平成27年度末現在、86国立大学法人のうち42国立大学法人は、大学に附属病院を設置しており、国立大学附属病院の数は全国で45病院となっている。これらの国立大学附属病院は、①優れた医療従事者を養成するために、医学部学生等の臨床実習や卒後の医師の初期・専門研修等を行う教育機関としての機能、②新しい医薬品、医療機器等を開発したり、難治性患者の病態を解明したりするための研究等を行う研究機関としての機能、③医療法(昭和23年法律第205号)上の病院として、医師又は歯科医師が公衆又は特定多数人のために、医業又は歯科医業を行う診療機関としての機能を果たすことが求められている。さらに、26年度末現在、42の国立大学附属病院が、高度の医療の提供、高度の医療技術の開発及び評価並びに高度の医療に関する研修を実施する能力を備えるものとして、特定機能病院としての役割を担っている。
そして、16年4月に国立大学が法人化されて以降、収支の企業的管理が必要となり、各国立大学附属病院は独自の経営責任を負うこととなっている。また、医療制度改革等によって、国立大学附属病院を含めた病院の役割分担による医療提供体制の再構築が求められており、さらに、医療事故等を契機として28年6月に特定機能病院の承認要件が見直されたところである。
上記のとおり、国立大学附属病院を取り巻く環境は大きく変化しており、安心、安全で高度の医療の提供等が急務の課題となっている中、国立大学附属病院は、その機能・役割を果たしていくことが求められている状況である。そして、国立大学附属病院が今後も安定して継続的にその機能・役割を果たしていくためには、医療安全を確保した上で、損失が生じないように適切な運営により健全な財務基盤を構築していくことが重要である。
本報告書は、以上のような状況を踏まえて、国立大学附属病院の経営状況、教育、研究、診療等の各機能、医療安全管理体制等について検査を実施し、その状況を取りまとめたことから、会計検査院法(昭和22年法律第73号)第30条の2の規定に基づき、会計検査院長から衆議院議長、参議院議長及び内閣総理大臣に対して報告するものである。
平成28年9月
会計検査院
以下、本文及び図表中の数値は、原則として、表示単位未満を切り捨てている。
また、円グラフにおける割合は、表示単位未満を四捨五入している。
上記のため、図表中の数値を集計しても計が一致しないものがある。
[法人本部と附属病院との連絡調整が十分でなかったり、国立大学法人としての収支管理等が適切でなかったりしていたことなどから、収入を上回る支出を行ったり、現金不足が生じたりなどしていたもの]
[会計規程等に反していたり、政府調達に関する協定等を実施するために定めた規程等に反していたりして、予定価格が一定額を超えているにもかかわらず、一般競争とせずに随意契約としていたもの]
[書面による予定価格の作成を省略するなどのために、支出決議に必要な見積書等の金額が一定額以内に収まるように見積書等を業者に作成させるなどしていたもの]
[臨床研修医のマッチング率が低調となっていたもの]