国は、原子力損害の賠償に関する様々な支援等を行ってきている。これらの支援等に係る財政負担等の状況は、図表1-1のとおりであり、国が負担等をした額は、計4兆9002億余円となっている。
これらのうち、「交付国債の交付」については、機構に交付された9兆円の国債のうち5兆3014億3900万円を上限として償還を行うことにより国が財政上の負担をする一方で、各原子力事業者が機構に納付する負担金等により、機構の損益計算の結果生じた利益が国庫に納付されるという仕組みで、償還された資金が実質的に回収されることになっている。
一方、交付国債の償還のための借入金等に係る利払いに充てるため原子力損害賠償支援資金(以下「原賠資金」という。)を取り崩す額や、「機構法第68条の規定に基づく機構への資金交付」(平成26年度予算350億円。後掲(1)イ(ウ)リンク参照)のように、その額が今後も増加するものがある。
なお、前記の計4兆9002億余円のほか、国は、福島第一原発の廃炉・汚染水対策に関して計1892億余円の財政措置を講じている(後掲3(3)エ(ア)リンク参照)。
図表1-1 原子力損害の賠償に関する支援等に係る国の財政負担等の状況
(単位:百万円)
番号 | 項目 | 金額 | 会計 | 記載箇所 |
---|---|---|---|---|
箇所 | ||||
1 | 原子力損害賠償補償契約に基づく福島第一原発に係る補償金 | 120,000 | 一般会計 | 1 (1)ア(ア) |
2 | 原子力損害賠償補償契約に基づく福島第二原発に係る補償金 | 68,926 | 一般会計 | 1 (1)ア(イ) |
3 | (交付国債の交付) <うち東京電力への交付を決定した額> うち平成26年12月末までに国から機構に償還済みの額 |
(9,000,000) <5,301,439> 4,533,700 |
エネ特原賠勘定 | 1 (1)イ(ア) |
4 | 原賠資金のうち26年12月末までに利払いのために取 り崩した額 | 4,952 | 一般会計→エネ特 原賠勘定 | 1 (1)イ(ア) 別表3 |
5 | 機構法第68条の規定に基づく機構への資金交付 | 35,000 | 一般会計→エネ特 促進勘定 | 1 (1)イ(ウ) |
6 | 審査会及びADRセンターの運営等に係る経費 | 4,471 | 23年度:一般会計 24年度:東日本大震災復 興特別会計 25年度:東日本大震災復 興特別会計 |
1 (2)ア(ウ) |
7 | 補償金の支払に先立つ審査、調査等に係る委託費用 | 70 | 一般会計 | 25年報告 |
8 | 東京電力の経営・財務の調査に係る委託費用 | 508 | 一般会計 | |
9 | 機構への出資 | 7,000 | 一般会計→エネ特 原賠勘定 | |
10 | 一般会計からエネルギー対策特別会計原子力損害賠償支援勘定への繰入れ | 1,052 | 一般会計 | |
11 | 仮払法に基づく仮払金の支払に係る委託費用 | 18 | 一般会計 | |
12 | 仮払法に基づく原子力被害応急対策基金の設置費用 | 40,385 | 一般会計 | |
13 | 福島県民健康管理基金の設置費用 | 84,162 | 23年度:一般会計→ エネ特促進勘定 24年度:東日本大震災復 興特別会計 |
|
計 | 4,900,249 | |||
政府保証の限度額 (実際の保証額) |
23年度 2,000,000 (-) 24年度 4,000,000 (1,000,000) 25年度 4,000,000 (1,500,000) 26年度 4,000,000 (700,000) |
一般会計 | 1 (1)イ(イ) 2 (2)ア(ア) |
原賠法においては、原子力事業者は、原子炉の運転等をする際には、原子力損害を賠償するための措置(以下「損害賠償措置」という。)を講ずることが義務付けられている。損害賠償措置は、原賠法第7条において、「原子力損害賠償責任保険契約及び原子力損害賠償補償契約の締結若しくは供託」であって、その措置を講ずることで、1工場、1事業所等当たり1200億円(政令で定める原子炉の運転等については、1200億円以内で政令で定める金額。以下「賠償措置額」という。)を原子力損害の賠償に充てることができるものとして文部科学大臣の承認を受けたものなどとされている。
