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  • 第2章 個別の検査結果|
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  • 不当事項

補助金


(166) 漁港改修事業の実施に当たり、施工が設計と著しく相違していたため、護岸工等が不安定な状態になっているもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)水産庁 (項)漁港施設費
部局等の名称 水産庁
補助の根拠 予算補助
事業主体 鳥取県
補助事業 漁港改修
補助事業の概要 平成4年度に、物揚場、船揚場及び護岸の築造等を行うもの
事業費 66,249,600円
上記に対する国庫補助金交付額 33,563,786円
不当と認める事業費 17,164,261円
不当と認める国庫補助金交付額 8,664,351円

 上記の補助事業において、護岸工の施工が設計と著しく相違していたため不安定な状態になっており、これに係る国庫補助金相当額8,664,351円が不当と認められる。

1 補助事業の概要

 この補助事業は、鳥取県が、漁港改修事業の一環として、境港市岬町地区において、平成4年度に、物揚場、船揚場及び護岸の築造等を工事費66,249,600円(国庫補助金33,563,786円)で実施したものである。このうち護岸は、物揚場等の施工に伴って河川の付け替えを行うために築造したもので、左岸側延長78,5mの全延長及び右岸側延長78,3mのうち71mについては、いずれも高強度コンクリート矢板(以下「矢板」という。)で施工することとしていた(参考図参照)
 そして、護岸の設計に当たっては、この矢板には鉄筋が多く配置されている面(引張側)と少なく配置されている面(圧縮側)があるため、矢板の引張側を土圧を受ける岸側に向けて打ち込むこととして応力計算を行い、次のとおり矢板を使用すれば応力計算上安全であるとしていた。

(1) 左岸側は矢板幅1m当たりの最大の曲げモーメント(注1) が1.76t・m(常時(注2) )、1.91 t ・m(地震時)となることから、ひび割れモーメント(注3) が2.00t・m(常時)、3.00t・m(地震時)である矢板(長さ4.5m、幅50cm、厚さ10cm)157枚を使用する。

(2) 右岸側は矢板幅1m当たりの最大の曲げモーメントが1.16t・m(常時)、1.23t・m(地震時)となることから、ひび割れモーメントが1.50t・m(常時)、2.25t・m(地震時)である矢板(長さ4.0m、幅50cm、厚さ8cm)142枚を使用する。

2 検査の結果

 検査したところ、前記のように矢板に引張側と圧縮側がある場合はその打ち込み方向を間違わないよう十分確認を行って施工すべきであったのに、その確認を行わないまま施工したため、左岸側及び右岸側のすべての矢板について、圧縮側が土圧を受ける岸側に向けて打ち込まれていた。
 このため、左岸側の矢板はひび割れモーメントが0.77t ・m(常時)、1.16t ・m(地震時)となり、また、右岸側の矢板はひび割れモーメントが0.62t ・m(常時)、0.93t ・m(地震時)となり、いずれも最大の曲げモーメントを大幅に下回っていて、応力計算上安全な範囲を超えている。
 したがって、本件護岸工等(工事費相当額17,164,261円)は、その施工が設計と著しく相違していたため不安定な状態となっており、これに係る国庫補助金相当額8,664,351円が不当と認められる。

(注1)  曲げモーメント 外力が部材に加わって部材を曲げようとする力

(注2)  常時 地震時などに対応する表現で、土圧など常に作用している荷重及び輪荷重など作用頻度が比較的高い荷重を考慮する場合をいう。

(注3)  ひび割れモーメント 部材に幅0.2mmを超えるひび割れが生じないモーメントの最大値

(参考図)

(参考図)

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