2件 不当と認める国庫補助金 92,545,000円
新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)(新型コロナウイルス感染症を疑う患者受入れのための救急・周産期・小児医療体制確保事業に係る分)は、「令和2年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金の交付について」(令和2年厚生労働省発医政0430第1号・厚生労働省発健0430第5号。以下「交付要綱」という。)等に基づき、発熱や咳等の症状を有している新型コロナウイルス感染症の感染が疑われる患者(以下「疑い患者」という。)が感染症指定医療機関以外の医療機関を受診した場合においても診療できるよう、救急・周産期・小児医療の体制確保を行うことなどを目的として、国が都道府県に対して交付するものである。
交付要綱等によれば、この交付金の交付の対象は、都道府県が行う事業及び民間団体等で都道府県が適切と認める者が行う事業に対して都道府県が補助する事業に要する経費とされている。このうち、都道府県が補助する事業に係る交付金の交付額は、次のとおり算定することとされている。
① 所定の基準額と対象経費の実支出額とを比較して少ない方の額を選定する。
② ①により選定された額と総事業費から寄附金その他の収入額を控除した額とを比較して少ない方の額に交付金の交付率(10分の10)を乗じて得た額と、都道府県が補助した額とを比較して少ない方の額を交付額とする。
本件事業には、設備整備等事業と支援金支給事業(支援金支給事業は令和2年度のみ)があり、設備整備等事業は、疑い患者を診療する救急・周産期・小児医療のいずれかを担う医療機関が院内感染を防止するために行う設備整備等を支援するものとされている。また、支援金支給事業は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大と収束が反復する中で、救急・周産期・小児医療の提供を継続するために、疑い患者を診療する救急・周産期・小児医療のいずれかを担う医療機関に対して、院内感染防止対策を講じながら一定の診療体制を確保するための支援金を支給するものとされている。
そして、設備整備等事業の整備対象設備等は、新設・増設に伴う初度設備を購入するために必要な需要品(消耗品)及び備品購入費、消毒経費、個人防護具(マスク等)、簡易陰圧装置、簡易診療室(注1)及び附帯する備品等とされている。また、支援金支給事業の対象は、新型コロナウイルス感染症に対応した感染拡大防止対策や診療体制確保等に要する費用であり、需用費(消耗品費、印刷製本費、材料費、光熱水費、燃料費、修繕費、医薬材料費)、委託費、備品購入費等とされている。
本院が、11都府県(注2)及び83事業主体において会計実地検査を行ったところ、2県の2事業主体において、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
ア 虚偽の納品書等を事業実績報告書に添付して、実際には納入を受けていなかった設備等に係る費用等を対象経費の実支出額に計上していた事態
部局等
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補助事業者
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間接補助事業者
(事業主体) |
年度
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交付金交付額
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不当と認める交付金交付額
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千円 | 千円 | |||||
(104) |
愛知県
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愛知県
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医療法人有俊会(いまむら病院)
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2、4 | 191,455 | 84,853 |
医療法人有俊会いまむら病院(以下「いまむら病院」という。)は、令和2、4両年度に設備整備等事業として簡易陰圧装置、簡易診療室及び附帯する備品、個人防護具等の整備や病院内の消毒を、また、2年度に支援金支給事業として嚥下造影機器等の整備を、計196,895,108円で実施したとして、愛知県から交付金を原資とする同県の補助金(以下「愛知県補助金」という。)計191,455,000円(交付金交付額同額)の交付を受けていた。
いまむら病院は、愛知県補助金の交付額の算定に当たり、業者Aから整備対象設備等を購入して代金を支払ったとして計128,801,563円を、また、病院内の消毒を業者Bに委託して代金を支払ったとして計20,000,640円を、それぞれ対象経費の実支出額として計上していた。
しかし、業者Aから購入したとしていた整備対象設備等のうち、簡易陰圧装置、嚥下造影機器等について、実際には補助対象年度内に納入を受けていなかったにもかかわらず、いまむら病院は、納入を受けたとする虚偽の納品書等を事業実績報告書に添付して、これに係る購入費用83,053,763円を対象経費の実支出額として計上していた。また、同様に、病院内の消毒を業者Bに委託して代金を支払ったとしていた20,000,640円について、実際には業者Bに支払った額は13,200,000円であり、いまむら病院は、支払っていなかった差額6,800,640円を対象経費の実支出額に過大に計上していた。
したがって、実際には納入を受けていなかった整備対象設備等に係る費用及び過大に計上していた病院内の消毒に係る費用を対象経費の実支出額から除くなどして、適正な愛知県補助金の交付額を算定すると計106,602,000円となり、愛知県補助金の交付額191,455,000円との差額84,853,000円が過大となっていて、これに係る交付金84,853,000円が過大に交付されていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、事業主体において事業の適正な実施に対する認識が著しく欠けていたこと、同県において事業実績報告書等の審査が十分でなかったことなどによると認められる。
(いまむら病院の事態については、前掲「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)(新型コロナウイルス感染症対策事業及び新型コロナウイルス感染症重点医療機関体制整備事業に係る分)が過大に交付されていたもの」及び前掲「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)(帰国者・接触者外来等設備整備事業に係る分)が過大に交付されていたもの」参照)
イ 整備した設備の一部が交付の対象とならないのに、対象経費の実支出額に計上していた事態
部局等
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補助事業者
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間接補助事業者
(事業主体) |
年度
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交付金交付額
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不当と認める交付金交付額
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千円 | 千円 | |||||
(105) |
茨城県
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茨城県
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医療法人つるみ(つるみ脳神経病院)
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2、3 | 76,638 | 7,692 |
医療法人つるみつるみ脳神経病院(令和3年10月31日以前は医療法人つるみ脳外科つるみ脳神経病院。以下「つるみ脳神経病院」という。)は、2、3両年度に、設備整備等事業として、簡易診療室及び附帯する備品等の整備等を計78,251,242円で実施したとして、茨城県から交付金を原資とする同県の補助金(以下「茨城県補助金」という。)計76,638,000円(交付金交付額同額)の交付を受けていた。
しかし、簡易診療室に附帯する備品の中には、当該簡易診療室だけでなく病院全体において使用する電子カルテシステム及び画像診断システムの更新費用計25,135,000円が含まれており、これについては当該簡易診療室において使用する相当分のみを対象経費の実支出額として計上すべきであったのに、つるみ脳神経病院は、誤って、更新費用の全額を計上していた。
したがって、更新費用のうち当該簡易診療室において使用する相当分以外の額を、「病院全体の患者数」に占める「疑い患者以外の患者数」の割合を用いて案分するなどして算出した上で、対象経費の実支出額からこの額を除くなどして、適正な茨城県補助金の交付額を算定すると計68,946,000円となり、茨城県補助金の交付額76,638,000円との差額7,692,000円が過大となっていて、これに係る交付金7,692,000円が過大に交付されていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、事業主体において制度の理解が十分でなかったこと、同県において事業実績報告書等の審査が十分でなかったことなどによると認められる。
部局等
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補助事業者
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間接補助事業者
(事業主体) |
年度
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交付金交付額
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不当と認める交付金交付額
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千円 | 千円 | |||||
(104)(105)の計 | 268,093 | 92,545 |