(1) 検査の結果の概要
各府省等が締結している随意契約等について、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、随意契約の見直し状況の検証を中心に、契約事務が適切に行われ、公正性、競争性及び透明性が確保されているかなどに着眼して検査を行った。
ア 契約方式の状況とその変化について
(ア) 19年度(12月まで)の対象契約全体でみると、随意契約の割合(件数49.6%、支払金額58.1%)は、前年度同期より、件数で7.0ポイント、支払金額で4.2ポイント減少している。しかし、支払金額割合では競争契約を依然上回っており、また、平均落札率も競争契約の85.7%に対し随意契約が98.1%と10ポイント以上高くなっていて、競争性及び経済性の面でまだ十分ではない状況となっている。
一方、競争契約の割合は、前年度同期に比べて増加しているものの、1者応札契約の件数割合は26.1%と9.3ポイント増加している。そして、1者応札の平均落札率(93.1%)は、2者以上応札よりも7ポイントから10ポイント程度上回っており、落札率からみた場合、1者応札の場合には実質的な競争性を確保しにくい状況となっている(前記2ヶ所参照 1
2
)。
(イ) 随意契約のうち、企画競争等を経ない随意契約は、対象契約全体に占める件数割合が19年度(12月まで)でみると26.2%であり、前年度同期に比べて19.0ポイント減少している一方で、企画随契の件数割合は増加している。しかし、企画随契の応募者数をみると、1者応募のものが件数で26.7%あり、前年度同期に比べて10.1ポイント増加していて、企画競争において複数の業者の中から優れた企画を提案した者を選定する手続の実効性を確保しにくい状況となっている(前記2ヶ所参照 1 2 )。
(ウ) 随意契約の法令上の適用理由は、「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」が大部分を占めている。そして、その具体的な理由を19年度(12月まで)でみると、「専門的又は高度な知識、知見、技術を有する」や「契約実績、経験を有する」など、ほかに履行可能な者がいないことが必ずしも明確にされていないものの件数割合(13.0%)が、17年度より24.5ポイント減少している。このことから、各府省等が随意契約の見直しにおいて、これらの契約を重点的に競争契約や企画随契へ移行させたと考えられる(前記参照 )。
(エ) 19年報告において報告した随意契約の理由の妥当性に関して検討の余地があったもの(個別の事態)601件について、19年度末における見直し状況をみると、ほとんどが競争契約等に移行しているものの、中には、移行手続に相当の時間を必要とすることなどを理由に措置未済となっているものが95件残っている。また、競争契約に移行したものについても、50%強が1者応札となっていて、その平均落札率は移行前とほぼ同水準で、契約相手方もそのほとんどは随意契約当時の相手方と同一の者となっている。
さらに、個別の事態とは別に、各府省等が点検を行った随意契約について、その見直し前後の契約の状況を比較すると、競争契約等に移行したもののうち半数以上が1者応札(応募)となっているなど、個別の事態の見直し状況の場合と同様、実質的な競争性を確保しにくい状況となっている(前記2ヶ所参照 1
2
)。
(オ) 上記の見直し後、競争契約、企画随契や公募実施に移行し、かつ、1者応札(応募)となっているものなどを抽出して検査したところ、競争契約や企画随契において、入札や応募の資格要件に制限的な条件を付するなど競争性の確保に関して検討の必要があったもの、企画競争の実施方法において透明性が十分でないものなどが見受けられる(前記2ヶ所参照 1 2 )。
イ 公益法人を契約相手方とする随意契約の状況とその変化について
(ア) 公益法人を契約相手方とする契約について、19年度(12月まで)の対象契約全体でみると、随意契約の割合(件数72.7%、支払金額85.4%)は、前年度同期より件数で13.4ポイント、支払金額で11.1ポイント減少しており、特に、このうち企画競争等を経ない随意契約の割合は大幅に減少している。しかし、随意契約の割合は、依然として、契約全体でみた場合(件数49.6%、支払金額58.1%)よりも高い。また、競争契約における1者応札の件数割合は62.9%に上っており、契約全体でみた場合(26.1%)より大幅に高く、前年度同期と比べても16.0ポイント増加している。さらに、企画随契における1者応募の件数割合も45.7%と契約全体でみた場合(26.7%)より高く、前年度同期と比べても10.8ポイント増加している。
このように、公益法人を契約相手方とする契約については、競争契約や企画随契等の割合が増加しているものの、契約全体と比較して実質的な競争性が十分確保されていない状況となっている(前記参照
)。
(イ) 公益法人を契約相手方とする随意契約における再委託について、19年度(12月まで)でみると、契約条項において再委託に関する規定を設けていないものが依然として9.4%ある。また、国の支払金額と再委託に係る支払金額との対応関係が把握できる18年度でみると、再委託が行われている契約のうち再委託率が50%以上となっているものが10%前後となっている。
