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  • 平成24年10月

独立行政法人における不要財産の認定等の状況に関する会計検査の結果について


2 不要財産の認定の状況

(1) 法人において行った不要財産の認定の状況

 ア 政府から指摘を受けて行った不要財産の認定の状況

 合理化計画において、独立行政法人は、保有する合理的理由が認められない土地・建物等の実物資産の売却、国庫返納等を着実に推進して、適切な形で財政貢献を行うこととされている。また、基本方針において、不要資産の国庫返納の取組として、国の資産を有効かつ効率的に活用する観点から、独立行政法人の利益剰余金や保有する施設について、そもそも当該独立行政法人が保有する必要性があるか、必要な場合でも最小限のものとなっているかについて厳しく検証し、不要と認められるものについては速やかに国庫納付を行うこととされている。そして、基本方針の別表「各独立行政法人について講ずべき措置」(以下「講ずべき措置」という。)において、各独立行政法人が不要資産の国庫返納に関して講ずべき具体的な措置が示されている。また、これ以外のものについても、各独立行政法人は、貸付資産、知的財産権も含めた幅広い資産を対象に、自主的な見直しを不断に行うこととされている。
 そして、各法人が23年度までに不要財産と認定して国庫納付したものは8685億円(現物納付した実物資産の簿価は含まない。)となっており、このうち、上記の講ずべき措置等において政府から不要資産として指摘を受けたものなどが8218億円となっていて、国庫納付された不要財産のほとんどが政府から指摘された事項に係るものとなっている(法人別の内訳は巻末別表8 参照)。
 また、講ずべき措置において「不要資産の国庫返納」が必要とされた102事項の中で、22年度中又は23年度中に実施することとされたものは64事項ある。これらのうち、会計検査院は、23年10月に解散した雇用・能力開発機構に係る事項を除いて、22年度中又は23年度中に実施することとされている事項であって、23年度末までに国庫返納されていない不要資産を検査した。その状況は、図表2-1 のとおりである。

図表2-1 平成23年度末までに不要資産として国庫返納されていない事項の状況
法人名
講ずべき措置における「不要資産の国庫返納」に係る記載内容
検査結果
講ずべき措置
実施時期
具体的内容
情報通信研究機構 基盤技術研究促進勘定の政府出資金 23年度中に実施 保有国債などの資産(平成21年度末約66億円)のうち、既往案件の管理業務等の経費に掛かる必要最小限の資産を除き、不要資産は原則として平成23年度中に国庫納付する。 <事例2-1> 参照
国際交流基金 区分所有の宿舎 23年度中に実施 職員宿舎の必要数を精査した上で、不要な区分所有宿舎を国庫納付する。 区分所有の宿舎に関する売却額から必要経費を差し引いた額について、24年度に国庫納付を予定している。
福祉医療機構 公庫総合運動場、宝塚宿舎ほか 23年度中に実施 公庫総合運動場、宝塚宿舎ほかを国庫納付する。 公庫総合運動場等については、国庫納付済みである。宝塚宿舎等については、現物納付が困難となったことから、売却の上、金銭により国庫納付することとしている。
労働者健康福祉機構 労災リハビリテーション北海道作業所職員宿舎、水上荘、恵那荘ほか 22年度中に実施 労災リハビリテーション北海道作業所職員宿舎、水上荘、恵那荘ほかを国庫納付する。 労災リハビリテーション北海道作業所職員宿舎及び恵那荘ほか4物件については、国庫納付済みである。その他については、入札を実施するも不調となっているが、引き続き売却手続等を実施している。
国立病院機構 旧十勝療養所跡地ほか 22年度中に実施 旧十勝療養所跡地ほかを国庫納付する。 旧十勝療養所跡地及び旧鳥取病院跡地については、国庫納付済みである。その他については、今後、国庫納付を予定している。
産業技術総合研究所 直方サイト 22年度中に実施 直方サイトを国庫納付する。 直方サイトについては、土壌汚染が確認され、当該土壌の掘削除去工事を行ったため、23年度末までに国庫納付ができなかった。なお、当該土地及び建物は、24年度に国庫納付を予定している。

