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福島再生加速化交付金事業等の実施状況について


3 検査の状況

(1) 加速化交付金等の執行状況等

ア 加速化交付金の予算及び決算の状況

(ア) 前身交付金の予算及び決算の状況

前身交付金の予算及び決算の状況をみると、図表5のとおり、長期避難者生活拠点形成交付金全体では、歳出予算額の累計額と予算決定後移替増減額の累計額の合計(以下「歳出予算額等の累計額」という。)は503億円、支出済歳出額の累計額は472億余円となっている。また、福島定住等緊急支援交付金全体では、歳出予算額等の累計額は100億余円、支出済歳出額の累計額は80億余円となっており、前身交付金全体での支出済歳出額の累計額は552億余円となっている。

前身交付金の執行率(歳出予算額等の累計額に対する支出済歳出額の累計額の割合をいう。以下同じ。)をみると、図表5のとおり、長期避難者生活拠点形成交付金では93.8%、福島定住等緊急支援交付金では80.6%となっている。不用率(歳出予算額等の累計額に対する不用額の累計額の割合をいう。以下同じ。)をみると、長期避難者生活拠点形成交付金では6.1%、福島定住等緊急支援交付金では19.3%となっている。

また、支出済歳出額の累計額を所管省庁別にみると、長期避難者生活拠点形成交付金では、所管する2省庁のうち、復興公営住宅の整備等の事業を所管する国土交通省の支出済歳出額の累計額が472億余円と多くなっていて、福島定住等緊急支援交付金では、所管する3省庁のうち、地域の運動施設の整備等の事業を所管する文部科学省の支出済歳出額の累計額が37億余円で最も多くなっている。

図表5 前身交付金の予算及び決算の状況(平成25年度から29年度まで)

長期避難者生活拠点形成交付金 (単位:百万円、%)
所管 年度 歳出予算額
A
前年度繰越額 予算決定後移替
増減額 B
歳出予算現額
C
支出済歳出額
D
翌年度繰越額
E
不用額
F
年度
執行率
D/C
繰越率
E/C
年度
不用率
F/C
復興庁 平成
25
9,963 9,963 9,963 100.0
26 9,963 9,963 0 0 100.0
25-
26
歳出予算額の累計 a   予算決定後移替増減額の累計
b
歳出予算額等の累計
c(a+b)
支出済歳出額の累計
d
  不用額の累計
e
執行率
d/c
  不用率
e/c
小計 9,963 9,963 0 0 100.0
所管 年度 歳出予算額
A
前年度繰越額 予算決定後移替
増減額 B
歳出予算現額
C
支出済歳出額
D
翌年度繰越額
E
不用額
F
年度
執行率
D/C
繰越率
E/C
年度
不用率
F/C
国土交通省 平成
25
40,336 40,336 35,507 4,080 747 88.0 10.1 1.8
26 4,080 9,963 14,044 11,406 297 2,340 81.2 2.1 16.6
27 297 297 296 0 99.8 0.1
25-
27
歳出予算額の累計 a   予算決定後移替増減額の累計
b
歳出予算額等の累計
c(a+b)
支出済歳出額の累計
d
  不用額の累計
e
執行率
d/c
  不用率
e/c
小計 40,336 9,963 50,299 47,210 3,089 93.8 6.1
所管 年度 歳出予算額の累計 a   予算決定後移替増減額の累計
b
歳出予算額等の累計
c(a+b)
支出済歳出額の累計
d
  不用額の累計
e
執行率
d/c
  不用率
e/c
平成
25-
27
50,300 50,300 47,210 3,089 93.8 6.1
福島定住等緊急支援交付金 (単位:百万円、%)
所管 年度 歳出予算額
A
前年度繰越額 予算決定後移替
増減額 B
歳出予算現額
C
支出済歳出額
D
翌年度繰越額
E
不用額
F
年度
執行率
D/C
繰越率
E/C
年度
不用率
F/C
復興庁 平成
25
5,583 5,583 485 4,991 107 8.6 89.3 1.9
26 4,991 2,744 2,246 1,809 251 185 80.5 11.1 8.2
27 251 251 242 9 96.4 3.5
25-
27
歳出予算額の累計 a   予算決定後移替増減額の累計
b
歳出予算額等の累計
c(a+b)
支出済歳出額の累計
d
  不用額の累計
e
執行率
d/c
  不用率
e/c
小計 5,583 2,744 2,839 2,537 301 89.3 10.6
所管 年度 歳出予算額
A
前年度繰越額 予算決定後移替
増減額 B
歳出予算現額
C
支出済歳出額
D
翌年度繰越額
E
不用額
F
年度
執行率
D/C
繰越率
E/C
年度
不用率
F/C
文部科学省 平成
25
3,481 3,481 309 3,150 21 8.8 90.4 0.6
26 3,150 1,708 4,858 1,966 1,776 1,116 40.4 36.5 22.9
27 1,776 1,776 1,475 301 83.0 16.9
25-
27
歳出予算額の累計 a   予算決定後移替増減額の累計
b
歳出予算額等の累計
c(a+b)
支出済歳出額の累計
d
  不用額の累計
e
執行率
d/c
  不用率
e/c
小計 3,481 1,708 5,189 3,750 1,439 72.2 27.7
所管 年度 歳出予算額
A
前年度繰越額 予算決定後移替
増減額 B
歳出予算現額
C
支出済歳出額
D
翌年度繰越額
E
不用額
F
年度
執行率
D/C
繰越率
E/C
年度
不用率
F/C
国土交通省 平成
25
944 944 167 775 1 17.7 82.0 0.1
26 775 1,036 1,811 1,211 405 193 66.9 22.4 10.6
27 405 405 405 0 99.9 0.0
25-
27
歳出予算額の累計 a   予算決定後移替増減額の累計
b
歳出予算額等の累計
c(a+b)
支出済歳出額の累計
d
  不用額の累計
e
執行率
d/c
  不用率
e/c
小計 944 1,036 1,980 1,785 195 90.1 9.8
所管 年度 歳出予算額の累計 a   予算決定後移替増減額の累計
b
歳出予算額等の累計
c(a+b)
支出済歳出額の累計
d
  不用額の累計
e
執行率
d/c
  不用率
e/c
平成
25-
27
10,009 10,009 8,073 1,936 80.6 19.3
所管 年度 歳出予算額の累計 a   予算決定後移替増減額の累計
b
歳出予算額等の累計
c(a+b)
支出済歳出額の累計
d
  不用額の累計
e
執行率
d/c
  不用率
e/c
前身交付金計 平成
25-
27
60,309 60,309 55,283 5,025 91.6 8.3
(イ) 新交付金の予算及び決算の状況

新交付金の予算及び決算の状況をみると、図表6のとおり、歳出予算額等の累計額は4268億余円、支出済歳出額の累計額は2954億余円(前身交付金の支出済歳出額の累計額552億余円と合わせると加速化交付金の支出済歳出額は3507億余円)となっており、執行率は69.2%、不用率は28.6%となっている。

所管府省庁等別に執行率をみると、文部科学、厚生労働、農林水産、国土交通、環境各省で90%以上となっている一方、復興庁では4.1%、総務省では41.5%、原子力規制委員会では49.2%にとどまっている。また、不用率をみると、総務、文部科学、厚生労働、農林水産、経済産業、国土交通、環境各省で10%未満となっている一方、復興庁で93.2%、原子力規制委員会で50.7%となっている。

歳出予算額等の累計額及び支出済歳出額の累計額が最も多いのは国土交通省となっていて、不用額の累計額が最も多いのは復興庁となっている。復興庁によると、不用額が多くなっている理由は、福島県等が事業計画を作成するに当たり、住民との合意形成に不測の日数を要したことや、同庁が所管する帰還環境整備の交付対象事業には、住民の帰還状況に合わせて事業を実施しているものがあり、住民の帰還状況等を勘案して事業規模を縮小したことなどにより、交付申請額が予定を下回ったことなどによるとしている。

このように、府省庁等によっては一部の年度で事業実施主体における事業実施等により不用額が多額となっていることから、着実な事業執行に努める要がある。

さらに、年度執行率(歳出予算額に前年度繰越額、予備費使用額及び流用等増減額を加えた歳出予算現額に対する支出済歳出額の割合をいう。以下同じ。)をみると、厚生労働、国土交通両省では80%台から90%台で推移している。そして、文部科学、農林水産、経済産業各省及び原子力規制委員会では、26年度以降の年度執行率が上昇傾向にある。

加速化交付金が創設された25年度に復興庁に平成25年度補正予算として512億円が予算措置されたが、全額を26年度に繰り越して、所管府省庁等に501億余円が移し替えられている。26年度に加速化交付金を繰り越した理由について、復興庁によると、各実施要綱に規定する交付対象事業の事業内容を事業実施主体である福島県等に十分に理解してもらう必要があったこと、所管府省庁等において、避難指示が解除される時期等を踏まえた効果的なタイミングで事業が実施できるよう福島県等との調整が必要であったことなどから、25年度内の予算執行が困難になったとしている。なお、26年度以降は、所管府省庁等に予算措置されることとなった。

また、29年度末現在において、事業が終了していないなどのため、30年度に繰り越した額が最も多いのは、道路等側溝堆積物撤去・処理支援に係る事業等を所管する復興庁となっている。事業実施主体である福島県等によると、事業を繰り越した理由について、事業の工程表の精度が十分でないなど、計画の策定方法に課題があったこと、道路の側溝等にとどまった堆積物が固結していて、施工方法を変更したことで施工能率が低下したり、大雨や積雪の影響を受けて進捗に遅れが生じたりしたことなどによるとしている。

図表6 新交付金の予算及び決算の状況(平成29年度末現在)

(単位:百万円、%)
所管 年度 歳出予算額
A
前年度繰越額 予算決定後移替
増減額 B
歳出予算現額
C
支出済歳出額
D
翌年度繰越額
E
不用額
F
年度
執行率
D/C
繰越率
E/C
年度
不用率
F/C
内閣府 平成
26
91 3,329 3,421 2,125 1,295 62.1 37.8
27 7,491 7,491 6,288 1,203 83.9 16.0
28 3,127 3,127 2,552 575 81.6 18.3
29 2,942 2,942 2,244 82 615 76.2 2.7 20.9
26-
29
歳出予算額の累計 a   予算決定後移替増減額の累計
b
歳出予算額等の累計
c(a+b)
支出済歳出額の累計
d
29年度における翌年度繰越額 e 不用額の累計
f
執行率
d/c
29年度末における繰越率
e/c
不用率
f/c
小計 13,653 3,329 16,983 13,210 82 3,690 77.7 0.4 21.7
所管 年度 歳出予算額
A
前年度繰越額 予算決定後移替
増減額 B
歳出予算現額
C
支出済歳出額
D
翌年度繰越額
E
不用額
F
年度
執行率
D/C
繰越率
E/C
年度
不用率
F/C
復興庁 平成
25
51,200 51,200 51,200 100.0
26 82,902 51,200 50,156 83,945 372 461 83,111 0.4 0.5 99.0
27 5,191 461 5,653 1,300 308 4,045 22.9 5.4 71.5
28 21,057 308 21,365 659 509 20,196 3.0 2.3 94.5
29 7,193 509 7,703 2,519 3,121 2,061 32.7 40.5 26.7
25-
29
歳出予算額の累計 a   予算決定後移替増減額の累計
b
歳出予算額等の累計
c(a+b)
支出済歳出額の累計
d
29年度における翌年度繰越額 e 不用額の累計
f
執行率
d/c
29年度末における繰越率
e/c
不用率
f/c
小計 167,544 50,156 117,387 4,851 3,121 109,414 4.1 2.6 93.2
所管 年度 歳出予算額
A
前年度繰越額 予算決定後移替
増減額 B
歳出予算現額
C
支出済歳出額
D
翌年度繰越額
E
不用額
F
年度
執行率
D/C
繰越率
E/C
年度
不用率
F/C
総務省 平成
28
72 72 70 2 96.9 3.0
29 96 96 96 100.0
28-
29
歳出予算額の累計 a   予算決定後移替増減額の累計
b
歳出予算額等の累計
c(a+b)
支出済歳出額の累計
d
29年度における翌年度繰越額 e 不用額の累計
f
執行率
d/c
29年度末における繰越率
e/c
不用率
f/c
小計 169 169 70 96 2 41.5 57.0 1.3
所管 年度 歳出予算額
A
前年度繰越額 予算決定後移替
増減額 B
歳出予算現額
C
支出済歳出額
D
翌年度繰越額
E
不用額
F
年度
執行率
D/C
繰越率
E/C
年度
不用率
F/C
文部科学省 平成
26
47 714 761 308 284 168 40.4 37.3 22.1
27 6,168 284 6,453 3,035 3,357 60 47.0 52.0 0.9
28 2,318 3,357 5,675 4,706 598 371 82.9 10.5 6.5
29 4,709 598 5,307 5,070 170 66 95.5 3.2 1.2
26-
29
歳出予算額の累計 a   予算決定後移替増減額の累計
b
歳出予算額等の累計
c(a+b)
支出済歳出額の累計
d
29年度における翌年度繰越額 e 不用額の累計
f
執行率
d/c
29年度末における繰越率
e/c
不用率
f/c
小計 13,244 714 13,958 13,120 170 667 93.9 1.2 4.7
所管 年度 歳出予算額
A
前年度繰越額 予算決定後移替
増減額 B
歳出予算現額
C
支出済歳出額
D
翌年度繰越額
E
不用額
F
年度
執行率
D/C
繰越率
E/C
年度
不用率
F/C
厚生労働省 平成
26
161 201 363 362 1 99.6 0.3
27 1,598 1,598 1,535 14 47 96.0 0.9 2.9
28 577 14 592 523 45 23 88.3 7.7 3.8
29 1,083 45 1,129 1,036 6 85 91.8 0.5 7.5
26-
29
歳出予算額の累計 a   予算決定後移替増減額の累計
b
歳出予算額等の累計
c(a+b)
支出済歳出額の累計
d
29年度における翌年度繰越額 e 不用額の累計
f
執行率
d/c
29年度末における繰越率
e/c
不用率
f/c
小計 3,420 201 3,621 3,457 6 157 95.4 0.1 4.3
所管 年度 歳出予算額
A
前年度繰越額 予算決定後移替
増減額 B
歳出予算現額
C
支出済歳出額
D
翌年度繰越額
E
不用額
F
年度
執行率
D/C
繰越率
E/C
年度
不用率
F/C
農林水産省 平成
26
184 1,370 1,555 525 307 722 33.7 19.7 46.4
27 5,459 307 5,766 4,136 1,412 217 71.7 24.4 3.7
28 21,155 1,412 22,567 20,911 1,309 346 92.6 5.8 1.5
29 24,692 1,309 26,001 23,494 1,624 882 90.3 6.2 3.3
26-
29
歳出予算額の累計 a   予算決定後移替増減額の累計
b
歳出予算額等の累計
c(a+b)
支出済歳出額の累計
d
29年度における翌年度繰越額 e 不用額の累計
f
執行率
d/c
29年度末における繰越率
e/c
不用率
f/c
小計 51,491 1,370 52,862 49,068 1,624 2,169 92.8 3.0 4.1
所管 年度 歳出予算額
A
前年度繰越額 予算決定後移替
増減額 B
歳出予算現額
C
支出済歳出額
D
翌年度繰越額
E
不用額
F
年度
執行率
D/C
繰越率
E/C
年度
不用率
F/C
経済産業省 平成
26
77 4,736 4,814 2,762 1,205 846 57.3 25.0 17.5
27 9,796 1,205 11,002 6,137 4,020 844 55.7 36.5 7.6
28 11,598 4,020 15,619 11,968 2,338 1,312 76.6 14.9 8.4
29 16,266 2,338 18,605 16,422 1,476 706 88.2 7.9 3.7
26-
29
歳出予算額の累計 a   予算決定後移替増減額の累計
b
歳出予算額等の累計
c(a+b)
支出済歳出額の累計
d
29年度における翌年度繰越額 e 不用額の累計
f
執行率
d/c
29年度末における繰越率
e/c
不用率
f/c
小計 37,739 4,736 42,476 37,290 1,476 3,709 87.7 3.4 8.7
所管 年度 歳出予算額
A
前年度繰越額 予算決定後移替
増減額 B
歳出予算現額
C
支出済歳出額
D
翌年度繰越額
E
不用額
F
年度
執行率
D/C
繰越率
E/C
年度
不用率
F/C
国土交通省 平成
26
25,293 39,654 64,948 64,456 332 159 99.2 0.5 0.2
27 69,158 332 69,490 68,081 1,240 168 97.9 1.7 0.2
28 20,360 1,240 21,600 18,133 2,868 598 83.9 13.2 2.7
29 23,535 2,868 26,404 22,841 2,407 1,154 86.5 9.1 4.3
26-
29
歳出予算額の累計 a   予算決定後移替増減額の累計
b
歳出予算額等の累計
c(a+b)
支出済歳出額の累計
d
29年度における翌年度繰越額 e 不用額の累計
f
執行率
d/c
29年度末における繰越率
e/c
不用率
f/c
小計 138,348 39,654 178,002 173,513 2,407 2,081 97.4 1.3 1.1
所管 年度 歳出予算額
A
前年度繰越額 予算決定後移替
増減額 B
歳出予算現額
C
支出済歳出額
D
翌年度繰越額
E
不用額
F
年度
執行率
D/C
繰越率
E/C
年度
不用率
F/C
環境省 平成
27
54 54 53 0 99.2 0.7
28 265 265 173 91 65.5 34.4
29 81 91 172 172 100.0
27-
29
歳出予算額の累計 a   予算決定後移替増減額の累計
b
歳出予算額等の累計
c(a+b)
支出済歳出額の累計
d
29年度における翌年度繰越額 e 不用額の累計
f
執行率
d/c
29年度末における繰越率
e/c
不用率
f/c
小計 400 400 400 0 99.8 0.1
所管 年度 歳出予算額
A
前年度繰越額 予算決定後移替
増減額 B
歳出予算現額
C
支出済歳出額
D
翌年度繰越額
E
不用額
F
年度
執行率
D/C
繰越率
E/C
年度
不用率
F/C
原子力規制委員会 平成
26
2 148 150 6 144 4.3 95.6
27 650 650 326 323 50.1 49.8
28 79 79 72 7 90.6 9.3
29 70 70 63 6 90.6 9.3
26-
29
歳出予算額の累計 a   予算決定後移替増減額の累計
b
歳出予算額等の累計
c(a+b)
支出済歳出額の累計
d
29年度における翌年度繰越額 e 不用額の累計
f
執行率
d/c
29年度末における繰越率
e/c
不用率
f/c
小計 802 148 950 468 482 49.2 50.7
所管 年度 歳出予算額の累計 a   予算決定後移替増減額の累計
b
歳出予算額等の累計
c(a+b)
支出済歳出額の累計
d
29年度における翌年度繰越額 e 不用額の累計
f
執行率
d/c
29年度末における繰越率
e/c
不用率
f/c
平成
25-
29
426,813 426,813 295,451 8,987 122,374 69.2 2.1 28.6

