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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
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  • 平成29年4月|

東日本大震災からの復興等に対する事業の実施状況等に関する会計検査の結果について


第2 検査の結果

1 東日本大震災に伴う被災等の状況

(1) 被害等の状況

23年3月に発生した東北地方太平洋沖地震は、東北3県を中心に広い範囲で甚大な被害をもたらした。全国の被害等の状況は、次のとおりである。

ア 人的被害及び建物被害の状況

人的被害及び建物被害の状況について、図表2-1のとおり、28年12月9日時点で、死者、行方不明者等の人的被害は死者15,893人、行方不明者2,556人等となっており、また、建物被害は全壊121,739戸、半壊279,088戸、一部破損726,498戸等となっている。

図表2-1 人的被害及び建物被害の状況

都道県 人的被害 建物被害
死者(人) 行方不明者(人) 負傷者(人) 全壊(戸) 半壊(戸) 一部破損(戸) 非住家被害(戸)
北海道   1 0 3 0 4 7 469
東北 青森県 3 1 112 308 701 1,006 1,402
岩手県 4,673 1,123 213 19,507 6,568 18,921 4,700
宮城県 9,540 1,232 4,145 83,000 155,129 224,198 26,796
秋田県 0 0 11 0 0 5 3
山形県 2 0 29 0 0 21 96
福島県 1,613 197 183 15,194 79,597 141,352 1,010
東京都   7 0 117 15 198 4,847 1,101
関東 茨城県 24 1 712 2,629 24,374 187,573 22,603
栃木県 4 0 133 261 2,118 73,552 295
群馬県 1 0 42 0 7 17,679 0
埼玉県 0 0 45 24 199 1,800 33
千葉県 21 2 258 801 10,152 55,044 660
神奈川県 4 0 138 0 41 459 13
新潟県 0 0 3 0 0 17 9
山梨県 0 0 2 0 0 4 0
長野県 0 0 1 0 0 0 0
静岡県 0 0 3 0 0 13 0
中部 三重県 0 0 1 0 0 0 9
四国 高知県 0 0 1 0 0 0 0
15,893 2,556 6,152 121,739 279,088 726,498 59,199
注(1)
警察庁が公表している「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の被害状況と警察措置」(平成28年12月9日公表)を基に作成した。
注(2)
茨城県北部を震源とする地震(平成23年3月19日、9月10日、11月20日、24年2月19日及び25年1月31日)、宮城県沖を震源とする地震(23年4月7日、24年6月18日及び8月30日)、福島県浜通りを震源とする地震(23年4月11日)、福島県中通りを震源とする地震(23年4月12日)、千葉県北東部を震源とする地震(23年5月22日)、福島県沖を震源とする地震(23年7月25日、同月31日、8月12日、同月19日、10月10日及び25年10月26日)、茨城県沖を震源とする地震(24年3月1日)、千葉県東方沖を震源とする地震(24年3月14日)及び三陸沖を震源とする地震(24年12月7日)による被害を含む。
イ 公共施設等の被災の状況

各府省庁が所管する公共施設等の被災の状況は、図表2-2のとおり、基盤整備関係では被災地区海岸数677海岸、交通関係では道路(県及び市町村管理区間)における被災路線数6,293路線、農林水産業関係では津波により被災した農地面積21,480ha等となっている。

また、全壊等の被害を受けた施設は、医療・福祉関係では医療施設4,158施設、福祉施設1,626施設、文化・教育関係では学校施設等12,150施設等となっている。

図表2-2 公共施設等の被災の状況

項目 注(1) 被災規模
基盤整備関係 海岸対策 被災地区海岸 677海岸
海岸防災林 注(2) 被災延長 164km
河川対策 直轄区間 被災河川管理施設 2,115か所
県及び市町村管理区間 被災河川管理施設 1,076か所
下水道 災害査定実施処理場 73施設
水道施設 災害査定実施事業数 230事業
交通関係 道路(県及び市町村管理区間) 被災路線数 6,293路線
鉄道 注(3) 被災路線延長 2,330km
港湾 被災港湾施設 131か所
農林水産業関係 農地 注(2) 津波被災農地面積 21,480ha
排水機場 復旧が必要な主要排水機場 97か所
漁港 被災漁港 319港
医療・福祉関係 医療施設 全壊、一部損壊等施設 4,158施設
福祉施設 全壊、一部損壊等施設 1,626施設
文化・教育関係 学校施設等 全壊、一部損壊等施設等 12,150施設等
注(1)
基盤整備関係、交通関係及び農林水産業関係は復興庁が公表している「公共インフラの本格復旧・復興の進捗状況」(平成28年6月)を、医療・福祉関係は厚生労働省が公表している「東日本大震災における被害状況(医療機関・社会福祉施設)」(平成23年12月)を、文化・教育関係は文部科学省が公表している「東日本大震災による被害情報について」(平成24年9月)等を基にそれぞれ作成した。
注(2)
東北3県及び青森、茨城、千葉各県におけるもの(避難指示区域を含む。)を計上している。
注(3)
東北3県の旅客鉄道分を計上している。

東日本大震災の発生直後、国は、被害の全体像が十分に把握できない中で、被災地の復旧・復興に関する関係各方面の議論の参考に資するために、官民全ての建築物、ライフライン施設、社会基盤施設等のストックの被害額について推計を行うこととした。内閣府が取りまとめて23年6月に公表した資料によれば、施設等別の被害額は、建築物等10兆4384億余円、ライフライン施設1兆3458億余円、社会基盤施設2兆1669億余円、農林水産関係施設1兆8778億余円、その他の施設1兆0867億余円で、その合計は約16.9兆円であるとされた。会計検査院は、27年報告において、上記推計の経緯、状況等について検査した結果を記述しており、その推計方法について、再調達価格によるものと減価償却後の価格によるものとが混在していたり、被害額に推計の対象とならないものなどを一部含めていたり、被害額に反映していなかったりしていたものが見受けられたことなどを報告している。そして、被害額の推計は、被災後の復旧・復興の各方面での議論に資する資料になると同時に、復旧・復興予算の積算に当たっても参考となる資料であることから、各府省庁、地方公共団体等においては、今後想定される南海トラフ等の地震時に備えて、速やかに被害額を算出し、より正確な被害の全容が把握できるよう、体制等を整備しておくことが望まれるとしている。

ウ 避難の状況

復興庁等によれば、東日本大震災発生直後の避難者数は全国で約47万人とされており、東日本大震災の発生から1週間を経過した時点では約38万人が2,182か所の避難所に避難していたとされている。その後、避難者は帰宅したり、県が建設した応急仮設住宅(以下「建設型応急仮設住宅」という。)や市町村が民間住宅を借り上げるなどして避難者に供与する応急仮設住宅(以下「借上型応急仮設住宅」という。)等に移ったりするなどしたため、避難所は26年3月末までに全て解消されたが、29年2月13日現在の避難者数は、図表2-3のとおり、全国でなお123,168人に上っている。このうち東北3県の各県内の避難者数は、岩手県14,463人、宮城県23,853人、福島県39,630人、計77,946人であり、全体の63%を占めている。また、東北3県の各県から県外への避難者数は、29年2月13日現在、岩手県から1,315人、宮城県から5,434人、福島県から39,598人、計46,347人となっており、特に福島県に在住していた多くの被災者は、原子力災害により県外での避難生活を強いられている状況にある。

そして、内閣府によれば、応急仮設住宅に居住している避難者数は、28年9月末現在で、建設型応急仮設住宅に東北3県で45,827人(22,537戸)、借上型応急仮設住宅に全国で62,988人(27,268戸)とされている。

図表2-3 東日本大震災による全国及び東北3県における各県内の避難者数の推移

図表2-3 東日本大震災による全国及び東北3県における各県内の避難者数の推移 画像

(2) 国の復旧・復興への取組

国は、東日本大震災からの復旧・復興を推進するために、国の支援体制及び法令・制度の整備を図りつつ各種施策を実施している。また、復旧・復興の事業規模とその財源を見込むとともに、その見直しを行っている。東日本大震災以降、国が実施してきた復旧・復興に向けた主な取組、原子力災害からの福島の復興再生に向けた主な取組及び復興財源フレームについて示すと次のとおりである。

ア 復旧・復興に向けた主な取組
(ア) 集中復興期間における主な取組

23年3月の東日本大震災の発生後、図表3-1に示すとおり、同年6月に復興基本法が施行され、同年7月には復興基本法に基づき復興基本方針が定められて、国による復興のための取組の全体像が明らかにされた。復興基本方針では、復興期間は10年間とされ、当初の5年間が集中復興期間と位置付けられて、復興支援の体制、復興施策、事業規模、財源等に関する基本方針が定められた。

このうち復興支援の体制について、国は、被災後、災害対策基本法(昭和36年法律第223号)に基づき、直ちに緊急災害対策本部を設置して対応を行ってきたが、24年2月に復興庁を設置し、同本部の機能を同庁に引き継ぐとともに、同庁に内閣総理大臣を議長とする関係閣僚級の組織として復興推進会議を設置した。また、国は、25年2月に住宅再建や復興まちづくりなどに関する復旧・復興事業の加速化に向けた対応等を具体的に検討し、速やかに対策を実現することを目的として、復興大臣の下に「住宅再建・復興まちづくりの加速化のためのタスクフォース」を設置し、さらに、26年4月、地域経済活動の再生に資することを目的として復興大臣の下に「産業復興の推進に関するタスクフォース」を設置するなどした。

復興施策について、23年12月に東日本大震災復興特別区域法(平成23年法律第122号。以下「特区法」という。)が施行され、国は、被災した地方公共団体の申出により、区域を限って、地域における創意工夫を生かして行われる規制の特例措置その他の特別措置を適用する制度を創設するとともに、地方公共団体が自ら策定する復興計画の下、復興に必要な各種施策が展開できる、使い勝手の良い自由度の高い交付金として復興交付金を創設した。また、国は、住宅再建・復興まちづくりの加速化のためのタスクフォースの検討の下に、用地取得手続の迅速化、技術者・技能者の確保、資材の円滑な確保等の加速化措置等を実施してきている。

さらに、国は、産業復興の推進に関するタスクフォースの検討の下に、26年6月に「東日本大震災被災地域の産業復興創造戦略」(以下「産業復興創造戦略」という。)を策定した。産業復興創造戦略によれば、震災からの復興を単なる「最低限の生活再建」にとどめることなく進め、創造と可能性の地としての「新しい東北」を実現するためにも創造的な産業復興を強力に推進することが重要であるとされている。そして、創造的な産業復興を進めるに当たっては、民間団体・大学・研究機関・国・県・市町村等の幅広い関係者が連携して、産業復興の支援に取り組む必要があるとされ、国においては、復興庁の司令塔としての機能の下、同庁と関係省庁が適切に役割分担し、省庁横断的な対応を強化して、一般施策として行う地域活性化策や産業振興策も含め、関係省庁の有効な施策を総動員し、一丸となって創造的な産業復興を強力に推進する必要があるとされた。また、復興庁においては、被災地域における一元的窓口として、現場主義に立って、施策の推進の総合調整機能を果たしていくこととされた。

(イ) 復興・創生期間における取組の方針

27年6月に開かれた第13回復興推進会議において、「平成28年度以降の復旧・復興事業について」(以下「第13回復興推進会議決定」という。)が決定され、集中復興期間終了後の復旧・復興事業に関する基本的な考え方として、復興期間10年以内での一刻も早い復旧・復興事業の完了を目指し、現在の取組を着実に進めて、必要な支援を確実に実施することとされた。また、原子力事故災害被災地域においては、避難指示の影響等により長期の事業が予想されるため10年以内の復興完了は難しい状況にあるとされ、復旧から本格復興・再生の段階に向けて、国が前面に立って引き続き取り組むこととされた。

そして、国は、地震・津波被災地を中心に事業完了に向けた見通しが立ちつつあることを踏まえて、28年度以降の復興支援については、被災地の自立につながるものとしていく必要があるとし、28年度からの5年間を被災地の自立につながり、地方創生のモデルとなるような復興を実現していく観点から「復興・創生期間」と位置付けた。

復興・創生期間に実施する復旧・復興事業については、被災地の復興のために真に必要な事業に重点化する観点から、復興特会で実施する事業、一般会計等で対応する事業等に整理し、このうち、復興特会で実施する事業は、被災者支援、災害復旧事業等、原子力事故災害特有の課題に対応する事業、復興交付金事業(基幹事業)等とされた。

そして、復興の基幹的事業や原子力事故災害に由来する復興事業等については、集中復興期間と同様に、震災復興特別交付税により被災自治体の実質的な負担をゼロとする一方、地域振興策や将来の災害への備えといった全国に共通する課題への対応という性質を併せ持つ事業については、被災自治体においても一定の負担を行うこととされた。

さらに、復興基本法に基づき、28年3月に「「復興・創生期間」における東日本大震災からの復興の基本方針」が定められた。同方針では、復興・創生期間において、国は、復興の新たなステージに応じた切れ目のない被災者支援を行うとともに、次なる災害に備えた住まいの再建や復興まちづくり、被災地の発展基盤となるインフラの復興を着実に進めるとし、コミュニティの形成や産業・生業の再生等を通じて、新たなまちでの暮らしの再開や地域の再生を図ることとされた。また、今後の復興・創生に当たっては、まちに人が戻ることを目指すのみならず、被災地外からも多くの人が訪問し、あるいは移り住むような魅力あふれる地域を創造することを目指して、震災と復興の取組を通じて得られた経験や教訓を活かしつつ、眠っている地域資源の発掘・活用や創造的な産業復興、地域のコミュニティ形成の取組等も通じて、「新しい東北」の姿を創造していくとされた。また、原子力事故災害からの復興再生について、遅くとも29年3月までに避難指示解除準備区域(注5)及び居住制限区域(注6)の避難指示を解除できるよう環境整備に取り組むことなどとされた。

(注5)
避難指示解除準備区域  避難指示区域のうち、平成24年3月時点での空間線量率から推定された年間積算線量が20mSv以下となることが確実であることが確認された地域
(注6)
居住制限区域  避難指示区域のうち、平成24年3月時点での空間線量率から推定された年間積算線量が20mSvを超えるおそれがあると確認されていて、住民の被ばく線量を低減する観点から引き続き避難の継続を求める地域

図表3-1 東日本大震災からの復旧・復興に対する主な取組

年月 災害復旧・復興関連 原子力災害関連
  平成
23年
3月 東日本大震災発生、緊急災害対策本部の設置 原子力災害対策本部の設置
集中復興期間 4月   原子力損害賠償紛争審査会の設置
5月 東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律(平成23年法律第40号)施行  
23年度第1次補正予算成立(東日本大震災関係経費4兆0153億円)  
6月 東日本大震災復興基本法(平成23年法律第76号)施行  
7月 23年度第2次補正予算成立(東日本大震災関係経費1兆8106億円)  
「東日本大震災からの復興の基本方針」決定  
8月   平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成23年法律第110号)施行
  「除染に関する緊急実施基本方針」決定、「「除染に関する緊急実施基本方針」の迅速な実施について」閣議決定
  「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」策定
11月 23年度第3次補正予算成立(東日本大震災関係経費9兆2438億円) 「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法に基づく基本方針」閣議決定
12月 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律第117号)施行  
東日本大震災復興特別区域法(平成23年法律第122号)施行 「ステップ2の完了を受けた警戒区域及び避難指示区域の見直しに関する基本的考え方及び今後の検討課題について」決定
24年 2月 復興庁設置  
3月   福島復興再生特別措置法(平成24年法律第25号)施行
4月 特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)の改正、東日本大震災復興特別会計の設置  
24年度当初予算成立(復興特会3兆7754億円)  
7月   福島復興再生基本方針決定
9月   原子力規制委員会、原子力規制庁の設置
10月 (東日本大震災からの復興等に対する事業の実施状況等に関する会計検査の結果について 24年報告)
25年 1月 集中復興期間における事業規模と財源の見直し(19兆円→25兆円)  
2月 24年度補正予算成立(東日本大震災関係経費3177億円)  
住宅再建・復興まちづくりの加速化のためのタスクフォースの設置  
5月 25年度当初予算成立(復興特会4兆3840億円) 福島復興再生特別措置法の改正
8月   避難指示区域見直し完了
9月   「除染の進捗状況についての総点検」環境省公表
10月 (東日本大震災からの復興等に対する事業の実施状況等に関する会計検査の結果について 25年報告)
12月   「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」閣議決定
26年 2月 25年度補正予算成立(東日本大震災関係経費5638億円)  
3月 26年度当初予算成立(復興特会3兆6464億円)  
4月 産業復興の推進に関するタスクフォースの設置  
5月 東日本大震災復興特別区域法の改正  
6月 「東日本大震災被災地域の産業復興創造戦略」策定  
8月   原子力損害賠償・廃炉等支援機構法(平成23年法律第94号)の改正
27年 2月 26年度補正予算成立(東日本大震災関係経費2597億円)  
3月 (東日本大震災からの復興等に対する事業の実施状況等に関する会計検査の結果について 27年報告)
4月 27年度当初予算成立(復興特会3兆9087億円)  
5月   福島復興再生特別措置法の改正
6月 第13回復興推進会議
(集中復興期間終了後の復旧・復興事業の基本的枠組み決定)
「原子力災害からの福島復興の加速に向けて改訂」閣議決定
「平成28年度以降5年間を含む復興期間の復旧・復興事業の規模と財源について」閣議決定  
12月 「復興・創生期間に向けた新たな課題への対応」復興庁公表  
28年 1月 27年度補正予算成立(東日本大震災関係経費1020億円)  
3月 「「復興・創生期間」における東日本大震災からの復興の基本方針」閣議決定 「中間貯蔵施設に係る「当面5年間の見通し」」環境省公表
「中間貯蔵施設に係る「当面5年間の見通し」」環境省公表  
復興
・創生期間
4月 (東日本大震災からの復興等に対する事業の実施状況等に関する会計検査の結果について 28年報告)
8月   「帰還困難区域の取扱いに関する考え方」原子力災害対策本部・復興推進会議決定
10月 28年度第2次補正予算成立(東日本大震災関係経費5460億円)  
12月   「原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針について」閣議決定
イ 原子力災害からの福島の復興再生に向けた主な取組
(ア) 復旧・復興に向けた主な取組

23年3月の東日本大震災に伴う東京電力の福島第一原子力発電所(以下「福島第一原発」という。)の事故発生後、国は、図表3-1のとおり、原子力災害対策特別措置法(平成11年法律第156号)に基づき直ちに原子力災害対策本部を設置し、同本部の決定に基づき避難指示区域が設定された。このような状況を踏まえて、24年3月に福島復興再生特別措置法(平成24年法律第25号)が施行され、国は、同年7月に同法に基づき福島復興再生基本方針(以下「福島基本方針」という。)を閣議決定して、福島全域での復興及び再生と避難解除等区域等の復興及び再生という二つの観点から、各々に必要な取組の基本的な方針を定めた。このうち避難解除等区域等における復興及び再生の進め方においては、住民の安全のための除染等による放射能汚染対策を始めとして、産業振興、インフラ整備、生活環境の整備等の各種対策について、計画的に講ずるものとしている。

除染等による放射能汚染対策は、23年8月に施行された「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」(平成23年法律第110号。以下「放射性物質汚染対処特措法」という。)に基づき、関係原子力事業者である東京電力の負担の下に実施されるものとされており、環境省等は、放射性物質により汚染された土壌等の除染等(以下「汚染土壌等の除染等」という。)、放射性汚染廃棄物処理事業(以下「汚染廃棄物処理事業」という。)及び中間貯蔵施設の整備等(以下「中間貯蔵施設事業」といい、これらの3事業を合わせて「特措法3事業」という。)を実施している。

福島第一原発の事故による損害については、原子力損害の賠償に関する法律(昭和36年法律第147号。以下「原賠法」という。)等に基づき東京電力が賠償責任を負うこととなっており、23年4月に原賠法に基づき文部科学省に設置された原子力損害賠償紛争審査会が、損害賠償に関する円滑な合意形成のために、同年8月に「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」を策定して賠償すべき損害として類型化が可能なものを示すなどした。

(イ) 帰還支援等に向けた取組

国は、避難指示区域について、23年12月に福島第一原発の原子炉の冷温停止状態が達成されたことなどから、24年3月時点での空間線量率から推定された年間積算線量が20mSv以下となることが確実であることが確認された地域を避難指示解除準備区域とするなど、順次区域の見直しをしてきている(別図表3参照)。そして、避難指示が解除された区域への帰還支援等の取組について、国は、図表3-2のとおり、24年度当初予算において、避難指示に起因して機能低下した公共施設等について、市町村等からの要請に基づき国の費用負担により機能回復を行うことを目的として実施する福島避難解除等区域生活環境整備事業(以下「生活環境整備事業」という。)を、24年度補正予算において、既存の制度等では対応が難しい地方公共団体のニーズにきめ細かに対応することなどを通じて、福島第一原発の事故に伴い避難を余儀なくされた区域の住民の帰還と当該区域の再生を図ることを目的として実施する福島原子力災害避難区域等帰還・再生加速事業(以下「帰還・再生事業」という。)を市町村等に対する委託事業としてそれぞれ創設した。

そして、25年度当初予算において長期避難者の生活拠点の形成を促進する長期避難者生活拠点形成交付金(以下、同交付金により実施する事業を「長期避難者生活拠点形成事業」という。)及び福島県の子育て世帯が安心して定住できる環境を整え地域の復興及び再生を促進する福島定住等緊急支援交付金(以下、同交付金により実施する事業を「福島定住等緊急支援事業」という。)をそれぞれ創設した。

さらに、25年8月の避難指示区域の見直しの完了を受けて、25年度補正予算において、長期避難者支援から早期帰還までを一括して支援する福島再生加速化交付金を創設して、同交付金により長期避難者生活拠点形成事業及び福島定住等緊急支援事業を実施するとともに、福島の復興及び再生のための事業をそれぞれの地域が自主的、主体的に実施することを支援することを目的として帰還・再生事業の一部を移管するなどして創設した「再生加速化事業」を国庫補助事業として実施することとした。

また、27年5月に、福島復興再生特別措置法が改正され、国は、避難者の早期帰還の促進を図るために、27年度当初予算において、再生加速化事業を拡充して「帰還環境整備事業」とし、より使い勝手の良いものとなるようにするなどの取組を行っている(以下、「長期避難者生活拠点形成事業」「福島定住等緊急支援事業」及び「帰還環境整備事業」を合わせて「福島再生加速化交付金事業」という。)。さらに、帰還・再生事業と生活環境整備事業を合わせて福島生活環境整備・帰還再生加速事業(以下「生活環境整備・帰還再生事業」という。)として再編し、福島再生加速化交付金事業の3事業と生活環境整備・帰還再生事業を合わせた4事業(以下、4事業を合わせて「福島復興事業」という。)を福島の復興再生の柱として実施している。

図表3-2 福島復興事業の内訳

図表3-2 福島復興事業の内訳 画像

ウ 復興財源フレーム

復旧・復興に係る財政面の取組として、23年12月に、集中復興期間中に実施する施策に必要な財源を確保するための特別措置について定めた「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」(平成23年法律第117号。以下「復興財源確保法」という。)が施行された。また、国は、道府県及び市町村が実施する補助事業等の負担額等に対処するために、地方交付税の総額に係る特例措置を講ずる財政措置として震災復興特別交付税等を創設した。 そして、24年4月に、特別会計に関する法律(平成19年法律第23号。以下「特会法」という。)が改正され、国は、東日本大震災からの復興に係る国の資金の流れの透明化を図るとともに復興債の償還を適切に管理するために、復興事業に関する経理を明確にすることを目的として復興特会を設置した。

復興基本方針において、集中復興期間に実施すると見込まれる施策・事業の事業規模について少なくとも19兆円程度見込まれるとされ、国は、復興財源の確保について、時限的な税制措置である復興特別税(復興特別所得税、復興特別法人税等)により10.5兆円程度、歳出の削減や税外収入等により8.5兆円程度を確保する計19兆円程度の復興財源フレームを示した。

その後、国は、24年度補正予算及び25年度当初予算の編成過程において、「今後の復旧・復興事業の規模と財源について」(平成25年1月復興推進会議決定)により復興財源フレームを見直し、集中復興期間5年間に係る見込みを25兆円程度の規模とする新たな復興財源フレーム(以下「25兆円フレーム」という。)を示した(図表3-3参照)。25兆円フレームでは、事業規模について、23、24両年度の事業費が計17.5兆円、25年度の事業費が3.3兆円程度、26、27両年度に確実に実施が見込まれる事業の規模が計2.7兆円程度であることから、集中復興期間に係る事業費を計23.5兆円程度とした。また、財源について、既に確保されている19兆円程度に加えて、日本郵政株式会社(以下「日本郵政」という。)株式の売却による収入見込額の4兆円程度及び23年度一般会計の決算剰余金等の2兆円程度を確保し、集中復興期間に係る財源の全体額として25兆円程度を確保することとした。

さらに、国は、第13回復興推進会議決定により、集中復興期間の25兆円フレームに復興・創生期間に係る事業規模と財源の見込みを加えて復興期間10年間に係る見込みを32兆円程度の規模とする新たな復興財源フレーム(以下「32兆円フレーム」という。)を示した(図表3-3参照)。32兆円フレームでは、事業規模について、27年度までの集中復興期間に係る事業費を25.5兆円程度、28年度からの復興・創生期間に係る事業費を6.5兆円程度と見込み、復興期間10年間に係る事業費を計32兆円程度としている。また、財源について、25兆円フレームで計上されている25兆円に、26年度補正予算及び27年度当初予算において措置された計1.3兆円(25年度一般会計の決算剰余金約0.8兆円及び財政投融資特別会計(以下「財投特会」という。)財政融資資金勘定の積立金約0.6兆円の合計額)及び計上済みの財源の精査による2.5兆円を加えて28.8兆円程度が計上済みであり、さらに、新規の財源を、国の保有する資産の有効活用等による税外収入の0.8兆円及び決算剰余金の活用等による一般会計からの繰入れ2.4兆円の計3.2兆円程度とし、復興期間の財源の全体額として32兆円程度を確保するとしている。

図表3-3 25兆円フレーム及び32兆円フレームの事業規模と財源の内訳

○事業規模

事業規模 画像

○財源

財源 画像

集中復興期間に係る事業費として見込んだ25.5兆円及び25兆円フレームにおける計上済財源について、27年度末現在の事業規模及び財源の状況を示すと、図表3-4のとおりである。

事業規模をみると、23年度から27年度までの支出済歳出額(以下「支出済額」という。)27.6兆円程度と28年度への繰越額1.4兆円程度の計29.0兆円程度から、復興財源フレームの対象外経費である東京電力への求償対象経費や復興債償還費等の計4.4兆円を除くなどした事業費は、24.6兆円程度となっている。この額に、平成28年度予算における予備費0.5兆円及び復興・創生期間に持ち越された事業に係る事業費0.4兆円を合わせて計25.5兆円程度となっている。

財源をみると、復興特別税収は、24年度から27年度までの間に3.4兆円が収納され、28年度から課税期間の最終年度である49年度までの復興特別所得税収の見込額6.1兆円程度を合わせると9.5兆円程度となる。歳出削減・税外収入等は、23年度から27年度までの間に11.3兆円程度が確保されている。また、日本郵政株式の売却収入は、27年度末までに1.4兆円が収納されていて、28年度以降に2.6兆円程度が確保される見込みとなっている。

図表3-4 集中復興期間において見込んだ事業規模及び財源の平成27年度末現在の状況

図表3-4 集中復興期間において見込んだ事業規模及び財源の平成27年度末現在の状況 画像

2 復興等の各種施策及び支援事業の実施状況

(1) 復旧・復興予算の執行状況等

ア 集中復興期間における復旧・復興事業に係る歳出予算とその執行状況
(ア) 復旧・復興予算の歳出予算額及び執行状況

復旧・復興予算の執行状況の検査に当たっては、予算措置年度別の予算現額(歳出予算額(当初予算額、補正予算額及び予算移替額の合計)に予備費使用額及び流用等増減額を加減したものであり、前年度から繰り越された額は含めていない。以下同じ。)、支出済額、翌年度繰越額(以下「繰越額」という。)、繰越額のうち避け難い事故により年度内に支出が終わらなかったため翌年度へ繰り越した額(以下「事故繰越額」という。)及び不用額を調査し、復旧・復興事業に係る執行率(支出済額の予算現額に対する割合。以下同じ。)、繰越率(繰越額の予算現額に対する割合。以下同じ。)及び不用率(不用額の予算現額に対する割合。以下同じ。)をそれぞれ算出した。

本報告においては、各年度予算の執行状況について、予算措置年度別の予算現額ごとに、当該予算措置年度の翌年度以降の状況も含めた27年度末までの状況を分析した。すなわち、支出済額は、当該予算措置年度における支出済額に加えて、繰越額として翌年度以降に支出された額も含めている。また、繰越額及び不用額は、それぞれ予算措置年度別の予算現額が27年度末現在で繰り越されている額と不用とされている額を示している。したがって、本報告における執行率は、予算措置年度別の予算現額が27年度末までにどの程度支出されたかを示すものであり、繰越率及び不用率は、予算措置年度別の予算現額が27年度末現在でどの程度繰り越され、又は、不用とされているかを示すものである。

集中復興期間において各年度に措置された予算現額の合計額33兆4922億余円の27年度末現在における執行状況は、図表4-1のとおり、支出済額27兆6231億余円、繰越額1兆4111億余円、不用額4兆4579億余円であり、集中復興期間5か年度全体の執行率は82.4%、繰越率は4.2%、不用率は13.3%となっている。このうち27年度予算の執行状況をみると、執行率は63.9%、繰越率は29.0%、不用率は6.9%となっている。

図表4-1 集中復興期間における復旧・復興予算の執行状況

(単位:億円、%)
区分 平成23年度
予算
24年度
予算
25年度
予算
26年度
予算
27年度
予算
予算現額A 14兆8243 5兆0018 5兆4484 4兆1200 4兆0976 33兆4922
支出済額B 12兆5622 4兆5251 4兆7679 3兆1471 2兆6206 27兆6231
繰越額C - - - 2195 1兆1915 1兆4111
  うち事故繰越額 - - - 2195 88 2284
不用額D=A-B-C 2兆2621 4766 6805 7532 2854 4兆4579
  うち27年度の執行における不用額 - - 541 1722 2854 5118
執行率 B/A 84.7 90.4 87.5 76.3 63.9 82.4
繰越率 C/A - - - 5.3 29.0 4.2
不用率 D/A 15.2 9.5 12.4 18.2 6.9 13.3
注(1)
「平成23年度予算」は、平成23年度一般会計予算分(予備費、23年度補正予算)の合計額であり、予算現額14兆8243億余円は、歳出予算額14兆8354億余円から既定経費の減額分に係る重複を除いたものである。
注(2)
「24年度予算」の予算現額5兆0018億余円は、歳出予算額4兆9706億余円に、法令等に基づき国有林野事業特別会計(24年度末廃止)から復興特会に繰り越された東日本大震災関係経費35億余円及び社会資本整備事業特別会計(25年度末廃止)から復興特会に繰り越された東日本大震災関係経費275億余円の計311億余円を加算したものである。
注(3)
「25年度予算」の予算現額5兆4484億余円は、歳出予算額5兆3023億余円に社会資本整備事業特別会計(25年度末廃止)から復興特会に繰り越された東日本大震災関係経費1461億余円を加算したものである。
注(4)
「うち27年度の執行における不用額」として計上した25年度予算の不用額541億余円は、25年度予算のうち27年度への事故繰越額3541億余円から27年度に支出された3000億余円を差し引いたものである。
注(5)
「うち27年度の執行における不用額」として計上した26年度予算の不用額1722億余円は、26年度予算のうち27年度への繰越額1兆1810億余円から27年度に支出された7891億余円及び事故繰越額2195億余円、計1兆0087億余円を差し引いたものである。
(イ) 経費項目別の執行状況

集中復興期間における復旧・復興予算について予算の経費の内容から区分した項目(以下「経費項目」という。)ごとに支出済額をみると、図表4-2のとおりである。公共土木施設、文教施設、医療施設等の災害復旧事業の実施に係る経費項目については、「災害対応公共事業関係費」「施設費災害復旧費等」「公共事業等の追加」及び「復興関係公共事業等」の4経費項目で計4兆0144億余円となっており、また、特措法3事業の実施に係る経費項目については、「原子力災害復興関係経費」2兆5087億余円となっている。そして、これらの経費項目の累計予算現額に対する累計支出済額の割合(以下「累計執行率」という。)は、「災害対応公共事業関係費」等4経費項目の計で60.8%、「原子力災害復興関係経費」72.0%となっていて、他の経費項目と比べておおむね低くなっている。

一方、特定被災自治体が復旧・復興事業を実施するための財源の一部である「地方交付税交付金」及び「東日本大震災復興交付金」の累計執行率は、それぞれ95.7%、90.2%と高くなっているが、「地方交付税交付金」は復興特会から交付税及び譲与税配付金特別会計(以下「交付税特会」という。)に繰り入れられた段階で、また、「東日本大震災復興交付金」は特定被災自治体における基金の設置造成等のために特定被災自治体に復興交付金が交付された段階で国の復旧・復興予算としては支出済みとなることによるものであり、これらの経費項目の累計執行率が高いことは、必ずしも復旧・復興事業の進捗が進んでいることを示すものではない(復興交付金事業の実施状況については2008_1_2_2_4リンク参照、震災復興特別交付税に係る経費の執行状況については2008_1_2_2_6リンク参照)。

27年度末現在における繰越額1兆4111億余円を経費項目別にみると、「復興関係公共事業等」7314億余円、「東日本大震災復興交付金」3092億余円、「原子力災害復興関係経費」2269億余円等となっている。繰越しの理由は、復興計画を具体的に事業化するための関係機関との協議や住民との合意形成等に不測の日数を要したことにより、27年度中に事業実施ができなかったことなどによるものである。

図表4-2 集中復興期間における復旧・復興予算の経費項目別の執行状況

(単位:億円、%)
経費項目 予算現額 支出済額 繰越額 不用額(23年度~27年度計) 累計執行率
A 平成23年度
予算
24年度
予算
25年度
予算
26年度
予算
27年度
予算

B
B/A
災害救助等関係経費 9877 6045 1256 648 535 435 8921 - 956 90.3
災害廃棄物処理事業費 1兆2428 6755 3162 987 125 43 1兆1073 57 1297 89.0
※ 災害対応公共事業関係費
1兆2019 6675 - - - - 6675 - 5343 55.5
※ 施設費災害復旧費等
3884 2126 - - - - 2126 - 1758 54.7
※ 公共事業等の追加
2兆0228 7595 4110 - - - 1兆1705 - 8522 57.8
※ 復興関係公共事業等
2兆9888 - - 8677 7117 3840 1兆9636 7314 2937 65.6
災害関連融資関係経費 1兆6246 1兆2992 1322 1252 99 255 1兆5922 - 323 98.0
地方交付税交付金 4兆4304 2兆1408 6704 5771 4116 4415 4兆2416 - 1888 95.7
東日本大震災復興交付金 3兆1818 1兆5611 2867 6527 3637 80 2兆8723 3092 2 90.2
全国防災対策費 1兆1705 5186 5426 - - - 1兆0612 - 1092 90.6
その他の東日本大震災関係経費 5兆4668 2兆9775 4835 7719 2691 3003 4兆8025 1377 5265 87.8
被災者支援関係経費 3773 2318 - - - - 2318 - 1455 61.4
東日本大震災復興対策本部運営経費 5 3 - - - - 3 - 1 67.7
原子力損害賠償法等関係経費 2754 2595 - - - - 2595 - 158 94.2
原子力災害復興関係経費 3兆4841 1840 4055 7443 5710 6037 2兆5087 2269 7484 72.0
国債整理基金特別会計への繰入等(復興債の債務償還費等の財源) 3兆4966 - 1兆0259 8650 7437 8095 3兆4442 - 523 98.5
予備費(23年度は東日本大震災復旧・復興予備費、25 年度以降は復興加速化・福島再生予備費) 1兆1512 4691 1251 - - - 5943 - 5568 51.6
33兆4922 12兆5622 4兆5251 4兆7679 3兆1471 2兆6206 27兆6231 1兆4111 4兆4579 82.4
(うち※を付した災害対応公共事業関係費等4経費項目の計) (6兆6020) (1兆6397) (4110) (8677) (7117) (3840) (4兆0144) (7314) (1兆8562) (60.8)
注(1)
本図表の各計数は、歳出予算の経費項目により集計したものであり、決算の経費項目による集計とは一致しない。
注(2)
「平成23年度予算」は、平成23年度一般会計予算分(予備費、23年度補正予算)の合計額である。
注(3)
予備費の支出済額は、東日本大震災に係る復旧及び復興に関連する経費の予見し難い予算の不足に充てた額である。
注(4)
平成24年度から27年度までの各年度の補正予算で実施している事業については、各年度の当初予算の経費項目により整理している。

集中復興期間における各年度の復旧・復興事業の執行において不用額が生じた事業は累計で2,538事業あり、不用額は計4兆4579億余円となっている。

不用額を事由別にみると、図表4-3のとおり、「①予定より実績が下回ったもの」が、836事業(32.9%)、不用額計1兆7178億余円(38.5%)と最も多く、その経費項目別の内訳をみると、「公共事業等の追加」(不用額4646億余円)、「災害対応公共事業関係費」(同2936億余円)等が多額となっている。これは、これらの経費項目で実施した事業において、復興計画の策定等に当たっての調整に時間を要したことなどのために事業に着手できなかったこと、早期の復旧や被災者支援の確実な実施の観点から予算が不足することがないよう積算していたことなどによるものである。

このほか、「②事業計画の変更により減額したもの」が、469事業(18.4%)、不用額計1兆0455億余円(23.4%)と多額であり、その経費項目別の内訳をみると、「原子力災害復興関係経費」(不用額3254億余円)が多額となっている。これは、特措法3事業実施前の測定で放射線量が低かったことにより事業規模を縮小したこと、廃棄物等の処分等に係る既存の処分場の確保や長期管理施設の整備に当たり関係する地方公共団体や地元住民との調整に不測の日数を要したことにより事業計画を見直したことなどによるものである。

図表4-3 集中復興期間における不用事由別の事業数及び不用額

(単位:事業、億円)
不用事由
経費項目
①予定より実績が下回ったもの ②事業計画の変更により減額したもの ③事業執行に伴い節減したもの ④契約価格が予定を下回ったもの ⑤執行停止 ⑥その他
事業数 不用額 事業数 不用額 事業数 不用額 事業数 不用額 事業数 不用額 事業数 不用額 事業数 不用額
災害救助等関係経費 75 712 25 3 18 0 38 3 - - 8 236 164 956
災害廃棄物処理事業費 11 616 11 667 1 0 4 12 - - - - 27 1297
災害対応公共事業関係費 22 2936 18 822 3 22 17 84 - - 12 1477 72 5343
施設費災害復旧費等 19 715 15 65 9 239 46 59 - - 4 679 93 1758
公共事業等の追加 74 4646 60 2299 13 13 124 180 2 57 32 1323 305 8522
復興関係公共事業等 66 207 79 1907 11 14 80 172 - - 38 634 274 2937
災害関連融資関係経費 41 317 1 1 1 0 1 0 - - 4 3 48 323
地方交付税交付金 - - - - - - - - - - 2 1888 2 1888
東日本大震災復興交付金 2 0 1 0 - - 7 1 - - 1 0 11 2
全国防災対策費 46 181 30 115 11 6 160 706 7 50 13 32 267 1092
その他の東日本大震災関係経費 363 2818 155 1316 63 112 291 850 2 79 48 88 922 5265
被災者支援関係経費 5 1434 - - 3 20 1 0 - - - - 9 1455
東日本大震災復興対策本部運営経費 1 1 - - - - 1 0 - - - - 2 1
原子力損害賠償法等関係経費 8 109 2 0 2 1 10 30 - - 2 16 24 158
原子力災害復興関係経費 90 2029 72 3254 13 24 102 115 2 4 15 2055 294 7484
国債整理基金特別会計への繰入等(復興債の債務償還費等の財源) 4 431 - - - - - - - - 1 92 5 523
予備費(平成23年度は東日本大震災復旧・復興予備費、25年度以降は復興加速化・福島再生予備費) 9 17 - - 2 177 - - - - 8 5372 19 5568
836 1兆7178 469 1兆0455 150 634 882 2217 13 192 188 1兆3900 2,538 4兆4579
(32.9%) (38.5%) (18.4%) (23.4%) (5.9%) (1.4%) (34.7%) (4.9%) (0.5%) (0.4%) (7.4%) (31.1%) (100%) (100%)
注(1)
本図表の各計数は、歳出予算の経費項目により集計したものであり、決算の経費項目による集計とは一致しない。
注(2)
平成24年度から27年度までの各年度の補正予算で実施している事業については、各年度の当初予算の経費項目により整理している。
(ウ) 事業類型別の執行状況

復興基本方針では、「あらゆる力を合わせた復興支援」として、平時とは異なる復興の局面に際して、既存の行政制度等の弊害を取り除き、被災した地方公共団体による取組を、総力を挙げて支援するとともに、被災しなかった地方公共団体、民間の力も十分に活用し、活力ある日本の再生を目指した抜本的な対策を講じていくこととするとしている。

上記方針の下、復旧・復興予算について事業の実施主体別にみると、国が自ら復旧・復興事業として執行するもの、地方公共団体等の各種団体に様々な方法で財政支援を行うために執行するもの及び独立行政法人に運営費交付金を交付するなどして執行するものに大別され、また、財政支援の方法や経費の性質別にみると、各種団体の復旧・復興事業に要する経費や事業を実施するための基金や拠出金に対する補助によるもの、各種団体に対する出資によるもの、地方公共団体への地方交付税交付金の交付によるものなどに大別される。

そこで、集中復興期間における復旧・復興予算の執行状況について、上記のような事業の実施主体や財政支援の方法等に着目して、図表4-4の事業類型別に区分することにより復旧・復興事業を整理して分析した。

図表4-4 復旧・復興事業の事業類型の区分

事業類型 内容
① 直轄
各府省庁等が、請負契約や委託契約を締結する場合を含め、直接事業を実施するもの
② 補助
国以外の者が行う事業等に助成等を行う補助事業の事業類型のうち、基金、運営費交付金及び拠出金による補助事業を除いたもの。単年度で実施する復興交付金事業を含む。
③ 直轄、補助等
①又は②を含めて複数の方法で行うもの
④ 補助(基金)
国が地方公共団体、公益法人その他の団体に国庫補助金等を交付して、復旧・復興事業を実施するための基金を設置造成等させるもの。復興関連基金事業や基金を設置造成等して複数年度で実施する復興交付金事業を含む。
⑤ 補助(運営費交付金)
国が独立行政法人等に対して業務に必要な金額の一部又は全部を交付等しているもの
⑥ 補助(拠出金)
国が団体等に対して拠出金を交付しているもの
⑦ 出資
国が特殊法人等に対して出資しているもの
⑧ 地方交付税交付金
国が東日本大震災からの復旧・復興事業に係る地方負担等について震災復興特別交付税を措置しているものなど
⑨ その他
①~⑧以外のもの

事業類型別にみると、図表4-5及び図表4-6のとおり、支出済額は「④補助(基金)」が6兆5291億余円、「②補助」が5兆6614億余円、「⑧地方交付税交付金」が4兆2416億余円等となっていて、特定被災自治体が実施する事業等への財政支援を行う方法において多額となっている。また、累計執行率は「②補助」が65.7%、「③直轄、補助等」が69.8%と他の事業類型に比べて低くなっている。これは、施工方法の見直しによる事業計画の変更等により事業規模が縮小したこと、地元住民や関係機関との協議等が整わず、事業実施までに相当の日数を要したことなどによるものである。一方、「④補助(基金)」から「⑧地方交付税交付金」までは、基金の設置造成等に係る資金、交付金、出資金等の支出に係るものであり、予算措置年度に特定被災自治体や独立行政法人、政策金融機関等に対して支出される場合が多いことなどから、累計執行率はいずれも95%以上と高くなっている(「④補助(基金)」のうち、復興関連基金事業の実施状況については、2008_1_2_2_3リンク参照)。

図表4-5 集中復興期間における復旧・復興事業の事業類型別の執行状況

(単位:上段は予算現額(A)、中段は支出済額(B)、下段は執行率(B/A)、億円、%)
事業類型 平成23年度
予算
24年度
予算
25年度
予算
26年度
予算
27年度
予算
① 直轄
1兆3978 3026 6348 1943 2593 2兆7889
1兆1269 2434 5834 1774 1384 2兆2696
80.6 80.4 91.8 91.3 53.3 81.3
② 補助
4兆5504 1兆2569 9745 6924 1兆1296 8兆6040
3兆0620 1兆0613 7340 4121 3918 5兆6614
67.2 84.4 75.3 59.5 34.6 65.7
③ 直轄、補助等
1兆0626 8573 1兆1167 1兆0288 1兆1971 5兆2627
6456 7069 9284 6959 7015 3兆6785
60.7 82.4 83.1 67.6 58.6 69.8
④ 補助(基金)
4兆2308 5939 9379 6762 1056 6兆5446
4兆2298 5925 9338 6748 980 6兆5291
99.9 99.7 99.5 99.7 92.7 99.7
⑤ 補助(運営費交付金)
1068 262 157 146 91 1726
1068 262 157 146 91 1726
100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0
⑥ 補助(拠出金)
83 5 - 1 1 91
83 5 - 1 1 91
99.9 99.9 - 99.9 99.9 99.9
⑦ 出資
1兆1722 1461 1204 160 230 1兆4779
1兆1722 1461 1204 59 196 1兆4644
100.0 100.0 100.0 36.9 85.2 99.0
⑧ 地方交付税交付金
2兆1408 6704 6053 5723 4415 4兆4304
2兆1408 6704 5771 4116 4415 4兆2416
100.0 100.0 95.3 71.9 100.0 95.7
⑨ その他
1542 1兆1475 1兆0428 9249 9319 4兆2015
694 1兆0774 8747 7544 8203 3兆5964
44.9 93.8 83.8 81.5 88.0 85.5
14兆8243 5兆0018 5兆4484 4兆1200 4兆0976 33兆4922
12兆5622 4兆5251 4兆7679 3兆1471 2兆6206 27兆6231
84.7 90.4 87.5 76.3 63.9 82.4
注(1)
「平成23年度予算」の支出済額欄は、平成23年度一般会計予算分(予備費、23年度補正予算)の合計額である。
注(2)
「計」の欄は、累計予算現額、累計支出済額及び累計執行率である。

図表4-6 集中復興期間における復旧・復興事業の事業類型別の累計支出済額

図表4-6 集中復興期間における復旧・復興事業の事業類型別の累計支出済額 画像

イ 集中復興期間における復旧・復興事業に係る歳入の予算及び実績の状況
(ア) 財源項目別の歳入の予算・決算

集中復興期間における復旧・復興事業の財源は、1(2)ウのとおり、復興財源フレームに基づき復興特別税、歳出削減、税外収入等により確保することとなっている。また、復旧・復興に係る事業費の財源が短期的に不足すると見込まれる場合、これを賄う一時的なつなぎとして復興債が発行されている。

集中復興期間における各年度の復旧・復興事業の財源等の予算額及び決算額を予算の財源等の内容から区分した項目(以下「財源項目」という。)ごとにそれぞれ示すと、図表4-7及び図表4-8のとおりであり、各年度に計上されている財源項目をみると、復興特別法人税は、25年度の「所得税法等の一部を改正する法律」(平成26年法律第10号)により、課税期間が1年短縮されて25年度までとされたが、課税対象となる法人の申告時期等を勘案して26年度も予算額が計上されている。一般会計からの受入れは、復興施策の実施や復興債の償還に要する費用に充てるために一般会計の前年度の決算剰余金等を財源として受け入れているものであるが、当該受入額はそのときの財政状況等により変動が大きいものである。なお、23年度については、数次にわたる補正予算の編成において、一時的な財源とするために年金臨時財源等の既定経費の減額により捻出した3兆8754億余円を計上した後、復旧・復興事業以外の事業に係る経費の財源となった2兆9125億余円を控除している。

集中復興期間における各年度の予算額と決算額とを比較すると、復興特別所得税は24年度以降の4年間、復興特別法人税は24、25両年度、いずれも決算額が予算額を上回っている。復興特別法人税は27年度の予算額には計上されていないものの、既往年度で収納されなかった税額が収納されたことにより決算額が48億余円となっている。また、前年度剰余金受入は、25年度以降、決算額が予算額を大幅に上回っているが、これは、24年度以降に復興特会で予算措置された財源等が当年度のうちに支出されずに、繰越し又は不用として翌年度以降の財源となっていることによるものである。

図表4-7 集中復興期間における復旧・復興事業の財源等(予算ベース)

(単位:億円)
財源項目 一般会計 復興特会
平成23年度 24年度 25年度 26年度 27年度
復興特別所得税 495 3195 3299 3677 1兆0666
復興特別法人税 5062 1兆0935 4446 2兆0443
一般会計より受入 1兆9999 3兆1769 1兆6874 1兆3817 8兆2461
特別会計より受入 1 10 11
公共事業費負担金収入 101 61 625 714 1502
災害等廃棄物処理事業費負担金収入 12 32 3 1 50
附帯工事費負担金収入 3 2 6
政府資産整理収入
雑収入 3237 2 1087 946 2990 8264
前年度剰余金受入 1兆9987 2373 4031 300 2兆6692
復興公債金 11兆5500 2兆4033 3569 1兆0970 1兆9463 17兆3535
歳出予算の既定経費の減額 3兆8754 3兆8754
(復旧・復興事業以外の経費の財源) △2兆9125 △2兆9125
14兆8354 4兆9706 5兆3023 4兆1200 4兆0976 33兆3261
(復興公債金を除く計) (3兆2854) (2兆5673) (4兆9454) (3兆0230) (2兆1513) (15兆9726)
注(1)
平成23年度は、図表中の予算額のほかに、23年度当初予算の予備費503億余円が東日本大震災関係経費として使用されている。
注(2)
年金臨時財源、子ども手当等の歳出予算の補正減により、復旧・復興事業の財源を確保したものである。
注(3)
独立行政法人の運営費、年金臨時財源、台風12号対策等に充てられることになったため、復旧・復興事業以外の経費の財源として控除したものである。

図表4-8 集中復興期間における復旧・復興事業の財源等(決算ベース)

(単位:億円)
財源項目 一般会計 復興特会
平成23年度 24年度 25年度 26年度 27年度
復興特別所得税 511 3338 3491 3706 1兆1048
復興特別法人税 6493 1兆2043 4327 48 2兆2913
一般会計より受入 1兆9999 3兆1769 1兆6874 1兆3817 8兆2460
特別会計より受入 1 9 11
公共事業費負担金収入 61 42 605 711 1421
災害等廃棄物処理事業費負担金収入 0 2 4 7
附帯工事費負担金収入 0 2 2
政府資産整理収入 17 17
雑収入 2689 123 1808 3433 4190 1兆2246
前年度剰余金受入 1兆9987 1兆8700 2兆3635 1兆5652 7兆7976
復興公債金 11兆2499 2兆3032 1199 1兆3199 14兆9932
歳出予算の既定経費の減額 3兆8643 3兆8643
(復旧・復興事業以外の経費の財源) △2兆9104 △ 2兆9104
14兆4733 5兆0222 6兆7703 5兆3573 5兆1344 36兆7576
(復興公債金を除く計) (3兆2233) (2兆7189) (6兆7703) (5兆2373) (3兆8144) (21兆7644)
(注)
平成23年度については、財源等の実績を示すために、23年度当初予算の予備費503億余円を含めている。
(イ) 復興債の発行及び償還の状況

復旧・復興事業の財源には、復興特別所得税のように49年12月までの長期にわたって確保されるものや、資産の売却収入のようにその収納時期が流動的なものもある。復旧・復興事業の実施に当たっては、多額の費用が限られた期間に生ずることから事業の実施に当たり不足する資金を確保するために復興債が発行されることになるが、復興債の発行には発行額以外にも利子、割引料等の支出が必要となり、多額の発行は復旧・復興事業の経費負担を増加させることとなる。そこで、前記復興公債金の歳入の予算及び決算の状況に加えて、復興債の発行及び償還の状況について検査した。

a 復興債の発行状況

復興財源確保法によれば、復興債は23年度第3次補正予算から27年度予算までの各年度予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で発行できることとされている。そして、財務省は、予算に基づいて国債発行計画を作成して発行計画額を決定し、短期的に確保された財源を復旧・復興事業の費用に充てた後、なお不足する資金を確保するために復興債を発行している。

補正後の予算における発行計画額と発行実績額により、集中復興期間における復興債の発行状況をみると、図表4-9のとおり、発行計画額計17兆3535億円に対して発行実績額計14兆9932億余円となっている。また、年度別の推移をみると、23、24両年度は発行実績額と発行計画額はほぼ等しい額となっている。しかし、25年度以降は、復興特別所得税及び復興特別法人税の税収が予算額を上回ったり、繰越し及び不用の発生による決算剰余金が計上されたりしたことなどにより、25年度は復興債は発行されておらず、26年度も発行計画額1兆0970億円に対して発行実績額1199億余円と計画の1割程度の発行にとどまっている。27年度は発行計画額1兆9463億円に対して発行実績額1兆3199億余円と計画の約7割となっているが、26年度の発行実績額に比べて大幅に増加している。

なお、28年4月に復興財源確保法の改正が行われ、復興債の発行期間は32年度まで延長されることとなった。

図表4-9 集中復興期間における復興債の発行計画額及び発行実績額

(単位:億円)
年度 平成23年度 24年度 25年度 26年度 27年度
発行計画額 11兆5500 2兆4033 3569 1兆0970 1兆9463 17兆3535
発行実績額 11兆2499 2兆3032 1199 1兆3199 14兆9932
(注)
発行計画額は、各年度の補正後の予算(平成23年度は23年度第3次補正予算)に基づく国債発行計画額であり、発行実績額は、復興公債金収納済歳入額である。

b 復興債の償還状況

復興財源確保法によれば、復興債について、49年度までの間に償還することとされている。復興債の償還は、24年度以降、国債等の償還を一元的に行う国債整理基金特別会計(以下「国債整理特会」という。)において行われている。 復興債の償還に係る国債整理特会の資金の流れは、図表4-10のとおりである。国債整理特会の歳出において、復興債の債務償還費と復興債の発行に伴う手数料、利子及割引料等(以下、これらを合わせて「償還費等」という。)を計上している。そして、国債整理特会の歳入において、償還費等に充てる財源(以下「償還財源」という。)として、復興特会からは復興特別税の税収等を、財投特会財政融資資金勘定からは同勘定の積立金の一部を、それぞれ受け入れているほか、国債整理特会において保有する株式の売払収入、配当金収入等を計上している。また、償還財源が償還費等の額に不足する場合は、復興借換債の発行による復興借換公債金を歳入に計上している。

図表4-10 復興債の償還に係る資金の流れ

図表4-10 復興債の償還に係る資金の流れ 画像

27年度の国債整理特会の歳入歳出決算のうち復興債の償還に係る状況をみると、図表4-11のとおり、歳入では、償還財源として復興特会からの繰入額8081億余円、財投特会からの繰入額7500億円、国が保有する株式の配当金収入388億余円が収納されたほか、27年11月及び12月に一部が売却された日本郵政株式の売払収入1兆4231億余円が収納され、歳入の合計は3兆0201億余円となっている。これに対して、歳出の合計は、償還費等で2兆4821億余円となっており、このうち債務償還費が2兆4535億余円となっている。

なお、特会法により国債の償還に充てるべき資金の充実に資するために国債整理特会において保有する株式のうち、日本たばこ産業株式会社(以下「日本たばこ産業」という。)株式は24年度に9774億余円で既に売却済みであり、また、上記のとおり、日本郵政株式は27年度に一部を1兆4231億余円で売却済みであり、これらの売払収入が償還財源に充てられている。一方、東京地下鉄株式会社(以下「東京地下鉄」という。)株式の売払収入も、復興財源確保法に基づいて償還財源として位置付けられているが、売却に向けての動きが進捗していない状況となっている。

図表4-11 集中復興期間における復興債の償還に係る状況(国債整理特会決算ベース)

(単位:億円)
年度 平成24年度 25年度 26年度 27年度
歳入 5兆5477 4兆5450 1兆5926 3兆0201
  他会計より受入 2兆0226 1兆5617 7437 1兆5581
  復興特会 1兆0259 8650 7437 8081
財投特会 9967 6967 7500
前年度剰余金受入 7 4824 0 0
株式売払収入 9774 1兆4231
配当金収入 255 62 68 388
運用収入等 82 14 0
復興借換公債金 2兆5130 2兆4930 8421
歳出 5兆0653 4兆5450 1兆5926 2兆4821
  債務償還費 5兆0293 4兆5226 1兆5736 2兆4535
  借換え分 2兆5130 2兆4930 8421
借換えを除く償還実績 2兆5162 2兆0295 7315 2兆4535
手数料等 224 16 3 124
利子及割引料 135 208 187 160
剰余金 4824 0 0 5380

集中復興期間における復興債の各年度末現在額をみると、図表4-12のとおり、23年度末の11兆2574億余円から27年度末の7兆2612億余円に減少している。

図表4-12 集中復興期間における復興債の各年度末現在額

(単位:億円)
区分 平成23年度 24年度 25年度 26年度 27年度
年度首現在額 A 11兆2574 11兆0437 9兆0135 8兆3996
新規発行による増加 B 11兆2574 2兆3023 1201 1兆3156
償還による減少 C 5兆0294 4兆5231 1兆5742 2兆4540
Cのうち復興借換債の発行による償還 D 2兆5133 2兆4929 8402
借換えを除く償還による純減 E=C-D 2兆5160 2兆0301 7340 2兆4540
年度末現在額 F=A+B-E 11兆2574 11兆0437 9兆0135 8兆3996 7兆2612
注(1)
図表中の数値は復興債の額面金額であるため、復興公債金収納済歳入額や復興債償還費支出済額等の歳入歳出決算額とは異なっている。
注(2)
復興債は、復興財源確保法により、各年度において翌年度の4月1日から6月30日までの期間も発行できるため、「新規発行による増加 B」は、当該期間内に発行されたものを含めた額面金額を示している。
ウ 復興債の償還財源として位置付けられている株式の売却等の状況

1(2)ウのとおり、集中復興期間における復興財源フレームについて、25年1月の復興推進会議において確保する財源を19兆円程度から25兆円程度に変更することとされた。25兆円程度の財源には、政府出資等の有価証券である日本たばこ産業、東京地下鉄及び日本郵政の各株式の売却による収入として、それぞれ0.5兆円程度、0.2兆円程度、4兆円程度の計4.7兆円程度が見込まれており、上記3会社の株式(以下「3会社株式」という。)のうち国債整理特会に所属替をするなどしたものの売却により34年度までに生じた収入等は、復興財源確保法等に基づき、復興債の償還財源として位置付けられている。

一方、国は、特別会計における資産及び負債の状況等に関する財務情報を開示するために、企業会計の慣行を参考として財務書類を作成しており、資産の一つである株式についてその残高等が計上されている。3会社株式は、復興特会に所属替をされていないものの、復興債の償還財源として位置付けられていることから、日本たばこ産業株式について復興特会が創設された24年度の復興特会に係る財務書類(以下「復興特会財務書類」という。)に、日本郵政株式について株式の売却が決定された27年度の復興特会財務書類に、東京地下鉄株式について24年度以降の各年度の復興特会財務書類に、それぞれの残高等が計上されている。3会社株式のうち、日本たばこ産業株式及び日本郵政株式の売却等に当たっては、sanko1リンク参照の参考に記載の方法により評価し計上している。

そこで、復興特会財務書類を基に、24、27両年度における日本たばこ産業株式及び日本郵政株式の売却等の状況や、27年度末現在の3会社株式に係る残高及び集中復興期間における配当金収入の状況をみたところ、次のとおりとなっている。

