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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書
  • 平成28年3月

介護保険制度の実施状況に関する会計検査の結果について


第3 検査の結果に対する所見

1 検査の結果の概要

介護保険制度の実施状況に関する各事項について、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、①介護保険の財政状況について、介護保険制度における介護給付等及び国の財政負担の状況はどのようになっているか、保険者における保険料基準額の設定や介護保険事業に係る経理の状況はどのようになっているか、財政安定化基金からの貸付等の状況等はどのようになっているか、②介護サービス等の実施状況について、高齢化の進行を踏まえて18年度から導入され、地域包括ケアシステムの核と位置付けられている地域密着型サービスの実施状況はどのようになっているか、ケアマネジメントの実施状況はどのようになっているか、介護給付等の適正化の取組の実施状況はどのようになっているかなどの点に着眼して検査を実施した。

検査の結果の概要は、次のとおりである。

(1)介護保険の財政状況について

21年度に全国計で6兆4975億余円であった介護給付費は、25年度には8兆0163億余円となり1.23倍に増加している。そして、21年度には全国計で1兆6347億余円であった国が都道府県及び保険者に対して負担することとなっている各負担金等は、25年度には2兆0464億余円に増加している。また、介護保険の被保険者数の推移についてみると、21年度末に2891万余人であった第1号被保険者数は、25年度末には3201万余人となっていて、310万余人増加している(リンク参照)。

介護給付費、第1号被保険者数等が年々増加傾向にある中で、第1号被保険者が負担する保険料に係る保険料基準額がどのように設定されているかなどについてみたところ、第1期は2,911円であった全国平均の保険料基準額は、第6期には5,514円となり1.8倍に増加していた。この保険料基準額の主な算定要素である標準給付費等の第1号被保険者負担分の予想額(計画期間内の各年度の合算額)について、183保険者における第4期又は第5期の予想額と計画期間終了後の実績額を比較すると、実績額が予想額以下となっていた保険者は、第4期は99保険者、第5期は127保険者となっていた(リンク参照)。

そして、保険料は、おおむね3年を通じ介護保険の財政の均衡を保つことができるものでなければならないこととなっていることなどから、介護保険事業特別会計に係る歳入歳出の状況等についてみたところ、183保険者における介護保険事業特別会計の収支差については、第4期においては支出済額が収入済額を上回る支出超過となっていた保険者が一部で見受けられたが、第5期の24年度から26年度までの間の各年度においては、支出超過となっていた保険者は見受けられなかった(リンク参照)。

また、保険者は、介護保険事業特別会計の剰余金を管理するために条例で定めるところにより準備基金を設けることができることとなっており、183保険者における残高の状況についてみたところ、26年度末において残高がない保険者は26保険者となっていて、このうち、26年度に財政安定化基金から貸付けを受けていたのは15保険者となっていた(リンク参照)。

さらに、市町村の一般会計からの介護保険事業特別会計への繰入れについて、法定負担割合を超えてこれを行うことは、本来、第1号被保険者の保険料で負担することとなる費用について制度上想定されない市町村の一般財源を充てることになることから費用負担の公平性を損なうおそれがあるものと考えられるが、このような繰入れを行っていた保険者が、第4期では5保険者、第5期では10保険者見受けられた(リンク参照)。

介護保険事業特別会計に財政上の不足が生じた場合に備えて、都道府県は財政安定化基金を設けることとなっていることから、183保険者に対する財政安定化基金からの貸付状況についてみたところ、第4期又は第5期の期間中に財政安定化基金から貸付けを受けていた保険者は80保険者となっており、そのうち第4期及び第5期のいずれにおいても貸付けを受けていたのは11保険者となっていた(リンク参照)。

また、財政安定化基金からの交付金は、保険料の収納率の低下等により実績保険料収納額が予定保険料収納額に不足すると見込まれるなどの場合に、保険者に対して、計画期間の最終年度に算定政令で定めるところにより算定した見込額を交付するものである。23年度又は26年度に財政安定化基金から交付金の交付を受けた24保険者についてみたところ、県の基金要綱等に交付金の精算条項が定められていた2県の管内に所在する2保険者は、23年度の決算終了後の実績額に基づき交付金を精算し、生じた交付超過額を県に返還していた。一方、上記2県の管内に所在する3保険者を除いた21保険者を対象として、23年度又は26年度に交付を受けた交付金の額と、会計検査院において当該保険者の実績額に基づき試算した額を比較したところ、17保険者において、実績額に基づき試算した額が交付を受けた交付金の額を下回っており、合計1億7556万余円の開差額が生じていた(リンク参照)。