イ 加速化交付金の交付対象項目ごとの交付額とその執行状況

加速化交付金の交付対象項目ごとの交付額とその執行状況をみると、図表7のとおり、29年度末現在で交付額は計2672億余円、執行額又は取崩額は計2222億余円となっている。このうち、長期避難者生活拠点形成、福島定住等緊急支援及び帰還環境整備の3項目の交付額及び執行額又は取崩額が100億円を超えており、道路等側溝堆積物撤去・処理支援及び原子力災害情報発信等拠点施設等整備の2項目よりも多くなっている。これは、後者の2項目は、図表2のとおり、28年度以降に新たに実施されることとなったことにもよるものの、これら2項目の事業規模が小さいことなどにもよるものと考えられる。

図表7 交付対象項目ごとの加速化交付金の交付額とその執行状況(平成29年度末現在)

(単位:百万円)
交付対象項目 交付可能額 交付額 左のうち平成25年度から29年度までの実施計画分に係る交付額
A
Aに係る事業実施件数 流用増額 流用減額 執行額又は取崩額 執行率又は基金事業執行率 国庫返還額 執行未済額又は取崩未済額
B C D D/(A+B-C) E (A+B-C)-D-E
長期避難者生活拠点形成 191,189 187,299 187,258 308 4,339 4,339 162,278 86.6% 419 24,561
福島定住等緊急支援 17,697 16,141 16,141 223 22 22 15,032 93.1% - 1,109
帰還環境整備 74,115 62,237 62,106 579 115 115 43,364 69.8% 7 18,734
道路等側溝堆積物撤去・処理支援(注) 3,403 1,456 1,456 50 14 14 1,456 100.0% - -
原子力災害情報発信等拠点施設等整備(注) 1,883 146 146 1 - - 146 100.0% - -
288,288 267,281 267,109 1,161 4,492 4,492 222,277 83.2% 426 44,405

(注) 道路等側溝堆積物撤去・処理支援及び原子力災害情報発信等拠点施設等整備の交付額等は新交付金によるものである。

前記のとおり、加速化交付金は、福島県等の事業実施主体が事業計画を作成し、復興庁からの交付可能額通知を受けて交付担当大臣に交付申請を行い、交付決定を受けて事業計画で定めた各事業を実施するものである。

加速化交付金について、交付対象事業別、単年度型事業又は基金型事業の別、基幹事業又は避難者支援事業等若しくは効果促進事業等の別に、29年度末現在の執行状況をみたところ、次のとおりとなっていた。

(ア) 各交付対象項目の交付対象事業別の交付額とその執行状況

各交付対象項目における交付対象事業(避難者支援事業等及び効果促進事業等については、関連する基幹事業に含む。)別に29年度末現在の事業実施主体数、事業実施件数、交付額、執行額又は取崩額等をみると、次のとおりである。

a 長期避難者生活拠点形成

長期避難者生活拠点形成については、加速化事業が創設された25年度に基幹事業として28交付対象事業があり、その後、福島県等の事業実施主体の要望等により、29年度末現在では29交付対象事業に増加している。そして、図表8のとおり、13事業実施主体により、29交付対象事業のうち7交付対象事業において、基幹事業と避難者支援事業等とを合わせて計308件(休止している事業2件及び廃止している事業1件を含む。)の事業が実施され、加速化交付金の交付額は1872億余円、執行額又は取崩額は1622億余円となっている。交付対象事業別にみると、国土交通省所管で避難者の居住の安定確保を図るための事業である「災害公営住宅整備事業等」の事業実施件数が179件、交付額が1765億余円、執行額又は取崩額が1529億余円と最も多くなっている。

図表8 長期避難者生活拠点形成の交付対象事業別の交付額とその執行状況(平成29年度末現在)

(単位:百万円)
交付対象項目 事業(柱) 番号注(2) 実施番号注(3) 交付対象事業 所管 事業実施主体数 事業実施件数 交付額 執行額又は取崩額 交付対象項目全体の執行額に占める左の割合
長期避難者生活拠点形成 生活拠点事業 1 1 災害公営住宅整備事業等(災害公営住宅の整備、災害公営住宅に係る用地取得造成等) 国土交通省 9 179 176,592 152,958 94.2%
2 2 災害公営住宅家賃低廉化事業 6 36 5,806 5,472 3.3%
3 3 東日本大震災特別家賃低減事業 6 36 761 679 0.4%
4 - 公営住宅等ストック総合改善事業 - - - - -
関連基盤整備等事業 5 - 交通安全施設等整備事業 警察庁 - - - - -
6 - 公立学校施設整備費国庫負担事業 文部科学省 - - - - -
7 - 学校施設環境改善事業 - - - - -
8 - 幼稚園等の複合化・多機能化推進事業 - - - - -
9 - 埋蔵文化財発掘調査事業 - - - - -
10 - 認定こども園整備事業 厚生労働省 - - - - -
11 - 保育所等の複合化・多機能化推進事業 - - - - -
12 - 保育所緊急整備事業 - - - - -
13 - 放課後児童クラブ整備事業 - - - - -
14 - 児童福祉施設等整備事業 - - - - -
15 - 子育て支援のための拠点施設整備事業 - - - - -
16 - 介護基盤復興まちづくり整備事業 - - - - -
17 - 介護基盤の緊急整備等特別対策事業 - - - - -
18 4 施設開設準備経費助成特別対策事業 1 4 112 101 0.0%
19 - 定期借地権利用による整備促進特別事業 - - - - -
20 - 地域介護・福祉空間整備等施設整備事業 - - - - -
21 - 地域介護・福祉空間整備推進事業 - - - - -
22 5 被災者生活支援事業 1 5 1,225 649 0.3%
23 - 社会福祉施設等施設整備事業 - - - - -
24 - 水道施設整備事業 - - - - -
25 - 「農」のある暮らしづくり事業 農林水産省 - - - - -
26 6 道路事業 国土交通省 11 45 2,358 2,016 1.2%
27 - 下水道事業 - - - - -
28 - 都市公園事業 - - - - -
29 7 廃棄物処理施設改良・改修事業 環境省 1 3 400 400 0.2%
注(1)注(4) 13 308 187,258 162,278 100.0%
  • 注(1) 事業実施主体は重複しているため、各交付対象事業の事業実施主体数を合計しても計とは一致しない。
  • 注(2) 番号は、交付対象項目ごとに定めた実施要綱に挙げられている交付対象事業を通し番号で示したものである。
  • 注(3) 実施番号は、交付決定実績がある交付対象事業を通し番号で示したものである。
  • 注(4) 事業実施件数には、休止している事業2件及び廃止している事業1件が含まれているが、このうち休止している1件には加速化交付金は交付されていない。

また、図表8には、休止している事業2件及び廃止している事業1件が含まれている。休止している2件は共に国土交通省所管の道路事業に係るもので、地権者から現地調査への立入りについて了解が得られなかったり、用地の取得が困難となっていたりしていて、このうち1件は、基金型事業で3944万円の基金を造成したままの状態となっている。

廃止している1件は、同省所管の災害公営住宅整備事業等に係るもので、地権者との用地交渉がまとまらなかったもので、基金型事業で2億余円の基金が造成されたものの、他の基金事業に流用され、4725万余円の基金を保有したままの状態となっている。

なお、29交付対象事業のうち22交付対象事業は、長期避難者の生活拠点形成に必要な事業として設けられたものの、福島県等からの要望がないことから、29年度まで事業の実績はない。

b 福島定住等緊急支援

福島定住等緊急支援については、加速化事業が創設された25年度に基幹事業として6交付対象事業があり、その後、福島県等の事業実施主体の要望等により、29年度末現在では7交付対象事業に増加している。そして、図表9のとおり、28事業実施主体により、7交付対象事業の全てにおいて、基幹事業と効果促進事業等とを合わせて計223件の事業が実施され、加速化交付金の交付額は161億余円、執行額又は取崩額は150億余円となっている。交付対象事業別にみると、事業実施件数については復興庁所管で地域の子どもの運動機会の確保のための事業である「学校、保育所、公園等の遊具の更新」が116件と最も多くなっており、交付額及び執行額又は取崩額については文部科学省所管で地域の子どもの運動機会の確保のための事業である「地域の運動施設の整備」が共に87億余円と最も多くなっている。

図表9 福島定住等緊急支援の交付対象事業別の交付額とその執行状況(平成29年度末現在)

(単位:百万円)
交付対象項目 番号注(2) 実施番号注(3) 交付対象事業 所管 事業実施主体数 事業実施件数 交付額 執行額又は取崩額 交付対象項目全体の執行額に占める左の割合
福島定住等緊急支援 1 1 学校、保育所、公園等の遊具の更新 復興庁 24 116 3,126 3,074 20.4%
2 2 福島健康不安対策事業 1 1 1,234 198 1.3%
3 3 地域の運動施設の整備(地域屋内スポーツ施設の新改築 等、地域水泳プールの新改築等、地域屋外スポーツ施設の新改築等、地域屋外スポーツ施設の上屋新築、地域屋外水泳プールの上屋新築) 文部科学省 19 69 8,799 8,778 58.3%
4 4 地域全体の子どもの運動機会の確保につながる学校の運動施設の整備(学校の屋外運動場の整備に関する事業、学校開放用屋外水泳プールの新改築等、学校開放用水泳プール上屋の新改築、学校開放用屋内水泳プールの新改築等、学校開放用屋外運動場照明施設の新改築、学校開放用クラブハウスの新改築等) 1 1 32 32 0.2%
5 5 地域の運動施設の整備(子どもの運動機会確保のための公園・広場の整備) 国土交通省 11 30 2,677 2,677 17.8%
6 6 子育て定住支援賃貸住宅の建設 1 3 260 260 1.7%
7 7 子育て定住支援賃貸住宅の家賃の低廉化 1 3 10 10 0.0%
注(1) 28 223 16,141 15,032 100.0%
  • 注(1) 事業実施主体は重複しているため、各交付対象事業の事業実施主体数を合計しても計とは一致しない。
  • 注(2) 番号は、交付対象項目ごとに定めた実施要綱に挙げられている交付対象事業を通し番号で示したものである。
  • 注(3) 実施番号は、交付決定実績がある交付対象事業を通し番号で示したものである。
c 帰還環境整備

帰還環境整備については、加速化事業が創設された25年度に基幹事業として36交付対象事業があり、その後、福島県等の事業実施主体の要望等により、29年度末現在では48交付対象事業に増加している。そして、図表10のとおり、46事業実施主体により、48交付対象事業のうち30交付対象事業において、基幹事業と効果促進事業等とを合わせて計579件(廃止している事業5件を含む。)の事業が実施され、加速化交付金の交付額は621億余円、執行額又は取崩額は433億余円となっている。交付対象事業別にみると、事業実施件数については、内閣府所管で放射線に関する住民の不安の解消に資する取組を実施する事業である「個人線量管理・線量低減活動支援事業」が225件と最も多くなっており、交付額及び執行額又は取崩額については、農林水産省所管で農山村地域の農林業再生の加速化のための事業である「農山村地域復興基盤総合整備事業」の交付額が198億余円、執行額又は取崩額が130億余円と最も多くなっている。このほか、内閣府所管で生活環境の向上対策のために避難指示区域内に長期間放置されている危険物等の処理等を行う事業である「避難区域内危険物・化学物質等処理促進事業」も執行額又は取崩額が58億余円と多くなっている。なお、48交付対象事業のうち18交付対象事業は、避難住民の早期帰還を促進し地域の再生を加速化させることを目的に設けられたものの、福島県等からの要望がないことから、29年度まで事業の実績はない。

図表10 帰還環境整備の交付対象事業別の交付額とその執行状況(平成29年度末現在)

(単位:百万円)
交付対象項目 事業(柱) 番号注(2) 実施番号注(3) 交付対象事業 所管 事業実施主体数 事業実施件数 交付額 執行額又は取崩額 交付対象項目全体の執行額に占める左の割合
帰還環境整備 生活拠点整備 1 1 災害公営住宅整備事業等(災害公営住宅の整備、災害公営住宅に係る用地取得造成等) 国土交通省 4 7 978 27 0.0%
2 - 災害公営住宅家賃低廉化事業 - - - - -
3 - 東日本大震災特別家賃低減事業 - - - - -
4 - 公営住宅等ストック総合改善事業 - - - - -
5 2 福島再生賃貸住宅整備事業 3 7 224 189 0.4%
6 - 福島再生賃貸住宅家賃低廉化事業 - - - - -
7 3 福島再生賃貸住宅用地取得造成事業 3 3 52 50 0.1%
8 4 福島復興再生拠点整備事業(一団地の復興再生拠点市街地形成施設) 1 1 98 33 0.0%
9 - 都市再生区画整理事業(被災市街地復興土地区画整理事業等) - - - - -
10 - 都市防災推進事業(都市防災総合推進事業) - - - - -
11 5 道路事業(面整備事業と一体的に施行すべきアクセス道路等) 2 3 1,875 423 0.9%
12 - 下水道事業 - - - - -
13 6 都市公園事業 1 3 237 127 0.2%
14 7 公立学校施設整備費国庫負担事業 文部科学省 1 2 289 110 0.2%
15 8 学校施設環境改善事業 6 30 1,101 537 1.2%
16 9 幼稚園等の複合化・多機能化推進事業 4 12 429 420 0.9%
17 10 埋蔵文化財発掘調査事業 2 7 105 41 0.0%
18 - エリア放送受信環境整備事業 総務省 - - - - -
生活環境向上対策 19 11 生活環境向上支援事業 復興庁 8 12 1,083 912 2.1%
20 12 水道施設整備事業 厚生労働省 5 19 1,112 1,085 2.5%
21 13 避難区域内危険物・化学物質等処理促進事業 内閣府 1 4 5,861 5,861 13.5%
健康管理・健康不安対策 22 14 放射線測定装置・機器等整備支援事業 原子力規制委員会 7 12 427 427 0.9%
23 15 個人線量管理・線量低減活動支援事業 内閣府 46 225 4,674 4,316 9.9%
24 16 相談員育成・配置事業 10 27 649 648 1.4%
25 - 保健衛生施設等施設・設備整備事業 厚生労働省 - - - - -
26 17 被災者生活支援事業 1 6 155 155 0.3%
社会福祉施設整備 27 - 地域介護・福祉空間整備等施設整備事業 厚生労働省 - - - - -
28 - 地域介護・福祉空間整備推進事業 - - - - -
29 - 社会福祉施設等施設整備事業 - - - - -
30 - 介護基盤復興まちづくり整備事業 - - - - -
31 - 介護基盤の緊急整備特別対策事業 - - - - -
32 - 定期借地権利用による整備促進特別対策事業 - - - - -
33 18 施設開設準備経費助成特別対策事業 1 2 52 52 0.1%
34 - 保育所緊急整備事業 - - - - -
35 19 放課後児童クラブ整備事業 1 2 10 1 0.0%
36 20 児童福祉施設等整備事業 1 3 15 15 0.0%
37 - 子育て支援のための拠点施設整備事業 - - - - -
38 21 認定こども園整備事業 1 1 6 - -
39 22 保育所等の複合化・多機能化推進事業 1 2 7 7 0.0%
農林水産業再開のための環境整備 40 23 農山村地域復興基盤総合整備事業 農林水産省 26 122 19,863 13,069 30.1%
41 24 農山漁村活性化プロジェクト支援(福島復興対策)事業 4 7 1,235 896 2.0%
42 25 農業基盤整備促進事業 6 14 1,777 1,502 3.4%
43 26 被災地域農業復興総合支援事業 7 19 8,872 4,075 9.3%
44 - 農林水産関係試験研究機関緊急整備事業 - - - - -
45 27 木質バイオマス施設等緊急整備事業 1 1 - - -
商工業再開のための環境整備 46 28 原子力災害被災地域産業団地等整備等支援事業 経済産業省 8 19 9,610 7,140 16.4%
47 29 原子力災害被災地域事業所整備等支援事業 3 6 1,220 1,212 2.7%
48 30 事業者等向け浄化槽導入等支援事業 復興庁 1 1 76 21 0.0%
注(1)注(4) 46 579 62,106 43,364 100.0%
  • 注(1) 事業実施主体は重複しているため、各交付対象事業の事業実施主体数を合計しても計とは一致しない。
  • 注(2) 番号は、交付対象項目ごとに定めた実施要綱に挙げられている交付対象事業を通し番号で示したものである。
  • 注(3) 実施番号は、交付決定実績がある交付対象事業を通し番号で示したものである。
  • 注(4) 事業実施件数には、廃止している事業5件が含まれているが、この5件には加速化交付金は交付されていない。
d 道路等側溝堆積物撤去・処理支援

道路等側溝堆積物撤去・処理支援については、加速化事業の交付対象項目に28年度に追加されたものである。基幹事業として1交付対象事業があり、図表11のとおり、13事業実施主体により、基幹事業と効果促進事業等とを合わせて計50件の事業が実施され、新交付金の交付額及び執行額は共に14億余円となっている。

図表11 道路等側溝堆積物撤去・処理支援の交付額とその執行状況(平成29年度末現在)

(単位:百万円)
交付対象項目 番号注(1) 実施番号注(2) 交付対象事業 所管 事業実施主体数 事業実施件数 交付額 執行額 交付対象項目全体の執行額に占める左の割合
道路等側溝堆積物撤去・処理支援 1 1 道路等側溝堆積物撤去・処理支援事業 復興庁 13 50 1,456 1,456 100.0%
  • 注(1) 番号は、交付対象項目ごとに定めた実施要綱に挙げられている交付対象事業を通し番号で示したものである。
  • 注(2) 実施番号は、交付決定実績がある交付対象事業を通し番号で示したものである。
e 原子力災害情報発信等拠点施設等整備

原子力災害情報発信等拠点施設等整備については、加速化事業の交付対象項目に28年度に追加されたものである。追加された当初は基幹事業は1交付対象事業のみであったが、その後、事業実施主体である福島県の要望等により29年度末現在では2交付対象事業に増加している。そして、図表12のとおり、1事業実施主体により、1交付対象事業において、基幹事業1件が実施され、新交付金の交付額及び執行額は共に1億余円となっている。