(ア) 日本たばこ産業株式及び日本郵政株式の売却等の状況

24年度の復興特会財務書類を基に、日本たばこ産業株式の24年度における売却等の状況についてみると、図表4-13のとおり、まず、24年度の期首において、23年度末の評価額7766億余円(市場価格に基づく国有財産台帳価格により評価した額)を166億余円(市場価格のあるものとして取得原価である出資累計額(注7)により評価した額)へと変更したことにより、差額の減少分7599億余円が資産評価差額(評価差額の戻入)に計上されている。そして、24年度に株式を売却した結果、株式売払収入が9774億余円(図表4-15の❹)生じており、評価額166億余円との差額9608億余円が増加分としてその他資産・負債差額の増減に計上されている(株式の評価方法及び計上方法については、sanko1リンク参照)。

(注7)
出資累計額  法人が一定の事業を営むために資本として政府が金銭その他の財産を出えんすることにより取得した出資による権利に係る評価額で、出資金等の累計額で計上する。

図表4-13 日本たばこ産業株式の24年度における売却等の状況

図表4-13 日本たばこ産業株式の24年度における売却等の状況 画像

次に、27年度の復興特会財務書類を基に、日本郵政株式の27年度における売却等の状況についてみると、図表4-14のとおり、まず、27年度の期首において、26年度末の評価額9兆7929億余円(市場価格のないものとして純資産額により評価した額)を5兆1359億余円(市場価格のあるものとして取得原価である出資累計額により評価した額)へと変更したことにより、差額の減少分4兆6570億余円が資産評価差額(年度別評価差額)に計上されている。そして、27年度に株式の一部を売却した結果、株式売払収入が1兆4231億余円(図表4-15の⑨)生じており、売却した分に係る評価額1兆5655億余円(図表4-15の⑧)との差額1423億余円が減少分としてその他資産・負債差額の増減に計上されている。

当該売却後における日本郵政株式の評価額は、出資累計額に基づき評価すると3兆5703億余円となるところ、27年度の復興特会財務書類において27年度末の時価により評価することとなっているために3兆0071億余円となっており、出資累計額に基づき評価した額に比べて5631億余円減少している(株式の評価方法及び計上方法については、sanko1リンク参照)。

図表4-14 日本郵政株式の27年度における一部売却等の状況

図表4-14 日本郵政株式の27年度における一部売却等の状況 画像

日本たばこ産業株式及び日本郵政株式の売却の結果、集中復興期間における株式売払収入は、図表4-15のとおり、計2兆4006億余円(日本たばこ産業株式9774億余円、日本郵政株式1兆4231億余円)となっている。

なお、東京地下鉄株式の売却実績はない。

図表4-15 復興特会財務書類における資産・負債差額増減計算書内訳(国債整理基金)

(単位:億円)
区分 平成24年度 25年度 26年度 27年度
国債整理基金
         
株式売払収入
9774 ❹ - - 1兆4231 ⑨ 2兆4006
保有株式の減少
△166 ❻ - - - △166
株式売却
- - - △1兆5655 ⑧ △1兆5655
財政投融資特別会計より受入
9967 6967 - 7500 2兆4434
国債整理基金合計
1兆9575 6967 - 6076 3兆2618
(イ) 3会社株式に係る残高及び配当金収入の状況

復興特会財務書類の貸借対照表における3会社株式に係る27年度末の保有残高についてみると、図表4-16のとおり、24年度までに全て売却された日本たばこ産業株式の残高はなく、27年度に一部売却された日本郵政株式が3兆0071億余円、27年度末までに売却された実績のない東京地下鉄株式が2717億余円の計3兆2788億余円となっている。

図表4-16 復興特会財務書類における資産評価差額の明細内訳(国債整理基金)

(単位:億円)
区分 前年度末残高 評価差額の戻入 年度別増加額 年度別減少額 年度別評価差額 年度別増減額 年度末残高
市場価格のあるもの              
日本たばこ産業株式              
平成24年度 7766 ➊ △7599 ❷ - △166 ❺ - △7599 -
日本郵政株式              
27年度 - - 5兆1359 ③ △1兆5655 ⑤ △5631 ⑦ △5631 3兆0071 ⑥
市場価格のないもの              
東京地下鉄株式              
24年度 2004 △1362 - - 1536 174 2178
25年度 2178 △1536 - - 1738 201 2380
26年度 2380 △1738 - - 1846 108 2489
27年度 2489 △1846 - - 2074 228 2717
日本郵政株式              
27年度 - - 9兆7929 ① △5兆1359 ② △4兆6570 ④ △4兆6570 -

また、復興特会財務書類における資産・負債差額増減計算書により、3会社株式に係る配当金収入についてみると、図表4-17のとおり、「国債整理基金収入」において、27年度末までの累計で日本たばこ産業199億余円、東京地下鉄254億余円、日本郵政320億余円の計775億余円となっている。

図表4-17 復興特会財務書類における資産・負債差額増減計算書内訳(国債整理基金収入)

(単位:億円)
区分 平成24年度 25年度 26年度 27年度
国債整理基金収入
         
配当金収入
255 62 68 388 775
うち日本たばこ産業
199 - - - 199
うち東京地下鉄
55 62 68 68 254
うち日本郵政
- - - 320 320
運用収入・その他の財源
8 3 0 - 11
国債整理基金収入合計
264 65 68 388 786

前記のとおり、集中復興期間における復興財源フレームでは、3会社株式の売却による収入が4.7兆円程度と見込まれているが、これまでの実績は、(ア)のとおり、計2兆4006億余円となっており、今後確保すべき復興財源フレーム計上額は差引で計2.3兆円程度となる。これに対して、売却による収入は売却時点の株価に応じて決まることになるが、27年度末の残高は、計3兆2788億余円(日本郵政株式3兆0071億余円、東京地下鉄株式2717億余円)となっている。

<参考 政府出資等の有価証券等の評価方法及び復興特会財務書類への計上方法>

政府出資等の有価証券等は、「国有財産台帳価格の価格改定に関する評価要領について」(平成23年財理第4670号)において、次のとおり、市場価格のあるものについては企業会計原則に準じて市場価格で、市場価格のないものについては法人の総資産額から総負債額を差し引いた純資産額で、それぞれ評価して資産計上することとなっている。

〈上場株式、非上場株式についての評価算定の方法〉

市場価格のある政府出資等の有価証券等(上場株式)

評価額=株式の1株当たりの評価時点の時価×株数

市場価格のない政府出資等の有価証券等(非上場株式)

評価額=(総資産額-総負債額)×出資割合

政府出資等の有価証券等が復興特会財務書類に計上されてその後売却される場合、復興特会財務書類の貸借対照表における「資産・負債差額の部」の本会計年度における増減内訳を要因別に示している資産・負債差額増減計算書にどのような金額が計上されることになるか、日本たばこ産業株式の24年度における売却及び日本郵政株式の27年度における売却を例にすると、次のとおりである。

区分 日本たばこ産業株式 日本郵政株式
期首
国有財産台帳価格により評価した額(時価)を取得原価である出資累計額により評価した額へと変更し、変更によって生じた差額を「評価差額の戻入」に計上する(図表4-16の❷)。
復興特会財務書類へ計上した年度に、国債整理特会における前年度末残高相当額(日本郵政の連結貸借対照表の純資産額に基づいて評価した額)を「市場価格のないもの」の「年度別増加額」に計上する(図表4-16の①)。
日本郵政の上場に伴い「市場価格のないもの」から「市場価格のあるもの」に振り替えるため、取得原価である出資累計額を「市場価格のないもの」の「年度別減少額」(同②)及び「市場価格のあるもの」の「年度別増加額」に計上する(同③)とともに、「市場価格のないもの」の「年度別増加額」に計上した額との差額を「市場価格のないもの」の「年度別評価差額」に計上する(同④)。
期中
有価証券の取得原価である出資累計額のうち、売却部分を「市場価格のあるもの」の「年度別減少額」に計上する(図表4-16の❺及び⑤)とともに、同額を資産・負債差額増減計算書の「保有株式の減少」又は「株式売却」に計上する(図表4-15の❻及び⑧)。そして、これに対応する株式売払収入を同計算書の「株式売払収入」に計上する(同❹及び⑨)。
期末
有価証券等のうち「市場価格のあるもの」について、年度末における有価証券の残高として、市場価格に基づく国有財産台帳価格を「年度末残高」に計上する(図表4-16の⑥)とともに、取得原価である出資累計額との差額(同(③+⑤)-⑥)を「年度別評価差額」に計上する(同⑦)。ただし、有価証券等の時価による評価額が著しく(30%以上)下落した場合には、原則として、資産・負債差額増減計算書の「年度別評価差額」ではなく、業務費用計算書の「資産評価損」等に計上する。
24年度に全て売却され残高がないため計上していない。
27年度末に残高があるため「年度末残高」及び「年度別評価差額」に計上している。

また、売却した当該有価証券等の売却差額は、売却実績に基づき時価を計上している「株式売払収入」と、売却部分に相当する出資累計額に基づき評価した額を計上している「保有株式の減少」又は「株式売却」との差額となるが、これらは資産・負債差額増減計算書の「その他資産・負債差額の増減」として計上される。

エ まとめ

集中復興期間における復旧・復興事業に係る予算現額計33兆4922億余円の27年度末現在における執行状況は、支出済額27兆6231億余円、繰越額1兆4111億余円、不用額4兆4579億余円であり、集中復興期間5か年度全体の執行率、繰越率、不用率はそれぞれ82.4%、4.2%、13.3%となっている。このうち、27年度予算に係る執行率、繰越率、不用率をみると、それぞれ63.9%、29.0%、6.9%となっている。

また、復旧・復興事業の歳入について集中復興期間における各年度の予算額と決算額とを比較すると、復興特別所得税は決算額が予算額を上回って推移しており、また、前年度剰余金受入も、25年度以降は決算額が予算額を上回っている。復興債の発行及び償還の状況についてみると、復興債の発行実績額は発行計画額を下回っており、各年度末現在額は23年度末の11兆2574億余円から27年度末の7兆2612億余円に減少している。

集中復興期間における復興財源フレームでは、3会社株式の売却による収入が計4.7兆円程度見込まれているが、これまでの実績は計2兆4006億余円となっており、今後確保すべき復興財源フレーム計上額は差引で計2.3兆円程度となる。これに対して、売却による収入は売却時点の株価に応じて決まることになるが、復興債の償還財源となる日本郵政株式及び東京地下鉄株式の27年度末の残高は、計3兆2788億余円となっている。

復興庁及び関係府省等は、復興・創生期間における事業の実施に当たっては、特定被災自治体等との緊密な連絡調整を行うことなどにより事業が迅速に実施されるようにするとともに、集中復興期間中の各種事業の実績を踏まえ、円滑に実施されるように努める必要がある。

(2) 国から財政支援等を受けて地方公共団体等が実施する復旧・復興事業の状況等

復興基本方針によれば、国は、被災地域における社会経済の再生及び生活の再建と活力ある日本の再生のために、国の総力を挙げて、東日本大震災からの復旧、そして将来を見据えた復興へと取組を進めていかなければならないとされ、東日本大震災からの復興を担う行政主体は、住民に最も身近で、地域の特性を理解している市町村が基本となるものとされている。そして、国は、復興の基本方針を示しつつ、市町村が能力を最大限発揮できるよう、現場の意向を踏まえて、財政、人材、ノウハウ等の面から必要な制度設計や支援を責任を持って実施するものとされ、県は、被災地域の復興に当たって、広域的な施策を実施するとともに、市町村の実態を踏まえて、市町村に関する連絡調整や市町村の行政機能の補完等の役割を担うものとされている。

復興基本方針を踏まえて、国は、地方公共団体等が実施する補助事業等、復興関連基金事業、復興交付金事業及び福島再生加速化交付金事業に対して国庫補助金等を交付したり、補助事業等の地方公共団体の負担額等に対処するために地方交付税の総額に係る特例を講じた震災復興特別交付税を交付したり、復興基金(注8)に対して地方交付税を交付したりするなどの多様な方法により財政支援を行っている。

そこで、特定被災自治体に対する国からの財政支援の状況、地方公共団体等が実施する復旧・復興事業の状況等について検査した。

(注8)
復興基金  住民の生活の安定やコミュニティの再生等について、単年度予算の枠に縛られずに弾力的かつきめ細かに対処できる資金として設置造成等されたもの
ア 特定被災自治体に対する国からの財政支援の状況

集中復興期間中の5か年度に東日本大震災関係経費として国から交付された国庫補助金等及び地方交付税のうち、特定被災自治体である11道県及び227市町村に交付されたものは、図表5-1のとおり、計13兆4117億余円であり、このうち東北3県及び沿岸31市町村に交付されたものが計11兆4867億余円となっていて、全体の85.6%を占めている。

主な財政支援に係る類型の概要は、次のとおりである。

復興関連基金事業は、各年度の所要額をあらかじめ見込み難く、弾力的な支出が必要であることなどの特段の事情があり、あらかじめ当該複数年度にわたる財源を確保しておくことがその安定的かつ効率的な実施に必要であると認められるものについて、国からの国庫補助金等の交付を受けて基金を設置造成等した地方公共団体、公益法人その他の団体(以下、これらの団体を「基金団体」という。)が事業を実施するものである。復興交付金事業及び福島再生加速化交付金事業は、復興庁から特定被災自治体等に通知された復興交付金又は福島再生加速化交付金に係る交付申請の上限額(以下「交付可能額」という。)の範囲内で、特定被災自治体等が国から復興交付金又は福島再生加速化交付金の交付を受けて、単年度で実施する事業(以下「単年度型事業」という。)又は基金を設置造成等して復興交付金事業計画、生活拠点形成事業計画若しくは帰還環境整備事業計画の計画期間内にこれを取り崩して実施する事業(以下「基金型事業」という。)のいずれかを選択するなどして実施するものである。震災復興特別交付税は、復旧・復興事業を実施する地方公共団体の財源の裏付けとなるものであり、一般会計及び復興特会から交付税特会に対して繰入れを行った後に地方公共団体の事業実施状況等に応じて交付額が決定されて交付されるものである。

これらの財政支援に係る類型ごとの交付額について、交付額の合計に占める割合をみると、補助事業等が32.9%と最も高く、次いで地方負担に係る地方財政措置としての震災復興特別交付税22.3%、復興交付金事業21.4%、復興関連基金事業19.4%の順となっている。事業主体別にみると、11道県実施分が56.8%、227市町村実施分が43.1%であり、それぞれの交付額の合計に占める財政支援に係る類型ごとの交付額の割合は、11道県実施分では補助事業等が33.4%、復興関連基金事業が32.9%となっていて、2事業で11道県実施分の6割以上を占めている。227市町村実施分では、復興交付金事業が41.8%、補助事業等が32.2%となっていて、2事業で227市町村実施分の7割以上を占めている。

なお、福島の復興再生に資するために福島県等に交付されている福島再生加速化交付金の交付額の同県に対する交付額の合計に占める割合は5.4%となっている。

図表5-1 特定被災自治体に対する国庫補助金等及び地方交付税の交付額の状況(平成23年度~27年度)

(単位:百万円、%)
特定被災自治体 国庫補助金等 地方交付税 特定被災自治体に対する交付額の合計(11道県及び227市町村計に対する割合) 交付額の合計に占める割合
補助事業等 復興関連基金事業 復興交付金事業 福島再生加速化交付金事業 地方負担に係る地方財政措置としての震災復興特別交付税 復興基金事業 補助事業等 復興関連基金事業 復興交付金事業 福島再生加速化交付金事業 地方負担に係る地方財政措置としての震災復興特別交付税 復興基金事業
国庫補助金等交付額 国庫補助金等交付額 復興交付金交付額 福島再生加速化交付金の交付額 震災復興特別交付税の交付額 特別交付税及び震災復興特別交付税の交付額
a b c d e f G=(a+b+c+d+e+f) (a/G) (b/G) (c/G) (d/G) (e/G) (f/G)
北海道 20,459 18,292 6 38,757 52.7 47.1 0.0
  4町 1,896 63 848 2,807 67.5 2.2 30.2
青森県 32,951 20,997 544 47,985 8,478 110,956 29.6 18.9 0.4 43.2 7.6
  4市町 9,462 5,074 13,019 27,557 34.3 18.4 47.2
岩手県 531,152 165,651 141,547 352,389 63,460 1,254,201 42.3 13.2 11.2 28.0 5.0
  33市町村 408,260 594,860 236,065 1,239,186 32.9 48.0 19.0
宮城県 1,142,468 314,767 209,477 602,908 136,855 2,406,478 47.4 13.0 8.7 25.0 5.6
  35市町村 989,585 6,497 1,484,211 608,239 3,088,533 32.0 0.2 48.0 19.6
福島県 664,423 1,900,092 89,644 178,919 393,605 67,306 3,293,992 20.1 57.6 2.7 5.4 11.9 2.0
  59市町村 282,148 85,000 250,348 48,365 284,291 950,153 29.6 8.9 26.3 5.0 29.9
茨城県 94,004 39,282 3,448 153,639 14,455 304,831 30.8 12.8 1.1 50.4 4.7
  40市町村 76,267 47,760 115,512 239,539 31.8 19.9 48.2
栃木県 9,715 12,922 16,317 4,000 42,955 22.6 30.0 37.9 9.3
  17市町 33,319 663 21,566 55,549 59.9 1.1 38.8
埼玉県 1,394 9,085 10,480 13.3 86.6
  1市 4 3,256 2,321 5,581 0.0 58.3 41.5
千葉県 26,351 9,757 251 45,004 4,145 85,511 30.8 11.4 0.2 52.6 4.8
  29市町 58,267 38,816 71,359 168,443 34.5 23.0 42.3
新潟県 13,180 8,978 13,295 1,000 36,454 36.1 24.6 36.4 2.7
  3市町 6,178 78 3,397 9,655 63.9 0.8 35.1
長野県 10,373 10,681 1,136 10,736 1,000 33,926 30.5 31.4 3.3 31.6 2.9
  2村 4,027 886 1,293 6,207 64.8 14.2 20.8
  11道県計 2,546,475 2,510,508 446,057 178,919 1,635,881 300,701 7,618,545 33.4 32.9 5.8 2.3 21.4 3.9
(56.8%)
227市町村計 1,869,418 91,497 2,426,020 48,365 1,357,914 5,793,215 32.2 1.5 41.8 0.8 23.4
(43.1%)
11道県及び227市町村計 4,415,894 2,602,005 2,872,077 227,285 2,993,796 300,701 13,411,760 32.9 19.4 21.4 1.6 22.3 2.2
(100%)
東北3県及び沿岸31市町村計 3,748,450 2,387,009 2,689,286 179,120 2,215,221 267,622 11,486,711 32.6 20.7 23.4 1.5 19.2 2.3
  11道県及び227市町村計に占める割合 84.8 91.7 93.6 78.8 73.9 88.9 85.6
注(1)
震災復興特別交付税の交付額は、交付決定額と同額となっている。
注(2)
震災復興特別交付税は、地方税法(昭和25年法律第226号)等の特例措置による減収額に対する措置等を含んでいることから、震災復興特別交付税の交付額等全体に占める割合(表のe/G)が、復旧・復興事業に係る地方負担割合を示すものではない。

このように、国は、東日本大震災からの復旧・復興を進めるために事業の実施主体である地方公共団体等に対して多様な財政支援を行っており、特に、補助事業等、復興関連基金事業、復興交付金事業及び震災復興特別交付税については、いずれもこれまでの交付額が2兆円以上の規模に上っている。これらの財政支援について、国の予算の執行としては、国庫補助金等の交付や復興特会から交付税特会への繰入れの段階で支出済額となるため、国の予算執行のみでは復旧・復興事業の実質的な実施状況を把握できない。

そこで、国庫補助金等の交付先の地方公共団体等が実施している災害復旧等の補助事業等、復興関連基金事業、復興交付金事業及び福島再生加速化交付金事業の実施状況並びに交付税特会における震災復興特別交付税に係る経費の執行状況について検査したところ、次のイからカまでのとおりとなっていた。

イ 補助事業等の実施状況

特定被災自治体が東日本大震災関係経費により各府省庁から国庫補助金等の交付を受けて実施している補助事業等は、被災直後の被災者に対する緊急援助やその後の避難生活等における各種支援、災害廃棄物の処理の実施、各種産業の復興支援、文教施設、社会福祉施設等の公共施設や河川、道路、港湾等の社会基盤の災害復旧等のためのもので多岐にわたっている。

国は、これらの補助事業等に係る国庫補助金等の交付額を、事業主体である地方公共団体等が交付申請に当たり東日本大震災に伴う被害等の状況から各年度に実施すると見込まれる事業の規模に基づいて算出した概算事業費に基づき決定し、当該補助事業等の実績に基づき確定している。このため、事業の規模が見込みより縮小したり、実施する見込みの事業が実施されなかったりするなどした場合、当該国庫補助金等の交付決定額と交付額との間に差が生ずることになる。また、各年度の実施対象の事業が計画より遅延するなどして、年度内に完了しない場合には、未完了分の事業費に相当する予算額は、一定の条件の下、最大翌々年度まで繰り越すことができることとなっている。

そこで、特定被災自治体が実施している補助事業等について、特定被災自治体及び各府省庁から調書等を徴して、道県事業及び広域連合等が複数の市町村において実施する広域的な事業等(以下「道県事業・その他分」という。)と、各市町村が実施する「市町村事業分」とに区分し、集中復興期間の国庫補助金等の交付決定額の計に対する交付額の計の割合(以下「交付率」という。)や、国庫補助金等の交付決定額の計から不用額の計を控除した額(交付額の計と翌年度への繰越額の計を加えた額と等しくなる。)に対する実際の交付額の計の割合(以下「補助事業執行率」という。)により実施状況を分析した。

(ア) 特定被災自治体別の補助事業等の実施状況

集中復興期間における特定被災自治体に対する国庫補助金等の交付決定額は、図表5-2のとおり、道県事業・その他分が3兆4640億余円、市町村事業分が2兆3296億余円、計5兆7936億余円となっている。これに対する5か年度の交付額及び不用額は、それぞれ計4兆4158億余円、計8021億余円となっていて、5756億余円が28年度に繰り越されている。また、特定被災自治体のうち津波等により甚大な被害を受けた東北3県及び管内127市町村への交付決定額及び交付額は、それぞれ計5兆3267億余円、計4兆0180億余円となっていて、特定被災自治体に対する交付決定額及び交付額の9割以上を占めている。

交付率は、特定被災自治体全体で76.2%であり、5道県(北海道、青森、埼玉、新潟、長野各県)で90%以上となっている。また、補助事業執行率は、特定被災自治体全体で88.4%であり、北海道及び埼玉県で100%、6県(青森、福島、栃木、千葉、新潟、長野各県)で90%以上となっている(特定被災自治体における補助事業等の実施状況については別図表4参照)。

図表5-2 特定被災自治体別の補助事業等の実施状況(平成23年度から27年度までの累計)

(単位:百万円、%)
道県名 区分 交付決定額計 交付額計 交付率 平成28年度への繰越額計 不用額計 27年度末の補助事業執行率
A B B/A C D=A-B-C B/(A-D)
北海道 道県事業・その他分 21,400 20,459 95.6 941 100.0
市町村事業分 1,966 1,896 96.4 70 100.0
23,367 22,355 95.6 1,011 100.0
青森県 道県事業・その他分 36,416 32,951 90.4 2,744 720 92.3
市町村事業分 10,636 9,462 88.9 809 364 92.1
47,053 42,414 90.1 3,553 1,084 92.2
岩手県 道県事業・その他分 774,245 531,152 68.6 107,114 135,979 83.2
市町村事業分 505,480 408,260 80.7 42,356 54,863 90.6
1,279,726 939,412 73.4 149,471 190,842 86.2
宮城県 道県事業・その他分 1,639,771 1,142,468 69.6 205,081 292,221 84.7
市町村事業分 1,279,681 989,585 77.3 95,936 194,159 91.1
2,919,453 2,132,053 73.0 301,017 486,381 87.6
福島県 道県事業・その他分 806,338 664,423 82.4 80,602 61,312 89.1
市町村事業分 321,270 282,148 87.8 10,950 28,171 96.2
1,127,609 946,572 83.9 91,553 89,484 91.1
茨城県 道県事業・その他分 116,274 94,004 80.8 17,460 4,809 84.3
市町村事業分 86,309 76,267 88.3 3,146 6,895 96.0
202,584 170,272 84.0 20,606 11,705 89.2
栃木県 道県事業・その他分 10,726 9,715 90.5 1,011 100.0
市町村事業分 43,600 33,319 76.4 1,842 8,437 94.7
54,327 43,035 79.2 1,842 9,449 95.8
埼玉県 道県事業・その他分 1,416 1,394 98.4 22 100.0
市町村事業分 4 4 98.6 0 100.0
1,420 1,398 98.4 22 100.0
千葉県 道県事業・その他分 33,395 26,351 78.9 5,783 1,260 82.0
市町村事業分 69,995 58,267 83.2 1,410 10,317 97.6
103,391 84,619 81.8 7,194 11,577 92.1
新潟県 道県事業・その他分 13,378 13,180 98.5 17 180 99.8
市町村事業分 6,528 6,178 94.6 81 268 98.7
19,907 19,359 97.2 99 448 99.4
長野県 道県事業・その他分 10,702 10,373 96.9 246 83 97.6
市町村事業分 4,151 4,027 97.0 82 42 98.0
14,854 14,400 96.9 328 125 97.7
11道県計 道県事業・その他分 3,464,068 2,546,475 73.5 419,051 498,541 85.8
市町村事業分 2,329,626 1,869,418 80.2 156,616 303,591 92.2
5,793,695 4,415,894 76.2 575,667 802,132 88.4
  うち東北3県計 道県事業・その他分 3,220,356 2,338,044 72.6 392,798 489,513 85.6
市町村事業分 2,106,432 1,679,994 79.7 149,243 277,195 91.8
5,326,789 4,018,038 75.4 542,042 766,708 88.1
(イ) 事業区分別の補助事業等の実施状況

特定被災自治体が実施している補助事業等について、各府省庁の主な補助事業をその内容により区分(以下、主な補助事業の内容による区分を「事業区分」という。)して、事業区分ごとの実施状況をみると、図表5-3のとおりである。

交付決定額についてみると、河川、港湾、上水道等の災害復旧に係る「社会基盤施設」「災害廃棄物処理」及び「漁業」が1兆円を超えており、「被災者支援」が8000億円の規模となっている。「災害廃棄物処理」及び「被災者支援」の実施状況についてみると、交付率がそれぞれ94.1%、89.8%、補助事業執行率はそれぞれ99.8%、100%と高くなっている。一方、「社会基盤施設」及び「漁業」の実施状況についてみると、復旧過程における事業計画の変更、設計、工法等の見直しなどの要因により、交付率がそれぞれ67.4%、57.0%、補助事業執行率はそれぞれ79.1%、77.8%となっている。

他の事業区分についてみると、公立学校施設や公民館等の公立社会教育施設の復旧事業等を実施する「文化・教育施設」では、交付決定額2178億余円に対して1869億余円が、農業用施設や農地の復旧事業等を実施する「農業」では、交付決定額2064億余円に対して1598億余円がそれぞれ交付され、27年度末の補助事業執行率は、それぞれ91.5%、92.8%といずれも高くなっている。また、地域経済の核となる中小企業等グループが策定した復興事業計画に基づき、その計画に不可欠な施設等の復旧・整備の事業を実施するなどの「中小企業」では、交付決定額3081億余円に対して2493億余円が交付され、補助事業執行率は87.6%となっている(補助事業等の所管別・事業別の実施状況については、別図表5参照)。

図表5-3 事業区分別の補助事業等の実施状況(平成23年度から27年度までの累計)

(単位:百万円、%)
事業区分 交付決定額計 交付額計 交付率 平成28年度への繰越額計 不用額計 27年度末の補助事業執行率
A B B/A C D=A-B-C B/(A-D)
社会基盤施設 1,715,834 1,157,537 67.4 304,555 253,741 79.1
災害廃棄物処理 1,085,699 1,021,880 94.1 1,271 62,547 99.8
漁業 1,003,250 572,151 57.0 162,958 268,140 77.8
被災者支援 803,043 721,669 89.8 81,374 100.0
中小企業 308,189 249,394 80.9 35,119 23,674 87.6
文化・教育施設 217,850 186,983 85.8 17,337 13,530 91.5
農業 206,494 159,855 77.4 12,329 34,309 92.8
その他 453,332 346,422 76.4 42,095 64,813 89.1
5,793,695 4,415,894 76.2 575,667 802,132 88.4
ウ 復興関連基金事業の実施状況
(ア) 基金事業等に関する国の動き

東日本大震災からの復興等に対する事業の一環として、国から国庫補助金等の交付を受けた基金団体は、基金を設置造成等することにより、復興関連基金事業を実施している。

集中復興期間における復興関連基金事業を含む基金事業等に関する国の動きは次のとおりである。

24年10月に、衆議院決算行政監視委員会は、政府に対し、復旧・復興予算で行われている全ての事業を各府省庁等が総点検して、優先順位及び予算の配分を見直すべきであるとし、その上で、不適切と認められた予算の執行停止も視野に入れて、被災地に必要かつ十分な支援が確実に届くよう最大限の努力をするよう求めた。

そして、24年11月に復興推進会議で決定された「基本的な考え方」では、被災地域の復旧・復興及び被災者の暮らしの再生のための施策に関する事業等のみを復興特会に計上することを基本とし、被災地域と密接に関連する地域において被災地域の復旧・復興のために一体不可分のものとして緊急に実施すべき施策及び全国的に緊急に実施する必要性が高く、即効性のある防災、減災等のための施策に関する事業等は、原則として復興特会には計上しないこととして、一部の復興関連予算に係る事業の執行を停止することとされたが、基金については国から支出済みであったため執行停止の対象外とされていた。その後、「今後の復旧・復興事業の規模と財源について」(平成25年1月復興推進会議決定)等において復興関連予算について使途の厳格化を行うこととされたことを踏まえて、基金についても使途の厳格化を徹底するため、復興庁及び財務省は、25年7月に、復興関連基金事業の所管府省に対して、「復興関連予算で造成された全国向け事業に係る基金への対応について」(平成25年復本第957号・財計第1690号。以下「基金使途通知」という。)を発出している。そして、基金使途通知において、その後に実施する復興関連基金事業については、被災地又は被災者に対する事業に使途を限定した上で、それ以外の事業のうち、執行済みの事業及び契約済みのものなど執行済みと認められる事業を除いた基金残額について国庫に返納することを要請している。

また、「経済財政運営と改革の基本方針2014」(平成26年6月閣議決定)では、基金の設置造成等の抑制、使用見込みの低い基金についての国庫返納の検討及び基金の執行状況の公表が示されている。

そして、26年10月には、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律施行令の一部を改正する政令」(平成26年政令第341号)が施行され、これまで法令上明確な定義が示されていなかった基金を財源とする事務又は事業(以下「基金事業等」という。)について、「複数年度にわたる事務又は事業であつて、各年度の所要額をあらかじめ見込み難く、弾力的な支出が必要であることその他の特段の事情があり、あらかじめ当該複数年度にわたる財源を確保しておくことがその安定的かつ効率的な実施に必要であると認められるものをいう」と規定されている。

これを受けて、財務省は、同月、同政令の施行に関し必要な事項を示すために、「基金造成費補助金等の活用に関する指針について」(平成26年財計第2534号。以下「基金指針」という。)を発出している。基金指針によれば、基金事業等に該当し得ると考えられる①不確実な事故等の発生に応じて資金を交付する事業、②資金の回収を見込んで貸付け等を行う事業、③当該事業の実施が他の事業の進捗に依存するもの以外の事務又は事業については、基金造成費補助金等(基金事業等の財源として各省各庁の長が交付する補助金等)によることなく対応することが可能か不断に検討するべきであるとされている。また、同政令においては、基金造成費補助金等の交付に当たって必ず付する条件として、使用見込みのない額及び残余額の速やかな国庫返納等について定めることとしており、各府省庁は、基金の執行管理に努めるものとされている。

(イ) 集中復興期間における復興関連基金事業の実施状況

集中復興期間における復興関連基金事業157事業の実施状況をみると、図表5-4のとおり、国庫補助金等交付額は計4兆4483億余円、27年度末までの基金の取崩額は2兆7683億余円、国庫補助金等交付額に対する取崩額の割合(以下「基金事業執行率」という。)は62.2%、27年度末に保有している国庫補助金等相当額は1兆3746億余円となっている。国庫補助金等交付額を所管府省庁別にみると、交付している8府省庁のうち環境省が1兆3121億余円と最も多額となっている。

図表5-4 集中復興期間における復興関連基金事業の実施状況

(単位:百万円、%)
事業番号 復旧・復興予算 基金事業名 所管府省庁 基金団体名 国庫補助金等交付額 平成27年度末までの取崩額(国庫返納額分を除く。) 基金事業執行率 27年度末までの国庫返納額(国庫補助金等相当額) 27年度末に保有している国庫補助金等相当額 当初の終了予定年月 27年度末時点の終了予定年月
A B B/A C A-B-C
1 23年度
第2次補正予算
福島県特別緊急除染事業 内閣府(内閣府本府) 福島県 17,981 14,460 80.4 - 3,521 定めていない。 29年3月末
2 23年度
第2次補正予算
(予備費)
東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質の除染事業等に必要な経費 内閣府(内閣府本府) 福島県 199,999 194,786 97.3 - 5,212 定めていない。 29年3月末
3 23年度
第2次補正予算
(予備費)
東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故による被害に係る応急の対策に関する事業に必要な経費 内閣府(内閣府本府) 福島県 40,385 38,310 94.8 - 2,074 定めていない。 29年3月末
4 23年度
第3次補正予算
復興支援型地域社会雇用創造事業 内閣府(内閣府本府) 一般財団法人ニューメディア開発協会 3,200 2,867 89.6 332 - 25年3月末
5 23年度
第3次補正予算
新しい公共支援事業 内閣府(内閣府本府) 岩手県、宮城県、福島県 879 819 93.2 59 - 25年3月末
6 24年度
当初予算
地方消費者行政活性化事業 内閣府(消費者庁) 岩手県、宮城県、福島県、茨城県 364 1,471 82.1 - 320 28年3月末 30年3月末
7 25年度
当初予算
地方消費者行政活性化事業 内閣府(消費者庁) 岩手県、宮城県、福島県、茨城県 729 28年3月末 30年3月末
8 26年度
当初予算
地方消費者行政活性化事業 内閣府(消費者庁) 岩手県、宮城県、福島県、茨城県 698 28年3月末 30年3月末
9 25年度
補正予算
住まいの復興給付金による被災者住宅再建支援対策事業 復興庁 一般財団法人住宅金融普及協会 25,000 6,583 26.3 - 18,417 27年9月末までに事業を開始(住宅取得等)し、支払が終了するまで 31年6月末までに事業を開始(住宅取得等)し、支払が終了するまで
10 26年度
補正予算
福島原子力災害復興交付金 復興庁 福島県 100,000 1,537 1.5 - 98,462 57年3月末
11 23年度
第1次補正予算
被災児童生徒就学支援等臨時特例交付金 文部科学省 47都道府県 11,313 35,267 81.0 8,244 - 27年3月末
12 23年度
第3次補正予算
被災児童生徒就学支援等臨時特例交付金 文部科学省 47都道府県 29,744 27年3月末
13 26年度
当初予算
被災児童生徒就学支援等臨時特例交付金 文部科学省 宮城県、京都府、熊本県 2,454 27年3月末
14 23年度
第3次補正予算
幼稚園等の認定こども園としての再開支援(安心こども基金) 文部科学省 岩手県、宮城県、福島県、茨城県、千葉県 1,810 1,256 69.4 553 - 25年3月末 27年3月末までに施設整備に着手し、28年3月末まで
15 23年度
第3次補正予算
低線量域における被ばく線量モニターの開発 文部科学省 福島県 625 554 88.5 - 71 定めていない。
16 23年度
第3次補正予算
放射性薬剤の研究開発・製造拠点の整備 文部科学省 福島県 11,362 8,458 74.4 - 2,904 定めていない。
17 23年度
第3次補正予算
放射性核種の生態系における環境動態調査等 文部科学省 福島県 2,245 752 33.5 - 1,492 定めていない。
18 23年度
第3次補正予算
福島県環境創造センター整備事業 文部科学省 福島県 8,042 4,965 61.7 - 3,076 定めていない。
※ 19 23年度
第3次補正予算
奨学金事業(高校生) 文部科学省 34都府県 18,946 16,709 88.1 2,237 - 27年3月末
20 23年度
第3次補正予算
教育研究環境整備に向けた取組支援(高等学校等) 文部科学省 岩手県、宮城県、福島県 4,487 3,289 73.3 - 1,197 27年3月末 29年3月末
21 23年度
第3次補正予算
教育研究環境整備に向けた取組支援(専修学校等) 文部科学省 岩手県、宮城県、福島県 1,934 420 21.7 - 1,513 27年3月末 29年3月末
22 23年度
第1次補正予算
地域支え合い体制づくり事業 厚生労働省 9県 7,020 16,750 77.2 825 4,099 24年3月末 28年3月末
23 23年度
第3次補正予算
地域支え合い体制づくり事業 厚生労働省 10道県 9,035 25年3月末 28年3月末
24 25年度
当初予算
地域支え合い体制づくり事業 厚生労働省 宮城県、福島県 2,303 26年3月末 28年3月末
25 26年度
当初予算
地域支え合い体制づくり事業 厚生労働省 宮城県 1,548 27年3月末 28年3月末
26 27年度
当初予算
地域支え合い体制づくり事業 厚生労働省 宮城県 1,766 28年3月末
27 23年度
第1次補正予算
安心こども基金(地域子育て創生事業)の活用による被災児童の生活復旧支援 厚生労働省 20都県 2,719 2,512 92.3 - 207 24年3月末 26年3月末
28 23年度
第1次補正予算
重点分野雇用創造事業の拡充 厚生労働省 18都道県 50,000 49,468 98.9 217 313 25年3月末 29年3月末
※ 29 23年度
第3次補正予算
生活福祉資金貸付 厚生労働省 32都道府県 15,190 12,605 82.9 1,949 - 25年3月末 27年3月末
30 23年度
第3次補正予算
被災地における保育所等の複合化・多機能化による子どもを地域で支える基盤の構築(安心こども基金の追加) 厚生労働省 青森県、岩手県、福島県、茨城県、千葉県 1,553 858 55.2 694 - 25年3月末までに施設整備に着手し、26年3月末まで 27年3月末までに施設整備に着手し、28年3月末まで
※ 31 23年度
第3次補正予算
医療施設等の防災対策の強化 厚生労働省 15都県 15,633 11,010 70.4 1,115 3,507 24年3月末までの着工事業の終了まで 33年3月末
※ 32 23年度
第3次補正予算
社会福祉施設等耐震化等臨時特例基金 厚生労働省 茨城県、長野県、和歌山県、広島県、福岡県、熊本県、沖縄県 2,664 2,664 100.0 - - 27年3月末 29年3月末
33 23年度
第3次補正予算
被災地における医療提供体制の再構築(既存の地域医療再生基金に積増し) 厚生労働省 岩手県、宮城県、福島県 72,000 38,142 52.9 - 33,857 28年3月末 31年3月末
※ 34 23年度
第3次補正予算
社会的包摂・「絆」再生事業 厚生労働省 24都府県 17,549 17,549 100.0 1,564 - 25年3月末 27年3月末
※ 35 23年度
第3次補正予算
パーソナル・サポート・サービスモデル・プロジェクト 厚生労働省 19都道府県 2,215 1,984 89.5 214 - 25年3月末
※ 36 23年度
第3次補正予算
被災生活保護受給者に対する生活再建サポート事業 厚生労働省 38都道府県 1,771 81 4.5 778 - 25年3月末 26年3月末
37 23年度
第3次補正予算
介護基盤復興まちづくり整備事業(介護基盤整備基金(ハード)への追加) 厚生労働省 岩手県、宮城県、福島県 2,850 1,512 53.0 1,337 - 25年3月末 28年3月末
38 23年度
第3次補正予算
被災3県の革新的医療機器創出・開発促進事業(既存の地域医療再生基金に追加) 厚生労働省 岩手県、宮城県、福島県 4,320 3,910 90.5 - 409 28年3月末
39 23年度
第3次補正予算
被災地健康支援事業 厚生労働省 岩手県、宮城県、福島県、茨城県、千葉県、長野県 2,893 3,263 75.9 6 1,027 25年3月末 28年3月末
40 26年度
当初予算
被災地健康支援事業 厚生労働省 岩手県、宮城県、福島県 1,000 27年3月末 28年3月末
41 27年度
当初予算
被災地健康支援事業 厚生労働省 岩手県、宮城県、福島県 404 28年3月末
42 23年度
第3次補正予算
被災者の心のケア事業(障害者自立支援対策臨時特例基金の追加、災害時等心のケア支援体制整備事業費の一部) 厚生労働省 岩手県、宮城県、福島県 2,791 1,414 50.6 1,377 - 25年3月末
43 23年度
第3次補正予算
被災地障害福祉サービス基盤整備事業(障害者自立支援対策臨時特例基金の追加) 厚生労働省 岩手県、宮城県、福島県 1,521 844 55.4 677 - 25年3月末
※ 44 23年度
第3次補正予算
重点分野雇用創造事業の拡充(震災対応事業の延長) 厚生労働省 47都道府県 200,000 187,837 93.9 10,983 1,179 26年3月末 29年3月末
45 23年度
第3次補正予算
重点分野雇用創造事業の拡充(雇用復興推進事業の創設) 厚生労働省 9県 151,000 126,261 83.6 414 24,324 28年3月末 32年3月末
※ 46 23年度
第3次補正予算
新卒者就職実現プロジェクト事業の被災地に係る特例措置の延長等 厚生労働省 中央職業能力開発協会 23,520 10,886 46.2 12,633 - 24年3月末 25年3月末
※ 47 23年度
第3次補正予算
被災者への心のケア対策等の推進事業(自殺対策) 厚生労働省 47都道府県 3,700 3,234 87.4 395 69 25年3月末 29年3月末
48 24年度
当初予算
(予備費)
地域医療提供体制の再構築 厚生労働省 岩手県、宮城県、福島県、茨城県 38,000 19,342 50.9 - 18,657 28年3月末 31年3月末
49 24年度
補正予算
震災等緊急雇用対応事業 厚生労働省 9県 50,000 44,035 88.0 672 5,292 27年3月末 29年3月末
50 25年度
補正予算
産業政策と一体となった被災地の雇用支援等 厚生労働省 岩手県、宮城県、福島県、茨城県 44,800 8,385 18.7 - 36,414 30年3月末 32年3月末
51 27年度
当初予算
震災等対応雇用支援事業 厚生労働省 宮城県、福島県 9,333 6,936 74.3 - 2,397 29年3月末
52 27年度
当初予算
事業復興型雇用創出事業 厚生労働省 岩手県、宮城県 6,363 - - - 6,363 31年3月末 32年3月末
53 27年度
当初予算
地域医療提供体制の再構築 厚生労働省 岩手県、宮城県、福島県、茨城県 17,229 4,652 27.0 - 12,577 28年3月末 31年3月末
54 23年度
第1次補正予算
農業信用保険事業交付金(復旧・復興対策特別保証) 農林水産省 独立行政法人農林漁業信用基金 686 523 7.6 - 6,276 保証残高及び求償権残高がなくなるまで
55 23年度
第3次補正予算
農業信用保険事業交付金(復旧・復興対策特別保証) 農林水産省 独立行政法人農林漁業信用基金 5,049 保証残高及び求償権残高がなくなるまで
56 24年度
当初予算
農業信用保険事業交付金(復旧・復興対策特別保証) 農林水産省 独立行政法人農林漁業信用基金 656 保証残高及び求償権残高がなくなるまで
57 25年度
当初予算
農業信用保険事業交付金(復旧・復興対策特別保証) 農林水産省 独立行政法人農林漁業信用基金 408 保証残高及び求償権残高がなくなるまで
58 23年度
第1次補正予算
林業信用保証事業交付金(災害復旧) 農林水産省 独立行政法人農林漁業信用基金 5,770 1,040 14.8 4,380 1,602 保証残高がなくなるまで
59 23年度
第3次補正予算
林業信用保証事業交付金(災害復旧) 農林水産省 独立行政法人農林漁業信用基金 130 保証残高がなくなるまで
60 24年度
当初予算
林業信用保証事業交付金(災害復旧) 農林水産省 独立行政法人農林漁業信用基金 441 保証残高がなくなるまで
61 25年度
当初予算
林業信用保証事業交付金(災害復旧) 農林水産省 独立行政法人農林漁業信用基金 469 保証残高がなくなるまで
62 26年度
当初予算
林業信用保証事業交付金(災害復旧) 農林水産省 独立行政法人農林漁業信用基金 155 保証残高がなくなるまで
63 27年度
当初予算
林業信用保証事業交付金(災害復旧) 農林水産省 独立行政法人農林漁業信用基金 57 保証残高がなくなるまで
64 23年度
第1次補正予算
漁業者等緊急保証対策事業交付金 農林水産省 独立行政法人農林漁業信用基金 1,819 - - - 5,963 保証残高及び求償権残高がなくなるまで
65 23年度
第3次補正予算
漁業者等緊急保証対策事業交付金 農林水産省 独立行政法人農林漁業信用基金 336 保証残高及び求償権残高がなくなるまで
66 24年度
当初予算
漁業者等緊急保証対策事業交付金 農林水産省 独立行政法人農林漁業信用基金 1,489 保証残高及び求償権残高がなくなるまで
67 25年度
当初予算
漁業者等緊急保証対策事業交付金 農林水産省 独立行政法人農林漁業信用基金 1,041 保証残高及び求償権残高がなくなるまで
68 26年度
当初予算
漁業者等緊急保証対策事業交付金 農林水産省 独立行政法人農林漁業信用基金 765 保証残高及び求償権残高がなくなるまで
69 27年度
当初予算
漁業者等緊急保証対策事業交付金 農林水産省 独立行政法人農林漁業信用基金 510 保証残高及び求償権残高がなくなるまで
70 23年度
第1次補正予算
漁業者等緊急保証対策事業 農林水産省 北海道漁業信用基金協会等12漁業信用基金協会 360 1,623 71.3 13 638 保証残高及び求償権残高がなくなるまで
71 23年度
第3次補正予算
漁業者等緊急保証対策事業 農林水産省 青森県漁業信用基金協会等6漁業信用基金協会 67 保証残高及び求償権残高がなくなるまで
72 24年度
当初予算
漁業者等緊急保証対策事業 農林水産省 北海道漁業信用基金協会等13漁業信用基金協会 550 保証残高及び求償権残高がなくなるまで
73 25年度
当初予算
漁業者等緊急保証対策事業 農林水産省 北海道漁業信用基金協会等13漁業信用基金協会 494 保証残高及び求償権残高がなくなるまで
74 26年度
当初予算
漁業者等緊急保証対策事業 農林水産省 北海道漁業信用基金協会等13漁業信用基金協会 428 保証残高及び求償権残高がなくなるまで
75 27年度
当初予算
漁業者等緊急保証対策事業 農林水産省 北海道漁業信用基金協会等12漁業信用基金協会 373 保証残高及び求償権残高がなくなるまで
76 23年度
第3次補正予算
農業経営金融支援対策費補助金(復旧・復興対策特別保証) 農林水産省 岩手県農業信用基金協会等3農業信用基金協会 1,883 162 8.6 - 1,720 保証残高及び求償権残高がなくなるまで
77 23年度
第3次補正予算
農地土壌等の浄化の研究拠点施設整備調査事業(福島基金分) 農林水産省 福島県 100 11 11.6 88 - 33年3月末 27年3月末
※ 78 23年度
第3次補正予算
配合飼料価格安定対策事業 農林水産省 公益社団法人配合飼料供給安定機構 9,700 9,700 100.0 - - 定めていない。 38年3月末
79 23年度
第3次補正予算
被災者向け農の雇用事業 農林水産省 全国農業会議所 700 220 31.5 479 - 25年3月末
※ 80 23年度
第3次補正予算
森林整備加速化・林業再生事業 農林水産省 45道府県(東京都及び神奈川県を除く。) 139,945 88,694 63.3 46,303 4,947 27年3月末 定めていない。
81 23年度
第3次補正予算
漁業・養殖業復興支援事業 農林水産省 特定非営利活動法人水産業・漁村活性化推進機構 81,753 37,970 41.1 - 54,387 29年3月末 32年3月末
82 24年度
当初予算
漁業・養殖業復興支援事業 農林水産省 特定非営利活動法人水産業・漁村活性化推進機構 10,605 29年3月末 32年3月末
※ 83 23年度
第3次補正予算
漁業経営セーフティーネット構築事業 農林水産省 一般社団法人漁業経営安定化推進協会 3,980 3,980 100.0 - - 定めていない。
84 24年度
当初予算
被災者向け農の雇用事業 農林水産省 全国農業会議所 422 269 63.6 153 - 26年3月末
85 24年度
補正予算
福島発農産物等戦略的情報発信事業 農林水産省 福島県 1,299 1,299 100.0 - - 26年3月末 27年3月末
86 24年度
補正予算
福島県営農再開支援事業 農林水産省 福島県 23,185 8,826 38.0 - 14,358 28年3月末 31年3月末
87 25年度
当初予算
被災者向け農の雇用事業 農林水産省 全国農業会議所 187 107 57.0 80 - 27年3月末
88 25年度
補正予算
福島発農産物等戦略的情報発信事業 農林水産省 福島県 1,604 1,604 100.0 - - 27年3月末
89 26年度
当初予算
被災者向け農の雇用事業 農林水産省 全国農業会議所 112 49 43.9 44 19 28年3月末
90 23年度
第1次補正予算
中小企業災害復旧資金利子補給事業 経済産業省 独立行政法人中小企業基盤整備機構 10,000 1,465 14.6 - 8,534 定めていない。
91 23年度
第1次補正予算
中小企業の資金繰り支援(保証) 経済産業省 一般社団法人全国信用保証協会連合会 39,600 3,656 5.2 - 66,043 定めていない。
92 23年度
第3次補正予算
経営安定関連保証等対策費補助事業 経済産業省 一般社団法人全国信用保証協会連合会 30,100 定めていない。
93 23年度
第1次補正予算
石油製品販売業災害特別保証事業 経済産業省 一般社団法人全国石油協会 5,079 267 5.2 3,199 1,612 定めていない。
94 23年度
第1次補正予算
特定被災地域石油製品供給支援事業 経済産業省 一般社団法人全国石油協会 910 - - 910 - 定めていない。
95 23年度
第1次補正予算
旧鉱物採掘区域災害復旧費補助金 経済産業省 宮城県(公益社団法人みやぎ農業振興公社) 248 248 100.0 - - 28年3月末 33年3月末
96 23年度
第2次補正予算
中小企業再生支援利子補給事業 経済産業省 独立行政法人中小企業基盤整備機構 18,400 2,763 15.0 - 15,636 定めていない。
97 23年度
第3次補正予算
医療福祉機器・創薬産業拠点整備事業 経済産業省 福島県 39,493 23,185 58.7 - 16,307 定めていない。 33年3月末
※ 98 23年度
第3次補正予算
被災地域等地下タンク環境保全対策促進事業(全国防災) 経済産業省 一般社団法人全国石油協会 6,986 7,054 80.7 1,681 - 27年3月末
※ 99 23年度
第3次補正予算
被災地域等地下タンク環境保全対策促進事業(被災地向け) 経済産業省 一般社団法人全国石油協会 1,749 27年3月末
100 23年度
第3次補正予算
被災中小企業復興支援リース補助事業 経済産業省 日本商工会議所 10,049 4,066 40.4 - 5,982 31年3月末
※ 101 23年度
第3次補正予算
中小企業人材対策事業 経済産業省 全国中小企業団体中央会 2,487 1,080 43.4 1,406 - 27年3月末 26年5月末
※ 102 23年度
第3次補正予算
国内立地推進事業費補助金 経済産業省 一般社団法人環境パートナーシップ会議 295,000 176,764 59.9 72,807 45,428 27年3月末
103 23年度
第3次補正予算
がんばろうふくしま産業復興企業立地支援事業 経済産業省 福島県 170,000 130,144 61.9 - 80,079 29年3月末
104 24年度
当初予算
(予備費)
地域経済産業復興立地推進事業 経済産業省 福島県 40,224 29年3月末
※ 105 23年度
第3次補正予算
産業技術研究開発拠点立地推進事業費補助金(希少金属使用量削減・代替技術開発設備整備費等補助金) 経済産業省 一般社団法人環境パートナーシップ会議 8,499 5,164 60.7 3,150 184 27年3月末
※ 106 23年度
第3次補正予算
産業技術研究開発拠点立地推進事業費補助金(先端技術実証・評価設備整備費等補助金) 経済産業省 一般社団法人環境パートナーシップ会議 26,500 17,363 65.5 6,830 2,305 28年3月末
※ 107 23年度
第3次補正予算
住宅用太陽光発電導入支援復興対策基金造成事業費補助金 経済産業省 一般社団法人太陽光発電協会 86,992 73,945 85.0 13,047 - 27年3月末
※ 108 23年度
第3次補正予算
住宅用太陽光発電高度普及促進復興対策基金造成事業費補助金 経済産業省 一般社団法人太陽光発電協会 32,394 31,811 98.2 582 - 27年3月末
※ 109 23年度
第3次補正予算
エネルギー管理システム導入促進事業費補助金 経済産業省 一般社団法人環境パートナーシップ会議 30,000 16,496 54.9 13,503 - 26年11月末
※ 110 23年度
第3次補正予算
電力需要ピークカット蓄電池導入支援事業 経済産業省 一般社団法人環境パートナーシップ会議 20,999 11,840 56.3 9,159 - 26年3月末 27年3月末
※ 111 23年度
第3次補正予算
建築物節電改修支援事業費補助金 経済産業省 一般社団法人環境パートナーシップ会議 15,000 10,200 68.0 4,799 - 26年11月末
※ 112 23年度
第3次補正予算
再生可能エネルギー固定価格買取制度施行事業費補助金 経済産業省 一般社団法人低炭素投資促進機構 7,000 7,000 100.0 - - 定めていない。 25年3月末
113 23年度
第3次補正予算
再生可能エネルギー発電設備等導入促進支援復興対策事業費補助金 経済産業省 一般社団法人太陽光発電協会 32,599 19,032 58.3 11,396 2,170 28年3月末
114 23年度
第3次補正予算
スマートコミュニティ導入促進事業費補助金 経済産業省 一般社団法人新エネルギー導入促進協議会 8,059 2,412 29.9 - 5,646 28年3月末 33年3月末
115 23年度
第3次補正予算
スマートエネルギーシステム導入促進事業費補助金 経済産業省 一般社団法人新エネルギー導入促進協議会 4,346 1,683 38.7 2,662 - 28年3月末
※ 116 23年度
第3次補正予算
火力発電運転円滑化対策費補助金 経済産業省 一般社団法人環境パートナーシップ会議 9,000 2,836 31.5 6,163 - 定めていない。 26年3月末
※ 117 23年度
第3次補正予算
温排水利用施設整備等対策交付金 経済産業省 静岡県 995 430 43.2 564 - 定めていない。 26年3月末
118 23年度
第3次補正予算
被災地域石油製品販売業再建等支援事業 経済産業省 一般社団法人全国石油協会 2,349 591 25.1 - 1,758 定めていない。
119 23年度
第3次補正予算
旧鉱物採掘区域災害復旧費補助金 経済産業省 岩手県(一般社団法人岩手県土木技術センター)、宮城県(公益社団法人みやぎ農業振興公社)、福島県(公益財団法人福島県農業振興公社) 495 494 78.8 - 132 28年3月末 33年3月末
120 24年度
補正予算
旧鉱物採掘区域災害復旧費補助金 経済産業省 宮城県(公益社団法人みやぎ農業振興公社) 132 28年3月末 33年3月末
※ 121 24年度
当初予算
産業技術研究開発拠点立地推進事業費補助金(産学連携イノベーション促進事業費補助金) 経済産業省 一般社団法人環境パートナーシップ会議 4,000 3,069 76.7 904 25 28年3月末
※ 122 24年度
当初予算
産業技術研究開発拠点立地推進事業費補助金(先端技術実証・評価設備整備費等補助金) 経済産業省 一般社団法人環境パートナーシップ会議 10,000 - - 10,000 - 26年3月末
123 24年度
当初予算
国内立地推進事業費補助金(原子力災害周辺地域産業復興企業立地補助事業) 経済産業省 一般社団法人環境パートナーシップ会議 14,000 4,918 35.1 1,196 7,884 29年3月末
124 24年度
当初予算
(予備費)
福島県医療機器開発・安全性評価センター整備事業 経済産業省 福島県 13,390 5,531 41.3 - 7,858 32年3月末
125 25年度
当初予算
津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金 経済産業省 一般社団法人地域デザインオフィス 110,000 11,167 5.3 - 197,832 30年3月末 33年3月末
126 25年度
補正予算
津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金 経済産業省 一般社団法人地域デザインオフィス 33,000 30年3月末 33年3月末
127 26年度
当初予算
津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金 経済産業省 一般社団法人地域デザインオフィス 30,000 30年3月末 33年3月末
128 27年度
当初予算
津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金 経済産業省 一般社団法人地域デザインオフィス 36,000 30年3月末 33年3月末
129 27年度
補正予算
官民合同チーム個別訪問支援事業 経済産業省 一般社団法人福島相双復興推進機構 8,199 - - - 8,199 33年3月末
130 27年度
補正予算
中小・小規模事業者の事業再開等支援事業 経済産業省 福島県 7,399 - - - 7,399 33年3月末
131 27年度
補正予算
事業再開・帰還促進交付金 経済産業省 福島県 7,200 - - - 7,200 33年3月末
132 23年度
第1次補正予算
災害復興住宅融資等事業 国土交通省 独立行政法人住宅金融支援機構 52,600 14,963 6.1 - 227,336 災害復興住宅融資の返済が完了するまで
133 23年度
第3次補正予算
災害復興住宅融資等事業 国土交通省 独立行政法人住宅金融支援機構 135,800 災害復興住宅融資の返済が完了するまで
134 24年度
当初予算
災害復興住宅融資等事業 国土交通省 独立行政法人住宅金融支援機構 53,900 災害復興住宅融資の返済が完了するまで
135 23年度
第1次補正予算
既往貸付者に係る返済方法の変更事業 国土交通省 独立行政法人住宅金融支援機構 3,400 5,084 27.7 8,489 4,725 定めていない。
136 23年度
第3次補正予算
既往貸付者に係る返済方法の変更事業 国土交通省 独立行政法人住宅金融支援機構 14,900 定めていない。
※ 137 23年度
第3次補正予算
住宅エコポイント 国土交通省 一般社団法人環境パートナーシップ会議 72,300 58,902 81.4 13,154 243 27年1月末(ポイントの交換期限)
138 23年度
第3次補正予算
優良住宅取得支援制度の拡充による復興の推進 国土交通省 独立行政法人住宅金融支援機構 15,900 8,543 53.7 - 7,356 申請を受け付けた住宅ローンの返済が完了するまで
139 25年度
当初予算
造船業等復興支援基金 国土交通省 公益財団法人日本財団 16,024 964 6.0 2,860 12,199 29年3月末 31年3月末
140 23年度
第2次補正予算
原子力被災者健康確保・管理関連交付金 環境省 福島県 78,182 21,878 27.9 - 56,304 定めていない。 53年3月末
141 23年度
第3次補正予算
地域グリーンニューディール基金の拡充(災害廃棄物処理事業の地方支援) 環境省 10道県 67,963 67,963 100.0 - - 26年3月末
142 23年度
第3次補正予算
放射性物質により汚染された土壌等の除染の実施 環境省 福島県 70,644 779,897 96.5 - 28,133 定めていない。
143 24年度
当初予算
放射性物質により汚染された土壌等の除染の実施 環境省 福島県 96,119 定めていない。
144 25年度
当初予算
放射性物質により汚染された土壌等の除染の実施 環境省 福島県 189,839 定めていない。
145 25年度
補正予算
放射性物質により汚染された土壌等の除染の実施 環境省 福島県 80,000 定めていない。
146 26年度
当初予算
放射性物質により汚染された土壌等の除染の実施 環境省 福島県 128,300 定めていない。
147 27年度
当初予算
放射性物質により汚染された土壌等の除染の実施 環境省 福島県 171,467 定めていない。
148 27年度
補正予算
放射性物質により汚染された土壌等の除染の実施 環境省 福島県 71,660 定めていない。
※ 149 23年度
第3次補正予算
住宅エコポイント 環境省 一般社団法人環境パートナーシップ会議 72,300 58,902 81.4 13,154 243 27年1月末(ポイントの交換期限)
150 23年度
第3次補正予算
グリーンニューディール基金の拡充(自立・分散型エネルギー供給等によるエコタウン化事業) 環境省 青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、仙台市 83,977 71,117 84.6 - 12,859 28年3月末 33年3月末
151 24年度
当初予算
震災がれき処理促進地方公共団体緊急支援基金事業(グリーンニューディール基金) 環境省 9県 30,797 20,659 67.0 4,806 5,330 26年3月末 30年3月末
152 24年度
当初予算
(予備費)
福島健康管理拠点の緊急整備 環境省 福島県 5,980 3,823 63.9 - 2,156 定めていない。 28年10月末
153 24年度
補正予算
福島県環境創造センター(仮称)整備事業 環境省 福島県 11,337 6,814 60.1 - 4,522 定めていない。
154 26年度
補正予算
中間貯蔵施設整備等影響緩和交付金 環境省 福島県、大熊町、双葉町 150,000 5,357 3.5 - 144,642 57年3月末
155 25年度
当初予算
原子力被災者環境放射線モニタリング対策関連交付金 環境省(原子力規制委員会) 福島県 1,306 2,084 58.3 - 1,489 定めていない。
156 26年度
当初予算
原子力被災者環境放射線モニタリング対策関連交付金 環境省(原子力規制委員会) 福島県 1,343 定めていない。
157 27年度
当初予算
原子力被災者環境放射線モニタリング対策関連交付金 環境省(原子力規制委員会) 福島県 923 定めていない。
計(157事業) 4,448,301 2,768,392 62.2 305,262 1,374,646
  所管府省庁別 内閣府(内閣府本府・消費者庁) 264,238 252,717 95.6 391 11,129
復興庁 125,000 8,120 6.4 - 116,879
文部科学省 92,967 71,675 77.0 11,035 10,256
厚生労働省 762,700 576,145 75.5 35,857 150,697
農林水産省 297,542 156,084 52.4 51,543 89,914
経済産業省 1,228,885 576,692 46.9 163,968 488,224
国土交通省 364,824 88,458 24.2 24,504 251,861
環境省(環境本省・原子力規制委員会) 1,312,142 1,038,499 79.1 17,960 255,682
うち基金使途通知対象事業(※印)の小計(31事業) 1,157,025 849,803 73.4 249,086 58,135
注(1)
復興関連基金事業数は、予算別、復興関連基金事業別に集計している。また、国土交通省及び環境省から国庫補助金等が交付されている「住宅エコポイント」は、省別に区分して国庫補助金等交付額等を集計している。
注(2)
既存の基金事業等と復興関連基金事業とを区分して経理していないものは、案分等により、復旧・復興予算に相当する額を算出している。
注(3)
※印は基金使途通知の対象とされた復興関連基金事業であることを示している。
注(4)
「基金事業執行率」の欄は、国庫補助金等交付額に対する取崩額の割合を示したものであり、代位弁済の費用の一部を補填する事業等、基金事業執行率が事業の進捗状況を示していないものがある。
注(5)
「終了予定年月」は、新規申請終了後の後年度負担や後年度事務を終える予定の時期を示しているため、終了予定年月を超えても残高がゼロにならないものがある。「当初の終了予定年月」の欄は、復旧・復興予算が措置された際に設定された事業の終了期限を記載している。また、「27年度末時点の終了予定年月」の欄の「-」は、当初の終了予定年月から変更がないことを示している。
注(6)
事業番号29、34、35及び36の4事業は事業間で配分変更して使用できるため、「27年度末に保有している国庫補助金等相当額」の欄は、配分変更した額(事業番号29は計△635百万円、事業番号34は計1,564百万円、事業番号35は計△16百万円、事業番号36は計△912百万円)を考慮して算出している。

