財務省は、印刷局特別会計によって運営されていた財務省印刷局が、平成15年4月に独立行政法人国立印刷局(以下「印刷局」という。)に移行する際に、同特別会計から現金及び預金などの資金130億1774万余円、事業用の土地1934億4610万余円、賃貸土地1037億8641万余円などの資産を印刷局に承継させた。その後、印刷局は、中期目標期間の4年目である18年度末には、賃貸土地855億2767万余円を含む土地2782億4010万余円のほか、賃貸土地の譲渡などにより、中期目標期間終了時(19年度末)の資金見込額478億1500万円を300億円程度上回る785億0258万余円の資金を保有している。この資金のうち498億8629万余円が長期運用資金とされており、また、土地譲渡収入のうち売却益の2分の1相当額については中期目標期間終了後に国庫に納付される見込みであるが、土地の帳簿価額相当額については国に返納する規定がないため印刷局が保有し続けることになっており、国の特別会計から承継させた資産の有効活用の面から適切とは認められない。
したがって、財務省において、印刷局の保有資産の適正規模について検討して、不要な資産は国庫に返納させることができるように適切な制度を整備するよう、財務大臣に対して19年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、財務本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、財務省は、本院指摘の趣旨に沿い、印刷局の保有資産の適正規模については、独立行政法人整理合理化計画(平成19年12月24日閣議決定)を踏まえて20年2月に定めた同年4月から25年3月までの期間に印刷局が達成すべき業務運営に関する目標において、保有資産の見直しを定める処置を講じていた。
また、不要な資産を国庫に返納させる制度の整備については、「独立行政法人通則法の一部を改正する法律」(平成22年法律第37号)が22年5月28日に公布され、6か月以内に施行されることとなったことを受けて、不要財産を国庫返納するための処理方法等について検討を行っている。