国は、少子高齢化の進展や産業構造の変化等の社会経済情勢の変化を背景として、平成15年10月に、地域経済の活性化と地域雇用の創造を地域の視点から積極的かつ総合的に推進するために、閣議決定により、内閣に、内閣総理大臣を本部長として地域再生本部(以下「旧本部」という。)を設置した。旧本部は、16年2月に、地域再生を推進するための具体的な制度の骨格、国として講ずべき支援措置の内容等を定めた「地域再生推進のためのプログラム」(以下「旧プログラム」という。)を決定して、旧プログラムに基づき、地域再生を図るための計画(以下「旧地域再生計画」という。)の認定制度を創設して各種支援措置の推進を図ることとした。そして、旧プログラムに基づき、278計画の旧地域再生計画が認定されている。
旧本部は、地域の現状認識や問題意識等を踏まえつつ今後の地域再生への取組の姿勢を明確に示す観点から、16年5月に、「今後の地域再生の推進にあたっての方向と戦略」(以下「方向と戦略」という。)を決定して、今後の地域再生の推進の方向として、「国から地方へ」「官から民へ」との考えの下、地方の権限と責任を大幅に拡大するなど、各種施策を組み合わせた「地域の地力全開戦略」の取組を強力に推進することとし、推進するに当たっては、省庁横断的な補助金も含めた補助金改革等を行い、持続可能な地域の再生につなげることとした。このため、今後の地域再生の推進の戦略として、地域再生に資する横断的な施策の推進、地域再生計画制度の強化等のため、法制度の整備について検討することなどとした。
そして、国は、方向と戦略を受けて16年6月に実施した地域再生における支援措置の提案募集における地域の具体的な声に基づき、地域再生に資する取組について検討を行った結果、内閣総理大臣の地域再生計画認定の位置付けなどを強化することにより、より強力に地域再生を推進するために、 17年4月に地域再生法(平成17年法律第24号)を制定した。
なお、地域再生法の施行により、同法に基づく地域再生本部(以下「本部」という。)が設置されたことに伴い、旧本部は廃止され、地域再生への取組に関して旧本部が決定した事項については、本部に引き継がれた。
地域再生法によれば、同法の目的は、近年における急速な少子高齢化の進展、産業構造の変化等の社会経済情勢の変化に対応して、地方公共団体が行う自主的かつ自立的な取組による地域経済の活性化、地域における雇用機会の創出その他の地域の活力の再生(以下「地域再生」という。)を総合的かつ効果的に推進することとされている。地域再生の推進は、前記のような社会経済情勢が変化する中で、地域の活力の向上及び持続的発展を図る観点から、地域における創意工夫を生かしつつ、潤いのある豊かな生活環境を創造し、地域の住民が誇りと愛着を持つことのできる住みよい地域社会の実現を図ることを基本として、行われなければならないとされている。そして、国は、地方公共団体の自主性及び自立性を尊重しつつ、地域再生に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有するとされている。
また、政府は、地域再生に関する施策の総合的かつ効果的な推進を図るための基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならないとされ、基本方針には、次の事項を定めるものとされている。
政府は、地域再生法に基づき、17年4月に閣議決定により基本方針を定めており、その後、情勢の推移に対応して基本方針の変更を行っている。そして、基本方針において、地域再生の意義は、「地域の自主的・自立的な取組とそれを尊重した国の支援とがあいまって、我が国の活力の源泉である地域の活力の再生を加速し、持続可能な地域再生を実現すること」であるとしている。また、地域再生の推進により実現すべき目標は、「個々の地域において、地域の特性、資源を顕在化させ、これらを有効に活用した地域産業の振興、生活環境の改善、観光・交流の促進等の地域の創意工夫を凝らした具体的な取組を推進することにより、自主的・自立的で持続可能な地域の形成を図ること」及び「地域の創意工夫を凝らした取組の成果として地域再生の成功事例を示すことにより、他の地域における取組を刺激し、多様な分野での地域再生の取組の総体として、全国的な規模での地域の活力の増進を図ること」であるとしている。
地域再生法に基づく地域再生制度は、地域が行う地域再生のための自主的・自立的な取組を総合的かつ効果的に支援するために、地方公共団体(都道府県、市町村(特別区を含む。)又は地方自治法(昭和22年法律第67号)の規定による一部事務組合若しくは広域連合をいい、港湾法(昭和25年法律第218号)の規定による港務局を含む。以下同じ。)が作成し申請する地域再生計画を内閣総理大臣が認定(以下、認定された地域再生計画を「認定地域再生計画」という。)した場合に、国が認定地域再生計画に基づく事業に対して特別な措置を講ずる制度である。