また、予算措置年度別にみると、図表5-5のとおり、23年度に予算措置された事業が、事業数91事業、国庫補助金等交付額計2兆7784億余円、27年度末までの取崩額1兆8830億余円と、それぞれ最も多くなっている。

図表5-5 復興関連基金事業の予算措置年度別の実施状況

(単位:事業、百万円、%)
予算措置年度 復興関連基金事業数 国庫補助金等交付額 平成27年度末までの取崩額(国庫返納額分を除く。) 基金事業執行率 27年度末までの国庫返納額(国庫補助金等相当額) 27年度末に保有している国庫補助金等相当額
    A B B/A C A-B-C
23年度 91 2,778,498 1,883,074 67.7 283,700 611,724
24年度 22 406,896 215,621 52.9 17,738 173,537
25年度 16 507,208 302,777 59.6 2,947 201,484
26年度 13 416,807 140,110 33.6 876 275,819
27年度 15 338,889 226,809 66.9 - 112,080
157 4,448,301 2,768,392 62.2 305,262 1,374,646
(ウ) 終了予定年度別及び終了予定年度の延長期間別の実施状況

復興関連基金事業を27年度末現在の終了予定年度別にみると、図表5-6のとおり、26年度を終了予定年度としている事業が23事業と最も多くなっていて、国庫補助金等交付額は28年度を終了予定年度としている事業が計8080億余円と最も多くなっている。また、集中復興期間の終了後も継続して実施するとしている事業は98事業、国庫補助金等交付額計3兆4489億余円(27年度末に保有している国庫補助金等相当額1兆3182億余円)であり、集中復興期間内に終了した事業59事業、国庫補助金等交付額計9993億余円と比較し、事業数、国庫補助金等交付額ともに多くなっている。

一方、終了期限を定めていない事業は24事業、国庫補助金等交付額計1兆1089億余円となっており、原子力災害からの復興再生が長期にわたると想定されている福島県に交付されたものや、除染事業等の原子力災害関係経費に係るものが多くなっている。

図表5-6 復興関連基金事業の終了予定年度別の実施状況(平成27年度末現在)

(単位:事業、百万円、%)
終了予定年度 復興関連基金事業数 国庫補助金等交付額 平成27年度末までの取崩額(国庫返納額分を除く。) 基金事業執行率 27年度末までの国庫返納額(国庫補助金等相当額) 27年度末に保有している国庫補助金等相当額
    A B B/A C A-B-C
集中復興期間 59 999,371 722,795 72.3 220,212 56,363
  24年度 9 42,738 26,038 60.9 16,684 16
25年度 8 102,573 83,793 81.6 17,660 1,119
26年度 23 743,350 537,567 72.3 160,611 45,171
27年度 19 110,709 75,396 68.1 25,256 10,056
28年度以降 98 3,448,929 2,045,597 59.3 85,049 1,318,282
  28年度 14 808,026 681,667 84.3 13,465 112,893
29年度 4 32,590 22,131 67.9 4,806 5,651
30年度 6 176,488 75,995 43.0 2,860 97,632
31年度 6 307,912 178,149 57.8 414 129,348
32年度 13 379,590 119,388 31.4 1,115 259,086
37年度以降 3 328,182 28,773 8.7 - 299,409
その他 28 307,145 33,440 10.8 4,393 269,311
未定 24 1,108,993 906,051 81.7 57,993 144,948
157 4,448,301 2,768,392 62.2 305,262 1,374,646
注(1)
「終了予定年度」は、平成27年度末時点の終了予定年月により集計している。また、終了予定年月前に、国庫補助金等交付額の全額を取り崩したり、国庫に返納したりした事業は、保有している国庫補助金等相当額がなくなった年度を終了予定年度として集計している。
注(2)
「その他」は、事業の終了期限が住宅ローンの返済完了時や融資の返済完了時であるなど明確ではない事業を示している。また、「未定」は終了期限が設定されていない事業を示している。

復興関連基金事業については、一般に、事業の終了期限が到来しても依然として資金需要が高いなどの場合、事業の終了期限を延長している。終了予定年度の延長状況をみると、図表5-7のとおり、157事業のうち終了予定年度を延長したものが49事業(国庫補助金等交付額1兆4018億余円)となっていて、そのうち延長期間が3年のものが16事業(同6839億余円)と事業数、国庫補助金等交付額ともに最も多くなっている。

また、終了予定年度を延長している49事業について、資金需要が高く基金残額が不足しているなどのため基金の積増しを行っている事業が20事業(同7257億余円)ある一方で、想定したほど基金の取崩しが行われず基金の残余額が多いことなどから、基金の積増しを行っていない事業が29事業(同6761億余円)ある。

図表5-7 復興関連基金事業の終了予定年度の延長期間別の実施状況(平成27年度末現在)

(単位:事業、百万円、%)
終了予定年度の延長期間 復興関連基金事業数 国庫補助金等交付額 平成27年度末までの取崩額(国庫返納額分を除く。) 基金事業執行率 27年度末までの国庫返納額(国庫補助金等相当額) 27年度末に保有している国庫補助金等相当額
    A B B/A C A-B-C
1年 7 56,501 26,032 46.0 22,570 7,898
2年 14 161,020 96,360 59.8 7,740 56,918
3年 16 683,996 331,481 48.4 14,301 338,212
4年 6 267,518 212,705 79.5 6,355 48,458
5年以上 6 232,857 162,967 69.9 46,303 23,586
49 1,401,894 829,548 59.1 97,271 475,074
  積増し有 20 725,788 481,349 66.3 14,457 229,981
積増し無 29 676,105 348,198 51.5 82,814 245,092
(注)
当初の終了予定年度は平成26年度であったが、終了予定年度の定めをなくした森林整備加速化・林業再生事業は、「5年以上」に分類している。
(エ) 復興関連基金事業に係る国庫補助金等の国庫への返納状況等

基金団体は、復興関連基金事業が終了して残余額があったり、使用見込みがない余剰金があったりなどする場合には、所管府省庁が定めたそれぞれの事業の交付要綱等により、これらに係る国庫補助金等を国庫に返納することとなっている。また、前記のとおり、基金使途通知において、使途の厳格化を徹底するために、被災地又は被災者に対する事業以外の事業であって執行済みの事業及び執行済みと認められる事業を除いた基金残額について、基金団体は、基金からの執行を見合わせて国庫に返納するよう要請されている。

また、本院は27年報告において、東北3県を除く17都県における復興関連基金事業の実施状況について検査したところ、事業の対象となる被災者がほとんどいないことなどのため今後の実施が見込めないものが4事業で計11億2583万余円見受けられたり、基金の使途が被災者に対する事業に限定されていなかったものが上記4事業のうちの1事業で1億7847万余円見受けられたりしたことを記述した。そして、これらの4事業は26年度末までに事業が終了し、残余額は27年度末までに国庫に返納されている。

そこで、精算時の残余額や使用見込みがない余剰金等の国庫への返納の状況をみたところ、図表5-8のとおり、157事業のうち77事業において、各基金団体は、27年度末までに3064億余円、28年度(28年8月末現在)に323億余円、計3387億余円の基金残額(運用益を含む。)を国庫に返納している。基金団体が基金残額(運用益を含む。)を国庫に返納した事由は、①使用見込みがないことによるもの1696億余円(40事業)、②使途厳格化によるもの1252億余円(19事業)、③事業の終了によるもの437億余円(53事業)などとなっている。

図表5-8 復興関連基金事業に係る国庫補助金等の返納の状況(平成28年8月末現在)

(単位:百万円)
事業番号 復旧・復興予算 基金事業名 所管府省庁 国庫補助金等交付額 平成27年度末までの国庫返納額(運用益を含む。) 27年度末に保有している国庫補助金等相当額 28年度の国庫返納額(運用益を含む。)(28年8月末現在)
28年8月末までの国庫返納額(運用益を含む。)
  ①使用見込みがないことによるもの ②使途厳格化によるもの ③事業の終了によるもの ④事業実施後返納事由が生じたもの
A B A+B        
4 23年度
第3次補正予算
復興支援型地域社会雇用創造事業 内閣府(内閣府本府) 3,200 332 - - 332 - - 332 -
5 23年度
第3次補正予算
新しい公共支援事業 内閣府(内閣府本府) 879 61 - - 61 - - 61 -
11 23年度
第1次補正予算
被災児童生徒就学支援等臨時特例交付金 文部科学省 11,313 8,333 - - 8,333 - - 8,333 -
12 23年度
第3次補正予算
被災児童生徒就学支援等臨時特例交付金 文部科学省 29,744
13 26年度
当初予算
被災児童生徒就学支援等臨時特例交付金 文部科学省 2,454
14 23年度
第3次補正予算
幼稚園等の認定こども園としての再開支援(安心こども基金) 文部科学省 1,810 558 - - 558 - - 558 -
※ 19 23年度
第3次補正予算
奨学金事業(高校生) 文部科学省 18,946 2,251 - - 2,251 - 1,928 322 -
22 23年度
第1次補正予算
地域支え合い体制づくり事業 厚生労働省 7,020 828 4,099 - 828 627 - 201 -
23 23年度
第3次補正予算
地域支え合い体制づくり事業 厚生労働省 9,035
24 25年度
当初予算
地域支え合い体制づくり事業 厚生労働省 2,303
25 26年度
当初予算
地域支え合い体制づくり事業 厚生労働省 1,548
26 27年度
当初予算
地域支え合い体制づくり事業 厚生労働省 1,766
28 23年度
第1次補正予算
重点分野雇用創造事業の拡充 厚生労働省 50,000 223 313 - 223 - - 223 0
※ 29 23年度
第3次補正予算
生活福祉資金貸付 厚生労働省 15,190 2,001 - 0 2,001 360 - 1,641 0
30 23年度
第3次補正予算
被災地における保育所等の複合化・多機能化による子どもを地域で支える基盤の構築
(安心こども基金の追加)
厚生労働省 1,553 697 - - 697 - - 697 -
※ 31 23年度
第3次補正予算
医療施設等の防災対策の強化 厚生労働省 15,633 1,150 3,507 - 1,150 961 - 188 -
※ 34 23年度
第3次補正予算
社会的包摂・「絆」再生事業 厚生労働省 17,549 1,567 - - 1,567 - 365 1,201 -
※ 35 23年度
第3次補正予算
パーソナル・サポート・サービスモデル・プロジェクト 厚生労働省 2,215 215 - - 215 92 - 122 -
※ 36 23年度
第3次補正予算
被災生活保護受給者に対する生活再建サポート事業 厚生労働省 1,771 778 - 0 778 18 - 760 0
37 23年度
第3次補正予算
介護基盤復興まちづくり整備事業(介護基盤整備基金(ハード)への追加) 厚生労働省 2,850 1,344 - - 1,344 - - 1,344 -
39 23年度
第3次補正予算
被災地健康支援事業 厚生労働省 2,893 6 1,027 - 6 - - 6 -
40 26年度
当初予算
被災地健康支援事業 厚生労働省 1,000
41 27年度
当初予算
被災地健康支援事業 厚生労働省 404
42 23年度
第3次補正予算
被災者の心のケア事業
(障害者自立支援対策臨時特例基金の追加、災害時等心のケア支援体制整備事業費の一部)
厚生労働省 2,791 1,384 - - 1,384 - - 1,384 -
43 23年度
第3次補正予算
被災地障害福祉サービス基盤整備事業
(障害者自立支援対策臨時特例基金の追加)
厚生労働省 1,521 682 - - 682 0 - 682 -
※ 44 23年度
第3次補正予算
重点分野雇用創造事業の拡充(震災対応事業の延長) 厚生労働省 200,000 11,235 1,179 - 11,235 - 7,486 3,707 42
45 23年度
第3次補正予算
重点分野雇用創造事業の拡充(雇用復興推進事業の創設) 厚生労働省 151,000 414 24,324 - 414 414 - - -
※ 46 23年度
第3次補正予算
新卒者就職実現プロジェクト事業の被災地に係る特例措置の延長等 厚生労働省 23,520 12,665 - - 12,665 - 7,978 4,686 -
※ 47 23年度
第3次補正予算
被災者への心のケア対策等の推進事業(自殺対策) 厚生労働省 3,700 395 69 - 395 - 395 - -
49 24年度
補正予算
震災等緊急雇用対応事業 厚生労働省 50,000 675 5,292 56 732 - - 675 56
58 23年度
第1次補正予算
林業信用保証事業交付金
(災害復旧)
農林水産省 5,770 4,380 1,602 - 4,380 4,380 - - -
59 23年度
第3次補正予算
林業信用保証事業交付金
(災害復旧)
農林水産省 130
60 24年度
当初予算
林業信用保証事業交付金
(災害復旧)
農林水産省 441
61 25年度
当初予算
林業信用保証事業交付金
(災害復旧)
農林水産省 469
62 26年度
当初予算
林業信用保証事業交付金
(災害復旧)
農林水産省 155
63 27年度
当初予算
林業信用保証事業交付金
(災害復旧)
農林水産省 57
70 23年度
第1次補正予算
漁業者等緊急保証対策事業 農林水産省 360 13 638 - 13 - - 0 13
71 23年度
第3次補正予算
漁業者等緊急保証対策事業 農林水産省 67
72 24年度
当初予算
漁業者等緊急保証対策事業 農林水産省 550
73 25年度
当初予算
漁業者等緊急保証対策事業 農林水産省 494
74 26年度
当初予算
漁業者等緊急保証対策事業 農林水産省 428
75 27年度
当初予算
漁業者等緊急保証対策事業 農林水産省 373
77 23年度
第3次補正予算
農地土壌等の浄化の研究拠点施設整備調査事業(福島基金分) 農林水産省 100 88 - - 88 - - 88 -
79 23年度
第3次補正予算
被災者向け農の雇用事業 農林水産省 700 479 - - 479 - - 479 -
※ 80 23年度
第3次補正予算
森林整備加速化・林業再生事業 農林水産省 139,945 46,663 4,947 - 46,663 347 39,432 6,884 -
84 24年度
当初予算
被災者向け農の雇用事業 農林水産省 422 153 - - 153 - - 153 -
87 25年度
当初予算
被災者向け農の雇用事業 農林水産省 187 80 - - 80 - - 80 -
88 25年度
補正予算
福島発農産物等戦略的情報発信事業 農林水産省 1,604 1 - - 1 - - 1 -
89 26年度
当初予算
被災者向け農の雇用事業 農林水産省 112 44 19 19 63 44 - 19 -
93 23年度
第1次補正予算
石油製品販売業災害特別保証事業 経済産業省 5,079 3,199 1,612 - 3,199 3,199 - - -
94 23年度
第1次補正予算
特定被災地域石油製品供給支援事業 経済産業省 910 910 - - 910 - - 910 -
※ 98 23年度
第3次補正予算
被災地域等地下タンク環境保全対策促進事業(全国防災) 経済産業省 6,986 1,691 - - 1,691 202 1,443 44 -
※ 99 23年度
第3次補正予算
被災地域等地下タンク環境保全対策促進事業(被災地向け) 経済産業省 1,749
100 23年度
第3次補正予算
被災中小企業復興支援リース補助事業 経済産業省 10,049 - 5,982 4,367 4,367 4,367 - - -
※ 101 23年度
第3次補正予算
中小企業人材対策事業 経済産業省 2,487 1,407 - - 1,407 - 1,407 0 -
※ 102 23年度
第3次補正予算
国内立地推進事業費補助金 経済産業省 295,000 73,396 45,428 23,070 96,467 74,776 21,691 - -
※ 105 23年度
第3次補正予算
産業技術研究開発拠点立地推進事業費補助金(希少金属使用量削減・代替技術開発設備整備費等補助金) 経済産業省 8,499 3,150 184 7 3,158 3,011 146 - 0
※ 106 23年度
第3次補正予算
産業技術研究開発拠点立地推進事業費補助金(先端技術実証・評価設備整備費等補助金) 経済産業省 26,500 6,832 2,305 2,119 8,952 3,309 5,642 - -
※ 107 23年度
第3次補正予算
住宅用太陽光発電導入支援復興対策基金造成事業費補助金 経済産業省 86,992 13,141 - - 13,141 11,330 - 1,810 -
※ 108 23年度
第3次補正予算
住宅用太陽光発電高度普及促進復興対策基金造成事業費補助金 経済産業省 32,394 608 - - 608 307 - 300 -
※ 109 23年度
第3次補正予算
エネルギー管理システム導入促進事業費補助金 経済産業省 30,000 13,545 - - 13,545 658 12,851 34 1
※ 110 23年度
第3次補正予算
電力需要ピークカット蓄電池導入支援事業 経済産業省 20,999 9,188 - - 9,188 - 8,324 862 0
※ 111 23年度
第3次補正予算
建築物節電改修支援事業費補助金 経済産業省 15,000 4,814 - - 4,814 15 4,734 56 7
113 23年度
第3次補正予算
再生可能エネルギー発電設備等導入促進支援復興対策事業費補助金 経済産業省 32,599 11,396 2,170 2,251 13,648 11,396 - 2,251 -
115 23年度
第3次補正予算
スマートエネルギーシステム導入促進事業費補助金 経済産業省 4,346 2,673 - - 2,673 - - 2,673 -
※ 116 23年度
第3次補正予算
火力発電運転円滑化対策費補助金 経済産業省 9,000 6,175 - - 6,175 5,385 790 - -
※ 117 23年度
第3次補正予算
温排水利用施設整備等対策交付金 経済産業省 995 567 - - 567 - 567 - -
※ 121 24年度
当初予算
産業技術研究開発拠点立地推進事業費補助金(産学連携イノベーション促進事業費補助金) 経済産業省 4,000 904 25 - 904 871 32 - -
※ 122 24年度
当初予算
産業技術研究開発拠点立地推進事業費補助金(先端技術実証・評価設備整備費等補助金) 経済産業省 10,000 10,000 - - 10,000 - 10,000 - -
123 24年度
当初予算
国内立地推進事業費補助金
(原子力災害周辺地域産業復興企業立地補助事業)
経済産業省 14,000 1,196 7,884 444 1,641 1,641 - - -
135 23年度
第1次補正予算
既往貸付者に係る返済方法の変更事業 国土交通省 3,400 8,489 4,725 - 8,489 8,489 - - -
136 23年度
第3次補正予算
既往貸付者に係る返済方法の変更事業 国土交通省 14,900
※ 137 23年度
第3次補正予算
住宅エコポイント 国土交通省 72,300 13,355 243 - 13,355 13,355 - - -
139 25年度
当初予算
造船業等復興支援基金 国土交通省 16,024 2,860 12,199 - 2,860 2,860 - - -
141 23年度
第3次補正予算
地域グリーンニューディール基金の拡充(災害廃棄物処理事業の地方支援) 環境省 67,963 0 - - 0 - - 0 -
※ 149 23年度
第3次補正予算
住宅エコポイント 環境省 72,300 13,355 243 - 13,355 13,355 - - -
151 24年度
当初予算
震災がれき処理促進地方公共団体緊急支援基金事業
(グリーンニューディール基金)
環境省 30,797 3,861 5,330 - 3,861 3,861 - - -
計(77事業) 1,681,268 306,432 135,359 32,337 338,769 169,639 125,220 43,786 122
(40事業) (19事業) (53事業) (15事業)
うち※の小計(27事業) 1,133,680 251,058 58,135 25,198 276,256 128,357 125,220 22,624 52
(注)
※印は基金使途通知の対象とされた復興関連基金事業であることを示している。
(オ) 集中復興期間内に事業が終了した復興関連基金事業のその後の状況

集中復興期間内に事業の終了期限が到来したり、国庫補助金等交付額の全額を取り崩したりするなどして事業が終了した復興関連基金事業は、図表5-9のとおり、59事業ある。59事業について終了後の同種事業の実施状況をみると、基金方式を採らずに同種事業を実施していたもの(一般会計又は復興特会以外の特別会計から交付された国庫補助金等によるものを含む。)は12事業となっている。

図表5-9 集中復興期間内に事業が終了した復興関連基金事業の同種事業の実施状況

(単位:事業)
項目 復興関連
基金事業数
国庫補助金等(一般会計又は復興特会以外の特別会計から交付された国庫補助金等を含む。)により基金を設置造成等して同種事業を実施していたもの 17
基金方式を採らずに同種事業を実施していたもの(一般会計又は復興特会以外の特別会計から交付された国庫補助金等によるものを含む。) 12
当該事業終了後に同種事業を実施していないもの 30
59

前記のとおり、基金指針によれば、基金造成費補助金等によることなく対応することが可能か不断に検討するべきであるとされていることから、国は、今まで基金造成費補助金等により基金を設置造成等して実施していた事業についても、同種事業の実施に当たっては、国費の適正かつ効率的な使用等のために、基金方式を採らずに実施できないか検討することが求められる。

集中復興期間内に事業が終了した復興関連基金事業について、事業終了後に同種事業を基金方式を採らずに実施していた事例を示すと次のとおりである。

<参考事例1> 集中復興期間内に事業が終了した復興関連基金事業について、事業終了後に同種事業を基金方式を採らずに実施していたもの

所管府省庁 基金事業名 復旧・復興予算 基金事業に対する交付金交付額
文部科学省 被災児童生徒就学支援等臨時特例交付金 23年度第1次補正予算 113億1300万円
23年度第3次補正予算 297億4495万余円
26年度当初予算 24億5430万余円
435億1225万余円
文部科学省は、東日本大震災により被災して経済的理由により就学が困難となった幼児、児童又は生徒の教育機会の確保に資することを目的として、北海道等47都道府県が被災幼児就園支援事業、被災児童生徒就学援助事業等(以下「支援事業」という。)を実施するために、都道府県に対して、23年度第1次補正予算等に計上された被災児童生徒就学支援等臨時特例交付金計435億1225万余円を交付していた。同交付金の交付を受けた都道府県は、基金を設置造成等して支援事業を実施しており、高校生修学支援基金事業実施要領(被災児童生徒就学支援等臨時特例交付金)によれば、基金による支援事業は平成26年度末までとされていた。そして、都道府県は、27年度に残余額計83億3351万余円を国庫に返納していた。
文部科学省によれば、当初、支援事業は、東日本大震災が未曽有の震災であり、被災した幼児児童生徒の状況も含めて震災直後の事業規模が把握できない状態であったことから、4か年の事業実施に必要な額を担保することで都道府県が事業を実施できるように、基金方式で実施したとしている。
文部科学省は、引き続き支援事業を実施する必要があるとする一方、基金による支援事業が終了する26年度には避難者の状況もある程度見通しがつき都道府県ごとに事業規模を把握できるような状況になったなどとして、27年度以降は、基金方式を採らずに被災児童生徒就学支援等事業交付金により、単年度で支援事業を実施している(27年度の歳出予算現額80億3315万余円。都道府県への支出済額計65億2544万余円)。
エ 復興交付金事業の実施状況
(ア) 復興交付金制度の概要及び復興交付金の交付等の状況

復興交付金は、特区法に基づき、東日本大震災により相当数の住宅、公共施設その他の施設の滅失又は損壊等の著しい被害を受けた地域を対象として、円滑かつ迅速な復興のための復興交付金事業の実施に要する経費に充てるために、東日本大震災復興特別区域法施行規則(平成23年内閣府令第69号)で定めるところにより、予算の範囲内で交付されるものである。

復興交付金事業を実施する特定被災自治体は、復興交付金事業計画を作成して、復興庁に提出し、同庁が東日本大震災復興交付金制度要綱(平成24年府復第3号等。以下「制度要綱」という。)に基づき算定した交付可能額の通知を受け、交付可能額の範囲内で復興交付金事業を所管する文部科学、厚生労働、農林水産、国土交通、環境各省(以下「所管省」という。)にそれぞれ交付申請を行い、所管省から復興交付金の交付決定及び交付を受けて事業を実施している。

特定被災自治体は、復興交付金の交付を受けるに当たり、制度要綱に基づき、単年度で事業を実施する単年度型事業か、又は、基金を設置造成等し、事業計画期間内に、事業年度ごとにあらかじめ計画された事業の実施に要する経費(以下「○○年度の実施計画分」という。)を取り崩して事業を実施する基金型事業かを選択することが可能となっている。また、単年度型事業を実施する場合には同一の交付決定による単年度型事業間において、基金型事業を実施する場合には交付決定が同一か否かにかかわらず、同一の所管省に係る基金型事業間において、それぞれ復興交付金の流用を行うことが可能となっている。

特区法及び制度要綱によると、復興交付金事業には、東日本大震災により被災した地域の復興地域づくりに不可欠な基盤を整備することを目的とする40の基幹事業(別図表7参照)と、基幹事業と一体となってその効果を増大させることを目的とする効果促進事業とがある。このうち、効果促進事業は、特定被災自治体が著しい被害を受けた地域の復興のために基幹事業と関連して地域の特性に即して自主的かつ主体的に実施するものであり、あらかじめ事業内容を定めて基幹事業ごとに個別に事業費が配分されるもの(以下「効果促進事業(個別配分)」という。)と、あらかじめ事業内容を定めることなく特定の基幹事業に係る事業費の一定割合を一括して先渡しで配分される漁業集落復興効果促進事業及び市街地復興効果促進事業(被災地の要望を踏まえて24年度に創設された事業。以下、両事業を合わせて「効果促進事業(一括配分)」という。別図表8参照)とがある。効果促進事業(一括配分)について、特定被災自治体は、事業に係る復興交付金の交付を受けた後に事業内容を定めて、24年1月に農林水産、国土交通両省が定めた東日本大震災復興交付金基金交付要綱等(平成24年23予第636号農林水産事務次官依命通知、平成24年国官会第2412号国土交通事務次官通知)に基づき、当該事業で実施する旨を記載した使途内訳提出書を作成し、漁業集落復興効果促進事業については復興庁を経由して農林水産省に、市街地復興効果促進事業については同庁を経由して国土交通省に、それぞれ提出して事業を実施することとなっている。

復興交付金事業は、東日本大震災により被災した地域の復興地域づくりに必要な事業であるとされており、その特徴として、①交付を受けるに当たり、一つの復興交付金事業計画に当該事業計画期間内に予定している事業を全て含めることで事務手続の簡素化が図られていること、②基幹事業について、国が通常行っている同種の補助事業の補助率を負担するのに加えて、地方負担分の50%を追加的に交付するとともに、残りの地方負担分を震災復興特別交付税の加算により手当てするなど地方負担の軽減が図られていること、③基金型事業を選択して事業を実施できること、④復興交付金を事業間で流用できることなどが挙げられる。

集中復興期間における復興交付金の交付額等の状況をみると、図表5-10のとおり、8道県及び96市町村が交付可能額の通知を受け、このうち3道県及び13市町が単年度型事業を選択していて、交付可能額は計16億余円、交付額は計14億余円、執行額は計13億余円となっている。また、上記交付可能額の通知を受けた市町村のうち約9割に当たる7県及び88市町村が基金型事業を選択していて、交付可能額は計2兆8707億余円、交付額は計2兆8706億余円、このうち28年度の実施計画分を除いた23年度から27年度までの5か年度の実施計画分に係る交付額は計2兆6415億余円、取崩額は計1兆6326億余円、基金事業執行率は61.8%となっている。

図表5-10 集中復興期間における復興交付金事業の交付額等(平成27年度末現在)

(単位:百万円、%)
実施方法 道県及び市町村数 交付可能額(第1回~第14回) 交付額(第1回~第14回) 左のうち平成23年度から27年度までの実施計画分に係る交付額 流用増額 流用減額 執行額又は取崩額 執行率又は基金事業執行率 国庫返還額 執行未済額又は取崩未済額
        A B C D D/(A+B-C) E (A+B-C)-D-E
単年度型 3道県及び13市町 1,696 1,400 1,400 4 4 1,396 99.7 - 3
基金型 7県及び88市町村 2,870,700 2,870,677 2,641,565 35,241 35,241 1,632,636 61.8 3,519 1,005,409
8道県及び96市町村 2,872,397 2,872,077 2,642,965 35,245 35,245 1,634,032 61.8 3,519 1,005,413
注(1)
道県及び市町村数は、復興交付金の交付を受けた道県及び市町村の数である。
注(2)
道県及び市町村は、①単年度型、②基金型、又は③単年度型及び基金型のいずれかの類型で事業を実施しており、③の類型は①及び②の類型のそれぞれに重複計上されている。
注(3)
交付可能額は、復興庁から特定被災自治体に対してこれまで平成24年3月の第1回から28年2月の第14回まで通知されており、第14回の交付可能額には27年度の実施計画分のほかに28年度の実施計画分が含まれている。
注(4)
交付可能額(第1回~第14回)及び交付額(第1回~第14回)は、平成23年度から28年度までの実施計画分に係るものであり、これらの額以外の額及び率は、23年度から27年度までの実施計画分に係るものである。
注(5)
流用増額及び流用減額については、他事業から復興交付金が流用された場合の額を流用増額、他事業に復興交付金を流用した場合の額を流用減額としており、平成27年度末現在で5県39市町村において実績がある。
注(6)
取崩未済額は、取崩しが行われずに基金に保有されている額である(リンク参照)。
(イ) 集中復興期間における復興交付金事業の完了等の状況

集中復興期間内に復興交付金事業計画に記載された復興交付金事業を全て完了している特定被災自治体数は、図表5-11のとおり、3道県及び30市町村であり、復興交付金の交付を受けて事業を実施している全ての特定被災自治体8道県及び96市町村の31.7%となっており、このうち16市町村は福島県管内の特定被災自治体である。

図表5-11 復興交付金事業を完了している特定被災自治体の状況(平成27年度末現在)

完了事業 道県及び市町村数 実施方法 道県及び市町村の内訳
全事業 3道県及び30市町村 単年度型 北海道、北海道広尾郡広尾町、福島県郡山市、同県田村市、同県伊達市、同県伊達郡川俣町、千葉県銚子市、新潟県十日町市
基金型 青森県三戸郡階上町、宮城県白石市、福島県福島市、同県会津若松市、同県二本松市、同県伊達郡国見町、同県西白河郡西郷村、同県東白川郡矢祭町、同県石川郡石川町、同県同郡古殿町、同県田村郡三春町、同県双葉郡川内村、同県同郡葛尾村、同県相馬郡飯舘村、茨城県笠間市、同県ひたちなか市、同県那珂郡東海村、栃木県矢板市、千葉県、同県習志野市、同県我孫子市、同県匝瑳市
単年度型及び基金型 青森県、青森県三沢市、岩手県北上市
文部科学省
所管事業
8市町村 単年度型
基金型 岩手県下閉伊郡普代村、宮城県登米市、同県大崎市、福島県双葉郡浪江町、茨城県高萩市、同県鹿嶋市、同県潮来市、千葉県山武市
単年度型及び基金型
厚生労働省
所管事業
1町 単年度型
基金型 宮城県亘理郡山元町
単年度型及び基金型
農林水産省
所管事業
2県及び10市町村 単年度型 長野県
基金型 青森県八戸市、宮城県岩沼市、同県大崎市、福島県いわき市、同県白河市、同県岩瀬郡鏡石町、同県双葉郡楢葉町、茨城県、同県日立市、同県東茨城郡大洗町、長野県下水内郡栄村
単年度型及び基金型
国土交通省
所管事業
1県及び4市町村 単年度型 青森県上北郡おいらせ町、埼玉県久喜市、千葉市、長野県
基金型 岩手県下閉伊郡普代村
単年度型及び基金型
環境省
所管事業
3市村 単年度型
基金型 岩手県久慈市、同県九戸郡野田村、宮城県東松島市
単年度型及び基金型
注(1)
本図表は、平成27年度末現在における特定被災自治体の復興交付金事業計画に記載されている復興交付金事業で整理している。
注(2)
複数の所管省の事業を完了している特定被災自治体は、重複して記載している。
注(3)
復興交付金事業を全て完了した特定被災自治体のうち制度要綱第10の3の規定に定められた復興交付金事業計画の実績に関する評価及び公表を行ったものは、北海道広尾郡広尾町、青森県三沢市、福島県福島、郡山、二本松、田村、伊達各市、同県伊達郡川俣、東白川郡矢祭、石川郡石川、同郡古殿、田村郡三春各町、同県西白河郡西郷、双葉郡川内両村、茨城県笠間市及び千葉県銚子市の16市町村である。

次に、復興交付金事業を特定被災自治体ごとの延べ事業数でみると、集中復興期間における基幹事業、効果促進事業(個別配分)及び効果促進事業(一括配分)は、図表5-12のとおり、それぞれ2,771事業、791事業、94事業の計3,656事業となっている。このうち、完了した事業は、それぞれ990事業、537事業、1事業の計1,528事業であり、復興交付金事業計画に記載されている事業のうち中止又は廃止となった事業を除く事業数に対する完了した事業数の割合(以下「事業完了率」という。)は、それぞれ36.8%、71.7%、1.0%となっていて、特に効果促進事業(一括配分)の事業完了率が低くなっている。

完了した事業を復興庁及び所管省が決定した復興交付金事業の事業番号別にみると、基幹事業、効果促進事業(個別配分)及び効果促進事業(一括配分)を合わせた事業数は、災害公営住宅整備事業等(事業番号D-4)が395事業と最も多くなっていて、次いで都市防災推進事業(事業番号D-20)が244事業、都市再生区画整理事業(事業番号D-17)が106事業となっている。合計の事業数が10未満である幼稚園等の複合化・多機能化推進事業(事業番号A-3)等を除いて事業完了率をみると、木質バイオマス施設等緊急整備事業(事業番号C-9)が最も高い100.0%となっていて、次いで造成宅地滑動崩落緊急対策事業(事業番号D-14)が93.7%、都市防災推進事業(事業番号D-20)が81.0%となっている。

また、上記と同様に合計の事業数が10未満である事業を除いて基幹事業、効果促進事業(個別配分)及び効果促進事業(一括配分)別に事業完了率をみると、基幹事業のうち災害公営住宅家賃低廉化事業(事業番号D-5)及び東日本大震災特別家賃低減事業(事業番号D-6)はそれぞれ僅か2.9%、1.4%となっているが、これは、これらの事業が災害公営住宅等の入居者が無理なく家賃を負担できるように家賃を低廉化するなど長期にわたり継続して実施する事業であることなどによるものである。

効果促進事業(個別配分)についてみると、前記のとおり基幹事業と比べて事業完了率が高く、事業別にみても一部の事業を除いて基幹事業の事業完了率を上回って70%以上となっているものが多くなっている。これは、効果促進事業(個別配分)が災害公営住宅における駐車場の整備のように基幹事業と比べて小規模かつ短期間で完了する事業が多いことなどによるものである。一方、効果促進事業(一括配分)の事業完了率は0%から4.7%と他の事業に比べて著しく低くなっているが、これは、効果促進事業(一括配分)は、事業計画期間内に基幹事業の進捗状況等を勘案して、必要の都度事業内容を決定して実施されることなどによるものであり、復興交付金事業計画上も、全ての基幹事業が完了して事業計画期間が終了するまでは事業として完了しないものとして取り扱われている。

復興交付金事業の中には、27年度末までに事業に着手していないもの、27年度末までに事業が中止又は廃止となったものが、基幹事業、効果促進事業(個別配分)及び効果促進事業(一括配分)を合わせて259事業ある。このうち中止又は廃止となったものについて事業別にみると、道路事業(事業番号D-1)が基幹事業29事業、効果促進事業(個別配分)13事業の計42事業と最も多く、次いで災害公営住宅整備事業等(事業番号D-4)が基幹事業20事業、効果促進事業(個別配分)14事業の計34事業となっていて、道路事業(事業番号D-1)及び災害公営住宅整備事業等(事業番号D-4)で全体の50%以上を占めている。

中止又は廃止となった理由について、特定被災自治体は、道路事業(事業番号D-1)においては、都市再生区画整理事業(事業番号D-17)や防災集団移転促進事業(事業番号D-23)の中で道路整備が行われることとなったため道路事業としての整備が不要になったこと、災害公営住宅整備事業等(事業番号D-4)においては、当初入居を希望していた者が希望を取り下げたために必要となる住宅戸数が減り、災害公営住宅の整備を取りやめたことなどのためとしている。

図表5-12 復興交付金事業の事業別完了等の状況(平成27年度末現在)

(単位:事業、%)
所管省 事業番号 事業名 基幹事業 効果促進事業 合計
効果促進事業(個別配分) 効果促進事業(一括配分)
完了 実施中 未着手 中止又は廃止 事業完了率 完了 実施中 未着手 中止又は廃止 事業完了率 完了 実施中 未着手 中止又は廃止 事業完了率 完了 実施中 未着手 中止又は廃止 事業完了率
A     B C A/(C-B) A     B C A/(C-B) A     B C A/(C-B) A     B C A/(C-B)
文部科学省 A-1 公立学校施設整備費国庫負担事業(公立小中学校等の新増築・統合) 8 9 - 1 18 47.0 13 4 3 1 21 65.0 21 13 3 2 39 56.7
A-2 学校施設環境改善事業(公立学校の耐震化等) 34 28 3 - 65 52.3 14 2 - 1 17 87.5 48 30 3 1 82 59.2
A-3 幼稚園等の複合化・多機能化推進事業 2 2 - - 4 50.0 1 2 - - 3 33.3 3 4 - - 7 42.8
A-4 埋蔵文化財発掘調査事業 22 50 5 - 77 28.5 14 2 - - 16 87.5 36 52 5 - 93 38.7
厚生労働省 B-1 医療施設耐震化事業 - - - - - - - - - - - - - - - - - -
B-2 介護基盤復興まちづくり整備事業(「定期巡回・随時対応サービス」や「訪問看護ステーション」の整備等) 1 - - - 1 100.0 - - - - - - 1 - - - 1 100.0
B-3 保育所等の複合化・多機能化推進事業 8 3 1 - 12 66.6 3 2 - - 5 60.0 11 5 1 - 17 64.7
農林水産省 C-1 農山漁村地域復興基盤総合整備事業(集落排水等の集落基盤、農地等の生産基盤整備等) 46 63 - 4 113 42.2 14 4 1 2 21 73.6 60 67 1 6 134 46.8
C-2 農山漁村活性化プロジェクト支援(復興対策)事業(被災した生産施設、生活環境施設、地域間交流拠点整備等) 24 1 4 1 30 82.7 11 5 - 1 17 68.7 35 6 4 2 47 77.7
C-3 震災対策・戦略作物生産基盤整備事業(麦・大豆等の生産に必要となる水利施設整備等) - 1 - - 1 0.0 - - - - - - - 1 - - 1 0.0
C-4 被災地域農業復興総合支援事業(農業用施設整備等) 61 17 1 - 79 77.2 23 3 1 4 31 85.1 84 20 2 4 110 79.2
C-5 漁業集落防災機能強化事業(漁業集落地盤かさ上げ、生活基盤整備等) 25 132 3 3 163 15.6 12 1 - - 13 92.3 37 133 3 3 176 21.3
C-6 漁港施設機能強化事業(漁港施設用地かさ上げ、排水対策等) 27 35 6 - 68 39.7 2 1 1 - 4 50.0 29 36 7 - 72 40.2
C-7 水産業共同利用施設復興整備事業(水産業共同利用施設、漁港施設、放流用種苗生産施設整備等) 38 42 7 2 89 43.6 26 10 2 - 38 68.4 64 52 9 2 127 51.2
C-8 農林水産関係試験研究機関緊急整備事業 8 2 - - 10 80.0 - - - - - - 8 2 - - 10 80.0
C-9 木質バイオマス施設等緊急整備事業 17 - - 1 18 100.0 6 - - 1 7 100.0 23 - - 2 25 100.0
F-1 漁業集落復興効果促進事業 1 17 3 - 21 4.7 1 17 3 - 21 4.7
F-3 漁業集落復興効果促進事業
(県分)
- 6 8 - 14 0.0 - 6 8 - 14 0.0
国土交通省 D-1 道路事業(市街地相互の接続道路等) 64 321 1 29 415 16.5 24 5 1 13 43 80.0 88 326 2 42 458 21.1
D-2 道路事業(高台移転等に伴う道路整備(区画整理)) 4 27 1 - 32 12.5 - - - - - - 4 27 1 - 32 12.5
D-3 道路事業(道路の防災・震災対策等) 4 5 - - 9 44.4 1 - - - 1 100.0 5 5 - - 10 50.0
D-4 災害公営住宅整備事業等(災害公営住宅の整備、災害公営住宅に係る用地取得造成等) 238 156 15 20 429 58.1 157 50 4 14 225 74.4 395 206 19 34 654 63.7
D-5 災害公営住宅家賃低廉化事業 2 61 5 - 68 2.9 - - - - - - 2 61 5 - 68 2.9
D-6 東日本大震災特別家賃低減事業 1 61 5 - 67 1.4 2 - - - 2 100.0 3 61 5 - 69 4.3
D-7 公営住宅等ストック総合改善事業(耐震改修、エレベーター改修) - - - - - - - - - - - - - - - - - -
D-8 住宅地区改良事業(不良住宅除却、改良住宅の建設等) - - - - - - - - - - - - - - - - - -
D-9 小規模住宅地区改良事業(不良住宅除却、小規模改良住宅の建設等) 5 3 1 1 10 55.5 - - - - - - 5 3 1 1 10 55.5
D-10 住宅市街地総合整備事業(住宅市街地の再生・整備) - - - - - - - - - - - - - - - - - -
D-11 優良建築物等整備事業 2 5 4 - 11 18.1 - - - - - - 2 5 4 - 11 18.1
D-12 住宅・建築物安全ストック形成事業(住宅・建築物耐震改修事業) 4 - - - 4 100.0 - - - - - - 4 - - - 4 100.0
D-13 住宅・建築物安全ストック形成事業(がけ地近接等危険住宅移転事業) 3 23 2 - 28 10.7 - - - - - - 3 23 2 - 28 10.7
D-14 造成宅地滑動崩落緊急対策事業 29 3 - - 32 90.6 16 - - - 16 100.0 45 3 - - 48 93.7
D-15 津波復興拠点整備事業 5 24 - 2 31 17.2 4 8 - - 12 33.3 9 32 - 2 43 21.9
D-16 市街地再開発事業 2 7 1 3 13 20.0 3 1 - - 4 75.0 5 8 1 3 17 35.7
D-17 都市再生区画整理事業(被災市街地復興土地区画整理事業等) 82 57 4 6 149 57.3 24 39 6 1 70 34.7 106 96 10 7 219 50.0
D-18 都市再生区画整理事業(市街地液状化対策事業) - - - - - - - - - - - - - - - - - -
D-19 都市防災推進事業(市街地液状化対策事業) 10 8 - - 18 55.5 8 - 1 - 9 88.8 18 8 1 - 27 66.6
D-20 都市防災推進事業(都市防災総合推進事業) 138 43 5 2 188 74.1 106 8 1 4 119 92.1 244 51 6 6 307 81.0
D-21 下水道事業 31 82 3 3 119 26.7 11 10 4 - 25 44.0 42 92 7 3 144 29.7
D-22 都市公園事業 11 53 4 3 71 16.1 12 8 4 - 24 50.0 23 61 8 3 95 25.0
D-23 防災集団移転促進事業 30 268 3 4 305 9.9 30 15 2 1 48 63.8 60 283 5 5 353 17.2
F-2 市街地復興効果促進事業 - 31 5 - 36 0.0 - 31 5 - 36 0.0
F-4 市街地復興効果促進事業
(県分)
- 23 - - 23 0.0 - 23 - - 23 0.0
環境省 E-1 低炭素社会対応型浄化槽等集中導入事業 4 20 - - 24 16.6 - - - - - - - - - - - - 4 20 - - 24 16.6
990 1,612 84 85 2,771 36.8 537 180 31 43 791 71.7 1 77 16 - 94 1.0 1,528 1,869 131 128 3,656 43.3
注(1)
効果促進事業(一括配分)については、あらかじめ事業内容を定めることなく一括して先渡しで復興交付金が配分され、事業計画期間内に必要の都度事業内容を決定して実施されることから、事業計画期間が終了して効果促進事業(一括配分)が完了したものだけを完了欄で計上している。
注(2)
復興交付金の交付後に、復興交付金が執行されている事業、及び復興交付金が執行されていない事業のうち工事等契約を締結した事業又は使途内訳提出書を提出した事業については実施中欄で計上し、復興交付金が執行されていない事業のうち工事等契約が締結されていない事業又は使途内訳提出書が提出されていない事業については未着手欄で計上している。

27年度末現在において実施中である基幹事業、効果促進事業(個別配分)及び効果促進事業(一括配分)の計1,869事業には、当初の復興交付金事業計画から28年度以降に完了予定としている事業もあるが、当初の復興交付金事業計画どおりに事業が完了せずに事業期間が延長されたものもある。

そこで、被災した地域の復興地域づくりに不可欠な基盤を整備する事業であり、復興交付金事業の進捗状況を最も反映すると考えられる基幹事業について、27年度末現在において実施中の1,612事業のうち当初の復興交付金事業計画において完了予定時期を27年度末以前としていた1,297事業を対象に完了予定時期の状況をみると、図表5-13のとおり、全ての事業が復興・創生期間の終期である32年度末までに完了予定となっていて、そのうち771事業(59.4%)が28年度に完了予定となっている。この771事業を事業別にみると、防災集団移転促進事業(事業番号D-23)が202事業(77.9%)と最も多く、次いで道路事業(事業番号D-1)が169事業(58.8%)、災害公営住宅整備事業等(事業番号D-4)が93事業(69.4%)となっている。

また、上記の1,297事業を対象に延長期間の状況をみると、3年以上延長している事業は479事業となっていて、5年以上延長している事業も134事業ある状況となっている。基幹事業の別にみると、3年以上延長している事業が27基幹事業において生じており、このうち長期にわたり継続して実施する事業である災害公営住宅家賃低廉化事業(事業番号D-5)及び東日本大震災特別家賃低減事業(事業番号D-6)を除くと、道路事業(事業番号D-1)及び防災集団移転促進事業(事業番号D-23)において、3年以上延長している事業数がそれぞれ89事業、100事業と特に多くなっている。この2基幹事業において上記の事業数が多いのは、実施事業数が多いことにもよるが、事業期間を延長している理由として、特定被災自治体は、地権者との用地交渉や建設資材及び建設事業従事者の確保に時間を要したことを挙げているほか、道路事業(事業番号D-1)においては、関連して進められている他の事業等との調整に時間を要したこと、防災集団移転促進事業(事業番号D-23)においては、事業に係る住民の合意形成に時間を要したことなどを挙げている。

図表5-13 基幹事業に係る事業別完了予定時期及び事業の延長期間の状況(平成27年度末現在)

(単位:事業、%)
所管省 事業番号 事業名 当初の完了予定時期を平成27年度末以前としていた事業の完了予定時期 事業の延長期間
28年度 29年度 30年度 31年度 32年度   1年未満 1年以上2年未満 2年以上3年未満 3年以上4年未満 4年以上5年未満 5年以上  
28年度の占める割合 うち3年以上の期間 3年以上の占める割合
      B         A B/A             C D D/C
文部科学省 A-1 公立学校施設整備費国庫負担事業(公立小中学校等の新増築・統合) 5 1 - - - 6 83.3 2 3 1 - - - 6 - 0.0
A-2 学校施設環境改善事業(公立学校の耐震化等) 10 - - - - 10 100.0 6 3 - 1 - - 10 1 10.0
A-3 幼稚園等の複合化・多機能化推進事業 2 - - - - 2 100.0 1 - - 1 - - 2 1 50.0
A-4 埋蔵文化財発掘調査事業 15 1 3 5 10 34 44.1 - 10 3 4 2 15 34 21 61.7
厚生労働省 B-1 医療施設耐震化事業 - - - - - - - - - - - - - - - -
B-2 介護基盤復興まちづくり整備事業(「定期巡回・随時対応サービス」や「訪問看護ステーション」の整備等) - - - - - - - - - - - - - - - -
B-3 保育所等の複合化・多機能化推進事業 1 - - - - 1 100.0 - - - 1 - - 1 1 100.0
農林水産省 C-1 農山漁村地域復興基盤総合整備事業(集落排水等の集落基盤、農地等の生産基盤整備等) 24 11 7 2 16 60 40.0 1 18 13 7 5 16 60 28 46.6
C-2 農山漁村活性化プロジェクト支援(復興対策)事業(被災した生産施設、生活環境施設、地域間交流拠点整備等) - - - - - - - - - - - - - - - -
C-3 震災対策・戦略作物生産基盤整備事業(麦・大豆等の生産に必要となる水利施設整備等) 1 - - - - 1 100.0 - 1 - - - - 1 - 0.0
C-4 被災地域農業復興総合支援事業(農業用施設整備等) 15 1 - - - 16 93.7 1 7 4 3 1 - 16 4 25.0
C-5 漁業集落防災機能強化事業(漁業集落地盤かさ上げ、生活基盤整備等) 61 33 10 - - 104 58.6 1 33 35 27 8 - 104 35 33.6
C-6 漁港施設機能強化事業(漁港施設用地かさ上げ、排水対策等) 14 14 1 1 2 32 43.7 - 11 5 4 10 2 32 16 50.0
C-7 水産業共同利用施設復興整備事業(水産業共同利用施設、漁港施設、放流用種苗生産施設整備等) 24 10 1 - - 35 68.5 5 11 9 6 3 1 35 10 28.5
C-8 農林水産関係試験研究機関緊急整備事業 1 1 - - - 2 50.0 - 1 1 - - - 2 - 0.0
C-9 木質バイオマス施設等緊急整備事業 - - - - - - - - - - - - - - - -
国土交通省 D-1 道路事業(市街地相互の接続道路等) 169 59 45 11 3 287 58.8 16 100 82 69 15 5 287 89 31.0
D-2 道路事業(高台移転等に伴う道路整備(区画整理)) 2 8 1 - - 11 18.1 - 1 9 1 - - 11 1 9.0
D-3 道路事業(道路の防災・震災対策等) 4 - 1 - - 5 80.0 1 2 1 - - 1 5 1 20.0
D-4 災害公営住宅整備事業等(災害公営住宅の整備、災害公営住宅に係る用地取得造成等) 93 32 6 - 3 134 69.4 31 35 43 18 3 4 134 25 18.6
D-5 災害公営住宅家賃低廉化事業 - - - - 28 28 0.0 - - - - - 28 28 28 100.0
D-6 東日本大震災特別家賃低減事業 - - - - 28 28 0.0 - - - - - 28 28 28 100.0
D-7 公営住宅等ストック総合改善事業(耐震改修、エレベーター改修) - - - - - - - - - - - - - - - -
D-8 住宅地区改良事業(不良住宅除却、改良住宅の建設等) - - - - - - - - - - - - - - - -
D-9 小規模住宅地区改良事業(不良住宅除却、小規模改良住宅の建設等) 2 1 - - - 3 66.6 - 1 1 - 1 - 3 1 33.3
D-10 住宅市街地総合整備事業(住宅市街地の再生・整備) - - - - - - - - - - - - - - - -
D-11 優良建築物等整備事業 5 - - - - 5 100.0 3 2 - - - - 5 - 0.0
D-12 住宅・建築物安全ストック形成事業(住宅・建築物耐震改修事業) - - - - - - - - - - - - - - - -
D-13 住宅・建築物安全ストック形成事業(がけ地近接等危険住宅移転事業) 10 1 4 2 3 20 50.0 - 4 3 4 5 4 20 13 65.0
D-14 造成宅地滑動崩落緊急対策事業 3 - - - - 3 100.0 - - - 3 - - 3 3 100.0
D-15 津波復興拠点整備事業 9 8 1 - - 18 50.0 2 7 6 2 1 - 18 3 16.6
D-16 市街地再開発事業 3 1 1 - - 5 60.0 - 3 - - 1 1 5 2 40.0
D-17 都市再生区画整理事業(被災市街地復興土地区画整理事業等) 10 11 7 - - 28 35.7 - 8 12 7 1 - 28 8 28.5
D-18 都市再生区画整理事業(市街地液状化対策事業) - - - - - - - - - - - - - - - -
D-19 都市防災推進事業(市街地液状化対策事業) 5 2 - 1 - 8 62.5 1 2 3 2 - - 8 2 25.0
D-20 都市防災推進事業(都市防災総合推進事業) 29 9 3 - - 41 70.7 6 8 13 10 2 2 41 14 34.1
D-21 下水道事業 24 22 3 - 1 50 48.0 2 19 13 14 1 1 50 16 32.0
D-22 都市公園事業 24 11 7 3 - 45 53.3 1 15 12 12 4 1 45 17 37.7
D-23 防災集団移転促進事業 202 29 12 1 15 259 77.9 15 73 71 53 27 20 259 100 38.6
環境省 E-1 低炭素社会対応型浄化槽等集中導入事業 4 1 6 - 5 16 25.0 - 2 3 6 - 5 16 11 68.7
771 267 119 26 114 1,297 59.4 95 380 343 255 90 134 1,297 479 36.9
(ウ) 集中復興期間における基金型事業の実施状況

図表5-10のとおり、集中復興期間における基金型事業の基金事業執行率は61.8%となっており、取崩しが行われずに基金に保有されている額(以下「取崩未済額」という。)は1兆0054億余円となっている。これを基幹事業、効果促進事業(個別配分)及び効果促進事業(一括配分)別にみると、図表5-14のとおり、基金事業執行率はそれぞれ64.8%、67.9%、31.2%、取崩未済額はそれぞれ8158億余円、226億余円、1669億余円となっており、特に効果促進事業(一括配分)の基金事業執行率が低くなっている。

図表5-14 基金型事業の事業別交付額等(平成27年度末現在)