図表12 原子力災害情報発信等拠点施設等整備の交付対象事業別の交付額とその執行状況(平成29年度末現在)

(単位:百万円)
交付対象項目 番号注(1) 実施番号注(2) 交付対象事業 所管 事業実施主体数 事業実施件数 交付額 執行額 交付対象項目全体の執行額に占める左の割合
原子力災害情報発信等拠点施設等整備 1 1 原子力災害情報発信等拠点施設整備事業 復興庁 1 1 146 146 100.0%
2 - 拠点周辺等環境整備等事業 - - - - -
1 1 146 146 100.0%
  • 注(1) 番号は、交付対象項目ごとに定めた実施要綱に挙げられている交付対象事業を通し番号で示したものである。
  • 注(2) 実施番号は、交付決定実績がある交付対象事業を通し番号で示したものである。
(イ) 単年度型事業及び基金型事業の別等の執行状況
a 交付対象項目ごとの事業実施件数等

前記のとおり、事業実施主体は、各交付対象項目における交付対象事業を単年度型事業又は基金型事業として実施している。そこで、交付対象項目ごとに、単年度型事業及び基金型事業の別並びに基幹事業と避難者支援事業等又は効果促進事業等の別に、事業実施件数、交付額、執行額又は取崩額等をみると図表13のとおりとなっていた。

29年度末現在で単年度型事業の事業実施件数は925件、交付額は610億余円、執行額又は取崩額は583億余円となっており、基金型事業の事業実施件数は236件、交付額は2060億余円、執行額又は取崩額は1639億余円となっている。基金型事業についてみると、そのほとんどが長期避難者生活拠点形成及び帰還環境整備に係るものであり、復興公営住宅の整備を中心とする長期避難者生活拠点形成で基金型事業の事業実施件数が151件、交付額が1730億余円、取崩額が1485億余円となっていて、帰還環境整備の事業実施件数84件、交付額317億余円、取崩額152億余円より多くなっている。また、事業執行率(交付額に対する執行額又は取崩額の割合をいう。以下同じ。)についても、長期避難者生活拠点形成が85.8%となっていて、帰還環境整備の47.9%より高くなっている。基幹事業と避難者支援事業等又は効果促進事業等の別にみると、基幹事業は事業実施件数計1,161件のうち989件、交付額計2671億余円のうち2623億余円、執行額又は取崩額2222億余円のうち2182億余円と、いずれも大半を占めている。

図表13 交付対象項目ごとの事業実施件数、交付額、執行額又は取崩額等(平成29年度末現在)

(単位:百万円)
交付対象項目 事業実施件数 交付額 A 執行額又は取崩額 B 事業執行率 執行未済額又は取崩未済額
  うち基幹事業 うち避難者支援事業等又は効果促進事業等   うち基幹事業 うち避難者支援事業等又は効果促進事業等   うち基幹事業 うち避難者支援事業等又は効果促進事業等 B/A 注(1) うち基幹事業 うち避難者支援事業等又は効果促進事業等
長期避難者生活拠点形成 308 216 92 187,258 183,593 3,665 162,278 159,199 3,079 86.6% 24,561 22,992 1,568
  単年度型 157 138 19 14,193 13,882 311 13,757 13,448 309 96.9% 16 15 1
流用増減額 0 ▲0
注(2)    
基金型 151 78 73 173,064 169,710 3,353 148,520 145,751 2,769 85.8% 24,544 22,977 1,567
流用増減額 ▲982 982
福島定住等緊急支援 223 180 43 16,141 15,843 298 15,032 14,734 298 93.1% 1,109 1,107 1
  単年度型 222 179 43 14,907 14,609 298 14,834 14,535 298 99.5% 73 71 1
流用増減額 ▲1 1
基金型 1 1 - 1,234 1,234 - 198 198 - 16.0% 1,036 1,036 -
帰還環境整備 579 556 23 62,106 61,355 751 43,364 42,815 548 69.8% 18,734 18,532 202
  単年度型 495 478 17 30,348 29,988 360 28,120 27,823 297 92.6% 2,219 2,157 62
流用増減額 - -
基金型 84 78 6 31,758 31,367 391 15,243 14,992 250 47.9% 16,514 16,374 140
流用増減額 - -
道路等側溝堆積物撤去・処理支援 50 36 14 1,456 1,395 61 1,456 1,380 75 100.0% - - -
注(3) 単年度型 50 36 14 1,456 1,395 61 1,456 1,380 75 100.0% - - -
流用増減額 ▲14 14
基金型  
原子力災害情報発信等拠点施設等整備 1 1 - 146 146 - 146 146 - 100.0% - - -
注(3) 単年度型 1 1 - 146 146 - 146 146 - 100.0% - - -
基金型  
合計注(1) 1,161 989 172 267,109 262,333 4,775 222,277 218,275 4,001 83.2% 44,405 42,632 1,773
  単年度型 925 832 93 61,051 60,020 1,030 58,315 57,334 981 95.5% 2,309 2,243 65
基金型 236 157 79 206,057 202,312 3,744 163,962 160,941 3,020 79.5% 42,095 40,388 1,707
  • 注(1) 執行未済額又は取崩未済額は、加速化交付金の交付を受けた後国庫に返還された額及び事業間で流用した額があるため、交付額から執行額又は取崩額を差し引いた額と一致しないものがある。
  • 注(2) 「流用増減額」は、基幹事業と効果促進事業等の間の流用額を記載しており、このほかに、基幹事業間での流用額及び効果促進事業等間での流用額もある。
  • 注(3) 道路等側溝堆積物撤去・処理支援及び原子力災害情報発信等拠点施設等整備の交付額等は新交付金によるものである。
b 基金型事業における事業費の取崩しが終了した後の基金の保有状況等

基金型事業での取崩未済額は、図表13のとおり、420億余円となっている。この取崩未済額には、事業計画に基づき30年度以降に基金から取り崩す予定のもののほか、既に事業が完了して事業費の取崩しが終了した後の残額も含まれている。前記のとおり、基金型事業を実施する場合には、同一の所管府省庁等に係る基金型事業の間において加速化交付金を流用できることとなっている。そして、流用を行った上で、なお残額がある場合には、基金廃止後に一括して国庫に返還されることとなる。一方、長期避難者生活拠点形成及び帰還環境整備の各基金管理運営要領によれば、基金の額が事業等の実施状況その他の事情に照らして過大であると交付担当大臣が認めた場合には、その額を交付担当大臣の指示に従い国庫に返還しなければならないこととされている。そして、基金の額が過大であるとして、交付担当大臣の指示により国庫に返還された事例は、29年度末現在で見受けられなかった。

そこで、調書による確認ができなかった避難指示・解除区域11市町村を除き、29年度末現在で既に事業が完了して事業費の取崩しが終了した後の残額を保有している基金型事業について、同年度末までに実際に行った流用の件数及び同年度末現在で流用可能な加速化交付金の保有額をみたところ、図表14のとおりとなっていた。すなわち、福島県では122件のうち19件で、本宮市では9件のうち1件で、伊達郡桑折町では3件のうち1件で、安達郡大玉村では3件のうち1件で流用を行った結果、同年度末現在で流用可能な加速化交付金の保有額は、3省(注10)に係る165億余円となっていた。一方、29年度末現在で、福島県及び上記の3市町村が上記保有額を流用することができる継続中の基金型事業をみたところ、福島県は45事業と多いが、3市町村では2町村の2事業となっていて、本宮市では基金として保有する2億余円を流用できる事業がなく、使用する見込みのない基金を保有している状況となっていた。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例> 基金型事業において、流用できる継続中の事業がなく、使用する見込みのない基金を保有しているもの

福島県本宮市は、新交付金の長期避難者生活拠点形成に係る交付対象事業である国土交通省所管の「災害公営住宅整備事業等」及び「道路事業」を、平成26年度から29年度までの間に、新交付金22億余円の交付を受けて基金型事業により計9件実施している。このうち、7件が「災害公営住宅整備事業等」であり、その内訳は、復興公営住宅を整備する事業が3件、復興公営住宅の専用駐車場を整備する事業が3件、復興公営住宅のコミュニティ交流広場を整備する事業が1件となっている。また、2件が「道路事業」であり、その内訳は、市道を改良する事業が1件、市道の交通安全施設を設置する事業が1件となっている。そして、29年度までにこれら9件の事業は全て完了して、基金の取崩額の累計額は19億余円となっていて、残額として2億余円の基金を保有している。

国土交通省所管の基金型事業で実施する事業は上記9件の事業のみであり、上記の基金を流用できる継続中の事業はないことから、復興庁及び福島県は基金の残額の返還に向けて協議を実施しているが、令和元年5月末現在で、当該基金の残額の返還に至っていなかった。

福島県、桑折町又は大玉村が実施する3省に係る基金型事業で継続中のものについて、交付対象事業費の累計額、取崩額の累計額及び基金の保有額をみると、図表14のとおり、福島県では、交付対象事業費の累計額464億余円のうち基金を260億余円取り崩して執行し、29年度末現在で基金の保有額は269億余円となっている。桑折町では、交付対象事業費の累計額6903万余円のうち基金を699万余円取り崩して執行し、29年度末現在で基金の保有額は1億5531万余円となっている。大玉村では、交付対象事業費の累計額1億9482万余円のうち基金を6961万円取り崩して執行し、29年度末現在で基金の保有額は3億7553万余円となっている。

図表14 事業費の取崩しが終了した後の基金の保有状況等(平成29年度末現在)

(単位:百万円)
交付対象項目 所管 事業実施主体 完了事業数   流用可能な加速化交付金の保有額(A) (A)を流用できる継続中の事業数 (B) (B)の事業に係る交付対象事業費の累計 (B)の事業に係る取崩額の累計 (B)の事業に係る基金の保有額 (C) 保有する基金の額
(A)+(C)
うち流用を行った事業数
長期避難者生活拠点形成 厚生労働省 福島県 1 - 11 5 1,265 649 575 587
国土交通省 福島県 106 14 15,810 13 25,281 16,086 4,576 20,387
本宮市 9 1 265 - - - - 265
桑折町 3 1 107 1 69 6 48 155
大玉村 3 1 289 1 194 69 86 375
帰還環境整備 農林水産省 福島県 15 5 40 27 19,882 9,294 5,924 5,964
小計 3省 福島県 122 19 15,862 45 46,429 26,029 11,076 26,938
3市町村 15 3 662 2 263 76 134 796
137 22 16,524 47 46,693 26,106 11,210 27,734

各実施要綱により、加速化事業において、基金型事業による事業実施及び一定の範囲での加速化交付金の流用を可能としていることは、柔軟な事業実施を可能にするものである。一方で、事業実施主体が既に事業を完了して事業費の取崩しが終了した後の残額を保有している基金型事業において、当該残額を流用できる事業がない場合や、流用できる事業があったとしても、その事業規模に照らして保有する基金の額が過大であると判断される場合には、事業の終了又は事業計画期間の期限の到来等による基金廃止を待たずに国庫に返還することを考慮する必要がある。

なお、東日本大震災により、著しい被害を受けた地域の円滑かつ迅速な復興のための事業に交付され、加速化交付金と同様に基金を設置造成等して事業を実施している交付金である東日本大震災復興交付金では、事業の終了等の前に明らかとなった基金残余見込額を返還することとしている。返還に当たっては、事業の終了等の前に明らかとなった基金残余見込額について、国庫への返還を要することを周知する事務連絡を復興庁から各自治体に発出し、各自治体による基金残余見込額の調査を経て、所管省から基金の残余額として認定する金額が通知され、この通知額を基に国庫への返還が行われている。

(注10)
3省  厚生労働、農林水産、国土交通各省
(ウ) 30年度以降も引き続き継続中の事業

福島県等が実施した単年度型事業及び基金型事業で、29年度末までに完了予定であったが完了せず、30年度以降も引き続き継続中の事業について、調書による確認ができなかった避難指示・解除区域11市町村を除いて交付対象項目ごとにみると、図表15のとおり、単年度型事業では内閣府、復興庁、農林水産、国土交通両省が所管する41事業となっていて、基金型事業では文部科学、厚生労働、農林水産、国土交通各省が所管する24事業となっている。特に、単年度型事業では、加速化交付金の交付対象項目に28年度から追加された道路等側溝堆積物撤去・処理支援に係る復興庁所管の道路等側溝堆積物撤去・処理支援事業で6事業実施主体の27事業が、基金型事業では、長期避難者生活拠点形成に係る国土交通省所管の災害公営住宅整備事業等で1事業実施主体の9事業が継続中となっていて、他の交付対象事業と比べて多くなっている。

30年度以降も引き続き継続中となっている理由を確認したところ、福島県等によると、道路等側溝堆積物撤去・処理支援事業では、前記のとおり、計画の策定方法に課題があったことなどによるとしている。災害公営住宅整備事業等では、用地取得に時間を要したこと、宅地の造成に時間を要することが判明し、計画の見直しを行ったことなどとしている。

図表15 平成29年度末までに完了予定であったが完了せず、30年度も引き続き継続中の事業(平成29年度末現在)

交付対象項目 事業(柱) 交付対象事業 所管 事業実施主体数 単年度型事業、基金型事業の別 継続事業数
長期避難者生活拠点形成 生活拠点事業 災害公営住宅整備事業等 国土交通省 1 基金型事業 9
関連基盤整備等事業 被災者生活支援事業 厚生労働省 1 基金型事業 5
道路事業 国土交通省 1 単年度型事業 5
1 基金型事業 3
帰還環境整備 生活拠点整備 埋蔵文化財発掘調査事業 文部科学省 1 基金型事業 1
健康管理・健康不安対策 個人線量管理・線量低減活動支援事業 内閣府 1 単年度型事業 5
農林水産業再開のための環境整備 農山村地域復興基盤総合整備事業 農林水産省 2 単年度型事業 3
2 基金型事業 5
農業基盤整備促進事業 農林水産省 1 基金型事業 1
道路等側溝堆積物撤去・処理支援 道路等側溝堆積物撤去・処理支援事業 復興庁 6 単年度型事業 27
原子力災害情報発信等拠点施設等整備 原子力災害情報発信等拠点施設整備事業 復興庁 1 単年度型事業 1
(注) 4府省庁 8 単年度型事業 41
4省 2 基金型事業 24

(注) 事業実施主体は重複しているため、各交付対象事業の事業実施主体数を合計しても計とは一致しない。

ウ 環境整備等委託事業の予算及び決算の状況

環境整備等委託事業の予算及び決算の状況を年度別にみると、図表16のとおり、生活環境整備事業及び帰還・再生事業が創設された24年度の支出済歳出額は4億余円で、年々増加して28年度には98億余円となったが、29年度は80億余円と減少し、支出済歳出額の累計額は381億余円となっている。年度執行率をみると、年々上昇して28年度に最大の73.1%となっているが、29年度は39.0%と減少している。復興庁によると、これは、避難指示・解除区域市町村の避難指示の解除が進んだ状況を踏まえ29年度に歳出予算現額が増加した一方で、避難指示・解除区域市町村、一部事務組合等における事業計画書の策定及び関係者間の調整に多くの日数を要したことなどから不用額が増加したことによるとしている。

翌年度繰越額は、24年度の245億余円が最多となっているが、復興庁によると、これは、平成24年度補正予算により創設され、208億余円が措置された帰還・再生事業で24年度中に執行が完了しなかったことによるとしている。

不用額は、25年度の195億余円が最多となっているが、復興庁によると、これは、事業計画書を変更し事業規模を見直したこと及び契約価格が予定を下回ったことによるとしている。

図表16 環境整備等委託事業の予算及び決算の状況(平成24年度から29年度まで)

(単位:百万円、%)
年度
歳出予算額
歳出予算現額
A
支出済歳出額
B
翌年度繰越額
C
不用額
D
年度
執行率
B/A
繰越率
C/A
年度
不用率
D/A
平成24年度 25,005 25,005 415 24,527 62 1.6 98.0 0.2
25年度 7,145 31,672 4,745 7,402 19,525 14.9 23.3 61.6
26年度 9,837 17,239 6,950 8,651 1,637 40.3 50.1 9.5
27年度 6,785 15,437 8,239 5,852 1,344 53.3 37.9 8.7
28年度 7,560 13,413 9,815 2,411 1,186 73.1 17.9 8.8
29年度 18,100 20,512 8,004 4,993 7,514 39.0 24.3 36.6
74,435 - 38,169 - 31,272 - - -

前記のとおり、環境整備等委託事業は、それまで別々に行っていた生活環境整備事業及び帰還・再生事業を27年度に統合したものである。当初予算についてみると、図表17のとおり、生活環境整備事業については、24年度から26年度までは①(目)福島避難解除等区域生活環境整備事業費として、また、25年度から27年度までは②(目)福島避難解除等区域生活環境整備事業委託費として計上されており、帰還・再生事業については、24年度から27年度までは③(目)福島原子力災害避難区域等帰還・再生加速事業委託費として計上されている。両事業が統合された27年度からは④(目)福島生活環境整備・帰還再生加速事業委託費として計上されている。

これら予算の執行状況をみると、図表17のとおり、全ての執行が完了している上記①から③までの予算科目で24年度から27年度までの間に措置された歳出予算額の累計額は419億余円、支出済歳出額の累計額は194億余円となっていて、執行率は46.3%にとどまっている。また、上記①から③までの予算科目の累計額に④(目)福島生活環境整備・帰還再生加速事業委託費(29年度において翌年度に繰り越された額を除く。)を加えた29年度までの累計額でみても、執行率は54.9%にとどまっている。

予算科目別にみると、(目)福島避難解除等区域生活環境整備事業費の予算執行率は29.8%と他の予算科目に比べて低くなっている。復興庁によると、これは、避難指示区域の見直しや国直轄による除染事業の実施が遅れ、避難指示・解除区域市町村が当初見込んでいた事業計画書の策定ができなかったため一部の事業を実施しなかったこと、事業規模が予定を下回ったこと及び25年度からは同種事業を福島原子力災害避難区域等帰還・再生加速事業委託費により実施したことによるとしている。

図表17 環境整備等委託事業に係る予算科目別の予算及び決算の状況(平成24年度から29年度まで)