地域再生法によれば、地方公共団体は、単独で又は共同して、基本方針に基づき、地域再生計画を作成し、内閣総理大臣の認定を申請することができるとされている。地域再生計画には、地域再生計画の区域、地域再生を図るために行う事業に関する事項及び計画期間を記載するものとされ、地域再生計画の目標、その他内閣府令で定める事項を記載するよう努めるとされている。そして、地域再生法施行規則(平成17年内閣府令第53号。以下「施行規則」という。)において、内閣府令で定める事項として、地域再生計画の名称、地域再生計画の目標の達成状況に係る評価(以下「達成状況評価」という。)に関する事項等が定められている。
また、地域再生法によれば、地域再生を図るために行う事業に関する事項として、図表0-1の左欄に掲げる事項を地域再生計画に記載することができるとされている。
そして、各事業に係る事項が認定地域再生計画に記載されている場合、地域再生法に基づき、図表0-1の右欄の特別の措置(以下、これらの地域再生法に基づく特別の措置を「法定措置」という。)が適用され、国の支援が受けられることとなる。
図表0-1 地域再生法に定める地域再生を図るために行う事業に関する事項
地域再生を図るために行う事業に関する事項 | 特別の措置 |
---|---|
地域における経済基盤の強化又は生活環境の整備のために行う事業に関する事項 | 地域再生強化交付金 |
地域における雇用機会の創出その他地域再生に資する経済的社会的効果を及ぼす事業を行うのに必要な資金を貸し付ける事業であって、金融機関により行われるものに関する事項 | 地域再生支援利子補給金の支給 |
地域における特定政策課題の解決に資する事業に関する事項 | 特定地域再生支援利子補給金の支給、課税の特例、地方債の特例 |
地域における農林水産業の振興に資する施設を整備する事業に関する事項 | 地域農林水産業振興施設整備計画の作成等 |
構造改革特別区域法(平成14年法律第189号)に規定する特定事業であって、地域における就業の機会の創出、経済基盤の強化又は生活環境の整備に資するものに関する事項 | 構造改革特別区域計画の認定の手続の特例 |
中心市街地の活性化に関する法律(平成10年法律第92号)に規定する事業及び措置であって、地域における就業の機会の創出、経済基盤の強化又は生活環境の整備に資するものに関する事項 | 中心市街地活性化基本計画の認定の手続の特例 |
企業立地の促進による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律(平成19年法律第40号)に規定する事業環境の整備の事業であって、地域における就業の機会の創出、経済基盤の強化又は生活環境の整備に資するものに関する事項 | 産業集積形成等基本計画の同意の手続の特例 |
地域における福祉、文化その他の地域再生に資する事業活動の基盤を充実するため、補助金等交付財産を当該補助金等交付財産に充てられた補助金等の交付目的以外に使用するなどして行う事業に関する事項 | 財産の処分の制限に係る承認の手続の特例 |
また、法定措置のほか、認定地域再生計画に記載されていることにより、国の支援が受けられる各府省庁が実施する施策(以下「連動施策」という。)があり、連動施策は、法定措置と併せて基本方針の別表に掲げられている(以下、法定措置と連動施策を合わせて「支援措置」という。)。
内閣府は、地方公共団体の地域再生計画の作成に資するために、地域再生計画の認定制度、認定基準、認定申請手続等を解説した「地域再生計画認定申請マニュアル(総論)」(以下「申請マニュアル(総論)」という。)を作成して、地域のニーズの把握、地域再生計画の区域の設定、地域再生計画の変更等、地域再生計画の発案から認定の流れなどを示している。また、支援措置について、支援措置を設ける趣旨及び概要、支援措置の内容、支援措置に係る必要な手続、地域再生計画及び添付資料の記載に当たって留意すべき事項、当該支援措置を認定申請できる時期等について定めた「地域再生計画認定申請マニュアル(各論)」(以下「申請マニュアル(各論)」という。)、支援措置の中でも特に「地域再生基盤強化交付金」(以下「交付金」という。)に絞り、交付金の特徴、交付金に係る地域再生計画作成の考え方、交付金に係る達成状況評価等について詳細に解説した「地域再生計画作成の手引き~地域再生基盤強化交付金活用のために~」(以下「手引」という。)等を作成している。
前記のとおり、地域再生法及び施行規則によれば、地方公共団体が地域再生計画の認定の申請をしようとする場合は、地域再生計画に、地域再生計画の区域、地域再生を図るために行う事業に関する事項及び計画期間を記載することとされており、また、地域再生計画の目標、達成状況評価に関する事項等を記載するよう努めることとされている。