(単位:百万円、%)
所管省 事業番号 事業名 区分 交付可能額(第1回~第14回) 交付額(第1回~第14回) 左のうち平成23年度から27年度までの実施計画分に係る交付額 流用増額 流用減額 取崩額 基金事業執行率 国庫返還額 取崩未済額
A B C D D/(A+B-C) E (A+B-C)-D-E
文部科学省 A-1 公立学校施設整備費国庫負担事業(公立小中学校等の新増築・統合) 基幹事業 2,542 2,542 1,904 56 53 1,572 82.4 - 335
効果促進事業
(個別配分)
2,640 2,640 2,448 1 13 1,914 78.5 - 522
A-2 学校施設環境改善事業(公立学校の耐震化等) 基幹事業 4,196 4,196 3,674 27 26 2,882 78.4 0 793
効果促進事業
(個別配分)
950 950 950 38 39 664 69.9 1 284
A-3 幼稚園等の複合化・多機能化推進事業 基幹事業 137 137 131 - - 50 38.6 - 80
効果促進事業
(個別配分)
235 235 228 - - 190 83.5 - 37
A-4 埋蔵文化財発掘調査事業 基幹事業 2,740 2,740 2,622 17 7 1,479 56.2 1 1,150
効果促進事業(個別配分) 523 523 519 - 0 452 87.1 - 66
厚生労働省 B-1 医療施設耐震化事業 基幹事業 - - - - - - - - -
効果促進事業
(個別配分)
- - - - - - - - -
B-2 介護基盤復興まちづくり整備事業(「定期巡回・随時対応サービス」や「訪問看護ステーション」の整備等) 基幹事業 30 30 30 - - 30 100.0 - -
効果促進事業
(個別配分)
- - - - - - - - -
B-3 保育所等の複合化・多機能化推進事業 基幹事業 342 342 279 1 - 257 91.6 - 23
効果促進事業
(個別配分)
599 599 599 - 1 558 93.4 - 39
農林水産省 C-1 農山漁村地域復興基盤総合整備事業(集落排水等の集落基盤、農地等の生産基盤整備等) 基幹事業 91,538 91,538 81,053 2,023 2,056 54,502 67.2 44 26,474
効果促進事業
(個別配分)
1,097 1,097 1,029 53 - 603 55.6 - 480
C-2 農山漁村活性化プロジェクト支援(復興対策)事業(被災した生産施設、生活環境施設、地域間交流拠点整備等) 基幹事業 3,393 3,393 3,214 21 120 2,756 88.4 - 358
効果促進事業
(個別配分)
1,269 1,269 1,141 120 - 977 77.4 - 284
C-3 震災対策・戦略作物生産基盤整備事業(麦・大豆等の生産に必要となる水利施設整備等) 基幹事業 433 433 433 - - 185 42.7 - 248
効果促進事業
(個別配分)
- - - - - - - - -
C-4 被災地域農業復興総合支援事業(農業用施設整備等) 基幹事業 42,813 42,813 41,786 93 85 40,287 96.3 - 1,507
効果促進事業
(個別配分)
791 791 791 0 11 568 72.8 0 212
C-5 漁業集落防災機能強化事業(漁業集落地盤かさ上げ、生活基盤整備等) 基幹事業 58,269 58,269 51,676 48 22 22,922 44.3 - 28,780
効果促進事業
(個別配分)
1,085 1,085 1,085 - - 939 86.4 - 146
C-6 漁港施設機能強化事業(漁港施設用地かさ上げ、排水対策等) 基幹事業 7,527 7,527 7,429 2 20 4,113 55.4 - 3,299
効果促進事業
(個別配分)
147 147 136 - - 133 97.9 - 2
C-7 水産業共同利用施設復興整備事業(水産業共同利用施設、漁港施設、放流用種苗生産施設整備等) 基幹事業 115,272 115,272 112,913 133 216 90,491 80.2 19 22,319
効果促進事業
(個別配分)
4,681 4,681 4,594 36 - 3,327 71.8 - 1,303
C-8 農林水産関係試験研究機関緊急整備事業 基幹事業 12,317 12,317 8,396 - - 7,071 84.2 - 1,324
効果促進事業
(個別配分)
- - - - - - - - -
C-9 木質バイオマス施設等緊急整備事業 基幹事業 3,483 3,483 3,483 5 5 428 12.3 3,037 16
効果促進事業
(個別配分)
166 166 166 - 1 153 93.5 - 10
F-1 漁業集落復興効果促進事業 効果促進事業
(一括配分)
12,430 12,430 10,853 - - 2,574 23.7 - 8,279
F-3 漁業集落復興効果促進事業(県分) 効果促進事業
(一括配分)
722 722 722 - - 163 22.6 - 558
国土交通省 D-1 道路事業(市街地相互の接続道路等) 基幹事業 296,268 296,268 278,083 4,689 1,204 126,922 45.0 3 154,642
効果促進事業
(個別配分)
2,958 2,958 2,958 314 127 2,184 69.4 - 962
D-2 道路事業(高台移転等に伴う道路整備(区画整理)) 基幹事業 40,614 40,614 36,238 411 1,408 26,351 74.7 - 8,890
効果促進事業
(個別配分)
- - - - - - - - -
D-3 道路事業(道路の防災・震災対策等) 基幹事業 1,237 1,237 1,237 317 7 1,133 73.2 - 414
効果促進事業
(個別配分)
3 3 3 - - 3 100.0 - -
D-4 災害公営住宅整備事業等(災害公営住宅の整備、災害公営住宅に係る用地取得造成等) 基幹事業 640,650 640,650 603,639 5,495 9,743 420,017 70.0 31 179,342
効果促進事業
(個別配分)
6,169 6,169 6,151 83 55 4,156 67.2 0 2,022
D-5 災害公営住宅家賃低廉化事業 基幹事業 24,433 24,433 11,229 297 - 7,752 67.2 0 3,774
効果促進事業
(個別配分)
- - - - - - - - -
D-6 東日本大震災特別家賃低減事業 基幹事業 3,281 3,281 1,543 86 - 1,087 66.7 - 541
効果促進事業
(個別配分)
11 11 11 - - 9 81.0 - 2
D-7 公営住宅等ストック総合改善事業(耐震改修、エレベーター改修) 基幹事業 - - - - - - - - -
効果促進事業
(個別配分)
- - - - - - - - -
D-8 住宅地区改良事業(不良住宅除却、改良住宅の建設等) 基幹事業 - - - - - - - - -
効果促進事業
(個別配分)
- - - - - - - - -
D-9 小規模住宅地区改良事業(不良住宅除却、小規模改良住宅の建設等) 基幹事業 1,173 1,173 1,173 - - 757 64.5 - 415
効果促進事業(個別配分) - - - - - - - - -
D-10 住宅市街地総合整備事業(住宅市街地の再生・整備) 基幹事業 - - - - - - - - -
効果促進事業
(個別配分)
- - - - - - - - -
D-11 優良建築物等整備事業 基幹事業 2,184 2,184 2,063 - - 1,381 66.9 - 682
効果促進事業(個別配分) - - - - - - - - -
D-12 住宅・建築物安全ストック形成事業(住宅・建築物耐震改修事業) 基幹事業 56 56 56 - - 52 92.4 - 4
効果促進事業
(個別配分)
- - - - - - - - -
D-13 住宅・建築物安全ストック形成事業(がけ地近接等危険住宅移転事業) 基幹事業 22,064 22,064 21,934 28 1,334 7,990 38.7 - 12,637
効果促進事業
(個別配分)
- - - - - - - - -
D-14 造成宅地滑動崩落緊急対策事業 基幹事業 30,508 30,508 30,508 - 24 25,616 84.0 290 4,575
効果促進事業
(個別配分)
427 427 427 9 - 374 85.5 4 58
D-15 津波復興拠点整備事業 基幹事業 85,482 85,482 78,852 56 15 55,896 70.8 - 22,997
効果促進事業
(個別配分)
2,483 2,483 2,370 6 - 1,277 53.7 - 1,100
D-16 市街地再開発事業 基幹事業 8,275 8,275 7,723 - - 4,284 55.4 - 3,438
効果促進事業
(個別配分)
1,039 1,039 1,039 - - 978 94.1 - 61
D-17 都市再生区画整理事業(被災市街地復興土地区画整理事業等) 基幹事業 238,528 238,528 209,994 6,083 4,331 135,888 64.1 - 75,858
効果促進事業
(個別配分)
26,264 26,264 21,602 610 2 12,133 54.6 - 10,077
D-18 都市再生区画整理事業(市街地液状化対策事業) 基幹事業 - - - - - - - - -
効果促進事業
(個別配分)
- - - - - - - - -
D-19 都市防災推進事業(市街地液状化対策事業) 基幹事業 53,074 53,074 52,511 518 3 19,323 36.4 - 33,703
効果促進事業
(個別配分)
77 77 77 - - 69 89.6 - 8
D-20 都市防災推進事業(都市防災総合推進事業) 基幹事業 17,290 17,290 16,874 390 78 13,153 76.5 7 4,025
効果促進事業
(個別配分)
5,864 5,864 5,847 27 74 4,808 82.8 0 990
D-21 下水道事業 基幹事業 137,124 137,124 121,396 1,140 2,769 49,758 41.5 - 70,009
効果促進事業
(個別配分)
4,677 4,677 3,417 172 112 2,378 68.4 - 1,098
D-22 都市公園事業 基幹事業 41,541 41,541 40,703 1,694 1,450 17,794 43.4 - 23,154
効果促進事業(個別配分) 1,600 1,600 1,161 2 6 546 47.1 - 611
D-23 防災集団移転促進事業 基幹事業 514,290 514,290 491,706 10,083 9,810 362,653 73.7 62 129,263
効果促進事業
(個別配分)
11,237 11,237 10,929 36 - 8,703 79.3 - 2,262
F-2 市街地復興効果促進事業 効果促進事業
(一括配分)
264,574 264,551 221,844 - - 71,671 32.3 - 150,172
F-4 市街地復興効果促進事業(県分) 効果促進事業
(一括配分)
10,072 10,072 9,539 - - 1,615 16.9 - 7,924
環境省 E-1 低炭素社会対応型浄化槽等集中導入事業 基幹事業 2,776 2,776 2,410 - - 1,655 68.6 12 742
効果促進事業
(個別配分)
- - - - - - - - -
基幹事業の計 2,505,895 2,505,895 2,328,913 33,726 34,794 1,508,505 64.8 3,512 815,828
効果促進事業(個別配分)の計 77,004 77,004 69,691 1,514 447 48,106 67.9 7 22,645
効果促進事業(一括配分)の計 287,800 287,777 242,960 - - 76,024 31.2 - 166,936
合計 2,870,700 2,870,677 2,641,565 35,241 35,241 1,632,636 61.8 3,519 1,005,409
被災者に住宅又は宅地を供給している事業(事業番号C-5、D-4、D-17及びD-23)の計 1,496,494 1,496,494 1,396,786 22,442 23,965 967,415 69.3 94 427,754
(注)
効果促進事業(一括配分)のうち漁業集落復興効果促進事業(事業番号F-1及びF-3)の対象となる基幹事業は、漁業集落防災機能強化事業(事業番号C-5)の1事業であり、市街地復興効 果促進事業(事業番号F-2及びF-4)の対象となる基幹事業は、災害公営住宅整備事業等(事業番号D-4)、津波復興拠点整備事業(事業番号D-15)、市街地再開発事業(事業番号D-16)、都市再生区画整理事業(事業番号D-17)及び防災集団移転促進事業(事業番号D-23)の4事業である。

a 基幹事業及び効果促進事業(個別配分)の実施状況

基幹事業及び効果促進事業(個別配分)において、集中復興期間における基金事業執行率が約6割となっている原因として、復興庁等は、特定被災自治体が作成する復興交付金事業計画について、事業に係る住民の合意形成や事業用地の取得等が極めて短期間で行われるとともに円滑に工事が進捗するとの想定で計画が策定されており、これを前提に復興交付金が交付されていることを挙げている。また、特定被災自治体は、事業に係る住民の合意形成の難航、建設資材単価や建設事業従事者労務単価の高騰による入札の不調・不落、事業用地の取得の難航、建設資材や建設事業従事者の不足による工事の遅延、関連して進められている他の事業等との調整の難航等を挙げている。

一方、取崩未済額が多額となっている原因として、復興交付金事業が完了したときの基金の残余額の返還に係る取扱いが挙げられる。当該返還に係る取扱いについては24年1月に東日本大震災復興対策本部により定められた東日本大震災復興交付金基金管理運営要領(平成24年府復第4号等)において、特定被災自治体は、復興交付金事業が全て完了したときに、基金の残余額を国庫に返還することとなっていた。そして、その後の26年6月に開催された第13回復興推進会議において、事業計画期間の終了前でも必要のなくなった金額の返還を進めることが必要との決定がなされ、この決定を受けて、復興庁は、27年10月に特定被災自治体に対して、復興交付金事業のうち一部の基幹事業や効果促進事業(一括配分)を除いて、所管省単位で事業が全て完了したときに当該事業に係る残余額を国庫に返還することとするなど、残余額の返還が従来よりも促進される取扱方針を示した。しかし、集中復興期間の最終年度である27年度においても、図表5-11のとおり、所管省単位で事業が全て完了している特定被災自治体は少なく、復興交付金事業のうち一部の事業が完了して残余額が生じていても引き続き基金で保有を続けている状況となっている。

そこで、上記の基金を活用する方法として復興交付金の事業間の流用が考えられることから、流用の状況についてみると、図表5-14のとおり、基幹事業及び効果促進事業(個別配分)全体で計352億余円が事業間で流用されており、国から追加で復興交付金の交付を受けずに事業が実施されている。その内訳をみると、そのほとんどが基幹事業に係るものであり、これを事業別にみると、災害公営住宅整備事業等(事業番号D-4)が流用増額計54億余円、流用減額計97億余円、都市再生区画整理事業(事業番号D-17)が流用増額計60億余円、流用減額計43億余円、防災集団移転促進事業(事業番号D-23)が流用増額計100億余円、流用減額計98億余円と他の事業と比較して流用額が多額となっている。これは、特定被災自治体において、被災者に住宅又は宅地を供給している上記の各事業が、東日本大震災からの復興等に係る各事業のうち最優先で実施されるべき事業であり、他の事業に先行して実施されてきたため、他の事業に比べて早期に事業全体の見通しが立ち、事業の完了までに必要となる事業費の過不足を把握できたことから事業間の流用が頻繁に行われたためであると考えられる。

また、復興交付金の国庫返還の状況をみると、木質バイオマス施設等緊急整備事業(事業番号C-9)が計30億余円と他の事業と比較して国庫返還額が多額となっている。これは、同事業の完了に伴う精算により国庫に返還された額が一部含まれているものの、そのほとんどは福島県が東白川郡塙町において実施を予定していた同事業を廃止して国庫に返還(国庫返還額30億余円)したことによるものである。

なお、復興基本方針に基づき、被災者の居住と安定確保を図るために、被災者に住宅又は宅地を供給している農林水産省所管の漁業集落防災機能強化事業(事業番号C-5)並びに国土交通省所管の災害公営住宅整備事業等(事業番号D-4)、都市再生区画整理事業(事業番号D-17)及び防災集団移転促進事業(事業番号D-23)の4事業の23年度から27年度までの5か年度の実施計画分に係る交付額は計1兆3967億余円と基金型事業の同交付額の約5割を占めていて、27年度末までの取崩額は9674億余円、基金事業執行率は69.3%となっている(上記4事業の実施状況については2008_1_2_3_3リンク参照)。

b 効果促進事業(一括配分)の実施状況

効果促進事業(一括配分)は、前記のとおり、集中復興期間における基金事業執行率が31.2%と、基幹事業や効果促進事業(個別配分)に比べて低くなっている。

そこで、効果促進事業(一括配分)に係る復興交付金の交付を受けた特定被災自治体延べ5県及び57市町村への交付額のうち24年度から27年度までの4か年度の実施計画分に係る計2429億余円について、所管省である農林水産、国土交通両省にそれぞれ提出された使途内訳提出書等により各特定被災自治体の事業内容の決定状況をみたところ、図表5-15のとおり、27年度末までに事業内容が未定の交付額は、漁業集落復興効果促進事業(事業番号F-1及びF-3)に係る交付額計115億余円のうち2県及び20市町村に交付された79億余円(68.4%)並びに市街地復興効果促進事業(事業番号F-2及びF-4)に係る交付額計2313億余円のうち3県及び36市町村に交付された1020億余円(44.0%)となっていて、計1099億余円(45.2%)の復興交付金が、事業内容が未定のままとなっている。このうち、事業内容の全てが未定の交付額は、漁業集落復興効果促進事業(事業番号F-1)で3市町に交付された計4億余円、市街地復興効果促進事業(事業番号F-2)で5市町に交付された計4億余円となっている。

図表5-15 効果促進事業(一括配分)に係る交付額の事業内容の決定状況(平成27年度末現在)

(単位:百万円、%)
所管省 事業番号 事業名 交付を受けた県及び市町村延べ数 平成24年度から27年度までの実施計画分に係る交付額 事業内容の一部又は全てが決定している県及び市町村延べ数 事業内容が決定している交付額 事業内容の一部又は全てが未定の県及び市町村延べ数 事業内容が未定の交付額 事業内容が未定の交付額の割合
  A   B   A-B (A-B)/A
農林水産省 F-1 漁業集落復興効果促進事業 21市町村 10,853 (1村) (13) (3市町) (430) 67.9
18市町村 3,479 20市町村 7,374
F-3 漁業集落復興効果促進事業(県分) 2県 722 (-) (-) (-) (-) 75.2
2県 178 2県 544
2県及び21市町村 11,576 (1村) (13) (3市町) (430) 68.4
2県及び18市町村 3,657 2県及び20市町村 7,918
国土交通省 F-2 市街地復興効果促進事業 36市町村 221,844 (-) (-) (5市町) (444) 43.1
31市町村 126,025 36市町村 95,819
F-4 市街地復興効果促進事業(県分) 3県 9,539 (-) (-) (-) (-) 65.1
3県 3,326 3県 6,213
3県及び36市町村 231,383 (-) (-) (5市町) (444) 44.0
3県及び31市町村 129,351 3県及び36市町村 102,032
合計 5県及び57市町村 242,960 (1村) (13) (8市町) (875) 45.2
5県及び49市町村 133,009 5県及び56市町村 109,951
注(1)
県及び市町村は、①漁業集落復興効果促進事業、②市街地復興効果促進事業、又は③漁業集落復興効果促進事業及び市街地復興効果促進事業のいずれかの類型で事業を実施しており、③の類型の県及び市町村数は①及び②の類型のそれぞれに重複計上されている。
注(2)
「事業内容の一部又は全てが決定している(未定の)県及び市町村延べ数」及び「事業内容が決定している(未定の)交付額」欄の上段()書きは、「事業内容の全てが決定している(未定の)県及び市町村延べ数」及び「事業内容の全てが決定している(未定の)交付額」である。

そして、基金の造成時期別に、上記の事業内容が未定の交付額計1099億余円の内訳をみると、図表5-16のとおり、24年度は206億余円、25年度は100億余円、26年度は759億余円、27年度は32億余円となっていて、1099億余円のうち約2割に相当する24年度の実施計画分に係る交付額206億余円は、交付されてから3年以上にわたり、事業内容が未定のままとなっている。

図表5-16 事業内容が未定の効果促進事業(一括配分)に係る基金の造成時期別の交付額(平成27年度末現在)

(単位:百万円)
所管省 事業番号 事業名 平成24年度に設置造成等された基金のうち事業内容が未定の交付額 25年度に設置造成等された基金のうち事業内容が未定の交付額 26年度に設置造成等された基金のうち事業内容が未定の交付額 27年度に設置造成等された基金のうち事業内容が未定の交付額
農林水産省 F-1 漁業集落復興効果促進事業 3,012 1,172 2,484 706 7,374
F-3 漁業集落復興効果促進事業(県分) 333 10 199 - 544
3,345 1,182 2,684 706 7,918
国土交通省 F-2 市街地復興効果促進事業 11,131 8,916 73,265 2,504 95,819
F-4 市街地復興効果促進事業(県分) 6,213 - - - 6,213
17,345 8,916 73,265 2,504 102,032
合計 20,691 10,099 75,949 3,210 109,951

効果促進事業(一括配分)に係る復興交付金が交付された後、27年度末現在で事業内容の全てが未定となっているものについて、事例を示すと次のとおりである。

<事例1> 効果促進事業(一括配分)に係る復興交付金が交付された後、平成27年度末現在で事業内容の全てが未定となっているもの

県・市町村名 交付額 事業概要
岩手県大船渡市 1億1880万円 漁業集落復興効果促進事業
大船渡市は、被災した漁業集落の安全安心な居住環境の確保を目的として、復興交付金事業の基幹事業である漁業集落防災機能強化事業(事業番号C-5)を実施するために、農林水産省から、平成25年度3億5970万円、26年度6757万余円、27年度1億0710万円の計5億3437万余円の復興交付金の交付を受けており、当該事業の効果を増大させるために漁業集落復興効果促進事業(事業番号F-1)を実施するとして、同省から、24年度480万円、25年度7673万余円、26年度1441万余円、27年度2284万余円の計1億1880万円の復興交付金の交付を受けている。
上記漁業集落復興効果促進事業(事業番号F-1)の進捗状況についてみたところ、27年度末現在、用地取得に時間を要したことにより漁業集落防災機能強化事業(事業番号C-5)が復興交付金事業計画どおりに進まずに事業完了年度が27年度から28年度に延長されており、同事業に係る復興交付金の取崩額は2億1330万余円、基金事業執行率は39.9%となっていて、漁業集落復興効果促進事業(事業番号F-1)に係る事業内容の全てが未定となっていた。
なお、大船渡市は、漁業集落防災機能強化事業(事業番号C-5)の完了の見通しが立ち、その際に必要となる漁業集落復興効果促進事業(事業番号F-1)の事業内容を決定し次第、農林水産省に使途内訳提出書を提出し、当該事業を実施したいとしている。

さらに、27年度末までに事業内容が決定している交付額計1330億余円のうち、使途内訳提出書において事業の着手予定年度が27年度以前とされているものについて、基金の取崩しの状況をみると、図表5-17のとおり、取崩しが行われずに基金に保有されている額が397億余円となっているなど、事業内容が決定していても実際には執行されていない状況も見受けられる(事業内容が決定している交付額の事業分類別内訳については別図表9参照)。

図表5-17 事業内容が決定している効果促進事業(一括配分)に係る基金の取崩しの状況(平成27年度末現在)

(単位:百万円)
所管各 事業番号 事業名 事業内容が決定している交付額 左のうち使途内訳提出書において事業の着手予定年度が平成27年度以前とされている交付額 取崩額 取崩未済額
A B A-B
農林水産省 F-1 漁業集落復興効果促進事業 3,479 3,386 2,574 812
F-3 漁業集落復興効果促進事業(県分) 178 178 163 14
3,657 3,565 2,738 827
国土交通省 F-2 市街地復興効果促進事業 126,025 109,068 71,671 37,397
F-4 市街地復興効果促進事業(県分) 3,326 3,131 1,615 1,516
129,351 112,199 73,286 38,913
合計 133,009 115,765 76,024 39,740
(注)
取崩額は、図表5-14に記載の効果促進事業(一括配分)に係る取崩額と同額である。

このように、特定被災自治体において、効果促進事業(一括配分)に係る事業内容が未定の交付額が多額となっており、事業内容が決定している交付額についても取崩未済額が多額となっていること、また、28年報告において、会計検査院は、「基金型事業のうち、効果促進事業(一括配分)については、24年度から26年度までの3か年度の実施計画分に係る交付額計1448億余円のうち549億余円(37.9%)の復興交付金の事業内容が未定であり、そのうち約7割については交付された後2年以上にわたり、事業内容が未定のままとなっている。」「国は、今後の効果促進事業(一括配分)の機動的な事業の実施についても十分に配慮しつつ、各特定被災自治体における事業内容の決定状況等を踏まえた復興交付金の交付時期や規模等について検討を行っていく必要がある。」との所見を示していることなどを踏まえて、復興庁は、28年6月に交付可能額を通知した第15回復興交付金において効果促進事業(一括配分)の配分を見送ることとした。また、第16回復興交付金以降における効果促進事業(一括配分)の配分について、特定被災自治体の事業内容の決定状況を踏まえながら、制度要綱で定められている効果促進事業(一括配分)に係る上限額の範囲内で、効果促進事業を実施するのに真に必要な額のみを配分することとした上で、28年12月に交付可能額を通知した第16回復興交付金においても、効果促進事業(一括配分)の配分を見送ることとした。

なお、復興庁が27年5月に公表した「集中復興期間の総括及び平成28年度以降の復旧・復興事業のあり方」では、復興は新たなステージに移行しつつあり、28年度以降の復興支援については、被災地の「自立」という観点から、1(2)ア(イ)のとおり、復興事業として整理されるものでも、地域振興策や将来の災害への備えといった全国共通の課題への対応との性質を併せ持つものについては、被災自治体においても一定の負担を行うものとし、被災自治体が負担する程度については、財政状況等も踏まえ、全国で取り組まれている一般事業における負担の程度と比べて十分に軽減されたものとし、被災自治体の財政負担に十分配慮することとしている。これにより、28年度以降に復興交付金を配分して実施する効果促進事業に係る事業費は、国負担分80%を除いた地方負担分20%のうちの95%が震災復興特別交付税により措置されることとなった。そして、残りの5%が特定被災自治体の実質的な負担となるが、これは効果促進事業に係る事業費の1%に相当する。

オ 福島再生加速化交付金事業の実施状況
(ア) 福島再生加速化交付金制度の概要

福島再生加速化交付金は、福島第一原発の事故により設定された避難指示区域の見直しが進められたことに伴い、長期避難者の支援から早期帰還への対応まで幅広く対応し、復興の動きを加速させる次の各事業の実施に要する経費に充てるために、福島復興再生特別措置法等で定めるところにより、予算の範囲内で交付されるものである。

  • ① 長期避難者生活拠点形成事業
    災害公営住宅の整備を中心に、長期避難者を受け入れている地方公共団体の基盤整備等を推進するとともに、コミュニティの維持等の避難者を支援するためのソフト施策を一体的に実施することにより、長期避難者のための生活拠点の形成を促進することを目的とした事業
  • ② 福島定住等緊急支援事業
    福島第一原発の事故の影響により人口が流出し、地域の復興に支障が生じていると認められる地域において、子どもの運動機会を確保するための施設整備、公的な賃貸住宅の整備その他の取組を支援することにより、長期にわたる避難生活を余儀なくされている子育て世帯が早期に帰還し、安心して定住できる環境を整えることを目的とした事業
  • ③ 帰還環境整備事業
    住民が避難したことなどにより復興再生に遅れが生じている地域に対して、それぞれの地域の復興再生のための事業をそれぞれの地域が自主的、主体的に実施することを支援することにより、避難住民の早期帰還を促進し、地域の再生を加速化させることを目的とした事業

上記の福島再生加速化交付金事業を実施する福島県、避難先市町村又は避難元市町村その他の地方公共団体等は、長期避難者生活拠点形成事業を実施するための生活拠点形成事業計画、福島定住等緊急支援事業を実施するための定住緊急支援事業計画又は帰還環境整備事業を実施するための帰還環境整備事業計画をそれぞれ作成して復興庁に提出し、復興交付金事業と同様に同庁が算定した交付可能額の通知を受けて、交付可能額の範囲内で福島再生加速化交付金事業を所管する内閣府、復興庁、警察庁、原子力規制委員会、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省及び環境省(以下「所管各府省庁」という。)にそれぞれ交付申請を行い、所管各府省庁から福島再生加速化交付金の交付決定及び交付を受けて福島再生加速化交付金事業を実施している。

福島県等の事業主体は、福島再生加速化交付金事業の実施に当たり、所管各府省庁が定めた実施要綱等に基づき、福島定住等緊急支援事業については単年度型事業を実施することとなっており、また、長期避難者生活拠点形成事業及び帰還環境整備事業については、実施要綱等に規定する基幹事業ごとに、単年度型事業、基金型事業又は両者のいずれかを選択して実施することとなっている。そして、単年度型事業を実施する場合には、同一の交付決定の単年度型事業間において、基金型事業を実施する場合には、交付決定が同一か否かにかかわらず、同一の所管各府省庁に係る基金型事業間において、それぞれ福島再生加速化交付金の流用を行うことができることとなっている。

上記の実施要綱等によると、長期避難者生活拠点形成事業には避難先の災害公営住宅の整備等を目的とする基幹事業が29事業(別図表11参照)、福島定住等緊急支援事業には学校、保育所、公園等の遊具の更新等を目的とする基幹事業が6事業(別図表11参照)、帰還環境整備事業には避難元の災害公営住宅の整備等を目的とする基幹事業が47事業(別図表11参照)ある。そして、長期避難者生活拠点形成事業には、生活拠点形成事業計画の目標を実現するために基幹事業と一体となってその効果を増大させるために必要な事業である避難者支援事業があり、福島定住等緊急支援事業及び帰還環境整備事業には、定住緊急支援事業計画及び帰還環境整備事業計画の目標を実現するために基幹事業と一体となってその効果を増大させるために必要な事業である効果促進事業(以下、避難者支援事業と効果促進事業を合わせて「避難者支援事業等」という。)がある。避難者支援事業等は、あらかじめ事業内容を定めて、基幹事業ごとに個別に事業費が配分されることとなっている。

福島再生加速化交付金事業の特徴として、復興交付金事業と同様に、①一つの事業計画に当該事業計画期間内に予定している複数の事業を全て含めることができること、②一部の基幹事業について、国が通常行っている同種の補助事業の補助率を負担することに加えて地方負担分の50%を追加的に交付するとともに、残りの地方負担分を震災復興特別交付税の加算により手当てするなどの地方負担の軽減が図られていること、③事業によって基金型事業を実施できること、④福島再生加速化交付金をそれぞれの事業間で流用できることなどが挙げられる。

(イ) 集中復興期間における福島再生加速化交付金事業の実施状況

集中復興期間における福島再生加速化交付金事業の実施状況をみると、図表5-18のとおり、長期避難者生活拠点形成事業(25年度から27年度までの実施計画分に係る交付額計1816億余円、執行額及び取崩額計639億余円)では、福島県及び12市町村が交付可能額の通知を受け、このうち福島県及び10市町村は単年度型事業により実施していて、交付可能額及び交付額はともに計108億余円、執行額は計73億余円となっており、執行率は68.0%となっている。一方、上記交付可能額の通知を受けた福島県及び12市町村のうち福島県及び7市町村は基金型事業により実施していて、交付可能額及び交付額はともに計1720億余円、このうち28年度以降の実施予定分を除いた25年度から27年度までの3か年度分に係る交付額は計1708億余円となっている。基金型事業については、「災害公営住宅整備事業等」において用地取得に時間を要したことなどにより、27年度末での取崩額は計565億余円となっていて、基金事業執行率は33.0%となっている。

福島定住等緊急支援事業(25年度から27年度までの実施計画分に係る交付額計141億余円、執行額計117億余円)では、27市町村が交付可能額の通知を受けて事業を実施していて、交付可能額は計174億余円、交付額は計141億余円、執行額は計117億余円、執行率は82.8%となっている。

帰還環境整備事業(25年度から27年度までの実施計画分に係る交付額計302億余円、執行額及び取崩額計238億余円)では、福島県、29市町村及び2一部事務組合が交付可能額の通知を受け、このうち福島県、27市町村及び2一部事務組合は単年度型事業により実施していて、交付可能額は計332億余円、交付額は計247億余円、執行額は計219億余円、執行率は88.6%となっている。一方、福島県及び7市町村は基金型事業により実施していて、交付可能額及び交付額はともに計55億余円で、全額が25年度から27年度までの3か年度分に係る交付額となっている。基金型事業については、避難企業の帰還や新たな企業を誘致する「原子力災害被災地域産業団地等整備等支援事業」において産業団地の整備を行うために必要となる土砂を調達することが困難となったことなどにより、取崩額は計19億余円となっていて、基金事業執行率は35.8%となっている。

図表5-18 集中復興期間における福島再生加速化交付金事業の実施状況(平成27年度末現在)

(単位:百万円、%)
事業 実施方法 県、市町村及び一部事務組合数 交付可能額 交付額 左のうち平成25年度から27年度までの実施計画分に係る交付額 流用増額 流用減額 執行額又は取崩額 執行率又は基金事業執行率 国庫返還額 執行未済額又は取崩未済額
          A B C D D/(A+B-C) E (A+B-C)-D-E
長期避難者生活拠点形成事業 単年度型 県及び10市町村 10,868 10,802 10,802 0 0 7,348 68.0 2 3,450
基金型 県及び7市町村 172,027 172,027 170,873 3,494 3,494 56,555 33.0 - 114,318
県及び12市町村 182,896 182,830 181,676 3,494 3,494 63,904 35.1 2 117,769
福島定住等緊急支援事業 単年度型 27市町村 17,422 14,199 14,199 22 22 11,763 82.8 15 2,420
基金型
27市町村 17,422 14,199 14,199 22 22 11,763 82.8 15 2,420
帰還環境整備事業 単年度型 県、27市町村及び2一部事務組合 33,242 24,713 24,713 30 30 21,911 88.6 - 2,802
基金型 県及び7市町村 5,541 5,541 5,541 20 20 1,984 35.8 - 3,556
県、29市町村及び2一部事務組合 38,784 30,255 30,255 50 50 23,895 78.9 - 6,359
単年度型計 県、33市町村及び2一部事務組合 61,533 49,715 49,715 52 52 41,023 82.5 17 8,674
基金型計 県及び11市町村 177,569 177,569 176,415 3,515 3,515 58,539 33.1 - 117,875
合計 県、33市町村及び2一部事務組合 239,102 227,285 226,131 3,567 3,567 99,563 44.0 17 126,549
注(1)
本図表は、福島再生加速化交付金の交付を受けた県、市町村及び一部事務組合が把握しているものを集計している。
注(2)
県、市町村及び一部事務組合数は、福島再生加速化交付金の交付を受けた県、市町村及び一部事務組合の数である。
注(3)
県、市町村及び一部事務組合は、①単年度型、②基金型又は③単年度型及び基金型のいずれかの類型で事業を実施しており、③の類型は①及び②のそれぞれに重複計上されている。
注(4)
交付可能額は、復興庁から各事業主体に対して平成25年度から通知されており、27年度の交付可能額には27年度の実施計画分のほかに28年度以降の実施予定分が含まれている。
注(5)
交付額は、平成25年度から27年度までの実施計画分に28年度以降の実施予定分に係るものが含まれているものがある。
注(6)
流用増額及び流用減額については、他事業から福島再生加速化交付金が流用された場合の額を流用増額、他事業に福島再生加速化交付金を流用した場合の額を流用減額としており、平成27年度末現在で県及び13市町村で実績がある。
カ 震災復興特別交付税に係る経費の執行状況

震災復興特別交付税は、アのとおり、一般会計及び復興特会から交付税特会に対して繰入れを行った後に地方公共団体の事業実施状況等に応じて交付額が決定されて交付されるものである。

集中復興期間について、23年度の一般会計及び24年度から27年度までの復興特会における震災復興特別交付税に係る経費の執行状況をみると、図表5-19のとおり、23年度の一般会計及び24、27両年度の復興特会から予算現額の全額が交付税特会に繰り入れられている。また、25、26両年度は、それぞれ復興特会から予算現額のうちの95.3%、71.9%が交付税特会に繰り入れられており、集中復興期間における累計執行率は95.2%と高くなっている。

図表5-19 集中復興期間の復興特会等における震災復興特別交付税に係る経費の執行状況

(単位:億円、%)
年度 事業名 予算現額
A
支出済額
B
不用額 執行率
B/A
平成23 地方交付税の加算
(震災復興特別交付税)
1兆6635 1兆6635 - 100.0
24 震災復興特別交付税の追加 6704 6704 - 100.0
25 震災復興特別交付税の追加 6053 5771 281 95.3
26 震災復興特別交付税 5723 4116 1607 71.9
27 震災復興特別交付税 4415 4415 - 100.0
3兆9531 3兆7642 1888 95.2
(注)
各年度において、翌年度繰越額は生じていない。

交付税特会における震災復興特別交付税に係る経費の執行において、復興特会から交付税特会に繰り入れた金額が復興費用の支出に必要な金額として受け入れるべき金額を超過した場合は、特会法第231条の規定により、翌年度の繰入額を減額して調整することとなっている。交付税特会において震災復興特別交付税に係る経費の執行の結果生じた不用額は、この規定により復興費用の支出に必要な金額として繰り入れるべき金額を超過した金額として、翌年度の歳出予算現額に過不足の調整として計上される。

集中復興期間の交付税特会における震災復興特別交付税に係る経費の執行状況をみると、図表5-20のとおり、歳出予算現額は24年度以降減少しており、支出済額は23年度の8134億余円が25年度に5070億余円となったものの、その後の復興事業の進捗に伴い、徐々に増加している。不用額について、復興事業の進捗の遅れなどにより24年度から26年度までの間にそれぞれ855億余円、1633億余円、1482億余円が生じているが、いずれも前記の規定による過不足の調整として同額が翌年度の歳出予算現額に計上されている。また、復興特会等からの累計繰入額に対する累計支出済額の割合は、23年度の48.8%に対して、27年度までの累計が84.7%となっていて、集中復興期間を通じて上昇している。

図表5-20 集中復興期間の交付税特会における震災復興特別交付税に係る経費の執行状況

(単位:億円、%)
年度 歳出予算現額 復興特会等からの繰入れ   特会法の規定による繰入金の過不足の調整 支出済額   繰越額 不用額 復興特会等からの累計繰入額に対する累計支出済額の割合
    復興特会等からの累計繰入額   累計支出済額    
A=B+D+前年度のG B C D=前年度のH E F G H=C-F-G F/C
平成23 1兆6635 1兆6635 1兆6635 8134 8134 8500 48.8
24 1兆5204 6704 2兆3339 7645 1兆5779 6704 855 67.6
25 1兆3331 5771 2兆9111 855 5070 2兆0850 6627 1633 71.6
26 1兆2377 4116 3兆3227 1633 5144 2兆5995 5749 1482 78.2
27 1兆1647 4415 3兆7642 1482 5889 3兆1884 5758 84.7
キ 国からの財政支援等による地方公共団体の財政への影響

復興庁が27年5月に公表した「集中復興期間の総括及び平成28年度以降の復旧・復興事業のあり方」では、復興は新たなステージに移行しつつあり、28年度以降の復興支援については、被災地の「自立」につながるものとする必要があるとしている。また、被災地の「自立」という観点から、1(2)ア(イ)のとおり、復興事業と整理されるものでも、地方振興策や将来の災害への備えといった全国共通の課題への対応との性質を併せ持つものについては、被災自治体においても一定の負担を行うものとし、被災自治体が負担する程度については、その財政状況等も踏まえ、全国で取り組まれている一般事業における負担の程度と比べて十分に軽減されたものとし、被災自治体の財政負担に十分配慮するとしている。

アのとおり、国は、集中復興期間に特定被災自治体に対して国庫補助金等、復興交付金等計13兆4117億余円を交付して支援してきた。そして、特に津波被害や原子力災害が甚大であった東北3県及び沿岸31市町村に対して行われた上記の8割以上に相当する11兆4867億余円に上る多額の財政支援等は、これらの地方公共団体の歳入歳出の内容等に大きな影響を与えていることが想定される。

そこで、特定被災地方公共団体及びその区域が特定被災区域内にある特定被災地方公共団体以外の市町村を加えた9県及び227市町村(以下「9県及び227市町村」という。)における国からの財政支援等による財政への影響の状況をみると、次のとおりとなっている。

(ア) 23年度から26年度までの間における9県及び227市町村の財政状況

国は、東日本大震災後の地方財政への対応に当たり、被災した地方公共団体が東日本大震災からの復旧・復興事業に着実に取り組めるようにするとともに、被災した地方公共団体以外の地方公共団体の財政運営に影響を及ぼすことがないようにするために、「平成24年度予算の概算要求組替え基準について」(平成23年9月閣議決定)に基づき、地方財政に係る歳入歳出等を通常収支分と東日本大震災の復旧・復興事業等に係る分(以下「東日本大震災分」という。)とに区分して整理している。また、23年度から26年度までの地方公共団体の決算については、通常収支分と東日本大震災分とに区分された状況が総務省の地方財政白書等により公表されている。

9県及び227市町村の23、26両年度の普通会計に係る歳入歳出の決算の状況をみると、図表5-21のとおり、9県の歳入総額は、23年度12兆1024億余円に対して26年度11兆1155億余円(対23年度比91.8%)であり、このうち東日本大震災分が23年度3兆6207億余円に対して26年度2兆4697億余円(同68.2%)となっている。また、歳出総額は、23年度11兆6440億余円に対して26年度10兆5772億余円(同90.8%)であり、このうち東日本大震災分は、23年度3兆3162億余円に対して26年度2兆1419億余円(同64.5%)となっている。

227市町村の歳入総額は、23年度7兆2430億余円に対して26年度8兆3886億余円(同115.8%)であり、このうち東日本大震災分は23年度1兆3546億余円に対して26年度2兆2254億余円(同164.2%)となっている。また、歳出総額は、23年度6兆8282億余円に対して26年度7兆8553億余円(同115.0%)であり、このうち東日本大震災分は23年度1兆1537億余円に対して26年度1兆9828億余円(同171.8%)となっている。

総務省が公表している「都道府県決算状況調」及び「市町村決算状況調」を基に、会計実地検査を行った東北3県及び沿岸31市町村分の東日本大震災分の歳出を算出して、9県及び227市町村の東日本大震災分の歳出に占める割合をみると、26年度は、9県計2兆1419億余円のうち東北3県計1兆9538億余円、227市町村計1兆9828億余円のうち沿岸31市町村計1兆2829億余円となっていて、東北3県で約9割を、沿岸31市町村で約6割を占めている。

図表5-21 9県及び227市町村の歳入歳出決算(平成23年度~26年度)

(単位:億円、%)
県・市町村区分 区分 平成23年度 24年度 25年度 26年度 26年度対23年度比
9県 歳入総額 12兆1024 11兆4073 11兆0698 11兆1155 91.8
  東日本大震災分 3兆6207 3兆0277 2兆7567 2兆4697 68.2
  うち東北3県 3兆1835 2兆7064 2兆5242 2兆2501 70.6
通常収支分 8兆4817 8兆3795 8兆3130 8兆6457 101.9
歳出総額 11兆6440 10兆7756 10兆5044 10兆5772 90.8
  東日本大震災分 3兆3162 2兆5936 2兆3852 2兆1419 64.5
  うち東北3県 2兆9249 2兆2900 2兆1776 1兆9538 66.7
通常収支分 8兆3278 8兆1820 8兆1192 8兆4353 101.2
実質収支 818 1053 1042 1115 136.3
  うち東北3県 475 649 648 725 152.6
227市町村 歳入総額 7兆2430 8兆5141 8兆1525 8兆3886 115.8
  東日本大震災分 1兆3546 2兆6379 2兆1650 2兆2254 164.2
  うち沿岸31市町村 9113 2兆0729 1兆6176 1兆4811 162.5
通常収支分 5兆8885 5兆8762 5兆9875 6兆1632 104.6
歳出総額 6兆8282 8兆0321 7兆6212 7兆8553 115.0
  東日本大震災分 1兆1537 2兆4115 1兆9324 1兆9828 171.8
  うち沿岸31市町村 7937 1兆8865 1兆4282 1兆2829 161.6
通常収支分 5兆6746 5兆6206 5兆6888 5兆8725 103.4
実質収支 2531 2478 2480 2432 96.0
  うち沿岸31市町村 529 550 667 688 130.0
注(1)
9県及び227市町村の計数は、総務省が公表している地方財政白書を基に、東北3県及び沿岸31市町村の計数は、同省が公表している「都道府県決算状況調」及び「市町村決算状況調」を基にそれぞれ算出した。
注(2)
本図表の決算状況は、普通会計に係るものである。
注(3)
実質収支は、歳入歳出差引額から明許繰越等のために翌年度に繰り越すべき財源を控除した額で、財政運営の良否を判断する指標であるとされている。
(イ) 集中復興期間における東北3県及び沿岸31市町村の財政状況

上記のとおり、東北3県及び沿岸31市町村の東日本大震災分の歳出は、9県及び227市町村全体のうちの多くの割合を占めていることから、東北3県及び沿岸31市町村の集中復興期間における普通会計に係る歳入歳出決算の状況及び地方公営企業の経営状況について、震災前と比較するために22年度分も含めてみたところ、次のとおりとなっている。

a 歳入決算の状況

東北3県の歳入総額は、図表5-22及び図表5-23のとおり、22年度の2兆4460億余円から、23年度に5兆6113億余円と大幅に増加した後、24年度から26年度までは減少が続き、27年度に微増に転じて4兆6037億余円と推移しており、集中復興期間5か年度の平均(以下「期間平均」という。)の対22年度比は200.8%となっている。沿岸31市町村の歳入総額は、図表5-22及び図表5-24のとおり、22年度の9619億余円から、23年度1兆8428億余円、24年度3兆0304億余円と増加した後、25年度以降は減少が続いて、27年度2兆3574億余円と推移しており、期間平均の対22年度比は256.6%となっている。主な内訳は地方交付税及び国庫支出金の増加が大きく、期間平均の対22年度比は、地方交付税では東北3県が147.9%、沿岸31市町村が202.3%、国庫支出金では東北3県が402.5%、沿岸31市町村が630.0%となっている。また、地方公共団体の自主財源である地方税について、東北3県及び沿岸31市町村とも23年度は22年度より減少したものの、24年度から27年度まで増加し続けており、期間平均の対22年度比は、東北3県が113.6%、沿岸31市町村が97.8%となっている。

図表5-22 東北3県及び沿岸31市町村の歳入決算(平成22年度~27年度)

(単位:億円、%)
県・市町村区分 区分 平成22年度 集中復興期間 期間平均の対22年度比
23年度 24年度 25年度 26年度 27年度 期間平均
A b c d e f G=(b+c+d+
e+f)/5
G/A
東北3県 歳入総額 2兆4460 5兆6113 5兆0051 4兆7931 4兆5550 4兆6037 4兆9136 200.8
地方税
5484 5297 5839 6053 6480 7507 6235 113.6
地方交付税
6279 1兆2558 1兆0145 7948 7846 7963 9292 147.9
国庫支出金
3341 2兆1929 1兆2287 1兆1387 1兆0929 1兆0731 1兆3453 402.5
地方債
3774 4272 3639 3384 2540 2572 3282 86.9
その他
5580 1兆2056 1兆8137 1兆9156 1兆7753 1兆7261 1兆6873 302.3
沿岸31市町村 歳入総額 9619 1兆8428 3兆0304 2兆6114 2兆4995 2兆3574 2兆4683 256.6
地方税
3264 2824 3070 3237 3392 3453 3195 97.8
地方交付税
1770 4017 3916 3308 3166 3507 3583 202.3
国庫支出金
1278 5565 1兆4796 8833 6533 4544 8054 630.0
都道府県支出金
493 2484 2703 1726 1266 1105 1857 376.5
地方債
1127 1239 1280 1064 1203 1208 1199 106.4
その他
1685 2296 4537 7943 9432 9754 6793 403.0
注(1)
平成22年度から26年度までは、総務省が公表している「都道府県決算状況調」及び「市町村決算状況調」を基に作成した。
注(2)
平成27年度は、会計実地検査により把握した。
注(3)
本図表の決算状況は、普通会計に係るものである。

図表5-23 東北3県の歳入総額及び各歳入項目の推移

図表5-23 東北3県の歳入総額及び各歳入項目の推移 画像

図表5-24 沿岸31市町村の歳入総額及び各歳入項目の推移

図表5-24 沿岸31市町村の歳入総額及び各歳入項目の推移 画像

地方税について、沿岸31市町村の22、27両年度の状況をみると、図表5-25のとおり、22年度は、地方税総額3264億余円のうち市町村民税1337億余円、固定資産税1455億余円であるのに対して、27年度は、地方税総額3453億余円のうち市町村民税1592億余円、固定資産税1341億余円となっていて、地方税総額は5.7%、市町村民税は19.0%それぞれ増加し、固定資産税は7.8%減少している。27年度において22年度の水準に達している市町村数は、地方税が19市町村、市町村民税が27市町村、固定資産税が4町村となっている。また、税収確保の要因である人口及び事業所数の状況をみると、人口は約235万人から約231万人に、事業所は約11万事業所から約10万事業所にそれぞれ減少している。

沿岸31市町村によれば、市町村民税については、復旧・復興事業による受注増等により一時的に増加しているものの、少子高齢化、人口減少等構造的な状況を考慮すると、今後、大幅な増加は見込めないとしている。また、一部の地方公共団体は、このような状況においても、産業基盤の整備や企業立地の促進、交流人口の拡大等により地域経済を活性化していくことで財源の確保等を図る必要があるとしている。一方、固定資産税については、津波により浸水した地域の減免等により減少しているものの、今後、当該地域における土地区画整理事業、防災集団移転促進事業等の進捗に伴う住宅建設や産業集積等に伴い、震災前の水準に戻っていくとしている。

集中復興期間における自主財源の確保に関する取組について、沿岸31市町村は、東日本大震災直後の23年度においては、震災の影響を考慮して被災者支援のために必要な徴収猶予等の措置や納税者の居所の把握等を行うにとどまっていたが、その後、適切な滞納処分の実施、地域産業の振興、住民の利便性を考慮した収納方法の導入等の対応を行ったとしている。また、復興・創生期間においては、地域産業の活性化と子育て支援策の拡充等により都市部からの移住を進め、定住促進と人口増加を図るなどして自主財源の確保に取り組んでいきたいとしている。

図表5-25 沿岸31市町村の地方税、人口及び事業所数

(単位:百万円、千人、事業所、%)
県名 市町村名 地方税   人口 事業所数
市町村民税 固定資産税
平成22年度 27年度   22年度 27年度   22年度 27年度   22年度 28年1月1日   21年度 26年度  
対22年度比 対22年度比 対22年度比 対22年度比 対21年度比
岩手県 洋野町 1,131 1,263 111.6 465 560 120.3 555 575 103.5 19 17 92.4 699 642 91.8
久慈市 4,038 4,333 107.2 1,371 1,722 125.5 2,360 2,227 94.3 37 36 96.2 2,077 1,911 92.0
野田村 283 309 109.1 106 131 123.7 137 126 91.3 4 4 93.0 193 165 85.4
普代村 184 199 108.2 69 79 114.5 99 101 101.8 3 2 93.1 164 139 84.7
田野畑村 218 263 120.6 90 119 132.5 105 117 111.7 3 3 91.8 150 131 87.3
岩泉町 686 710 103.6 266 290 108.7 346 326 94.0 11 10 90.4 589 521 88.4
宮古市 5,418 5,469 100.9 2,196 2,574 117.1 2,759 2,296 83.2 59 55 93.7 3,073 2,684 87.3
山田町 1,167 1,143 98.0 495 534 107.7 536 421 78.4 18 16 87.0 857 589 68.7
大槌町 1,060 961 90.6 407 469 115.1 493 300 60.8 15 12 77.4 760 340 44.7
釜石市 4,283 4,482 104.6 1,676 2,353 140.3 2,315 1,727 74.6 39 35 90.3 2,306 1,820 78.9
大船渡市 3,842 4,328 112.6 1,491 1,975 132.4 2,010 1,881 93.5 40 38 94.7 2,623 2,197 83.7
陸前高田市 1,690 1,660 98.1 611 787 128.6 881 657 74.6 24 20 83.2 1,225 747 60.9
宮城県 気仙沼市 6,555 6,220 94.8 2,597 2,917 112.3 3,077 2,324 75.5 73 66 90.4 3,949 2,944 74.5
南三陸町 1,299 1,184 91.1 480 521 108.4 675 500 74.0 17 13 80.2 853 307 35.9
石巻市 17,190 16,899 98.3 6,632 7,556 113.9 8,043 6,720 83.5 161 147 91.4 8,740 5,941 67.9
女川町 4,143 3,182 76.8 450 251 55.8 3,608 2,720 75.3 9 6 69.6 612 225 36.7
東松島市 3,414 3,449 101.0 1,514 1,659 109.5 1,553 1,320 85.0 42 40 95.0 1,631 1,173 71.9
松島町 1,793 1,677 93.5 675 619 91.6 891 815 91.4 15 14 96.5 656 579 88.2
利府町 4,259 4,690 110.1 1,887 2,238 118.6 2,093 2,085 99.6 34 36 104.0 1,003 998 99.5
塩竈市 5,865 5,336 90.9 2,468 2,443 99.0 2,374 1,946 81.9 57 55 96.2 3,207 2,730 85.1
七ケ浜町 2,218 2,163 97.5 846 893 105.5 1,174 1,072 91.3 20 19 92.9 569 443 77.8
多賀城市 7,660 7,082 92.4 3,174 3,498 110.2 3,314 2,426 73.2 62 62 99.5 2,457 2,119 86.2
仙台市 172,525 186,442 108.0 76,847 91,230 118.7 69,018 66,228 95.9 1,011 1,045 103.3 48,006 49,555 103.2
名取市 10,267 11,076 107.8 4,018 4,739 117.9 4,942 4,818 97.5 72 76 106.1 2,703 2,670 98.7
岩沼市 6,453 6,641 102.9 2,240 2,697 120.3 3,386 3,039 89.7 43 44 100.3 1,951 1,787 91.5
亘理町 3,345 3,376 100.9 1,376 1,493 108.4 1,476 1,346 91.2 35 34 96.6 1,113 995 89.3
山元町 1,340 1,106 82.5 545 492 90.2 682 490 71.9 15 12 78.7 542 394 72.6
福島県 新地町 2,070 2,076 100.3 292 398 136.2 1,711 1,591 93.0 8 7 96.6 343 275 80.1
相馬市 4,512 5,258 116.5 1,646 2,402 145.9 2,529 2,366 93.5 37 35 95.1 1,892 1,745 92.2
広野町 1,951 3,160 161.9 293 546 186.2 1,612 2,539 157.5 5 5 93.1 274 199 72.6
いわき市 45,560 49,185 107.9 16,530 21,021 127.1 20,813 19,000 91.2 345 330 95.4 15,390 14,477 94.0
326,434 345,336 105.7 133,769 159,221 119.0 145,581 134,113 92.1 2,348 2,307 98.2 110,607 101,442 91.7
注(1)
「地方税」「市町村民税」及び「固定資産税」は、総務省が公表している「市町村別決算状況調」を基に作成した。
注(2)
「人口」は、総務省が公表している「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」を基に作成した。なお、本調査は、平成26年から人口・世帯数の調査期日を3月31日現在から1月1日現在に変更している。
注(3)
「事業所数」は、総務省及び経済産業省が公表している「平成21年度経済センサス-基礎調査」及び「平成26年度経済センサス-基礎調査」を基に作成した。

b 歳出決算の状況

東北3県の歳出総額は、図表5-26のとおり、22年度の2兆3321億余円から、23年度に5兆2862億余円と大幅に増加した後、24年度から26年度までは減少が続き、27年度に微増に転じて4兆2447億余円と推移しており、期間平均の対22年度比は193.8%となっている。沿岸31市町村の歳出総額は、22年度の9250億余円から、23年度1兆7214億余円、24年度2兆8117億余円と増加した後、25年度以降は減少が続いて、27年度2兆0814億余円と推移しており、期間平均の対22年度比は242.0%となっている。

行政目的に着目した分類による決算(目的別歳出決算)の状況をみると、図表5-26のとおり、東北3県では、災害復旧費を除くと、総務費及び民生費の増加が大きく、期間平均の対22年度比でそれぞれ402.9%、304.7%となっている。これは、総務費については、復興交付金基金や復興基金等への積立金の計上によるものであり、民生費については、災害救助費の計上及び除染事業に係る積立金の計上によるものである。また、沿岸31市町村では、災害復旧費を除くと、総務費や、漁港、道路等の建設に係る農林水産業費、土木費の増加が大きく、期間平均の対22年度比でそれぞれ579.0%、377.7%、374.6%となっている。

図表5-26 東北3県及び沿岸31市町村の目的別歳出決算(平成22年度~27年度)

(単位:億円、%)
県・市町村区分 区分 平成22年度 集中復興期間 期間平均の対22年度比
23年度 24年度 25年度 26年度 27年度 期間平均
A b c d e f G=(b+c+d+e+f)/5 G/A
東北3県 歳出総額 2兆3321 5兆2862 4兆5169 4兆3826 4兆1797 4兆2447 4兆5220 193.8
総務費
1478 9876 7420 3571 5389 3537 5959 402.9
民生費
2982 1兆0104 6674 1兆0859 8379 9421 9088 304.7
農林水産業費
1598 2049 2861 2393 2521 2508 2466 154.3
土木費
2282 2765 2886 3285 4041 4734 3542 155.1
災害復旧費
38 2070 3270 4030 3009 3322 3140 8,153.8
その他
1兆4940 2兆5996 2兆2055 1兆9686 1兆8455 1兆8922 2兆1023 140.7
沿岸31市町村 歳出総額 9250 1兆7214 2兆8117 2兆3473 2兆2333 2兆0814 2兆2390 242.0
総務費
1120 3735 1兆2631 5487 6128 4456 6487 579.0
民生費
2800 6411 6477 6644 3693 3527 5350 191.0
農林水産業費
205 281 521 827 1044 1203 775 377.7
土木費
1076 1026 2460 4631 5936 6115 4034 374.6
災害復旧費
15 1234 1549 1397 805 905 1178 7,423.1
その他
4031 4524 4477 4486 4724 4607 4564 113.1
注(1)
平成22年度から26年度までは、総務省が公表している「都道府県決算状況調」及び「市町村決算状況調」を基に作成した。
注(2)
平成27年度は、会計実地検査により把握した。
注(3)
本図表の決算状況は、普通会計に係るものである。

経費の経済的な性質に着目した分類による決算(性質別歳出決算)の状況をみると、図表5-27のとおり、災害復旧事業費を除くと、積立金が大きく増加している。これは、復興関連基金事業を実施するための国庫補助金等や復興交付金を基金に繰り入れていることによるものである。積立金の推移について、東北3県では22年度874億余円が23年度1兆6473億余円へ、沿岸31市町村では22年度238億余円が24年度1兆2220億余円へといずれも著しく増加した後、減少傾向にあるが、期間平均の対22年度比では東北3県が957.6%、沿岸31市町村で2,355.2%となっている。

図表5-27 東北3県及び沿岸31市町村の性質別歳出決算(平成22年度~27年度)

(単位:億円、%)
県・市町村区分 区分 平成22年度 集中復興期間 期間平均の対22年度比
23年度 24年度 25年度 26年度 27年度 期間平均
A b c d e f G=(b+c+d+e+f)/5 G/A
東北3県 歳出総額 2兆3321 5兆2862 4兆5169 4兆3826 4兆1797 4兆2447 4兆5220 193.8
物件費
780 2684 3097 3124 1512 1305 2345 300.5
扶助費
533 637 451 446 445 449 486 91.1
普通建設事業費
3112 6281 4051 5005 6175 6809 5664 182.0
災害復旧事業費
38 2070 3269 4027 3009 3322 3139 8,152.2
積立金
874 1兆6473 8017 6080 5876 5432 8376 957.6
繰出金
199 417 293 270 241 280 300 150.3
その他
1兆7782 2兆4296 2兆5986 2兆4871 2兆4537 2兆4847 2兆4907 140.0
沿岸31市町村 歳出総額 9250 1兆7214 2兆8117 2兆3473 2兆2333 2兆0814 2兆2390 242.0
物件費
1174 3379 3500 3677 1996 1708 2852 242.9
扶助費
1618 2304 1724 1727 1823 1865 1888 116.7
普通建設事業費
1100 967 2066 4997 6547 6801 4276 388.7
災害復旧事業費
15 1234 1547 1393 785 903 1172 7,388.6
積立金
238 2909 1兆2220 4555 5039 3315 5607 2,355.2
繰出金
833 931 984 1155 1199 1349 1124 134.9
その他
4270 5486 6073 5967 4941 4870 5467 128.0
注(1)
平成22年度から26年度までは、総務省が公表している「都道府県決算状況調」及び「市町村決算状況調」を基に作成した。
注(2)
平成27年度は、会計実地検査により把握した。
注(3)
本図表の決算状況は、普通会計に係るものである。

c 基金の状況

bのとおり、性質別歳出決算において積立金が大きく増加していることから、22年度から27年度までの各年度末現在における基金の状況をみると、図表5-28及び図表5-29のとおり、東北3県及び沿岸31市町村の積立金現在額は、22年度がそれぞれ2974億余円、1897億余円であったのに対して、25年度にそれぞれ1兆6859億余円、1兆5617億余円に達している。基金を構成する財政調整基金、減債基金及びその他特定目的基金の別にみると、復興交付金、復興関連基金等の受入れにより、東北3県、沿岸31市町村とも、その他特定目的基金が著しい増加を示しており、期間平均の対22年度比は、それぞれ657.6%、1,110.3%となっている。

図表5-28 東北3県及び沿岸31市町村の基金の状況(平成22年度~27年度)

(単位:億円、%)
県・市町村区分 区分 平成22年度 集中復興期間 期間平均の対22年度比
23年度 24年度 25年度 26年度 27年度 期間平均
A b c d e f G=(b+c+d+e+f)/5 G/A
東北3県 積立金現在額 2974 1兆6021 1兆6842 1兆6859 1兆5308 1兆3070 1兆5620 525.1
財政調整基金
382 729 937 1091 958 840 911 238.1
減債基金
465 730 738 695 723 730 723 155.5
その他特定目的基金
2126 1兆4561 1兆5166 1兆5072 1兆3626 1兆1499 1兆3985 657.6
沿岸31市町村 積立金現在額 1897 4634 1兆5232 1兆5617 1兆5500 1兆3571 1兆2911 680.5
財政調整基金
739 984 1566 1706 1760 1881 1579 213.5
減債基金
158 177 210 259 265 281 238 150.8
その他特定目的基金
998 3472 1兆3455 1兆3652 1兆3474 1兆1404 1兆1092 1,110.3
注(1)
平成22年度から26年度までは、総務省が公表している「都道府県決算状況調」及び「市町村決算状況調」を基に作成した。
注(2)
平成27年度は、会計実地検査により把握した。
注(3)
本図表の計数は、普通会計に係るものである。

図表5-29 東北3県及び沿岸31市町村の基金の推移

図表5-29 東北3県及び沿岸31市町村の基金の推移 画像

その他特定目的基金の状況をみると、図表5-30のとおり、26市町村が24年度に23年度の倍以上の規模になっており、27年度においても29市町村が23年度と同等以上の規模となっている。

図表5-30 東北3県別及び沿岸31市町村別のその他特定目的基金の状況(平成23年度~27年度)

