(平成23年度決算検査報告参照)
(平成24年度決算検査報告参照)
(平成25年度決算検査報告参照)
厚生労働省は、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)又は国民年金法(昭和34年法律第141号)に基づき年金給付を行っており、年金給付の原因である被保険者の障害又は死亡が交通事故等のように被保険者又はその遺族(以下、これらを合わせて「被保険者等」という。)に対して第三者が損害賠償の義務を負う事故(以下「第三者行為事故」という。)によるものであり、被保険者等が第三者から損害賠償を受けたときは、その損害賠償額を限度として年金の支給停止ができることとなっている。しかし、昭和36年に発した「厚生年金保険法第40条第2項の規定による取扱いについて」又は37年に発した「国民年金法に基づく給付と損害賠償額との調整について」(以下、これらを合わせて「取扱通知」という。)により24月と設定された支給停止限度期間の見直しが行われていないため、支給停止解除後の年金の支給額と第三者からの損害賠償額との重複額(以下「二重補償額」という。)が多額に上っている事態が見受けられた。
したがって、厚生労働省において、年金給付により被保険者等の生活を保障していくという公的年金制度の目的等も勘案して、支給停止解除後の二重補償額が多額に上ることを避けるための方策を検討するよう、厚生労働大臣に対して平成24年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、27年9月に取扱通知を改正し、支給停止解除後の二重補償額が多額に上ることを避けるための方策として、24月と設定されていた支給停止限度期間を36月に見直し、同年10月以降に発生する第三者行為事故から適用することとする処置を講じていた。