上記のうち、原子力損害賠償責任保険契約(以下「責任保険契約」という。)は、原子力事業者の原子力損害の賠償の責任が発生した場合に、一定の事由による原子力損害を原子力事業者が賠償することにより生ずる損失を保険者が埋めることを約し、保険契約者が保険者に保険料を支払うことを約する契約とされている。一方、原子力損害賠償補償契約(以下「補償契約」という。)は、原子力事業者の原子力損害の賠償の責任が発生した場合に、責任保険契約等では対応できない原子力損害を原子力事業者が賠償することにより生ずる損失を政府が補償することを約し、原子力事業者が補償料を政府に納付することを約する契約とされており、地震又は噴火によって生じた原子力損害等を原子力事業者が賠償することにより生ずる損失は、補償契約に基づき政府から補償金が支払われることとなっている。また、供託は、原子力事業者の主たる事務所の最寄りの法務局等に金銭等により行うこととなっている。
23年原発事故の発生を受けて、国と東京電力との間で昭和45年1月に締結された福島第一原発に係る補償契約に基づき、平成23年11月に、国から東京電力に対して補償金1200億円が支払われ、福島第一原発に係る原子力損害賠償に充てることができる金額が0円となったことから、文部科学大臣はこれを24年1月16日までに賠償措置額である1200億円に回復するよう東京電力に命じた。
東京電力は、これを踏まえて、国と新たに補償契約を締結し、24年1月13日に賠償措置額を1200億円に回復させた。しかし、保険期間が同月15日に満了する責任保険契約については、新たな責任保険契約の締結が困難な状況となっていた。このため、東京電力は、損害賠償措置として、責任保険契約及び補償契約の締結以外の方法として認められている「供託」を実施することとし、同月13日に1200億円を東京法務局に供託して損害賠償措置を講じた。
東京電力は、国と補償契約を締結し、かつ、責任保険契約を締結することで、現金で供託している1200億円の返還を受けることができるといった事情を踏まえて、引き続き、民間保険会社との責任保険契約の締結の可能性を探っているものの、いまだ契約の締結には至っておらず、供託が継続している状況となっている。
なお、供託金には、供託法(明治32年法律第15号)等の規定により、1年につき0.024パーセントの利率による利息が付されることとなっている。当該供託金1200億円に関しては、24年2月から25年1月までの分、25年2月から26年1月までの分として、それぞれ2880万円の利息が付されており、東京電力は、25年2月27日及び26年2月19日に、それぞれ同額を受領している。
東京電力は、国との間で昭和55年11月に締結した福島第二原発に係る補償契約に基づき、平成26年10月3日に、補償金1200億円の支払を請求した。
これに対して、国は、27年3月4日に、689億2666万余円を支払った。
機構法において、国が機構に対して各種の財政上の措置(交付国債の交付等)を講ずる仕組みが設けられた。
これを受けて、機構に対する財政援助に係る資金管理を行い、交付国債の償還財源の調達を区分経理することにより、その経理を明確化する必要があることなどから、23年8月に特別会計法が改正され、エネルギー対策特別会計に新たに原子力損害賠償支援勘定(以下「原賠勘定」という。)が設けられ、交付国債の償還のための借入金等を区分経理することとされた。
国の機構に対する財政上の措置の状況は、図表1-2のとおりとなっており、出資、交付国債の交付、政府保証等の様々な措置が講じられている。25年報告の時点と比較すると、26年度に、交付国債の交付額が5兆円から9兆円に増額されたり、原賠勘定に設置された原賠資金が225億円積み増しされたりなどしている。
そして、国の機構に対する主な財政上の措置を措置別にみると、その状況は次のとおりとなっている。
交付国債を発行することができる金額の限度は、特別会計予算総則において定められている。その金額は、25年度までは5兆円となっていたが、平成26年度予算において4兆円を増額することとされ、26年4月18日に同額の交付国債が機構に交付されたことから、計9兆円となっている。
機構は、東京電力からの賠償のための資金交付に係る要望に応じて、23年11月8日から26年11月末までの間に35回、計4兆5337億円の交付国債について国に償還請求を行っている。そして、機構は、図表1-3のとおり、国から交付国債の償還を受け、26年12月末までに同額の資金を東京電力に対して交付している(交付国債の償還請求等の状況については、別表1参照)。
国は、交付国債の償還に当たり、原賠勘定の負担に属する借入金の借入れ等を行っている。ただし、借入金の借入れ等に係る事務は、特別会計法第16条の規定により財務大臣が行うこととなっており、具体的には、財務省理財局が入札を実施して、短期の借入れを行うことなどにより金融機関から資金を調達している。