(単位:百万円、%)
県・市町村名 集中復興期間
23年度 24年度   25年度   26年度   27年度  
対前年度比 対前年度比 対前年度比 対前年度比 対23年度比
岩手県 229,353 250,917 109.4 219,277 87.3 172,830 78.8 124,727 72.1 54.3
洋野町
3,159 3,276 103.6 3,318 101.2 2,982 89.8 3,073 103.0 97.2
久慈市
2,399 5,628 234.5 5,386 95.6 3,745 69.5 3,060 81.7 127.5
野田村
2,993 10,137 338.6 8,799 86.8 9,308 105.7 4,241 45.5 141.6
普代村
1,003 510 50.8 356 69.9 306 85.9 328 107.2 32.7
田野畑村
5,083 14,655 288.2 13,171 89.8 10,660 80.9 7,411 69.5 145.7
岩泉町
2,999 5,213 173.8 4,808 92.2 4,252 88.4 3,180 74.7 106.0
宮古市
9,200 46,730 507.9 39,193 83.8 41,873 106.8 27,256 65.0 296.2
山田町
4,130 59,732 1,446.0 60,776 101.7 59,152 97.3 54,634 92.3 1,322.6
大槌町
7,639 68,021 890.4 57,639 84.7 54,885 95.2 65,668 119.6 859.6
釜石市
11,496 70,654 614.5 74,466 105.3 85,631 114.9 74,981 87.5 652.2
大船渡市
5,994 32,971 549.9 32,461 98.4 28,491 87.7 21,182 74.3 353.3
陸前高田市
8,467 63,475 749.6 69,552 109.5 65,596 94.3 55,163 84.0 651.5
宮城県 322,462 423,956 131.4 398,890 94.0 347,572 87.1 302,708 87.0 93.8
気仙沼市
8,982 121,219 1,349.4 147,816 121.9 146,730 99.2 104,209 71.0 1,160.0
南三陸町
7,208 66,924 928.4 55,760 83.3 54,541 97.8 49,383 90.5 685.1
石巻市
25,395 164,164 646.4 200,454 122.1 206,401 102.9 172,785 83.7 680.3
女川町
5,412 47,892 884.8 48,690 101.6 56,433 115.9 60,318 106.8 1,114.3
東松島市
11,924 63,966 536.4 58,314 91.1 72,729 124.7 59,597 81.9 499.7
松島町
1,369 8,562 625.1 6,178 72.1 5,272 85.3 3,300 62.6 240.9
利府町
949 3,807 400.8 3,882 101.9 4,660 120.0 3,809 81.7 400.9
塩竈市
8,897 24,455 274.8 23,963 97.9 29,038 121.1 25,839 88.9 290.4
七ケ浜町
6,663 21,484 322.4 19,003 88.4 16,118 84.8 10,829 67.1 162.5
多賀城市
6,957 15,561 223.6 23,505 151.0 25,628 109.0 18,495 72.1 265.8
仙台市
124,509 190,241 152.7 171,576 90.1 143,811 83.8 128,210 89.1 102.9
名取市
9,095 16,439 180.7 35,629 216.7 31,003 87.0 34,158 110.1 375.5
岩沼市
6,002 33,282 554.5 26,136 78.5 28,470 108.9 16,407 57.6 273.3
亘理町
12,391 30,661 247.4 22,784 74.3 19,250 84.4 16,564 86.0 133.6
山元町
5,816 32,551 559.6 26,165 80.3 23,148 88.4 16,967 73.2 291.7
福島県 904,296 841,743 93.0 889,038 105.6 842,258 94.7 722,544 85.7 79.9
新地町
1,405 13,821 983.5 16,914 122.3 17,559 103.8 16,684 95.0 1,187.2
相馬市
17,701 36,330 205.2 32,526 89.5 28,394 87.2 22,712 79.9 128.3
広野町
1,115 3,282 294.3 2,892 88.1 2,364 81.7 2,307 97.5 206.9
いわき市
20,916 69,917 334.2 73,100 104.5 69,051 94.4 57,693 83.5 275.8
東北3県及び沿岸31市町村計 1,803,397 2,862,194 158.7 2,872,431 100.3 2,710,159 94.3 2,290,440 84.5 127.0

d 主要財政指標の状況

東北3県及び沿岸31市町村の主要財政指標の状況を震災前の22年度と27年度とで比較してみると、図表5-31のとおり、財政力指数(注9)は、経済回復を背景とした税収増等の影響を受けて、東北3県及び11市町において改善しており、財源の余裕度が増している。

実質公債費比率(注10)は、償還計画に基づく償還により元利償還金が減少していることや、震災復興特別交付税の措置により復旧・復興事業に係る地方負担分が起債によることなく賄えるため急激な悪化を回避していることなどから、宮城、福島両県及び24市町村において改善している。なお、岩手県の実質公債費比率は、22年度15.6%から27年度20.5%へと上昇しているが、これは、東北新幹線の盛岡以北延伸や公共施設の整備等に係る多額の起債や病院の整備等の財源とした公営企業債に係る繰出金が多額に上っていることによるものであり、東日本大震災に起因しているものではない。岩手県は、24年度に実質公債費比率が18%を超えたため、公債費負担適正化計画を策定して、公債費の抑制に努めているとしている。

(注9)
財政力指数  地方公共団体の財政力を示す指数で、基準財政収入額を基準財政需要額で除して得た数値の過去3年間の平均値。指数が高いほど普通交付税算定上の留保財源が大きいことになり、財源に余裕があるといえる。
(注10)
実質公債費比率  当該地方公共団体の一般会計等が負担する元利償還金等の標準財政規模に対する比率の過去3年間の平均値で、借入金(地方債)の返済額及びこれに準ずる額の大きさを指標化し、資金繰りの程度を表す指標。地方債の起債に協議を要する団体等の判定に用いられるものであり、この比率が18%以上の団体は地方債の起債に当たり許可が必要になり、25%以上の団体については、一定の地方債の起債が制限される。

図表5-31 東北3県及び沿岸31市町村の財政力指数及び実質公債費比率

(単位:財政力指数は単位なし、実質公債費比率は%)
県・市町村名 財政力指数 実質公債費比率
平成22年度 23年度   27年度   平成22年度 23年度   27年度  
22年度より改善 22年度より改善 22年度より改善 22年度より改善
岩手県 0.31 0.30 0.34 15.6 17.6 20.5
  洋野町 0.22 0.21 0.23 12.9 11.5 9.6
久慈市 0.39 0.39 0.40 15.8 15.5 14.2
野田村 0.17 0.17 0.17 11.5 9.4 6.1
普代村 0.14 0.14 0.14 16.0 15.2 11.7
田野畑村 0.13 0.12 0.13 11.6 11.4 9.0
岩泉町 0.15 0.14 0.15 11.6 11.2 6.3
宮古市 0.34 0.32 0.35 14.2 12.9 11.7
山田町 0.27 0.26 0.27 14.5 13.6 9.9
大槌町 0.31 0.30 0.24 10.1 11.8 11.1
釜石市 0.46 0.43 0.47 11.9 12.1 14.1
大船渡市 0.41 0.39 0.45 11.3 11.7 10.9
陸前高田市 0.27 0.26 0.26 18.2 18.0 14.1
改善した県・市町村数 6 9 10
宮城県 0.52 0.51 0.60 15.1 15.5 14.5
  気仙沼市 0.42 0.41 0.40 15.6 15.2 12.5
南三陸町 0.30 0.29 0.27 14.2 13.3 9.8
石巻市 0.50 0.48 0.49 14.9 13.7 15.2
女川町 1.28 1.17 0.99 4.0 4.5 4.9
東松島市 0.43 0.41 0.40 13.2 13.4 13.5
松島町 0.50 0.48 0.44 12.4 11.1 9.0
利府町 0.83 0.81 0.83 14.3 13.4 9.6
塩竈市 0.52 0.50 0.49 9.7 12.4 11.0
七ヶ浜町 0.62 0.62 0.60 12.0 10.3 2.6
多賀城市 0.73 0.72 0.68 9.7 9.5 10.6
仙台市 0.86 0.85 0.89 11.9 11.6 9.8
名取市 0.75 0.75 0.79 10.4 10.1 6.5
岩沼市 0.79 0.78 0.80 4.2 6.6 △ 0.4
亘理町 0.56 0.53 0.54 9.9 9.6 7.1
山元町 0.38 0.36 0.35 14.6 13.9 13.6
改善した県・市町村数 4 11 11
福島県 0.45 0.42 0.51 14.4 14.4 11.7
  新地町 0.83 0.78 0.79 13.6 13.4 9.8
相馬市 0.55 0.55 0.60 19.6 17.7 11.8
広野町 1.12 1.02 1.25 14.1 16.1 8.2
いわき市 0.68 0.66 0.72 12.4 12.8 9.7
改善した県・市町村数 4 2 5
14 22 26
注(1)
平成22年度及び23年度は、総務省が公表している「都道府県決算状況調」及び「市町村決算状況調」を基に作成した。
注(2)
平成27年度は、会計実地検査により把握した。

e 地方公営企業の経営状況

地方公営企業を含めて地方公共団体が実施する東日本大震災に係る復旧事業について、国は、「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律」等により特別の補助等を行うこととされたが、これに併せて、被災した地方公営企業施設の早期復旧と経営の安定を図るために、「東日本大震災に係る地方公営企業施設の災害復旧事業等に対する繰出金について」(平成23年6月総財公第65号総務副大臣通知)等により、地方公営企業の復旧・復興事業に要する経費に充てるための一般会計からの繰出金について特例を設けることとした。具体的には、地方公営企業施設に係る通常の建設改良において一般会計で負担することとされている部分に、地方公営企業が負担する残余の部分の2分の1を加えるなどした額を一般会計からの繰出対象とすることとした。また、東日本大震災により被害を受けた地方公営企業における資金不足額については、資金手当のための公営企業債を充当できることとするとともに、これに係る利子の2分の1の額に一般会計からの繰出しを認めて、当該繰出しに要する経費について震災復興特別交付税を措置することとした。

沿岸31市町村の地方公営企業の経営状況についてみると、図表5-32のとおり、赤字事業は、22年度が149事業のうち17事業あり、震災直後の23年度が152事業のうち37事業へと増加したが、27年度には149事業のうち18事業へと減少している。また、黒字額と赤字額(注11)の差額である総収支は、22年度の68億余円から27年度の280億余円へと増加している。

(注11)
黒字額と赤字額  黒字額は、地方公営企業法(昭和27年法律第292号)の規定の全部又は一部を適用する事業(水道事業(簡易水道事業を除く。)、鉄道事業、病院事業等。以下「法適用事業」という。)において計上された純利益の金額と、法適用事業以外の事業(簡易水道事業、市場事業、下水道事業等。以下「法非適用事業」という。)において実質収支がプラスとなった場合の金額を合計したものである。また、赤字額は、法適用事業において計上された純損失の金額と、法非適用事業において実質収支がマイナスとなった場合の金額を合計したものである。

図表5-32 沿岸31市町村の地方公営企業の経営状況(平成22年度~27年度)

(単位:事業、百万円)
県名
(対象市町村数)
区分 平成22年度 集中復興期間
23年度 24年度 25年度 26年度 27年度
岩手県
(12市町村)
黒字事業 事業数 56 49 52 54 55 53
黒字額 779 1,039 828 824 1,337 1,257
赤字事業 事業数 2 9 4 2 2 3
赤字額 △248 △624 △141 △119 △127 △263
事業数計 58 58 56 56 57 56
総収支 530 414 686 705 1,209 993
宮城県
(15市町)
黒字事業 事業数 66 56 65 65 64 65
黒字額 8,418 4,840 9,755 12,569 12,499 23,325
赤字事業 事業数 13 24 17 16 17 15
赤字額 △3,596 △15,826 △3,062 △2,896 △7,810 △2,578
事業数計 79 80 82 81 81 80
総収支 4,822 △10,985 6,692 9,673 4,689 20,747
福島県
(4市町)
黒字事業 事業数 10 10 11 11 13 13
黒字額 1,851 1,811 4,051 3,361 4,066 6,299
赤字事業 事業数 2 4 2 1
赤字額 △350 △675 △134 △85
事業数計 12 14 13 12 13 13
総収支 1,500 1,135 3,917 3,275 4,066 6,299

(沿岸31市町村)
黒字事業 事業数 132 115 128 130 132 131
黒字額 11,049 7,691 14,635 16,756 17,904 30,882
赤字事業 事業数 17 37 23 19 19 18
赤字額 △4,195 △17,127 △3,339 △3,101 △7,938 △2,842
事業数計 149 152 151 149 151 149
総収支 6,854 △9,435 11,296 13,654 9,966 28,040
(注)
黒字事業は、法適用事業において純利益を計上したもの、及び法非適用事業において実質収支のプラスを計上したものであり、赤字事業は、法適用事業において純損失を計上したもの、及び法非適用事業において実質収支のマイナスを計上したものである。
ク 地方公共団体等が実施する復旧・復興事業に係る個別の検査結果

イからオまでのとおり、地方公共団体等が実施する復旧・復興事業について、集中復興期間における各事業の実施状況を記述したところであるが、検査の過程で復興関連基金事業に係る国庫補助金等の国庫への返納に関する事項及び復興交付金事業に係る交付可能額の算定等に関する事項について、次のような事態が見受けられた。

(ア) 復興関連基金事業

復旧・復興事業に充てられる費用について、国は、復興基本法に基づき定められた復興基本方針、復興財源確保法等で定める方法により財源を確保することとなっており、その資金の流れについて透明化を図ることなどとなっている。このため、国は、復旧・復興事業に充てられるよう措置された費用に係る返納金について、復興基本法、復興財源確保法等で定める財源確保の趣旨から、返納させた後、その額を復旧・復興事業の費用及び復興債の償還費用の財源に充てることにしている。

23年度第3次補正予算に計上された費用のうち国会の議決を受けた復興費用に関する権利義務は、特別会計に関する法律の一部を改正する法律(平成24年法律第15号)附則第3条の規定に基づき、翌年度以降に繰り越して使用することとされたものを除き、復興特会に帰属することとなっている。これにより、23年度第3次補正予算に復興費用として計上されて23年度内に交付された国庫補助金等について、当該補助金等を活用した事業において使用する見込みのないなどの額を国庫に返納させる場合、国は、復興特会に返納させることとなる。

一方、上記以外の23年度第1次補正予算又は23年度第2次補正予算に計上された費用等のうち使用する見込みのないなどの額について、国はこれまで、一般会計に返納させた後、その額を復興特会に繰り入れて復旧・復興事業の費用等の財源に充てられるように、その原因となった支出を把握するなどして復興税外収入として別途整理するなどの所要の措置を執ってきている。

そこで、27年度末までの返納金が、各会計に適正に返納されているか、一般会計に返納された後、復興特会に繰り入れることになっているかなどに着眼して検査したところ、国土交通省が23年度第3次補正予算に復興費用として計上して独立行政法人住宅金融支援機構に23年度内に交付した国庫補助金について、使用する見込みのない額83億8631万余円を誤って復興特会ではなく一般会計に返納させている事態が見受けられたことから、不当事項として平成27年度決算検査報告に掲記した(平成27年度決算検査報告及び別添2か所参照 リンク12350 22350)。なお、上記の83億8631万余円については、復興特会において復旧・復興事業の費用等の財源に充てられるよう所要の措置が執られた。

また、23年度第1次補正予算に係る返納金が一般会計に返納された後、復興特会に繰り入れられて復旧・復興事業の費用等の財源に充てられるよう所要の措置が執られていない事態が、文部科学省(286万余円)及び農林水産省(42億5030万余円)で計42億5317万余円見受けられた。

上記のように、復旧・復興事業の費用等に充てられることになっている返納金の額が復興特会に繰り入れられるよう所要の措置が執られていなかったものについて、事例を示すと次のとおりである。

<事例2> 復旧・復興事業の費用等に充てられることになっている返納金の額が復興特会に繰り入れられるよう所要の措置が執られていなかったもの

所管府省庁 基金事業名 復旧・復興事業に充てられることになっていなかった額
農林水産省 林業信用保証事業交付金(災害復旧) 42億5030万余円
林野庁は、林業信用保証事業交付金実施要綱(平成15年10月6日付け15林政企第55号農林水産事務次官依命通知)に基づき、独立行政法人農林漁業信用基金(以下「信用基金」という。)が実施する林業信用保証業務に必要な経費を助成することにより、林業・木材産業者に対する林業関係資金の円滑な供給を図ることを目的として、信用基金に対して、平成23年度に、23年度第1次補正予算に計上された林業信用保証事業交付金57億7000万円及び23年度第3次補正予算に計上された同交付金1億3000万円を交付するなどしている。そして、信用基金は、同交付金を財源として、林業信用保証業務(災害復旧)を実施している。
同業務の内容は、林業者等が事業を実施するに当たり金融機関から融資を受けた資金について債務保証を行い、東日本大震災により被害を受け返済が困難となった場合に、その資金を代位弁済したり、債務保証に係る保証料を助成したりするものである。
同実施要綱によれば、信用基金は、同業務が完了する前であっても同業務で使用する見込みのない額が生じた場合、当該使用する見込みのない額を国庫に返還することとされている。
林野庁は、28年3月、同業務において、代位弁済の実績が少なかったことから、信用基金が算出した使用する見込みのない額42億5030万余円(23年度第1次補正予算分)を一般会計に返還させている。
しかし、同庁は上記の返還額について、復興基本法、復興財源確保法等で定める財源確保の趣旨から、一般会計に返還させた後、その額を復興特会に繰り入れて復旧・復興事業の費用等の財源に充てられるように、復興税外収入として別途整理するなどの事務手続をとる必要があったにもかかわらず、これらの手続をとっていなかった。このため、当該返還額は一般財源と区分されないまま、一般会計において収納されており、その額が復旧・復興事業の費用等の財源に充てられることになっていなかった。
(イ) 復興交付金事業

復興交付金事業を実施する特定被災自治体は、エ(ア)のとおり、復興交付金事業計画を作成して復興庁に提出し、同庁が制度要綱に基づき算定した交付可能額の通知を受け、交付可能額の範囲内で復興交付金事業の所管省にそれぞれ交付申請を行い、所管省から復興交付金の交付決定及び交付を受けて事業を実施している。

制度要綱によれば、復興交付金の交付可能額の算定について、効果促進事業(一括配分)に係る事業費(以下「効果促進事業費(一括配分)」という。)の上限額は、市町村にあっては、当該市町村が実施している基幹事業の交付対象事業費の合計額から民間事業者等の負担額を減じた額に10分の2を乗じて得られる額又は所定の額(第2回から第4回までの通知時においては100億円)のうちいずれか少ない額とされ、交付額は、効果促進事業費(一括配分)に10分の8を乗じた額とされている。

そこで、復興庁が公表している第1回から第14回までの復興交付金に係る交付可能額の通知時における復興交付金配分計画表を確認するなどしたところ、27年2月に復興庁が岩手県陸前高田市に通知した交付可能額に算定の誤りがあり、同市も同様に算定を誤って復興交付金の交付申請を行った結果、8541万余円が過大に交付されていた事態が見受けられたことから、不当事項として平成27年度決算検査報告に掲記した(平成27年度決算検査報告及び別添参照)。

また、過年度の交付可能額の通知時において効果促進事業費(一括配分)の上限額を超えて交付可能額が算定されている事態が、2市分で計15億9946万余円見受けられた。

制度要綱で定められた効果促進事業費(一括配分)の上限額を超えて交付可能額が算定されていたものについて、事例を示すと次のとおりである。

<事例3> 効果促進事業費(一括配分)の上限額を超えて交付可能額が算定されていたもの

市町村名 上限額を超えて算定されていた交付可能額計 事業概要
仙台市 9億3833万円 市街地復興効果促進事業
復興庁は、平成24年11月に仙台市に対して通知した第4回交付可能額のうち、効果促進事業(一括配分)に係る交付可能額について、下記の<計算過程>(復興庁の算定)のとおり効果促進事業費(一括配分)の上限額を111億7291万余円と算定し、これから第2回及び第3回の効果促進事業費(一括配分)計68億1559万余円を減じるなどして、交付可能額を34億8585万余円としている。
しかし、制度要綱によれば、効果促進事業費(一括配分)の上限額は、交付対象事業費の合計額から民間事業者等の負担額を減じた額に10分の2を乗じて得られる額又は所定の額(第4回通知時においては100億円)のうちいずれか少ない額とされており、本件では所定の額(100億円)の方が少額であることから、これを上限額として交付可能額を算定すると25億4752万余円となり、交付可能額(34億8585万余円)のうち9億3833万円が上限額を超えている。
なお、仙台市は、同年12月に、復興庁から通知された前記の交付可能額により国土交通省に交付申請を行い、同額で復興交付金の交付を受けている。そして、第2回及び第3回に交付を受けた効果促進事業(一括配分)に係る復興交付金54億5247万余円と合わせて基金を造成(交付額計89億3832万余円)して事業を実施しているが、第4回の復興交付金の交付から3年以上経過した27年度末までの取崩額は33億7530万余円(基金事業執行率37.7%)となっており、制度要綱に基づき算定された復興交付金の交付額であったとしても、その合計は取崩額の合計を上回っている。

<事例3> 効果促進事業費(一括配分)の上限額を超えて交付可能額が算定されていたもの 画像

ケ まとめ

国は、復興基本方針等を踏まえて、特定被災自治体が復興事業を実施するため、国庫補助金等の交付により集中復興期間において特定被災自治体に対して13兆4117億余円の財政支援を行った。

財政支援が多額に上る補助事業等、復興関連基金事業、復興交付金事業及び福島再生加速化交付金事業の集中復興期間における実施状況については、単年度で事業を実施する補助事業等の補助事業執行率が88.4%、福島再生加速化交付金事業の執行率が82.5%であるのに対して、基金を活用した事業の基金事業執行率は、復興関連基金事業が62.2%、復興交付金事業が61.8%、福島再生加速化交付金事業が33.1%となっている。

復興関連基金事業について、集中復興期間において157事業に国庫補助金4兆4483億余円が交付されていて、59事業が終了した。復興関連基金事業は、集中復興期間の終了後においても98事業が実施するとされていて、98事業に係る基金において、27年度末現在、1兆3182億余円の国庫補助金等相当額が保有されている。

事業が終了した復興関連基金事業について、28年度(28年8月末現在)までに事業終了後の残余額や使用見込みがない余剰金等計3387億余円が国庫に返納されているものの、復旧・復興事業の費用等に充てられることになっている返納金の額が復興特会に繰り入れられるよう所要の措置が執られていない事態が見受けられた。集中復興期間の終了後に実施される復興関連基金事業についても、残額の規模が適正か検証して、復旧・復興事業への使用が見込めなくなった場合、当該余剰金等については速やかに返納すること、その返納において適正を期することが求められる。

復興交付金事業について、集中復興期間において8道県及び96市町村に復興交付金2兆8720億余円が交付されていて、3道県及び30市町村において、27年度末現在、計画されていた復興交付金事業が全て完了している。復興交付金事業3,656事業のうち完了した事業数は1,528事業、実施中の事業数は1,869事業、未着手の事業数は131事業、中止又は廃止となった事業数は128事業となっている。

復興交付金事業のうち基金型事業の23年度から27年度までの5か年度の実施計画分に係る交付額2兆6415億余円のうち取崩未済額は1兆0054億余円となっていて、所管省単位で事業が全て完了していない特定被災自治体において引き続き基金で保有を続けている状況にある。基金型事業のうち効果促進事業(一括配分)について、24年度から27年度までの4か年度の実施計画分に係る交付額2429億余円のうち事業内容が未定の交付額が1099億余円あり、事業内容が決定している交付額1330億余円についても取崩しが行われずに基金に保有されている交付額が397億余円ある。また、復興交付金の交付可能額の算定について、過年度の交付可能額の通知時において制度要綱で定められた効果促進事業費(一括配分)の上限額を超えて交付可能額が算定されている事態が、2市分で計15億9946万余円見受けられた。

復興交付金事業は、復興・創生期間においても多数の事業が引き続き実施されるため、国は、基金型事業において取崩未済額が多額となっている状況等を踏まえ、特定被災自治体による事業の執行状況に応じた適切な復興交付金の配分を行うとともに、事業が完了して生じた残余額等や効果促進事業(一括配分)において事業内容が未定の額について、基幹事業及び効果促進事業(個別配分)への流用等を一層進めるなどして着実な縮小を図ること、また、復興交付金の交付可能額について、制度要綱に基づき適切に算定することなどが必要である。

復旧・復興事業に係る国からの財政支援等の結果、集中復興期間における東北3県及び沿岸31市町村の歳入総額は、期間平均の対22年度比で東北3県が200.8%、沿岸31市町村が256.6%となっており、その内訳をみると、国庫支出金の増加が大きくなっている。自主財源の確保について、地方税は、人口や事業所の減少等構造的な状況に起因して減少する面もあるが、一部の市町村は、土地区画整理や産業集積等の復興事業を進めることによってその確保に努めており、集中復興期間を通じて徐々に回復している。また、性質別歳出決算について、復興関連基金事業を実施するための国庫補助金等や復興交付金を基金に繰り入れていることから積立金が大きく増加している。基金について、その他特定目的基金は、期間平均の対22年度比で東北3県が657.6%、沿岸31市町村が1,110.3%となっている。主要財政指標についてみると、財政力指数及び実質公債費比率が震災前と比較して改善している市町村も見受けられる。

復興・創生期間においては、復興財源フレームにおける事業規模は減少するものの、被災した地方公共団体は、国庫補助金等により設置造成等した基金等により、引き続き復興事業を実施していくことを踏まえて、国は、各種施策、事業等が経済的、効率的に実施されるよう留意することが求められる。

(3) 集中復興期間における復旧・復興事業の成果の状況

 「(2)国から財政支援等を受けて地方公共団体等が実施する復旧・復興事業の状況等」において、補助事業等や復興交付金事業等の復旧・復興事業の事業規模や完了、延長等の進捗状況等を分析したが、これらの分析のみでは各事業において整備されている公共施設等が集中復興期間にどの程度完成し、活用されているかなどを把握することはできない。

そこで、国からの財政支援等の8割以上を占める東北3県及び沿岸31市町村において実施された事業を主な対象として、集中復興期間に実施された補助事業等や復興交付金事業等により整備された公共施設等はどの程度完成しているかなど、復旧・復興事業の成果の状況を検査した。検査に当たっては、津波等の災害を防止するために設置される堤体、水門等(以下、これらを合わせて「防潮堤」という。)の公共施設等の整備状況について、各府省庁の公表資料等を参考に「①津波防災等の社会基盤」「②交通網等の社会基盤」「③復興まちづくり」及び「④農水産業」の4分類と25の施策項目(注12)に区分して分析した。具体的には、区分した施策項目について、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法(昭和26年法律第97号)等に基づく災害復旧事業に係る計画や復興交付金事業計画等における整備計画施設等数(以下「計画施設数」という。)、27年度末現在完成している施設等数(以下「完成施設数」という。)、計画施設に係る事業費(以下「計画事業費」という。)、同年度末までに投じられた事業費(以下「支出済事業費」という。)及び完成施設に係る事業費(以下「完成分事業費」という。)を把握した。その上で、計画施設数に対する完成施設数の割合(以下「完成率」という。)、計画事業費に対する支出済事業費の割合(以下「事業費進捗率」という。)等の指標を用いて、計画に対する達成状況等を分析した。

また、集中復興期間における復旧・復興事業は、復興基本方針に基づき、災害に強い地域づくり、地域における暮らしの再生、地域経済活動の再生等の復興施策の下に実施されてきたものであり、施設整備の計画に対する達成状況を分析しても十分に施策の成果が測定できないものについては、災害公営住宅等の恒久住宅の入居戸数や産業復興に関する企業立地支援の採択事業者数、事業者の資金繰り支援に係る貸付実績等、それぞれの施策の目的に応じて会計検査院が選定した指標等に基づき、施策の達成に関する概括的な状況分析を行った。

特に、東日本大震災では、津波による人的被害や建物被害等が甚大であり、復興基本方針においても、津波防災に関する施策として、人命が失われないことを最重視し、ハード・ソフトの施策を組み合わせた「多重防御」による「津波防災まちづくり」を推進するとしており、これらの施策として、海岸・河川堤防等の復旧・整備、避難計画の策定、避難場所の確保、被災都市の中枢機能の復興のための市街地の整備、集団移転等を挙げている。

これらを踏まえて、ハード施策について、まず海岸法(昭和31年法律第101号)等に基づく海岸を防護するための施設(以下「海岸保全施設」という。)のうち、特に防潮堤はどの程度完成しているか、防潮堤の整備に要する事業費や完成時期は事業の進捗に伴いどのように変化しているかを検査した。

次に、津波による災害を防止したり、軽減したりすることができる防災性の高い市街地を形成するために、復興交付金により実施している都市再生区画整理事業(事業番号D-17)及び津波復興拠点整備事業(事業番号D-15)(以下、これらを合わせて「市街地整備に係る2事業」という。)による市街地の整備はどの程度進んでいるかなどを検査した。

さらに、ソフト施策との組合せの一環として、避難計画の策定の状況、避難所や津波避難ビル等の避難施設の指定の状況、避難所における避難者への支援のための備蓄物資の状況等について検査した。

(注12)
25の施策項目  海岸(防潮堤及びその他の2項目)、河川、海岸防災林、地盤沈下対策、交通網(道路、港湾、鉄道及び空港の4項目)、上水道、下水道、住まいの再建(漁業集落防災機能強化事業、災害公営住宅、都市再生区画整理事業、防災集団移転促進事業、公営住宅及び造成宅地の滑動崩落防止の6項目)、医療・福祉(医療・保健衛生施設及び社会福祉施設の2項目)、文化・教育(小中学校等及び社会教育施設等の2項目)、農地、農業用施設、漁港施設及び水産業共同利用施設、養殖施設
ア 施策項目別の成果の状況

東北3県及び沿岸31市町村における25の施策項目の計画事業費は、図表6-1のとおり、27年度末現在、計7兆2786億余円であり、これに対する完成分事業費は計2兆2452億余円(うち国庫補助金等計1兆8433億余円)となっている。

施策項目別の完成率をみると、100%は「鉄道」「空港」「公営住宅」及び「養殖施設」の4項目であり、80%以上が「港湾」「造成宅地の滑動崩落防止」等の9項目、20%以下が「海岸(防潮堤)」(防潮堤の新設、改修等を計画し又は実施している海岸の整備。以下同じ。)「海岸防災林」「上水道」及び「都市再生区画整理事業」の4項目である。20%以下の4項目は、津波により破壊され、流出した海岸保全施設、その背後地の市街地等の整備に関する施策項目となっている。また、計画事業費により事業規模をみると、「海岸(防潮堤)」が1兆3433億余円と最も多額であり、「河川」「道路」「災害公営住宅」「防災集団移転促進事業」及び「漁港施設及び水産業共同利用施設」の5項目が5000億円以上1兆円未満の規模となっている。

 「①津波防災等の社会基盤」のうち海岸について、「海岸(防潮堤)」と「海岸(その他)」を合わせて、計画施設数589海岸のうち完成施設数が96海岸、完成率は16.2%となっており、「海岸(防潮堤)」と「海岸(その他)」の別にみると、「海岸(防潮堤)」では整備が計画されている576海岸のうち完成施設数が87海岸、完成率は15.1%、事業費進捗率は34.2%、「海岸(その他)」では整備が計画されている13海岸のうち完成施設数が9海岸、完成率は69.2%、事業費進捗率は68.9%となっている。

 「③復興まちづくり」のうち住まいの再建について、「公営住宅」は全て完成し、「防災集団移転促進事業」も計画施設数8,840戸のうち完成施設数が6,484戸、完成率は73.3%となっていて、全体でみると、計画施設数計56,946戸のうち完成施設数が計33,061戸と、集中復興期間において約6割が完成している。

完成率及び事業費進捗率からみると、「河川」「社会福祉施設」「小中学校等」「社会教育施設等」及び「農地」について、完成率はそれぞれ78.8%、95.1%、93.9%、84.2%、84.4%となっている一方で、事業費進捗率は、事業規模の大きい施設等が完成していないことにより、それぞれ35.6%、63.2%、57.5%、40.6%、42.5%となっている。

そこで、完成していない施設等で事業規模の大きいものについて、27年度末現在で完成していない理由をみると、図表6-2のとおり、「河川」では、まちづくりなどの他事業との調整等、「小中学校等」では、移転のための用地取得等、「社会教育施設等」では、資材の調達等にそれぞれ時間を要していることなどによるとしている。また、福島県では、「河川」及び「社会福祉施設」の施設等が避難指示区域内に所在していることなどの理由を挙げている。

図表6-1 施策項目別の復旧・復興事業の成果(平成27年度末現在)

(単位:施策項目ごとの単位、億円、%)
施策項目 施設等数 事業費
単位 計画施設数 完成施設数 完成率 計画事業費 支出済事業費 事業費進捗率 完成分事業費
国庫補助金等 その他
  A B B/A C D D/C      
①津波防災等の社会基盤 海岸 海岸(防潮堤) 海岸 576 87 15.1 1兆3433 4605 34.2 302 30 332
海岸(その他) 海岸 13 9 69.2 64 44 68.9 21 2 24
  海岸 589 96 16.2 1兆3498 4649 34.4 323 33 356
  河川 箇所 818 645 78.8 6481 2313 35.6 1218 95 1313
  海岸防災林 地区 28 3 10.7 1604 406 25.3 45 63 108
  地盤沈下対策 ha 59 27 47.1 48 26 54.7 17 4 21
②交通網等の社会基盤 交通網 道路 km 1,111 648 58.3 9167 3724 40.6 1595 499 2094
港湾 施設 527 423 80.2 1200 976 81.2 600 129 729
鉄道 km 255 255 100.0 86 86 100.0 55 30 86
空港 空港 1 1 100.0 90 90 100.0 81 8 90
  上水道 km 1,300 164 12.6 909 264 29.1 217 42 259
  下水道 km 645 293 45.5 4800 2382 49.6 1759 226 1985
③復興まちづくり 住まいの再建 漁業集落防災機能強化事業 500 276 55.2 789 251 31.8 42 13 56
災害公営住宅 29,575 16,747 56.6 9328 5825 62.4 3764 508 4272
都市再生区画整理事業 10,129 1,652 16.3 3498 1635 46.7 253 72 326
防災集団移転促進事業 8,840 6,484 73.3 6023 4346 72.1 1622 244 1867
公営住宅 7,902 7,902 100.0 105 105 100.0 90 14 105
造成宅地の滑動崩落防止 地区 162 159 98.1 328 295 89.8 220 74 295
医療・福祉 医療・保健衛生施設 施設 215 209 97.2 159 142 89.2 69 71 140
社会福祉施設 施設 1,432 1,363 95.1 666 421 63.2 247 171 419
文化・教育 小中学校等 施設 930 874 93.9 1796 1034 57.5 536 292 828
社会教育施設等 施設 299 252 84.2 575 234 40.6 117 106 224
④農水産業   農地 ha 38,718 32,703 84.4 2566 1093 42.5 876 167 1044
  農業用施設 施設 4,838 3,914 80.9 1275 1093 85.7 877 203 1081
  漁港施設及び水産業共同利用施設 施設 7,558 6,282 83.1 7645 5880 76.9 3680 922 4603
  養殖施設 施設 56,470 56,470 100.0 140 140 100.0 118 22 140
7兆2786 3兆7420 51.4 1兆8433 4019 2兆2452
注(1)
本図表は全ての復旧・復興事業を記載したものではない。
注(2)
各施策項目とも県、市町村が把握している事業分に限定しており、国の機関による事業(直轄事業)は計上していない。
注(3)
「海岸」については、会計実地検査を行った沿岸31市町村のほか5市町に所在する海岸の事業実施分を含んでいる。また、「災害公営住宅」については、岩手、福島両県及び沿岸31市町村のうち30市町村のほか、その他の22市町村の事業実施分を、「防災集団移転促進事業」については、沿岸31市町村のうち22市町村のほか、その他の4市町の事業実施分をそれぞれ含んでいる。
注(4)
注(3)に掲げるもの以外の施策項目については、市町村が把握している事業分としては会計実地検査を行った沿岸31市町村分を計上している。
注(5)
「海岸(防潮堤)」については、防潮堤以外の海岸保全施設を防潮堤と合わせて整備しているものを含んでいる。
注(6)
「災害公営住宅」「漁業集落防災機能強化事業」「都市再生区画整理事業」及び「防災集団移転促進事業」については、効果促進事業に係る事業費も含んでいる。
注(7)
「災害公営住宅」については、復興交付金及び福島再生加速化交付金により整備されたものを合わせて計上している。
注(8)
「完成施設数」及び「完成分事業費」は、当該施設等について復旧事業から復興事業までの一連の整備が完了したものを計上している。
注(9)
施設等数の「単位」は、各施策項目に係る主なものとしている。
注(10)
各施策項目の表記単位以外のものに係る額についても計画事業費、支出済事業費及び完成分事業費に含めて計上している。
注(11)
岩手県の各施策項目の施設等には、平成28年8月の台風第10号により被災したものがあるが、27年度末現在で集計しているため、同台風による影響は反映されていない。

図表6-2 完成率が高い施策項目に係る施設のうち完成していない主な施設等の状況(平成27年度末現在)

(単位:施策項目ごとの単位、百万円、%)
施策項目 県・市町村名 単位 計画施設数 未完成施設数 計画事業費 完成していない施設に係る計画事業費 計画事業費に対する完成していない施設に係る計画事業費の割合(注) 主な完成していない施設の名称等 平成27年度末現在で完成していない理由(復興・創生期間における進捗の見込み)
          A B B/A    
河川 岩手県
(県事業分)
箇所 118 24 175,728 167,510 95.3 気仙川等の津波対策水門等 事業規模が大規模であることから関係機関との調整に時間を要したため(32年度完成予定)
宮城県
(県事業分)
287 66 378,510 266,264 70.3 七北田川の河川堤防等 まちづくりなどの他事業との調整に時間を要したことに加え、用地確保が難航しているため(復興・創生期間内に完成予定)
福島県
(県事業分)
263 51 82,822 76,550 92.4 紅葉川の河川堤防等 避難指示区域に所在するため放射線量の低減状況を考慮して事業に着手しているため(復興・創生期間内に完成予定)
社会福祉施設 福島県
(県事業分)
施設 181 29 23,544 14,751 62.6 避難指示区域内にある施設 避難指示区域に所在するため被害調査や計画が進んでいない施設があるため(28年度一部施設が完成済み)
小中学校等 大槌町 施設 5 5 11,705 11,705 100.0 大槌小学校、安渡小学校等5施設 入札不調により工事に着手できなかったため(28年度完成済み)
大船渡市 10 3 12,400 11,864 95.6 越喜来小学校等3施設 入札不調、用地取得の遅れなどにより工事に着手できなかったため(28年度完成済み)
陸前高田市 14 2 6,101 4,486 73.5 高田東中学校等2施設 移転のための用地取得等に時間を要したため(28年度1施設完成済み、30年度1施設完成予定)
宮城県
(県事業分)
81 3 33,645 25,774 76.6 気仙沼向洋高等学校等3施設 移転のための用地取得等に時間を要したため(28年度1施設完成済み、29年度2施設完成予定)
石巻市 102 19 20,491 14,186 69.2 雄勝小学校、渡波中学校等19施設 工法の見直しや移転先に応急仮設住宅が設置されているため(応急仮設住宅の退去状況により検討中)
名取市 19 2 6,563 5,190 79.0 閖上小学校等2施設 土地区画整理事業による造成が完了していないため(28年度から工事着手)
社会教育施設等 岩手県
(県事業分)
施設 7 1 2,757 2,712 98.3 高田松原野外活動センター 移転のための用地取得等に時間を要したため(28年度に基本構想計画を策定)
大槌町 9 6 2,728 2,721 99.7 安渡、赤浜、吉里吉里各地区の公民館等6施設 移転のための用地取得、関係機関等との調整に時間を要したため(28年度から工事着手)
釜石市 9 2 5,946 5,729 96.3 釜石市民交流センター等2施設 資材の調達等に時間を要したため(29年度までに完成予定)
気仙沼市 8 2 2,026 1,888 93.2 気仙沼中央公民館等2施設 移転場所において土地区画整理事業による造成が完了していないなどのため(31年度までに完成予定)
女川町 3 1 2,050 2,032 99.1 生涯学習センター 移転のための用地取得等に時間を要したため(29年度から工事着手)
名取市 24 5 1,452 1,116 76.8 閖上地区の公民館等4施設、増田地区の公民館1施設 移転場所において土地区画整理事業による造成が完了していないなどのため(29年度から事業着手)
農地 福島県
(県事業分)
ha 18,042 3,544 69,053 55,532 80.4 南相馬市原町東地区 ほ場整備事業が完了していないこと、再生可能エネルギーの導入計画等他事業との調整に時間を要したことなどのため(他事業との調整、施行の効率化により今後は事業が進捗する見込み)
(注)
「計画事業費に対する完成していない施設に係る計画事業費の割合」は、完成していない施設の事業規模を示すものであり、事業の進捗の度合いを示すものではない。
イ 津波防災に関する施策における復旧・復興事業の成果
(ア) 東日本大震災後の国の津波対策に関する取組

東北地方太平洋沖地震による津波は、従前の想定をはるかに超える規模のものであった。この津波は、広範囲にわたり浸水、地盤沈下、河川氾濫等を生じさせ、膨大な死者・行方不明者の発生、住宅・施設等の流出、産業の停滞や経済的損失等により、地域全体を壊滅的な状況に陥らせる被害を発生させた。

復興基本方針では、津波防災に関する施策として、たとえ被災したとしても人命が失われないことを最重視し、災害時の被害を最小化する「減災」の考え方に基づき「逃げる」ことを前提とした地域づくりを基本に、地域ごとの特性を踏まえて、ハード・ソフトの施策を組み合わせた「多重防御」による「津波防災まちづくり」を推進するとしている。

東日本大震災後の国の津波対策に関する取組は、図表6-3のとおりとなっている。

復興基本方針の策定に先立ち、発災直後の23年4月に「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会」(以下「専門調査会」という。)が中央防災会議に設置され、東北地方太平洋沖地震による地震・津波の発生状況、被害の状況等についての分析及び今後の対策について検討が行われた。

専門調査会が中間取りまとめに伴う提言として示した「今後の津波防災対策の基本的考え方について」(平成23年6月中央防災会議。以下「津波対策の基本的考え方」という。)では、今後の津波防災対策は、切迫性が低くても東北地方太平洋沖地震や最大クラスの津波(注13)を想定し、様々な施策を講ずるよう検討していく必要があるとし、海岸保全施設等の整備の対象とする津波高を大幅に高くすることは、施設整備に必要な費用、海岸の環境や利用に及ぼす影響等を考慮すると現実的ではないため、住民の避難を軸に、土地利用、避難施設の整備等のハード・ソフトの取り得る手段を尽くした総合的な津波対策の確立が急務であるとしている。この提言を受けて、23年6月に成立した「津波対策の推進に関する法律」(平成23年法律第77号)においては、多数の人命を奪った東日本大震災の惨禍を二度と繰り返すことのないよう、これまでの津波対策が必ずしも十分でなかったことを国として率直に反省するなどの津波に関する基本的認識を明らかにするとともに、津波対策を総合的かつ効果的に推進することとした。

専門調査会が取りまとめとして示した「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会報告」(平成23年9月中央防災会議)では、従前の想定をはるかに超えて甚大な被害が発生したことを重く受け止め、これまでの想定の考え方を根本的に改めて、地震・津波の想定から個々の対策までの手順全体について徹底的に見直しを行い、防災対策全体を再構築していく必要があるとして、津波対策を構築するに当たり想定される津波等の考え方、津波被害を軽減するための対策等について提言している。これらの提言を受けて、国は、23年12月に防災基本計画(昭和38年6月中央防災会議策定)に津波災害対策編を新設し、都道府県が作成する都道府県地域防災計画及び市町村が作成する市町村地域防災計画においても津波対策の強化が図られることとなった。

そして、同月に成立した「津波防災地域づくりに関する法律」(平成23年法律第123号。以下「津波防災地域づくり法」という。)において、津波による災害を防止し、又は軽減する効果が高く、将来にわたって安心して暮らすことのできる安全な地域の整備、利用及び保全(以下「津波防災地域づくり」という。)を総合的に推進することにより、津波による災害から国民の生命、身体及び財産の保護を図るために、国土交通大臣による基本指針の策定、市町村による推進計画の作成に関する事項等が定められ、東日本大震災を踏まえた津波対策の抜本的強化が図られた。

また、津波防災地域づくり法に基づき国土交通大臣が策定した「津波防災地域づくりの推進に関する基本的な指針」(平成24年国土交通省告示第51号。以下「津波防災基本指針」という。)では、津波防災地域づくりのために、最大クラスの津波が発生した場合でも「なんとしても人命を守る」という考え方で、地域ごとの特性を踏まえて、「多重防御」の発想により、津波防災を効率的かつ効果的に推進することが基本理念とされた。

(注13)
最大クラスの津波  東北地方太平洋沖地震による津波のように発生頻度は極めて低いものの、発生すれば甚大な被害をもたらす津波

図表6-3 東日本大震災後の国の津波対策に関する取組

年月 津波対策に係る法令等 府省庁等
平成23年4月 「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会」の設置 内閣府中央防災会議
6月 「今後の津波防災対策の基本的考え方について」の策定 内閣府中央防災会議
津波対策の推進に関する法律(平成23年法律第77号)成立  
7月 「設計津波の水位の設定方法等について」を通知 農林水産省、国土交通省
9月 「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会報告」の取りまとめ 内閣府中央防災会議
12月 防災基本計画の見直し(津波災害対策編の新設) 内閣府中央防災会議
津波防災地域づくりに関する法律(平成23年法律第123号)成立  
「津波防災地域づくりの推進に関する基本的な指針」の策定 国土交通省
24年7月 「津波避難対策検討ワーキンググループ報告」の取りまとめ 内閣府中央防災会議
25年3月 「津波避難対策推進マニュアル検討会報告書」の取りまとめ 消防庁
(イ) 津波防災に関するハード施策に係る復旧・復興事業の状況

a ハード施策の概要

海岸保全施設が整備される海岸は、海岸の存する地域及びその背後地の利用状況等に応じて、土地改良事業として管理している施設で防潮堤等の海岸保全施設に該当するものの存する地域等に係る海岸保全区域(以下「農地海岸」という。)、漁港区域に係る海岸保全区域(以下「漁港海岸」という。)、港湾区域及び港湾隣接地域に係る海岸保全区域(以下「港湾海岸」という。)並びにこれら以外の海岸保全区域(以下「建設海岸」という。)に区分され、農地海岸及び漁港海岸は農林水産大臣が、港湾海岸及び建設海岸は国土交通大臣が、それぞれの主務大臣となっている。主務大臣は、海岸法等に基づき、津波等による災害の発生の防止等を総合的に考慮して、「海岸保全区域等に係る海岸の保全に関する基本的な方針」を定めている。そして、都道府県知事は、同方針に基づき「海岸保全区域等に係る海岸の保全に関する基本計画」を策定し、これに基づき、海岸保全施設の整備等を計画的に行うこととしている。

津波対策の基本的考え方では、海岸保全施設等について、比較的頻度の高い一定程度の津波高に対して、引き続き整備を進めていくことを基本とすべきであるとし、設計対象の津波高を超えても、施設の効果が粘り強く発揮できるような構造物の技術開発を進め、整備していく必要があるとしている。そして、農林水産省及び国土交通省は、海岸堤防の設計等に関する基準として「設計津波の水位の設定方法等について」(平成23年7月農林水産省農村振興局、水産庁漁港漁場整備部、国土交通省水管理・国土保全局及び港湾局通知)を県、市町村等の海岸管理部局に通知している。

同基準によれば、海岸保全施設の設計を行うために、当該海岸保全施設に到達するおそれが多い津波として、海岸管理者が「海岸保全施設の技術上の基準を定める省令」(平成16年農林水産省、国土交通省令第1号)に基づいて定める設計津波の高さ(以下「設計津波水位」という。)を設定することとされている。設計津波水位は、一定の頻度(数十年から百数十年に一度程度)で到達すると想定される津波(以下「頻度の高い津波」という。)の集合を対象として行われた津波シミュレーション等の結果により設定され、防潮堤の高さは、設計津波水位を前提に、海岸の機能の多様性への配慮、環境保全、周辺景観との調和、経済性、維持管理の容易性等を総合的に考慮して、設定することとされている。

b 集中復興期間におけるハード施策に係る復旧・復興事業の状況

(a) 防潮堤の整備に係る復旧・復興事業の実施状況

防潮堤の整備に係る復旧・復興事業について、東北3県の沿岸31市町村に福島県の南相馬市、双葉郡楢葉、富岡、大熊、双葉、浪江各町の6市町を加えた沿岸部の37市町村に所在する海岸を検査した。

防潮堤の整備に係る復旧・復興事業は、図表6-4のとおり、27年度末現在、37市町村のうち福島県の大熊町を除く36市町村に所在する576海岸において事業が計画されており、このうち集中復興期間における完成施設数は87海岸、完成率は15.1%となっている。計画事業費1兆3433億余円のうち支出済事業費は4605億余円、事業費進捗率は34.2%、完成分事業費は332億余円(うち国庫補助金等302億余円)となっている。

県別にみると、計画施設数は、岩手県が111海岸、宮城県が370海岸、福島県が95海岸となっていて、それぞれの完成施設数及び完成率は、岩手県が11海岸、9.9%、宮城県が54海岸、14.5%、福島県が22海岸、23.1%となっている。計画事業費は、事業を実施する海岸数が多い宮城県が7255億余円と最も多額であり、次いで岩手県が4222億余円、福島県が1955億余円となっている。

また、海岸区分別にみると、完成率は、農地海岸が32.8%、港湾海岸が15.1%、建設海岸が13.3%、漁港海岸が6.1%となっている。計画事業費は、建設海岸が6938億余円と最も多くなっており、次いで漁港海岸が4055億余円等となっている。

図表6-4 防潮堤の整備に係る復旧・復興事業の実施状況(平成27年度末現在)

(単位:海岸、%、百万円)
県名
(事業を実施している市町村数)
海岸区分 海岸数 海岸(防潮堤)の計画施設数   計画施設数576海岸に係る事業費
平成27年度末までに復旧・復興事業が実施されている海岸数   計画事業費 支出済事業費 事業費進捗率 完成分事業費
完成施設数 完成率 国庫補助金等 その他
      A   B B/A C D D/C      
岩手県
(12市町村)
農地海岸 11 11 11 1 9.0 22,576 12,461 55.1 67 2 70
漁港海岸 56 56 56 1 1.7 193,395 35,402 18.3 106 6 113
港湾海岸 12 12 12 69,099 30,052 43.4
建設海岸 32 32 32 9 28.1 137,163 70,552 51.4 844 24 868
111 111 111 11 9.9 422,235 148,468 35.1 1,019 33 1,052
宮城県
(15市町)
農地海岸 103 103 87 38 36.8 26,064 15,812 60.6 15,337 474 15,812
漁港海岸 131 130 128 4 3.0 177,756 14,844 8.3 1,637 771 2,409
港湾海岸 37 37 36 92,501 26,549 28.7
建設海岸 100 100 100 12 12.0 429,249 139,422 32.4 5,778 491 6,269
371 370 351 54 14.5 725,571 196,629 27.0 22,754 1,737 24,491
福島県
(9市町)
農地海岸 11 11 10 2 18.1 24,159 17,683 73.1 827 151 979
漁港海岸 27 27 27 8 29.6 34,360 22,667 65.9 2,729 554 3,284
港湾海岸 17 17 17 10 58.8 9,612 6,247 64.9 2,484 506 2,991
建設海岸 40 40 40 2 5.0 127,443 68,812 53.9 392 90 482
95 95 94 22 23.1 195,574 115,411 59.0 6,434 1,303 7,738
東北3県
(36市町村)
農地海岸 125 125 108 41 32.8 72,799 45,958 63.1 16,233 629 16,862
漁港海岸 214 213 211 13 6.1 405,511 72,913 17.9 4,474 1,332 5,807
港湾海岸 66 66 65 10 15.1 171,213 62,849 36.7 2,484 506 2,991
建設海岸 172 172 172 23 13.3 693,856 278,788 40.1 7,015 606 7,621
合計 577 576 556 87 15.1 1,343,381 460,509 34.2 30,208 3,074 33,282
注(1)
県、市町村が把握している事業分に限定しており、国の機関による事業(直轄事業)は計上していない。
注(2)
「完成施設数」及び「完成分事業費」は、当該施設等について復旧事業から復興事業までの一連の整備が完了したものを計上している。
注(3)
岩手県の各海岸には、平成28年8月の台風第10号により被災したものがあるが、27年度末現在で集計しているため、同台風による影響は反映されていない。

復旧・復興事業により整備する防潮堤の高さ(以下「復旧後堤防高」という。)別の計画施設数は、図表6-5のとおり、27年度末現在、T.P.(注14)10m超が95海岸、T.P.5m超10m以下が286海岸、T.P.5m以下が195海岸となっていて、それぞれの完成施設数及び完成率は、10海岸・10.5%、24海岸・8.3%、53海岸・27.1%となっている。計画事業費は、事業を実施する海岸数が多いT.P.5m超10m以下が7706億余円と最も多額であり、次いでT.P.10m超が3452億余円、T.P.5m以下が2275億余円となっている。

県別では、T.P.10m超は岩手県が東北3県計の95海岸のうち78海岸、T.P.5m超10m以下は宮城県が東北3県計の286海岸のうち171海岸を占め、両県において整備する防潮堤の中心となっているが、岩手県のT.P.10m超の防潮堤の完成率は11.5%、宮城県のT.P.5m超10m以下の防潮堤の完成率は5.8%となっている。

(注14)
T.P.  Tokyo Peilの略。東京湾平均海面であり、全国の標高の基準となる海水面の高さである。

図表6-5 復旧後堤防高別の防潮堤の整備に係る復旧・復興事業の実施状況(平成27年度末現在)

(単位:海岸、%、百万円)
県名
(事業を実施している市町村数)
復旧後堤防高(T.P.)区分 計画施設数   計画施設数576海岸に係る事業費
平成27年度末までに復旧・復興事業が実施されている海岸数   計画事業費 支出済事業費 事業費進捗率 完成分事業費
完成施設数 完成率 国庫補助金等 その他
    A   B B/A C D D/C      
岩手県
(12市町村)
10m超 78 78 9 11.5 285,851 114,656 40.1 734 24 758
5m超~10m以下 32 32 1 3.1 136,314 33,741 24.7 217 6 223
5m以下 1 1 1 100.0 70 70 100.0 67 2 70
111 111 11 9.9 422,235 148,468 35.1 1,019 33 1,052
宮城県
(15市町)
10m超 17 17 1 5.8 59,365 7,830 13.1 1,314 40 1,355
5m超~10m以下 171 169 10 5.8 440,451 99,571 22.6 4,544 849 5,394
5m以下 182 165 43 23.6 225,754 89,227 39.5 16,894 846 17,741
370 351 54 14.5 725,571 196,629 27.0 22,754 1,737 24,491
福島県
(9市町)
10m超
5m超~10m以下 83 82 13 15.6 193,889 113,939 58.7 5,367 1,101 6,469
5m以下 12 12 9 75.0 1,684 1,472 87.4 1,067 202 1,269
95 94 22 23.1 195,574 115,411 59.0 6,434 1,303 7,738
東北3県
(36市町村)
1Om超 95 95 10 10.5 345,216 122,486 35.4 2,048 65 2,114
5m超~10m以下 286 283 24 8.3 770,655 247,252 32.0 10,129 1,957 12,086
5m以下 195 178 53 27.1 227,509 90,770 39.8 18,029 1,051 19,081
合計 576 556 87 15.1 1,343,381 460,509 34.2 30,208 3,074 33,282
注(1)
県、市町村が把握している事業分に限定しており、国の機関による事業(直轄事業)は計上していない。
注(2)
「完成施設数」及び「完成分事業費」は、当該施設等について復旧事業から復興事業までの一連の整備が完了したものを計上している。
注(3)
岩手県の各海岸には、平成28年8月の台風第10号により被災したものがあるが、27年度末現在で集計しているため、同台風による影響は反映されていない。
注(4)
T.P.(Tokyo Peil)は、東京湾平均海面であり、全国の標高の基準となる海水面の高さである。

(b) 防潮堤の整備に要する計画事業費及び期間

36市町村はいずれも津波により甚大な被害を被っているが、復旧後堤防高等の諸元は一様ではなく、また、被災地域の地形、環境等は被災前の状況から著しく変化しており、事業の進捗とともに計画や設計の変更を行う必要があったことなどから事業費や完成(予定)年度が見直されることが想定される。

そこで、防潮堤の計画施設数576海岸について、所在する市町村別の完成状況を把握したり、27年度末までに事業が実施されている556海岸について、計画事業費及び完成(予定)年度を26年度末現在と27年度末現在とで比較したりするなどして分析した。

市町村別の完成状況をみると、図表6-6のとおり、27年度末現在、36市町村のうち計画施設数の全てが完成した市町村は1村、計画施設数のうち一部が完成した市町村は17市町村であり、18市町村では完成した防潮堤はない。

事業が実施されている556海岸に係る27年度末現在の計画事業費は、気仙沼市に所在する83海岸分が2197億余円、石巻市に所在する66海岸分が1321億余円、大船渡市に所在する25海岸分が1007億余円等となっている。また、被害の程度が甚大であった岩手県の宮古市から宮城県の東松島市までの範囲にある11市町のうち8市町において、当該市町に所在する全海岸における計画事業費がそれぞれ500億円を超えている。

27年度末までに事業を実施している556海岸について、26年度末現在と27年度末現在の計画事業費を比較すると、増加したものが184海岸、減少したものが123海岸となっている。また、556海岸から27年度末現在までに完成した87海岸を除く469海岸の完成(予定)年度をみると、26年度末現在の見込みより延長されたものが299海岸と約6割を占め、このうち7海岸は3か年度以上延長されている。

図表6-6 防潮堤の市町村別完成状況(平成27年度末現在)及び計画事業費等の変化

(単位:海岸、%、百万円)
県名
(市町村数)
市町村名 計画施設数 平成27年度末までに復旧・復興事業が実施されている海岸数   復旧・復興が実施されている556海岸
計画事業費の変化 完成(予定)年度の変化
完成施設数 完成率 計画事業費が増加した海岸数 計画事業費が減少した海岸数 26年度末現在の計画事業費 27年度末現在の計画事業費 増減額 完成(予定)年度が延長された海岸数   完成(予定)年度が短縮された海岸数
うち3か年度以上延長したもの
A B B/A C D D-C  
岩手県
(12市町村)
洋野町 6 6 4 66.6 1 2,539 2,369 △170 1
久慈市 4 4 4 6,408 8,451 2,043 3
野田村 6 6 1 16.6 2 2 20,716 20,868 152 4 1
普代村 2 2 2 100.0 321 321
田野畑村 3 3 2 1 6,475 8,273 1,797 3
岩泉町 3 3 2 66.6 1 741 747 5 1
* 宮古市 16 16 8 6 60,526 67,667 7,141 12
山田町 8 8 3 4 46,666 45,960 △705 4
大槌町 3 3 3 15,075 18,093 3,018 1
* 釜石市 20 20 4 8 54,972 57,994 3,021 11
* 大船渡市 25 25 1 4.0 10 6 99,982 100,712 730 21
* 陸前高田市 15 15 1 6.6 9 2 80,259 90,775 10,515 9 1
111 111 11 9.9 46 30 394,685 422,235 27,550 70 2
宮城県
(15市町)
* 気仙沼市 84 83 11 13.0 20 29 215,562 219,791 4,229 52 3
* 南三陸町 55 55 10 18.1 20 3 82,682 88,243 5,560 33
* 石巻市 67 66 6 8.9 18 7 125,733 132,123 6,389 32 2
女川町 19 19 4 21.0 4 3 10,669 9,935 △734 4
* 東松島市 38 37 8 21.0 22 2 81,932 83,866 1,933 22
松島町 18 18 9 50.0 10 3 10,500 11,833 1,332 8
利府町 2 2 2 2,123 4,140 2,016 2
塩竈市 60 45 5 8.3 9 2 38,470 39,480 1,010 17 1
七ヶ浜町 9 9 1 14,305 14,310 5 3
多賀城市 2 2 1 11,338 12,477 1,139 1
仙台市 5 4 1 20.0 1 29,359 35,282 5,922 1
名取市 5 5 2 24,881 25,653 771 1
岩沼市 2 2 2 23,004 26,984 3,980
亘理町 1 1 1,700 1,700
山元町 3 3 1 14,870 16,690 1,819 3
370 351 54 14.5 113 49 687,136 722,512 35,376 179 5 1
福島県
(9市町)
新地町 5 5 2 40.0 2 2 8,874 8,807 △67 1 1
相馬市 13 13 3 23.0 1 9 35,153 34,792 △361 7
* 南相馬市 19 19 3 15.7 8 9 63,698 62,617 △1,080 14 1
浪江町 6 5 1 11,564 11,552 △11 2
双葉町 2 2 4,737 4,737
富岡町 4 4 3 8,932 8,854 △77 4
楢葉町 5 5 1 2 11,342 11,754 411 3
広野町 4 4 3 4,207 4,974 767 3
いわき市 37 37 14 37.8 10 18 47,536 47,324 △212 16 3
95 94 22 23.1 25 44 196,047 195,414 △632 50 5
東北3県(36市町村) 576 556 87 15.1 184 123 1,277,869 1,340,163 62,294 299 7 6
注(1)
市町村名欄の*印を付した市町村は、平成27年度末現在の計画事業費が500億円を超えているものである。
注(2)
県、市町村が把握している事業分に限定しており、国の機関による事業(直轄事業)は計上していない。
注(3)
「完成施設数」は、当該施設等について復旧事業から復興事業までの一連の整備が完了したものを計上している。
注(4)
岩手県の各海岸には、平成28年8月の台風第10号により被災したものがあるが、27年度末現在で集計しているため、同台風による影響は反映されていない。