このうち、地域再生計画の目標及び達成状況評価に関する事項について、内閣府は、それまでに認定の申請を受け付けた地域再生計画の記載内容が必ずしも統一されていなかったなどの状況に鑑みて、26年12月に申請マニュアル(総論)を次のとおり改正して、地方公共団体が作成する地域再生計画の記載内容の適正化を図った。
すなわち、地方公共団体が地域再生計画を作成するに当たり、目標の設定については、原則として、定量的な値・指標を用いることとし、地域再生計画の計画期間満了時等に地方公共団体が効果測定を容易に実施することができるよう、具体的に設定することとした。
また、達成状況評価に関する事項については、地域再生計画の計画期間中及び計画期間満了時の段階において、地域再生計画に設定した目標等の効果測定を実施するために必要となる指標の入手方法や、入手した指標をどのように活用して評価を行うのかを記載して、どこで、どのように評価の結果を公表するのかを具体的に記載することとした。
地域再生法によれば、内閣総理大臣は、地方公共団体から認定申請があった地域再生計画が、①基本方針に適合するものであること、②その実施が当該地域における地域再生の実現に相当程度寄与するものであると認められること、③円滑かつ確実に実施されると見込まれるものであること(以下、これらを「認定基準」という。)に適合すると認めるときは、認定する(以下、地域再生計画の認定を受けた地方公共団体を「認定地方公共団体」という。)ものとされている。そして、内閣総理大臣は、地域再生計画に地域再生を図るために行う事業に関する事項が記載されている場合において、認定しようとするときは、当該事項に係る関係行政機関の長の同意を得なければならないとされ、認定したときは、その旨を公示しなければならないとされている。
また、認定地方公共団体は、認定地域再生計画を変更しようとするときは、軽微な変更を除き、内閣総理大臣の認定を受けなければならないとされている。軽微な変更については、施行規則によれば、地域の名称の変更又は地番の変更に伴う範囲の変更、交付金を充てて行う施設の整備の事業期間に影響を与えない場合における計画期間の六月以内の変更及び地域再生計画の実施に支障がないと内閣総理大臣が認める変更とされている。
さらに、内閣総理大臣は、認定地域再生計画が、認定基準のいずれかに適合しなくなったと認められるときは、認定を取り消すことができるとされている。
本部は、国の地域活性化に係る各種施策を、地域が組み合わせて活用することができるようにするため、地域にとって選択・利用しやすいメニューとして体系化することとして、20年3月までに、連動施策を含め、主要政策分野における地域再生のための7プログラム(注1)を作成した。そして、国は、地域活性化の更なる推進を図るために、基本方針において、7プログラムを推進することとして、地域において7プログラムを推進する上で、各種施策の選択・利用が容易になるように、基本方針の別表において、7プログラムと支援措置との関係を明示している。
国は、国民一人一人が夢を持ち、潤いのある豊かな生活を安心して営むことができる地域社会の形成、地域社会を担う個性豊かで多様な人材の確保及び地域における魅力ある多様な就業の機会の創出を一体的に推進すること(以下「まち・ひと・しごと創生」という。)が重要であるとして、26年11月にまち・ひと・しごと創生法(平成26年法律第136号。以下「創生法」という。)を制定し、我が国における急速な少子高齢化の進展に歯止めをかけるとともに、東京圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保して、将来にわたって活力のある日本社会を維持していくこととしている。
創生法において、都道府県及び市町村は、政府が定めるものとされているまち・ひと・しごと創生総合戦略(以下「総合戦略」という。)を勘案して、都道府県まち・ひと・しごと創生総合戦略及び市町村まち・ひと・しごと創生総合戦略(以下、これらを合わせて「地方版総合戦略」という。)を定めるよう努めるものとされている。内閣府によれば、地方版総合戦略は、都道府県又は市町村の区域における、まち・ひと・しごと創生に関する施策目標や基本的方向性等を明示して地域の実情に応じた施策全般にわたる戦略を定めるものであり、地域再生計画は、地域再生を図るために取り組もうとする個別の事業や、それを実施するために活用する国の支援措置について具体的に定める実施計画であるとしている。そして、創生法の制定に併せて改正した地域再生法において、基本方針は、総合戦略等との調和が保たれたものでなければならないと規定された。