 そして、政府から不要資産として具体的に指摘を受けた資産の中には、市場性がないため売却することが難しく、仮に売却できた場合でも元本割れになる可能性がある仕組債が含まれていて、国庫納付に支障がある事態が見受けられた。
 上記について事例を示すと次のとおりである。

<事例2-1>
 情報通信研究機構は、講ずべき措置において、基盤技術研究促進勘定の政府出資金について、不要資産として国庫返納することとされた。そして、この具体的内容として、保有国債等の資産(平成21年度末約66億円)のうち、既往案件の管理業務等の経費に係る必要最小限の資産を除き、不要資産を原則として23年度中に国庫納付することとされた。
 しかし、国庫納付することとされた政府出資金の中には、仕組債である円建外債50億円が含まれていた。この仕組債は、市場性がないため売却することが難しく、仮に売却できた場合でも元本を割り込む可能性があった。そのため、同機構は、基盤技術研究促進勘定の政府出資に係る資金を23年度末までに国庫納付していなかった。

 一方、講ずべき措置において、不要資産として国庫返納することとされたことを受けて、国庫返納した法人の中に、仕組債を保有していた法人が見受けられた。

<事例2-2>
 情報処理推進機構は、講ずべき措置において、信用基金については、不要資産として国庫返納することとされた。そして、この具体的内容として、債務保証事業の廃止に伴い、信用基金(約90.5億円)を国庫納付することとされた。
 しかし、国庫納付することとされた信用基金の中には、仕組債である円建外債10億円が含まれていた。この仕組債は、市場性がなく、平成21年度末の時価が、8億3260万円となっており、同機構は、信用保証業務経理で保有している仕組債を他の経理で保有している債券と交換する会計処理を行い、同債券を売却することで、90億5188万余円を国庫納付した(前掲<事例1-13> 参照)。

イ 法人が独自に行った不要財産の認定の状況

 各法人が独自に不要財産と認定して、23年度末までに国庫納付したものの状況は、図表2-2 のとおりとなっていて、12法人で計57億円となっている。各法人が独自に認定した不要財産に係る国庫納付額は、政府から不要資産として指摘を受けたものに係る国庫納付額に比べて少額にとどまっている。

図表2-2 法人が独自に認定した不要財産の状況
(単位:百万円)

法人名
国庫納付の対象
納付額
国立印刷局 譲渡収入(岡山工場敷地(一部))

3

宇宙航空研究開発機構 角田職員宿舎用地(一部)
32
福祉医療機構 長寿・子育て・障害者基金勘定に係る利益剰余金見合いの資金
4,810

医薬基盤研究所

現金及び預金
4
農林水産消費安全技術センター 自動車リサイクル料預託金
0.1
農業・食品産業技術総合研究機構 委託費の返還金等
97
農業環境技術研究所 特定独立行政法人災害補償互助会預託金の返還金
2
水産総合研究センター 譲渡収入(土地)
1
農業者年金基金 業務委託費返還金等
5
産業技術総合研究所 敷金返戻金(丸の内サイト、研究用事務室、駿河台サイト)
109
石油天然ガス・金属鉱物資源機構 敷金返戻金(川崎本部)等
683
鉄道建設・運輸施設整備支援機構 運営費交付金債務等
13
5,763

(2) 政府出資等に係る資産の売却等によって得られた収入に係る不要財産の認定の状況

 法人における不要財産の認定の状況についてみると、資産の売却等によって得られた収入について不要財産として認定しているなどの法人があり、このような法人について検査したところ、以下のような状況が見受けられた。