(2)介護サービス等の実施状況について

ア 介護3サービスの実施状況について

居宅サービスについては、近年、訪問介護及び通所介護を提供する事業所の数がいずれも増加し続けている。各保険者の管内における居宅サービスの提供能力とニーズとの関係について、適切であると判断している保険者及び提供能力が多いと判断している保険者は、訪問介護で90保険者、通所介護で102保険者となっているのに対して、提供能力が少ないと判断している保険者は、訪問介護で13保険者、通所介護で7保険者となっていた。

このような状況と合わせて、地域密着型サービス事業所が保険者管内に所在しないことなどの理由として既存の居宅サービス又はその組合せにより対応が可能であるとしている保険者が少なからず見受けられたことなども踏まえると、今回検査した範囲内では、保険者管内で居宅サービスを提供する事業所が著しく不足している状況とはなっていないと考えられる(リンク参照)。

また、居宅サービスについては、一部の地域密着型サービスを含めて複数のサービスを組み合わせて利用するのが一般的となっているが、複数のサービスを組み合わせて利用する要介護者等が10割負担額も含めて実際に負担する費用の総額について的確に把握することは必ずしも容易でない状況となっている。そこで、これについて調査したところ、26年2月に10割負担額が生じている要介護者のうち10割負担額が50,000円以上となっている者の10割負担額を含む実際の負担額は、約73,000円から約158,000円までの範囲となっていた。そして、これらの要介護者については、平均要介護度が3.00以上で、かつ、平均利用サービス数が3以上となっていた(リンク参照)。

施設サービスについては、25、26両年度(通算)分の全事業所平均利用率は、介護福祉施設サービスが94.6%、介護保健施設サービスが91.1%、介護療養施設サービスが90.1%となっていて、いずれも高い状況となっていた(リンク参照)。

地域密着型サービスは、要介護者等が住み慣れた自宅又は地域での生活を継続することを目指して提供されるものであり、同サービスを利用することができるのは、原則として、地域密着型サービス事業所の指定権者である市町村の管内に住所を有する要介護者等となっていることから、同サービスを利用する前提として、管内に地域密着型サービス事業所が所在していることが必要となる。そこで、183保険者における地域密着型サービス事業所の所在状況等についてみたところ、地域密着型サービスの事業所所在率は、認知症対応型共同生活介護、小規模多機能型居宅介護及び認知症対応型通所介護については80%を超えている一方で、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護)及び地域密着型特定施設入居者生活介護については30%を下回っている状況となっていた。

事業所所在率は、保険者及び事業者が想定するサービスの利用見込みを反映していると考えられ、17年度以前は居宅サービスに位置付けられていた認知症対応型共同生活介護の事業所所在率は高い割合となっていた。一方、管内に事業所等が所在しない理由として、利用者側において既存のサービスで十分であると考えていること、また、利用者側においてサービスを知らないのでニーズがないことなどとしている保険者が多数見受けられた。

そして、地域密着型サービスのうち、事業所所在率が98.3%となっている認知症対応型共同生活介護以外の7サービスを提供する事業所等が管内に所在しない保険者に対して、当該7サービスの必要性についての考え方を調査したところ、その必要性については判断できないとしている保険者が相当数見受けられた。これらの中には、地域密着型サービスの必要性について検討を行うための情報収集等を十分に行っていない保険者も見受けられることなどから、このように判断できないとしているのは、指定権者でもある市町村において、地域密着型サービスの展開についての意識が必ずしも十分でないことなどが関係していると考えられる(リンク参照)。

また、入居・入所系3サービスの25、26両年度(通算)分の全事業所平均利用率は、それぞれ94.7%(地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護)、94.4%(認知症対応型共同生活介護)及び89.5%(地域密着型特定施設入居者生活介護)となっていて、高い状況となっていた。一方、居宅系3サービスについては、それぞれ69.5%(小規模多機能型居宅介護)、58.9%(複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護))及び54.2%(認知症対応型通所介護)となっていて、入居・入所系3サービスと比べて低い状況となっていた。そして、居宅系3サービスの利用率が低い理由としては、利用者、ケアマネジャー等のサービスに対する理解が不足していて利用に結びつかないこと、ケアマネジャー等の交代を利用者等が好まないことなどが考えられるとしている保険者が見受けられた。