26年12月末までに借り入れるなどした借入金等(借換えに係る金額を控除した純額)は計4兆5822億余円となっており、これに係る支払利息は、今後、償還期限が到来するものも含めて計106億2301万余円となっている(借入金の借入れ等に係る支払利息等の状況については、別表2参照)。
一方、原賠勘定には、交付国債の償還のために借り入れるなどした資金に係る利払費用に充てるために、23年度に一般会計から繰り入れられた100億円を原資として原賠資金が設置されている。26年度には、一般会計から225億円が更に繰り入れられていて、26年12月末における原賠資金の残高は275億4707万余円となっている。
そして、27年1月以降に償還期限が到来する借入金に係る支払予定利息は、26年12月末現在で判明しているだけでも26年度分計11億8100万円、27年度分計32億0982万余円、合計43億9082万余円となっており、これらについては原賠資金の取崩しにより支払われる予定となっている。
したがって、原賠資金の残高は、図表1-4のとおり、27年12月末までに231億5625万余円にまで減少する見込みである(原賠資金の残高の状況については、別表3参照)。
図表1-4 借入金等に係る支払利息の累積額と原賠資金の残高の状況
政府は、機構法第61条の規定に基づき、国会の議決を経た金額の範囲内において、機構が行う金融機関等からの借入れ(借換えを含む。)又は原子力損害賠償支援機構債(26年8月18日以降は原子力損害賠償・廃炉等支援機構債。以下「機構債」という。)の発行(機構債の借換えのための発行を含む。)に係る債務の保証を行うことができることとなっている。
これを受けて、一般会計予算総則において政府保証の限度額が定められており、その金額は、平成23年度第2次補正予算で2兆円、平成24年度予算で4兆円、平成25年度予算で4兆円、平成26年度予算で4兆円となっている。
機構は、23年度においては、金融機関等からの借入れ及び機構債の発行を行わなかったが、24年度においては、金融機関から1兆円の借入れを行い、25年度及び26年度においては、当該1兆円に係る借換えを行っている。そして、政府は、この1兆円の借入れ及び借換えについて保証している。なお、この借入れにより調達した1兆円の資金は、東京電力が発行する株式の引受けに充てられている(後掲2(2)ア(ア)リンク参照)。
機構法第68条の規定によれば、政府は、著しく大規模な原子力損害の発生その他の事情に照らし、機構の業務を適正かつ確実に実施するために十分なものとなるように負担金の額を定めるとしたならば、電気の安定供給その他の原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営に支障を来し、又は当該事業の利用者に著しい負担を及ぼす過大な額の負担金を定めることとなり、国民生活及び国民経済に重大な支障を生ずるおそれがあると認められる場合に限り、予算で定める額の範囲内において、機構に対し、必要な資金を交付することができることとされている。
これは、賠償額が巨額となり、これに応じた交付国債を償還することとなった場合に、事故を起こした原子力事業者を含む原子力事業者が負担する負担金の額が著しく増大したり、負担金を納付する期間が著しく長期化したりすることにより、電気の利用者の負担が増大するなどの事態を回避するために、機構に対する資金交付を可能にした規定であるとされている。
そして、25年閣議決定においては、中間貯蔵施設費用相当分(約1.1兆円)について、事業期間(30年以内)にわたり、機構に対して、同条に基づく資金交付を行うこととされているが、これは、除染費用(約2.5兆円)及び中間貯蔵施設費用の見込額が環境省の試算等に基づき明らかとなり、これらを含めた賠償額に係る機構の資金援助の実質的な回収を東京電力を含む原子力事業者の負担金のみで行うこととした場合には、負担金を納付する期間が著しく長期化する見通しとなったことから、同条に規定する要件に該当するとされたことによるものである。また、25年閣議決定においては、このための財源について、エネルギー政策の中で追加的、安定的に確保し、復興財源や一般会計の財政収支には影響を与えないこととし、また、エネルギー関係の歳入歳出予算全体を編成する中で捻出し、以後の年度においても同様に対応することとして、毎年度必要額を計上することとなっている。
約1.1兆円と見込まれている中間貯蔵施設の建設、管理運営等の費用を上記の事業期間の上限30年で除して計算すると、単年度当たりの必要額は約366億円(1.1兆円/30年)となる。促進勘定の平成26年度予算において、350億円が計上されており、促進勘定においては、27年度以降も、機構への資金交付に充てるための歳出予算を長期間にわたり計上することが見込まれる。