(単位:百万円、%)
  委託対象項目
予算科目
年度
歳出予算額 前年度繰越額 歳出予算現額 支出済歳出額 翌年度繰越額
不用額
年度執行率又は執行率
繰越率
年度不用率又は不用率
組織・項 A B C D E C/B
(又は
C/A)
D/B E/B
(又は
E/A)
  生活環境整備事業 復興庁・福島避難解除等区域生活環境整備費 ①福島避難解除等区域生活環境整備事業費 平成24年度 4,200 4,200 373 3,773 52 8.9 89.8 1.2
復興庁・原子力災害復興再生支援事業費 25年度 3,773 3,773 753 132 2,887 19.9 3.5 76.5
26年度 132 132 124 8 93.7 6.2
小計   4,200     1,251   2,948 29.8   70.1
復興庁・原子力災害復興再生支援事業費 ②福島避難解除等区域生活環境整備事業委託費 平成25年度 2,350 2,350 2,350 100.0
26年度 1,871 2,350 4,221 1,413 1,871 936 33.4 44.3 22.1
27年度 1,871 1,871 1,688 183 90.1 9.8
小計   4,221     3,101   1,120 73.4   26.5
帰還・再生事業 復興庁・福島原子力災害避難区域等帰還・再生加速事業費 ③福島原子力災害避難区域等帰還・再生加速事業委託費 平成24年度 20,805 20,805 41 20,754 10 0.1 99.7 0.0
復興庁・原子力災害復興再生支援事業費 25年度 4,795 20,754 25,549 3,991 4,919 16,638 15.6 19.2 65.1
26年度 7,965 4,919 12,885 5,412 6,779 692 42.0 52.6 5.3
27年度 6,779 6,779 5,649 1,130 83.3 16.6
小計   33,566     15,094   18,471 44.9   55.0
計(α)   41,988     19,448   22,540 46.3   53.6
  生活環境整備事業及び帰還・再生事業 復興庁・原子力災害復興再生支援事業費 ④福島生活環境整備・帰還再生加速事業委託費 平成27年度 6,785 6,785 901 5,852 30 13.2 86.2 0.4
28年度 7,560 5,852 13,413 9,815 2,411 1,186 73.1 17.9 8.8
29年度 18,100 2,411 20,512 8,004 4,993 7,514 39.0 24.3 36.6
計(β)   32,446     18,721   8,732 (注) 68.1   (注) 31.8
合計(α+β)   74,435     38,169   31,272 (注) 54.9   (注) 45.0

(注) 計(β)の執行率及び不用率は、歳出予算額の累計額(A)として、平成27年度から29年度までの間の歳出予算額の累計額324億4674万余円から29年度の翌年度繰越額49億9332万円を減じた額を用いている(合計(α+β)についても同様)。

エ 環境整備等委託事業の委託対象項目ごとの委託費支払額

前記のとおり、環境整備等委託事業の委託対象項目には、生活環境整備事業及び帰還・再生事業がある。

24年度から29年度までの環境整備等委託事業に係る委託費の支払額は、図表18のとおり381億余円となっている。委託対象項目ごとにみると、生活環境整備事業に係る支払額は113億余円となっていて、そのほとんどは、学校や道路等の点検、清掃、修繕等を実施する「①清掃等の行為」となっている。帰還・再生事業に係る支払額は268億余円となっており、このうち、支払額が135億余円と最も多い「③避難区域の荒廃抑制・保全対策」は、避難解除等区域等において、火災等の危険を低減し同区域を保全するために必要な限度で除草作業や家屋の撤去作業等を実施するものである。

年度別の委託費の状況をみると、24年度の4億余円から年々増加し、28年度は98億余円と増加しているが、29年度は公共施設等の機能回復を図る「①清掃等の行為」が9億余円減少したことなどから、80億余円と減少している。委託対象事業別に支払額の推移をみると、帰還・再生事業のうち「③避難区域の荒廃抑制・保全対策」が26年度に29億余円となっており、前年度の8億余円から大幅に増加している。これは、25年度に設計・調査等を実施した防災・防犯のための警備システムを、26年度に実際に整備したことなどによるものである。

図表18 委託対象項目別の年度ごとの委託費支払額(平成24年度から29年度まで)

(単位:百万円)
委託対象項目 委託対象事業 平成24年度 25年度 26年度 27年度 28年度 29年度
生活環境整備事業 373 753 1,537 2,590 3,522 2,566 11,343
  ①清掃等の行為 365 747 1,525 2,579 3,515 2,557 11,290
②公共・公益的機能を回復させるために必要な行為 8 5 12 10 7 8 53
帰還・再生事業 41 3,991 5,412 5,649 6,292 5,438 26,826
  ①生活基盤施設・サービスの代替・補完 - 165 272 101 81 91 712
②地域コミュニティ機能の維持・確保 - 337 731 1,123 1,309 823 4,325
③避難区域の荒廃抑制・保全対策 18 819 2,901 2,718 3,701 3,404 13,564
④住民の一時帰宅支援 12 333 305 293 929 852 2,725
⑤横断的事項 - 30 101 109 72 13 326
⑥その他 10 2,305 1,100 1,304 198 252 5,170
合計 415 4,745 6,950 8,239 9,815 8,004 38,169

(注) 帰還・再生事業の「⑥その他」は住民の帰還に資する事業であり、①から⑤に分類することができない事業及び平成25年度に新交付金の交付対象項目である帰還環境整備に統合された事業の25年度以前の実施分を含む。

(2) 福島再生加速化交付金事業等の実施状況等

ア 加速化事業の実施状況

(ア) 長期避難者生活拠点形成の実施状況

長期避難者生活拠点形成は、図表8のとおり、6省庁(注11)が所管する29基幹事業と避難者支援事業等から構成されており、事業の対象地域は長期避難者が多数居住する避難先市町村であり、事業実施主体は福島県等とされている。このうち、加速化交付金の執行額又は取崩額が1529億余円に上り長期避難者生活拠点形成の94.2%を占める災害公営住宅整備事業等の復興公営住宅の整備の状況をみたところ、次のような状況となっていた。

(注11)
6省庁  警察庁、文部科学、厚生労働、農林水産、国土交通、環境各省
a 復興公営住宅の整備状況

25年6月に福島県が作成した第一次福島県復興公営住宅整備計画によれば、復興公営住宅は、おおむね3,700戸を27年度までの入居を目指して整備することとされ、25年12月に同県が作成した第二次福島県復興公営住宅整備計画では、整備計画戸数を上乗せして計4,890戸を整備し、上乗せした戸数については27年度以降早期に入居できるよう整備を進めることとされている。これらの整備計画戸数は25年5月に復興庁等が公表した住民意向調査の結果等を基に作成されている。

復興庁が公表している「長期避難者等の生活拠点の形成に向けた取組方針」等によれば、図表19のとおり、29年度末現在で整備計画戸数4,890戸のうち4,512戸は福島県が、378戸は7市町村がそれぞれ事業実施主体として整備することとされている。そして、上記のうち4,707戸が整備済みとなっていて、整備計画戸数に対する整備済戸数の割合(以下「整備率」という。)は96.2%となっていた。整備済みとなっていない183戸のうち60戸は29年度末現在で整備中であり、建設が保留されている123戸は、知事を本部長として設置された新生ふくしま復興推進本部による新生ふくしま復興推進本部会議において、整備、募集、入居状況等に鑑み、今後の需要に応じて建設保留を解除する方針としている。

図表19 復興公営住宅の整備状況(平成29年度末現在)

(単位:戸、%、百万円)
事業実施主体 整備計画戸数 整備済戸数 整備率 交付額 執行額 整備中の戸数 建設保留の戸数
A B C=B/A D E F G
福島県 4,512 4,329 95.9 160,945 141,179 60 123
本宮市 61 61 100.0 2,123 1,881
桑折町 64 64 100.0 1,809 1,666
川俣町 40 40 100.0 1,135 623
大玉村 59 59 100.0 1,900 1,601
川内村 25 25 100.0 697 644
葛尾村 106 106 100.0 3,788 1,756
飯舘村 23 23 100.0 526 526
4,890 4,707 96.2 172,927 149,879 60 123

整備済みの4,707戸の復興公営住宅について、市町村ごとの位置図を示すと、図表20のとおり、整備済戸数のうちの大部分は、福島県が事業実施主体となって整備している復興公営住宅であり、主に、いわき、南相馬、郡山、福島、二本松各市において整備されている。

また、本宮市、桑折町、大玉村は、その市町村区域内には避難指示区域が含まれていないものの、それぞれが避難元市町村と協定を締結するなどして復興公営住宅を整備している。

伊達郡川俣町及び双葉郡川内村は、その町村区域内の一部が避難指示区域に設定されていた時期があり、避難指示区域に設定されたことがない区域に自ら事業実施主体となって復興公営住宅を整備している。

双葉郡葛尾村及び相馬郡飯舘村は、村内の区域全てが避難指示区域に設定されていた時期があったことから、両村自ら事業実施主体となって、葛尾村は田村郡三春町に、飯舘村は福島市に、それぞれ復興公営住宅を整備している。

このように、一部の避難元市町村は、それぞれの市町村の避難状況を踏まえて、避難先市町村と協定を締結して、事業実施主体として復興公営住宅の整備を進めている。

図表20 復興公営住宅の整備状況(位置図)(平成29年度末現在)

図表20 復興公営住宅の整備状況(位置図)(平成29年度末現在) 画像

b 復興公営住宅の入居等の状況

(a) 復興公営住宅の入居資格

福島県が整備した復興公営住宅の28年度末現在における入居資格は、南相馬市、双葉郡富岡、大熊、双葉、浪江各町、飯舘村に設定された避難指示区域に23年3月11日に居住していたこと、既に他の復興公営住宅に入居していないこと、避難指示区域の外に居住可能な住居を有していないことなどとなっている。

福島県以外の地方公共団体が整備した復興公営住宅の入居資格は、避難指示区域に設定された区域を有する市町村が事業実施主体である場合には、当該市町村に居住していた者となるが、避難指示区域に設定された区域を有していたことがない避難先市町村が、避難元市町村と協定を締結して事業を実施する場合には、避難元市町村に居住していた者となっている。

(b) 復興公営住宅の配分状況等

復興公営住宅は、復興庁等が共同で実施した住民意向調査の結果等を踏まえて、整備が進捗するごとに各避難元市町村や長期避難者の実情を勘案するなどして、福島県が市町村ごとの整備戸数を決定し、避難元市町村との個別協議を行った上で、団地等の単位ごとに入居対象となる避難元市町村の長期避難者に対する配分を決めている。これは、コミュニティ維持等の観点から、団地等ごとに、市町村単位や親族同士等、ある程度のまとまりを持って入居することができるように配慮していることによるものである。

福島県が事業実施主体となって整備し、入居が開始された復興公営住宅について、避難元市町村別に長期避難者への配分状況をみると、図表21のとおり、南相馬市等7市町村に配分されており、複数の避難元市町村に配分されている復興公営住宅を除くと、浪江、富岡、大熊、双葉各町を避難元市町村とする長期避難者に対して比較的多く配分されている。

一方、避難指示・解除区域市町村のうち田村市等5市町村への配分は全く行われていない。福島県によれば、復興公営住宅は、長期避難を余儀なくされる世帯を対象に、恒久的に使用する住宅を整備するものであり、配分が行われていない5市町村については、比較的早期に避難指示が解除されるなどした区域等であり、住民の一日も早い帰還を目指す区域であることから、当該市町村も配分対象とすると、整備戸数の大幅な増加、帰還の遅れや避難先への移住の促進につながるおそれがあるためとしている。なお、川内、葛尾両村については、両村が事業実施主体として復興公営住宅を整備している。

図表21 福島県が事業実施主体となっている復興公営住宅4,329戸の配分状況(平成29年度末現在)

(単位:地区、戸)
長期避難者の避難元市町村 配分されている復興公営住宅の所在する市町数 配分されている復興公営住宅の所在する地区数 配分されている復興公営住宅の戸数
田村市
南相馬市 1市 2 122
川俣町 1町 1 12
広野町
楢葉町
富岡町 4市町 19 794
川内村
大熊町 5市町 18 515
双葉町 4市 10 345
浪江町 6市町 26 1,717
葛尾村
飯舘村 3市町 5 169
共通 8市町 25 655

(注) 「共通」は各地区の復興公営住宅のうち、特定の避難元市町村ではなく複数の避難元市町村に配分されているものである。

市町村が事業実施主体となって整備している復興公営住宅の入居対象等の状況は、図表22のとおり、事業実施主体は7市町村で、入居対象となる長期避難者の避難元市町村は7町村となっている。

図表22 市町村が事業実施主体となっている復興公営住宅378戸の状況(平成29年度末現在)

(単位:戸)
事業実施主体 復興公営住宅の所在する市町村 入居対象となる長期避難者の避難元市町村 戸数
本宮市 本宮市 浪江町 56
本宮市 本宮市 大熊町 5
桑折町 桑折町 浪江町 64
川俣町 川俣町 川俣町 40
大玉村 大玉村 富岡町 59
川内村 川内村 川内村 25
葛尾村 三春町 葛尾村 106
飯舘村 福島市 飯舘村 23

(c) 復興公営住宅の入居状況

福島県及び7市町村が事業実施主体として整備した整備済の復興公営住宅4,707戸のうち、調書による確認ができなかった川俣町、川内、葛尾、飯舘各村が事業実施主体となって整備している194戸を除いた4,513戸の29年度末現在の入居の状況についてみると、図表23のとおり、空室となっている戸数(以下「空室数」という。)は計590戸、整備済戸数に対する空室数の割合(以下「空室率」という。)は13.0%となっている。このうち、比較的空室率の高い福島県(空室数579戸、空室率13.3%)及び大玉村(空室数8戸、空室率13.5%)が事業実施主体として整備した復興公営住宅が空室となっている理由には、29年度末までに入居が開始されていなかったことによるものもあるが、福島県及び大玉村によると、入居開始時には一旦満室となったものの、その後、入居者が自宅を取得して転居したり、親族宅等へ転居したりなどしたことによるものもあるとしている。

なお、復興公営住宅のうち、継続して1年を超えて空室状態が続く場合の当該空室に対する対応について調書により確認したところ、福島県は、空室が出た都度、定期的に入居者を募集しているが、募集に対して応募が少ない状況であるとしている。また、空室解消の方策について、福島県は、引き続き定期的な募集を続けていくとしており、大玉村は、30年度から特定の避難元市町村以外の避難元市町村からの長期避難者も入居対象として拡大して募集している。

図表23 復興公営住宅の入居の状況(平成29年度末現在)

(単位:戸、%)
事業実施主体 整備済戸数 入居戸数 空室数 空室率
A B C=A-B D=C/A
福島県 4,329 3,750 579 13.3
本宮市 61 61
桑折町 64 61 3 4.6
大玉村 59 51 8 13.5
4,513 3,923 590 13.0

上記のとおり、復興公営住宅は、入居者の転居等に伴い、定期的に入居者を募集しても空室が解消されない状況にある。また、帰還困難区域等を除いて避難指示が解除され、避難元市町村への帰還がより一層進むなど利用環境に変化が生じており、それに伴い空室が増加していくことが見込まれる。

一方、多額の国費を投入して整備された復興公営住宅については、極力有効に活用することが望まれる。復興庁によると、福島県は、29年度から、募集対象者を避難指示が解除された区域に23年3月11日に居住していた者にも拡大するなど、復興公営住宅の一層の活用を図っているとしている。

また、公営住宅は、公営住宅法(昭和26年法律第193号)に基づき、災害発生から3年を経過した後、被災者等以外の一般の入居者に貸与等を行うことが可能となっていることを踏まえて、事業実施主体は、今後、復興公営住宅に対して、原子力災害による被災者からの需要がなかったり、長期間空室状態が継続したりする場合には、入居者のコミュニティ維持に留意しつつ、地震・津波による被災者や、原子力災害又は地震・津波による被災者以外の者を対象として募集を行うことについても検討する余地があると認められる。

上記について、復興庁によると、福島県は令和元年8月に、地震・津波被災者及び「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律」(平成24年法律第48号)に定める被災者を復興公営住宅の入居資格を有する者に加えたとしている。

c 復興公営住宅整備に係る避難者支援事業等

前記のとおり、避難者支援事業等は、基幹事業と一体となってその効果を増大させるために必要な事業とされている。

そして、復興公営住宅整備に係る避難者支援事業等の実施状況についてみると、図表24のとおり、復興公営住宅の住民等が使用する駐車場整備事業が69事業、執行額計11億余円と、全事業数の75.0%、全執行額の38.4%を占めている。その他、診療所スペースの整備や高齢者サポートセンターの整備を行う生活サポート施設整備事業が5事業、執行額8億余円等となっている。また、復興公営住宅の入居事務を円滑に行えるよう入居センターを設置するとともに、ソフト面を支援する事業として入居相談事業を実施するなどしている。

図表24 復興公営住宅整備に係る避難者支援事業等の実施状況(平成29年度末現在)

(単位:事業、百万円)
避難者支援事業等の内容 事業実施主体 事業数 執行額
駐車場整備事業 福島県 59 1,114
駐車場整備事業 7市町村 10 71
生活サポート施設整備事業 福島県 5 827
新たな木造建築技術を活用した公営住宅整備 福島県 2 628
入居相談事業 福島県 2 148
コミュニティ交流広場整備事業 3市村 4 137
先行展示施設整備事業 福島県 4 84
公園等整備事業 福島県 1 16
関連広場整備事業 桑折町 1 6
子育て支援施設充実事業 飯舘村 1 24
保全情報整備事業 福島県 1 15
県営住宅管理システム 福島県 1
公営住宅管理システム 大玉村 1 2
  92 3,079
(イ) 福島定住等緊急支援の実施状況

福島定住等緊急支援は、図表9のとおり、3省庁(注12)が所管する7基幹事業と効果促進事業等から構成されている。調書による確認ができなかった避難指示・解除区域11市町村を除く各市町村における福島定住等緊急支援の実施状況についてみたところ、次のような状況となっていた。

(注12)
3省庁  復興庁、文部科学、国土交通両省
a 基幹事業の実施状況

福島定住等緊急支援のうち基幹事業に係る加速化交付金の執行額は、図表25のとおり、29年度末現在で計135億余円となっている。このうち、子どもの運動機会の確保のための事業は、計130億余円となっていて、復興庁所管事業が27億余円、文部科学省所管事業が77億余円、国土交通省所管事業が25億余円となっており、同事業は、福島定住等緊急支援に係る事業の96.5%を占める状況となっている。

図表25 福島定住等緊急支援のうち基幹事業に係る加速化交付金の執行額(平成25年度から29年度まで)