このため、国は、26年12月に閣議決定により基本方針を変更し、変更した基本方針において、「地方創生においては、地方が自ら考え、責任をもって取り組むことが何よりも重要であることから、都道府県及び市町村は、総合戦略を勘案して、地方版総合戦略を定め、推進することが強く期待されている」とし、また、「地域再生の推進に当たっては、地域がそれぞれの地域の課題を的確に把握し、課題解決に向けて積極的に取り組むことが重要である」とした。
前記のとおり、地域再生制度は、地域が行う地域再生のための自主的・自立的な取組を総合的かつ効果的に支援するために、国が認定地域再生計画に基づく事業に対して特別な措置を講ずる制度であり、認定地域再生計画に支援措置が記載されている場合、当該支援措置が適用され、また、地域再生計画に記載することができる支援措置の数は限定されていない。26年度末現在における支援措置は、法定措置8件、連動施策26件の計34件となっている。
法定措置は、認定地域再生計画に記載されることにより事業を実施することができるものであり、法定措置に係る事業を実施しようとする地方公共団体は、地域再生計画を作成し、申請して内閣総理大臣の認定を受けることが要件となる。 連動施策となっている各府省庁が実施する事業には、法定措置と同様に、地域再生計画の認定を事業実施の要件としているものと、地域再生計画の認定を受けることにより事業の採択や選定に当たり一定の配慮をするものがある。
前記34件の支援措置名、所管府省庁名、法定措置又は連動施策の別については、図表0-2のとおりとなっている(各支援措置の概要については、別表1を参照)。
図表0-2 支援措置一覧(平成26年度末現在)
番号 | 支援措置名 | 所轄府省庁名 | 法定措置 又は連動施策 |
---|---|---|---|
1 | 地域再生基盤強化交付金 | 内閣府、農林水産省、国土交通省、環境省 | 法定措置 |
2 | 地域再生支援利子補給金 | 内閣府 | 法定措置 |
3 | 特定地域再生支援利子補給金 | 内閣府 | 法定措置 |
4 | 社会福祉の増進に資する事業等を行う株式会社に対する投資促進税制 | 内閣府 | 法定措置 |
5 | 特定地域再生事業に係る地方債の特例 | 内閣府、総務省 | 法定措置 |
6 | 特定地域再生事業費補助金 | 内閣府 | 連動施策 |
7 | 地域における男女共同参画促進総合支援事業 | 内閣府 | 連動施策 |
8 | 地域資本市場育成のための投資家教育プロジェクトとの連携事業 | 金融庁 | 連動施策 |
9 | 中小企業再生支援協議会、整理回収機構等の連携 | 金融庁、経済産業省 | 連動施策 |
10 | 公共施設を転用する事業へのリニューアル債の措置 | 総務省 | 連動施策 |
11 | ふるさと融資の限度額拡大 | 総務省 | 連動施策 |
12 | 公有地の拡大の推進に関する法律による先買いに係る土地を供することができる用途の範囲の拡大 | 総務省、国土交通省 | 連動施策 |
13 | 外国人研究者等に対する永住許可弾力化事業 | 法務省 | 連動施策 |
14 | 外国人研究者等に対する入国申請手続に係る優先処理事業 | 法務省 | 連動施策 |
15 | 社会システム改革と研究開発の一体的推進「地域再生人材創出拠点の形成」プログラム | 文部科学省 | 連動施策 |
16 | 地域再生計画に基づく目的別・機能別交付金の総合的な実施 | 内閣府、厚生労働省、農林水産省、国土交通省、環境省 | 連動施策 |
17 | 実践型地域雇用創造事業 | 厚生労働省 | 連動施策 |
18 | 地域若者サポートステーション事業 | 厚生労働省 | 連動施策 |
19 | 「高齢者活力創造」地域再生プロジェクトの推進 | 厚生労働省 | 連動施策 |
20 | 農山村活性化プロジェクト支援交付金 | 農林水産省 | 連動施策 |
21 | 新規漁業就業者総合支援事業 | 農林水産省 | 連動施策 |
22 | 6次産業化ネットワーク活動支援事業 | 農林水産省 | 連動施策 |
23 | 6次産業化ネットワーク活動交付金 | 農林水産省 | 連動施策 |
24 | 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業 | 農林水産省 | 連動施策 |
25 | 都市農村共生・対流総合対策交付金 | 農林水産省 | 連動施策 |
26 | 「農」のある暮らしづくり交付金 | 農林水産省 | 連動施策 |
27 | 地域再生支援のための「特定地域プロジェクトチーム」の編成 | 内閣府、総務省、財務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省 | 連動施策 |