このように、除染特措法に基づき環境省から東京電力に求償するという枠組みを基本としつつ、機構法第68条の規定に基づき国が機構に資金交付することにより、中間貯蔵施設費用相当分については、国がその全額を負担することとなっている。
審査会は、原賠法第18条第1項及び「原子力損害賠償紛争審査会の設置に関する政令」(平成23年政令第99号)の規定に基づき文部科学省に設置された機関であり、原子力損害の賠償に関する紛争について和解の仲介を行ったり、原子力損害の賠償に関する紛争について原子力損害の範囲の判定の指針その他の当該紛争の当事者による自主的な解決に資する一般的な指針を定めたりなどすることとなっている。
そして、原賠法第18条第2項第2号の規定に基づき、23年4月28日から25年12月26日までの間に、図表1-5のとおり、指針を策定して公表している。このうち、23年8月5日策定の「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」(以下「中間指針」という。)は、後に東京電力が策定することとなる賠償基準の基となる考え方を示したものとなっている。
図表1-5 審査会が策定した原子力損害の範囲の判定等に関する指針
公表年月日 | 指針の名称 | 備考 |
---|---|---|
平成23年 4月28日 |
東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する第一次指針 | 政府指示等に伴う損害の範囲等を明示 |
5月31日 | 東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する第二次指針 | 避難生活等に伴う精神的損害、いわゆる風評被害による損害等の範囲等を明示 |
6月20日 | 東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する第二次指針追補 | 避難生活等に伴う精神的損害の損害額の算定方法等を明示 |
8月 5日 | 東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針 | 公表済みの指針の内容も含めて、賠償すべき損害と認められる一定の範囲の損害類型を明示 |
12月 6日 | 東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針追補(自主的避難等に係る損害について) | 中間指針の対象となった避難指示等に係る損害以外の損害である、自主的避難等に係る損害について、その範囲等を明示 |
24年 3月16日 |
東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針第二次追補(政府による避難区域等の見直し等に係る損害について) | 政府の避難区域等の見直しなどを踏まえて、中間指針等の対象となった損害等に関し今後の検討事項とされていたことなどについて、当該時点で可能な範囲で考え方を明示 |
25年 1月30日 |
東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針第三次追補(農林漁業・食品産業の風評被害に係る損害について) | 農林漁業及び食品産業の風評被害について、中間指針に加えて、当該時点で可能な範囲で、損害の範囲等を明示 |
12月26日 | 東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針第四次追補(避難指示の長期化等に係る損害について) | 避難指示解除後に避難費用及び精神的損害が賠償の対象となる相当期間の具体的な期間、新たな住居の確保のために要する費用のうち賠償の対象となる範囲及び避難指示が長期化した場合に賠償の対象となる範囲等を明示 |
また、25年報告後の25年12月26日に公表された中間指針第四次追補においては、①帰還困難区域又は大熊町若しくは双葉町の居住制限区域若しくは避難指示解除準備区域における精神的損害について、長期間にわたる帰還不能で当該区域での生活の断念を余儀なくされた精神的苦痛等を一括して賠償すること、②住居確保損害について、移住等に伴う新たな住居取得等のために事故前の財物価値を超えて負担した必要かつ合理的な費用を賠償すること、③避難指示解除後に精神的損害等が賠償の対象となる「相当期間」について、1年間を当面の目安とすることなどが示された。
