(平成26年度決算検査報告参照)
(平成27年度決算検査報告参照)
日本年金機構(以下「機構」という。)は、厚生労働省の監督の下に、健康保険及び厚生年金保険を適用すべき事業所であるにもかかわらず、その適用を受けていない事業所の適用を促進する業務(以下「適用促進業務」という。)を行っている。適用促進業務は、平成24年10月以降、法務省から新規に設立された法人の情報及び異動又は閉鎖された法人の情報(以下、これらの情報を「法人登記簿情報」という。)の提供を毎月受けるなどして選定された健康保険及び厚生年金保険の適用の可能性がある事業所(以下「適用調査対象事業所」という。)について、外部委託による加入勧奨、年金事務所による加入指導等を行うものであり、機構は、23、25両年度に改正された業務処理マニュアル(以下「事務処理手順」という。)において、加入指導から立入検査等に至る実施手順等を定めている。しかし、適用促進業務等に係る事務処理の効率化を図ることを目的とした「厚生年金保険適用業務支援システム」(以下「支援システム」という。)に収録された法人登記簿情報に事業主の現住所等の情報(以下「謄本記載情報」という。)が不足するなどしていて、法人に係る情報の取得が効率的に行われていない事態、加入勧奨を適時適切に行うための外部委託の在り方を検討していない事態、外部委託を活用した適用促進業務が効率的に行われていない事態、立入検査の手続が的確にとられていない事態及び加入勧奨に係る委託契約において委託費の減額についての規定が定められておらず、電話による加入勧奨(以下「電話勧奨」という。)に係る委託費が実績に応じて支払われていない事態が見受けられた。
したがって、次のとおり、日本年金機構理事長に対して27年10月に、改善の処置を要求し及び意見を表示し、並びに是正改善の処置を求めた。
本院は、機構本部において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、機構は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 加入指導を行うに当たり不足している謄本記載情報を把握し、法人登記簿情報に追加することとした場合における支援システムの改修経費、国税庁から提供される源泉徴収義務者情報の活用により効率的に加入指導を行うことができる状況等を考慮した結果、謄本記載情報の追加は行わないこととし、また、27年10月に効率的に加入指導を行うために取扱基準を改正し、各年金事務所において、既に支援システムに収録されている法人登記簿情報を活用し、事業実態のないことを確認した適用調査対象事業所については加入指導の対象外とするなどした。
イ 加入勧奨を適時適切に行うための外部委託の在り方について検討した結果、外部委託による加入勧奨を全ての年金事務所において一律に行うのではなく、年金事務所ごとの業務の効率化等を考慮して、適用調査対象事業所数が一定数を下回る年金事務所については、原則として外部委託を行わずに年金事務所が加入指導を行うこととした。また、外部委託による加入勧奨は、新規に設立された法人等の事業実態のない可能性が高い適用調査対象事業所を対象として厚生年金保険等の制度について周知するなどのために行うこととした上で、電話勧奨及び訪問勧奨を行わずに、リーフレット等の印刷物を送付する文書勧奨及び文書勧奨に対する電話照会に関する受電業務を行うこととした。そして、29年1月に文書勧奨及び受電業務に係る委託契約を受託事業者との間でそれぞれ締結するとともに、同年2月に年金事務所に対して指示文書を発出して、適用調査対象事業所数が一定数を下回る場合には、原則として年金事務所が加入指導を行うよう周知徹底した。
ウ 27年9月に加入勧奨に係る委託契約を締結する際の仕様書等に、事業所の電話番号が不明の場合には訪問勧奨時の面談の際に電話番号を聴取することを明記した。
エ 28年3月に年金事務所に対して指示文書を発出して、事務処理手順等を改正するなどして、的確に立入検査の手続をとる方法を定めて、これを周知徹底した。
オ 加入勧奨に係る委託契約については、イのとおり、外部委託の在り方について検討した結果、電話勧奨を行わないこととした。これにより、電話勧奨経費は委託契約の対象経費に含まれないことになった。