28 | 地域再生等に資する実用化技術の研究開発助成 | 国土交通省 | 連動施策 |
29 | 訪日旅行促進事業(ビジット・ジャパン事業) | 国土交通省 | 連動施策 |
30 | 「コミュニティ・レール」化への支援(幹線鉄道等活性化事業(連携計画事業)) | 国土交通省 | 連動施策 |
31 | 地域公共交通確保維持改善事業 | 国土交通省 | 連動施策 |
32 | 農地等の転用等の許可の特例 | 農林水産省 | 法定措置 |
33 | 構造改革特別区域計画等の認定等の手続の特例 | 内閣府、経済産業省 | 法定措置 |
34 | 補助対象施設の有効活用 | 全府省庁 | 法定措置 |
(注) 本表は基本方針の別表に基づき会計検査院で作成した。
交付金は、地域における経済基盤の強化又は生活環境の整備を総合的かつ効果的に行うために、道、汚水処理施設及び港の三つの分野において、省庁の所管を超える2種類以上の類似施設を一体的に整備することとして、複数の省庁が所管する類似施設に対する補助金を内閣府に一元化し、17年度に法定措置として創設された。そして、予算は内閣府に一括計上され、地域再生計画の申請及び交付金の予算要望の窓口を内閣府に一本化することにより、地方公共団体の手続の簡素化が図られるとされ、また、地域の裁量による自由な施設配置、事業の進捗等に応じた事業間の融通及び年度間の事業量の変更を可能とすることにより予算の弾力的な執行が可能となるなど、地域の自主裁量性が向上するとされた。
交付金は、道整備交付金、汚水処理施設整備交付金及び港整備交付金の3種類に分類され、各交付金の対象施設及び所管省庁は図表0-3のとおりとなっており、各交付金の対象施設のうち、2種類以上の施設の整備を一体的に行う必要があるものである。
図表0-3 交付金の分類別の対象施設及び所管省庁
交付金の分類 | 対象施設 | 所管省庁名 |
---|---|---|
道整備交付金 | 市町村道 | 国土交通省 |
広域農道 | 農林水産省 | |
林道 | 農林水産省(林野庁) | |
汚水処理施設整備交付金 | 公共下水道 | 国土交通省 |
集落排水施設(農業集落排水施設及び漁業集落排水施設に限る。) | 農林水産省(農林水産省及び水産庁) | |
浄化槽 | 環境省 | |
港湾整備交付金 | 地方港湾の港湾施設 | 国土交通省 |
第一種漁港又は第二種漁港の漁港施設 | 農林水産省(水産庁) |
交付金について基本的な枠組みを定めた「地域再生基盤強化交付金に係る基本大綱」(平成17年府地再第8号、17農振第148号、国総政第6号、環廃対発第050422002号。以下「基本大綱」という。)によれば、交付金を交付する期間は、認定地域再生計画に基づく事業に対して交付金の交付が開始される年度からおおむね5年以内とされている。また、交付金の総額は、交付金の種類及び施設の区分に応じ、認定地域再生計画に記載された施設の整備に要する費用に交付限度額の算出に用いる割合を乗じて算出された額及び対象施設の整備事業の進捗を勘案し、認定地方公共団体が行う予算要望を踏まえるものとされている。
交付金の交付の事務は、地域再生法及び地域再生法施行令(平成17年政令第151号)に基づき、主として農道、林道、集落排水施設及び漁港施設に係るものについては農林水産大臣が、主として道路、下水道及び港湾施設に係るものについては国土交通大臣が、主として浄化槽に係るものについては環境大臣が行うこととなっている(以下、交付金の交付の事務を行う大臣を「交付担当大臣」という。)。そして、内閣総理大臣は、専門的知見を活用した交付金の効果的・効率的執行という観点から、毎年度、交付担当大臣と協議して、交付金の種類ごとに作成した配分計画に基づき、財務大臣の承認を得て、交付金の予算を交付担当大臣が所管する関係行政機関へそれぞれ移し替えることとなっている。
また、基本大綱によれば、内閣総理大臣及び関係行政機関の長は、地域再生を図るために交付金を充てて行う施設整備事業について、地方公共団体が行う評価及び各省が行う政策評価の結果を踏まえ、必要と認める場合には、交付金に係る制度の見直しを検討するものとされている。
交付金に係る基準等は、基本大綱、申請マニュアル(総論)、申請マニュアル(各論)、手引のほか、交付金の種類ごとに「道整備交付金交付要綱」(平成17年17農振第7号、国道地調第2号)、「汚水処理施設整備交付金交付要綱」(平成17年17農振第167号、国都下事第18号、環廃対発第050422003号。以下「汚水要綱」という。)、「港整備交付金交付要綱」(平成17年17水港第641号、国港管第53号)等がそれぞれ定められており、これらに基づいて事業が実施されている。