このように、審査会は、状況の変化に伴い必要に応じて、中間指針等に示されていない損害等に係る指針を策定している。
指針の策定等に係る審査会の会議は、原則として公開して行われており、23年4月に第1回が開催されてから、23年度は26回、24年度は5回、25年度は8回、26年度(27年1月末まで)は1回、計40回の会議が開催されている。
審査会は、原賠法の規定等に基づき、円滑、迅速かつ公正に原子力損害の賠償に関する紛争を解決することを目的として、23年8月29日に、総括委員会、パネル(和解の仲介を行う仲介委員又はその合議体)及び和解仲介室から構成されるADRセンターを設置した。
ADRセンターにおける23年9月から26年9月末までの和解の仲介の申立てに係る取扱実績は、図表1-6のとおり、申立件数は13,206件、処理件数は10,408件となっていて、26年9月末現在で2,798件が未処理となっている。
未処理件数は、24年12月に3,201件という最大値を示したが、その後、仲介委員、仲介委員を補佐する調査官等が増員されたことなどにより、25年8月には2,482件にまで減少した。そして、同年9月以降、月間の申立件数が、それまでの300件前後から430件前後にまで増加していることなどから、未処理件数が2,500件から3,000件程度で推移しており、未処理件数が大幅に減少するには、なお時間を要すると考えられる。
審査会及びADRセンターの運営等に係る経費については、23年度は一般会計、24年度以降は東日本大震災復興特別会計の歳出予算により賄われており、25年度の支出額は、図表1-7のとおり、計26億0923万余円となっている。
図表1-7 審査会及びADRセンターの運営等に係る支出額(平成25年度)
(単位:千円)
項目 | 支出額 |
---|---|
委員手当 | 263,791 |
非常勤職員手当 | 1,361,572 |
原子力損害賠償業務謝金 | 10,734 |
原子力損害賠償業務庁費 | 928,780 |
原子力損害賠償業務旅費 | 8,530 |
原子力損害賠償業務委員等旅費 | 9,304 |
原子力損害賠償仲介調査等委託費 | 26,515 |
計 | 2,609,230 |
そして、25年度末までの審査会及びADRセンターの運営等に係る経費の累計額は、44億7163万余円となっている。
ADRセンターを活用した和解の仲介の途中で民法(明治29年法律第89号)に定める消滅時効の期間(損害及び加害者を知ってから3年間)等が経過しても裁判での解決が図られるよう、「東日本大震災に係る原子力損害賠償紛争についての原子力損害賠償紛争審査会による和解仲介手続の利用に係る時効の中断の特例に関する法律」(平成25年法律第32号)が25年6月に公布され施行されたところであるが、その後、23年原発事故に係る原子力損害に係る賠償請求権について消滅時効等の特例が設けられている。
すなわち、23年原発事故の被災者が不自由な避難生活を余儀なくされ、損害の額の算定の基礎となる証拠の収集に支障を来している者が多く存在することなどにより損害賠償請求権の行使に困難を伴う場合があることなどに鑑み、25年12月11日に、「東日本大震災における原子力発電所の事故により生じた原子力損害に係る早期かつ確実な賠償を実現するための措置及び当該原子力損害に係る賠償請求権の消滅時効等の特例に関する法律」(平成25年法律第97号。以下「原子力損害賠償時効特例法」という。)が公布されて、同日施行された。
原子力損害賠償時効特例法において、東日本大震災に係る原子力損害賠償請求に係る消滅時効について損害等を知ってから10年間とするなどの民法の特例規定等が定められ、これにより、被災者が損害賠償請求を行うことができる期間が延長されている。
機構法附則においては、政府に対して、次のとおり、各種の検討及び当該検討結 果に基づく必要な措置の実施を求めている。
機構法附則第6条第1項の規定によれば、政府は、機構法の施行後できるだけ早期に、原子力損害の賠償に係る制度における国の責任の在り方、原子力発電所の事故が生じた場合におけるその収束等に係る国の関与及び責任の在り方等について、これを明確にする観点から検討を加えるとともに、原子力損害の賠償に係る紛争を迅速かつ適切に解決するための組織の整備について検討を加えて、これらの結果に基づき、原賠法の改正等の抜本的な見直しを始めとする必要な措置を講ずることとされている。
そして、原子力損害賠償支援機構法案に対する23年7月の衆議院東日本大震災復興特別委員会の附帯決議及び同年8月の参議院東日本大震災復興特別委員会の附帯決議において、同項に規定する「できるだけ早期に」は、1年を目途とすると認識することとされている。