ア 実物資産の売却による収入について

 前記のとおり、独立行政法人は、通則法第8条第3項により、その保有する重要な財産であって主務省令で定めるものが将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がなくなったと認められる場合には、同法第46条の2又は第46条の3の規定により、不要財産として処分しなければならないこととされている。そして、同法第8条第3項に規定する重要な財産であって主務省令で定めるものについては、全ての法人において、帳簿価額(現金及び預金にあっては、主務大臣に対する国庫納付認可申請の日におけるその額)が50万円以上のものとされている。
 また、会計基準等によると、国又は地方公共団体からの補助金等及び運営費交付金等により償却資産を取得した場合には、相当額を資産見返負債として計上することとされており、この資産見返負債を計上している資産を売却等した場合には、これを全額損益計算上の収益に振り替えることとされている。
 そして、独立行政法人の利益及び損失の処理については、通則法において、毎年度、損益計算において利益を生じたときは、前年度から繰り越した損失を埋めて、なお残余があるときは、その残余の額は、これを積立金として整理しなければならないこととされている。
 また、中期目標期間の最終年度末における積立金の処分については、個別法により、主務大臣の承認を得て次の中期目標期間における業務の財源に充てることができるとされた額を控除して、なお残余があるときは、その残余の額を国庫納付しなければならないこととされている。
 一方で財源が政府出資に係る資産を売却した場合、譲渡収入が当該資産の簿価を上回った売却益に相当する額については、損益計算上の収益となるが、当該資産の簿価相当額等は、損益計算上の収益としては計上されないため、法人内部に留保されることになる。
 そこで、法人設立以降23年度末までの間に、処分時の帳簿価額が1件で50万円以上の土地、建物等の実物資産を売却したことにより、総額で1000万円以上の収入を得た法人についてその状況を示すと、図表2-3 のとおりである(売却時に資産見返負債を収益に振り替える会計処理をしたもの、取得財源に政府からの出資又は支出が含まれないもの及び販売用の資産は除いている。)。

図表2-3  処分時の帳簿価額が50万円以上の資産を売却し1000万円以上の収入を得た法人の状況
(単位:百万円)

法人名
譲渡収入額
(A)
通則法第46条の2の規定により国庫納付した額
(B)
個別法等の規定により国庫納付した額
(C)
経費等に充当した額
(D)
差額(E)
(A)-(B)-(C)-(D)
情報通信研究機構 10 10 - - -
国際協力機構 3,159 1,151 - - 2,007
国際交流基金 44 29 - - 15
造幣局

5,197

3,663

608

36

889

国立印刷局

33,102 28,006 3,288 176 1,630
国立青少年教育振興機構 105 105 - - -

国立科学博物館

1,529

2

-

-

1,526

放射線医学総合研究所

367

367

-

-

-

科学技術振興機構

120

44

-

-

75

理化学研究所

1,589

1,552

- - 37
日本学生支援機構 6,755 87 - 328 6,339
日本原子力研究開発機構 1,031 - -

1,031

-

勤労者退職金共済機構

69

67

-

1

-

高齢・障害・求職者雇用支援機構

1,241

223

731

286

-
福祉医療機構 217 214 -

2

-

労働者健康福祉機構

7,352

11

4,854

-

2,487

国立病院機構

5,784

408

-

4,901

474

医薬基盤研究所

32

32

- - -

年金積立金管理運用

553

67

- -

486

農林水産消費安全技術センター

400

0.03

-

400

-

種苗管理センター

1,333

5

4

1,308

14

家畜改良センター 576

4

8 - 563
水産大学校 84 84 - - -
農業・食品産業技術総合研究機構 1,641 495 416 729 -
農業生物資源研究所 1,789 600 - 1,189 -
森林総合研究所 81 81 0.8 - -
水産総合研究センター 39 38 0.1 - 0.7
農業者年金基金 68 67 - 0.5 -
産業技術総合研究所 18,081 440 12,031 5,609 -
新エネルギー・産業技術総合開発機構 1,175 252 25 - 897

日本貿易振興機構

5,694 192 - 5,501 -
情報処理推進機構 90 - - - 90
石油天然ガス・金属鉱物資源機構 1,101 335 - 721 44
土木研究所 13 13 0.4 - -
航海訓練所 114 114 - - -
航空大学校 38 22 - - 15
水資源機構 766 - - 766 -
空港周辺整備機構 845 - 102 742 -
102,200 38,792 22,073 23,736 17,597
(注)
 国際協力機構(平成15年10月設立)の15年度から17年度までの状況は、今回の検査において直接確認できなかったため、18年度から23年度までの分を記載している。