サービスの全事業所平均利用率は利用者等のニーズの直接的な反映であると考えられること、また、入居・入所系3サービスについては利用を希望していながら利用に至っていない者が少なくないことなどを踏まえると、地域密着型サービスのうち特に入居・入所系3サービスについては、高いニーズが存在していると考えられる。

また、居宅系3サービスについて、利用状況を把握しているとしている保険者は30%から40%程度、入居・入所系3サービスについて、利用の申込みを行っていながら利用に至っていない者の状況を把握しているとしている保険者は50%程度、訪問系2サービスについて、利用状況を把握しているとしている保険者は10%から20%程度となっていた。

地域密着型サービスは、要介護者等の居宅又は地域において身近にサービスを提供するために導入されたものであり、地域包括ケアシステムの核となるサービスであると位置付けられていること、原則として、保険者の管内でサービスを提供するものであることなども踏まえると、保険者における地域密着型サービスの利用状況等の把握は十分であるとはいえない状況にあると考えられる。

そして、地域密着型サービスの普及促進等に当たっては、指定権者であり保険者でもある市町村において、要介護者等の利用者や家族及びケアマネジャーに対してそのニーズの前提となるサービスの内容等の周知や、サービスの利用状況等の一層の把握等が求められていると考えられる(リンク参照)。

また、介護老人福祉施設等への入所等を希望しながら入所等に至っていない者が相当数見受けられた一方で、介護職員が不足しているため定員利用となっていない施設等が、11保険者の管内で15施設等見受けられた(リンク参照)。

イ 特定事業所集中減算とケアマネジメントの公正・中立の確保について

居宅介護支援に係る介護報酬を算定する際の制度である特定事業所集中減算は、ケアマネジメントの公正・中立を確保するための施策の一つであるとされており、正当な理由なく集中割合が90%を上回った支援事業所については介護報酬を減額することとなっている。

そこで、2,230事業所について、その作成した居宅サービス計画に位置付けられた3居宅サービスの中で集中割合が最も高いサービスの集中割合の状況を調査したところ、24年度後期及び25年度前期のいずれの判定期間においても、集中割合が70%超90%以下となっている支援事業所が最も多くなっていた。そして、25年度前期の判定期間における集中割合が最も高いサービスについて、最も多くの居宅サービス計画に位置付けられた居宅サービス事業者が当該居宅サービス計画を作成した支援事業所を運営する支援事業者と同一であるものが多数見受けられた(リンク参照)。

また、24年度後期又は25年度前期の判定期間において、21都県又は26市等に対して特定事業所集中減算届出書を提出していた1,609事業所のうち1,279事業所(79.4%)及び1,594事業所のうち1,280事業所(80.3%)については、その作成した居宅サービス計画に位置付けられた3居宅サービスのうちいずれかのサービスの集中割合が90%を上回っていることについて正当な理由があると認められていて、特定事業所集中減算の適用を受けていなかった。さらに、正当な理由の認定状況については、各都県等間で差異が見受けられる状況となっていた(リンク参照)。

厚生労働省は、特定事業所集中減算の導入に際して、ケアマネジメントの公正・中立の確保と集中割合に一定の基準を設けることとの合理的関連性及びケアマネジメントの公正・中立を確保するために集中割合の基準を90%超とした根拠については、現在、いずれも明らかではないとしている。

そして、前記2,230事業所のうち、24年度後期及び25年度前期のいずれの判定期間においても集中割合が80%超90%以下となっている306事業所について、居宅サービス計画の作成に当たり、所属するケアマネジャーが特定事業所集中減算の適用を受けないようにするために集中割合の調整を行ったことがあるかどうかについて調査したところ、調査に回答した216事業所のうち76事業所(35.1%)において、ケアマネジャーが居宅サービス計画の作成に当たり、特定事業所集中減算の適用を受けないようにするために集中割合の調整を行ったことがあると回答した。