27年度末現在の計画事業費が26年度末現在と比較して増加又は減少した307海岸のうち、増減額が1億円以上の138海岸(増加96海岸、減少42海岸)を増減理由別にみると、図表6-7のとおり、増加した海岸では「工法、構造等の変更」が53海岸、減少した海岸では「概算事業費等の見直し」が18海岸となっている。

図表6-7 計画事業費の増減理由別海岸数及び増減額(平成27年度末現在)

(単位:海岸、百万円)
計画事業費の増減理由 計画事業費が増減した海岸数 計画事業費の増減額
増加 減少 増加額 減少額 差引増減額
増減額1億円以上 96 42 80,668 △19,253 61,414
  工法、構造等の変更 53 18 48,617 △6,334 42,282
資材の確保 19 4 18,822 △2,087 16,735
他事業との調整 8 1 8,022 △157 7,864
概算事業費等の見直し 16 18 5,206 △10,569 △5,363
用地取得 1 △104 △104
増減額1億円未満 88 81 3,222 △2,343 879
合計 184 123 83,891 △21,596 62,294
(注)
複数の理由のうち主な理由により集計している。

東北3県は、防潮堤の完成時期を最大限早めるために、入札時に、詳細設計に伴う工事費の変動については設計変更により対応する条件を明示した上で標準断面図等により工事を発注している。そして、標準断面図等による工事の発注に当たり積算の開始時点で得られる情報を基にして想定し得る最善の設計を行い、事業費を概算で算出しているが、東北3県は、事業着手に際して詳細な地質調査等を行った結果、当初想定できなかった地質条件等が発見され、基礎杭の延長、打設工法の変更等により計画事業費が増減する場合が多くあるとしている。

556海岸の防潮堤の完成(予定)年度について、26年度末現在の見込みと27年度末現在の見込みとを比較すると、図表6-8のとおり、集中復興期間に完成するとしていた防潮堤は、206海岸から87海岸へと119海岸減少している。また、復興・創生期間では、30年度に完成する予定となっているものが、14海岸から125海岸へと111海岸増加している。

図表6-8 防潮堤の完成(予定)年度別海岸数(平成26年度末現在及び27年度末現在)

(単位:海岸)
県名 完成(予定)年度を見込んでいた時点 完成(予定)年度別海岸数
平成23年度~27年度
(集中復興期間)
28年度 29年度 30年度 31年度 32年度
岩手県 26年度末現在 45 49 14 3 111
27年度末現在 11 40 41 18 1 111
増減 △34 △9 27 15 1
宮城県 26年度末現在 121 81 139 7 3 351
27年度末現在 54 92 105 91 5 4 351
増減 △67 11 △34 84 2 4
福島県 26年度末現在 40 31 19 4 94
27年度末現在 22 29 26 16 1 94
増減 △18 △2 7 12 1
26年度末現在 206 161 172 14 3 556
27年度末現在 87 161 172 125 6 5 556
増減 △119 111 3 5

27年度末現在における完成(予定)年度が26年度末現在と比較して延長された299海岸を延長理由別にみると、図表6-9のとおり、「地域住民、関係機関との調整」が100海岸、「他事業との調整」が80海岸となっている。「地域住民、関係機関との調整」では、防潮堤の高さ、延長、構造等について地域との合意形成を図るため、また、「他事業との調整」では、防潮堤を整備する海岸に隣接する道路や漁港施設の復旧・復興事業の進捗と合わせるためなどにそれぞれ時間を要していることが、完成(予定)年度が延長される要因となっている。

図表6-9 完成(予定)年度の延長又は短縮の理由別海岸数(平成27年度末現在)

(単位:海岸)
完成(予定)年度が延長又は短縮された理由 完成(予定)年度が延長又は短縮された海岸数
延長   短縮
延長された年度
1か年度 2か年度 3か年度 4か年度
地域住民、関係機関との調整 100 81 17 2 1
他事業との調整 80 65 14 1
計画、設計の見直し 42 24 16 1 1
資材、人員等の確保困難 34 22 12
用地取得の遅れ 30 25 5
その他 13 7 4 2 5
299 224 68 6 1 6
注(1)
「その他」は、延長されたものについては、入札不調、風水害等によるものであり、短縮されたものについては、関係機関との調整が早期に完了したものなどである。
注(2)
複数の理由のうち主な理由により集計している。
(ウ) 津波防災まちづくりに係る復旧・復興事業の状況

a 市街地整備に係る2事業の概要

東北地方太平洋沖地震による津波の浸水区域面積は、561Km2(平成23年4月国土地理院公表)に及んでいる。復興基本方針では、津波防災まちづくりの推進に当たって、平地に都市機能が存在し、ほとんどが被災した地域、平地の市街地が被災し、高台の市街地は被災を逃れた地域等、地域の状況に応じて、被災都市の中枢機能の復興のための市街地の整備・集団移転等のハード・ソフトの施策を柔軟に組み合わせて実施することとしており、防潮堤の整備と並行して、浸水した市街地等の整備が行われている。

復興基本方針に基づく津波防災まちづくりの推進のため、国土交通省は、24年1月に「東日本大震災の被災地における市街地整備事業の運用について(ガイダンス)」(以下「整備ガイダンス」という。)を策定した。整備ガイダンスにおいて、土地区画整理事業又は津波復興拠点整備事業を津波等により被災した地域の復興において適用することができることとなっており、市街地整備に係る2事業の目的等の内容は、次のとおりとなっている。

① 都市再生区画整理事業(事業番号D-17)

本事業は、被災した市街地の復興を図るため、公共施設と宅地を計画的かつ一体的に整備することのできる事業で、東日本大震災からの復興に当たっては、津波被害にあった住民の安全・安心を確保するため、既存の土地区画整理事業を復興交付金事業の都市再生区画整理事業(緊急防災空地整備事業(注15)、都市再生事業計画案作成事業(注16)及び被災市街地復興土地区画整理事業(注17)。以下「都市再生区画整理事業」という。)として活用するものである。都市再生区画整理事業では、防災上安全な宅地を確保する観点から、原位置での復興を基本としているものの、必要に応じて、これらの地区等に隣接する丘陵地との一体的な整備や津波に対しての防災上必要な市街地のかさ上げ(盛土)が行われることがある。

(注15)
緊急防災空地整備事業  土地区画整理事業が予定される地区において、防災性向上及び土地区画整理事業の促進を図ることを目的に公共施設充当用地を取得し、緊急に防災空地を整備する事業
(注16)
都市再生事業計画案作成事業  土地区画整理事業を実施するための事業計画の案の作成に関する事業
(注17)
被災市街地復興土地区画整理事業  大規模な災害により被災した市街地の復興を促進するために行う土地区画整理事業

② 津波復興拠点整備事業(事業番号D-15)

本事業は、津波により被災した地域の復興を先導する拠点とするため、住宅、公益施設、業務施設等の機能を集約させた津波に対して安全な市街地を緊急に整備するため、津波防災地域づくり法に基づく「一団地の津波防災拠点市街地形成施設」として都市計画決定された都市施設を整備する事業である。

防災集団移転促進事業は、被災した地域において居住に適していないと認められる区域内にある住居を津波等による被災のおそれのない高台等に集団移転するものであるが、市街地整備に係る2事業は、東北地方太平洋沖地震による津波で浸水した地域においても整備が行われ、この場合には津波防災のためにかさ上げが行われることになる。このため、整備ガイダンスによれば、都市再生区画整理事業では、市街地のかさ上げにおける留意事項として、津波防災上必要最小限のものに限られること、市町村地域防災計画の中で、避難計画等とともに総合的に検討されることが望ましいことなどとされており、また、津波復興拠点整備事業では、津波復興拠点をかさ上げにより用地造成する場合は、計画されている海岸保全施設等を前提として東北地方太平洋沖地震による津波に対して浸水しないまでのかさ上げに係る費用を限度とすることなどとされている。

また、市町村の復興計画等では、防災及び減災に対応した居住地域と産業地域の再配置が掲げられており、そのイメージは、図表6-10のとおり、居住地域の前面に産業地域を配置し、当該地域における避難のために津波避難ビル等を備え、また、かさ上げなどにより土地を確保して海岸から可能な範囲で離れた場所に居住地域を配置し、津波発生時には速やかに避難できるよう避難所、避難路等を整備するものとなっている。

なお、津波防災まちづくりに関連する事業として、市街地整備に係る2事業のほかに、高台移転等に伴う道路整備を行う道路事業(事業番号D-2)、被災商店の再建や被災者の受皿となる公営住宅等の一体的整備を推進する市街地再開発事業(事業番号D-16)等が実施されている。

図表6-10 津波防災まちづくりのイメージ

図表6-10 津波防災まちづくりのイメージ 画像

b 津波防災まちづくりにおける市街地整備に係る2事業の状況

津波防災まちづくりに係る復旧・復興事業について、東北地方太平洋沖地震による津波で浸水した地域等においてかさ上げを実施している市街地整備に係る2事業を対象として、市町村別・土地利用別の整備状況を検査した。土地利用別の整備状況の検査においては、事業を実施している区域を、住宅が立地する地区(以下「居住系」という。)、商工業施設等が立地する地区(以下「産業系」という。)及び行政機関、消防等防災施設、公園等が立地する地区(以下「公共系」という。)に区分した。なお、市街地整備に係る2事業の計画に対する達成状況は、事業完了率と、整備が計画されている面積に対する整備済みの面積の割合(以下「整備率」という。)としている。

(a) 市街地整備に係る2事業の実施状況

都市再生区画整理事業は、図表6-11のとおり、沿岸31市町村のうち21市町村で217事業実施されており、廃止した7事業を除くと27年度末までの完了事業数が105事業、事業完了率は50.0%となっている。都市再生区画整理事業のうち緊急防災空地整備事業及び都市再生事業計画案作成事業はいずれも事業完了率が90%を超えているが、事業の中心である被災市街地復興土地区画整理事業(以下「復興土地区画整理事業」という。)の事業完了率は6.3%である。都市再生区画整理事業の計画事業費3498億余円のうち支出済事業費は1635億余円であり、事業費進捗率は46.7%となっている。また、津波復興拠点整備事業は、沿岸31市町村のうち17市町で43事業実施されており、廃止した2事業を除くと27年度末までの完了事業数が9事業、事業完了率は21.9%となっている。本事業の計画事業費1169億余円のうち支出済事業費は595億余円であり、事業費進捗率は50.9%となっている。

図表6-11 市街地整備に係る2事業の実施状況(平成27年度末現在)

(単位:市町村、件、%、百万円)
事業名
(復興交付金事業番号)
事業を実施している市町村数 計画事業数   事業完了率 計画事業費 支出済事業費 事業費進捗率
完了 継続又は未着手 廃止
A B   C B/(A-C) D E E/D
都市再生区画整理事業
(D-17)
21 217 105 105 7 50.0 349,879 163,516 46.7
  緊急防災空地整備事業 12 26 21 5 100.0 10,435 10,435 100.0
都市再生事業計画案作成事業 20 57 56 1 98.2 17,133 17,104 99.8
復興土地区画整理事業 20 64 4 59 1 6.3 289,652 122,586 42.3
効果促進事業 16 70 24 45 1 34.7 32,658 13,389 40.9
津波復興拠点整備事業
(D-15)
17 43 9 32 2 21.9 116,937 59,595 50.9
  基幹事業 17 31 5 24 2 17.2 113,832 58,174 51.1
効果促進事業 8 12 4 8 33.3 3,104 1,420 45.7
21 260 114 137 9 45.4 466,816 223,111 47.7
(注)
事業を実施している市町村数の計は純計である。

復興土地区画整理事業及び津波復興拠点整備事業による市街地の整備状況をみると、図表6-12のとおり、復興土地区画整理事業では計画面積1,532ha、実績面積319ha、整備率20.8%となっており、津波復興拠点整備事業では計画面積260ha、実績面積145ha、整備率55.7%となっている。

かさ上げの状況について、両事業とも全体の計画面積の約5割がかさ上げの対象となっており、かさ上げのために要する土量は、復興土地区画整理事業が2,476万m3、津波復興拠点整備事業が466万m3となっている。また、両事業のかさ上げに係る計画面積及び実績面積は、それぞれ761haのうち169ha、143haのうち90haであり、整備率はそれぞれ22.3%、62.9%となっている。

市町村別に全体の整備状況をみると、復興土地区画整理事業について、20市町村のうち整備が完了したものが1村、整備率が80%を超えているものが1町、整備率が20%以下のものが10市町となっている。かさ上げを計画しているのは20市町村のうち15市町であり、このうちかさ上げに係る整備率が20%以下のものが7市町となっている。かさ上げの面積が大きい市町の整備率は、陸前高田市(かさ上げの計画面積128ha)が2.9%、女川町(同128ha)が11.6%、釜石市(同107ha)が6.6%となっている。また、津波復興拠点整備事業について、事業を実施している17市町のうち16市町で整備を実施しており、このうち整備が完了したものが4市町、整備率が80%を超えているものが1市、整備率が20%以下のものが4市となっている。かさ上げを計画しているのは16市町のうち13市町であり、このうちかさ上げに係る整備率が20%以下のものが4市町となっている。

図表6-12 市町村別の市街地整備に係る2事業による市街地の整備状況(平成27年度末現在)

(単位:ha、千m3、百万円、%)
県名
(事業を実施している市町村数)
市町村名 全体の整備状況  
かさ上げの状況
面積 土量 かさ上げに要する事業費等
計画面積 実績面積 整備率 計画 実績 整備率 計画 実績 計画に対する実績の割合 計画事業費 支出済事業費 事業費進捗率
A B B/A C D D/C E F F/E G H H/G
復興土地区画整理事業
岩手県
(7市町村)
野田村 12 12 100.0
宮古市 42 28 66.2 26 19 72.0 308 214 69.7 1,676 474 28.3
山田町 51 49 95.0 51 49 95.0 479 296 61.8 6,948 3,590 51.6
大槌町 52 19 37.2 49 19 39.9 1,532 474 30.9 29,386 8,828 30.0
釜石市 107 7 6.6 107 7 6.6 1,527 1,157 75.7 7,232 2,934 40.5
大船渡市 27 7 29.0 11 2 24.7 162 47 29.4 623 229 36.8
陸前高田市 298 7 2.6 128 3 2.9 6,692 1,590 23.7 7,577 980 12.9
593 132 22.4 374 101 27.1 10,702 3,781 35.3 53,445 17,037 31.8
宮城県
(11市町)
気仙沼市 75 9 13.1 74 9 13.3 2,402 1,292 53.8 28,822 14,065 48.8
南三陸町 60 4 8.3 60 4 8.3 3,540 2,436 68.8 7,686 2,045 26.6
石巻市 227 82 36.4
女川町 216 28 13.3 128 15 11.6 4,850 3,270 67.4 12,268 2,702 22.0
東松島市 73 21 30.0 61 21 35.6 967 242 25.0 3,708 1,532 41.3
塩竈市 5 2 37.1 5 2 37.1 89 34 38.5 1,631 477 29.2
七ヶ浜町 26 3 14.5
多賀城市 7 3 42.6 7 3 42.6 37 7 19.0 250 28 11.5
仙台市 69
名取市 56 4 8.1 33 2 7.2 1,700 925 54.4 17,017 6,976 40.9
岩沼市 5 0 15.2
824 163 19.7 371 59 16.0 13,587 8,207 60.4 71,384 27,829 38.9
福島県
(2市町)
新地町 23 8 34.1 12 8 65.2 443 313 70.7 2,917 2,064 70.7
いわき市 91 14 16.1 2 0 19.7 31 10 32.6 68 22 32.6
114 22 19.8 15 8 57.3 474 323 68.2 2,985 2,086 69.8
合計(20市町村) 1,532 319 20.8 761 169 22.3 24,764 12,313 49.7 127,815 46,953 36.7
津波復興拠点整備事業
岩手県
(6市町)
宮古市 2 1 42.5 1 0 13.3 7 2 25.5 12 1 8.7
山田町 7 7 100.0 3 3 100.0 67 60 88.8 2,554 2,540 99.4
大槌町 23 6 28.6 18 3 19.8 215 23 10.6 1,519 1,359 89.4
釜石市 32 6 19.9 22 6 28.7 631 289 45.8 8,770 6,139 70.0
大船渡市 2 0 36.1 2 0 36.1 46 46 100.0 259 170 65.6
陸前高田市 38 38 100.0 24 24 100.0 1,724 1,724 100.0 8,877 8,877 100.0
106 60 56.9 72 38 53.1 2,691 2,144 79.6 21,993 19,088 86.7
宮城県
(8市町)
気仙沼市 25 15 61.1 13 9 69.7 634 463 73.0 4,258 1,977 46.4
南三陸町 42 16 38.1
石巻市 1
女川町 2 2 100.0 1 1 100.0 99 99 100.0 107 107 100.0
東松島市 9 7 113 108 95.6 2,216 1,529 68.9
塩竈市 3 0 3 0
多賀城市 15 10 67.0 14 10 71.4 168 130 77.9 4,354 3,673 84.3
山元町 25 25 100.0 24 24 100.0 515 515 100.0 2,526 2,526 100.0
124 69 55.9 62 46 74.2 1,534 1,318 85.8 13,462 9,814 72.9
福島県(2市町) 新地町 18 5 30.8 8 5 64.8 443 273 61.6 2,922 1,802 61.6
いわき市 10 8 82.0
29 14 50.0 8 5 64.8 443 273 61.6 2,922 1,802 61.6
合計(16市町) 260 145 55.7 143 90 62.9 4,669 3,735 80.0 38,378 30,705 80.0
注(1)
津波復興拠点整備事業を実施した市町村については、調査をもって事業が完了した七ヶ浜町を除いている。
注(2)
復興土地区画整理事業の実績面積が計上されていない仙台市並びに津波復興拠点整備事業の実績面積が計上されていない3市のうち石巻市及び東松島市は、実施設計、道路等の一部工事に着手している。

(b) 土地利用別の整備状況

市街地整備に係る2事業による土地利用別の市街地の整備状況をみると、図表6-13のとおり、復興土地区画整理事業の計画面積は、20市町村計で居住系が437ha、産業系が432ha、公共系が411haであり、それぞれの整備率は34.1%、19.8%、14.1%となっている。また、津波復興拠点整備事業の計画面積は、16市町計で居住系が31ha、産業系が77ha、公共系が133haであり、それぞれの整備率は62.8%、70.5%、50.2%となっている。道路等を先行して整備していることなどから公共系の整備が居住系の整備より進んでいる市町もみられるが、全体としては、両事業とも被災者の住まいの確保や商工業等の活性化に係る部分を最優先に進めてきたことなどから、居住系及び産業系の整備が公共系に比べて進んでいる。

市町村別に土地利用別の市街地の整備状況をみると、復興土地区画整理事業について、居住系では20市町村のうち17市町村で整備を計画しており、このうち整備を完了したものが3市町村、整備率が20%以下のものが5市となっている。産業系では20市町村のうち19市町村が整備を計画しており、このうち整備を完了したものが2市村、整備率が20%以下のものが12市町となっている。公共系では20市町村のうち19市町村が整備を計画しており、このうち整備を完了したものが1村、整備率が20%以下のものが11市町となっている。また、津波復興拠点整備事業について、居住系では16市町のうち5市町で整備を計画しており、このうち整備を完了したものが3市町、整備率が20%以下のものが1市となっている。産業系では16市町のうち12市町が整備を計画しており、このうち整備を完了したものが6市町、整備率が20%以下のものが2市となっている。公共系では16市町のうち15市町が整備を計画しており、このうち整備を完了したものが5市町、整備率が20%以下のものが5市町となっている。

図表6-13 市町村別・土地利用別の市街地整備に係る2事業による市街地の整備状況(平成27年度末現在)

(単位:ha、%)
県名
(事業を実施している市町村数)
市町村名 全体の整備状況(再掲)  
居住系 産業系 公共系
計画面積 実績面積 整備率 計画面積 実績面積 整備率 計画面積 実績面積 整備率 計画面積 実績面積 整備率
A B B/A C D D/C E F F/E G H H/G
復興土地区画整理事業
岩手県
(7市町村)
野田村 12 12 100.0 3 3 100.0 5 5 100.0 3 3 100.0
宮古市 42 28 66.2 8 6 76.8 15 10 65.0 18 11 62.4
山田町 51 49 95.0 16 16 100.0 13 12 91.0 2 1 94.0
大槌町 52 19 37.2 17 3 20.6 14 8 58.8 20 7 35.6
釜石市 107 7 6.6 48 0 0.7 20 1 9.7 38 4 12.4
大船渡市 27 7 29.0 6 0 13.2 12 5 39.8 7 1 25.1
陸前高田市 298 7 2.6 75 6 8.6 24 82
593 132 22.4 176 37 21.4 107 44 41.0 174 31 17.9
宮城県
(11市町)
気仙沼市 75 9 13.1 26 6 23.7 25 3 12.6 10
南三陸町 60 4 8.3 31 2 8.5 5
石巻市 227 82 36.4 98 50 50.8 94 16 17.4 34 16 47.3
女川町 216 28 13.3 31 18 59.0 37 7 19.6 76 0 0.6
東松島市 73 21 30.0 21 21 100.0 39 12 0 5.1
塩竈市 5 2 37.1 1 0 42.9 2 1 52.1 0 0 7.8
七ヶ浜町 26 3 14.5 12 2 21.1 4 0 12.5 2 0 12.2
多賀城市 7 3 42.6 2 1 60.2 1 0 10.6 3 1 43.3
仙台市 69 69
名取市 56 4 8.1 24 3 16.0 3 28 0 2.4
岩沼市 5 0 15.2 4 0 15.2 1 0 15.2
824 163 19.7 218 105 48.0 315 32 10.3 175 20 11.4
福島県
(2市町)
新地町 23 8 34.1 6 4 71.6 17 3 21.2
いわき市 91 14 16.1 37 2 6.0 9 9 100.0 44 3 7.2
114 22 19.8 43 6 15.3 9 9 100.0 62 6 11.1
合計(20市町村) 1,532 319 20.8 437 149 34.1 432 86 19.8 411 58 14.1
津波復興拠点整備事業
岩手県
(6市町)
宮古市 2 1 42.5 2 1 42.5
山田町 7 7 100.0 0 0 100.0 1 1 100.0 3 3 100.0
大槌町 23 6 28.6 12 4 38.5 10 1 16.8
釜石市 32 6 19.9 5 0 6.0 3 1 40.2 24 4 19.9
大船渡市 2 0 36.1 1 0 17.0 0 0 100.0
陸前高田市 38 38 100.0 1 1 100.0 9 9 100.0 27 27 100.0
106 60 56.9 7 2 35.6 28 17 60.5 69 39 56.9
宮城県
(8市町)
気仙沼市 25 15 61.1 17 12 69.7 8 3 43.2
南三陸町 42 16 38.1 16 9 56.9 18 4 23.7
石巻市 1 0.0 1
女川町 2 2 100.0 1 1 100.0 0 0 100.0
東松島市 9 0.0 9
塩竈市 3 0.0 3
多賀城市 15 10 67.0 10 10 100.0 5
山元町 25 25 100.0 7 7 100.0 3 3 100.0 13 13 100.0
124 69 55.9 23 17 71.2 35 27 76.4 57 22 39.7
福島県
(2市町)
新地町 18 5 30.8 8 5 63.7 0 0 89.5
いわき市 10 8 82.0 4 4 100.0 6 4 68.9
29 14 50.0 12 9 76.7 6 4 69.9
合計(16市町) 260 145 55.7 31 19 62.8 77 54 70.5 133 67 50.2
注(1)
津波復興拠点整備事業を実施した市町村については、調査をもって事業が完了した七ヶ浜町を除いている。
注(2)
復興土地区画整理事業の実績面積が計上されていない仙台市並びに津波復興拠点整備事業の実績面積が計上されていない3市のうち石巻市及び東松島市は、実施設計、道路等の一部工事に着手している。
(エ) 津波防災に関するソフト施策に係る復旧・復興事業の状況

a ソフト施策の概要

津波防災基本指針では、津波防災地域づくりを推進するに当たり、国が、広域的な見地からの基礎調査の結果や津波を発生させる津波の断層モデルを始めとする情報提供、技術的助言等を都道府県に行い、都道府県知事は、これらの情報提供等を踏まえて津波防災地域づくり法に基づく津波により想定される浸水の区域及び水深(以下「津波浸水想定」という。)を設定することとなっている。津波浸水想定の設定は、日本海溝・千島海溝や南海トラフを震源とする地震等、海溝型巨大地震により発生する最大クラスの津波を想定して行うが、中央防災会議等により津波の断層モデルが公表されていない海域については、過去に発生した津波の痕跡調査等から最大クラスの津波高を推定等して行うことなどとしている。

そして、津波防災地域づくり法によれば、都道府県知事は、津波浸水想定を踏まえて、津波が発生した場合には住民等の生命又は身体に危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域で、当該区域における津波による人的災害を防止するために警戒避難体制を特に整備すべき土地の区域を津波災害警戒区域として指定することができることとされている。また、津波災害警戒区域をその区域に含む市町村の長は、人的災害を生ずるおそれがある津波に関する情報の伝達方法、避難施設その他の避難場所及び避難路その他の避難経路に関する事項等、津波災害警戒区域における円滑な警戒避難を確保する上で必要な事項を住民等に周知させるために、津波ハザードマップの配布等の措置を講じなければならないこととされている。ただし、東北3県では、27年度末現在、津波の痕跡調査を実施中であること、海溝型巨大地震による最大クラスの津波についての国の検討結果を注視していることなどから、津波浸水想定の設定及び津波災害警戒区域の指定のいずれも行われていない。

イ(イ)b(a)のとおり、防潮堤の完成率は15.1%となっており、多くの市町村において頻度の高い津波に対する防御が十分ではない。また、防潮堤の整備に伴い、津波災害から防御される範囲が拡大することになるものの、最大クラスの津波に対しては、いずれの市町村においても浸水が生ずることが想定され、津波災害時において当該市町村の居住者、事業所の従業者等は速やかな避難が必要となる。

住民等の避難行動について、中央防災会議に設置された津波避難対策検討ワーキンググループの「津波避難対策検討ワーキンググループ報告」(平成24年7月)において、津波による人的被害を軽減するためには、住民等一人ひとりの迅速かつ主体的な避難行動が基本となること、避難の実行性を高めるために、避難しやすい環境をまちづくりと一体となって整備し、最大クラスの津波への対応を目指す必要があること、津波による浸水が想定される市町村においては、地域の実情を考慮した具体的な避難計画を速やかに策定する必要があることなどが指摘されている。また、津波が発生してから終息するまでのおおむね数時間から十数時間までの間、住民等の生命及び身体の安全を確保するための避難対策について定めた計画(以下「津波避難計画」という。)を市町村が策定するために、国は「津波避難対策推進マニュアル検討会報告書」(平成14年消防庁。25年改訂)において「市町村における津波避難計画策定指針」(以下「策定指針」という。)を示している。

策定指針では、津波避難計画において定める必要がある事項として、図表6-14のとおり、津波浸水想定に定める浸水の区域(以下「津波浸水想定区域」という。)等を示した図(以下「津波浸水想定区域図」という。)、避難勧告や避難指示を発令する際に避難の対象となる地域で、津波浸水想定区域図に基づき市町村が指定する地域(以下「避難対象地域」という。)、津波の到達時間までに避難対象地域の外に避難することが困難な地域で津波シミュレーションや避難時の歩行速度等により設定される地域(以下「避難困難地域」という。)、津波の危険から緊急に避難するための高台や施設等(以下「緊急避難場所」という。)、津波情報の収集・伝達等の11事項が示されている。

図表6-14 津波避難計画において定める必要がある事項

事項 内容
1 津波浸水想定区域図 ① 最大クラスの津波の設定
② 計算条件の設定(断層モデルの設定等)
③ 津波シミュレーションの実施
④ 津波浸水想定の設定
⑤ 津波到達予想時間の想定
2 避難対象地域 津波浸水想定区域図に基づき避難対象地域を指定
3 避難困難地域 予想される津波の到達時間までに避難が困難な地域の抽出
4 津波情報の収集・伝達 大津波警報・津波警報、津波注意報、津波情報の収集伝達手段・体制等
5 初動体制 職員の参集基準、参集連絡手段等の明確化
6 避難誘導等に従事する者の安全確保 退避ルールの確立、情報伝達手段の整備
7 緊急避難場所、避難路等 緊急避難場所、避難路・避難経路等の指定・設定
8 避難指示、勧告の発令 避難指示、勧告の発令の基準、手順、手段等
9 津波対策の教育・啓発 津波避難計画、津波ハザードマップ等の周知、津波の知識の教育・啓発の方法、手段等
10 避難訓練 避難訓練の実施体制、内容等
11 その他の留意点 観光客、海水浴客、釣り客等の避難対策、災害時要援護者の避難対策
(注)
津波避難対策推進マニュアル検討会報告書を基に作成した。

また、前記の検討会報告書において、津波避難計画の概念図が示されている(図表6-15参照)。この概念図を基に一般的な津波避難計画における地震発生時以降の避難方法を示すと、次のとおりである。

① 地震発生時、強い揺れや長い揺れを感じた場合は直ちに避難を開始する。津波浸水想定区域内の避難者は、あらかじめ津波ハザードマップや防災訓練で把握した避難目標地点を目指して指定された避難路を使用して緊急避難場所に避難する。なお、避難目標地点は、津波浸水想定区域外に設定し、避難路は、海岸や河口を避けて津波の進行方向と同方向に向かっていく道路に設定する。

② 地震発生時から数分以内に大津波警報等により津波の到達予想時刻や津波高が発表される。避難困難地域の避難者及び到達予想時刻を基に避難目標地点にたどり着けないと判断した避難者は、津波避難ビル等に緊急避難する。

図表6-15 津波避難計画の概念図

図表6-15 津波避難計画の概念図 画像

b ソフト施策に係る復旧・復興事業の計画及び実施状況

東北3県では、前記のとおり、津波災害警戒区域の指定が行われていないことから、東北3県管内の沿岸市町村には、津波防災地域づくり法に基づく津波ハザードマップの住民への配布等の義務は課されていない。しかし、海岸の背後地に整備されていく居住地や商工業用地の地区等を防御するための防潮堤の完成には時間を要しており、また、防潮堤を越える最大クラスの津波から人命を守るためには、策定指針等に示されたソフト施策を適切に実施することが必要である。

このため、沿岸31市町村は、集中復興期間において、津波避難計画の策定、避難所の指定、津波情報の収集のための機器等の整備等のソフト施策を事業費計652億余円で実施しており、このうち478億余円が復旧・復興予算により措置されている。沿岸31市町村における津波避難計画の策定等の状況や、策定指針に示された11事項のうち、避難対象地域の指定及び避難困難地域の設定、津波情報等の収集・伝達手段等の整備、避難路等の整備、避難所の指定等の状況は次のとおりである。

(a) 津波避難計画の策定等の状況

沿岸31市町村の津波避難計画の策定状況をみると、図表6-16のとおり、27年度末現在、津波避難計画を策定しているのは21市町村で、このうち、東日本大震災前に津波避難計画を策定していたのは5市町となっており、16市町村は東日本大震災後に策定している。なお、東北3県では、前記のとおり、津波浸水想定の設定は行われていないため、21市町村は、津波避難計画において定める必要のある津波浸水想定区域図を、東北地方太平洋沖地震による津波で浸水した地域を参考にするなどして作成している。

一方、津波避難計画を策定していない10市町村(注18)について、その理由をみると、復興事業を実施中のためとしているものが4市町、津波浸水想定の設定が行われていないためとしているものが3市町、復興土地区画整理事業が完了せず住民が少ないなど避難対象等が少ないためとしているものが3町村となっている。なお、これら10市町村は、その代替措置として津波ハザードマップによる情報提供や津波避難訓練等による協力体制を一層推進するなどの対策を講じている。

(注18)
津波避難計画を策定していない10市町村  岩手県の久慈市、下閉伊郡山田、岩泉両町、九戸郡野田村、洋野町、宮城県の塩竈市、牡鹿郡女川町、本吉郡南三陸町、福島県のいわき、相馬両市

図表6-16 津波避難計画の策定等の状況(平成27年度末現在)

(単位:市町村)
県名(対象市町村数) 策定している市町村数   策定していない市町村数 津波避難計画を策定していない理由 策定していないことに対する代替措置
東日本大震災前に策定していた市町村数
復興事業を実施中のため 津波浸水想定の設定が行われていないため 避難対象等が少ないため 津波ハザードマップ等による情報提供 津波避難訓練等による協力体制の構築
岩手県(12市町村) 7 3 5 2 1 2 2 3
宮城県(15市町) 12 3 1 1 1 2 1
福島県(4市町) 2 2 2 1 1 1 1
計(31市町村) 21 5 10 4 3 3 5 5

(b) 避難対象地域の指定及び避難困難地域の設定の状況

避難対象地域の指定及び避難困難地域の設定の状況をみると、図表6-17のとおり、27年度末現在、避難対象地域について、沿岸31市町村のうち21市町村が指定しており、その面積及び人口は、約373km2、20万7911人となっている。また、避難困難地域について、沿岸31市町村のうち11市町村が設定しており、その面積及び人口は約90km2、3万9101人となっている。なお、東北3県では、前記のとおり、津波浸水想定の設定が行われていないため、これらの市町村は、東北地方太平洋沖地震による津波で浸水した地域等を基に避難対象地域の指定等を行っている。

避難対象地域を指定していない10市町及び避難困難地域を設定していない20市町村について、指定等を行っていない理由をみると、前提条件である津波浸水想定や津波避難計画が定められていないなどのためとしているものが避難対象地域の指定では7市町、避難困難地域の設定では13市町と多く、緊急避難場所への距離や、道路条件、避難手段等を検討した結果、津波到達時間までに住民等が避難できるなどのためとしているものが、避難対象地域の指定では2市町、避難困難地域の設定では6市町村となっている。

図表6-17 避難対象地域の指定及び避難困難地域の設定の状況(平成27年度末現在)

(単位:市町村、km2、人)
県名
(対象市町村数)
避難対象地域 避難困難地域 避難対象地域の指定又は避難困難地域の設定を行っていない理由
避難対象地域 避難困難地域
指定している市町村数 面積 人口 設定している市町村数 面積 人口 津波浸水想定、津波避難計画が定められていないため 津波到達時間までに避難できるなどのため 復興事業を実施中のため 津波避難計画が策定されていないなどのため 津波到達時間までに避難できるなどのため 復興事業を実施中のため
岩手県(12市町村) 10 66.9 41,278 6 7.7 3,939 2 5 1
宮城県(15市町) 11 306.1 166,633 5 81.8 35,162 3 1 6 3 1
福島県(4市町) 2 2 2 2
計(31市町村) 21 373.1 207,911 11 89.6 39,101 7 2 1 13 6 1

(c) 津波情報等の収集・伝達手段の確保に係る機器等の整備状況

市町村は、災害対策基本法の規定に基づき、災害に関する予報若しくは警報を受けたとき、又は知ったときは、市町村地域防災計画の定めるところにより当該予報、警報等に係る事項を住民等に対して伝達しなければならないこととなっている。

また、策定指針において、津波情報等の収集・伝達手段の確保について、気象庁が発表する大津波警報・津波警報、津波注意報の早期収集、津波実況等の情報収集を挙げている。そして、津波実況等の情報収集は、救助活動等の災害応急対策の実施又は待避の判断の基礎となるほか、住民に対する適切な避難誘導に資することが期待されるとし、津波実況の把握方法として、気象庁が発表する津波観測情報等による津波観測結果等の収集、地方公共団体等が整備する監視用カメラ(以下「津波監視カメラ」という。)や津波観測機器等により行うことが基本となるとしている。

津波監視カメラの整備状況をみると、図表6-18のとおり、沿岸31市町村のうち整備が完了したものが14市町、整備中のものが1村、整備していないものが16市町村となっている。

津波監視カメラを整備していない16市町村のうち、水門、防災行政無線等に設置されたカメラを津波の現況把握の際に使用するなど代替する手段を有しているものが9市町村、沿岸部の復旧を優先していて整備の必要性については検討中としているものが7市町村となっている。

図表6-18 津波監視カメラの整備状況(平成27年度末現在)

(単位:市町村、百万円)
県名
(対象市町村数)
整備が完了した 整備中 整備していない   復旧・復興事業に係る事業費  
津波監視カメラに代替する手段 整備を検討中 うち国費
他システム等のカメラを活用 気象庁の警報等を活用
岩手県(12市町村) 5 1 6 5 1 2,664 1,709
宮城県(15市町) 7 8 2 2 4 1,033 852
福島県(4市町) 2 2 2 983 740
計(31市町村) 14 1 16 7 2 7 4,681 3,302

策定指針によれば、住民への確実かつ迅速な情報伝達を確保するために、各市町村において、地域の実情に応じて各情報伝達手段の特徴を踏まえて、複数の手段を有機的に組み合わせ、災害に強い総合的な情報伝達システムを構築することとされている。そして、情報伝達手段の具体的な整備内容として、システムの耐災害性(非常電源、耐震性、耐浸水性等)の強化、Jアラート(注19)による情報伝達手段の自動起動対象の拡大、緊急速報メールの一括送信、防災行政無線の整備等が記載されている。

情報伝達手段の確保に係る通信機器の整備等の実施状況をみると、図表6-19のとおり、沿岸31市町村のうち整備等が実施済みとなっている市町村数は、システムの耐災害性の強化が27市町村、Jアラートによる自動起動対象の拡大が28市町村、緊急速報メールの一括送信が29市町村、防災行政無線の整備のうち同報系システム(注20)が全ての市町村、移動系システム(注21)が24市町村、難聴区域の解消が21市町村となっている。

このように、情報伝達手段の確保は、多くの市町村で実施又は整備されている。システムの耐災害性の強化を実施していない4市町は、他の防災用の通信機器等の整備に合わせて復興・創生期間に実施するとしており、移動系システムの防災行政無線を整備していない7市町は、他の移動系通信を活用したり、今後整備したりするとしている。

(注19)
Jアラート  全国瞬時警報システム。弾道ミサイル情報、大津波警報、緊急地震速報等の緊急情報を人工衛星を用いて国(内閣官房又は気象庁から消防庁を経由)から送信し、市町村の防災行政無線や携帯メール、コミュニティFM等を自動起動させるもので、国から住民まで緊急情報を瞬時に伝達するシステム
(注20)
同報系システム  屋外拡声器や戸別受信機を介して、市町村等から住民等に対して直接・同時に防災情報や行政情報を伝えるシステム
(注21)
移動系システム  車載型や携帯型の移動局と市町村、消防、警察等の関係機関が相互に通信を行うシステム

図表6-19 情報伝達手段の確保に係る通信機器の整備等の状況(平成27年度末現在)

(単位:市町村、百万円)
県名
(対象市町村数)
システムの耐災害性の強化 Jアラートによる自動起動対象の拡大 緊急速報メールの一括送信 防災行政無線の整備 難聴区域の解消 復旧・復興事業に係る事業費  
同報系システム 移動系システム
実施済 未実施 実施済 未実施 実施済 未実施 整備済 未整備 整備済 未整備 実施済 未実施   うち国費
対象区域がない その他
岩手県(12市町村) 11 1 11 1 11 1 12 9 3 9 3 2 1 3,885 2,358
宮城県(15市町) 13 2 14 1 15 15 13 2 11 4 1 3 7,718 4,415
福島県(4市町) 3 1 3 1 3 1 4 2 2 1 3 2 1 1,081 714
計(31市町村) 27 4 28 3 29 2 31 24 7 21 10 5 5 12,686 7,488

(d) 避難路の整備状況及び誘導標識の設置状況

津波発生時において、気象庁から発表された警報や市町村からの避難に関する情報等を基に、住民等は避難路を用いて避難場所へと避難を開始する。策定指針では、避難路について、安全性や機能性が確保されている道路を指定するよう努めることとなっている。また、避難時に、避難場所の位置が分かる地域の住民のほか津波発生時にその場に居合わせた観光客等にも分かるように誘導標識を設置することも必要であるとしている。

避難路の指定状況をみると、図表6-20のとおり、27年度末現在、沿岸31市町村のうち16市町村が194路線を指定しており、東日本大震災前の指定数10路線から大幅に増加している。復旧・復興事業による避難路の整備は、27年度末までに11市町村の44路線が完了しており、復興・創生期間において13市町村が101路線を整備するとしている。

図表6-20 避難路の指定及び整備の状況(平成27年度末現在)

(単位:市町村、路線、百万円)
県名
(対象市町村数)
平成27年度末現在で避難路を指定している市町村数 東日本大震災前の指定数 27年度末現在の指定数 復旧・復興事業による避難路の整備状況
避難路を整備する市町村数 27年度末まで 28年度以降 復旧・復興事業に係る事業費  
整備した市町村数 整備済みの路線数 整備する市町村数 整備予定の路線数 うち国費
岩手県(12市町村) 5 36 6 4 8 2 8 4,732 3,616
宮城県(15市町) 8 104 10 5 16 9 64 18,009 14,294
福島県(4市町) 3 10 54 2 2 20 2 29 7,761 6,006
計(31市町村) 16 10 194 18 11 44 13 101 30,503 23,917

誘導標識の設置状況をみると、図表6-21のとおり、27年度末現在、沿岸31市町村のうち22市町村が1,321か所に設置しており、東日本大震災前の設置数549か所から大幅に増加している。復旧・復興事業による誘導標識の設置は、27年度末までに17市町村の991か所が完了しており、復興・創生期間において4市が1,808か所を設置するとしている。

なお、避難路の整備に係る事業を実施していない13市町村及び誘導標識の整備に係る事業を実施していない11市町村は、いずれも市街地整備に係る2事業等の復旧・復興事業の進捗等を考慮して、検討していくとしている。

図表6-21 誘導標識の設置及び整備の状況(平成27年度末現在)

(単位:市町村、箇所、百万円)
県名
(対象市町村数)
平成27年度末現在誘導標識を設置している市町村数 東日本大震災前の設置数 27年度末現在の設置数 復旧・復興事業による誘導標識の整備状況
誘導標識を整備する市町村数 27年度末まで 28年度以降 復旧・復興事業に係る事業費  
整備した市町村数 整備済みの箇所数 整備する市町村数 整備予定の箇所数 うち国費
岩手県(12市町村) 10 248 716 10 9 521 1 1,317 153 116
宮城県(15市町) 11 289 576 8 8 470 1 59 37 32
福島県(4市町) 1 12 29 2 2 432 13
計(31市町村) 22 549 1,321 20 17 991 4 1,808 205 149

(e) 避難所、津波避難ビル等の指定、安全性等の状況

25年6月に改正された災害対策基本法において、切迫した災害の危険から逃れるための緊急避難場所と、一定期間滞在して避難者の生活環境を確保するための避難所とが明確に区別された。そして、緊急避難場所について、津波から安全な区域内にあること、避難所について、災害による影響が比較的少ない場所にあるものであることなどの基準が定められた。また、地震の揺れに伴う建物の倒壊は、死者発生や火災の発生等の被害拡大の要因になるとともに、応急対策活動の阻害要因にもなることから、避難施設の耐震性を把握しておくことも必要となる。

市町村は、市町村地域防災計画において、避難所、緊急避難場所、津波避難ビル等の指定を行っている。また、避難所や津波避難ビル等の一部は、復興交付金事業の都市防災推進事業(都市防災総合推進事業。事業番号D-20)、特別交付税により設置造成等された復興基金の活用等により整備されている。

沿岸31市町村における避難施設の指定の状況をみると、全ての市町村が避難所、緊急避難場所等の避難施設を指定しており、図表6-22のとおり、27年度末現在の指定数は2,313施設となっていて、東日本大震災前の2,266施設から47施設増加している。また、復旧・復興事業による避難施設の整備は、27年度末までに15市町村の118施設が完了しており、復興・創生期間において5市町が26施設を整備するとしている。

図表6-22 避難施設の指定及び整備の状況(平成27年度末現在)

(単位:施設、市町村、百万円)
県名
(対象市町村数)
東日本大震災前の指定数 平成27年度末現在の指定数 指定数が増加した市町村数 復旧・復興事業による避難施設の整備状況
27年度末まで 28年度以降  復旧・復興事業に係る事業費  
整備した市町村数 整備済みの施設数 整備する市町村数 整備予定の施設数 うち国費
岩手県(12市町村) 744 893 8 4 13 2 2 3,101 1,849
宮城県(15市町) 1,138 980 10 10 104 3 24 12,542 10,016
福島県(4市町) 384 440 4 1 1 1,077 829
計(31市町村) 2,266 2,313 22 15 118 5 26 16,720 12,695
(注)
指定数は、津波災害に対応したものを計上している。また、既存の施設を指定したものを含んでいる。

沿岸31市町村における避難施設について避難者の収容能力、施設の安全性等をみると、図表6-23のとおり、27年度末現在、収容可能面積及び収容可能人数は、緊急避難場所(指定数1,160施設)が約252万m2に約101万人、津波避難ビル(同94施設)が約5万m2に約5万人、避難所(同1,059施設)が約145万m2に約53万人となっていて、避難対象地域の人口約21万人及び避難困難地域の人口約4万人を十分に収容できる規模となっている。

しかし、東北地方太平洋沖地震による津波で浸水した地域等に所在する避難施設が緊急避難場所で49施設、避難所で56施設、耐震性の有無を把握していない避難施設が津波避難ビルで4施設、避難所で168施設となっている。また、住民等が避難施設に移動するための誘導標識等が設置されていないものが緊急避難場所で684施設、津波避難ビルで11施設、避難所で630施設となっている(市町村別の避難施設の指定数、安全性等の状況については別図表12参照)。

市町村は、浸水した地域等に所在する避難施設について、地震や津波等の状況に応じて活用したり、避難所の指定を見直したりするなどとしている。また、市町村は、いずれも耐震性の有無の把握及び誘導標識等の設置の必要性を認識しており、耐震性の有無について、施設管理者に対して耐震診断の実施状況の確認や耐震診断の実施に関する働きかけなどを行い、誘導標識等の設置について、避難路の整備状況や地域住民の意見を参考にして、今後、設置を進めるなどとしている。

避難所等の装備について、防災基本計画の津波災害対策編では、地方公共団体は、避難所等において、非常用電源、衛星携帯電話等の通信機器等の施設・設備の整備に努めるとともに、被災者による災害情報の入手に資するラジオ等の機器の整備を図ること、指定された避難場所又はその近傍で備蓄施設を確保し、食糧、飲料水、毛布等の避難生活に必要な物資等の備蓄に努めることなどとされている。

避難所等の装備の状況をみると、非常用電源が備えられていない避難施設が津波避難ビルで25施設、避難所で497施設、ラジオ等の情報機器がない避難施設が津波避難ビルで62施設、避難所で369施設、備蓄倉庫がない施設が津波避難ビルで56施設、避難所で485施設となっている。なお、備蓄倉庫がない施設については、津波災害時には他の地区等にある拠点施設から物資を移動して持ち込むなどの対応を図るとしている。

このように、指定された避難施設の収容可能面積及び収容可能人数は、指定された避難対象地域等の人口に対して、十分な収容能力が備えられているものの、地震時の安全性を把握していないものや避難生活に関する備蓄物資が不足しているものが見受けられる状況となっている。

図表6-23 避難施設の収容能力、安全性等の状況(平成27年度末現在)

(単位:施設、m2、人)
避難施設の区分 県名
(指定市町村数)
指定数
注(1)
収容可能面積 収容可能人数 避難所等の安全性等 避難所等の装備
浸水地域内に所在する
注(2)
耐震性の状況 誘導標識等がない 非常用電源がない ラジオ等情報機器がない 備蓄倉庫の設置
耐震性がない 把握していない 設置されていない 把握していない
避難対象地域から一時的に避難 緊急避難場所
注(3)
岩手県(12市町) 577 587,078 422,826 3 326
宮城県(12市町) 467 780,281 365,310 46 345
福島県(3市町) 116 1,152,188 220,280 13
計(27市町) 1,160 2,519,548 1,008,416 49 684
避難困難地域において避難 津波避難ビル
注(4)
岩手県(1町) 1 382 187
宮城県(5市町) 78 31,808 46,416 2 4 3 11 48 42
福島県(1市) 15 17,733 6,080 8 14 14 14
計(7市町) 94 49,923 52,683 2 4 11 25 62 56
避難して滞在する 避難所 岩手県(12市町村) 315 188,367 68,902 9 28 104 248 78 102 168 28
宮城県(15市町) 435 938,996 394,810 47 28 64 293 181 44 161 29
福島県(4市町) 309 318,813 63,751 2 89 238 223 156 57
計(31市町村) 1,059 1,446,177 527,463 56 58 168 630 497 369 485 114
注(1)
指定数は、津波災害に対応したものを計上している。また、既存の施設を指定したものを含んでいる。
注(2)
浸水地域は、東北地方太平洋沖地震による津波で浸水した地域を指す。
注(3)
緊急避難場所は、公園、校庭、広場等屋外施設が多数あるため、耐震性の状況や避難所等の装備の調査対象から除外している。ただし、緊急避難場所が避難所にも指定されている場合は、当該避難所について耐震性の状況や避難所等の装備を調査した。
注(4)
津波避難ビルは、津波浸水想定区域内に所在するため、浸水地域内の所在の調査対象から除外している。
注(5)
1施設が避難所と緊急避難場所に指定されている施設が多数あるため、合計は記載していない。

市町村が避難所に指定している1,059施設のうち備蓄倉庫が設置されている460施設について、避難者を支援するための備蓄物資の状況をみると、図表6-24のとおり、27年度末現在、収容可能人数約38万人に対して、食糧(保存米)が約34万食、毛布が約9万枚備蓄されている。

津波災害時の避難状況は、浸水の程度、昼夜の時間等様々な条件で異なるが、各避難所において収容可能人数の上限まで住民等が避難したと仮定して食糧(保存米)による食事の供与期間をみると、460施設のうち食事の供与が全くできないものが145施設あり、1日以下が255施設、1日超3日以下が52施設となっている。また、毛布が不足するものが349施設、非常用電源がないため停電時に照明等の電気製品が使えないものが48施設、石油ストーブが備蓄されていないため暖房を使えないものが234施設となっている。

これらの避難所が所在する市町村では、備蓄物資の拡充に努めるとともに、不足する物資について、災害時相互応援協定(注22)を締結した団体等からの支援や他の避難所に設置されている備蓄倉庫から輸送するなどの対応を図るとしている。また、備蓄物資の更新費用等の負担が大きいことが見込まれることから、住民における備蓄の推進や避難時の非常用食糧等の持参等の取組を進めている。

(注22)
災害時相互応援協定  地震等の災害発生時における被災者の救出・救護、必要な人員の派遣、生活必需品等の提供等の支援について、地方公共団体と民間事業者や関係機関との間で、又は地方公共団体間で締結される協定

図表6-24 避難者を支援するための備蓄物資の状況(平成27年度末現在)

(単位:施設、人)
県名
(備蓄倉庫が設置されている避難所がある市町村数)
  備蓄倉庫にある主な備蓄品の数量 備蓄品による避難者への支援
備蓄倉庫が設置されている避難所数 左の避難所の収容可能人数 食糧
(保存米)
(食)
毛布
(枚)
備蓄されている食糧(保存米)による食事供与期間別の避難所数 備蓄品だけでは避難生活に支障が生じる避難所数
全くない 1日以下 1日超3日以下 3日超 毛布が不足する 照明等電気製品が使えない 暖房を使えない
岩手県(10市町村) 119 43,393 111,884 22,046 14 72 26 7 72 21 64
宮城県(14市町) 245 308,734 218,823 48,707 76 142 26 1 190 22 100
福島県(3市町) 96 29,900 11,692 15,500 55 41 87 5 70
計(27市町村) 460 382,027 342,399 86,253 145 255 52 8 349 48 234
(注)
備蓄されている食糧(保存米)による食事供与期間別の避難所数及び毛布が不足する避難所数については、各避難所において収容可能人数の上限まで住民等が避難したと仮定して算出している。
ウ 住宅の供給等に関する復旧・復興事業の成果

東日本大震災により、多くの人が住居を失い、また、福島第一原発の事故により、影響を受けた多くの人が居住地を離れることとなり、ともに避難生活を余儀なくされることとなった。このため、東北3県は、被災者及び避難者(以下「被災者等」という。)の保護を図ることなどを目的として、災害救助法(昭和22年法律第118号)に基づく応急仮設住宅の供与を実施し、また、被災者等の居住の安定確保を図ることを目的として、被災者等に住宅や宅地を供給している災害公営住宅整備事業等、防災集団移転促進事業、漁業集落防災機能強化事業及び都市再生区画整理事業(以下、これらの事業を「住まいの復興に係る4事業」という。)を実施しており、事業費は基本的に全額が国費により賄われている。

そこで、東日本大震災及び福島第一原発の事故の被害の著しかった東北3県が集中復興期間において実施した、被災者等に対する応急仮設住宅の供与並びに住まいの復興に係る4事業による住宅及び宅地の供給に係る復旧・復興事業の状況についてみると次のとおりである。

(ア) 被災者等に対する応急仮設住宅の供与

a 供与に要する費用の状況

応急仮設住宅の供与に要する費用は、内閣府所管(24年度以前は厚生労働省所管)の災害救助費等負担金及び震災復興特別交付税により措置されている。

東北3県が整備等を行った建設型応急仮設住宅(整備戸数計52,822戸)及び借上型応急仮設住宅(借上戸数計24,856戸)について、集中復興期間における整備費、維持管理費等をみると、図表6-25のとおり、建設型応急仮設住宅の整備費は計3370億余円、維持管理費は計574億余円、撤去費は計14億余円、借上型応急仮設住宅の維持管理費は計1449億余円となっている。

図表6-25 集中復興期間における応急仮設住宅の整備費、維持管理費等の状況

(単位:市町村、戸、百万円)
事業主体 建設型応急仮設住宅 借上型応急仮設住宅
設置市町村数 整備戸数 整備費 維持管理費 撤去戸数 撤去費 設置市町村数 借上戸数 維持管理費
平成27年度末現在 27年度末現在 23年度~27年度の計 23年度~27年度の計 27年度末現在 23年度~27年度の計 27年度末現在 27年度末現在 23年度~27年度の計
岩手県 13 13,984 87,811 3,172 1,065 557 8 1,465 7,226
  うち沿岸分 11 13,890 87,206 3,162 1,060 556 8 1,465
宮城県 15 22,038 155,950 27,906 536 382 15 8,960 58,698
  うち沿岸分 13 21,959 155,367 27,904 457 322 13 8,947
福島県 23 16,800 93,331 26,416 1,042 483 34 14,431 79,051
  うち沿岸分 4 2,516 11,476 5,015 517 83 4 1,411
51 52,822 337,093 57,495 2,643 1,423 57 24,856 144,976
  うち沿岸分 28 38,365 254,050 36,082 2,034 962 25 11,823
(注)
沿岸分は、東北3県及び沿岸31市町村において応急仮設住宅を整備等している分である。

建設型応急仮設住宅に係る維持管理費について、集中復興期間における年度別の状況をみると、図表6-26のとおり、震災直後の23年度が344億余円とピークとなっており、24年度以降、建設型応急仮設住宅の統廃合や廃止の進捗により減少傾向となっている。

図表6-26 集中復興期間における建設型応急仮設住宅に係る維持管理費の年度別の状況

(単位:市町村、戸、百万円)
事業主体 設置市町村数 整備戸数 維持管理費
平成27年度末現在 27年度末現在 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度
岩手県 13 13,984 232 925 573 702 739 3,172
  うち沿岸分 11 13,890 231 923 570 699 736 3,162
宮城県 15 22,038 22,040 2,232 1,235 1,233 1,163 27,906
  うち沿岸分 13 21,959 22,040 2,231 1,235 1,233 1,163 27,904
福島県 23 16,800 12,183 11,442 1,506 946 336 26,416
  うち沿岸分 4 2,516 2,675 2,037 167 101 32 5,015
51 52,822 34,457 14,600 3,315 2,882 2,238 57,495
  うち沿岸分 28 38,365 24,947 5,193 1,973 2,034 1,932 36,082
(注)
沿岸分は、東北3県及び沿岸31市町村において応急仮設住宅を整備等している分である。

b 入居の状況

応急仮設住宅の供与期間は、原則として2年以内とされているが、厚生労働省は、24年4月に、災害公営住宅の整備になお時間を要する状況にあることなどを踏まえて供与期間を1年間延長することとし、25年4月に、地域の実情を踏まえて必要がある場合は、更に延長できることとした。

応急仮設住宅は、被災者等が恒久住宅等に入居する前に一時的に居住する住宅であることから、各事業主体は、早期に恒久住宅等を整備し、応急仮設住宅の解消に努める必要がある。

そこで、東北3県が被災者等に供与した応急仮設住宅について、集中復興期間の終期である27年度末現在の入居等の状況をみると、図表6-27のとおり、建設型応急仮設住宅は、東北3県の51市町村に計52,822戸が設置されており、借上型応急仮設住宅は、東北3県の57市町村で計24,856戸となっている。建設型応急仮設住宅の入居戸数は27,155戸、空き戸数は23,024戸、入居人数は55,163人であり、借上型応急仮設住宅の入居戸数は24,856戸、入居人数は55,705人となっている。27年度末現在の入居戸数を27年6月末現在と比較してみると、その増減率は、建設型応急仮設住宅が20.9%、借上型応急仮設住宅が24.5%それぞれ減少しており、住まいの復興に係る4事業の進捗に伴い、避難生活から安定した生活に向けて前進した状況が見受けられる。しかし、応急仮設住宅には依然として約11万人が入居している状況であり、その解消にはなお時間を要することが見込まれる。

図表6-27 応急仮設住宅の入居等の状況(平成27年6月末現在及び27年度末現在)

(単位:市町村、戸、%、人)
事業主体 建設型応急仮設住宅 借上型応急仮設住宅
設置市町村数 整備戸数 入居戸数 空き戸数 撤去戸数 入居人数 設置市町村数 借上戸数 入居戸数 入居人数
平成27年6月末現在 27年度末現在 増△減率 27年6月末現在 27年度末現在 増△減率 27年6月末現在 27年度末現在 増△減率 27年6月末現在 27年度末現在 27年6月末現在 27年度末現在 増△減率 27年6月末現在 27年度末現在
  B+D+F A B B/A-1 C D D/C-1 E F F/E-1         G H H/G-1    
岩手県 13 13,984 9,417 7,353 △21.9 4,303 5,566 29.3 264 1,065 303.4 19,819 15,193 8 1,465 1,965 1,465 △25.4 4,804 3,572
  うち沿岸分 11 13,890 9,386 7,334 △21.8 4,245 5,496 29.4 259 1,060 309.2 19,756 15,161 8 1,465 1,880 1,465 △22.0 4,587 3,572
宮城県 15 22,038 13,915 10,470 △24.7 7,769 11,032 42.0 354 536 51.4 30,153 22,167 15 8,960 14,474 8,960 △38.0 34,084 20,121
  うち沿岸分 13 21,959 13,915 10,470 △24.7 7,769 11,032 42.0 275 457 66.1 30,153 22,167 13 8,947 14,324 8,947 △37.5 33,691 20,080
福島県 23 16,800 11,025 9,332 △15.3 5,528 6,426 16.2 247 1,042 321.8 21,350 17,803 34 14,431 16,503 14,431 △12.5 36,351 32,012
  うち沿岸分 4 2,516 1,055 727 △31.0 1,461 1,272 △12.9 0 517 - 2,573 1,681 4 1,411 1,733 1,411 △18.5 4,316 3,525
51 52,822 34,357 27,155 △20.9 17,600 23,024 30.8 865 2,643 205.5 71,322 55,163 57 24,856 32,942 24,856 △24.5 75,239 55,705
  うち沿岸分 28 38,365 24,356 18,531 △23.9 13,475 17,800 32.0 534 2,034 280.8 52,482 39,009 25 11,823 17,937 11,823 △34.0 42,594 27,177
(注)
沿岸分は、東北3県及び沿岸31市町村において応急仮設住宅を整備等している分である。