 これらの法人のうち、23年度末までの間に通則法第46条の2(附則第3条によるものを含む。)の規定により国庫納付していたのは34法人で、その額は387億円となっている。また、譲渡収入額から国庫納付額等を控除した差額(図表2-3 における差額(E))についてみたところ、当該金額が1億円を超える10法人の差額の理由及び処理の予定については、図表2-4 のとおりとなっている。

図表2-4  差額の理由及び処理の予定について
(単位:百万円)

法人名
差額
差額の理由及び処理の予定
国際協力機構 2,007 政府出資に係る資産等の売却収入である施設整備資金等であり、当該資金の残額については平成24年度中に不要財産として国庫納付される予定である。
造幣局 889 白銅地金、青銅地金等の譲渡収入であり、この資金の使途については、原材料取得のための経費等に充当される予定である。
国立印刷局 1,630 豊玉敷地、西片町敷地等の譲渡収入であり、譲渡費用を除いた額が24年度中に不要財産として国庫納付される予定である。
国立科学博物館 1,526 自然教育園の一部敷地の譲渡収入であり、この資金については、必要な経費を除いた額が不要財産として国庫納付される予定である。
日本学生支援機構 6,339 祖師谷国際交流会館等の譲渡収入であり、譲渡費用を除いた額のうち国の支出に係る部分が24年度に不要財産として国庫納付されている。
労働者健康福祉機構 2,487 労災病院に係る施設等の譲渡収入であり、この資金の使途については、労災病院の施設・設備等の整備に充当する予定である。
国立病院機構 474 北海道がんセンターの土地に係る譲渡収入であり、この資金の使途については、同機構の運営費に充当する予定である。
年金積立金管理運用 486 行徳職員宿舎等の譲渡収入であり、当該額が24年度中に不要財産として国庫納付される予定である。
家畜改良センター 563 岩手牧場に隣接する国道の拡幅工事に伴う事業用地の譲渡収入であり、この資金の使途については、事業用地に係る施設・設備等の整備に充当する予定である。
新エネルギー・産業技術総合開発機構 897 石炭経過勘定に係る譲渡収入が大半であり、この資金の使途については、同勘定の業務の経費に充当する予定である。

 上記10法人のうち、国際協力機構、国立印刷局、国立科学博物館、日本学生支援機構及び年金積立金管理運用については、24年度に国庫納付していたり、今後、国庫納付に向けて調整したりしている。また、造幣局、労働者健康福祉機構、国立病院機構、家畜改良センター及び中期新エネルギー・産業技術総合開発機構については、計画に記載等した上で業務の経費等に既に充当していたり、又は充当を予定していたりしている。
 また、譲渡収入額等について、資金が法人内部に留保されている事態が見受けられた。これを事例として示すと以下のとおりである。

<事例2-3>
 石油天然ガス・金属鉱物資源機構は、図表2-3 のとおり、帳簿価額50万円以上の資産を売却しており、譲渡収入額11億0195万余円から経費等に充当した額等を除いた差額は4438万余円となっている。そして、当該差額については、平成24年2月の会計実地検査時において、不要財産として、国庫納付する予定としていた。
 一方、同機構は、譲渡時の帳簿価額が50万円未満の資産に係る譲渡収入額計674万余円を得ていたが、当該収入額に相当する現金及び預金のうち、個別法に基づき中期目標期間終了後に積立金として国庫納付した固定資産売却益相当額36万余円を除いた現金及び預金637万余円並びに譲渡の会計処理に関し生じた固定資産売却損に相当する額824万余円の計1462万余円については、「独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構の業務運営並びに財務及び会計に関する省令」(平成16年経済産業省令第9号)第1条に規定する50万円以上の重要な財産に該当するにもかかわらず、その使途等を検討することなく、同機構内部に預金等として留保していた(固定資産売却損の会計処理に伴う資金留保の仕組みについては、参照 )。
 なお、同機構は、会計検査院の検査を踏まえて、当該資金について不要財産に該当するか否かを検討した結果、当該資金を不要財産として認定し、国庫納付した。

 政府出資等に係る土地、建物等の実物資産の譲渡収入について、国庫納付を予定している法人については、遅滞なく国庫納付手続を進めるとともに、経費等に充当することを予定している法人においては、当該譲渡収入が将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がなくなった資産に該当することとなった場合には、速やかに不要財産の認定を行い、国庫納付等の措置を講ずる必要がある。