(単位:百万円、%)
交付対象事業 平成25年度 26年度 27年度 28年度 29年度 合計
福島定住等緊急支援(A)=(B)+(H) 647 4,646 4,684 2,770 601 13,350
  子どもの運動機会の確保のための事業計(B)=(C)+(F)+(G)   647 4,387 4,681 2,766 598 13,080
割合
(B)/(K)
          96.5
  学校、保育所、公園等の遊具の更新(C) 復興庁所管 421 1,625 670 3 12 2,733
地域の運動施設の整備(地域屋内スポーツ施設の新改築等、地域水泳プールの新改築等、地域屋外スポーツ施設の新改築等、地域屋外スポーツ施設の上屋新築、地域屋外水泳プールの上屋新築)(D) 文部科学省所管 62 1,791 2,884 2,397 585 7,721
地域全体の子どもの運動機会の確保につながる学校の運動施設の整備(学校の屋外運動場の整備に関する事業、学校開放用屋外水泳プールの新改築等、学校開放用水泳プール上屋の新改築、学校開放用屋内水泳プールの新改築等、学校開放用屋外運動場照明施設の新改築、学校開放用クラブハウスの新改築等)(E) 1 31 32
小計(F)=(D)+(E) 64 1,822 2,884 2,397 585 7,753
地域の運動施設の整備(子どもの運動機会確保のための公園・広場の整備)(G) 国土交通省所管 161 939 1,127 365 2,593
子どもの運動機会の確保のための事業以外の事業(H) 国土交通省所管 0 258 2 4 3 269
福島定住等緊急支援(健康不安対策)(I) 復興庁所管 198 198
合計(K)=(A)+(I) 647 4,646 4,684 2,770 799 13,548
b 効果促進事業等の実施状況

各市町村が29年度末までに実施した子どもの運動機会の確保のための事業に係る効果促進事業等についてみると、図表26のとおり、復興庁所管事業では19市町村のうち5市町村(26.3%)が、また、国土交通省所管事業では10市町村のうち6市町村(60.0%)が実施している。その多くは、ソフト事業であるプレイリーダー養成事業等となっている。文部科学省所管事業では16市町村のうち12市町村(75.0%)が実施しており、その多くは基幹事業では実施することができないハード事業である運動施設に係る駐車場整備や運動施設の外構工事となっている。

図表26 効果促進事業等の実施状況(平成29年度末現在)

(単位:%)
交付対象事業 所管省庁 事業実施主体数(A) 左のうち効果促進事業等を実施している事業実施主体数 具体的な事業内容
(B) 割合(B)/(A)
学校、保育所、公園等の遊具の更新 復興庁 19 5 26.3 プレイリーダー養成事業等
地域の運動施設の整備(地域屋内スポーツ施設の新改築等、地域水泳プールの新改築等、地域屋外スポーツ施設の新改築等、地域屋外スポーツ施設の上屋新築、地域屋外水泳プールの上屋新築) 文部科学省 16 12 75.0 駐車場整備事業、外構整備事業等
地域全体の子どもの運動機会の確保につながる学校の運動施設の整備(学校の屋外運動場の整備に関する事業、学校開放用屋外水泳 プールの新改築等、学校開放用水泳プール上屋の新改築、学校開放用屋内水泳プールの新改築等、学校開放用屋外運動場照明施設の新改築、学校開放用クラブハウスの新改築等) 1  
地域の運動施設の整備(子どもの運動機会確保のための公園・広場の整備) 国土交通省 10 6 60.0 プレイリーダー養成事業等
22 15 68.1  
  • 注(1) 事業実施主体は重複しているため、各交付対象事業の事業実施主体数を合計しても計とは一致しない。
  • 注(2) プレイリーダーとは、子どもたちがいきいきと、楽しんで運動をするために興味や関心を引き出したり、楽しむための環境を作る人のことをいう。
(ウ) 帰還環境整備の実施状況

帰還環境整備は、図表10のとおり、 9府省庁等(注13)が所管する48基幹事業と効果促進事業等から構成されている。基幹事業のうち、農林水産業再開のための環境整備として福島県が実施している事業で加速化交付金の執行額又は取崩額が130億余円と最も多くなっており、帰還環境整備全体の30.1%を占めている農山村地域復興基盤総合整備事業、生活環境の向上を支援する事業として福島県等が実施している事業で同執行額が58億余円と最も多くなっている避難区域内危険物・化学物質等処理促進事業及び225件の事業が実施され、事業実施件数が最も多くなっている個人線量管理・線量低減活動支援事業の3つの交付対象事業について、その実施状況をみたところ、次のような状況となっていた。

(注13)
9府省庁等  内閣府、復興庁、総務、文部科学、厚生労働、農林水産、経済産業、国土交通各省、原子力規制委員会
a 農山村地域復興基盤総合整備事業の実施状況

(a) 農山村地域復興基盤総合整備事業の実施状況

農山村地域復興基盤総合整備事業は、原子力災害により被災した農山村地域の農林業再生の加速化のために、農地・農業用施設等の生産基盤、集落排水施設等の集落基盤等の総合的な整備に対する支援を行うものである。対象地域は避難指示・解除区域市町村であり、事業実施主体は福島県等となっている。対象事業は農地整備事業、水利施設整備事業等13事業であり、このうち福島県が事業実施主体となるものは、図表27のとおり、6事業となっている。

29年度末現在で対象事業の事業数が最も多いものは復興整備実施計画の21事業(総事業費6億余円)であり、次に多いのは農地整備事業の19事業(同10億余円)となっており、両事業で大半を占めている。復興整備実施計画は、農地整備事業等を今後行う予定である地域の諸条件等について、対象区域ごとに調査、計画及び設計を行い、復興整備実施計画を策定するものであり、6市町村の21区域において策定されている。農地整備事業は、効率的かつ安定的な農業経営を確保するために、水田地帯等における必要な生産基盤及び営農環境の整備と経営体の育成・支援を一体的に実施するものであり、2市の19区域において農業生産性の向上等のためのほ場の大区画化等を実施するなどしている。

図表27 福島県が事業実施主体として実施した農山村地域復興基盤総合整備事業の実施状況(平成29年度末現在)

(単位:千円)
交付対象事業 事業数 事業実施市町村数 総事業費(実績額) 事業費(実績額)のうち本交付金額
農地整備事業 19 2 1,002,211 797,771
水利施設整備事業 3 2 780,693 585,519
農業水利施設保全再生事業 1 6 829,678 622,258
中山間地域総合整備事業 1 1
森林整備事業 2 2 387,262 281,547
復興整備実施計画 21 6 652,857 652,857
47 11 3,652,701 2,939,952

上記の47事業について、29年度末までの市町村ごとの実施状況を示すと、図表28のとおり、復興整備実施計画は南相馬市の区域において大半が実施されており、また、農地整備事業は全ての事業が南相馬、田村両市で実施されている。農業水利施設等保全再生事業は、農地・農業用用排水施設等への放射性物質の流入・拡散防止対策や農業従事者等への被ばく線量の低減を図るための管理省力化施設の整備を実施するものであり、4市2町で実施されている。

福島県によると、農地整備事業の実施に当たっては農業者間の合意形成が必要で、事業実施以前からの農業者や住民間の話合いが非常に重要となるが、南相馬、田村両市の避難指示解除準備区域及び居住制限区域の農業者の多くがそれぞれの市内に避難していて、農地整備事業の実施に向けた話合いや地区の合意形成が比較的容易に実施できたことから、速やかに事業が行われたとしている。

図表28 農山村地域復興基盤総合整備事業の実施状況(位置図)(平成29年度末現在)

図表28 農山村地域復興基盤総合整備事業の実施状況(位置図)(平成29年度末現在) 画像

福島再生加速化交付金(帰還環境整備)実施要綱(以下「帰還実施要綱」という。)によれば、帰還環境整備に係る事業計画に含まれる各事業の終期は、原則として復興・創生期間が終了する令和2年度末までとされているが、事業ごとの性質又は避難指示等に伴い復興及び再生に遅れが生じている地域の状況に鑑み、特に必要があると認める場合には、個別に定めることができることとされている。そこで、福島県が事業実施主体として実施した農山村地域復興基盤総合整備事業の進捗状況をみたところ、次のとおりとなっていた。

図表29のとおり、平成29年度末現在では47事業のうち22事業(総事業費8億余円)が完了し、25事業(同27億余円)が継続中となっている。継続中の25事業のうち12事業(同6億余円)については、帰還実施要綱に基づき、個別に計画期間を定めて、復興・創生期間が終了した後の令和3年度以降も事業を継続することとしている。また、農山村地域復興基盤総合整備事業においては効果促進事業等は実施されていない。

なお、平成30年度末現在で、令和3年度以降の事業実施に係る制度等について具体的な内容は決まっていない。

図表29 福島県が事業実施主体として実施した農山村地域復興基盤総合整備事業の進捗状況(平成29年度末現在)

(単位:事業、千円)
対象事業 事業数   事業費  
うち、事業が完了しているもの うち、事業が継続中となっているもの うち、事業が完了しているもの うち、事業が継続中となっているもの
 
(令和2年度以前完了予定)
(令和3年度以降完了予定)
 
(令和2年度以前完了予定)
(令和3年度以降完了予定)
農地整備事業 19 5 14 3 11 1,002,211 161,021 841,190 225,773 615,416
 
ほ場の大区画化等
14 1 13 2 11 866,466 43,658 822,808 207,391 615,416
実施計画の作成
5 4 1 1 135,745 117,363 18,381 18,381
水利施設整備事業 3 3 3 780,693 780,693 780,693
農業水利施設等保全再生事業 1 1 1 829,678 829,678 829,678
中山間地域総合整備事業 1 1 1
森林整備事業 2 1 1 1 387,262 141,054 246,208 246,208
復興整備実施計画 21 16 5 5 652,857 590,475 62,381 62,381
47 22 25 13 12 3,652,702 892,551 2,760,151 2,144,734 615,416

(b) 農山村地域復興基盤総合整備事業実施後の状況

福島県が事業実施主体として実施した農山村地域復興基盤総合整備事業では、帰還環境整備に係る事業計画に記載した事業の全てが完了していないため、帰還実施要綱に基づく事業計画の実績に関する評価及び成果の公表は行われていない。そこで、事業効果として、策定した復興整備実施計画の活用状況及び整備した農地の利用状況をみたところ、平成29年度末現在において次のとおりとなっていた。

復興整備実施計画は、全21事業(総事業費6億余円)のうち16事業(同5億余円)で策定済みであり、残りの5事業(同6238万余円)で策定中となっている。福島県によると、策定済みの16事業は全て各地区の事業実施のための計画として使用しているとしている。

農地整備事業は、全19事業(同10億余円)のうち14事業(同8億余円)が農業生産性の向上等のためのほ場の大区画化等を実施するものであり、残りの5事業(同1億余円)は、同事業の実施に係る各地区の実施計画を作成するものである。ほ場の大区画化等は、全14事業のうち1事業(同4365万余円)のみが完了し、残りの13事業(同8億余円)は継続中となっているが、継続中の13事業のうち7事業(同4億余円)では、事業が完了した区画の一部又は全部において営農が再開されているとしている。残りの6事業は事業実施中であり、かつ、完了した区画がないため営農が再開されていない。

また、農地整備事業の残りの5事業は実施計画の作成を実施するものであり、5事業のうち4事業(同1億余円)で完了し、1事業(同1838万余円)は継続中となっている。福島県によると、策定が完了している4事業で地区の事業実施のための計画として使用しているとしている。

b 避難区域内危険物・化学物質等処理促進事業の実施状況

避難区域内危険物・化学物質等処理促進事業は、東日本大震災の発生時に使用又は保管されていて、震災後放置された危険物、化学物質等について、設備の劣化が進み、危険物等が漏えいなどするリスクが高まっていることから、迅速な処理を促進するために危険物、化学物質等の回収、運搬、処理等の作業等の支援を行うものである。対象地域は避難指示・解除区域市町村となっている。事業実施主体は福島県となっていて、交付の対象となる事業は全て単年度型事業となっている。そして、26年度に10億余円、27年度に47億余円、28年度に2102万余円、29年度に1292万余円、計58億余円の新交付金が福島県に交付されている。

福島県は、当該事業により廃棄処理や処分を行う危険物、化学物質等について、既に廃業しているLPガス販売事業者所有のLPガス容器や所有者不明のLPガス容器等については、避難指示・解除区域市町村の全域を対象として実施することとしている。また、その他の危険物、化学物質等については、帰還困難区域に所在する事業者が東日本大震災発生時に使用又は保管していた危険物、化学物質等を対象として実施することとしている。

そこで、帰還困難区域に指定された区域に所在する事業者に対する危険物、化学物質等の廃棄処理の状況をみたところ、図表30のとおり、双葉郡大熊町の5事業者で3,887t、双葉郡双葉町の1事業者で6tとなっていて、26、27両年度の執行額は計58億余円となっていた。また、LPガス容器については、26、27両年度は、東日本大震災で被災した家屋の解体に伴って発生したLPガス容器を対象に双葉郡富岡町で568本、双葉郡浪江町で253本を処分していた。28、29両年度は、福島県内で既に廃業しているLPガス販売事業者所有のLPガス容器や所有者不明のLPガス容器等を対象に計1,180本を処分して、29年度で当該事業を終了していた。福島県によると、危険物等が漏えいするなどのリスクを取り除くことで、避難住民が安心して帰還できる環境の整備に寄与したとしている。

図表30 避難区域内危険物・化学物質等処理促進事業の実施状況

(単位:百万円)
危険物等の種類
対象地域
南相馬市 川俣町 楢葉町 富岡町 大熊町 双葉町 浪江町 葛尾村 川内村 飯館村
事業者が使用又は保管していた危険物、化学物質等 平成26年度 事業者数 5 1
廃棄処理数量 775
t
6
t
執行額 1,041 5
27年度 事業者数 4
廃棄処理数量 3,112
t
執行額 4,762
事業者数
(注)
5 1
廃棄処理数量 3,887
t
6
t
執行額 5,803 5
LPガス容器 26年度 処理本数 47本 41本
執行額 5
27年度 処理本数 521本 212本
執行額 13
処理本数
(26、27年度)
568本 253本
28年度 処理本数 75本 3本 164本 50本 99本 322本 27本
執行額 21
29年度 処理本数 74本 15本 2本 48本 116本 11本 85本 25本 10本 54本
執行額 12
処理本数
(28、29年度)
1,180本

(注) 事業者が重複しているため、平成26、27両年度の事業者数を合計しても計とは一致しない。

c 個人線量管理・線量低減活動支援事業の実施状況

個人線量管理・線量低減活動支援事業は、放射線に関する住民の不安の解消に資するために、避難した住民のうち希望する住民に対して、避難元である地域の避難指示の解除前に、福島県等が個人線量計を貸与したり、住民が消費する食物や飲料水等の放射線量を測定したりなどする取組を実施するものである。対象地域は、避難指示・解除区域市町村及び避難指示区域の外側で年間積算線量が20mSvを超えると推定される地点について国が23年度に指定した特定避難勧奨地点等となっている。事業実施主体は、福島県等となっていて、交付の対象となる事業は全て単年度型事業となっている。

そして、実施する事業は、希望する住民への個人線量計の貸与や管理を行ったり、測定された個人線量計のデータを分析したりなどする「①個人線量の把握・管理」、内部被ばく検査機器、放射線測定機器等の整備や内部被ばく検査、放射線量マップの作成等を行う「②被ばく線量低減対策」のほか、「③屋内の放射線源の確定、屋内放射線源除去手法の実証事業及びその手法の展開等」及び「④住民が抱える放射線リスク等に関する、専門家等を招いた少人数等での対話集会の開催等」となっている。

そこで、調書による確認ができなかった避難指示・解除区域11市町村を除いて、対象事業ごとの実施状況をみたところ、図表31のとおり、福島県、34市町村等で計180件の事業が実施され、新交付金の執行額は計28億余円となっていた。

図表31 個人線量管理・線量低減活動支援事業の実施状況

(単位:百万円)
対象事業 事業実施主体 事業実施件数 執行額
平成
26年度
27年度 28年度 29年度
①個人線量の把握・管理 1県5市6町6村2広域市町村圏組合等 7 8 24 22 61 871
②被ばく線量低減対策 1県9市10町4村 12 13 41 44 110 1,919
③屋内の放射線源の確定、屋内放射線源除去手法の実証事業及びその手法の展開等
④住民が抱える放射線リスク等に関する、専門家等を招いた少人数等での対話集会の開催等 1市1町1水道用水供給企業団 2 2 3 2 9 54
(注) 1県、34市町村等 21 23 68 68 180 2,844

(注) 事業実施主体は重複しているため、各対象事業の事業実施主体数を合計しても計とは一致しない。

このうち、実施件数が110件、執行額が19億余円と、いずれも最も多くなっている「②被ばく線量低減対策」の事業内容をみると、図表32のとおり、市町村内の測定所で住民が持ち込んだ食品の放射能測定等を実施する「内部被ばくの可能性のある食品の線量測定」の実施件数が50件、執行額が9億余円と最も多くなっており、次いで、教育施設等の各定点の放射線量を定期的に測定し公表等する「土壌・空間等の環境放射線量の測定」の実施件数が33件、執行額が6億余円となっている。このように、食品や環境の放射線量を測定し、数値として示すことにより、住民の不安の解消につなげる取組が行われている。

図表32 被ばく線量低減対策の実施状況

(単位:百万円)
②被ばく線量低減対策の事業内容 事業実施主体 事業実施件数 執行額
平成
26年度
27年度 28年度 29年度
検査機器の整備等 3市1村 5 5 3 3 16 221
井戸水等の水質検査 6市1町 2 1 5 5 13 217
土壌・空間等の環境放射線量の測定 1県5市3町1村 4 3 12 14 33 683
内部被ばくの可能性のある食品の線量測定 8市9町3村 3 3 22 22 50 925
内部被ばく検査 3市1町 1 1 4 4 10 117
放射線量マップの作成等 4市1町1村 3 5 4 4 16 349
住民への周知 2市1村 1 2 1 1 5 108
(注) 1県9市10町4村 12 13 41 44 110 1,919

(注) 複数の「②被ばく線量低減対策の事業内容」に係る事業を実施している場合、事業実施主体、事業実施件数及び執行額については、それぞれの「②被ばく線量低減対策の事業内容」に重複して計上しているため、各事業実施主体数、各事業実施件数及び各執行額を合計しても計とは一致しない。

