ページトップ
  • 平成20年度|
  • 第4章 国会及び内閣に対する報告並びに国会からの検査要請事項に関する報告等|
  • 第3節 特定検査対象に関する検査状況|
  • 第2 都道府県等における国庫補助事業に係る事務費等の経理の状況について

第2 都道府県等における国庫補助事業に係る事務費等の経理の状況について


第2 都道府県等における国庫補助事業に係る事務費等の経理の状況について

検査対象
農林水産省、国土交通省、28府県市
検査の対象とした経理処理
28府県市における農林水産省及び国土交通省所管の国庫補助事業に係る事務費等の支出に係る経理処理
事態の概要
不適正な経理処理等により国庫補助事業に係る事務費等が支出されていた事態  28府県市 計29億2744万円(平成14年度〜19年度)
上記のうち国庫補助金相当額
14億7302万円

1 検査の背景

 一部の府県において、長年にわたり不適正な経理処理による資金のねん出が行われていた事態が、平成18年から19年にかけて明らかになったことなどを受けて、本院は、19年次に、自ら内部調査を行い不適正な経理処理があったことを明らかにしている府県を対象に、不適正経理と国庫補助金(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号。以下「補助金適正化法」という。)第2条第1項に規定する「補助金等」。以下「補助金等」という。)との関連等について検査して、その検査状況を平成18年度決算検査報告に掲記した。
 本院は、19年次の検査結果等を踏まえ、都道府県等における国庫補助事業に係る事務費等の経理の状況について検査をすることとして、20年次は、12道府県(注1) において、会計実地検査を行った。検査の結果、12道府県すべてにおいて、虚偽の内容の関係書類を作成するなどの不適正な経理処理を行って需用費を支払ったり、補助の対象とならない用途に賃金又は旅費を支払ったりしている事態が見受けられたことから、平成19年度決算検査報告に不当事項及び特定検査対象に関する検査状況として掲記した。
 そして、本院は、引き続き、都道府県等における国庫補助事業に係る事務費等の経理の状況について検査をするとともに、発生原因等についても多角的に検証を行うこととした。また、本院の検査等を踏まえ、都道府県等が自主的に行った内部調査の結果等についても、都道府県等から報告を求めその内容を確認することとした。

 12道府県  北海道、京都府、青森、岩手、福島、栃木、群馬、長野、岐阜、愛知、和歌山、大分各県

2 検査の観点、着眼点、対象及び方法

(1) 検査の観点及び着眼点

 都道府県等における国庫補助事業に係る事務費等の経理の状況について、合規性等の観点から、国庫補助事業に係る事務費等の経理は適正に行われているか、補助金等が目的に従って適正に使用されているかに着眼して検査した。

(2) 検査の対象及び方法

 47都道府県のうち、20年次に会計実地検査を実施した12道府県を除いた35都府県の中から、26府県(注2) を検査の対象とした。また、財政規模等が県に匹敵する政令指定都市(以下「政令市」という。)についても、近年、その一部において内部調査により補助金等に係る不適正な経理処理が行われていたことが判明していることなどから、都道府県に加えて、全政令市を検査することとして、本年次は、2政令市(注3) を検査の対象とした。
 これらの26府県及び2政令市(以下「28府県市」という。)において、公共事業関係の補助金等の交付額が多額になっている農林水産省及び国土交通省所管の15年度から19年度までの間(一部14年度を含む。)の国庫補助事業に係る事務費等のうち、20年次と同様に、過去に不適正な経理処理等が多く行われた需用費、賃金及び旅費を対象として、支出命令書等の書類により会計実地検査を行った。

 26府県  大阪府、秋田、山形、茨城、埼玉、千葉、富山、石川、福井、山梨、三重、滋賀、奈良、鳥取、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、熊本、鹿児島、沖縄各県
 2政令市  千葉、大阪両市

3 検査の状況

 28府県市を対象として、農林水産省及び国土交通省所管の国庫補助事業に係る事務費等の経理について検査したところ、28府県市のすべてにおいて、20年次に検査した12道府県と同様に、虚偽の内容の関係書類を作成するなど不適正な経理処理により需用費が支払われていた事態や補助の対象外に賃金や旅費等が支払われていた事態が判明した。これらの事態については、別途第3章においても不当事項として掲記したところであるが、本院では、今回判明したこれらの不適正な経理処理等の発生部署が多岐に及び不適正金額の規模が大きいことなどから、その発生の背景や内部統制上の問題点等を検証して再発防止を図る必要があると考え、(2)において、その分析結果等の状況を記述することとした。
 このほか、〔1〕 都県警察の警察事務等に係る経費、〔2〕 府県に対する指定統計調査等に係る事務の委託費、〔3〕 政令市以外の13市(注4) に対する農林水産省及び国土交通省所管の国庫補助事業 に係る事務費等(注5) の経理についての検査結果を第3章に不当事項として掲記した。