イ 敷金等の返戻による収入について

 法人の中には、法人設立時及び設立後に民間業者等から事務所や宿舎を借り上げていたが、事務及び事業の効率化に伴う支部の統廃合、借上面積の縮小、会議室の廃止等により、賃借する際に差し入れていた敷金等の返戻を受けているものがある(以下、返戻を受けた資金を「返戻金」という。)。こうした法人の中には、返戻金を不要財産として国庫納付している法人が見受けられた。
 そこで、法人設立以降23年度末までの間に、総額で1000万円以上の返戻金を受けている法人について、その返戻金を不要財産として国庫納付している状況を示すと図表2-5 のとおりとなっている(取得財源が自己収入のみで政府からの出資又は支出が含まれないものは除いている。)。

図表2-5  敷金等の返戻金額等の状況
(単位:百万円)

法人名 返戻金額 通則法第46条の2の規定により国庫納付した額 個別法等の規定により国庫納付した額 経費等に充当した額 差額(E)
(A)
(B)
(C)
(D)
(A)-(B)-(C)-(D)
国立公文書館 30 - - 17 12
北方領土問題対策協会 10 - 0.1 10 0.1
情報通信研究機構 130 - - 130 -
国際協力機構 2,630 - - 2,454 175
国際交流基金 1,691 743 - 901 45
物質・材料研究機構 11 - - 11 -
教員研修センター 15 - - - 15
科学技術振興機構 349 - 10 20 319
日本学術振興会 272 - - 262 10
理化学研究所 93 - - 93 -
宇宙航空研究開発機構 48 - - 36 12
海洋研究開発機構 158 - - 46 112
日本原子力研究開発機構 255 - - 141 114
高齢・障害・求職者雇用支援機構 226 - - - 226
福祉医療機構 10 - - 0.2 10
労働者健康福祉機構 324 - - 124 200
水産総合研究センター 57 54 - - 3
農畜産業振興機構 133 - - 132 1
農林漁業信用基金 91 - - 91 -
産業技術総合研究所 153 153 - - -
新エネルギー・産業技術総合開発機構 1,145 364 - 714 66
日本貿易振興機構 86,902 13,944 28,282 44,675 0.1
情報処理推進機構 29 - - 15 14
石油天然ガス・金属鉱物資源機構 754 442 - 312 -
中小企業基盤整備機構 343 - - 343 -
国際観光振興機構 15 - - - 15
自動車事故対策機構 118 - - - 118
環境再生保全機構 83 - - 81 1
96,089 15,703 28,292 50,617 1,475
(注)
 日本貿易振興機構の返戻金のうち、外貨で管理しているものについては、法人設立時に計上した金額を記載している。

 政府出資及び運営費交付金等で差し入れた敷金等の返戻金について、23年度末までの間に通則法第46条の2の規定により国庫納付していたのは6法人で、その額は157億円となっている。また、返戻金から国庫納付額等を控除した差額(図表2-5 における差額(E))についてみたところ、当該金額が1億円を超える7法人の差額の理由及び処理の予定については、図表2-6 のとおりとなっていた。

図表2-6 差額の理由及び処理の予定について
(単位:百万円)

法人名
差額
差額の理由及び処理の予定
国際協力機構 175 大半は、外貨建ての敷金に係る為替差損に相当する額である。
科学技術振興機構 319 <事例2-4> 参照
海洋研究開発機構 112 政府出資に係る事務所等の返戻金であり、平成24年度以降に国庫納付される予定である。
日本原子力研究開発機構 114 <事例2-5> 参照
高齢・障害・求職者雇用支援機構 226

政府出資等に係る事務所等の返戻金であり、24年度中に国庫納付等される予定である。

労働者健康福祉機構 200 政府出資に係る事務所等の返戻金であり、新たに発生する敷金等に充当することを予定している。
自動車事故対策機構 118 <事例2-6> 参照