さらに、19年報告において報告した17年度分の再委託対象契約について、その後の状況をみると、企画随契に移行したものの中に、引き続き重要な業務を再委託していたものが見受けられる(前記参照
)。
ウ 契約の透明性の向上に向けた取組の状況について
(ア) 内部監査の実施状況については、ほとんどの省庁で随意契約に関する監査を重点事項としているが、監査結果の情報の蓄積と共有化を図るために重要と考えられるデータベース化を行っていない省庁が相当数見受けられる(前記参照 )。
(イ) 各府省等の契約の監視を行う第三者機関については、すべての省庁の内部部局に設置されているが、審査対象とする契約を抽出する方法や審査結果の意見の具申先を定めていなかったり、審議の概要をホームページ上に公表していなかったりなど、審議の効率性や透明性の面で十分でない省庁が見受けられる(前記参照 )。
(ウ) 契約情報の公表状況については、各省庁とも公表すべきと定められている項目は公表しているが、内部部局のホームページに地方支分部局の契約情報を掲載したページへのリンクを設定していないなどアクセスの利便性に欠ける省庁があるほか、いずれの省庁も、会計別や主な契約相手方ごとの年間合計支払金額等の情報が一覧できるような方式にはなっていない状況である(前記参照 )。
エ 所管府省退職者の再就職について
随意契約先公益法人への所管府省退職者の再就職者は、19年4月1日現在で897法人に9,196人が在籍しており、19年報告に比べて65法人、797人減少している。しかし、所管府省退職者の再就職者が在籍している公益法人は、在籍していない公益法人に比べて、1法人当たりの随意契約件数や支払金額が多く、また、随意契約のうち企画競争等を経ない随意契約の占める割合や企画随契のうち1者応募の占める割合が高い状況となっている(前記2ヶ所参照 1 2 )。
(2) 所見
国の契約は、その支払財源に国民からの貴重な税金等が充てられているが、現下の財政事情が厳しい状況にあることにかんがみると、契約の締結に当たって、経済的及び効率的に行っていくことはますます重要となっている。
このような中で、各府省等は、「随意契約見直し計画」等に基づき、公共調達の適正化への取組を行っており、その結果、競争契約の割合も増加するなどしているが、前記(1)で記述したとおり、実質的な競争性の確保等の面からは幾つかの課題が見受けられる。
したがって、各府省等においては、随意契約の適正化を一層推進するため、「随意契約見直し計画」の厳正な実施を徹底するとともに、契約の締結に当たっては、更に次の点に留意することにより、契約の公正性、競争性及び透明性の更なる向上に努める必要がある。
ア 契約方式について
(ア) 引き続き随意契約が行われているもののうち、真に随意契約によらざるを得ないと認められるもの以外は、発注する業務の内容を仕様書等において具体的に定めるなどして早急に総合評価方式を含む競争契約への移行を図る。また、仕様書等の内容を具体的に提示することが困難な場合に限って企画随契への移行を検討することとし、競争契約が可能なものを安易に企画随契としないよう留意する。そして、いずれの契約方式においても、契約金額の上限となる予定価格の一層適正な作成に努める。
(イ) 競争契約や企画随契を行うに当たっては、入札や応募の内容についてより多くの者に周知できるような方法で公告等を行うとともに、契約の適正な履行の確保に配慮しつつ、より多くの者の参加が可能となるよう、入札や応募の資格要件は制限的なものとならない必要最小限にとどめるほか、仕様書や実施要領等の内容を明確にするなどして、実質的な競争性の確保に努める。
(ウ) 企画競争を実施する場合には事業実施部局の担当職員以外の者も審査に参加させたり、公募を実施する場合には契約予定相手方名の表示は行わないようにしたりなどして、それぞれ公正性及び透明性の一層の向上を図る。
イ 公益法人を契約相手方とする随意契約について
(ア) やむを得ず公益法人を契約の相手方とした随意契約を行わざるを得ない場合においても、ほかに履行可能な者がいないかの把握等を更に厳格に行うとともに、企画競争等を経ない随意契約から競争契約や企画随契に移行する場合には、上記ア(イ)と同様、実質的な競争性の確保に努める。
(イ) 再委託については、禁止する又は承認を必要とする旨の契約条項を必ず設けるとともに、特に、再委託率が高率となるものについては、再委託の妥当性や随意契約とした理由との整合性に留意する。
ウ 契約の透明性の向上に向けた取組について
(ア) 内部監査の結果による指示・指摘事項等については、データベース化を行うなどして、省庁内での情報の蓄積と共有化を図る。
(イ) 第三者機関の運営については、各機関がその機能を十分発揮するために、実質的な審議が効率的に進められるよう工夫を行うほか、審議内容の公表について透明性の向上を図る。
(ウ) 各府省等の全体の契約情報へのアクセスが容易となるよう、ホームページにおける更なる利便性の向上を図るとともに、国民の要望に配慮した情報の提供について更に検討する。
エ 契約の発注元府省等退職者の再就職について
契約の発注元府省等退職者の再就職者が在籍している法人を随意契約の相手方とする場合には、特に透明性の確保に留意し、随意契約とした理由や企画競争における応募要件の妥当性等について十分説明責任を果たせるようにする。
会計検査院としては、契約の公正性、競争性及び透明性の重要性にかんがみ、今後とも、各府省等の契約について、多角的な観点から引き続き検査していくこととする。