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  • 平成7年度|
  • 第1章 検査結果の概要|
  • 第2節 検査結果の大要|
  • 第1 事項等別の検査結果

特定検査対象に関する検査状況の概要


C 特定検査対象に関する検査状況の概要

「特定検査対象に関する検査状況」として計4件掲記した。

(ア) 政府開発援助について

 我が国は、開発途上国の健全な経済発展を実現することを目的として、その自助努力を支援するため、政府開発援助を実施している。その額は無償資金協力やプロジェクト方式技術協力、直接借款などいずれも毎年度多額に上っている。
 この政府開発援助について、外務省等の援助実施機関に対して検査を行うとともに、平成8年中に、6箇国の82事業について現地調査を実施した。これらの援助に対する検査は、相手国に対して本院の検査権限が及ばないことや事業現場が海外にあることなどの制約の下で実施したものであるが、現地調査を行った事業の大部分については、おおむね順調に推移していると認められた。
 しかし、相手国が自国予算で建設する分の施設が完成していなかったり、相手国の管理が適切でなかったりなどしたため、援助の対象となった施設や機材が十分利用されておらず、援助の効果が十分発現していない事態が、6事業において見受けられた。このことから、今後も相手国の自助努力を絶えず促すとともに、相手国が実施する事業に対する支援のための措置をより一層充実させることが重要である。

(イ) 国庫補助事業に係る事務費の執行について

 本院では、昨年、農林水産省、運輸省及び建設省の所管する公共事業に係る国庫補助事業の事務費のうちの食糧費について検査し、その使用及び経理処理を適切に行うよう改善させた。しかし、3省以外の省庁の所管する国庫補助事業についても、食糧費に係る対応状況等を把握する要がある。また、事務費のうちの旅費等の執行に関し、一部の都道府県において、不適正な経理処理が行われていた問題が提起されるなど、社会的関心が高いものとなっている。このような状況を踏まえ、国庫補助事業に係る事務費の執行について検査を実施した。検査したところ、食糧費については、上記3省以外の省庁においても、原則として懇談会の経費は補助の対象としないこととすることなどを内容とする通達を発するなどの処置を執っていた。また、旅費等の執行については、都道府県からの報告によれば、6道県において不適正な経理処理が行われ、これに係る国庫補助金が返還又は減額されるなどしている。そして、都道府県の内部調査が継続して行われている状況である。
 本院では、今後とも、国庫補助事業に係る事務費の執行について、十分留意して検査に努めることとする。

(ウ) 高速増殖原型炉もんじゅのナトリウム漏えい事故について

 平成7年12月、高速増殖原型炉もんじゅにおいて、出力試験中に2次冷却系の配管に取り付けられている温度計部分からナトリウムが漏えいする事故が発生した。科学技術庁、原子力安全委員会等の報告書によれば、事故の発生原因は、温度計さやの管の太さが急激に変わる設計に問題があったとしている。また、この事故には極めて高い社会的関心が寄せられており、もんじゅの建設には多額の国費が投じられている。本院では、このような状況を踏まえて調査することとした。
 動力炉・核燃料開発事業団は、法令等による要求事項や研究開発の成果などが設計に反映されているかを審査しているが、メーカーの提出した配管配置図の審査及び承認に当たって、熱応力の緩和や溶接部からの漏えいについての注意は払われていたものの、設計図面の審査及び承認には問題があったとされており、また、温度計さやの段付き部等の形状について、実験炉常陽との比較検討が行われた状況は見受けられなかった。
 同事業団においては、常陽等から得た成果を活かすとともに、試験を繰り返し行うなどして、もんじゅの設計及び建設に当たってきたところであるが、2次冷却系の温度計のさやの設計については、その審査は必ずしも十分ではなかったと思料される。なお、同事業団では、もんじゅの安全性及び信頼性の向上を目的とした総点検を行うこととしているので、本院においても今後、その内容についても注意深く見守ることとする。

(エ) 東京共同銀行に対する日本銀行の出資について

 日本銀行は、平成7年1月、東京協和信用組合及び安全信用組合の事業を譲り受ける東京共同銀行に対し出資を行った。本院は、昨年、この出資について、国民の関心も極めて高いことから、主として合規性の観点から検査を実施したところであるが、本年は、設立後の東京共同銀行における業務の運営状況をみるため、東京共同銀行の資金繰り及び貸出債権の回収の状況などについて検査を実施した。
 資金繰りについては、日銀からの貸出しを受けることなく、金融市場から資金を調達しており、運営に支障を来すことはなかったものの、貸出先の経営の悪化に伴い延滞債権等が増加しており、貸倒引当金を計上したなどのため、損失の累計額が増加した。
 東京共同銀行は、8年9月に整理回収銀行へ改組し、破綻信用組合の受皿機関として位置づけられ、整理回収体制についても、人員を増強するなど強化が図られている。今後は、この新しい枠組みの下、一層の整理回収が行われ、引き続き信用制度が保持育成されることが肝要である。