 13市  旭川、北見、青森、八戸、盛岡、北上、八幡平、長野、松本、豊橋、豊田、和歌山、田辺各市
 政令市以外の13市に対する農林水産省及び国土交通省所管の国庫補助事業に係る事務費等の経理についての検査結果は、28府県市に対する農林水産省及び国土交通省所管の国庫補助事業に係る事務費等の経理についての検査結果と合わせて、所管別に不当事項として掲記した。

(1) 国庫補助事業に係る事務費等

ア 国庫補助事業に係る事務費等の概要

 農林水産省及び国土交通省は、土地改良法(昭和24年法律第195号)、道路法(昭和27年法律第180号)等に基づき、それぞれ土地改良事業や道路整備事業等の公共事業を実施する都道府県等に対して、事業に要する経費の一部について補助金等を交付している。これらの公共事業に係る国庫補助対象事業費には、工事費のほか事業を実施するために必要な事務費が含まれており、その内訳はおおむね次のとおりとなっている。
 すなわち、事務費は、国庫補助事業に直接従事する都道府県等職員の人件費(給料、職員手当等)のほか、国庫補助事業の実施のために直接必要な物品の購入等に係る需用費、国庫補助事業の事務補助等に従事した臨時職員に支払う賃金、職員が国庫補助事業に係る用務で出張した場合に支払う旅費等から構成されている(図1 参照)。

図1 事務費の構成(国土交通省の例)

図1事務費の構成(国土交通省の例)

 また、農林水産省所管の国庫補助事業には非公共事業も多く、これらの事業費にも需用費、賃金、旅費等が補助対象経費として含まれている(以下、非公共事業における需用費等の経費と上記の国庫補助事業に係る事務費を合わせて「国庫補助事務費等」という。)。

イ 事務費等の額

 28府県市における15年度から19年度までの間の農林水産省及び国土交通省所管の補助金等を含む需用費、賃金及び旅費の執行額の推移は、表1のとおりとなっている。

表1 28府県市における需用費、賃金及び旅費の年度別執行額の状況
(単位:千円)

区分
所管
平成15年度
16年度
17年度
18年度
19年度
需用費
農林水産省
23,168,578
22,555,371
21,080,827
19,804,856
18,650,309
105,259,941
国土交通省
33,903,986
34,559,738
33,713,698
32,289,609
33,213,492
167,680,523
賃金
農林水産省
8,067,859
7,634,667
6,705,243
6,125,126
5,564,525
34,097,420
国土交通省
6,059,151
5,674,050
5,118,305
4,653,786
4,305,772
25,811,064
旅費
農林水産省
6,868,104
6,196,593
5,275,920
4,761,999
4,318,022
27,420,638
国土交通省
4,048,149
3,709,042
3,090,825
2,733,464
2,543,015
16,124,495
注(1)
 農林水産省所管分は、府県市の支出科目のうち農林水産省所管の国庫補助金が含まれている「(款)農林水産業費」を、国土交通省所管分は、府県市の支出科目のうち国土交通省所管の国庫補助金が含まれている「(款)土木費」をそれぞれ対象として、これらの中の需用費、賃金及び旅費の決算額を集計した。
注(2)
 府県市単独事業に係る金額を含む。
注(3)
 平成15年度の執行額には福岡県分が含まれていない。

 公共事業全体が減少傾向となっている近年、国庫補助事務費等に係る補助金等の交付額は主にその事業費の額に応じて算出されるため、同様にその額は減少傾向となっている。

(2) 28府県市に対する検査結果

 28府県市が14年度から19年度までの間に農林水産省及び国土交通省から交付を受けて執行した国庫補助事務費等について検査したところ、虚偽の内容の関係書類を作成するなど不適正な経理処理を行って需用費を支払ったり、補助の対象とならない用途に需用費、賃金又は旅費を支払ったりしていたものが、表2のとおり、28府県市において計29億2744万余円(国庫補助金相当額14億7302万余円)見受けられた(前掲不当事項2か所参照   )。
 このように、会計実地検査を行った28府県市において多数の不適正な経理処理等による支出が見受けられたことから、態様ごとに事態の内容や発生原因等について分析を行った。

表2 28府県市における国庫補助事務費等に係る不適正経理等の状況
(単位:千円)

