ページトップ
  • 昭和43年度|
  • 第3章 政府関係機関その他の団体の会計|
  • 第2節 各機関別の事項

日本国有鉄道


(181) 深礎工事の施行にあたり、排水工費等の積算が適切でなかったため、契約額が割高になったもの

科目 (工事勘定) (項)諸設備費
部局等の名称 東京第一工事局
工事名 総武本線両国・津田沼間線増市川駅構内高架橋基礎新設その他工事
工事の概要 総武本線線路増設に伴い、市川駅構内に高架橋の基礎を深礎工法で新設するなどの工事(しゅん功予定 昭和45年6月)
工事費 941,356,553円(当初契約額803,000,000円)
請負人 前田建設工業株式会社
契約年月および契約の種類 昭和43年2月 指名競争契約
支払 昭和43年10月〜44年4月 4回(43年度分支払額270,880,000円)

 この工事は、深礎工法による基礎新設工事の排水工費およびコンクリート打込費の積算が適切でなかったため、契約額が約8360万円割高になったと認められる。

(説明)
 深礎工法は、人力で掘削し、鋼製の仮わくで土留めをしながら、円筒形のたて坑を所定の深さまで掘り下げたうえ、基礎のコンクリートを打設する工法である。そして、この施工中には、掘削を容易にし、かつ、土砂の崩壊を防ぐ目的で、周囲の地下水位を掘削底面以下に下げるための排水工を施工する。
 しかして、この工事の契約にあたっての予定価格の内訳をみると、次のとおり、積算が適切でないと認められるものがあった。

(1) 排水工費について

 この工事の排水工の数量は、排水工A型(ウエルポイント)3,308本および排水工B型(ディープウエルポンプ)326本である。
 しかして、積算にあたって想定した施工計画は、6mから8m間隔で配列して施工する基礎4基(一部については3基または5基以上)ずつを1区画とし、各区画ごとに排水して施工すること、各区画内においては同時に2基以上を施工しないこと、隣接する区画を同時に施工しないことにしていた。
 つぎに、1区画当りの排水日数については、掘削着手前の事前排水を8日、掘削期間中の排水を平均30.8日と見込んで計平均38.8日として、排水工A型は38.8日と想定し、また、排水工B型は、この排水日数平均38.8日のほかに、隣接する区画の施工の際運転する日数と重複して運転する日数を平均24.1日と見込んで計62.9日と想定していた。

 上記の諸条件を基礎にして、排水工の工費を、排水工A型については63,844,400円、排水工B型については225,592,000円計289,436,400円と積算していた。
 しかしながら、一般に、深礎工法のたて坑を連続して掘削する場合は、たて坑の中心と中心の間隔がたて坑直径の3倍以上あれば危険がないとされている。本件工事の場合は、たて坑の最大直径が3mで、1基分を隔てたたて坑の中心と中心の間隔が9mをこえるので、1区画内で1基おきに同時に2基ずつ施工することができると認められる。これによれば、掘削期間中の排水日数は1区画当り平均15.1日になる。したがって、1区画当りの排水日数は、排水工A型については、事前排水日数の8日を加え、これに基礎の鉄筋組立等の期間2日および余裕日数10%を考慮しても計27.6日程度で足りると認められる。また、排水工B型については、掘削を1基おきに施工すれば隣接した区画でも同時に施工することができるから、現地における捨土運搬等の条件からみて同時に施工できない区画の間についてだけ、重複して運転する日数を考慮すればよく、これに要する排水日数平均10.9日を前記の27.6日に加えて38.5日程度を見込めば足りると認められる。
 いま仮に、排水日数を排水工A型については27.6日、排水工B型については38.5日として計算すると、排水工A型は63,182,800円、排水工B型は170,172,000円計233,354,800円になり、当局の積算額はこれに比べて約5608万円高額になっている。

(2) コンクリート打込費について

 たて坑掘削後打ち込むコンクリート28,220m3 の打込費は、本社作成の「コンクリート工積算要領(案)」に記載されている打込み歩掛り1m3 当り0.52人を準用して計44,474,720円と積算していた。
 しかしながら、上記の「コンクリート工積算要領(案)」は、通常の土木構造物に適用されるもので、基礎鉄筋コンクリートくい等には適用しないと明記してある。本件のような深礎工法による鉄筋コンクリート基礎等では、シュート等を用いて連続して多量のコンクリートをたて坑に打ち込むことができるので、その打込み歩掛りは前記の歩掛りよりも相当程度低減することができ、他の同種作業の積算例において歩掛りを1m3 当り0.12人としていること等からみて、これに交通整理員等を考慮した1m3 当り0.15人程度で足りると認められ、当局の積算は著しく過大になっている。なお、本件工事の施工実績等をみても、打込み歩掛りは上記とほぼ同程度になっている。
 いま仮に、コンクリート打込み歩掛りを1m3 当り0.15人として打込費を計算すると12,811,880円になり、当局の積算額はこれに比べて約3166万円高額になっている。

 上記(1)、(2)によって工事費を修正計算すると857,734,959円になり、本件契約額はこれに比べて約8360万円割高であったと認められる。

日本国有鉄道 | 昭和43年度決算検査報告 | 1

日本国有鉄道 | 昭和43年度決算検査報告 | 2

日本国有鉄道 | 昭和43年度決算検査報告 | 3

日本国有鉄道 | 昭和43年度決算検査報告 | 4