このように、集中割合の調整が行われる場合には、ケアマネジャーは必ずしも利用者の心身の状況、希望等を勘案して居宅サービス計画を作成していないことになり、このようなケアマネジメントは、ケアマネジャーはその担当する利用者の人格を尊重し、常に当該利用者の立場に立って業務を行わなければならないとしている運営基準等の趣旨に反すると考えられる状況となっていた(リンク参照)。

また、前記2,230事業所のうち、24年度後期及び25年度前期のいずれの判定期間においても集中割合が100%となっている支援事業所が16事業所見受けられた。そして、この16事業所における居宅サービス計画の作成方針等について調査したところ、調査に回答した11事業所のうち、支援事業所の方針として単一の居宅サービス等事業者を居宅サービス計画に位置付けることとしていた支援事業所が3事業所あり、また、今後も、特定事業所集中減算の適用を受けないようにするために居宅サービス等事業者を分散させる予定はないとしている支援事業所が4事業所あった。

このように、支援事業所の方針として、居宅サービス計画の作成に当たり特定の居宅サービス等事業者を位置付けることとしていることは、運営基準等の趣旨に反すると考えられる状況となっており、特定事業所集中減算は、支援事業所の方針として単一の居宅サービス等事業者を居宅サービス計画に位置付けるなどとしている一部の支援事業所に対しては、厚生労働省が期待できるとしている牽制効果が十分に生じていないと考えられる(リンク参照)。

そして、厚生労働省は、27年度改定に当たり、新たに特定事業所集中減算の適用を受ける可能性がある支援事業所が実際に特定事業所集中減算の適用を受けることとなった場合における当該支援事業所の減収額については、試算していなかったとしている。そこで、会計検査院が、前記の24年度後期及び25年度前期のいずれの判定期間においても集中割合が80%超90%以下となっている306事業所について、仮に特定事業所集中減算の適用を受けることとなった場合における介護報酬の減収額を試算したところ、1事業所当たりの平均で、介護報酬が14.4%減額され、1年間で312万余円の減収になるという結果となった。また、306事業所のうち193事業所については特定事業所加算の請求が認められているが、これらの193事業所が特定事業所集中減算の適用を受けることとなった場合には特定事業所加算を算定できなくなることから、これに伴う減収分も合わせて試算すると、1事業所当たりの平均で、介護報酬が34.6%減額され、1年間で961万余円の減収になるという結果となった。

また、27年度改定を踏まえた対応方針について回答した132事業所のうち66事業所(50.0%)は、集中割合が80%以下となるように集中割合の調整を既に行っているか又は今後行うことを検討していると回答しており、27年度改定は、ケアマネジメントの公正・中立の確保を推進するものとはならないおそれがある状況となっていた(リンク参照)。

以上を踏まえると、集中割合に一定の基準を設け、これを正当な理由なく上回る場合には介護報酬を減額するという特定事業所集中減算は、ケアマネジメントの公正・中立を確保するという所期の目的からみて、必ずしも合理的で有効な施策であるとは考えられず、むしろ一部の支援事業所においては、集中割合の調整を行うなどの弊害を生じさせる要因となっていると考えられる状況となっていた(リンク参照)。

ウ 介護給付等の適正化の取組の実施状況について

要介護者等が増加傾向となっている中で、都道府県及び保険者は、介護給付適正化計画に基づき、要介護認定等の適正化等の介護給付等の適正化の取組を実施している。

要介護認定等が適切かつ公平に行われるためには、更新等認定調査の公正・中立を確保する必要があることなどから、厚生労働省は、保険者に対して、可能な限り同一事業者等による認定調査を実施しないように求めている。

しかし、更新等認定調査の全部又は一部を支援事業者等に委託して実施していた177保険者のうち115保険者は、特に同一事業者等による認定調査を行わない取扱いとはしておらず、このうち108保険者において同一事業者等による認定調査が行われていた。そして、当該保険者から抽出した40保険者についてみたところ、委託先の支援事業者又は介護老人福祉施設の大部分で担当ケアマネジャーによる認定調査が行われていた(リンク参照)。

また、適正化システムを活用した取組の実施状況についてみたところ、適正化帳票を活用した縦覧点検等を実施するに当たり、自ら又は国保連合会に委託して実施している保険者が見受けられた一方、縦覧点検等を実施していない保険者が見受けられた。そして、給付実績の活用について、実績帳票を活用することにより具体的な効果を上げている保険者等が見受けられた一方、実績帳票を活用していない保険者等が見受けられた(リンク参照)。

