本院は、検査の過程において会計検査院法第34条又は第36条の規定による意見表示又は処置要求を必要とする事態として指摘したところ、その指摘を契機として省庁及び団体(以下「省庁等」という。)において改善の処置を講じたものを、検査報告に本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項(以下「処置済事項」という。)として掲記している。
一方、本院は、毎年次策定している会計検査の基本方針にのっとり、検査の結果が予算の編成・執行や事業運営等に的確に反映され実効あるものとなるように、その後の是正改善等の状況を継続して検査することとしている。検査報告に掲記した処置済事項についても、省庁等が制度を改めるなどの改善の処置が履行されること(改善の処置に基づき、その後の会計経理等が適切に行われることをいう。以下同じ。)により初めて実効あるものとなることから、当該改善の処置が履行されるまでその履行状況を継続して検査している。
本院は、令和2年度決算検査報告に、平成26年度から令和元年度までの検査報告に掲記した処置済事項のうち、令和元年度決算検査報告において改善の処置の履行状況を継続して検査していくこととしていたもの49件から、3年次(2年10月から3年9月まで)は履行状況の検査の対象となる会計経理等の実績がなかったことなどから検査を実施しなかったもの(以下「検査の対象となる会計経理等の実績がなかったもの」という。)9件を除いた40件についての検査の結果を掲記した。
その内訳は、改善の処置が履行されていたもの(以下「履行済」という。)が28件、検査した範囲では改善の処置が履行されていたもの(以下「検査分履行済」という。)が11件、改善の処置が一部履行されていなかったもの(以下「一部不履行」という。)が1件となっており、改善の処置が全く履行されていなかったもの(以下「不履行」という。)は0件となっていた。
そして、上記の検査分履行済11件、一部不履行1件及び3年次は検査の対象となる会計経理等の実績がなかったもの9件の計21件並びに令和2年度決算検査報告に新たに掲記した処置済事項20件の合計41件について、改善の処置の履行状況を継続して検査していくこととした。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、合規性等の観点から、改善の処置が履行されているかなどに着眼して、上記41件のうち、検査報告掲記時点で既に履行済であったため検査の必要がなかったもの(以下「検査の必要がなかったもの」という。)1件及び今年次は検査の対象となる会計経理等の実績がなかったもの6件を除いた34件について、3年8月から4年7月までの間に、関係する19省庁等のうち、18省庁等において会計実地検査を行うとともに、残りの1団体については、報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。
(検査の結果)
上記の34件について改善の処置の履行状況を検査したところ、履行済が28件、検査分履行済が5件、一部不履行が1件、不履行が0件となっていた。これを、令和2年度決算検査報告に掲記した処置済事項に係る改善の処置の履行状況と、平成26年度から令和元年度までの検査報告に掲記した処置済事項に係る改善の処置の履行状況とに分けて記述すると、次のとおりである。
令和2年度決算検査報告に掲記した処置済事項20件のうち、検査の必要がなかったもの1件、検査の対象となる会計経理等の実績がなかったもの2件を除いた17件について検査したところ、履行済が15件、検査分履行済が2件となっていた。
平成26年度から令和元年度までの検査報告に掲記した処置済事項のうち、改善の処置の履行状況を継続して検査していくこととしていたもの21件のうち、検査の対象となる会計経理等の実績がなかったもの4件を除いた17件について検査したところ、履行済が13件、検査分履行済が3件、一部不履行が1件となっていた。
表1 検査報告年度別の改善の処置の履行状況
(単位:件)検査報告 年度 |
改善の処置の履行状況を継続して検査していくこととした処置済事項 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
検査の必要がなかったもの | 検査の対象となる会計経理等の実績がなかったもの | 検査対象の処置済事項 | ||||||
改善の処置の履行状況 | ||||||||
(A) | (B) | (C) | (A)-(B)-(C) | 履行済 | 検査分履行済 | 一部不履行 | 不履行 | |
平成 26年度 |
1 | ― | ― | 1 | 1 | ― | ― | ― |
27年度 | 3 | ― | ― | 3 | 3 | ― | ― | ― |
28年度 | 3 | ― | 1 | 2 | 2 | ― | ― | ― |
29年度 | 3 | ― | 1 | 2 | 1 | 1 | ― | ― |
30年度 | 5 | ― | ― | 5 | 2 | 2 | 1 | ― |
令和 元年度 |
6 | ― | 2 | 4 | 4 | ― | ― | ― |
計 | 21 | ― | 4 | 17 | 13 | 3 | 1 | ― |
2年度 | 20 | 1 | 2 | 17 | 15 | 2 | ― | ― |
合計 | 41 | 1 | 6 | 34 | 28 | 5 | 1 | ― |
表2 省庁等別の改善の処置の履行状況
(単位:件)省庁等名 | 検査対象の処置済事項 | 改善の処置の履行状況 | |||
---|---|---|---|---|---|
履行済 | 検査分履行済 | 一部不履行 | 不履行 | ||
内閣府(警察庁) | 4 | 4 | ― | ― | ― |
総務省 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
法務省 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
外務省 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
財務省 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
文部科学省 | 1 | ― | ― | 1 | ― |
厚生労働省 | 3 | 3 | ― | ― | ― |
農林水産省 | 4 | 3 | 1 | ― | ― |
国土交通省 | 7 | 4 | 3 | ― | ― |
環境省 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
防衛省 | 2 | 1 | 1 | ― | ― |
独立行政法人海技教育機構 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
国立研究開発法人理化学研究所 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
独立行政法人住宅金融支援機構 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
日本放送協会 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
東日本電信電話株式会社 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
西日本電信電話株式会社 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
計 | 34 | 28 | 5 | 1 | ― |
(注) 省庁等名は、令和4年7月31日現在の名称としている。
検査の結果、一部不履行1件については、本章中に不当事項として掲記しており、この概要を示すと表3のとおりである。
表3 一部不履行を検査報告に掲記したものの概要
処置済事項の件名 | 令和3年度決算検査報告における掲記状況 |
---|---|
国立大学法人等が国からの運営費交付金等を財源として取得し資産見返負債を計上している固定資産に係る減損額について、国立大学法人等業務実施コスト計算書の損益外減損損失相当額に計上することなど、国立大学法人等業務実施コスト計算書に計上する減損額の範囲を明確に示し、各国立大学法人等に周知することなどにより、国民負担コストが適切に開示されるよう改善させたもの (文部科学省・平成30年度決算検査報告参照) |
前掲「国立大学法人等業務実施コスト計算書の作成に当たり、国からの運営費交付金を財源として取得した固定資産に係る減損額を損益外減損損失相当額に計上していなかったため、財務諸表の表示が適正を欠いていたもの」参照 |
処置済事項については、省庁等において改善の処置を講じた事項に係る処置が確実に履行されることが肝要である。また、一部不履行1件については、関係省庁において改善の処置について更なる徹底を図るなどする必要がある。
本院は、処置済事項について、改善の処置の履行状況を継続して注視していくこととする。