このように応急仮設住宅の供与が長期間継続することは、被災者等の真の自立に支障を来すことから、各事業主体は、応急仮設住宅の撤去等計画を立て、入居者を個別に訪問するなどして応急仮設住宅の撤去等期限を周知し、災害公営住宅への移転や自力再建を促すなどしている。

(イ) 恒久住宅等の整備に係る復旧・復興事業

a 災害公営住宅整備事業等

災害公営住宅整備事業等は、東日本大震災及び福島第一原発の事故による被災者等が早急に避難生活から恒久住宅での生活に移るなど居住の安定確保を図るために災害公営住宅等を整備するものであり、復興交付金事業又は福島再生加速化交付金事業のうち長期避難者生活拠点形成事業及び帰還環境整備事業により実施されている。

災害公営住宅整備事業等は、東北3県及び沿岸31市町村のうち岩手、福島両県及び30市町村のほか、その他の22市町村において実施されており、集中復興期間における整備状況をみると、図表6-28のとおり、759地区における計画戸数29,575戸に対して16,747戸が完成(完成率56.6%)し、整備が完了した地区に係る整備額は4383億余円となっている。

図表6-28 集中復興期間における災害公営住宅整備事業等による災害公営住宅の整備状況(平成27年度末現在)

(単位:地区、戸、百万円、%)
事業主体 計画 整備済 完成率
地区数 戸数 地区数 戸数 整備額
  A   B   B/A
岩手県(1県及び12市町村) 192 5,771 102 3,168 80,213 54.8
  うち沿岸分 191 5,744 102 3,168 80,213 55.1
宮城県(21市町) 409 15,919 262 9,812 260,224 61.6
  うち沿岸分 387 15,559 241 9,476 251,894 60.9
福島県(1県及び19市町村) 158 7,885 97 3,767 97,958 47.7
  うち沿岸分 104 6,587 66 3,064 78,769 46.5
計(2県及び52市町村) 759 29,575 461 16,747 438,396 56.6
  うち沿岸分 682 27,890 409 15,708 410,877 56.3
注(1)
沿岸分は、東北3県及び沿岸31市町村において災害公営住宅整備事業等を実施している分である。
注(2)
宮城県(21市町)の計画戸数15,919戸及び計(2県及び52市町村)の計画戸数29,575戸のうち石巻市に係る計画戸数428戸については、平成27年度末現在で地区数が未定であるため、本図表の地区数には計上していない。

また、災害公営住宅整備事業等の整備方法についてみると、①事業主体が自ら設計し、又は設計事務所に委託して設計させて、建設会社に請負工事を発注するもの(以下「直接建設」という。)、②設計と施工を一体として独立行政法人都市再生機構又は県に委託するもの(以下「委託建設」という。)、③事業主体が公募型プロポーザル方式により事業者を選定した後、事業者が設計と施工を併せて行い、完成後に事業主体が買い取るもの(以下「民間買取」という。)、④事業主体が民間住宅を借り上げて被災者等に供与するもの(以下「民間借上」という。)に分類することができる。そして、上記の16,747戸を整備方法別にみると、図表6-29のとおり、直接建設が計画戸数、整備済戸数及び整備額ともに最も多く、それぞれ11,104戸、7,713戸、計1940億余円となっている。また、住宅を新築した直接建設、委託建設及び民間買取の1戸当たりの整備額は2県及び52市町村の平均で2483万余円から2981万余円となっている。

図表6-29 集中復興期間における災害公営住宅整備事業等による災害公営住宅の整備の整備方法別の状況(平成27年度末現在)

(単位:地区、戸、千円)
事業主体 整備方法 地区数 計画戸数 整備済戸数 整備額 1戸当たりの整備額
        A B B/A
岩手県(1県及び12市町村) 直接建設 79 3,016 1,977 49,891,959 25,236
委託建設 36 958 568 16,265,559 28,636
民間買取 77 1,797 623 14,055,683 22,561
民間借上
  うち沿岸分 直接建設 78 2,989 1,977 49,891,959 25,236
委託建設 36 958 568 16,265,559 28,636
民間買取 77 1,797 623 14,055,683 22,561
民間借上
宮城県(21市町) 直接建設 99 3,069 2,256 54,550,455 24,180
委託建設 91 5,945 3,600 107,765,819 29,934
民間買取 214 6,328 3,807 95,325,900 25,039
民間借上 5 149 149 2,582,192 17,330
  うち沿岸分 直接建設 83 2,861 2,072 50,714,335 24,476
委託建設 91 5,945 3,600 107,765,819 29,934
民間買取 208 6,176 3,655 90,832,209 24,851
民間借上 5 149 149 2,582,192 17,330
福島県(1県及び19市町村) 直接建設 109 5,019 3,480 89,569,151 25,738
委託建設 10 869 77 2,529,203 32,846
民間買取 39 1,997 210 5,860,361 27,906
民間借上
  うち沿岸分 直接建設 75 4,319 2,944 74,660,838 25,360
委託建設 7 783 30 956,540 31,884
民間買取 22 1,485 90 3,152,115 35,023
民間借上
計(2県及び52市町村) 直接建設 287 11,104 7,713 194,011,567 25,153
委託建設 137 7,772 4,245 126,560,581 29,814
民間買取 330 10,122 4,640 115,241,945 24,836
民間借上 5 149 149 2,582,192 17,330
  うち沿岸分 直接建設 236 10,169 6,993 175,267,134 25,063
委託建設 134 7,686 4,198 124,987,919 29,773
民間買取 307 9,458 4,368 108,040,008 24,734
民間借上 5 149 149 2,582,192 17,330
注(1)
沿岸分は、東北3県及び沿岸31市町村において災害公営住宅整備事業等を実施している分である。
注(2)
宮城県(21市町)の計画戸数15,919戸のうち石巻市に係る計画戸数428戸については、平成27年度末現在で整備方法及び地区数が未定であるため、本図表の地区数及び計画戸数には計上していない。
注(3)
民間借上の整備額欄に計上している額は、借入契約額である。

各事業主体は、災害公営住宅の整備に当たり、当初の事業計画を立案する際に被災者等に災害公営住宅への入居に係る意向調査を行い、その結果を踏まえて計画戸数を決定している。

そこで、集中復興期間に整備された災害公営住宅の入居の状況等をみると、図表6-30のとおり、入居可能戸数15,617戸のうち14,754戸(94.4%)が入居済み又は入居手続中であり、863戸(5.5%)が入居者未定で空室となっている。

図表6-30 集中復興期間に整備した災害公営住宅の入居の状況等(平成27年度末現在)

(単位:上段(戸)、下段(%))
事業主体 整備済戸数 入居可能戸数
  入居済み 入居手続中 入居者未定 入居済み又は入居手続中
      A B   A+B
岩手県(1県及び12市町村) 3,168 2,748 2,351 87 310 2,438
85.5 3.1 11.2 88.7
  うち沿岸分 3,168 2,748 2,351 87 310 2,438
85.5 3.1 11.2 88.7
宮城県(21市町) 9,812 9,326 8,442 527 357 8,969
90.5 5.6 3.8 96.1
  うち沿岸分 9,476 8,990 8,155 516 319 8,671
90.7 5.7 3.5 96.4
福島県(1県及び19市町村) 3,767 3,543 3,289 58 196 3,347
92.8 1.6 5.5 94.4
  うち沿岸分 3,064 3,045 2,844 54 147 2,898
93.3 1.7 4.8 95.1
計(2県及び52市町村) 16,747 15,617 14,082 672 863 14,754
90.1 4.3 5.5 94.4
  うち沿岸分 15,708 14,783 13,350 657 776 14,007
90.3 4.4 5.2 94.7
注(1)
沿岸分は、東北3県及び沿岸31市町村において災害公営住宅整備事業等を実施している分である。
注(2)
入居可能戸数及びその内訳には、整備済戸数から入居開始年月が平成28年4月以降となる戸数を除外したものを計上している。

入居者未定となっている理由について、事業主体によれば、一旦入居した被災者等が施設に入所したり、死亡したりなどしている場合もあるが、被災者等の家族構成や生活状況が変化して他の地域において民間宅地を購入して住宅を建築するなど自力再建を予定していたり、親族の住宅等への同居を予定していたりするなど住宅の再建方法を変更したこと、応急仮設住宅の家賃が無償であるのに対して災害公営住宅の家賃が有償であることなどから、被災者等が災害公営住宅の完成後もなお災害公営住宅に移転せずに応急仮設住宅に入居し続けていることなどによるとしている。

各事業主体は、入居者未定の空室の解消について、応急仮設住宅入居者を個別に訪問し、応急仮設住宅の撤去等期限を周知するとともに災害公営住宅への移転を促したり、広報を通じて随時入居者を募集したりするなど、様々な対策を講じている。

国土交通省は、各事業主体が災害公営住宅を被災者等に提供するために様々な対策を講じたにもかかわらず入居者未定の空室が生じている場合、事業主体の判断により、その解消策の一つとして、公営住宅法(昭和26年法律第193号)の規定に基づき、災害発生から3年を経過した後、災害公営住宅を一般向け公営住宅に変更し、被災者等以外の一般の入居者に貸与等を行うことはやむを得ないとの見解を示している。一方、災害発生から3年を経過するまでの間において、各事業主体が前記の対策を講じてもなお空室が解消されない場合、公営住宅法に規定されている3年を待たずして災害公営住宅を一般向け公営住宅に変更できることとすれば、より早期に当該災害公営住宅を有効活用することが可能になる。

ただし、災害公営住宅整備事業等は、被災者等に対象者を限定して恒久住宅等を整備するものであり、復興交付金及び福島再生加速化交付金により実施される事業である。一方、一般向け公営住宅整備事業は、住宅に困窮する低額所得者を対象にして住宅を整備するものであり、一般会計予算に計上された国庫補助金により実施される事業であり、災害公営住宅整備事業等よりも補助率が低率となっている。これらのことから、各事業主体において、災害公営住宅の空室が解消されないことが見込まれ、災害発生から3年を待たずして早期に当該災害公営住宅を有効活用しようとする場合には、補助率の差分の国費相当額を国庫に納付することにより一般向け公営住宅としての貸与等を行うことを可能とするなど、国土交通省においてその対策について検討する必要がある。

災害公営住宅への入居を検討中としている者のほか、今後の再建方針が未定となっている者等を対象に入居を募集するなどしても入居者未定の空室が解消されないことが見込まれるものについて、事例を示すと次のとおりである。

<事例4> 災害公営住宅への入居を検討中としている者のほか、今後の再建方針が未定となっている者等を対象に入居を募集するなどしても入居者未定の空室が解消されないことが見込まれるもの

県・市町村名 事業費 事業概要
福島県相馬市 65億1328万余円 災害公営住宅整備事業等
相馬市(以下「市」という。)は、平成24年度から26年度までの間に細田地区等10地区において計398戸の災害公営住宅を事業費65億1328万余円で整備しており、整備が完了した地区から順次入居を開始して27年4月までには全ての住宅において入居が可能な状況となっている。
入居状況について確認したところ、集中復興期間の終期である27年度末現在、募集を行ったが入居の申込がないなどにより入居者未定の空室が10地区全てにおいて発生しており、その数は計50戸(入居者未定の率12.5%)となっている。
市は、入居者未定の空室が生じている原因について、被災者の生活状況の変化により住宅の再建方法を変更したことなどによるとしており、広報を通じて随時入居者を募集するなど空室の解消に努めている。一方、27年度末現在、相馬市内の応急仮設住宅に入居している146戸355人には、防災集団移転促進事業により整備された宅地を購入予定としている者、独自に住宅建設・購入を予定している者、親族の住宅等への同居を予定している者が117戸301人と多数いるほか、災害公営住宅への入居を検討中としている者が10戸22人、今後の再建方針が未定となっている者等が19戸32人いるという状況である。
上記の災害公営住宅への入居を検討中としている者のほか、今後の再建方針が未定となっている者等を対象に災害公営住宅への入居を募集するなどの対策を講じても空室が解消されないことが見込まれる場合は、入居者未定となっている災害公営住宅を一般向け公営住宅に変更して有効活用することも考えられる。

b 防災集団移転促進事業

防災集団移転促進事業は、被災した地域において居住に適していないと認められる区域(以下「移転促進区域」という。)内にある住宅を津波等による被災のおそれのない高台等へ集団移転するものであり、復興交付金事業により実施されている。主な事業内容は、移転先の土地に宅地を整備し、移転者に宅地を分譲又は貸与(以下「分譲等」という。)するものであり、一部の地区においては災害公営住宅整備事業等も合わせて実施されている。

防災集団移転促進事業は、東北3県及び沿岸31市町村のうち22市町村のほか、その他の4市町において実施されており、集中復興期間における整備状況をみると、図表6-31のとおり、324地区における計画区画数の8,840区画に対して6,484区画が完成(完成率73.3%)し、整備が完了した地区に係る整備額は1252億余円となっている。

図表6-31 集中復興期間における防災集団移転促進事業による宅地の整備状況(平成27年度末現在)

(単位:地区、区画、百万円、%)
事業主体 計画 整備済区画に係るもの 完成率
  うち全ての区画の整備が完了した地区に係るもの
  地区数 区画数 地区数 区画数 地区数 区画数 整備額  
  A   B       B/A
岩手県(7市町村) 90 2,152 74 1,365 66 1,075 34,579 63.4
  うち沿岸分 90 2,152 74 1,365 66 1,075 34,579 63.4
宮城県(12市町) 187 6,026 161 4,496 148 3,746 78,731 74.6
  うち沿岸分 187 6,026 161 4,496 148 3,746 78,731 74.6
福島県(7市町) 47 662 42 623 42 623 11,966 94.1
  うち沿岸分 20 317 20 317 20 317 6,557 100.0
計(26市町村) 324 8,840 277 6,484 256 5,444 125,277 73.3
  うち沿岸分 297 8,495 255 6,178 234 5,138 119,867 72.7
(注)
沿岸分は、東北3県及び沿岸31市町村において防災集団移転促進事業を実施している分である。

各事業主体は、宅地の整備に当たり、当初の事業計画を立案する際や用地の取得時、造成工事の着手時等に防災集団移転促進事業の移転対象者に整備する宅地についての分譲等に係る意向調査を行い、その結果を踏まえて計画区画数を決定している。

そこで、集中復興期間に整備された宅地の分譲等の状況をみると、図表6-32のとおり、整備された宅地6,484区画のうち5,775区画(89.0%)が分譲等済み又は分譲等手続中であり、709区画(10.9%)が分譲等未定で空き区画となっている。

図表6-32 集中復興期間に整備された宅地の分譲等の状況(平成27年度末現在)

(単位:上段(区画)、下段(%))
事業主体 整備済区画数
  うち分譲 うち貸与
合計 分譲等済み 分譲等手続中 分譲等未定 分譲等済み又は分譲等手続中 分譲済み 分譲手続中 分譲未定 貸与済み 貸与手続中 貸与未定
  A B   A+B                
岩手県(7市町村) 1,365 1,068 135 162 1,203 1,010 824 88 98 355 244 47 64
78.2 9.8 11.8 88.1 81.5 8.7 9.7 68.7 13.2 18.0
  うち沿岸分 1,365 1,068 135 162 1,203 1,010 824 88 98 355 244 47 64
78.2 9.8 11.8 88.1 81.5 8.7 9.7 68.7 13.2 18.0
宮城県(12市町) 4,496 3,306 655 535 3,961 1,275 944 162 169 3,221 2,362 493 366
73.5 14.5 11.8 88.1 74.0 12.7 13.2 73.3 15.3 11.3
  うち沿岸分 4,496 3,306 655 535 3,961 1,275 944 162 169 3,221 2,362 493 366
73.5 14.5 11.8 88.1 74.0 12.7 13.2 73.3 15.3 11.3
福島県(7市町) 623 601 10 12 611 595 576 8 11 28 25 2 1
96.4 1.6 1.9 98.0 96.8 1.3 1.8 89.2 7.1 3.5
  うち沿岸分 317 297 9 11 306 289 272 7 10 28 25 2 1
93.6 2.8 3.4 96.5 94.1 2.4 3.4 89.2 7.1 3.5
計(26市町村) 6,484 4,975 800 709 5,775 2,880 2,344 258 278 3,604 2,631 542 431
76.7 12.3 10.9 89.0 81.3 8.9 9.6 73.0 15.0 11.9
  うち沿岸分 6,178 4,671 799 708 5,470 2,574 2,040 257 277 3,604 2,631 542 431
75.6 12.9 11.4 88.5 79.2 9.9 10.7 73.0 15.0 11.9
(注)
沿岸分は、東北3県及び沿岸31市町村において防災集団移転促進事業を実施している分である。

分譲等未定となっている理由について、事業主体によれば、移転対象者の家族構成や生活状況が変化して住宅の再建方法を変更したことや、移転対象者が同一の事業主体に重複して分譲等の要望をしていたことなどから当該区画の分譲等を辞退したことなどによるとしている。

各事業主体は、分譲等未定の区画の解消について、移転対象者に対して空き区画の分譲等の募集を行う説明会を定期的に開催したり、広報を通じて随時分譲等を希望する移転対象者を募集したりするなど様々な対策を講じている。

なお、国土交通省は、各事業主体が様々な対策を講じてもやむを得ず分譲等未定の区画が生じたもので、当該区画を移転対象者以外に分譲等して活用することが被災地の復興に資するものである場合、移転対象者以外への分譲等を認めている。そして、宅地を移転対象者以外に分譲する場合には、同省が定める東日本大震災復興交付金基金交付要綱の規定に基づく財産処分を行い、移転対象者以外に分譲した宅地に係る譲渡額のうち国費相当額を国庫に納付することとしている。

移転対象者以外に分譲した宅地に係る国費相当額を国庫に納付していた事例を示すと次のとおりである。

<参考事例2> 防災集団移転促進事業により整備した宅地のうち、移転対象者への分譲等が見込めない空き区画を移転対象者以外に分譲し、国費相当額を国庫に納付していたもの

市町村名 財産処分に伴う国庫納付額 事業概要
仙台市 5億8290万余円 防災集団移転促進事業
仙台市(以下「市」という。)は、市沿岸部が津波により甚大な被害を受けたことから、平成24年度から防災集団移転促進事業を実施している。同事業の実施に係る宅地の整備に当たり、市は、移転の対象となる住民に対して移転先の希望に関する意向調査を行っており、この調査結果を踏まえて、仙台市内の14地区において計734区画の宅地の整備を計画した。市は、24年11月から順次各地区の用地の取得や造成工事に着手し、26年度末までに全ての宅地の整備を完了している。
一方、工事等の着手から完了までの間に移転対象者の意向の変化により移転対象者数が減少したことから、市は、移転の対象となる住民に対して追加の意向調査や再募集を重ねて行い、空き区画が生ずることがないように事業を進めてきたが、27年8月末現在、8地区において計79区画が空き区画となっていた。
そのため、市は、国土交通省と協議を行い、上記79区画の空き区画がやむを得ず生じたものであり、これらを移転対象者以外に分譲して活用することが被災地の復興に資するものであるとして、同省が定める東日本大震災復興交付金基金交付要綱の規定に基づく財産処分を行うこととし、27年10月から市内の移転対象者以外の被災者に、更に28年4月から被災者以外に対象を拡大して分譲を行うこととした。
その後、市は、28年8月までに上記79区画の全ての分譲等先を決定したが、そのうち移転対象者以外へ分譲することとした計74区画について同省から財産処分の承認を受けた後、当該74区画に係る分譲額のうち国費相当額の計5億8290万余円を29年1月までに国庫に納付した。

c 漁業集落防災機能強化事業

漁業集落防災機能強化事業は、被災地の漁業集落において、安心安全な居住環境を確保するための地盤のかさ上げをすることにより、宅地、道路等や防災安全施設を整備するものであり、復興交付金事業により実施されている。主な事業内容は、漁業集落の地盤のかさ上げ及び生活基盤の整備であり、一部の地区においては災害公営住宅整備事業等も合わせて実施されている。また、漁業集落防災機能強化事業は、防災集団移転促進事業において、国庫補助の対象となる移転促進区域内からの移転者のほか、移転促進区域外からの移転者についても宅地の整備が国庫補助の対象となることから、防災集団移転促進事業と組み合わせるなどして事業が実施されている。

漁業集落防災機能強化事業は、東北3県及び沿岸31市町村のうち13市町村において実施されており、集中復興期間における整備状況をみると、図表6-33のとおり、36地区において計画区画数500区画に対して276区画が完成(完成率55.2%)し、整備が完了した地区に係る整備額は59億余円となっている。

図表6-33 集中復興期間における漁業集落防災機能強化事業による宅地の整備状況(平成27年度末現在)

(単位:地区、区画、百万円、%)
事業主体 計画 整備済区画に係るもの 完成率
  うち全ての区画の整備が完了した地区に係るもの
地区数 区画数 地区数 区画数 地区数 区画数 整備額  
  A   B       B/A
岩手県(10市町村) 32 471 25 268 24 234 5,851 56.9
  うち沿岸分 32 471 25 268 24 234 5,851 56.9
宮城県(3市町) 4 29 2 8 1 2 59 27.5
  うち沿岸分 4 29 2 8 1 2 59 27.5
福島県
  うち沿岸分
計(13市町村) 36 500 27 276 25 236 5,911 55.2
  うち沿岸分 36 500 27 276 25 236 5,911 55.2
(注)
沿岸分は、東北3県及び沿岸31市町村において漁業集落防災機能強化事業を実施している分である。

各事業主体は、宅地の整備に当たり、当初の事業計画を立案する際に被災者に整備する宅地についての分譲に係る意向調査を行い、その結果を踏まえて計画区画数を決定している。

そこで、集中復興期間に整備された宅地の分譲の状況をみると、図表6-34のとおり、整備された宅地276区画のうち257区画(93.1%)が分譲済み又は分譲手続中であり、19区画(6.8%)が分譲未定で空き区画となっている。

図表6-34 集中復興期間に整備された宅地の分譲の状況(平成27年度末現在)

(単位:上段(区画)、下段(%))
事業主体 整備済区画数
  分譲済み 分譲手続中 分譲未定 分譲済み又は分譲手続中
  A B   A+B
岩手県(10市町村) 268 200 49 19 249
74.6 18.2 7.0 92.9
  うち沿岸分 268 200 49 19 249
74.6 18.2 7.0 92.9
宮城県(3市町) 8 8 - - 8
100.0 - - 100.0
  うち沿岸分 8 8 - - 8
100.0 - - 100.0
福島県
  うち沿岸分
計(13市町村) 276 208 49 19 257
75.3 17.7 6.8 93.1
  うち沿岸分 276 208 49 19 257
75.3 17.7 6.8 93.1
(注)
沿岸分は、東北3県及び沿岸31市町村において漁業集落防災機能強化事業を実施している分である。

分譲未定となっている理由について、事業主体によれば、被災者の家族構成や生活状況が変化して住宅の再建方法を変更したこと、分譲を希望している被災者が分譲を受けるに当たっての資金繰りに時間を要していることなどによるとしている。

なお、農林水産省は、各事業主体が様々な対策を講じてもやむを得ず分譲未定の区画が生ずる場合、一般向けの分譲を認めている。そして、宅地を一般向けに分譲した場合には、宅地の分譲により事業主体が得た収入の国費相当額を国庫返還させることとしている。

d 都市再生区画整理事業

都市再生区画整理事業は、被災した市街地の復興を図るため、公共施設と宅地を計画的かつ一体的に整備するものであり、復興交付金事業により実施されている。主な事業内容は、市街地の区画整理であり、一部の地区においては災害公営住宅整備事業等も合わせて実施されている。

都市再生区画整理事業は、東北3県及び沿岸31市町村のうち17市町村において実施されており、集中復興期間における整備状況をみると、図表6-35のとおり、50地区における計画区画数10,129区画に対して1,652区画が完成(完成率16.3%)し、整備が完了した地区に係る整備額は59億余円となっている。

図表6-35 集中復興期間における都市再生区画整理事業による宅地の整備状況(平成27年度末現在)

(単位:地区、区画、百万円、%)
事業主体 計画 整備済区画に係るもの 完成率
  うち全ての区画の整備が完了した地区に係るもの
  地区数 区画数 地区数 区画数 地区数 区画数 整備額  
  A   B       B/A
岩手県(7市町村) 17 5,249 12 761 1 180 3,595 14.4
  うち沿岸分 17 5,249 12 761 1 180 3,595 14.4
宮城県(8市町) 27 3,673 18 784 4 36 2,357 21.3
  うち沿岸分 27 3,673 18 784 4 36 2,357 21.3
福島県(2市町) 6 1,207 5 107 - - - 8.8
  うち沿岸分 6 1,207 5 107 - - - 8.8
計(17市町村) 50 10,129 35 1,652 5 216 5,952 16.3
  うち沿岸分 50 10,129 35 1,652 5 216 5,952 16.3
(注)
沿岸分は、東北3県及び沿岸31市町村において都市再生区画整理事業を実施している分である。

都市再生区画整理事業は、換地により事業を進めていくため、一般的には事業の完了までに相当な期間を要するものとなっている。このことから、当該事業による宅地の整備状況について、今後も引き続き推移を把握していく必要がある。

エ 地域経済活動の再生に関する復旧・復興事業の成果

東日本大震災により、多くの農林漁業者、中小企業者等は、事業所、施設、設備等の損壊や流失等の著しい被害を受けて、地域によっては事業の存続が危ぶまれる状況となった。

復興基本方針では、地域経済活動の再生に関する施策として、経営活動を再開・再建するための施設等の復旧、事業継続のための資金繰りなどに関する支援、企業の立地環境を改善するための国内立地補助の措置、風評被害防止等のための情報発信等による国内外の旅行需要等の回復、新産業の創出及び雇用創出等の取組の促進、再生可能エネルギーの利用促進等、広範多岐にわたる支援を実施するとしている。

また、26年6月に策定された産業復興創造戦略では、東日本大震災発生後の3年間の取組を総括し、これまでの産業の復興に向けた民間企業の努力と、国及び地方自治体の政策的対応の結果、施設、設備等の復旧は進み、被災地域の経済は全体として回復しつつあるが、地域によりその実感には差異があり、特定の地域業種はいまだ回復途上にあるとしている。

集中復興期間における各種産業に係る施設等の復旧・復興、資金繰り支援、企業立地支援等の地域経済活動の再生に関する復旧・復興事業の状況は次のとおりである。

(ア) 各種産業に係る施設等の復旧・復興事業の状況

a 農水産業に係る施設等の復旧・復興の状況

27年度末現在の東北3県における農水産業に係る施設等の復旧・復興の状況をみると、図表6-36のとおり、農地については計画施設数38,718haのうち32,703haが完成(完成率84.4%)し、農業用施設については計画施設数4,838施設のうち3,914施設が完成(完成率80.9%)している。事業費進捗率は、農地が42.5%、農業用施設が85.7%であり、大きな差が生じている。これは、復旧に多額の事業費を要する農地において、他の各種復旧・復興事業との調整に時間を要していて、事業の進捗が遅れていることなどによるものである。

また、漁港施設については計画施設数2,636施設のうち1,645施設が完成(完成率62.4%)し、水産業共同利用施設(荷さばき所、製氷、冷凍、冷蔵、貯氷、給油各施設)については計画施設数4,922施設のうち4,637施設が完成(完成率94.2%)しており、事業費進捗率は、漁港施設、水産業共同利用施設ともに76.9%となっている。宮城県の漁港施設の完成率は、56.3%と他の2県より低くなっているが、これは、隣接する漁業集落や防潮堤の復旧等が遅れていること、これらを含め全体的な事業の遅れにより27年度から着手した事業があることなどによるものである。なお、農林水産省によれば、岸壁の復旧により、被災した漁港の約9割で陸揚げが可能となっているとしている。

図表6-36 農水産業に係る施設等の復旧・復興の状況(平成27年度末現在)

(単位:施策項目ごとの単位、百万円、%)
施策項目 県名 単位 施設数等 事業費
計画施設数 完成施設数 完成率 計画事業費 支出済事業費 事業費進捗率 完成分事業費
国庫補助金等 その他
      A B B/A C D D/C      
農業 農地 岩手県 ha 894 791 88.4 19,908 15,901 79.8 12,599 3,302 15,901
宮城県 18,302 16,094 87.9 161,764 71,671 44.3 60,374 11,296 71,671
福島県 19,522 15,817 81.0 74,973 21,740 28.9 14,661 2,171 16,832
38,718 32,703 84.4 256,646 109,313 42.5 87,635 16,770 104,405
農業用施設 岩手県 施設 489 488 99.7 16,590 15,872 95.6 10,254 5,617 15,872
宮城県 2,673 2,170 81.1 67,737 59,179 87.3 47,546 10,409 57,956
福島県 1,676 1,256 74.9 43,191 34,297 79.4 29,988 4,308 34,297
4,838 3,914 80.9 127,519 109,349 85.7 87,790 20,335 108,126
水産業 漁港施設 岩手県 施設 1,064 708 66.5 133,370 103,411 77.5 85,304 3,360 88,664
宮城県 1,222 689 56.3 182,774 137,138 75.0 64,604 2,694 67,298
福島県 350 248 70.8 30,331 25,913 85.4 21,236 4,677 25,913
2,636 1,645 62.4 346,476 266,463 76.9 171,145 10,731 181,877
水産業共同利用施設 岩手県 施設 1,553 1,468 94.5 119,183 110,484 92.7 80,627 29,666 110,294
宮城県 3,306 3,130 94.6 289,514 205,529 70.9 112,044 50,464 162,509
福島県 63 39 61.9 9,344 5,623 60.1 4,272 1,350 5,623
4,922 4,637 94.2 418,041 321,636 76.9 196,944 81,482 278,426
注(1)
各施策項目とも県、市町村が把握している事業分に限定しており、国の機関による事業(直轄事業)は計上していない。
注(2)
「完成施設数」及び「完成分事業費」は、当該施設等について復旧事業から復興事業による一連の整備が完了したものを計上している。
注(3)
「単位」は、各施策項目に係る主なものとしている。
注(4)
各施策項目の表記単位以外のものに係る額についても計画事業費、支出済事業費及び完成分事業費に含めて計上している。
注(5)
岩手県の各施策項目の施設等には、平成28年8月の台風第10号により被災したものがあるが、27年度末現在で集計しているため、同台風による影響は反映されていない。

b 中小企業者等の事業に係る施設等の復旧状況

東日本大震災により被災した中小企業者等の事業に係る施設の復旧について、国は、中小企業組合等共同施設等災害復旧費補助金(以下「グループ補助金」という。)を創設して支援している。グループ補助金は、復興を牽(けん)引する役割を担い得る地域経済の中核を形成する中小企業等グループが復興事業計画を作成し、県の認定を受けた場合に、施設等の復旧等を支援するものである。その要件は、当該中小企業等グループがほかの企業や他地域の産業にとって重要な役割を果たしていること、事業規模や雇用規模が大きく、地域の経済・雇用への貢献度が高いこと、当該中小企業等グループの構成員の施設が甚大な被害を受けるなどして事業の継続が困難になっていることなどとなっている。

国は、グループ補助金による事業のために集中復興期間に計3913億余円の予算を措置し、同期間に16次の公募を実施しており、東北3県では、27年度末までに第13次公募分までの事業実績が確定している。その実績をみると、図表6-37のとおり、27年度末現在、交付決定を受けた延べ8,937事業者のうち延べ7,207事業者が事業を完了しているが、延べ202事業者が事業を廃止し又は取り消しているほか、延べ1,528事業者が事業を延期するなどしている。また、グループ補助金による事業に要する総事業費は計4799億余円であり、その負担の内訳は国庫補助金2190億余円、県補助金1095億余円、事業者負担額1513億余円となっている。

図表6-37 グループ補助金による事業の実績(平成27年度末現在)

(単位:事業者、百万円)
県名 交付決定事業者数   総事業費  
事業完了 事業の廃止・取消 事業延期等 国庫補助金 県補助金 事業者負担額
岩手県 1,372 996 35 341 96,602 43,350 21,677 31,574
宮城県 4,016 3,043 95 878 258,386 121,095 60,547 76,744
福島県 3,549 3,168 72 309 124,970 54,594 27,297 43,078
8,937 7,207 202 1,528 479,959 219,040 109,522 151,396
(注)
事業者数は、延べ数である。

グループ補助金による事業のほかに、国は、23年度から被災中小企業復興支援リース補助事業(以下「リース補助事業」という。)を実施している。リース補助事業は、東日本大震災に起因する設備の滅失等により債務を抱えた中小企業者に対し、二重債務負担の軽減を図るとともに、被災地の雇用を維持・促進することを目的としており、その要件は、東日本大震災により被災した物件と同一の分類に属する物件をリースにより導入すること、被災時点において旧債務の残高があること、被災時点が旧債務の契約当初の契約期間内であることなどとなっている。そして、リース料の総額の10%又は3000万円のいずれか少ない額が補助金の交付申請者(経済産業省が指定したリース事業者)に交付され、当該リース料の軽減に充当されることとなっている。

23年12月の制度創設時において、対象となるリース契約は23年3月14日から25年度末までの間に締結されたもの、設備は特定被災区域内に設置されるものなどとなっていたが、集中復興期間の終了に伴い、対象となるリース契約を29年度末まで延長し、設備の設置場所を東北3県内に限定するなどの見直しが行われた。

また、リース補助事業は、中小企業者における設備の導入に対する支援を安定的・弾力的に行う必要があることから、日本商工会議所に造成した人材対策基金の一部を活用した基金事業として実施されていて、国は、23年度第3次補正予算により措置された100億余円をリース補助事業に係る基金造成のために日本商工会議所に交付し、集中復興期間において40億余円が取り崩されて事業に充てられた。

東北3県におけるリース補助事業の実績をみると、図表6-38のとおり、27年度末現在、集中復興期間に6,023件に対して35億余円が交付されており、このうち宮城県が4,361件、24億余円となっている。なお、国は、集中復興期間の終了に伴いリース補助事業の需要等について調査を行っており、被災地の市街地整備等が遅れていて、被災した中小企業者がいまだ本格的な稼働に至っておらず基金の利用見込みが今後もあることから、基金残額59億余円のうち30年度の基金事業終了までの利用見込額を16億余円とし、残余の43億余円を余剰金であるとして、28年6月に、日本商工会議所から国庫に返納させている。

図表6-38 リース補助事業の実績(平成27年度末現在)

(単位:件、百万円)
県名 平成23年度 24年度 25年度 26年度 27年度
件数 交付決定額 件数 交付決定額 件数 交付決定額 件数 交付決定額 件数 交付決定額 件数 交付決定額
岩手県 8 5 268 120 294 192 209 154 277 195 1,056 668
宮城県 77 40 1,484 653 1,244 713 744 485 812 571 4,361 2,464
福島県 171 120 166 108 121 110 148 96 606 436
85 45 1,923 894 1,704 1,014 1,074 751 1,237 864 6,023 3,570
(イ) 農林漁業者、中小企業者等に対する資金繰り支援

a 資金繰り支援の概要

被災した農林漁業者、中小企業者等に対しては、既存の借入金の返済を猶予したり、事業の維持又は再開のための設備・運転資金を確保したりするなどの支援が必要となる。日本公庫は、これらの支援を行うために、次のとおり融資等を行っている。

農林漁業者等向けの融資制度では既存融資制度の特例(以下「農林漁業者等震災特例貸付」という。)が設けられている。農林漁業者等震災特例貸付は、被災した農林漁業者や食品製造業者等を対象として、既存の農業経営基盤強化資金、経営体育成強化資金、農林漁業経営の維持安定に必要な長期運転資金(以下「農林漁業セーフティネット資金」という。)等の貸付けについて、実質無利子、実質無担保・無保証人による貸付けを行う特例を設けることなどにより円滑な資金供給を行うものである。そして、国は、日本公庫に対して被災農林漁業者の資金繰り支援として集中復興期間に407億余円を出資している。

中小企業者等向けの融資制度では東日本大震災復興特別貸付(以下「復興特別貸付」という。)が23年5月に創設されるなどしている。復興特別貸付は、中小企業者等に対する事業資金の貸付けについて、金利引下げ措置等により実施されていて、東日本大震災による事業所又は主要な事業資産の全壊や流失等の直接の被害を受けるなどした中小企業者等に対する貸付け(以下「直接被害貸付」という。)、直接の被害を受けた者の事業活動に依存し、間接的に被害を受けた者に対する貸付け(以下「間接被害貸付」という。)及び東日本大震災に起因する社会的要因による一時的な業況悪化により資金繰りに著しい支障を来しているなどの者に対する貸付け(以下「風評被害等貸付」という。)がある。そして、国は、日本公庫に対して被災中小企業者の資金繰り支援として集中復興期間に4328億余円を出資している。

b 農林漁業者等震災特例貸付及び復興特別貸付の実績

農林漁業者等震災特例貸付及び復興特別貸付の22年度(23年3月)から27年度までの間の実績をみると、図表6-39のとおり、農林漁業者等震災特例貸付が3442億余円、復興特別貸付が3兆8614億余円、計4兆2057億余円となっていて、復興特別貸付の規模が大きいものとなっている。

全国計の年度ごとの推移をみると、東日本大震災直後の23年度が2兆7608億余円と多額となっているが、復興特別貸付において間接被害貸付や風評被害等貸付に係る資金需要が震災から1年後にはおおむね一巡したことなどにより、24年度には8421億余円と大幅に減少しており、以後、25年度が2209億余円、26年度が1899億余円、27年度が1835億余円となっている。

東北3県における貸付実績は、全国計4兆2057億余円のうち8914億余円であり、県別の計では、宮城県が4836億余円、福島県が2490億余円、岩手県が1587億余円となっている。

図表6-39 農林漁業者等震災特例貸付及び復興特別貸付の実績

(単位:件、億円)
県名 対象 平成22年度(23年3月) 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度
件数 貸付額 件数 貸付額 件数 貸付額 件数 貸付額 件数 貸付額 件数 貸付額 件数 貸付額
岩手県 農林漁業者等震災特例貸付 5 4 227 72 207 80 183 79 162 92 138 88 922 418
復興特別貸付 47 3 2,737 401 1,593 252 1,311 185 1,218 183 1,070 141 7,976 1168
52 8 2,964 474 1,800 333 1,494 265 1,380 276 1,208 229 8,898 1587
宮城県 農林漁業者等震災特例貸付 3 2 1,618 203 629 153 487 132 328 99 324 122 3,389 713
復興特別貸付 158 17 10,510 1318 6,506 863 5,851 666 5,456 660 5,805 595 34,286 4122
161 20 12,128 1522 7,135 1017 6,338 798 5,784 759 6,129 717 37,675 4836
福島県 農林漁業者等震災特例貸付 2 1 139 41 142 37 198 42 162 25 153 45 796 193
復興特別貸付 62 5 5,510 588 4,573 509 4,391 406 4,371 399 4,200 386 23,107 2296
64 6 5,649 629 4,715 547 4,589 449 4,533 425 4,353 431 23,903 2490
東北3県 農林漁業者等震災特例貸付 10 9 1,984 317 978 271 868 254 652 217 615 255 5,107 1326
復興特別貸付 267 26 18,757 2308 12,672 1626 11,553 1259 11,045 1243 11,075 1123 65,369 7587
277 35 20,741 2626 13,650 1898 12,421 1513 11,697 1461 11,690 1379 70,476 8914
東北3県以外の都道府県 農林漁業者等震災特例貸付 19 29 2,051 662 814 477 314 296 260 283 218 366 3,676 2115
復興特別貸付 139 17 144,432 2兆4319 38,942 6045 1,873 399 916 154 426 90 186,728 3兆1026
158 47 146,483 2兆4982 39,756 6522 2,187 696 1,176 437 644 456 190,404 3兆3142
全国計 農林漁業者等震災特例貸付 29 38 4,035 979 1,792 748 1,182 550 912 501 833 622 8,783 3442
復興特別貸付 406 44 163,189 2兆6628 51,614 7672 13,426 1658 11,961 1398 11,501 1213 252,097 3兆8614
合計 435 82 167,224 2兆7608 53,406 8421 14,608 2209 12,873 1899 12,334 1835 260,880 4兆2057
注(1)
件数及び貸付額は、日本公庫の支店の貸付実績を県単位で集計したものである。
注(2)
復興特別貸付(平成23年5月23日制度開始)の実績には、23年3月14日から同年5月22日までの間の災害復旧貸付等を遡及して適用した貸付けも含まれている。

東北3県における農林漁業者等震災特例貸付の実績について、設備資金及び運転資金の資金使途別にみると、図表6-40のとおり、貸付額計1326億余円のうち設備資金が815億余円、運転資金が511億余円となっている。日本公庫は、農林漁業者の共同利用施設等の施設及び設備の復旧・復興については、別途補助事業として実施されるものが多いこと、また、運転資金についても農業協同組合、漁業協同組合等からの支援が見込まれることから、中小企業者等を対象とする復興特別貸付と比較してその資金需要は小規模なものとなっているとしている。

図表6-40 農林漁業者等震災特例貸付の資金使途(設備資金・運転資金)別の実績(平成27年度末現在)

(単位:件、億円)
県名 設備資金 運転資金
        うち農林漁業セーフティネット資金 件数 貸付額
件数 貸付額 件数 貸付額 件数 貸付額
A B C D     A+C B+D
岩手県 485 297 437 121 354 56 922 418
宮城県 1,162 383 2,227 330 2,040 243 3,389 713
福島県 538 134 258 59 179 36 796 193
東北3県計 2,185 815 2,922 511 2,573 336 5,107 1326
東北3県以外の都道府県計 1,006 1333 2,670 782 2,086 471 3,676 2115
全国計 3,191 2148 5,592 1293 4,659 808 8,783 3442
注(1)
農林漁業セーフティネット資金は、全て運転資金である。
注(2)
件数及び貸付額は、日本公庫の支店の貸付実績を県単位で集計したものである。

東北3県における復興特別貸付の実績について、設備資金及び運転資金の資金使途別にみると、図表6-41のとおり、貸付額計7587億余円のうち設備資金が1802億余円、運転資金が5785億余円となっていて、東北3県のいずれについても7割以上が運転資金となっている。また、直接被害貸付等の貸付けの種類別にみると、直接被害貸付が6655億余円となっていて、東日本大震災の直接的な被害による急激な資金繰りの悪化に対処するための運転資金の需要に対応したものとなっている。

日本公庫によれば、施設及び設備の復旧等については各種補助事業等による支援が実施されているが、農林漁業者、中小企業者等の経営を維持するための資金供給については東北3県の復旧・復興の進展による産業再生の過程において、相応の需要が見込まれるとしている。

図表6-41 復興特別貸付の資金使途(設備資金・運転資金)別の実績(平成27年度末現在)

(単位:件、億円、%)
県名 種別 直接被害貸付 間接被害貸付 風評被害等貸付 設備資金、運転資金の割合
件数 貸付額 件数 貸付額 件数 貸付額 件数 貸付額
A B C D E F A+C+E B+D+F
岩手県 設備資金 1,958 192 78 6 52 3 2,088 202 17.2
運転資金 4,659 752 625 65 604 148 5,888 966 82.7
6,617 945 703 71 656 152 7,976 1168 100.0
宮城県 設備資金 10,000 953 32 1 116 84 10,148 1038 25.1
運転資金 22,737 2725 797 58 604 299 24,138 3084 74.8
32,737 3678 829 60 720 383 34,286 4122 100.0
福島県 設備資金 7,197 555 14 0 96 6 7,307 562 24.4
運転資金 14,287 1476 283 15 1,230 241 15,800 1734 75.5
21,484 2031 297 16 1,326 248 23,107 2296 100.0
東北3県計 設備資金 19,155 1700 124 8 264 93 19,543 1802 23.7
運転資金 41,683 4954 1,705 140 2,438 690 45,826 5785 76.2
60,838 6655 1,829 148 2,702 784 65,369 7587 100.0
東北3県以外の都道府県計 設備資金 4,030 466 167 17 15,801 1215 19,998 1699 5.4
運転資金 9,441 1665 2,751 594 154,538 2兆7067 166,730 2兆9327 94.5
13,471 2131 2,918 612 170,339 2兆8282 186,728 3兆1026 100.0
全国計 設備資金 23,185 2167 291 26 16,065 1309 39,541 3502 9.0
運転資金 51,124 6619 4,456 734 156,976 2兆7757 212,556 3兆5112 90.9
合計 74,309 8787 4,747 760 173,041 2兆9067 252,097 3兆8614 100.0
(注)
件数及び貸付額は、日本公庫の支店の貸付実績を県単位で集計したものである。
(ウ) 企業立地支援による復旧・復興の状況

東日本大震災を契機として、生産拠点の海外移転等による産業の空洞化が加速するおそれがあることなどから、企業の立地環境を改善するために、復興関連基金事業において津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金による事業(以下「津波・原子力災害立地補助事業」という。)、地域経済産業復興立地推進事業費補助金による事業(以下「ふくしま立地支援事業」という。)等が実施されている。

津波・原子力災害立地補助事業は、基金団体である一般社団法人地域デザインオフィスが国から補助金の交付を受けて設置造成等した基金を活用して、東日本大震災で特に大きな被害を受けた青森、岩手、宮城、福島、茨城各県の津波により浸水した地域等の産業復興を加速するために、これらの地域に該当する100市町村において工場、物流施設等を新設し又は増設する企業に対して、その経費の一部を補助するものである。同事業の実施に当たり、同法人は、公募、審査、採択、補助金の交付等の業務をみずほ情報総研株式会社に委託して行っている。ふくしま立地支援事業は、基金団体である福島県が国から補助金の交付を受けて設置造成等した基金を活用して、県内企業の生産拡大及び継続的な雇用創出を図り、同県の早急な地域経済の復興再生に寄与するために、同県内において工場、物流施設等を新設し又は増設する企業に対して、その経費の一部を補助するものである。また、両事業共に新たに地元からの雇用を確保することなどが要件とされている。

集中復興期間に、津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金2090億円、地域経済産業復興立地推進事業費補助金2102億余円がそれぞれ国から基金団体に交付され、27年度末現在の基金の取崩額は、津波・原子力災害立地補助事業に係る基金が111億余円(基金事業執行率5.3%)、ふくしま立地支援事業に係る基金が1301億余円(基金事業執行率61.9%)となっている。

集中復興期間の採択、交付決定等の状況をみると、図表6-42のとおり、27年度末現在、津波・原子力災害立地補助事業は、採択件数512件、採択額1997億余円、交付決定件数200件、交付決定額868億余円となっていて、企業が立地される市町村数及び新規地元雇用者数のそれぞれの見込みは、69市町村、6,359人となっている。また、ふくしま立地支援事業は、採択件数446件、採択額3142億余円、交付決定件数338件、交付決定額1300億余円となっていて、企業が立地される市町村数及び新規地元雇用者数のそれぞれの見込みは、福島県の管内47市町村、4,394人となっている。

図表6-42 復興関連基金事業による企業立地支援の採択等の状況(平成27年度末現在)

(単位:市町村、件、百万円、%、人)
事業名 県名 対象市町村数 採択の状況 交付決定の状況 新規地元雇用者数
(見込み)
採択事業者立地予定市町村数 採択件数 採択額 交付決定件数 交付決定額 採択額に対する割合
津波・原子力災害立地補助事業 岩手県 12 8 37 13,283 14 8,787 66.1 513
宮城県 15 14 161 65,962 58 23,839 36.1 2,054
福島県 59 36 248 103,204 94 46,811 45.3 2,820
その他 14 11 66 17,331 34 7,372 42.5 972
100 69 512 199,782 200 86,810 43.4 6,359
ふくしま立地支援事業 福島県 59 47 446 314,245 338 130,059 41.3 4,394
合計 100 82 958 514,027 538 216,870 42.1 10,753
(注)
対象市町村数及び採択事業者立地予定市町村数の合計は、純計である。

両事業を合わせた採択事業者数、完了事業者数、辞退事業者数の状況をみると、図表6-43のとおり、採択事業者数958事業者、完了事業者407事業者、採択事業者数に対する完了事業者数の割合(以下「完了率」という。)は42.4%となっているが、一方で、辞退事業者数は232事業者、採択事業者数に対する辞退事業者数の割合(以下「辞退率」という。)は24.2%となっている。

また、沿岸31市町村のうち26市町で津波・原子力災害立地補助事業又はふくしま立地支援事業が実施されている。26市町計の採択事業者数は958事業者のうち375事業者と約4割となっており、このうち113事業者が事業を完了(完了率30.1%)している。辞退率は、福島県の4市町全てが20%以下となっているが、岩手県で8市町のうち3市町、宮城県で14市町のうち6市町が50%を超えている。また、辞退事業者が予定していた新規地元雇用者数は2,738人であり、これらの雇用については多くが実現されなかった状況となっている。

経済産業省によれば、多くの辞退者が生じている理由について、工場等を新増設する場合、計画を立てる時点(応募申請時)から計画実施の決定時点(交付申請時)までの間に、用地の確保や資金計画を含めた新規投資のための事業環境の調整等が必要であるが、事業費の高騰等の被災地を取り巻く事業環境の変化があったり、予定していた事業内容の見直しが発生したりしたことなどにより、応募申請時の計画を断念せざるを得なかったことなどによるとしている。また、被災地における人員不足により雇用要件の達成が困難であるとする辞退理由もあることから、人材のミスマッチを解消するために、被災地での雇用セミナー等を行い、人員確保に向けた取組も引き続き実施するとしている。

図表6-43 津波・原子力災害立地補助事業及びふくしま立地支援事業における事業者の採択、完了及び辞退の状況(平成27年度末現在)

(単位:事業者、%)
県名 市町村名等区分 採択事業者数 完了事業者数   辞退事業者数  
完了率 辞退率
A B B/A C C/A
岩手県
(8市町)
洋野町 4 1 25.0 3 75.0
久慈市 6 1 16.6 3 50.0
岩泉町 1
宮古市 7 1 14.2 5 71.4
山田町 2 1 50.0
大槌町 4 3 75.0
釜石市 8 1 12.5 3 37.5
大船渡市 5 1 20.0 2 40.0
37 6 16.2 19 51.3
宮城県
(14市町)
気仙沼市 11 8 72.7
南三陸町 2 1 50.0
石巻市 24 3 12.5 13 54.1
女川町 3 1 33.3
東松島市 8 4 50.0
利府町 4 1 25.0 3 75.0
塩竈市 12 1 8.3 4 33.3
七ヶ浜町 1
多賀城市 13 2 15.3 6 46.1
仙台市 43 9 20.9 22 51.1
名取市 18 6 33.3 9 50.0
岩沼市 11 1 9.0 6 54.5
亘理町 7 1 14.2 4 57.1
山元町 4 2 50.0
161 26 16.1 81 50.3
福島県
(49市町村)
沿岸市町村(6市町) 241 104 43.1 45 18.6
  新地町 7 1 14.2
相馬市 19 9 47.3 3 15.7
広野町 16 5 31.2 3 18.7
いわき市 135 67 49.6 26 19.2
4市町以外の沿岸市町村
(2市町)
64 23 35.9 12 18.7
内陸市町村(43市町村) 453 263 58.0 64 14.1
694 367 52.8 109 15.7
沿岸31市町村のうち事業が実施されている26市町計 375 113 30.1 133 35.4
東北3県以外の市町村(11市町) 66 8 12.1 23 34.8
合計(82市町村) 958 407 42.4 232 24.2
(エ) 観光の復興状況

観光について、復興基本方針では、風評被害防止のための情報発信や観光キャンペーンの強化、外国人観光客の受入環境の整備等を効果的・集中的に行い、国内外の旅行需要を回復、喚起するとしている。また、産業復興創造戦略では、復興まちづくりの過程での観光拠点の整備を支援するとともに、被災地域の優れた観光資源、東北の豊かな地域資源を積極的に活用しながら、観光地の魅力の向上を図るとし、地域と国内外の観光客や旅行会社等との交流を通じ、周辺や大都市圏、国内外からの観光客の誘客を促進するとしている。そして、復興庁及び国土交通省は、東北地方の観光復興対策を推進するため、被災地への専門家派遣や旅行商品の企画・販売等に係る支援として集中復興期間に約40億円を措置している。

沿岸31市町村の観光誘客を目的とした大規模な祭り、催事等(以下「観光イベント」という。)について、東日本大震災の影響、集客等の状況をみると、図表6-44のとおり、東日本大震災前に実施していた67件のうち43件が震災の影響で取りやめとなっており、27年度末までに31件が再開されたものの、12件はいまだ再開に至っていない。また、東日本大震災以後に復興に関するものとして実施されている新しい観光イベントは33件あり、このうち29件は27年度末現在、定期的に継続して実施されている。そして、27年度末現在で実施されている観光イベントは、震災の影響がなかったもの24件、再開されたもの31件及び定期的に実施されている新しいもの29件を合わせて84件となっている。

市町村によれば、東日本大震災前に実施されていた観光イベントを再開できない理由として、開催のために利用していた場所や施設等が、津波により消失したり、復旧・復興事業を実施していたりして利用できないこと、沿岸部での開催に当たり安全対策に十分な措置を講ずる必要があることなどを挙げている。

また、集客数について、25年度が約764万人、27年度が約829万人となっていて、25年度から27年度までの3か年度の間で20市町村において集客数が増加したとしている。

図表6-44 観光イベントの状況(平成27年度末現在)

(単位:件、千人)
県名
(観光イベントが実施されている市町村数)
東日本大震災前に実施されていた観光イベントの状況 東日本大震災後に実施された新しい観光イベントの状況 集客数
    平成25年度 26年度 27年度 集客数が増加した市町村数
観光イベント数 震災の影響 震災で取りやめた43件の再開の状況 観光イベント数 定期的に実施されている 特別に実施された
影響はなかった 取りやめた 再開された 再開に至っていない
岩手県(12市町村) 25 7 18 13 5 11 11 367 405 380 8
宮城県(15市町) 35 13 22 16 6 16 13 3 7,112 6,927 7,648 10
  仙台市を除く14市町 32 11 21 15 6 15 12 3 1,022 1,117 1,238 9
福島県(4市町) 7 4 3 2 1 6 5 1 160 233 267 2
計(31市町村) 67 24 43 31 12 33 29 4 7,641 7,566 8,296 20
(オ) 産業の回復の状況

集中復興期間において、東北3県では、各種産業に係る施設等の復旧・復興、事業者への資金繰り支援、企業立地支援等が実施されてきた。各種産業の回復の状況は、総務省及び経済産業省が公表している「経済センサス」や農林水産省が公表している「生産農業所得統計」等の各種統計調査により示されるほか、東北3県及び管内各市町村は、それぞれ被災事業者等へのアンケート調査、商工会議所、漁業協同組合等の調査報告等により産業の回復の状況を分析している。

そこで、地域経済活動の再生に係る復旧・復興事業の成果として、建設業、観光業、製造業、農業、水産業及び商業・サービス業の6業種に区分して、沿岸31市町村が、それぞれの産業の回復の状況についてどのように認識しているか調査した。なお、市町村によっては、対象とした6業種の一部について、当該市町村では主要な産業ではないこと、復旧・復興事業が進捗中であり把握する段階にないことなどの理由から状況を把握していないところがある。

産業の回復の状況に関する沿岸31市町村の認識は、図表6-45のとおりとなっている。地域内の産業経済は全体的に回復したとしている市町村は、沿岸31市町村のうち21市町村となっている。業種ごとにみると、震災前の水準に回復したとする市町村数は、建設業では19市町村、観光業では16市町村と沿岸31市町村の半数以上を占めるが、農業、水産業ではそれぞれ8市町村、商業・サービス業では7市町となっている。また、震災前の水準に回復していないとする市町村数は、水産業では19市町村、農業では18市町村となっている。

より詳細にみると、建設業では、状況を把握している19市町村全てが復旧・復興事業に関連する工事の受注増加等により震災前の水準に回復したとしている。また、観光業では、状況を把握している27市町村のうち震災前の水準に回復したとする市町村が16市町村ある一方、震災前の水準に回復していないとする市町村も11市町村ある。これら11市町村は、震災前の水準に回復していない理由について、復旧・復興の進捗の度合いにより観光イベントを開催できない状況にあることなどによるとしている。製造業では、状況を把握している24市町村のうち震災前の水準に回復したとする市町村が15市町村、震災前の水準に回復していないとする市町村が9市町となっている。震災前の水準に回復したとする15市町村は、製造業関連の企業立地が進んだことなどを回復の要因としている。

図表6-45 沿岸31市町村における産業の回復の状況に関する認識(平成27年度末現在)

(単位:市町村)
県名
(対象市町村数)
地域内の産業経済は全体的に回復したとしている市町村数  業種別区分  
業種別の回復の状況を把握している市町村数   業種別の回復の状況を把握していない市町村数
震災前の水準に回復した 震災前の水準に回復していない
岩手県
(12市町村)
9 建設業 9 9 3
観光業 10 8 2 2
製造業 10 8 2 2
農業 11 4 7 1
水産業 12 2 10
商業・サービス業 8 8 4
宮城県
(15市町)
8 建設業 7 7 8
観光業 15 7 8
製造業 11 5 6 4
農業 11 4 7 4
水産業 12 6 6 3
商業・サービス業 9 4 5 6
福島県
(4市町)
4 建設業 3 3 1
観光業 2 1 1 2
製造業 3 2 1 1
農業 4 4
水産業 3 3 1
商業・サービス業 3 3 1

(31市町村)
21 建設業 19 19 12
観光業 27 16 11 4
製造業 24 15 9 7
農業 26 8 18 5
水産業 27 8 19 4
商業・サービス業 20 7 13 11

震災前の水準に回復していないとする市町村がある5業種(観光業、製造業、農業、水産業及び商業・サービス業)について、市町村別の回復の状況をみると、図表6-46のとおり、5業種のうち4業種が回復していないとする市町村が4市町、3業種が回復していないとする市町村が12市町村となっている。県別では、岩手県12市町村のうち水産業で10市町村、商業・サービス業で8市町村が、宮城県15市町のうち観光業で8市町、農業で7市町が、福島県4市町のうち農業で全ての市町が回復していないとしている。

図表6-46 東日本大震災前の水準に回復していないとする産業の業種別・市町村別の状況(平成27年度末現在)

(単位:市町村)
県名
(対象市町村数)
市町村名 東日本大震災前の水準に回復していないとする業種数 業種(○印は、東日本大震災前の水準に回復していないとする市町村)
0業種 1業種 2業種 3業種 4業種 観光業 製造業 農業 水産業 商業・サービス業
岩手県
(12市町村)
洋野町
久慈市
野田村
普代村
田野畑村
岩泉町
宮古市
山田町
大槌町
釜石市
大船渡市
陸前高田市
市町村数 2 2 7 1 2 2 7 10 8
宮城県
(15市町)
気仙沼市
南三陸町
石巻市
女川町
東松島市
松島町
利府町
塩竈市
七ヶ浜町
多賀城市
仙台市
名取市
岩沼市
亘理町
山元町
市町数 7 1 5 2 8 6 7 6 5
福島県
(4市町)
新地町
相馬市
広野町
いわき市
市町数 1 2 1 1 1 4 3
市町村数計(31市町村) 2 8 5 12 4 11 9 18 19 13
オ まとめ