(エ) 道路等側溝堆積物撤去・処理支援の実施状況

道路等側溝堆積物撤去・処理支援は、復興庁が所管する1基幹事業と効果促進事業等から構成されており、前記のとおり、福島第一原発の事故発生後、道路等側溝堆積物が放射性物質を含んでいるために処理が困難になったこと、住民が避難したことでそれまで行われていた住民による清掃活動が中止されたことなどにより道路等側溝の通常の維持管理が中断されている地域に対して、1回に限り道路等側溝堆積物の撤去及び処理を支援することにより、道路等側溝の通常の維持管理を再開させるものであり、福島県又は除染実施計画を定めた同県内の市町村が事業実施主体となっている。調書による確認ができなかった避難指示・解除区域11市町村を除く各市町村における実施状況についてみたところ、次のような状況となっていた。

a 道路等側溝堆積物撤去・処理支援に係る事業の実施状況

道路等側溝堆積物撤去・処理支援に係る事業は、29年度末現在、福島県及び12市町村が事業実施主体となって実施されており、このうち、30年度以降に繰り越している事業を除くと、図表33のとおり、福島県及び9市町村が事業実施主体となって実施されている。また、道路等側溝堆積物撤去・処理支援に係る28、29両年度の新交付金の交付額は、図表34のとおり、計14億余円となっている。

図表33 道路等側溝堆積物撤去・処理支援に係る事業を実施している事業実施主体(平成28、29両年度)

図表33 道路等側溝堆積物撤去・処理支援に係る事業を実施している事業実施主体(平成28、29両年度) 画像

図表34 道路等側溝堆積物撤去・処理支援に係る新交付金の交付額(平成28、29両年度)

(単位:百万円)
事業実施主体 平成28年度 29年度
福島県 0 136 136
福島市 5 106 111
郡山市 14 14
いわき市 47 829 877
桑折町 3 3
国見町 1 1
鏡石町 41 41
天栄村 71 71
西郷村 3 179 182
中島村 16 16
56 1,400 1,456

道路等側溝堆積物撤去・処理支援に係る事業は、前記のとおり、道路等側溝堆積物を撤去するとともに、これを処理することなどとなっている。そして、道路等側溝堆積物の放射能濃度が8,000Bq/(注14)kgを超過している場合には当該道路等側溝堆積物を中間貯蔵施設等へ搬入することとなっており、8,000Bq/kg以下の場合には、事業実施主体が処分場に搬入して処理することとなっている。

(注14)
Bq(ベクレル)  1秒間に崩壊する原子核の数。放射性物質の量を表す場合に用いられる単位

そして、道路等側溝堆積物撤去・処理支援に係る事業は、各市町村内において、市町村道は市町村が、県道は福島県がそれぞれ事業を実施することとなっており、市町村は、年度ごとに事業を実施する地区を設定するなどし、同県は、設定された地区内における県道について事業を実施している。

そこで、29年度末までに実施した道路等側溝堆積物撤去・処理支援に係る事業における道路等側溝堆積物の撤去等の状況をみたところ、撤去等に係る側溝延長及び撤去数量は、図表35のとおり、それぞれ192.3km、5,831.2m3となっていた。

なお、29年度末までに事業を実施していない市町村については、既に国の除染事業を実施していたり、道路等側溝堆積物はあるものの撤去及び処理の必要性がないと判断したりしたことから事業を実施しないとしている市町村もあるが、避難指示を受けた市町村の中には、いまだに帰還できなかったり帰還が遅れたりしたために30年度以降に実施することにしている市町村もある。

また、道路等側溝堆積物撤去・処理支援に係る事業で処理の対象となる道路等側溝堆積物は、放射能濃度が8,000Bq/kg以下であることから、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)に基づく産業廃棄物等として処理をすることとされている。そして、福島再生加速化交付金(道路等側溝堆積物撤去・処理支援)実施要綱によれば、当該事業において撤去する道路等側溝堆積物を確実に搬入することができるように最終処分場を確保することが求められ、最終処分場の確保が困難である場合には、最終処分場を確保するまでの間は仮置場を確保することとされている。仮置場の確保は、最終処分場において、市町村から一時に大量の道路等側溝堆積物を受け入れることが困難である場合を踏まえたものである。

そこで、29年度末における撤去後の道路等側溝堆積物の処理状況をみたところ、図表35のとおり、撤去数量の計5,831.2m3のうち3,715.4m3が仮置場に保管されて、このうち2,319.0m3は29年度末までに最終処分場において処理されたが、残りの1,396.4m3は29年度末までに処理されなかった。

図表35 道路等側溝堆積物撤去・処理支援に係る事業における道路等側溝堆積物の処理等の状況(平成29年度末現在)

(単位:km、m3、%)
事業実施主体 側溝延長
撤去数量
 
(A)のうち仮置場を経由せずに処理を行った数量 (A)のうち平成29年度末までの間に一時的に仮置場に保管している又は保管していた数量  
(C)のうち29年度末までに処理を行った数量 (C)のうち29年度末までに処理されなかった数量
(A) (B) 割合
(B)/(A)
(C) 割合
(C)/(A)
(D) 割合
(D)/(C)
(E)=(C)-(D) 割合
(E)/(C)
福島県 0.2 1.8 1.8 100.0 1.8 100.0
福島市 3.7 23.0 23.0 100.0 23.0 100.0
郡山市 11.5 167.0 167.0 100.0 30.0 17.9 137.0 82.0
いわき市 18.5 386.6 386.6 100.0 386.6 100.0
桑折町 0.4 205.0 205.0 100.0 205.0 100.0
国見町 0.8 55.0 55.0 100.0
鏡石町 16.6 380.0 380.0 100.0 380.0 100.0
天栄村 45.5 2,060.8 2,060.8 100.0
西郷村 84.6 2,289.0 2,289.0 100.0 2,289.0 100.0
中島村 10.5 263.0 263.0 100.0 263.0 100.0
192.3 5,831.2 2,115.8 36.2 3,715.4 63.7 2,319.0 62.4 1,396.4 37.5
b 道路等側溝の維持管理の再開状況

前記のとおり、道路等側溝堆積物撤去・処理支援に係る事業は、道路等側溝の通常の維持管理の再開等を目的として実施する事業とされている。

そこで、事業効果として、29年度末までに道路等側溝堆積物の撤去及び処理が完了した地区の維持管理の状況をみたところ、復興庁への実績報告の時点で維持管理が再開されていない地区が見受けられた。そして、これらの地区について、事業実施主体において実績報告後の維持管理の再開状況を把握していなかった事態が見受けられた。

c 道路等側溝堆積物撤去・処理支援に係る効果促進事業等の実施状況

道路等側溝堆積物撤去・処理支援に係る事業を29年度末までに実施している福島県及び9市町村における効果促進事業等の実施状況をみると、3市町村において実施しており、市町村が管理していない私道等の側溝堆積物の撤去及び処理を対象としている。

復興庁によると、私道等の側溝堆積物の撤去及び処理を効果促進事業等として実施しているのは、私道等であっても市町村道と交差することがあり、私道等の側溝堆積物が市町村道へ流入することを防ぐことにより、市町村道の側溝堆積物の撤去及び処理の効果を促進するためであるとしている。

(オ) 原子力災害情報発信等拠点施設等整備の実施状況

原子力災害情報発信等拠点施設等整備は、復興庁が所管する2基幹事業と効果促進事業等から構成されている。2基幹事業は、前記のとおり、①原子力災害に係る情報発信等拠点施設の整備を行い、原子力災害に係る福島の経験と教訓等を踏まえた資料展示や関連調査、研修等の実施を通じ、その経験や教訓等を国内外に発信することを目的とする原子力災害情報発信等拠点施設整備事業及び②福島・国際研究産業都市構想の具現化に向けて、生活周辺環境整備や交流人口拡大、構想に関係する多様な関係者の連携強化と構想への参画を促す取組を行い、同構想の加速化並びに地元の復興及び再生に寄与することを目的とする拠点周辺等環境整備等事業であり、福島県が事業実施主体となっている。

福島県は、29年度までに、原子力災害情報発信等拠点施設整備事業として、双葉町内に原子力災害に係る情報発信等拠点施設を整備するなどのために、当該施設の基本設計、実施設計等を実施しており、これに係る新交付金の執行額は、29年度末現在で1億余円となっている。そして、福島県は、30年度以降、当該施設及び展示に係る基本設計・実施設計を基に、令和2年度の開設に向けて、施設の建築工事及び展示品の制作を実施する予定であるとしている。

また、福島県は、平成30年度以降、拠点周辺等環境整備等事業として、将来的に国内外の研究者、技術者等の移住に必要な住環境等の生活周辺環境整備や交流人口拡大、前記の構想に関係する多様な関係者の連携強化と構想への参画を促す取組を支援するための事業を、福島国際産業都市区域において実施する予定であるとしている。

なお、原子力災害情報発信等拠点施設等整備に係る事業においては、効果促進事業等は実施されていない。

(カ) 避難者支援事業等及び効果促進事業等の実施状況

基幹事業と一体となってその効果を増大させるために必要な事業又は事務として実施されている避難者支援事業等及び効果促進事業等については、図表36のとおり、単年度型事業では、福島県が実施した基幹事業のうち8.5%、市町村等が実施した基幹事業のうち9.5%において基幹事業と併せて実施されている。特に、道路等側溝堆積物撤去・処理支援では市町村が実施した基幹事業の60.8%において、基幹事業で実施する道路等側溝に関連する私道の側溝における堆積物の撤去及び処理を実施する効果促進事業等が実施されている。

基金型事業では、福島県が実施した基幹事業のうち50.0%、市町村が実施した基幹事業のうち27.9%において避難者支援事業等又は効果促進事業等が実施されている。特に、長期避難者生活拠点形成では福島県が実施した基幹事業の85.9%、市町村が実施した基幹事業の64.2%において、基幹事業で実施する復興公営住宅の整備と併せて復興公営住宅の入居者用の駐車場等を整備する避難者支援事業等が実施されている。

福島県が事業実施主体として実施した基幹事業に対して、市町村がその効果を増大させるために避難者支援事業等を実施していたものについて、参考事例を示すと次のとおりである。

<参考事例> 福島県が事業実施主体として実施した基幹事業に対して、市町村がその効果を増大させるために避難者支援事業等を実施していたもの

福島県は、長期避難者生活拠点形成における基幹事業の災害公営住宅整備事業等を平成25年度から27年度までの間に計112億余円の加速化交付金の交付を受けて、基金型事業により事業を実施して、同県いわき市勿来酒井に復興公営住宅を整備している。また、同県は、いわき市勿来酒井での災害公営住宅整備事業等の避難者支援事業等として、復興公営住宅駐車場整備事業及び復興公営住宅生活サポート施設整備事業を26年度から29年度までの間に基金型事業により実施して、基幹事業で整備した復興公営住宅と併せて駐車場及び診療所スペースなどの生活サポート施設を整備して、入居者の利便性等の向上を図っている。

一方、同県による復興公営住宅の整備を受けるいわき市では、上記の同市勿来酒井での災害公営住宅整備事業に係る避難者支援事業等として、27年度から29年度までの間に、復興公営住宅の入居者である避難者等との意見交換のためのワークショップを開催する事業及び復興公営住宅の入居者といわき市民との交流を図るためのコミュニティ交流広場を整備する事業を単年度型事業で計5392万余円で実施している。いわき市によると、避難生活が長期にわたることが見込まれる復興公営住宅の入居者が安心して暮らせるよう、入居者といわき市民とが融和を図ることができる交流・憩いの場を整備するとしており、同県の基幹事業の効果の増大を図っていた。

図表36 交付対象項目別の避難者支援事業等及び効果促進事業等の実施状況(平成29年度末現在)

交付対象項目 事業実施件数  
うち基幹事業
A
  うち避難者支援事業等又は効果促進事業等  
避難者支援事業等又は効果促進事業等を伴う基幹事業
B
避難者支援事業等又は効果促進事業等を伴う基幹事業の割合
B/A
県実施の基幹事業に併せて市町村等が実施した避難者支援事業等又は効果促進事業等
長期避難者生活拠点形成 308 216 78 36.1% 92 2
  単年度型 県実施分 89 77 11 14.2% 12  
市町村実施分 68 61 3 4.9% 7 2
基金型 県実施分 127 64 55 85.9% 63  
市町村実施分 24 14 9 64.2% 10 -
福島定住等緊急支援 223 180 34 18.8% 43 -
  単年度型 県実施分  
市町村実施分 222 179 34 18.9% 43 -
基金型 県実施分 1 1 - - -  
帰還環境整備 579 556 21 3.7% 23 -
  単年度型 県実施分 50 49 1 2.0% 1  
市町村等実施分 445 429 15 3.4% 16 -
基金型 県実施分 52 49 2 4.0% 3  
市町村実施分 32 29 3 10.3% 3 -
道路等側溝堆積物撤去・処理支援 50 36 14 38.8% 14 -
  単年度型 県実施分 13 13 - - -  
市町村実施分 37 23 14 60.8% 14 -
基金型  
原子力災害情報発信等拠点施設等整備 1 1 - - -  
  単年度型 県実施分 1 1 - - -  
市町村等実施分  
基金型  
  1,161 989 147 14.8% 172 2
  単年度型 県実施分 153 140 12 8.5% 13  
市町村等実施分 772 692 66 9.5% 80 2
基金型 県実施分 180 114 57 50.0% 66  
市町村実施分 56 43 12 27.9% 13 -

イ 環境整備等委託事業の実施状況

環境整備等委託事業は、委託制度要綱及び委託実施要綱によれば、避難指示・解除区域市町村、一部事務組合等が実施する復旧事業や除染等と密接に関連することから、国の責任において当該事業の目的を迅速かつ早期に達成するために、国から地域の実情を詳細に把握している避難指示・解除区域市町村、一部事務組合等に委託して実施することが効率的かつ効果的であるとして、避難指示・解除区域市町村、一部事務組合等に委託して実施することとされている。また、環境整備等委託事業は、避難指示により学校施設、公民館や体育館といった社会教育施設等を日常的又は定期的に清掃したり、施設設備の点検及び修繕をしたりすることなどができなかったことに起因して機能低下した公共施設等の機能回復を行うなどの事業である。受託市町村は、図表37のとおりであり、避難指示の解除が順次進んでいるものの、31年4月末現在も依然として7市町村に避難指示区域が設定されている。

図表37 受託市町村の状況(平成31年4月末現在)

受託市町村 避難指示解除日 市町村区域内の避難指示区域の有無
田村市 平成26年41 なし
南相馬市 28年7月12日 あり
川俣町 29年3月31日 なし
広野町 23年9月30日 なし
楢葉町 27年95 なし
富岡町 29年41 あり
川内村 28年6月14日 なし
大熊町 31年4月10日 あり
双葉町 あり
浪江町 29年3月31日 あり
葛尾村 28年6月12日 あり
飯舘村 29年3月31日 あり
  • 注(1) 避難指示の解除日は直近の解除日を記載している。
  • 注(2) 広野町の「避難指示解除日」欄は、緊急時避難準備区域の設定が解除された日付を記載している。

そして、環境整備等委託事業の委託対象項目である生活環境整備事業及び帰還・再生事業について、受託市町村等別に実施状況をみたところ、次のとおりとなっていた。

(ア) 生活環境整備事業の実施状況

生活環境整備事業では、図表38のとおり、事業数は計444事業となっていて、このうち「①清掃等の行為」に係る事業は436事業、「②公共・公益的機能を回復させるために必要な行為」は8事業となっている。全ての受託市町村等において、委託対象事業のうち「①清掃等の行為」に係る事業を実施しており、このうち事業数の多い受託市町村等は、双葉郡楢葉町の81事業、広野町の58事業等となっている。これら受託市町村等について、清掃等の行為の対象となる施設についてみると、次のとおりとなっている。

23年9月に緊急時避難準備区域の設定が解除された広野町では、清掃等の行為を実施した58事業のうち、運動競技場、体育館等の社会教育施設を対象としているものが12事業(当該受託市町村等が実施した全事業数に対する割合20.6%)、集会所等の社会インフラ施設を対象としているものが31事業(同53.4%)となっている。また、27年9月に避難指示が解除された楢葉町では、清掃等の行為を実施した81事業のうち、介護保険施設や児童福祉施設といった社会福祉施設を対象としているものが21事業(同25.9%)、集会所等の社会インフラ施設を対象としているものが40事業(同49.3%)となっている。

一方、29年度末現在で帰還困難区域が町の広域にわたる大熊、双葉両町では他の市町村と比べて事業数が少なく、大熊町は4事業、双葉町は3事業となっている。

図表38 生活環境整備事業の受託市町村等別、委託対象事業別の実施状況(平成24年度から29年度までの累計)

(単位:事業)
受託市町村等 委託対象事業 避難指示解除日
①清掃等の行為 ②公共・公益的機能を回復させるために必要な行為
田村市 18 - 18 平成26年41
南相馬市 56 5 61 28年7月12日
川俣町 10 - 10 29年3月31日
広野町 58 - 58 23年9月30日
楢葉町 81 3 84 27年95
富岡町 45 - 45 29年41
川内村 21 - 21 28年6月14日
大熊町 4 - 4 31年4月10日
双葉町 3 - 3
浪江町 23 - 23 29年3月31日
葛尾村 51 - 51 28年6月12日
飯舘村 51 - 51 29年3月31日
双葉地方広域市町村圏組合 9 - 9
双葉地方水道企業団 6 - 6
合計 436 8 444
  • 注(1) 避難指示の解除日は直近の解除日を記載している。
  • 注(2) 広野町の「避難指示解除日」欄は、緊急時避難準備区域の設定が解除された日付を記載している。

委託対象事業のうち「②公共・公益的機能を回復させるために必要な行為」に係る事業は、図表38のとおり、南相馬市及び楢葉町で実施されている。両市町は、社会福祉施設等の再開に必要な職員等の研修等として、介護職員養成事業や介護職員初任者研修の事業を実施している。

そして、24年度から29年度までの間に実施した生活環境整備事業の事業数の推移をみると、図表39のとおり、田村市、広野、楢葉両町及び川内村では事業数が25年度又は26年度に最も多くなっており、その後は公共施設等の機能回復が行われたことから減少傾向にある。一方で、富岡、浪江両町では、27年度から事業数が増加傾向にあり、29年度に富岡町では14事業、浪江町では10事業と、共に最も多くなっている。また、帰還困難区域が町の広域にわたる大熊、双葉両町では、事業開始が他の受託市町村等より遅く、28年度からとなっているため、実施した事業数が他の市町村と比べて少なくなっている。

図表39 生活環境整備事業の受託市町村等別の年度別事業数(平成24年度から29年度まで)