手引によれば、交付金の特徴は、複数の施設を連携して一体的に整備する必要があること、交付金の交付申請関連の書類をいずれかの省庁の地方支分部局等の一箇所でまとめて申請すること(以下「ワンストップ窓口」という。)ができること、従来の補助金とは異なり、単年度ごとの国の負担割合が固定ではないため、年度内に発生する事業の進捗状況の変化に応じて当該年度の国費の充当率を変更し、次年度以降で調整すること(以下「年度間融通」という。)ができること、年度ごとの交付金の交付額(以下「単年度交付額」という。)の2分の1未満で、かつ一体的に整備する類似の他の施設(以下「他の施設」という。)の当該年度の交付額未満の範囲において、交付された交付金を他の施設の整備に要する経費として充てること(以下「他施設充当」という。)ができることとされている。
地域再生法が施行された17年4月から27年3月までの間における、認定地域再生計画数は1,013認定地方公共団体の1,870計画となっており、支援措置数は内閣官房等12府省庁(注2)が所管する計112件に上っている(所管府省庁名、支援措置名、法定措置又は連動施策の別等については、別表2を参照)。 これらの支援措置の中には、交付金の交付等の国の予算措置を伴うもの、課税の特例等の国が財政上の優遇措置を行うものなど国の収入支出に係る支援措置のほか、規制の緩和を内容とするなど国の収入支出には直接関わらない支援措置がある。
そして、112件の支援措置のうち、地域再生計画の認定が事業実施の要件となっていて、かつ、国の予算措置を伴う支援措置は15件であり、これらに係る事業の17年度から26年度までの間の府省庁別の予算額は、図表0-4のとおりとなっている。
図表0-4 地域再生計画の認定が事業実施の要件となっていて、かつ、国の予算措置を伴う支援措置に係る事業の予算額(平成17年度~26年度)
府省庁名 | 会計名 \ 年度 | 平成17年度 | 18年度 | 19年度 | 20年度 | 21年度 | 22年度 | 23年度 | 24年度 | 25年度 | 26年度 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
内閣官房 | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
内閣府 | 一般会計 | 1,076 | 3,934 | 3,857 | 21,360 | 30,744 | 14,157 | 546 | 670 | 825 | 449 |
金融庁 | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
総務省 | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
法務省 | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
財務省 | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
文部科学省 (注3) |
一般会計 | - | 35,156 | 35,671 | 32,278 | 34,226 | 29,216 | 7,329 | 6,342 | 5,579 | 2,172 |
厚生労働省 | 労働保険特別会計 | - | - | 1,627 | 5,393 | 7,117 | 8,029 | 7,458 | 7,351 | 7,333 | 6,724 |
農林水産省 | 一般会計 | 24,205 | 54,016 | 56,770 | 51,368 | 44,813 | 42,070 | 43,035 | 44,629 | 46,253 | 38,188 |
東日本大震災復興特別会計 | - | - | - | - | - | - | - | 2,708 | 1,040 | - | |
経済産業省 | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
国土交通省 | 一般会計 | 50,941 | 92,252 | 97,561 | 91,345 | 82,825 | 61,579 | 45,580 | 42,504 | 44,244 | 37,198 |
東日本大震災復興特別会計 | - | - | - | - | - | - | - | 3,052 | 937 | - | |
環境省 | 一般会計 | 4,871 | 5,587 | 6,230 | 5,084 | 4,377 | 2,785 | 1,960 | 1,807 | 1,762 | 1,515 |
計 | 81,095 | 155,791 | 166,047 | 174,551 | 169,877 | 128,622 | 98,582 | 102,724 | 102,396 | 84,077 |