農林水産省は、生産者に対して生産した米を全量政府に売り渡す義務を課していた食糧管理法(昭和17年法律第40号)施行期に、米の生産量が増大し、政府において米の売買に伴う多額の損失が生ずることになったことなどのため、昭和44年度から米(主食用米)の生産量を調整するとともに、水田において主食用米以外の作物への作付転換等を実施した農業者に対して交付金等を交付するなどの施策(以下「生産調整対策」という。)を実施してきており、平成26年度までの生産調整対策に係る交付金等の交付額は計約9兆0576億円に上っている。
25年12月に、内閣に設置された農林水産業・地域の活力創造本部は、行政による生産数量目標の配分を前提とした米の生産調整対策が、農業の担い手の自由な経営判断や市場戦略を採っていくことを著しく阻害し、意欲のある担い手の効率的な生産を大きく妨げる原因となっているとして、30年度を目途に、米の生産調整の見直しを含む米政策の改革や米の直接支払交付金の廃止等を内容とする農林水産業・地域の活力創造プランを決定した。これを受けて、農林水産省は、30年度を目途に、行政による生産数量目標の配分に頼らずとも、生産者等が中心となって円滑に需要に応じた米の生産が行われることを目指した上記米政策の改革を進めている。
このような状況の中で、これまで実施されてきた生産調整対策の内容、成果、課題等を分析して検証することは、今後の改革の着実な実施に向けて有益であると考えられる。
本報告書は、以上のような状況を踏まえて、これまで実施されてきた米の生産調整対策の実施状況等について検査を実施し、その状況を取りまとめたことから、会計検査院法(昭和22年法律第73号)第30条の2の規定に基づき、会計検査院長から衆議院議長、参議院議長及び内閣総理大臣に対して報告するものである。
平成28年7月
会計検査院
・本文及び図表中の数値は、原則として、表示単位未満を切り捨てている。
・上記のため、図表中の数値を用いて算出しても計数が一致しないものがある。