2 所見

我が国の急な高齢化に伴い介護給付費は増大しており、これに伴い国、都道府県及び市町村の費用負担は増大し、保険料も上昇していて、介護保険制度の実施状況に対する国民の関心はますます高まっている。

また、近年の法改正等に基づき、今後も順次介護保険制度の改正が行われることとなっている中で、給付と負担の均衡を図りつつ、介護保険制度の持続可能性を確保していくことが求められている。

このような状況及び今回の会計検査院の検査結果を踏まえて、今後、介護保険制度については、厚生労働省、各都道府県、各保険者等において、次の点に留意することなどにより、適切かつ効果的に実施するよう努める必要がある。

(1)介護保険の財政状況について

ア 介護保険事業特別会計における経理の状況等を踏まえ、各保険者及び各都道府県において、今後の高齢化の一層の進行等に伴い、各種の介護サービスの利用が増大して介護給付費が増大した場合に備えて、介護保険財政の健全化について引き続き留意すること、また、厚生労働省において、介護保険制度が持続可能なものとなるよう、その運営に十分に留意すること
イ 厚生労働省において、財政安定化基金からの交付金については、保険者間の負担の公平性を確保するために、交付超過額が生じた保険者から当該交付超過額を返還させる取扱いとすることなどについて検討すること

(2)介護サービス等の実施状況について

ア 介護3サービスの実施状況について
(ア)地域密着型サービスは地域包括ケアシステムの核とされているサービスであり、地域密着型サービス事業所の設置については、事業所等の指定権者であり保険者でもある市町村の関与が可能となっていることなども踏まえて、市町村において、管内における地域密着型サービスの必要性の有無を適切に判断していくよう努めること、また、地域密着型サービスの普及及び利用を促進することにより、要介護者等が住み慣れた自宅又は地域で生活を継続できるようにしていくために、指定権者であり保険者でもある市町村において、サービスの内容等の周知や、地域密着型サービス事業所の利用状況等の一層の把握に努めるとともに、厚生労働省において、訪問系2サービスや居宅系3サービスを利用することができることなども含めて、その特性又は利便性等について、保険者、事業所、ケアマネジャー、要介護者等に対して一層の周知等を行うこと
(イ)介護サービスのニーズの拡大に伴い、今後、介護職員が不足しているため定員利用となっていない事態が増加していくことが想定されることを踏まえ、厚生労働省、都道府県及び保険者が、保険者の管内における施設サービス等の利用状況等について的確な把握に努めるとともに、介護職員の確保に向けた取組を引き続き推進していくこと
イ 特定事業所集中減算とケアマネジメントの公正・中立の確保について

厚生労働省において、ケアマネジメントの公正・中立の確保に関する各方面の意見等について十分に把握するとともに、十分な検証を行った上で、ケアマネジメントの公正・中立を確保するための合理的で有効な施策の在り方等について、特定事業所集中減算の見直しも含め、十分に検討すること

ウ 介護給付等の適正化の取組の実施状況について

(ア)厚生労働省において、保険者に対して、更新等認定調査を支援事業者等に委託して実施する場合には、更新等認定調査の公正・中立を確保して要介護認定等の適正化を図る見地から、原則として同一事業者等による認定調査を行うことがないようにすること、また、担当ケアマネジャーによる認定調査を行うことがないようにすることなどの技術的助言等を文書により行うことについて検討すること

(イ)都道府県及び保険者において、適正化システムを活用した保険者による縦覧点検等の実施や都道府県及び保険者による給付実績の活用について積極的に取り組むとともに、都道府県において、国保連合会との連携を強化し、保険者に対する支援を積極的に推進するなどの取組を検討する必要があるが、厚生労働省においても、適正化システムから配信される実績帳票の活用について、有効な活用事例を都道府県及び保険者に紹介するなどして、保険者に対する支援を一層推進していくこと

以上のとおり報告する。

会計検査院としては、以上の結果に留意しつつ、今後とも介護保険制度の実施状況が適正かつ適切となっているかについて、多角的な観点から引き続き検査していくこととする。