府県市名
所管
需用費
賃金
旅費
不適正な経理処理及び補助の対象外
補助の対象外
補助の対象外
秋田県
農林水産省
664
2,626
9,314
12,606
国土交通省
140
2,712
2,536
5,388
805
5,339
11,850
17,995
山形県
農林水産省
3,049
5,831
8,880
国土交通省
8,678
12,951
13,860
35,491
11,728
12,951
19,691
44,371
茨城県
農林水産省
20,886
16,275
10,389
47,551
国土交通省
45,750
12,177
8,594
66,522
66,636
28,452
18,984
114,073
埼玉県
農林水産省
1,793
2,743
3,256
7,793
国土交通省
1,220
3,367
3,466
8,054
3,013
6,111
6,722
15,847
千葉県
農林水産省
164,543
559
3,479
168,581
国土交通省
220,247
244
2,290
222,782
384,791
803
5,769
391,364
富山県
農林水産省
8,819
3,653
4,570
17,043
国土交通省
3,916
290
846
5,053
12,736
3,944
5,416
22,097
石川県
農林水産省
33,633
14,544
7,985
56,163
国土交通省
21,837
29,340
18,990
70,168
55,470
43,884
26,976
126,332
福井県
農林水産省
31,279
924
978
33,182
国土交通省
18,330
24,264
5,381
47,976
49,609
25,189
6,359
81,158
山梨県
農林水産省
3,170
294
3,421
6,885
国土交通省
653
2,456
3,595
6,706
3,823
2,751
7,017
13,592
三重県
農林水産省
8,872
17,213
17,053
43,139
国土交通省
2,014
14,822
19,322
36,159
10,886
32,035
36,375
79,298
滋賀県
農林水産省
1,863
46
10,422
12,333
国土交通省
298
8,418
8,716
2,162
46
18,840
21,049
大阪府
農林水産省
1,491
856
2,348
国土交通省
173
1,406
13,371
14,951
173
2,898
14,227
17,299
奈良県
農林水産省
10,518
3,849
14,367
国土交通省
973
16,392
5,370
22,736
11,491
16,392
9,220
37,103
鳥取県
農林水産省
1,042
237
344
1,623
国土交通省
5,774
1,650
2,075
9,500
6,816
1,887
2,419
11,124
島根県
農林水産省
9,102
844
3,956
13,902
国土交通省
23,502
7,560
6,737
37,800
32,604
8,404
10,694
51,703
岡山県
農林水産省
6,518
37,085
3,571
47,175
国土交通省
1,716
15,489
3,292
20,498
8,234
52,574
6,864
67,673
広島県
農林水産省
1,002
1,034
10,308
12,345
国土交通省
1,376
10,885
6,252
18,514
2,379
11,920
16,560
30,860
山口県
農林水産省
1,487
183
2,188
3,859
国土交通省
3,777
10,734
4,346
18,858
5,265
10,917
6,535
22,718
徳島県
農林水産省
7,438
2,152
9,591
国土交通省
2,440
2,476
804
5,721
9,878
2,476
2,957
15,312
香川県
農林水産省
200
243
443
国土交通省
796
1,280
1,562
3,639
997
1,280
1,805
4,083
愛媛県
農林水産省
6,463
8,657
15,075
30,197
国土交通省
17,848
7,477
921
26,247
24,312
16,135
15,997
56,444
高知県
農林水産省
12
10
5,097
5,120
国土交通省
892
13,312
14,204
12
903
18,409
19,325
福岡県
農林水産省
1,996
106
7,208
9,311
国土交通省
37
1,703
13,003
14,745
2,034
1,810
20,211
24,057
熊本県
農林水産省
8,848
5,804
17,512
32,164
国土交通省
15,726
5,132
9,357
30,217
24,574
10,937
26,870
62,381
鹿児島県
農林水産省
3,243
160
10,922
14,325
国土交通省
226
237
4,087
4,550
3,469
397
15,009
18,876
沖縄県
農林水産省
13,173
14,725
5,803
33,701
国土交通省
28,993
20,362
15,588
64,944
42,166
35,087
21,391
98,645
千葉市
農林水産省
8
8
国土交通省
5,169
185
108
5,463
5,177
185
108
5,471
大阪市
農林水産省
44
44
国土交通省
110
1,946
660
2,718
155
1,946
660
2,762
合計
農林水産省
(816,458)
349,676
(267,313)
129,223
(345,998)
165,794
(1,429,770)
644,694
国土交通省
(793,885)
431,732
(383,556)
208,443
(320,229)
188,155
(1,497,672)
828,330
(1,610,344)
781,408
(650,869)
337,666
(666,228)
353,949
(2,927,442)
1,473,025
(注)
 金額は国庫補助金相当額である。ただし、「合計」欄の( )書きは、不適正な経理処理等により支出された国庫補助事務費等の額である。

ア 需用費の支払

 28府県市は、物品の購入等に当たり、業者から見積書を徴するなどして契約業者を決定して、支出負担行為を行って契約した物品が納入されたことを確認(以下「検収」という。)した上で、業者からの請求に基づき購入代金を支払うこととしている。