復興基本方針に基づく災害に強い地域づくり、地域における暮らしの再生、地域経済活動の再生等の復興施策の下に、被災した地方公共団体等は、集中復興期間において、津波防災、住宅の整備、産業施設、企業立地等に関する復旧・復興事業を実施してきた。

災害に強い地域づくりに関して、国、地方公共団体等は、ハード・ソフトの施策を組み合わせた「多重防御」による「津波防災まちづくり」を推進しており、ハード施策として、頻度の高い津波を想定した防潮堤等を整備するとともに、その背後地には、地盤のかさ上げなどにより安全な宅地、産業用地を整備し、また、ソフト施策として、ハード施策では対応できない最大クラスの津波を想定して、津波情報等の収集伝達手段の確保を図るとともに、避難路、避難施設等を整備することとしている。そして、集中復興期間におけるハード施策の要である防潮堤の完成率は15.1%であり、復興土地区画整理事業におけるかさ上げの整備率も22.3%にとどまっている。このような状況において、住民等を避難させるためのソフト施策が特に重要なものとなるが、まちづくりに関する復興事業を実施中であることなどから津波避難計画が策定されていなかったり、避難所の安全性や備蓄物資の内容が十分ではなかったりする市町村が見受けられた。

ハード施策において、防潮堤等を整備する過程で計画、設計、工法等を変更する必要が生じたことから、事業費の増加や完成(予定)年度の延長が生じており、ソフト施策において、避難所の安全性の確保や備蓄物資の拡充等には費用面の負担等が生じたことから、国は、被災した地方公共団体が行うこれらの事業等について、経済性及び効率性にも十分配慮して、津波災害からの防御を向上させるための施策に関して引き続き情報提供、助言等をしていく必要がある。

地域における暮らしの再生に関して、集中復興期間における住宅の供給等に関する復旧・復興事業についてみると、住まいの復興に係る4事業の完成率は、災害公営住宅整備事業等56.6%、防災集団移転促進事業73.3%、漁業集落防災機能強化事業55.2%、都市再生区画整理事業16.3%となっている。これらの事業の実施に当たって、被災者等から入居、分譲等に係る意向調査を行い計画戸数等を決定しているが、災害公営住宅で入居者が未定となっている率が5.5%、防災集団移転促進事業及び漁業集落防災機能強化事業で分譲等未定で空き区画となっている率がそれぞれ10.9%、6.8%となっている。

国は、これら住宅等の整備後において生じている空室及び空き区画を可能な限り解消するための対策を各事業主体に示しているが、災害公営住宅整備事業等において、各事業主体が対策を講じてもなお空室が解消されないことが見込まれ、災害発生から3年を待たずして早期に当該災害公営住宅を有効活用しようとする場合には、補助率の差分の国費相当額を国庫に納付することにより一般向け公営住宅としての貸与等を行うことを可能とするなど、国土交通省においてその対策について検討する必要がある。

地域経済活動の再生に関して、経営活動に係る各種施設の復旧が着実に進んでいる。しかし、沿岸市町村の基幹産業である農水産業については、漁業集落の再建、防潮堤の復旧等が遅れていることなどから、一部の地方公共団体では施設の完成率が低くなっている。集中復興期間における企業立地支援による復旧・復興の状況について、958事業者が採択されている一方で232事業者が辞退しており、多くの雇用が実現されなかった。また、被災した市町村の産業の回復の状況について、多くの市町村が震災前の水準に達していないと認識している業種も見受けられた。

国は、地域経済活動の再生について、各施設等の復旧・復興のほか、被災地の防災性や住みやすさ、被災地域における企業活動の利点等に関する情報を収集し、提供するなどして、被災した地方公共団体における経済活動の活性化に取り組むことが求められる。

集中復興期間に実施した復旧・復興事業において、各種公共施設の復旧・復興、被災者に対する住宅及び宅地の供給、産業への支援等に関して、既存制度の枠組みの活用や拡充のほか、復興交付金事業や民間事業者の施設復旧に係る補助事業等が創設された。これらの支援施策等を実施する過程において、地域住民、関係機関、他事業等との調整や想定外の現場条件の確認等による計画、設計の変更等の新たな課題が生ずることにより、その成果がいまだ十分に発揮されていないものも見受けられた。

国は、復興・創生期間において、被災した地方公共団体が実施する復旧・復興事業の実施過程で生じた課題の解消に向けて助言するなど、その成果が十分に発揮されるための取組を引き続き進めていくことが求められる。

(4) 原子力災害からの復興再生

国は、復興基本方針において、原子力災害からの復興については、責任を持って再生及び復興に取り組むこととして、福島基本方針により、原子力災害からの福島の復興再生を国政の最重要課題と位置付けて、放射性物質の除去、安全対策・健康管理対策等の施策を継続的に講じてきた。

また、国は、「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」(平成25年12月閣議決定・原子力災害対策本部決定。以下「福島復興の加速指針」という。)を策定して、早期帰還支援と新生活支援の両面で福島を支え、原子力災害からの復興再生に向けて全力を挙げて取り組むこととしている。そして、国は、27年6月に福島復興の加速指針を改訂して、避難指示解除準備区域及び居住制限区域について、遅くとも福島第一原発の事故から6年後(29年3月)までに避難指示を解除できるよう、環境整備を加速するなどとした。

放射性物質による汚染に対する復興事業の実施に当たっては、放射性物質汚染対処特措法に基づき、環境大臣は、福島県内の11市町村(注23)の地域で除染特別地域(注24)を指定するとともに、28年3月末現在、97市町村の地域で汚染状況重点調査地域(注25)を指定している。そして、福島第一原発から放出された放射性物質により汚染された土壌等の除去、当該汚染の拡散の防止その他の措置(以下「除染等の措置」という。)について、除染特別地域においては国が自ら実施し、汚染状況重点調査地域においては国、県、市町村等がそれぞれ管理する土地等について実施することとなっている。

また、環境大臣は、放射性物質汚染対処特措法に基づき、11市町村の除染特別地域を汚染廃棄物対策地域(以下「対策地域」という。)に指定している。そして、対策地域内においては、国が自ら、災害廃棄物、被災家屋等解体ごみ及び片付けごみ(以下、これらを合わせて「災害廃棄物等」という。)や除染等の措置に伴い発生した廃棄物(以下、災害廃棄物等と合わせて「対策地域内廃棄物」という。)の収集、運搬、保管及び処分を実施することとなっている。

このほか、国は、市町村等の協力を得ながら、対策地域内廃棄物等の処理のために必要な仮置場、仮設焼却施設、中間貯蔵施設等の整備やその安全性の確保について、責任を持って行うこととなっている。

(注23)
11市町村  田村、南相馬両市、伊達郡川俣、双葉郡楢葉、富岡、大熊、双葉、浪江各町、双葉郡川内、葛尾、相馬郡飯舘各村
(注24)
除染特別地域  除染等の措置並びに除去土壌等(除染等の措置に伴い生じた土壌や廃棄物をいう。以下本文において同じ。)の収集、運搬、保管及び処分を実施する必要があるとして環境大臣が指定した双葉郡楢葉、富岡、大熊、双葉、浪江各町、双葉郡葛尾、相馬郡飯舘両村の全域並びに田村、南相馬両市、伊達郡川俣町及び双葉郡川内村の一部地域
(注25)
汚染状況重点調査地域  福島第一原発から放出された放射性物質による環境の汚染状態が1時間当たり0.23μSv以上の区域が存在するため重点的に調査測定をすることが必要な地域であるとして環境大臣が指定した地域
ア 原子力災害関係の事業の執行状況
(ア) 原子力災害関係経費の執行状況

集中復興期間における原子力災害関係経費の支出済額は、計3兆1334億余円と多額に上っており、その事業別の内訳をみると、図表7-1のとおり、特措法3事業に係る支出済額が1兆8227億余円と全体の58.1%を占めていて、その大部分は汚染土壌等の除染等の費用の1兆6337億余円となっている。また、「「除染に関する緊急実施基本方針」の迅速な実施について」(平成23年8月閣議決定)により、放射性物質汚染対処特措法が施行される前から緊急的に実施されていた内閣府所管の「東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質の除染事業等」(以下「緊急実施除染事業」という。)があり、2151億余円(除染等以外の費用を含んだ額)が支出されている。

上記のほか、放射性物質汚染対処特措法が施行される前から緊急的に実施されている事業として、23年度第2次補正予算における内閣府所管の福島県特別緊急除染事業と文部科学省及び厚生労働省所管の「福島県外も含めた校庭等の放射線低減事業」がある(以下、これらを合わせて「放射線量緊急低減対策事業等」という。)。その事業内容は、主に学校、公園、保育所等の子どもが生活する場における除染等のほか、学校施設等における空調設備等の設置であり、支出済額は計209億余円(福島県特別緊急除染事業については、除染等以外の費用を含んだ額)となっている。

これらの除染等による放射線量の低減対策に係る事業全体の支出は計1兆8698億余円に上り、原子力災害関係経費の59.6%を占めている。このほか、避難解除区域への帰還支援や帰還環境整備等を行う福島復興事業に係る支出済額は計2374億余円と原子力災害関係経費の7.5%を占めている(福島復興事業の内訳については2008_1_1_2_3リンク参照)。

図表7-1 集中復興期間における原子力災害関係経費の支出済額の事業別内訳の状況

図表7-1 集中復興期間における原子力災害関係経費の支出済額の事業別内訳の状況 画像

(イ) 原子力災害関係経費以外の経費で実施している放射線量の低減対策に係る事業の執行状況

原子力災害関係経費で実施している除染等のほかに、地方公共団体は、放射線量の低減対策に係る事業として表土の改善等を実施している。これは、放射性物質汚染対処特措法に基づく除染等の措置に該当しないため補助事業の対象とならないことから、地方公共団体が単独事業により実施しているもので、その事業費の一部は、震災復興特別交付税の対象となっている。集中復興期間において、放射線量の低減対策に係る事業費に対して算定された震災復興特別交付税の総額は、図表7-2のとおり、7県138市町村の計54億余円であり、そのうち岩手県が15億余円、千葉県が14億余円、栃木県が12億余円となっていて、3県で全体の77.7%を占めている。

図表7-2 集中復興期間において実施された放射線量の低減対策に係る事業費に対して算定された震災復興特別交付税の状況

(単位:百万円)
事業主体 平成23年度 24年度 25年度 26年度 27年度
青森県 - - - - - -
3市町 1 - - - - 1
1 - - - - 1
岩手県 22 1,366 - - - 1,389
16市町村 0 141 2 - - 143
22 1,507 2 - - 1,533
宮城県 1 62 3 3 1 72
18市町 54 319 12 50 1 438
55 382 15 54 2 511
福島県 38 - - - - 38
32市町村 44 317 19 2 - 383
83 317 19 2 - 422
茨城県 3 - - - - 3
35市町村 119 107 35 6 0 269
122 107 35 6 0 272
栃木県 0 - - - - 0
6市町 7 20 0 1,006 253 1,288
8 20 0 1,006 253 1,288
埼玉県 - - - - - -
1市 2 0 - - - 2
2 0 - - - 2
千葉県 - 34 4 8 - 47
26市町 509 596 253 39 2 1,400
509 631 257 47 2 1,447
新潟県 8 - - - - 8
1市 0 - - - - 0
8 - - - - 8
7県 74 1,464 7 12 1 1,559
138市町村 739 1,503 323 1,105 256 3,928
814 2,967 330 1,117 257 5,488

また、23年11月に震災復興特別交付税が創設されるまでの間に上記放射線量の低減対策に係る事業を実施した場合等の事業費は、特別交付税の算定対象となっており、その総額は、集中復興期間において6府県177市町村の計14億余円となっている。

このほか、農林水産省所管の東日本大震災農業生産対策交付金により放射性物質の吸収抑制対策が実施されている。除染等の措置が放射性物質により汚染された土壌等の除去等を行うのに対して、この対策の目的は、土壌等に蓄積した放射性物質の農作物等への移行を低減させることであり、原則として放射線量が0.23μSv/h未満の地域であって、かつ、生産される農作物等の放射能濃度が100Bq(注26)/kgを超える又は超えるおそれがある地域を対象として、県等が反転耕や深耕等の方法により実施している。また、この対策に係る事業費の総額は、図表7-3のとおり、集中復興期間において計61億余円となっている。

(注26)
Bq(ベクレル)  1秒間に崩壊する原子核の数。放射性物質の量を表す場合に用いられる単位

図表7-3 集中復興期間において実施された東日本大震災農業生産対策交付金による放射性物質の吸収抑制対策の支出済額の状況

(単位:百万円)
県名 平成23年度 24年度 25年度 26年度 27年度
岩手県 - 125 2,137 100 114 2,477
宮城県 139 298 186 410 421 1,455
福島県 171 595 - - - 766
茨城県 - 0 - - - 0
栃木県 27 238 398 412 388 1,464
群馬県 - 20 1 0 - 22
337 1,278 2,724 923 923 6,187

このように、放射性物質汚染対処特措法に基づかない放射線量の低減対策に係る事業は、特措法3事業の汚染土壌等の除染等と比較すると規模は大きくないものの、各地方公共団体において実施されており、福島第一原発の事故による影響の状況により多様な対策が必要になっている。

イ 特措法3事業の実施状況

福島県内の除染特別地域及び汚染状況重点調査地域や、福島県以外の7県管内の汚染状況重点調査地域において、特措法3事業が計画に照らして適時に実施されているかを把握するために、汚染土壌等の除染等の実施状況や、汚染廃棄物処理事業における廃棄物の処理状況等について検査した。また、汚染土壌等の除染等や汚染廃棄物処理事業の実施に伴って大量に発生することが見込まれる除去土壌等や放射能濃度が10万Bq/kgを超える対策地域内廃棄物を安全かつ集中的に管理及び保管する上で欠くことのできない中間貯蔵施設事業の実施状況についても検査した。

(ア) 汚染土壌等の除染等の実施状況

a 除染特別地域における汚染土壌等の除染等の実施状況

国は、放射性物質汚染対処特措法に基づき、除染特別地域について汚染土壌等の除染等を総合的かつ計画的に講ずるための特別地域内除染実施計画(以下「特別地域内計画」という。)を策定するに当たり、23年11月に「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法に基づく基本方針」(平成23年11月閣議決定)を策定して、放射線量が特に高い地域を除き一律に25年度末までに除染等の措置を行い、発生する除去土壌等を仮置場に搬入するなどとした。

その後、環境省は、25年9月に公表した「除染の進捗状況についての総点検」において、一律に25年度末までに除染等の措置を行い、発生する除去土壌等を仮置場に搬入するとしていた従前の目標を改めて、個々の市町村の状況に応じて、復興の動きと連動した除染等の措置を推進することとした。そして、環境大臣は、同年12月に富岡町等6市町村の特別地域内計画を改定し、26年7月に双葉町の特別地域内計画を策定して、市町村の状況に応じた除染等の措置の終了時期を定めて、特に放射線量の高い帰還困難区域(注27)を除いて29年3月までに除染等の措置を終了する計画に改めた。

27年度末現在の除染等の措置の終了時期をみると、図表7-4のとおり、楢葉町等7市町村では28年3月までに終了しており、飯舘村等4市町村では29年3月までに終了するよう実施しており、集中復興期間において除染特別地域で実施された汚染土壌等の除染等に係る支出済額は計7850億余円となっている。飯舘村等4市町村のうち、富岡町では特別地域内計画で計画している除染対象における除染等の措置をほぼ終了しているのに対して、浪江町等3市町村では特別地域内計画で計画している除染対象に対して実際に除染等の措置を実施したものの割合(以下「実施率」という。)が比較的低いが、これは宅地の件数や農地の面積等の対象数が他の市町村と比較して多いことなどによる。また、宅地に比べて他の除染対象の実施率が低い理由は、住民の生活の場である宅地を先行して除染等の措置を進めてきたことなどによるものである。なお、環境省によれば、上記の4市町村では、29年3月末までに予定どおり除染等の措置が終了する見込みであるとしている。

そして、特に放射線量が高いとして上記の計画から除かれた帰還困難区域について、原子力災害対策本部及び復興推進会議は、28年8月に「帰還困難区域の取扱いに関する考え方」を決定して、5年を目途に、放射線量の低下状況も踏まえて避難指示を解除し、居住を可能とすることを目指す「復興拠点」を各市町村の実情に応じて適切な範囲で設定し、除染等とインフラ整備を一体的かつ効率的に行うなどとしている。

(注27)
帰還困難区域  避難指示区域のうち、平成24年3月時点での空間線量率から推定された年間積算線量が50mSvを超えていて、事故後6年間を経過してもなお年間積算線量が20mSvを下回らないおそれがある地域

図表7-4 除染特別地域における除染等の措置の実施状況等(平成27年度末現在)

市町村名 楢葉町 富岡町 大熊町 双葉町 浪江町 葛尾村 飯舘村 田村市 南相馬市 川俣町 川内村
宅地 実施率(%) 100 100 100 100 48 100 100 100 88 100 100
対象数 (宅地の件数) 2,489 5,972 176 97 455 1,991 143 4,438 357 161
(関係人の数) 5,940
農地 実施率(%) 100 98 100 100 36 100 54 100 33 99 100
対象数(千m2 8,107 6,665 1,665 1,035 18,504 4,712 16,607 1,431 30,589 4,777 1,331
森林
(生活圏)
実施率(%) 100 100 100 100 74 100 85 100 57 100 100
対象数(千m2 4,507 4,621 1,647 62 3,781 6,343 12,392 1,922 11,592 5,032 2,010
道路 実施率(%) 100 99 100 100 68 100 47 100 39 100 100
対象数(千m2 1,675 1,658 307 84 2,402 1,064 2,354 295 3,191 685 380
特別地域内計画における終了予定時期(終了しているものについては実際の終了時期) 平成26年3月終了 29年3月(宅地は終了) 26年3月終了 28年3月終了 29年3月 27年12月終了 29年3月(宅地は終了) 25年6月終了 29年3月 27年12月終了 26年3月終了
支出済額(億円) 7850
注(1)
網掛けは、特別地域内計画に基づく除染等の措置が終了した市町村を示す。
注(2)
実施率は、当該市町村において除染を実施できる条件が整った面積等に対し、一連の除染行為(除草、堆積物除去、洗浄等)が終了した面積等が占める割合で、いずれの面積等も今後の精査によって変わり得る。実施率の算出には、原則として帰還困難区域は含まない。
注(3)
支出済額は、平成23年度から27年度までに環境省が除染関連予算(技術実証、普及啓発、調査等の経費等を含む。)として支出したもののうち、市町村除染に係る経費を除いたものである。
注(4)
川俣町の農地の実施率が99%で終了としているのは、平成27年9月の豪雨被害で被災した農地の一部を除いているためである。

27年度末現在の除染特別地域における仮置場等の箇所数及び保管量は図表7-5のとおり、264か所、596万m3となっている。

仮置場等に保管されている除去土壌等は、特別地域内計画において、仮置場等に一時的に保管し、その後、逐次、中間貯蔵施設等に搬入することとしているが、27年度末現在、仮置場等から搬出した保管量は44万m3であり、仮置場等の保管量の7.4%となっている(中間貯蔵施設事業の実施状況については2008_1_2_4_2_3リンク参照)。

図表7-5 除染特別地域における仮置場等の箇所数、保管量及び搬出済保管量の状況(平成27年度末現在)

市町村名 楢葉町 富岡町 大熊町 双葉町 浪江町 葛尾村 飯舘村 田村市 南相馬市 川俣町 川内村 合計
仮置場等の箇所数 23 12 15 8 29 31 87 6 12 39 2 264
保管量(m3 583,741 1,156,433 225,335 118,657 454,312 443,277 1,679,198 36,909 635,901 540,097 93,748 5,967,608
搬出済保管量(m3 1,008 207,122 1,002 806 107,360 114,873 9,679 617 1,600 444,067
  うち仮設焼却施設へ 206,119 105,920 113,873 8,679 434,591
うち中間貯蔵施設へ 1,008 1,003 1,002 806 1,440 1,000 1,000 617 1,600 9,476
除染実施対象面積(ha) 2,100 2,800 400 200 3,300 1,700 5,600 500 6,100 1,600 500 24,800
注(1)
仮置場等には、一時保管所、仮仮置場等を含む。
注(2)
保管量及び搬出済保管量は、保管袋数を体積に換算している。なお、1袋当たりの体積は、おおむね1m3である。
注(3)
仮置場等からの搬出時に減容化した保管物等については複数個を1袋に集約して搬出することがあるため、中間貯蔵施設等が受け入れる保管量とは必ずしも一致しない。

b 汚染状況重点調査地域における汚染土壌等の除染等の実施状況

27年度末現在、福島県管内で汚染状況重点調査地域に指定された39市町村のうち36市町村が、放射性物質汚染対処特措法に基づき除染実施計画を策定して、同計画に基づき除染等の措置を実施しており、集中復興期間において実施された汚染土壌等の除染等に係る支出済額は、図表7-6のとおり、計8081億余円となっている。一方、同年度末現在、福島県以外の7県(注28)管内で汚染状況重点調査地域に指定された58市町村のうち57市町村が、放射性物質汚染対処特措法に基づき除染実施計画を策定して、同計画に基づき除染等の措置を実施しており、集中復興期間において実施された汚染土壌等の除染等に係る支出済額は計394億余円となっている。

福島県管内における汚染土壌等の除染等のうち、27年度末現在、除染等の措置の実施状況を住宅、公共施設等、道路、農地・牧草地及び森林(生活圏)の除染対象別にみると、図表7-6のとおり、実施率は、住宅が80.9%、公共施設等が91.1%、農地・牧草地が93.7%と高くなっている。これは、住民の生活に密着した施設等を先行して除染等の措置を実施したことによるものである。一方、道路が50.2%、森林(生活圏)が52.7%と低くなっているが、これは、住宅等の除染を先行して実施したことや仮置場の確保等が課題となっていることなどによるものである。また、地域別にみると、会津地域は実施率が100%となり、県北地域は道路及び森林(生活圏)を除く除染対象で80%以上進捗しているのに対して、県中、県南、いわきの各地域では実施率が50%以下の除染対象も見受けられる。なお、環境省によれば、28年11月末現在の実施率は、住宅、公共施設等及び農地・牧草地が約9割に達するなどしており、29年3月末にはおおむね完了する見込みであるとしている。

また、27年度末現在の福島県管内の汚染状況重点調査地域における除去土壌等の保管箇所及び保管量は、除染した現場と仮置場の合計で142,161か所、518万m3であるが、それに対して、除去土壌等の仮置場等から中間貯蔵施設等への輸送量は、現状ではまだ僅かな状況である。除去土壌等の中間貯蔵施設等への輸送が進まない場合、除染等の措置の進捗によって除去土壌等の仮置場や住宅、学校等の生活施設における保管量が増大して、地元住民の生活への更なる負担の増加が懸念される。

(注28)
7県  岩手、宮城、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉各県

図表7-6 汚染状況重点調査地域における除染等の措置の実施状況等(平成27年度末現在)

県名 地域名 住宅(戸数) 公共施設等(施設数) 道路(km)  
予定数 実績数 実施率(%) 予定数 実績数 実施率(%) 予定数 実績数 実施率(%)
A B B/A A B B/A A B B/A
福島県   446,599 361,553 80.9 10,557 9,624 91.1 15,258 7,664 50.2
県北 158,870 147,588 92.8 5,803 5,153 88.7 4,778 3,057 63.9
県中 152,660 119,888 78.5 2,846 2,713 95.3 4,945 2,451 49.5
県南 40,000 35,090 87.7 951 933 98.1 1,533 557 36.3
会津 6,688 6,688 100.0 144 144 100.0 272 272 100.0
相双 33,414 20,858 62.4 402 270 67.1 1,321 976 73.8
いわき 54,967 31,441 57.1 411 411 100.0 2,408 349 14.5
岩手県 18,621 16,036 86.1 3,675 3,250 88.4 2,162 2,162 100.0
宮城県 10,185 9,943 97.6 681 681 100.0 465 445 95.6
茨城県 47,276 47,276 100.0 1,850 1,850 100.0 2,250 2,250 100.0
栃木県 46,176 46,100 99.8 2,650 2,300 86.7 81 81 100.0
群馬県 6,184 6,184 100.0 200 200 100.0 203 203 100.0
埼玉県 150 150 100.0 3 3 100.0
千葉県 19,160 19,160 100.0 2,491 2,491 100.0 232 232 100.0
福島県以外の7県の計 147,602 144,699 98.0 11,697 10,922 93.3 5,399 5,379 99.6
合計 594,201 506,252 85.1 22,254 20,546 92.3 20,657 13,044 63.1
 
県名 地域名 農地・牧草地(ha) 森林(生活圏)(ha) 現場保管 仮置場 支出済額(億円)
予定数 実績数 実施率(%) 予定数 実績数 実施率(%) 箇所数 保管量(m3 箇所数 保管量(m3
A B B/A A B B/A
福島県   31,173 29,228 93.7 4,559 2,404 52.7 141,340 1,856,124 821 3,332,476 8081
県北 15,704 14,750 93.9 2,875 1,610 56.0 69,777 718,276 497 1,079,561
県中 9,142 8,527 93.2 142 116 81.7 68,857 874,410 197 508,862
県南 512 512 99.9 801 210 26.2 148 164,664 34 779,297
会津 34 1,879 3 4,622
相双 5,661 5,286 93.3 732 459 62.6 122 45,083 53 827,029
いわき 152 152 100.0 7 7 100.0 2,402 51,813 37 133,105
岩手県 311 24,912 17
宮城県 80 80 100.0 210 210 100.0 684 18,142 28 78,123 67
茨城県 175 175 100.0 0 0 100.0 1,045 55,159 2 2,657 53
栃木県 1,227 1,227 100.0 83 83 100.0 21,769 147,166 2 6,044 182
群馬県 104 104 100.0 6 6 100.0 783 3,338 7 1,836 10
埼玉県 46 6,634 2 650 2
千葉県 1,628 98,032 2 70 61
福島県以外の7県の計 1,588 1,588 100.0 300 300 100.0 26,266 353,384 43 89,380 394
合計 32,761 30,816 94.0 4,859 2,705 55.6 167,606 2,209,508 864 3,421,856 8475
注(1)
保管量は小数点以下を四捨五入しているため、集計しても計欄と一致しない場合がある。
注(2)
支出済額は、平成23年度から27年度までに環境省が除染関連予算として支出したもののうち、技術実証、普及啓発、調査等の経費を除いている。
注(3)
住宅、公共施設等及び道路の実績数には、調査にて終了したものが含まれている。
注(4)
予定数には一部調整中のものも含まれている。また、「―」は予定及び実績がないことを示す。

除去土壌等の仮置場等における保管には、仮置場の造成等に必要な費用のほかに、土地の賃借料、管理費、修繕費等の維持管理費が発生する。仮置場の設置数が全体の95.0%を占める福島県管内の市町村のうち、27年9月末現在、汚染状況重点調査地域に指定されている39市町村について検査したところ、図表7-7のとおり、32市町村において集中復興期間に要した維持管理費は、計95億余円となっており、その内訳は、土地等の賃借料11億余円、管理費79億余円、修繕費2億余円、その他1億余円となっている。これらの維持管理費は、除去土壌等の中間貯蔵施設等への輸送が進み、同施設等において集中管理することにより逓減することが期待されるが、同施設等への輸送が進まない場合、長期にわたり発生し続けることになる。

図表7-7 福島県管内32市町村において設置された仮置場等の維持管理費

(単位:千円)
  土地等の賃借料 管理費 修繕費 その他
平成23年度 2,304 2,220 0 95 4,621
24年度 71,393 343,851 10,000 21,234 446,481
25年度 246,333 1,166,333 39,651 39,041 1,491,360
26年度 414,243 3,076,672 91,545 59,947 3,642,408
27年度 453,713 3,326,873 136,288 50,836 3,967,712
1,187,989 7,915,952 277,486 171,154 9,552,583

除去土壌等を仮置場に保管することにより、維持管理費が多額に発生しているものについて、事例を示すと次のとおりである。

<事例5> 除去土壌等を仮置場に保管することにより、維持管理費が多額に発生しているもの

県・市町村名 事業費 事業概要
福島県いわき市 40億6053万余円 放射線量低減対策特別緊急事業による仮置場の設置等
いわき市は、住宅、学校等の公共施設等において平成23年度から除染等を毎年度実施しており、その際に発生した除去土壌等は、27年度末現在、仮置場に搬入され保管されているものが37か所、計132,704m3(除去土壌76,942m3、可燃性廃棄物55,762m3)、地区住民の理解が得られず仮置場が確保できなかったことから除染した現場に保管されているものが2,388か所、計50,632m3(除去土壌43,211m3、可燃性廃棄物7,421m3)となっている。
そして、除去土壌等の仮置場に係る24年度から27年度までの間の設置費及び維持管理費は、表のとおり、それぞれ36億5522万余円、4億0531万余円となっており、これらの費用は放射線量低減対策特別緊急事業として国が負担している。

表 放射線量低減対策特別緊急事業による仮置場の設置費及び維持管理費

(単位:百万円)
  24年度 25年度 26年度 27年度
設置費 3,456 3 180 14 3,655
  補償金等 0 3 10 1 15
委託費(設計等) - - 5 12 18
工事請負費(土地造成費) 3,456 - 164 - 3,620
維持管理費 0 8 99 297 405
  賃貸料 0 8 13 15 37
管理費(委託費) - - 83 280 364
その他(修繕費) - - 2 1 3
3,456 11 279 311 4,060
仮置場に係る維持管理費は、中間貯蔵施設への輸送が進むにつれて逓減することが期待されるが、搬出が完了するまでの間は毎年度発生することとなり、さらに、28年度も同市は住宅、道路等の除染等の措置の実施を予定していることから、除去土壌等の保管量が増大する見込みである。

除去土壌等を保管するための仮置場の設置箇所についてみると、公共施設、山林、水田、畑等に設置されているが、その中に市町村が定める津波の浸水区域に仮置場が設置されているものが見受けられた。このため、中間貯蔵施設が完成し除去土壌等が搬出されるまでの間、比較的頻度の高い一定程度の津波高を超える津波等の災害の発生時には保管した除去土壌等が流出し、除染等の措置による効果が減少するおそれが継続する状況となっている。上記について事例を示すと、次のとおりである。

<事例6> 除去土壌等を保管するための仮置場が津波の浸水区域に設置されていたもの

県・市町村名 事業費 事業概要
福島県新地町 1億2346万余円 放射線量低減対策特別緊急事業による仮置場の設置
新地町は、学校等の除染対象の施設に保管している除去土壌等について、現場での保管による地域住民等の負担を軽減するなどのため、中間貯蔵施設への輸送が開始されるまでの間、保管するための仮置場を、新地町谷地小屋地区において平成24年度から27年度までの間に事業費計1億2346万余円で設置するなどしていた。同町は、調査等の結果、仮置場を設置するのに適した箇所は同地区以外にはないと判断し、同地区に所在する林野庁が所有する国有林を無償で借り受けて仮置場を設置し、除去土壌等の搬入を開始していた。
しかし、同地区は、防潮堤の建設予定地の近辺にあり、防災緑地を造成する予定の箇所であった。そして、同地区は、同町が定める津波の浸水区域に含まれており、比較的頻度の高い一定程度の津波高を超える津波等の災害が発生した場合には、仮置場に保管した除去土壌等が流出するおそれのある状況となっている。

一方、福島県以外の7県管内における除去土壌等の保管の状況をみると、図表7-6のとおり、除染した現場26,266か所に35万m3、仮置場43か所に8.9万m3の除去土壌等がそれぞれ保管されており、現場における保管量が仮置場における保管量より多い状況となっている。

環境省は、除染等の措置の実施により発生した除去土壌等のうち、除染廃棄物については処分基準が定められており一部処分がなされているが、除去土壌については今後策定予定の基準に従って処分を実施することとなるとしている。除去土壌等の大部分は現場で保管されたままとなっており、地元住民の生活への影響が懸念される。

なお、会計検査院は、環境大臣に対して28年10月に、会計検査院法第34条の規定により、除染事業等の実施に当たり、除染仮置場の造成工事における基礎地盤の沈下を考慮した設計方法や、除染仮置場等の囲い柵の設計風速等について現地の状況を踏まえた設計基準を策定することなどにより、除去土壌等が適切に保管されるよう適宜の処置を要求し及び是正改善の処置を求めている(平成27年度決算検査報告及び別添参照)。

(イ) 汚染廃棄物処理事業の実施状況

放射性物質に汚染された廃棄物には、主に、①対策地域内廃棄物、②放射能濃度が8,000Bq/kgを超え、特別な管理が必要な程度に汚染されたものとして環境大臣が指定した廃棄物(以下「指定廃棄物」という。)、③8,000Bq/kg以下のその他の廃棄物で、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「廃棄物処理法」という。)が適用され、市町村等が処理を行うこととなっている廃棄物がある。これらの廃棄物に係る主な処理の流れは、図表7-8のとおりとなっている。福島県内においては、放射能濃度が10万Bq/kgを超える対策地域内廃棄物及び指定廃棄物は中間貯蔵施設に搬入して、一定の期間、安全かつ集中的に管理及び保管を行うこととなっており、また、10万Bq/kg以下の対策地域内廃棄物及び指定廃棄物は既存の管理型処分場で処分することとなっている。

図表7-8 対策地域内廃棄物、指定廃棄物等の主な処理の流れ

図表7-8 対策地域内廃棄物、指定廃棄物等の主な処理の流れ 画像

汚染廃棄物処理事業は、対策地域内廃棄物、指定廃棄物等の迅速な処理等を実施するものであり、集中復興期間における支出済額は計1627億余円となっている。

a 対策地域内廃棄物の処理状況

環境大臣は、24年6月に、放射性物質汚染対処特措法に基づき、双葉町を除く10市町村の対策地域内における災害廃棄物及び除染廃棄物の処理方針を定める対策地域内廃棄物処理計画(以下「処理計画」という。)を策定し、国は、沿岸部の市町については、帰還困難区域を除き、24年度内を目途に災害廃棄物を仮置場に搬入し、25年度末までに既存の管理型処分場等の処理施設等へ搬入することを目指すこととし、内陸部の市町村については、帰還困難区域を除き、要解体建物等の状況を把握した上で当該市町村と調整しつつ、25年度末までに災害廃棄物を処理施設等に搬入することを目指すこととした。このほか、除染廃棄物については、今後、除染の内容等が具体化された段階で、除染廃棄物の種類及び発生量等の予測等を行い、処理体制の整備状況等を踏まえて、処理目標を検討することとした。その後、環境省は、災害廃棄物の処理に係る調整等に時間を要して25年度末までの完了が困難な状況であるとして、25年9月に「福島県の災害廃棄物等の処理進捗状況についての総点検」を公表して、避難者の円滑な帰還を積極的に推進する観点から、避難指示解除準備区域及び居住制限区域の災害廃棄物等の処理に当たっては、帰還の妨げとなる廃棄物の処理を優先することとし、環境大臣は、同年12月に処理計画を改定して、帰還の妨げとなる廃棄物の撤去と仮置場への搬入の完了時期を双葉町を含む市町村ごとに定めて処理を実施している。

27年度末現在の対策地域内における災害廃棄物等の処理状況をみると、図表7-9のとおり、推定量(帰還困難区域を除く。)116.6万tに対して、仮置場等への搬入量は81.6万tであり、災害廃棄物等の推定量に対する仮置場等への搬入量の割合(以下「搬入実施率」という。)は70.0%となっている。また、搬入実施率が30%未満となっているのは、川俣町、大熊町及び飯舘村の3町村であるが、その主な理由は、被災家屋等の処理が他の市町村に対し比較的進んでいないためである。

なお、津波がれき及び片付けごみについてはほぼ全ての市町村において仮置場への搬入が完了している。

図表7-9 対策地域内における災害廃棄物等の仮置場等への搬入状況(平成27年度末現在)

(単位:t、%)
市町村名 災害廃棄物等の推定量 仮置場等への搬入量 搬入実施率
  A B B/A
田村市 1,600 1,600 100.0
南相馬市 430,000 388,000 90.2
川俣町 20,000 5,900 29.5
楢葉町 117,000 98,000 83.7
富岡町 132,000 89,000 67.4
川内村 10,000 8,700 87.0
大熊町 7,800 1,100 14.1
双葉町 11,000 9,400 85.4
浪江町 298,000 188,000 63.0
葛尾村 22,000 15,000 68.1
飯舘村 117,000 12,000 10.2
1,166,400 816,700 70.0
注(1)
災害廃棄物等の推定量は平成28年1月現在のものである。
注(2)
帰還困難区域の数量等は含んでいない。

b 指定廃棄物の保管状況

福島県を含む12都県に保管されている指定廃棄物の数量は、図表7-10のとおり、27年9月末に16.6万tであったものが27年度末現在17.2万tに増加している。環境省は、24年3月に策定した「指定廃棄物の今後の処理の方針」において、国は、指定廃棄物が多量に発生し保管がひっ迫している都道府県において、必要な処理施設等を確保することを目指すとした。

そして、環境省は、24年10月から28年5月までの間に、特に保管状況がひっ迫している宮城、茨城、栃木、群馬及び千葉の5県において市町村長会議を開催し、このうち宮城、栃木及び千葉の3県について長期管理施設等の詳細調査候補地を提示しているが、いまだ確保するには至っていない。

図表7-10 12都県における指定廃棄物の数量の状況

(単位:t)
都県名 岩手県 宮城県 山形県 福島県 茨城県 栃木県 群馬県
平成27年9月末現在 475 3,405 2 138,490 3,532 13,533 1,186
28年3月末現在 475 3,405 2 145,037 3,532 13,533 1,186
 
都県名 千葉県 東京都 神奈川県 新潟県 静岡県
27年9月末現在 3,690 981 2 1,017 8 166,328
28年3月末現在 3,714 981 2 1,017 8 172,899

また、環境省は、放射性物質汚染対処特措法に基づく施行規則を28年4月に改正し、指定廃棄物が8,000Bq/kg以下となっている場合、環境大臣は、一時保管者や解除後の処理責任者と協議した上で、指定を解除することができることとした。そして、指定解除後は、廃棄物処理法の処理基準等に基づき、一般廃棄物は市町村、産業廃棄物は排出事業者の処理責任の下で必要な保管・処分を行うこととし、これに対する技術的・財政的支援は環境省が行っていくこととしている。

c 8,000Bq/kg以下のその他の廃棄物の管理状況

前記のとおり、放射性物質に汚染された廃棄物のうち、廃棄物処理法が適用される8,000Bq/kg以下のその他の廃棄物については、市町村等が処理を行うこととなっている。そこで、福島第一原発の事故由来の放射性物質の影響を受けた市町村等におけるこれらの廃棄物の処理の状況について検査したところ、図表7-11のとおり、指定廃棄物に指定されていないその他の廃棄物であっても、指定廃棄物と同様の方法等により一部保管されているものが、10道県管内の市町村等において見受けられた。

農林業系廃棄物等についてみると、ほだ木・きのこ原木が8県管内で計13.7万t、牛ふん堆肥が5県管内で計7.6万tのほか、牧草が8県管内で計4.4万tとなっている。これらは飼料・肥料等として利用されていたものであるが、福島第一原発の事故由来の放射性物質に汚染されたことによって国や都道府県の指示、要請等で利用できなくなった結果、一般廃棄物等となり、市場に流通させずに保管されているものなどである。そして、これらの農林業系廃棄物等は、既存の焼却処理施設の能力が不足していることのほか、放射性物質に汚染された廃棄物の焼却処理や焼却灰の処分に対する住民の不安等から減容化が進んでおらず、一時集積所の容量も不足していることなどから、各農家等で一時保管されている状況となっている。

また、クリーンセンター等で焼却処理を行って焼却灰となった廃棄物についてみると、5県管内で計17.4万tとなっている。これは、焼却灰の放射能濃度が処理業者の受入基準を下回らないなどの理由により引き続きクリーンセンター等に保管されているものである。

図表7-11 8,000Bq/kg以下のその他の廃棄物の管理状況

(単位:t)
  農林業系廃棄物等      
道県名 稲わら 牧草 牛ふん
堆肥
ほだ木・
きのこ原木
その他 焼却灰 その他
北海道 0 0
岩手県 135 7,314 4,151 23,276 105 34,981 62 62
宮城県 378 18,589 8,449 15,765 11 43,192 268 268
福島県 800 13,000 56,900 24,900 14,700 110,300 171,527 7,326 178,853
茨城県 88 2,901 2,989 207 1 208
栃木県 4,315 3,365 45,856 1,249 54,784 1,610 885 2,495
群馬県 196 22,468 210 22,874
千葉県 459 2,374 4 2,837 694 22 716
新潟県 511 3,138 3,649
長野県 21 21
1,313 44,471 76,003 137,562 16,280 275,628 174,100 8,502 182,603
注(1)
「農林業系廃棄物等」欄は、平成27年11月末現在の数量について、環境省が各道県に確認した結果を集計している。
注(2)
「焼却灰」「その他」欄は、平成27年9月末時点で汚染状況重点調査地域に指定されている99市町村、当該市町村が所在する県及び会計検査院が28年7月に会計実地検査を行った32市町村を対象に、28年3月末現在、各市町村等が把握している数量を集計している。

上記のような状況から、放射能濃度が8,000Bq/kg以下のその他の廃棄物のうち各道県及び各市町村等で保管されているものは、農林業系廃棄物等計27.5万t、焼却灰等計18.2万tに上っており、前記27年度末現在の12都県に保管されている指定廃棄物の数量の合計17.2万tを大きく上回っている。

そして、これらの廃棄物を保管している道県市町村等では、保管のための費用を単費により支出したり、単費により支出したものを東京電力に求償したりなどしている。

農林業系廃棄物等やその他落枝、汚泥等の廃棄物について、環境省は、仮設焼却施設を設置したり、市町村等による処分が加速するよう補助金を交付したりするなどして減容化等を進めているが、前記のとおり、焼却灰を含めた放射能濃度が8,000Bq/kg以下のその他の廃棄物が各道県管内において大量に保管されている状況は、道県市町村にとって大きな負担となっている。

(ウ) 中間貯蔵施設事業の実施状況

中間貯蔵施設事業は、福島県内における汚染土壌等の除染等及び汚染廃棄物処理事業の実施に伴って大量に発生することが見込まれる除去土壌や放射能濃度が10万Bq/kgを超える対策地域内廃棄物及び指定廃棄物(以下「除去土壌・廃棄物」という。)を、一定の期間、安全かつ集中的に管理及び保管を行うための中間貯蔵施設に係る調査検討及びその整備等を行う事業である。国は、集中復興期間において、各種調査業務、施設予定地内に除去土壌・廃棄物の一時的な保管を行うストックヤードの整備、輸送手段等の効率性の確認等を行うパイロット輸送等のために、計263億余円を支出している。なお、会計検査院は、中間貯蔵施設の建設のために必要な関連施設等の築造工事の施工が適切でなかった事態を平成27年度決算検査報告に不当事項として掲記している(平成27年度決算検査報告及び別添参照)。

中間貯蔵施設に係る用地取得の状況をみると、環境省は、27年度末現在、当該用地の登記簿上の約2,400人の地権者(面積約1,600ha)のうち連絡先を把握している約1,480人(同約1,450ha)に連絡するなどして、約1,290人に個別訪問等による説明を行っているが、土地の売買契約等の成立件数は83件(同約22ha)にとどまっている。

なお、環境省によれば、29年1月末現在、土地の売買契約等の成立件数は633件(同約287ha)であるとしている。

a パイロット輸送の状況

環境省は、26年11月に、仮置場等から中間貯蔵施設までの除去土壌・廃棄物の輸送に当たってのルールや考慮すべき項目に関する基本的事項を取りまとめた「中間貯蔵施設への除去土壌等の輸送に係る基本計画」を策定し、大量の除去土壌・廃棄物の本格輸送を安全かつ効率的に実施するために、パイロット輸送を実施することとした。そして、27年3月から28年3月までの間にパイロット輸送が実施され、図表7-12のとおり、大熊町のストックヤードに23市町村計2.3万m3、双葉町のストックヤードに20市町村計2.2万m3、合計43市町村4.5万m3の除去土壌・廃棄物が輸送され、同年3月に検証報告が取りまとめられている。

図表7-12 中間貯蔵施設のストックヤードへのパイロット輸送の状況

搬出元市町村名 搬出先(保管場) 搬入量(m3   搬出元市町村名 搬出先(保管場) 搬入量(m3
大熊町 大熊町 1,002 双葉町 双葉町 806
田村市 1,004 浪江町 1,353
富岡町 1,003 葛尾村 1,000
川内村 1,590 郡山市 1,610
広野町 900 楢葉町 1,008
棚倉町 1,516 三春町 1,000
浅川町 286 南相馬市 981
会津美里町 1,000 伊達市 476
平田村 374 飯舘村 1,000
会津坂下町 1,071 川俣町 1,218
鮫川村 293 福島市 1,004
古殿町 1,331 須賀川市 1,203
湯川村 1,000 新地町 1,008
白河市 1,000 相馬市 1,568
玉川村 1,180 大玉村 1,049
天栄村 1,287 小野町 937
西郷村 1,002 桑折町 1,124
いわき市 1,040 本宮市 1,216
泉崎村 1,082 国見町 1,200
矢吹町 992 二本松市 1,355
鏡石町 1,062 20市町村 双葉町計 22,116
石川町 1,211 43市町村 合計 45,382
中島村 1,040  
23市町村 大熊町計 23,266
(注)
輸送したフレキシブルコンテナ等1袋の体積を1m3として換算した。

b パイロット輸送後の中間貯蔵施設への輸送状況

環境省は、パイロット輸送の検証の結果等を踏まえて、福島県や県内全市町村を含む関係機関から成る「中間貯蔵施設への除去土壌等の輸送に係る連絡調整会議」による調整の上、28年3月に今後の輸送に関する具体的な事項に関する「中間貯蔵施設への除染土壌等の輸送に係る実施計画」を策定した。同計画によれば、中間貯蔵施設への輸送対象物は、福島県内で発生した除染土壌等及び放射能濃度が10万Bq/kgを超える焼却灰等の廃棄物を基本とすることとされており、発生量は、除染土壌等については焼却することによる減容化前で1870万m3から2815万m3、減容化後で1601万m3から2197万m3、その他の廃棄物については約1.8万m3と推計されている。また、当面は、中間貯蔵施設のストックヤードの整備とストックヤードへの輸送を継続するとともに、施設整備の状況に合わせて、順次、中間貯蔵施設予定地内に設置する土壌貯蔵施設等への搬入に移行することとされ、輸送に当たっては、福島県内の道路網の復旧や整備の状況も踏まえつつ、必要な道路交通対策を実施した上で段階的に輸送量を増加させていくこととされている。そして、28年11月末現在の搬入量は、大熊町等18市町村の仮置場から大熊町のストックヤードへ計4.7万m3、浪江町等14市町村の仮置場から双葉町のストックヤードへ計4.0万m3となっている。

また、環境省は、28年3月に中間貯蔵施設に係る「当面5年間の見通し」を公表し、32年度までに500万m3から1250万m3程度の除染土壌等を搬入できる見通しであるとした。これにより、少なくとも、①身近な場所にある除染土壌等(住宅、学校等における現場保管量約180万m3(平成27年12月末時点))に相当する量の中間貯蔵施設への搬入を目指すとした上で、さらに、用地取得等を最大限進める、②幹線道路沿いにある除染土壌等(高速道路沿道から500m以内及び国道・県道沿道から100m以内の仮置場の保管量約300万m3から500万m3(推計値))に相当する量の中間貯蔵施設への搬入を目指すこととしている。

c 中間貯蔵施設整備等影響緩和交付金及び福島原子力災害復興交付金の創設

環境省は、26年度補正予算において、中間貯蔵施設整備等影響緩和交付金を創設し、中間貯蔵施設の予定地である大熊、双葉両町を中心として、同施設の整備等に伴う影響を緩和するために必要な生活再建・地域振興等に係る幅広い事業を実施できるようにするために、福島県及び両町が設置造成等する基金に対して、福島県に650億円、大熊、双葉両町に計850億円を交付した。そして、27年度末現在、福島県及び大熊、双葉両町において、地域医療の維持・向上や先端教育の充実等の事業等に、計53億余円が使用されている。

また、復興庁は、26年度補正予算において、福島原子力災害復興交付金を創設し、中間貯蔵施設の整備等による影響も含めて、原発事故による影響を強く受けた被災地域の復興や風評被害対策を始めとした福島県全域の復興を効果的に進めるための事業等に広範に利用できるようにするために、福島県が設置造成等する基金に対して1000億円を交付した。そして、27年度末現在、「ロボット産業革命の地」創出事業や教育旅行復興事業等に、計15億余円が使用されている。

両交付金は、対象事業が非常に幅広く多様な事業に活用できるなど極めて自由度が高くなっており、中間貯蔵開始後30年間の長期間にわたって使用できるようになっている。

ウ 原子力災害関係経費の求償の状況

国は、復興基本方針に基づき、原子力災害の応急対策、復旧対策及び復興について、原子力災害関係経費により、自ら又は独立行政法人を通じて事業を実施したり、地方公共団体が実施する事業に対して国庫補助金等を交付したりするなどして対応を図っている。

一方、原子力事業者は、原賠法等によれば、原子力損害を賠償する責めに任ずることとされていて、東京電力は、国及び地方公共団体が実施した福島第一原発の事故に対処するための事業に要した費用のうち、事故との相当因果関係があると認められる損害に係る費用について、国及び地方公共団体からの求償に基づき、その内容等を確認した上で支払っている。

そこで、国は東京電力に対して求償を適切に行っているかを把握するために、国が支出した原子力災害関係経費の東京電力に対する求償の状況について検査した。

(ア) 特措法3事業に係る8省の求償の状況

放射性物質汚染対処特措法において、国、地方公共団体等が行う特措法3事業は、関係原子力事業者が賠償する責めに任ずべき損害に係るものとして、当該関係原子力事業者の負担の下に実施されるものとすることが明記された。そして、福島復興の加速指針においても、実施済み又は現在計画されている除染・中間貯蔵施設事業の費用は、事業実施後に環境省等から東京電力に求償することとされた。

放射性物質汚染対処特措法が施行された24年1月以降に8省(注29)が、直轄により又は国庫補助金等を交付して実施した特措法3事業について、集中復興期間における事業実施済額(27年度末までに特措法3事業に係る費用として確定した額)、28年10月末現在で8省が東京電力に行った年度別の求償額及び求償額の事業実施済額に対する割合(以下「求償率」という。)並びに求償額に対する東京電力の支払額及び支払額の求償額に対する割合(以下「支払率」という。)を示すと、図表7-13のとおり、事業実施済額の計1兆5607億余円に対して、求償額は計1兆1932億余円(求償率76.4%)、東京電力の支払額は計5062億余円(支払率42.4%)となっている。

汚染土壌等の除染等に係る費用のうち環境省が求償を行っている費用についてみると、図表7-13のとおり、事業実施済額の計1兆3704億余円に対して、求償額は計1兆0079億余円(求償率73.5%)、支払額は計4874億余円(支払率48.3%)となっている。

汚染廃棄物処理事業に係る費用についてみると、図表7-13のとおり、事業実施済額の計1626億余円に対して、求償額は計1615億余円(求償率99.3%)、支払額は計134億余円(支払率8.3%)となっており、中間貯蔵施設事業に係る費用についてみると、事業実施済額の計245億余円に対して、求償額は計216億余円(求償率88.1%)、支払額は計41億余円(支払率18.9%)となっている。

(注29)
8省  法務、財務、文部科学、厚生労働、農林水産、国土交通、環境、防衛各省

図表7-13 集中復興期間に8省が実施した特措法3事業に係る8省の求償及び東京電力の支払の状況(平成28年10月末現在)

(単位:百万円、%)
省名 事業名 事業実施済額 求償を行った年度 求償額 求償率 支払額 支払率
A B B/A C C/B
環境省 汚染土壌等の除染等 1,370,407 平成24 14,784 13,165 89.0
25 44,500 43,571 97.9
26 119,581 116,165 97.1
27 391,404 286,266 73.1
28 437,651 28,252 6.4
小計 1,007,923 73.5 487,422 48.3
  国直轄除染 675,291 24 12,425 10,871 87.4
25 32,901 31,993 97.2
26 57,415 55,967 97.4
27 231,287 193,464 83.6
28 309,159 10,096 3.2
小計 643,189 95.2 302,395 47.0
市町村除染 695,116 24 2,359 2,293 97.2
25 11,599 11,577 99.8
26 62,166 60,198 96.8
27 160,117 92,802 57.9
28 128,492 18,155 14.1
小計 364,734 52.4 185,026 50.7
汚染廃棄物処理事業 162,614 24 - - -
25 6,409 4,388 68.4
26 27,813 8,853 31.8
27 39,672 216 0.5
28 87,698 - 0.0
小計 161,593 99.3 13,458 8.3
中間貯蔵施設事業 24,593 24 103 71 68.3
25 364 360 98.9
26 1,973 1,141 57.8
27 4,868 1,051 21.5
28 14,373 1,479 10.2
小計 21,683 88.1 4,103 18.9
1,557,616 1,191,200 76.4 504,984 42.3
法務省 汚染土壌等の除染等
(直轄)
252 27 33 33 100.0
28 219 - 0.0
小計 252 100.0 33 13.2
財務省 汚染土壌等の除染等
(直轄)
51 27 7 7 100.0
小計 7 15.1 7 100.0
文部科学省 汚染土壌等の除染等
(直轄)
352 27 352 352 100.0
小計 352 100.0 352 100.0
厚生労働省 汚染土壌等の除染等
(直轄)
144 27 0 0 100.0
28 69 69 100.0
小計 69 47.7 69 100.0
国土交通省 汚染土壌等の除染等
(直轄)
1,243 28 537 - 0.0
小計 537 43.2 - 0.0
防衛省 汚染土壌等の除染等
(直轄)
747 27 460 460 100.0
28 287 287 100.0
小計 747 100.0 747 100.0
農林水産省 除染等の技術実証において実施された汚染土壌等の除染等(直轄) 313 28 72 72 100.0
小計 72 23.1 72 100.0
24 14,888 13,236 88.9
25 51,274 48,320 94.2
26 149,368 126,160 84.4
27 436,800 288,389 66.0
28 540,909 30,160 5.5
合計 1,560,723 1,193,240 76.4 506,268 42.4
注(1)
福島県に設置造成等された基金により実施されている事業の事業実施済額は、当該基金から取り崩されて執行された額を計上している。
注(2)
事業実施済額は平成27年度末現在の額である。また、事業実施年度は環境省が23年度から27年度まで、農林水産省が24年度から27年度まで、環境、農林水産両省以外の各省は26、27両年度である。

また、28年報告において「農林水産省は、求償の担当部署、求償に必要な手法、準備する書類等の求償を行うための体制や具体的な手法等を定めておらず、東京電力に対して求償を行っていなかった。」と報告した事態については、28年6月までに求償に係る事務が確実に行われることとなるよう処置が講じられている(平成27年度決算検査報告及び別添参照)。そして、農林水産省は、28年9月に24年度分の求償を行って東京電力から同年10月に支払を受けており、28年10月末現在、25、26両年度分についても手続をとっているところである。

(イ) 緊急実施除染事業に係る求償の状況

内閣府所管の緊急実施除染事業は、放射性物質汚染対処特措法が施行される前から緊急的に実施されている除染等(一部除染等以外の事業を含む。)であり、内閣府が自ら事業を行ったり、福島県に補助金を交付して基金を設置造成等させて行わせたりなどするものである。

そして、「「除染に関する緊急実施基本方針」の迅速な実施について」により、求償については国が支出を行う範囲において当該原子力事業者に行うこととされており、集中復興期間における事業実施済額(27年度末までに緊急実施除染事業に係る費用として確定した額)、28年10月末現在の内閣府が東京電力に行った年度別の求償額及び求償率並びに求償額に対する東京電力の支払額及び支払率を示すと、図表7-14のとおり、事業実施済額計2098億余円に対して、求償額は計745億余円(求償率35.5%)、支払額は計418億余円(支払率56.1%)となっている。

図表7-14 集中復興期間に実施した緊急実施除染事業に係る内閣府の求償及び東京電力の支払の状況(28年10月末現在)

(単位:百万円、%)
事業名 事業実施済額 求償を行った年度 求償額 求償率 支払額 支払率
A B B/A C C/B
緊急実施除染事業 209,888 平成25 1,573 343 21.8
26 11,993 10,132 84.4
27 40,131 27,198 67.7
28 20,839 4,175 20.0
74,537 35.5 41,849 56.1
  除染、帰還支援、農業系汚染廃棄物処理(福島県) 194,786 25 1,573 343 21.8
26 - - -
27 40,131 27,198 67.7
28 20,839 4,175 20.0
62,543 32.1 31,717 50.7
除染モデル事業、入域・被ばく管理等 13,446 25 - - -
26 11,993 10,132 84.4
27 - - -
28 - - -
11,993 89.1 10,132 84.4
農業系汚染廃棄物処理 1,498 25 - - -
26 - - -
27 - - -
28 - - -
- 0.0 - -
高濃度汚染稲わらの隔離、一時保管、警戒区域内の家畜遺体処理、生活圏近隣森林等の除染 157 25 - - -
26 - - -
27 - - -
28 - - -
- 0.0 - -
注(1)
「除染、帰還支援、農業系汚染廃棄物処理(福島県)」に係る事業実施済額は福島県に設置造成等された基金から取り崩されて執行された額を計上している。
注(2)
事業実施済額には、帰還支援、入域・被ばく管理等、農業系汚染廃棄物処理等の除染等以外の事業に係る費用を含んでいる。
エ まとめ

国は、原子力災害からの福島の復興再生を国政の最重要課題と位置付けて、特措法3事業のほか、長期避難者支援等を行う福島復興事業等の各種施策を実施していて、集中復興期間における原子力災害関係経費の支出済額は、計3兆1334億余円と多額に上っている。

福島県においては、除去土壌等を保管するための仮置場が相当数設置されるなどしており、多額の維持管理費が発生している。その中には、津波の浸水区域に仮置場が設置されているため、除去土壌等が搬出されるまでの間、比較的頻度の高い一定程度の津波高を超える津波等の災害の発生時には保管した除去土壌等が流出し、除染等の措置による効果が減少するおそれが継続する状況となっているものも見受けられる。今後、帰還困難区域においても除染等の措置の進捗が見込まれることから、仮置場等の箇所数や除去土壌等の保管量が更に増大することが想定されており、除去土壌等を住宅、学校等の生活施設に保管している地元住民への負担を解消し、仮置場等の維持管理費を軽減するなどのためにも、除染等の措置に伴い発生する除去土壌等の保管場所となる中間貯蔵施設の整備の促進に一層努めることが望まれる。また、汚染状況重点調査地域に指定されている市町村が管内に所在する福島県以外の7県管内においては、除去土壌等の大部分は現場で保管されたままとなっており、地元住民の生活への影響が懸念されるため、今後早急に除去土壌についての処分の基準を策定して、処分を実施することが望まれる。さらに、10道県管内においては、8,000Bq/kg以下の指定廃棄物に指定されていないものの、放射性物質に汚染された農林業系廃棄物等の減容化が進まず、各農家等で大量に保管されたり、焼却灰となった一般廃棄物等を廃棄することができずに指定廃棄物と同様の管理を行っていたりしている状況となっている。これらの汚染廃棄物を管理している市町村等や地域住民、各農家等の負担を解消するなどのためにも、仮設焼却施設の設置による減容化を一層進めるなど、汚染廃棄物の処理の促進に一層努めることが望まれる。

28年10月末現在、環境省等8省が実施した特措法3事業に係る求償及び東京電力の支払の状況は、求償率76.4%、支払率42.4%となっている。また、内閣府が実施した緊急実施除染事業に係る求償及び東京電力の支払の状況は、求償率35.5%、支払率56.1%となっている。これらの放射性物質汚染対処特措法等に基づき関係原子力事業者が賠償すべき損害については、引き続き求償を適切に行う必要がある。

前記のとおり、国は、27年6月に福島復興の加速指針を改訂し、29年3月までに避難指示を解除することを目指して環境整備を加速することなどとしており、今後も住民の意向等を把握するなどし、原子力災害からの復興再生に向けて円滑かつ迅速に事業を実施する必要がある。