機構法附則第6条第2項の規定によれば、政府は、機構法の施行後早期に、23年原発事故に係る資金援助に要する費用に係る当該資金援助を受ける原子力事業者と政府及び他の原子力事業者との間の負担の在り方、当該資金援助を受ける原子力事業者の株主その他の利害関係者の負担の在り方等を含め、国民負担を最小化する観点から、機構法の施行状況について検討を加えて、その結果に基づき、必要な措置を講ずることとされている。
そして、前記の参議院東日本大震災復興特別委員会の附帯決議において、同項に規定する「早期に」は、2年を目途とすると認識することとされている。
機構法附則第6条第3項の規定によれば、政府は、国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展を図る観点から、電気供給に係る体制の整備を含むエネルギーに関する政策の在り方についての検討を踏まえつつ、原子力政策における国の責任の在り方等について検討を加えて、その結果に基づき、原子力に関する法律の抜本的な見直しを含め、必要な措置を講ずることとされている。
また、(ア)及び(イ)への対応については、機構法の改正に係る26年4月の衆議院経済産業委員会の附帯決議及び同年5月の参議院経済産業委員会の附帯決議において、「制定時の附帯決議の趣旨に鑑み、早急に結論を得るよう更に検討を進めること」とされている。
これらの規定に係る政府における検討等の進捗状況についてみると、(ア)については、「原子力発電所の事故が生じた場合におけるその収束等に係る国の関与及び責任の在り方」に関して、25年閣議決定及びそれを受けた機構法の改正により、国が前面に立って廃炉・汚染水対策を進めていく方針が示されるなど、事故収束における国の責任の在り方の検討については一定の進捗がみられた。しかし、「原子力損害の賠償制度に係る国の責任の在り方」に関して、原賠法の改正等の抜本的な見直しは必ずしも進捗していない。
すなわち、エネルギー政策基本法(平成14年法律第71号)に基づくエネルギー基本計画が26年4月に閣議決定されたが、同基本計画において、「原子力損害賠償制度の見直しについては、本計画で決定する原子力の位置付け等を含めたエネルギー政策を勘案しつつ、現在進行中の福島の賠償の実情等を踏まえ、総合的に検討を進める」とされた。これを受けて、政府においては内閣官房副長官を議長とする「原子力損害賠償制度の見直しに関する副大臣等会議」を開催することとし、27年1月末までに4回の会合が行われた。そして、この会議の中で、当面の課題として越境損害を含めた原子力損害に対する賠償に関する国際ルールを定めた3系統の条約(注4)の一つである「原子力損害の補完的な補償に関する条約」(Convention on Supplementary Compensation for Nuclear Damage)及び関連法案について国会に提出することが了承され、26年11月に当該条約の承認、関連する法律の改正等が行われた(当該条約は27年4月15日発効予定)。一方、当該条約以外の原子力損害賠償制度の見直しに関する課題については、上記の会議において、有識者会議を設置して専門的かつ総合的な観点から検討を行うことが必要であるなどとされたことを踏まえ、内閣府に設置されている原子力委員会に今後の議論を委ねていくことなどが確認された。その後、同委員会において、原子力損害賠償制度の見直しに関する課題について議論を進めていく方向で検討を進めていくことが了解されている。
(イ)については、25年閣議決定において、交付国債の発行限度額が5兆円から9兆円に引き上げられた一方で、機構が保有する東京電力株式の売却益を除染費用及び中間貯蔵施設費用相当分として充当することが示されるなどしており、国、東京電力その他の原子力事業者、東京電力の株主等との間の負担の在り方に関して、検討が一定程度進捗し、その結果に基づく措置が講じられている。
(ウ)については、前記のエネルギー基本計画において、原子力について、安全性の確保を大前提に、エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源であることなどが確認され、また、エネルギーミックスについて、各エネルギー源の位置付けを踏まえて、原子力発電所の再稼働の状況等を見極めて速やかに示すとされている。しかし、原子力政策における国の責任の在り方等についての検討及びその結果に基づく原子力に関する法律の抜本的な見直しなどの措置が講じられるまでには至っていない。