(平成29年度決算検査報告2か所参照 リンク10264 20612)
独立行政法人福祉医療機構(以下「機構」という。)は、独立行政法人福祉医療機構法(平成14年法律第166号)に基づき、政府出資金を原資として労災年金担保貸付事業(以下「労災貸付事業」という。)を行っている。労災貸付事業は、「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」において廃止することなどとされており、厚生労働省は、平成30年2月に、機構に指示した第4期中期目標(30年4月から35年3月まで)において、新規貸付終了時期について33年度末を目途としている。そして、業務が廃止されるのは、新規貸付けが終了して、更に既往の貸付金の回収業務等が完了した後となる。機構は、26年12月に、労災貸付事業の貸付限度額を引き下げるなどの措置を講じていて、貸付残高は大幅に減少してきており、貸付けに使用されていない政府出資金の額は大幅に増加している。しかし、厚生労働省において、27年3月の国庫納付以降、事業規模に見合った資産規模を適時に検証していないため、機構において、貸付金の原資として使用される見込みのない多額の政府出資金に係る資産を保有しており、今後も業務廃止まで保有し続けることになる事態が見受けられた。
したがって、厚生労働大臣及び独立行政法人福祉医療機構理事長に対して、30年10月に、会計検査院法第36条の規定により次のとおり意見を表示した。
本院は、厚生労働本省及び機構本部において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省及び機構は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 厚生労働省は、労災貸付事業の実績及び今後の事業規模を考慮するなどして真に必要となる政府出資金の額を検討し、その結果、機構は、必要額を超えて保有されていると認められた政府出資金7億3092万余円について、独立行政法人通則法第46条の2の規定に基づき、31年3月に不要財産の国庫納付に係る厚生労働大臣の認可を受けて、同月に国庫に納付した。
イ 厚生労働省は、令和元年6月に、元年度以降、業務廃止までの毎年度、労災貸付事業の実施に必要となる政府出資金の規模を事業規模に見合うものとなるよう、必要となる政府出資金の額について、前年度の貸付残高、貸付実行額等を基に検証を行い、必要額を超えて保有していると認められる場合には、不要財産として国庫に納付することとする仕組みを整備し、機構は、その仕組みに沿って、不要財産を国庫に納付することとした。