(単位:事業)
受託市町村等 平成24年度 25年度 26年度 27年度 28年度 29年度 避難指示解除日
田村市 1 4 8 5 - - 18 平成26年41
南相馬市 15 14 6 12 9 5 61 28年7月12日
川俣町 - 1 - 2 2 5 10 29年3月31日
広野町 14 20 12 5 5 2 58 23年9月30日
楢葉町 9 29 15 13 14 4 84 27年95
富岡町 - 2 5 12 12 14 45 29年41
川内村 - 2 8 5 3 3 21 28年6月14日
大熊町 - - - - 2 2 4 31年4月10日
双葉町 - - - - 2 1 3
浪江町 - - 4 4 5 10 23 29年3月31日
葛尾村 - 5 7 15 13 11 51 28年6月12日
飯舘村 5 7 4 12 9 14 51 29年3月31日
双葉地方広域市町村圏組合 - 3 2 1 3 - 9
双葉地方水道企業団 - - 3 2 - 1 6
合計 44 87 74 88 79 72 444
  • 注(1) 避難指示の解除日は直近の解除日を記載している。
  • 注(2) 広野町の「避難指示解除日」欄は、緊急時避難準備区域の設定が解除された日付を記載している。

また、24年度から29年度までの間に実施した生活環境整備事業に係る委託費の推移について、避難指示等の解除との関係からみると、図表40のとおり、田村市では、26年度までに市内の避難指示が解除されるなど早い段階で公共施設等の機能回復に取り組めたことから、24年度から27年度まで実施した事業に係る委託費の総額は他の受託市町村等と比較して少なくなっており、また、28年度以降は事業が実施されていない。一方で、南相馬市及び川内村では、28年度に多くの住民の居住地域となっていた区域の避難指示が解除されており、解除後の生活に向けた環境を整備するために27年度に実施した事業に係る委託費が最も多くなっている。

このように、生活環境整備事業は避難指示・解除区域市町村の全てで実施され、避難指示の解除時期に応じて委託費の額が変動している。

図表40 生活環境整備事業の受託市町村等別の年度別委託費(平成24年度から29年度まで)

(単位:百万円)
受託市町村等 平成24年度 25年度 26年度 27年度 28年度 29年度 避難指示解除日
田村市 0 20 58 8 - - 88 平成26年41
南相馬市 38 101 25 256 159 205 787 28年7月12日
川俣町 - 12 - 8 38 103 163 29年3月31日
広野町 118 217 589 63 129 57 1,176 23年9月30日
楢葉町 165 150 140 584 640 31 1,712 27年95
富岡町 - 65 73 280 375 341 1,135 29年41
川内村 - 20 118 426 232 51 850 28年6月14日
大熊町 - - - - 151 169 320 31年4月10日
双葉町 - - - - 22 34 56
浪江町 - - 97 47 77 544 765 29年3月31日
葛尾村 - 31 314 464 1,018 802 2,630 28年6月12日
飯舘村 50 110 21 191 612 218 1,203 29年3月31日
双葉地方広域市町村 - 23 77 251 63 - 416
双葉地方水道企業団 - - 21 7 - 6 34
合計 373 753 1,537 2,590 3,522 2,566 11,343
  • 注(1) 避難指示の解除日は直近の解除日を記載している。
  • 注(2) 広野町の「避難指示解除日」欄は、緊急時避難準備区域の設定が解除された日付を記載している。
(イ) 帰還・再生事業の実施状況

帰還・再生事業について、受託市町村等別、委託対象事業別の実施状況をみると、図表41のとおり、事業数は計704事業となっていて、受託市町村等別では浪江町の122事業が最も多く、委託対象事業別にみると、「⑥その他」を除いては「③避難区域の荒廃抑制・保全対策」の174事業が最も多くなっている。25年度まで一部の地域が避難指示解除準備区域であった田村市では、医療・介護サービスが十分に提供されるまでの間、医師を派遣するなどして住民に対する医療・介護サービスの提供を行うなどの「①生活基盤施設・サービスの代替・補完」の委託対象事業に係る事業を10事業(当該受託市町村等が実施した全事業数に対する割合50.0%)実施していた。また、浪江町では、避難指示区域へ一時帰宅する住民の用に供するための仮設トイレの設置や一時帰宅する住民への交通手段の提供を目的とした公共バスの運行等を行うなどの「④住民の一時帰宅支援」の委託対象事業に係る事業を38事業(同31.1%)実施している。

また、29年度末現在で帰還困難区域が町の広域にわたる大熊町では、避難生活の長期化により地域コミュニティが希薄となっており、防犯体制に不安を抱いている町民も少なくないことから、避難指示区域内の防犯・防災のための定期的なパトロールを警備会社に委託して行うなどの「③避難区域の荒廃抑制・保全対策」の委託対象事業に係る事業を23事業(同41.8%)実施している。

図表41 帰還・再生事業の受託市町村等別、委託対象事業別の実施状況(平成24年度から29年度までの累計)

(単位:事業)
受託市町村等 委託対象事業 避難指示解除日
①生活基盤施設・サービスの代替・補完 ②地域コミュニティ機能の維持・確保 ③避難区域の荒廃抑制・保全対策 ④住民の一時帰宅支援 ⑤横断的事項 ⑥その他
田村市 10 7 - - - 3 20 平成26年41
南相馬市 2 23 19 12 - 22 78 28年7月12日
川俣町 - 7 9 10 - 4 30 29年3月31日
広野町 2 6 6 - - 4 18 23年9月30日
楢葉町 4 14 12 3 7 18 58 27年95
富岡町 3 29 27 31 4 16 110 29年41
川内村 16 4 10 1 - 9 40 28年6月14日
大熊町 - 10 23 10 - 12 55 31年4月10日
双葉町 - 14 10 18 - 9 51
浪江町 5 13 29 38 - 37 122 29年3月31日
葛尾村 3 5 15 9 1 12 45 28年6月12日
飯舘村 - 10 13 14 - 22 59 29年3月31日
双葉地方広域市町村圏組合 1 5 1 3 - 8 18
双葉地方水道企業団 - - - - - - -
合計 46 147 174 149 12 176 704
  • 注(1) 「⑥その他」は住民の帰還等に資する事業であり、①から⑤には分類することができない事業及び平成25年度に新交付金の交付対象項目である帰還環境整備に統合された事業で25年度以前に実施された事業である。
  • 注(2) 避難指示の解除日は直近の解除日を記載している。
  • 注(3) 広野町の「避難指示解除日」欄は、緊急時避難準備区域の設定が解除された日付を記載している。

そして、24年度から29年度までの間に実施した帰還・再生事業の事業数の推移について、避難指示等の解除との関係からみると、図表42のとおり、田村市及び広野町では、26年度までに市内の避難指示が解除されるなど早い段階で帰還への環境が整えられたことから、実施した事業数は他の受託市町村等と比べて少なくなっている。また、27年度又は28年度に町村内の避難指示が解除された楢葉町及び川内村では、25年度に実施した事業数が多くなっていて、それ以降は減少傾向にある。

図表42 帰還・再生事業の受託市町村等別の年度別事業数(平成24年度から29年度まで)

(単位:事業)
受託市町村等 平成24年度 25年度 26年度 27年度 28年度 29年度 避難指示解除日
田村市 6 5 4 4 1 20 平成26年41
南相馬市 20 18 17 13 10 78 28年7月12日
川俣町 6 8 5 6 5 30 29年3月31日
広野町 6 4 3 2 3 18 23年9月30日
楢葉町 18 12 11 9 8 58 27年95
富岡町 4 23 22 23 22 16 110 29年41
川内村 15 11 6 4 4 40 28年6月14日
大熊町 13 8 9 13 12 55 31年4月10日
双葉町 4 10 11 12 14 51
浪江町 6 42 22 19 18 15 122 29年3月31日
葛尾村 9 7 9 12 8 45 28年6月12日
飯舘村 16 9 10 10 14 59 29年3月31日
双葉地方広域市町村圏組合 3 3 4 3 5 18
双葉地方水道企業団
合計 10 181 139 131 128 115 704
  • 注(1) 避難指示の解除日は直近の解除日を記載している。
  • 注(2) 広野町の「避難指示解除日」欄は、緊急時避難準備区域の設定が解除された日付を記載している。

また、24年度から29年度までの間に実施した帰還・再生事業に係る委託費についてみると、図表43のとおり、浪江、富岡両町及び南相馬市で委託費がそれぞれ計62億余円、計61億余円、計36億余円となっていて、帰還・再生事業に係る委託費の総額に占める割合は、それぞれ23.2%、22.9%、13.5%となっている。

図表43 帰還・再生事業の受託市町村等別の年度別委託費(平成24年度から29年度まで)

(単位:百万円)
受託市町村等 平成24年度 25年度 26年度 27年度 28年度 29年度 避難指示解除日
田村市 28 23 14 14 3 84 平成26年41
南相馬市 881 738 687 776 552 3,636 28年7月12日
川俣町 13 102 94 154 133 496 29年3月31日
広野町 136 98 36 54 60 385 23年9月30日
楢葉町 265 335 301 339 286 1,528 27年95
富岡町 16 921 1,665 1,566 1,244 754 6,169 29年41
川内村 494 222 122 68 54 962 28年6月14日
大熊町 241 290 292 555 598 1,977 31年4月10日
双葉町 132 556 467 600 509 2,266
浪江町 24 583 939 1,617 1,625 1,439 6,229 29年3月31日
葛尾村 60 146 86 258 185 737 28年6月12日
飯舘村 202 222 276 510 722 1,934 29年3月31日
双葉地方広域市町村圏組合 29 69 87 89 139 416
双葉地方水道企業団
合計 41 3,991 5,412 5,649 6,292 5,438 26,826
  • 注(1) 避難指示の解除日は直近の解除日を記載している。
  • 注(2) 広野町の「避難指示解除日」欄は、緊急時避難準備区域の設定が解除された日付を記載している。

そして、受託市町村等がそれぞれ実施している事業の内容をみると、次のとおりとなっている(図表44参照。各事業の概要は別表4参照)。

浪江、富岡両町については、「③避難区域の荒廃抑制・保全対策」に係る委託費が、浪江町への帰還・再生事業に係る委託費総額62億余円のうち39億余円(当該受託市町村等への本件委託費総額に占める割合63.6%)、富岡町への帰還・再生事業に係る委託費総額61億余円のうち35億余円(同58.0%)に上り、それぞれ最も多くなっている。一方、南相馬市では、住民の安全確認・安心確保に係る事業を実施する「⑥その他」に係る委託費が、帰還・再生事業に係る同市への委託費総額36億余円のうち20億余円(同56.8%)を占め、最も多くなっている。

図表44 帰還・再生事業の受託市町村等別、委託対象事業別の委託費(平成24年度から29年度までの累計)

(単位:百万円)
受託市町村等 委託対象事業 避難指示解除日
①生活基盤施設・サービスの代替・補完 ②地域コミュニティ機能の維持・確保 ③避難区域の荒廃抑制・保全対策 ④住民の一時帰宅支援 ⑤横断的事項 ⑥その他
田村市 52 21 - - - 11 84 平成26年41
南相馬市 7 300 1,127 131 - 2,069 3,636 28年7月12日
川俣町 - 13 296 148 - 38 496 29年3月31日
広野町 106 53 177 - - 48 385 23年9月30日
楢葉町 67 267 617 89 118 368 1,528 27年95
富岡町 123 879 3,578 696 206 684 6,169 29年41
川内村 231 16 273 4 - 437 962 28年6月14日
大熊町 - 542 1,023 97 - 313 1,977 31年4月10日
双葉町 - 887 1,070 154 - 154 2,266
浪江町 89 877 3,962 1,099 - 200 6,229 29年3月31日
葛尾村 25 81 414 80 1 134 737 28年6月12日
飯舘村 - 224 964 182 - 562 1,934 29年3月31日
双葉地方広域市町村圏組合 9 159 59 39 - 148 416
双葉地方水道企業団 - - - - - - -
合計 712 4,325 13,564 2,725 326 5,170 26,826
  • 注(1) 「⑥その他」は住民の帰還等に資する事業であり、①から⑤には分類することができない事業及び平成25年度に新交付金の交付対象項目である帰還環境整備に統合された事業で25年度以前に実施された事業である。
  • 注(2) 避難指示の解除日は直近の解除日を記載している。
  • 注(3) 広野町の「避難指示解除日」欄は、緊急時避難準備区域の設定が解除された日付を記載している。

委託費が最も多くなっている「③避難区域の荒廃抑制・保全対策」の委託対象事業についてみると、委託費総額135億余円のうち57億余円が、避難解除等区域等内の防犯・防災のための定期的なパトロールを実施する「防犯・防災パトロール委託事業」となっていて、10市町村が実施している。このほかの事業としては、帰還困難区域等において立入りが制限されている間、火災等の危険を低減し避難解除等区域等を保全するために必要な限度において、防災・防犯に資する事業(除草作業、家屋の解体・撤去等)を実施する「区域の防災・防犯対策委託事業」があり、受託市町村等は11市町村等で、委託費総額は52億余円となっている。受託市町村等のうち、帰還・再生事業に係る委託費が最も多くなっている浪江町では、委託費総額39億余円のうち21億余円が「防犯・防災パトロール委託事業」となっている。

委託対象事業別にみた委託費の額が「⑥その他」を除き2番目に大きい「②地域コミュニティ機能の維持・確保」についてみると、委託費総額43億余円のうち9億余円が「地域コミュニティ維持のための交流イベント等の開催委託事業」となっていて、13市町村等が実施している。このほかの委託費33億余円は、避難元市町村がモバイル端末等ICTを活用した当該市町村の情報提供を実施する「ICTを活用した情報提供委託事業」に係るものであり、9市町村等が実施している。特に、「②地域コミュニティ機能の維持・確保」の委託対象事業に係る委託費が最も多くなっている双葉町についてみると、委託費総額8億余円のほとんどが「ICTを活用した情報提供委託事業」に係るものとなっている。

このように、帰還・再生事業は13市町村等において実施されていて、避難解除等区域等の荒廃抑制等を行いつつ、地域コミュニティの維持等を図っている状況が見受けられた。

ウ 帰還者の状況等

国は、避難指示が解除された区域への避難者の帰還支援等のために、避難者の状況を踏まえるなどして、福島再生加速化交付金事業等を実施してきた。また、国は、福島の復興及び再生に向けて総力を挙げて取り組んでいるところであり、加速化交付金を始めとする様々な支援制度を設けて、長期避難者に対する安定した生活環境を確保したり、避難解除等区域等における生活再開に必要な環境整備を行ったりするなどして福島の全域及び避難解除等区域等における復興及び再生を推進している。

そこで、避難指示・解除区域市町村における帰還者の状況等をみたところ、次のとおりとなっていた。

(ア) 国による避難者数の把握と公表

東日本大震災による避難者数の把握等の調査については、被災直後には、被災地からの避難者を受け入れる市町村ごとに、避難者の避難場所別人数調査を毎週実施するよう、消防庁災害対策本部から各都道府県の消防防災担当者宛てに依頼していた。しかし、23年5月に、今後の避難所の解消を図る上では、各避難場所で生活している人数を直接把握する必要があるとして、内閣府被災者生活支援チームが中心となって避難者の避難場所別人数調査を隔週で実施することとする事務連絡を、内閣府被災者生活支援チーム及び消防庁災害対策本部の連名で各都道府県の防災担当部局宛てに発している。この事務連絡の中で、調査項目については、それまでの項目に加えて、避難元、現在の避難場所等を把握することとしている。

その後、上記の調査(以下「避難者数調査」という。)については、東日本大震災復興対策本部事務局が実施し、公表していたが、24年2月に復興庁が設置されると、以降、避難者数調査は同庁が実施することになり、同庁は、避難者の数を「全国の避難者等の数」として所在都道府県別、所在施設別に、同庁のホームページ上で公表している。

同庁は、これまでの各都道府県からの問合せに対する回答を基に避難者数調査に関する留意事項を取りまとめ、26年8月4日付けで各都道府県の避難者数調査担当者宛てに文書を発している。この文書の中で、避難者とは、東日本大震災をきっかけに住居の移転を行い、その後、前の住居に戻る意思を有する者とされており、福島第一原発の事故による自主避難者も含み、戻る意思があれば避難者として整理することとするが、意思の把握が困難な場合、住居購入等をもって避難終了と整理しても可とすることとしている。そして、住民票を移したことのみをもって避難終了とは整理しないこととするが、避難終了の意思を確認した場合は、避難終了として整理することとしている。

このように、復興庁は、各地方公共団体の協力を得て、避難者の所在都道府県別、所在施設別の数を把握して公表している。このうち所在施設別の避難者数については、災害救助法(昭和22年法律第118号)に基づき供与される応急仮設住宅等及びそれ以外の賃貸住宅等に所在する避難者、親族・知人宅等に所在する避難者並びに病院等に所在する避難者の数を把握して公表している。

(イ) 福島県による避難者数の把握と公表

福島県における避難者の状況は、福島県が同県のホームページ上で公表している「平成23年東北地方太平洋沖地震による被害状況即報」(以下「福島県被害状況即報」という。)の第1752報(平成31年4月5日8時現在)によると、県内への避難者数は避難指示・解除区域市町村からの7,235人となっており、所在施設別では、特例の借上げ住宅(注15)が4,046人(全体の55.9%)と最も多く、次いで親戚・知人宅等が2,451人(同33.8%)となっている。なお、同県は、自ら住宅を取得した者や復興公営住宅等に入居した者は避難者数に含めていないとしている。

また、福島県から県外への避難者数については、復興庁による避難者数調査の「全国の避難者等の数」のうち福島県分を抽出した避難者数を把握して、福島県被害状況即報等で公表している。そして、46都道府県への避難者数は、32,476人となっており、地方別では、関東地方が18,008人(全体の55.4%)と最も多く、次いで東北地方の5,505人(同16.9%)となっていて、都道府県別では、東京都が3,736人(同11.5%)と最も多く、次いで茨城県が3,282人(同10.1%)、埼玉県が3,135人(同9.6%)となっている。

(注15)
特例の借上げ住宅  自ら県内の民間賃貸住宅に入居した避難住民の賃貸借契約を特例措置として県との契約に切り替え、県が借り上げたこととした住宅
(ウ) 避難指示・解除区域市町村の居住者及び避難者の状況

避難指示・解除区域市町村から提出を受けた調書によると、避難指示・解除区域市町村における避難指示区域等の住民登録数の合計は、図表45のとおり、震災前は157,964人であったが、震災後8年が経過した31年3月31日現在では132,499人となっており、その減少率は16.1%となっている。これは、福島県が公表している「福島県現住人口調査月報」から算出した福島県全体の減少率の8.6%を上回るものとなっている。