 敷金等に係る会計処理については、会計基準等によると、差入れの際に運営費交付金から支出されたと合理的に特定できる場合で、その支出が中期計画の想定の範囲内であるときに限り、差入金額を運営費交付金債務から資本剰余金に振り替えることとされている。
 一方、返戻金の財源が政府出資の場合又は運営費交付金であって会計処理において資本剰余金に振り替えている場合には、返戻時に損益計算上の収益としては計上されないこととなり、返戻金を新たに発生する敷金等の財源に充てるなどしない限り、当該返戻金は法人内部に留保されることになる。
 これについて、事例を示すと次のとおりである。

<事例2-4>
 科学技術振興機構は、平成15年10月に設立した際に、科学技術振興事業団が事務所及び宿舎を借り上げる際に民間業者等に差し入れていた敷金等を一般勘定において政府出資に係る資産として承継していた。また、同機構は、運営費交付金を設立後に新たに借り上げた事務所及び宿舎に係る敷金等の支出に充てていた。
 一方、同機構は、事務所を廃止したり、宿舎を解約したりなどしており、15年10月から24年3月末までの間に、これらの事務所及び宿舎に係る敷金等の返戻金として、政府出資に係る分3208万余円及び運営費交付金に係る分2億8753万余円の計3億1961万余円を受け取っていた。
 当該返戻金に係る同機構の会計処理についてみると、同機構は、政府出資に係る敷金等及び運営費交付金に係る敷金等の返戻金を受けた際に、貸借対照表上の科目の敷金保証金から現金及び預金等に振り替えている。また、同機構は、法人設立後に差し入れている敷金等については、毎年度、国からの運営費交付金を充てていることから、上記の返戻金については、同機構内部に預金等として留保していた。
 なお、同機構は、会計検査院の検査を踏まえて、当該資金について不要財産に該当するか否かを検討した結果、当該資金を不要財産として認定し、国庫納付することとした。

<事例2-5>
 日本原子力研究開発機構は、平成17年10月に設立した際に、日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構が事務所及び宿舎を借り上げる際に民間業者等に差し入れていた敷金等を電源利用勘定及び一般勘定において政府出資に係る資産として承継していた。また、日本原子力研究開発機構は、運営費交付金を設立後に新たに借り上げた事務所及び宿舎に係る敷金等の支出に充てていた。
 一方、同機構は、事務所を廃止したり、宿舎を解約したりなどしており、17年10月から24年3月末までの間に、これらの事務所及び宿舎に係る敷金等の返戻金として、計1億1474万余円(うち政府出資に係る分1億1339万余円)を受け取っていた。
 当該返戻金に係る同機構の会計処理についてみると、同機構は、政府出資に係る敷金等の返戻金を受けた際に、貸借対照表上の科目の敷金・保証金から現金及び預金に振り替えている。また、同機構は、法人設立後に差し入れている敷金等については、毎年度、国からの運営費交付金を充てていることから、上記の返戻金については、同機構内部に預金等として留 保していた。
 なお、同機構は、会計検査院の検査を踏まえて、当該資金について不要財産に該当するか否かを検討した結果、当該資金を不要財産として認定し、国庫納付することとした。

<事例2-6>
 自動車事故対策機構は、平成15年10月に設立した際に、自動車事故対策センターが事務所及び宿舎を借り上げる際に民間業者等に差し入れていた敷金等を政府出資に係る資産として承継していた。また、同機構は、運営費交付金を設立後に新たに借り上げた事務所及び宿舎に係る敷金等の支出に充てていた。
 一方、同機構は、業務運営の効率化を図るなどのため、事務所を縮小・移転したり、宿舎を解約したりなどしており、15年10月から24年3月末までの間に、これらの事務所及び宿舎に係る敷金等の返戻金として、政府出資に係る分1億0245万余円及び運営費交付金に係る分1577万余円の計1億1822万余円を受け取っていた。
 当該返戻金に係る同機構の会計処理についてみると、同機構は、政府出資に係る敷金等及び運営費交付金に係る敷金等の返戻金を受けた際に、貸借対照表上の科目の敷金・保証金から現金及び預金に振り替えている。また、同機構は、法人設立後に差し入れている敷金等については、毎年度、国からの運営費交付金を充てていることから、上記の返戻金については、同機構内部に預金等として留保していた。しかし、同機構は、会計検査院の会計実地検査時点(24年3月)で、上記の留保された資金の取扱いについて、十分検討していなかった。
 なお、同機構は、当該資金等について不要財産に該当するか否かを検討した結果、同機構 が基本方針に基づき、経費削減の観点から支所の合理化を進めることによって、22年度末現在で2億9664万余円計上している敷金等に加えて、当該資金等も敷金等として差し入れる可能性が高いなどとして、当該資金等を保有し続けることとしているが、具体的に必要となる額については算出していない。

 政府出資等に係る敷金等の返戻金について、今後国庫納付を予定している法人については、遅滞なく国庫納付手続を進めるとともに、今後経費等に充当することを予定している法人においては、当該返戻金が将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がなくなった資産に該当することとなった場合には、速やかに不要財産の認定を行い、国庫納付等の措置を講ずる必要がある。

ウ 清算分配金等による収入について

 法人の出資先である会社等の中には、経営成績が思わしくなかったり、期待された成果が上がらなかったりなどして清算処理されているものがあり、清算処理に際してこれらの会社等に残余財産がある場合、法人は、その残余財産について清算分配金を受け取ることになる。また、法人によっては、これらの会社等の株式等を売却して、収入を得るものもある。こうした法人の中には、これらの収入を不要財産として国庫納付している法人が見受けられた。
 そこで、法人設立以降23年度末までの間に、政府出資等に係る関係会社株式等に係る清算分配金収入や株式譲渡収入(以下、これらを合わせて「清算分配金等」という。)を法人が得ていた状況を示すと、図表2-7 のとおりである(勘定については、23年度末時点で現存するものを対象としている。)。

図表2-7 清算分配金等の状況
(単位:百万円)

法人名
勘定名
清算分配金等の額
通則法第46条の2の規定により国庫納付した額
個別法等の規定により国庫納付した額
経費等に充当した額
差額(E)
(A) (B) (C) (D) (A)-(B)-(C)-(D)
情報通信研究機構 出資勘定
558
558
-
-
-
通信・放送承継勘定
275
-
-
-
275
国際協力機構 一般勘定
434
-
385
-
49
有償資金協力勘定
425
-
-
-
425
医薬基盤研究所 承継勘定
242
205
-
-
36
農業・食品産業技術総合研究機構 特例業務勘定
1,215
67
-
571
576
農畜産業振興機構 畜産勘定
666
-
-
666
-
新エネルギー・産業技術総合開発機構 鉱工業承継勘定
300
300
-
-
-
情報処理推進機構 地域事業出資業務勘定
895
895
-
-
-
中小企業基盤整備機構 一般勘定
454
-
-
454
-
産業基盤整備勘定
207
-
207
-
-
施設整備等勘定
1,415
330
-
1,084
-
出資承継勘定
1,182
-
-
-
1,182
8,275
2,358
592
2,777
2,546

 これらの法人のうち、23年度末までの間に、通則法第46条の2の規定により国庫納付していたのは6法人で、その額は23億円となっている。清算分配金等の額から国庫納付額等を控除した差額(図表2-7 における差額(E))の処理についてみると、国際協力機構の一般勘定については、今後、個別法に基づき国庫納付を予定している。また、同機構の有償資金協力勘定は、開発途上地域の政府等への貸付けなどの有償資金協力業務に充当することとしている。さらに、農業・食品産業技術総合研究機構については、通則法第46条の2の規定により国庫納付を予定している。このほか、情報通信研究機構の通信・放送承継勘定、医薬基盤研究所の承継勘定及び中小企業基盤整備機構の出資承継勘定については、それぞれの法人の個別法により、勘定を廃止する際に、残余財産を国庫納付することとしている。
 政府出資等に係る関係会社株式等に係る清算分配金等について、国庫納付を予定している法人については、遅滞なく国庫納付手続を進めるとともに、勘定を廃止する際に残余財産を国庫納付することとされている法人においては、勘定の廃止までの資金需要を勘案するなどした結果、当該清算分配金等の全部又は一部について、将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がなくなった資産に該当することとなった場合には、速やかに不要財産の認定を行い、国庫納付等の措置を講ずる必要がある。