図表45 避難指示・解除区域市町村における住民登録数

(単位:人、%)
項目 田村市 南相馬市 川俣町 広野町 楢葉町 富岡町 川内村 大熊町 双葉町 浪江町 葛尾村 飯舘村 12市町村計 福島県
人口 平成23年3月11日 A 4,497 71,561 1,252 5,490 8,011 15,960 3,038 11,505 7,140 21,434 1,567 6,509 157,964 2,024,401
31年3月31日
B 3,535 60,197 812 4,735 6,908 12,913 2,617 10,341 5,980 17,434 1,408 5,619 132,499 1,848,516
減少率
(B-A)÷A 21.3 15.8 35.1 13.7 13.7 19.0 13.8 10.1 16.2 18.6 10.1 13.6 16.1 8.6
  • 注(1) 12市町村の人口は住民登録数による。県の人口は平成23年3月1日現在及び31年4月1日現在の「福島県現住人口調査月報」の推計人口による。
  • 注(2) 「31年3月31日」の欄については、川俣町、富岡町、葛尾村及び飯舘村は平成31年4月1日現在の数値となっている。
  • 注(3) 南相馬市は避難指示区域等以外を含む市全体の数値となっている。

図表45 避難指示・解除区域市町村における住民登録数 画像

上記の調書によると、避難指示・解除区域市町村のうち、23年3月11日現在の居住者数を把握できなかった3町を除く9市町村における住民登録数に対する居住者数の割合(以下「居住率」という。)は、図表46のとおり、震災前の居住率は99.1%であったが、31年3月31日現在の居住率は52.8%となっている。

図表46 避難指示・解除区域市町村における居住率の状況等

(単位:人、%)
項目 田村市 南相馬市 川俣町 広野町 楢葉町 富岡町 川内村 大熊町 双葉町 浪江町 葛尾村 飯舘村 12市町村計 9市町村計
住民登録数 平成23年3月11日 A 4,497 71,561 1,252 5,490 8,011 15,960 3,038 11,505 7,140 21,434 1,567 6,509   143,211
31年3月31日
B 3,535 60,197 812 4,735 6,908 12,913 2,617 10,341 5,980 17,434 1,408 5,619 132,499 120,044
居住者数
23年3月11日
C 4,497 71,561 データなし データなし データなし 15,959 3,038 11,570 6,891 20,854 1,524 6,132   142,026
31年3月31日
D 3,237 54,505 368 4,117 3,678 922 2,117 966 390 1,258 71,558 63,395
居住率
23年3月11日
E=C÷A 100.0 100.0 データなし データなし データなし 99.9 100.0 100.5 96.5 97.2 97.2 94.2   99.1
31年3月31日
F=D÷B 91.5 90.5 45.3 86.9 53.2 7.1 80.8 0.0 0.0 5.5 27.6 22.3   52.8
減少率
E-F 8.5 9.5 データなし データなし データなし 92.8 19.2 100.5 96.5 91.7 69.6 71.9   46.3
住民登録数と居住者数との差
31年3月31日
B-D 298 5,692 444 618 3,230 11,991 500 10,341 5,980 16,468 1,018 4,361 60,941  
  • 注(1) 全ての「31年3月31日」の欄については、川俣町、富岡町、葛尾村及び飯舘村は平成31年4月1日現在の数値となっている。
  • 注(2) 南相馬市は避難指示区域等以外を含む市全体の数値となっている。

 画像

また、避難指示・解除区域市町村からの避難者数は、避難指示・解除区域市町村のうち8市町村が定期的に各市町村のホームページ上で公表している。また、川内村は、30年9月まで村のホームページに公表していた。公表されている資料をみると、図表47のとおり、31年3月31日現在(川内村は30年9月1日現在、川俣町、富岡町、大熊町、葛尾村及び飯舘村は31年4月1日現在)の12市町村の避難者数(避難者数を公表していないものの住民登録数及び居住者数を公表している南相馬市、広野町及び楢葉町については、住民登録数から居住者数を差し引いた人数)は65,222人となっている。また、このうち県内への避難者は、データがない3市町村を除いた9市町村で計41,588人となっていた。

図表47 避難指示・解除区域市町村における避難者数

(単位:人)
項目 田村市 南相馬市 川俣町 広野町 楢葉町 富岡町 川内村 大熊町 双葉町 浪江町 葛尾村 飯舘村 12市町村計 9市町村計
避難者数 平成31年3月31日 298 5,692 745 618 3,230 11,991 512 10,342 5,980 20,449 1,007 4,358 65,222  
  うち県内への避難者 243 データなし 553 データなし データなし 9,474 377 7,850 3,824 14,231 936 4,100   41,588
  • 注(1) 「平成31年3月31日」の欄は、川俣町、富岡町、大熊町、葛尾村及び飯舘村は31年4月1日現在、川内村は30年9月1日現在の数値となっている。
  • 注(2) 南相馬市、広野町及び楢葉町は、住民登録数と居住者数との差を避難者数としている。

一方、加速化交付金のうち、避難者の避難先における支援のための事業であって、執行額が多額に上る長期避難者生活拠点形成の災害公営住宅整備事業等は、復興庁によると、住民意向調査の結果、復興公営住宅への入居状況等を踏まえるなどして整備するとしている。

そこで、避難指示・解除区域市町村からの避難者数と、復興公営住宅のうち福島県が事業実施主体となって整備し、避難指示・解除区域市町村に配分したもの又は避難指示・解除区域市町村自らが事業実施主体となって整備したものの戸数について29年度末現在の状況をみたところ、図表48のとおり、県内避難者43,222人に対して福島県が事業実施主体となって整備した復興公営住宅は3,552戸、市町村が事業実施主体となって整備した復興公営住宅は378戸、合計3,930戸となっており、避難指示・解除区域市町村の9市町村のうち避難者数が最も多い浪江町では整備済戸数が最も多く、避難者数が少なくなるに従い、整備済戸数も少なくなり、避難者数が最も少ない川内村では整備済戸数が最も少なくなっていた。また、復興公営住宅一戸あたりの整備に要した加速化交付金の額(整備中の住宅に対する執行額を含み、避難者支援事業等の執行額は含まない。)は、福島県では3216万円、市町村では1557万円から3084万円までとなっていて、29年度末現在で整備済みの復興公営住宅3,930戸に係る加速化交付金の執行額は、計1229億余円となっていた。このうち福島県が事業実施主体となって整備した復興公営住宅は3,552戸、執行額1142億余円、市町村が事業実施主体となって整備した復興公営住宅は378戸、執行額87億余円となっていた。そして、市町村ごとの加速化交付金の執行額は6億余円から586億余円となっていた。

このように、29年度末現在、おおむね県内への避難者数に応じて復興公営住宅が配分又は整備され、加速化交付金が執行されていた。

図表48 避難指示・解除区域市町村における避難者数及び復興公営住宅の整備状況(平成29年度末現在)

(単位:千円、戸)
福島県が事業実施主体となって整備した復興公営住宅の状況 金額及び戸数
執行額 A 141,179,114
整備済戸数 B 4,329
整備中の戸数 C 60
一戸当たりの整備に要した執行額 D=A÷(B+C) 32,166
(単位:人、戸、千円)
項目   田村市 川俣町 富岡町 川内村 大熊町 双葉町 浪江町 葛尾村 飯舘村 9市町村計
避難者数 平成30年3月31日   333 963 12,606 512 10,471 6,042 20,620 1,134 5,063 57,744
  県内への避難者数   279 764 9,867 377 7,931 3,830 14,343 1,054 4,777 43,222
整備済戸数 30年3月31日   - 52 853 25 520 345 1,837 106 192 3,930
  福島県が事業実施主体 E - 12 794 - 515 345 1,717 - 169 3,552
市町村が事業実施主体 F - 40 59 25 5 - 120 106 23 378
市町村が事業実施主体となって整備した復興公営住宅の状況 執行額 G - 623,078 1,601,807 644,207 データなし - データなし 1,756,587 526,325 8,700,218
一戸あたりの整備に要した執行額 H=G÷F - 15,576 27,149 25,768 30,848 - 3084又は2603 16,571 22,883 23,016
加速化交付金   - 1,009,077 27,142,070 644,207 16,720,032 11,097,469 58,623,984 1,756,587 5,962,476 122,955,906
  福島県が事業実施主体 D×E - 385,998 25,540,263 - 16,565,788 11,097,469 55,230,015 - 5,436,151 114,255,688
市町村が事業実施主体 H×F - 623,078 1,601,807 644,207 154,244 - 3,392 1,756,587 526,325 8,700,218
  • 注(1) 避難者数の「平成30年3月31日」の欄は、川俣町、富岡町、大熊町、葛尾村及び飯舘村は30年4月1日現在、川内村は30年9月1日現在の数値となっている。
  • 注(2) 福島県が事業実施主体として整備した復興公営住宅のうち、複数の避難元市町村に配分された655戸は除いている。
  • 注(3) 本宮市が大熊町及び浪江町の住民を対象に整備した復興公営住宅の執行額は、町村別の内訳が不明なためデータなしとしている。
  • 注(4) 浪江町の一戸当たりの整備に要した執行額は、本宮市が事業実施主体となって整備した56戸が3084万円/戸、桑折町が整備した64戸が2603万円/戸となっている。
  • 注(5) 図表中丸数字は各項目の数が多い順に付したものである。
(エ) 帰還者の状況

前記のとおり、国は福島第一原発の事故発生後に避難指示区域等を設定し、住民は避難を余儀なくされた。その後、図表49のとおり、避難指示区域の見直しが進み、31年3月31日時点において避難指示が最も早く解除された田村市で4年11か月、最も遅く解除された富岡町で1年11か月が経過している。

図表49 避難指示区域等の状況(平成31年4月10日現在)と31年3月31日現在における避難指示等解除後の経過年月等

図表49 避難指示区域等の状況(平成31年4月10日現在)と31年3月31日現在における避難指示等解除後の経過年月等 画像

そこで、避難指示区域等内の避難者について、31年3月31日現在における住民の帰還の状況を、帰還困難区域内を除く住民登録数と居住者数について調書の提出を受けるなどして確認したところ、町全域が避難指示区域に設定されている2町(注16)を除く10市町村(注17)のうち、避難指示により避難して避難指示解除後に帰還した者(以下「帰還者」という。)の人数を把握しているのは、6町村(注18)であった。

上記の6町村における帰還者数と避難指示等解除区域の避難者数(注19)の合計人数に対する帰還者数の割合(以下「帰還率」という。)をみたところ、直近の避難指示解除が29年4月1日であり、避難指示解除後少なくとも2年を経過した時点において、図表50のとおり6町村では49.2%となっていた。

(注16)
2町  双葉郡大熊、双葉両町
(注17)
10市町村  田村、南相馬両市、伊達郡川俣、双葉郡広野、楢葉、富岡、浪江各町、双葉郡川内、葛尾、相馬郡飯舘各村
(注18)
6町村  伊達郡川俣、双葉郡広野、楢葉各町、双葉郡川内、葛尾、相馬郡飯舘各村
(注19)
避難指示等解除区域の避難者数  避難者のうち、平成31年3月31日現在で避難指示区域に設定されている区域に住民登録している人数を除いた避難者数

図表50 6町村における避難及び帰還の状況(平成31年3月末現在)

(単位:人、%、事業、百万円)
項目 川俣町 広野町 楢葉町 川内村 葛尾村 飯舘村
避難及び帰還の状況 住民登録数 平成23年3月11日   1,252 5,490 8,011 3,038 1,567 6,509 25,867
31年3月31日   812 4,735 6,908 2,617 1,408 5,619 22,099
  帰還困難区域 A 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし 109 245 354
居住者数 23年3月11日   データなし データなし データなし 3,038 1,524 6,132 10,694
31年3月31日   368 4,117 3,678 2,117 390 1,258 11,928
  帰還者数 B 353 3,316 2,822 1,691 318 1,119 9,619
避難者数 31年3月31日 C 547 618 3,230 512 1,007 4,358 10,272
避難指示等解除区域の避難者数 31年3月31日 D=C-A 547 618 3,230 512 898 4,113 9,918
帰還者数と避難指示等解除区域の避難者数の合計 31年3月31日 E=B+D 900 3,934 6,052 2,203 1,216 5,232 19,537
帰還率 31年3月31日 B÷E 39.2 84.2 46.6 76.7 26.1 21.3 49.2
24年度から29年度までの環境整備等委託事業の実施状況 委託対象事業数 40 76 142 61 96 110 525
委託費総額 660 1,561 3,241 1,812 3,368 3,138 13,782
避難指示等解除日 29年3月31日 23年9月30日 27年9月5日 28年6月14日 28年6月12日 29年3月31日  
  • 注(1) 「31年3月31日」の欄は、川俣町、葛尾村及び飯舘村は平成31年4月1日現在、川内村は避難者数の欄だけ30年9月1日現在の数値となっている。
  • 注(2) 広野町及び楢葉町は、住民登録数と居住者数との差を避難者数としている。
  • 注(3) 避難指示の解除日は直近の解除日を記載している。
  • 注(4) 広野町の「避難指示等解除日」欄は、緊急時避難準備区域の設定が解除された日付を記載している。
  • 注(5) 川俣町の避難者数は、避難指示が解除された区域からの避難者数としている。

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一方、6町村は、避難指示・解除区域市町村における住民の帰還の加速等を目的として、避難元における生活基盤施設・サービスの代替・補完等を行う環境整備等委託事業を実施している。

そこで、上記の6町村における帰還率と環境整備等委託事業の執行状況等をみたところ、環境整備等委託事業の委託費総額が最も多い葛尾村では、帰還率26.1%、委託対象事業数96件、委託費総額33億余円となっていた。また、帰還率が84.2%と最も高い広野町では、委託対象事業数76件、委託費総額15億余円となっていた。さらに、環境整備等委託事業の委託対象事業数及び委託費総額が最も少ない川俣町では、帰還率39.2%、委託対象事業数40件、委託費総額6億余円となっていた。

このように、町村ごとに事業数及び委託費総額にばらつきがあるものの、各町村において、避難者の早期帰還に向けた環境整備等委託事業が実施されていた。

また、住民が避難元市町村に戻らない理由について、住民意向調査をみると、図表51のとおり、当初は、「原子力発電所の安全性に不安があるから」や「放射線量に対する不安があるから」との回答が上位となっているが、調査の年度が進むにつれて、「医療環境に不安があるから」「避難先の方が生活利便性が高いから」や「既に生活基盤ができているから」が上位となっている。

図表51 住民意向調査の結果(平成24年度から30年度まで)

(単位:市町村)
  平成
24年度
25年度 26年度 27年度 28年度 29年度 30年度
住民意向調査実施市町村数 8 9 9 9 9 7 5
避難元市町村に戻らない理由の第1位として挙げられている主たるもの 原子力発電所の安全性に不安があるから
又は
放射線量に対する不安があるから など
7 7 3 2 2 0 0
医療環境に不安があるから など 0 0 4 4 4 2 1
避難先の方が生活利便性が高いから
又は
既に生活基盤ができているから など
0 1 2 2 2 5 4
  • 注(1) 第1位の理由として上記①から③以外のものを挙げている市町村があるため、集計しても住民意向調査実施市町村数に満たないことがある。
  • 注(2) 一市町村において第1位の理由が二つある場合は、それぞれの理由欄に一市町村として計上しているため重複がある。
市町村名 平成24年度 25年度 26年度 27年度 28年度 29年度 30年度
田村市 ①放射線量に対する不安があるから ①原子力発電所の安全性に不安があるから ①放射線が不安だから ①原子力発電所の廃炉、管理等に不安があるから
南相馬市 ①原子力発電所の安全性に不安があるから ①原子力発電所の安全性(事故収束や廃炉の状況)に不安があるから
川俣町 ③避難先の方が生活利便性が高いから ③避難先の方が生活利便性が高いから ③避難先の方が生活利便性が高いから ③避難先の方が生活利便性が高いから ③避難先の方が生活利便性が高いから ③避難先の方が生活利便性が高いから
楢葉町 ①放射線量に対する不安があるから ①原子力発電所の安全性に不安があるから ①原子力発電所の安全性に不安があるから ②医療・介護・福祉施設の再開が十分でないから ②医療施設が十分でないから ②医療施設が十分でないから
富岡町 ①放射線量に対する不安があるから ①放射線量が低下せず不安だから ②医療環境に不安があるから ②医療環境に不安があるから ②医療環境に不安があるから ③既に生活基盤ができているから ③既に生活基盤ができているから
川内村 ②医療環境に不安があるから ③避難先の方が生活利便性が高いから 川内村外への移動交通が不便だから ②医療環境に不安があるから
大熊町 ①放射線量に対する不安があるから ①放射線量が低下せず不安だから ②医療環境に不安があるから ②医療環境に不安があるから ③既に生活基盤ができているから
双葉町 帰還するまで時間がかかると思うから ①原子力発電所の安全性に不安があるから 家が汚損・劣化し、住める状況ではないから 家が汚損・劣化し、住める状況ではないから 家が汚損・劣化し、住める状況にないから ③避難先で自宅を購入又は建築し、将来も継続的に居住する予定だから ③避難先で自宅を購入又は建築し、将来も継続的に居住する予定だから
浪江町 ①放射線量に対する不安があるから ①原子力発電所の安全性に不安があるから ②医療環境に不安があるから ②医療環境に不安があるから ①原子力発電所の安全性に不安があるから ②医療環境に不安があるから ②医療環境に不安があるから
葛尾村 ①放射線量が低下せず不安だから 水道水等の生活用水の安全性に不安があるから ②医療環境に不安があるから ③避難先に住居を構えたから ③避難先の方が生活利便性が高いから
飯舘村 ①放射線量に対する不安があるから ①放射線量が低下せず不安だから ①除染後の放射線量の低下が不十分だから ③避難先の方が生活利便性が高いから ③避難先の方が生活利便性が高いから
  • 注(1) 広野町は住民意向調査を実施していない。
  • 注(2) 第1位の理由が二つある場合は、二つの理由を並記している。

国は、避難者の帰還支援や地方創生のモデルとなるような復興を実現していくこととしていることから、福島再生加速化交付金事業等も含めた復興事業の執行を受けての帰還の状況の把握はもとより、居住率等による居住状況及び人口流入、流出状況を確認するなどして、福島再生加速化交付金事業等について、事業実施の検証や今後の事業の在り方を検討する必要がある。