(ア) 不適正な経理処理等の態様

 物品の購入等に係る需用費の支払について検査したところ、28府県市において、次のとおり、14年度から19年度までの間に、不適正な経理処理を行って需用費を支払ったり、補助の対象とならない用途に需用費を支払ったりしていたものが計1,610,344,888円(国庫補助金相当額781,408,812円)見受けられた。
 需用費の支払に係る事態の態様として、次のとおり、不適正な経理処理によるものを〔1〕 から〔5〕 までに分類し、補助の対象外を〔6〕 とした。

〔1〕  預け金

業者に架空取引を指示するなどして、契約した物品が納入されていないのに納入されたとする虚偽の内容の関係書類を作成することなどにより需用費を支払い、当該支払金を業者に預け金として保有させて、後日、これを利用して契約した物品とは異なる物品を納入させるなどしていたもの

11県市、支払額 784,714,091円(国庫補助金相当額 396,578,940円)

<概念図〔1〕 >

<概念図〔預け金〕>

 預け金の事態が確認された11県市における年度別の状況は、表3のとおりであり、14年度から19年度までの間に、不適正な経理処理により計784,714,091円が支払われ、業者に預け金として保有されていた。そして、うち4県では会計実地検査時においても計350,617,443円が業者に保有されたままとなっていた。なお、これらの中には県の単独事業に係る支払金も含まれている。

表3 11県市の年度別預け金の状況
(単位:千円)

県市名\年度
平成14年度
15年度
16年度
17年度
18年度
19年度
預け金残高
茨城県
5,000
12,203
5,919
5,938
1,427
706
31,194
千葉県
86,158
99,949
182,760
167,962
119,165
655,996
332,062
石川県
657
1,765
917
176
251
3,768
福井県
4,476
3,777
9,933
5,396
5,487
29,071
5,906
島根県
370
829
1,546
2,746
徳島県
425
425
愛媛県
3,777
754
3,019
1,386
475
9,413
9,430
熊本県
1,083
298
853
2,235
沖縄県
9,707
11,370
11,909
6,954
9,793
49,735
3,218
千葉市
27
70
97
大阪市
29
29
合計
5,000
118,887
124,694
216,948
183,303
135,879
784,714
350,617
注(1)
 金額は農林水産省及び国土交通省の国庫補助事務費等の合計である。
注(2)
 「預け金残高」は、会計実地検査時において、業者に保有されたままとなっていた預け金の額である。

<事例>

 千葉県は、表3のとおり、検査対象とした直近の年度の平成19年度に至るまで、多数の部署(本庁25課、出先機関53か所)において、業者に架空取引を指示するなどして多額の需用費を支払い、これを業者に預け金として保有させ、後日、契約した物品とは異なる物品を納入させるなどしていた。
 このうち、本庁県土整備部(2課)、管下の8地域整備センター等では、20年4月までに、預け金から現金で488万円を返金させたり、収入印紙等の金券1586万余円(うち1294万余円を換金)を納入させたりして、これらを別途に経理して職員の夜食代等業務の目的外の用途に使用するなどしていた。
 このほか、本庁農林水産部(1課)、同県土整備部(1課)、管下の3農林振興センター等では、19年8月までに、預け金により図書カード、収入印紙等の金券計601万余円を業者に納入させているが、うち551万余円分についてはその使途が不明となっている。
 さらに、本庁農林水産部(13課)、同県土整備部(13課)、管下の55地域整備センター等は、21年6月までに、預け金によりノートパソコン等の備品2億8432万余円分を業者に納入させているが、うち4013万余円分については、職員が自宅に持ち帰って私的に使用したり、所在が不明となったりしている。
 なお、上記の預け金には、千葉県の単独事業に係る支払金も含まれているため、これらの目的外使用等に補助金等が利用されたかは明確となっていない。

 また、預け金の事態が確認された11県市において、需用費が預け金として支払われた時期を月別にみたところ、図2のとおり、年度末の2月、3月及び出納整理期間である翌年度の4月、5月に集中しており、これらが主に需用費の予算消化を目的として行われたことをうかがわせる状況となっている。

図2 11県市において預け金として支払われた需用費の月別の状況

図211県市において預け金として支払われた需用費の月別の状況

〔2〕  一括払

支出負担行為等の正規の経理処理を行わないまま、随時、業者に物品を納入させた上で、後日、納入された物品とは異なる物品の請求書等を提出させて、これらの物品が納入されたとする虚偽の内容の関係書類を作成することなどにより需用費を一括して支払うなどしていたもの

13県市、支払額 249,112,219円(国庫補助金相当額 118,299,670円)

<概念図〔2〕 >

<概念図〔一括払〕>

〔3〕  差替え

業者に虚偽の請求書等を提出させて、契約した物品が納入されていないのに納入されたとする虚偽の内容の関係書類を作成することなどにより需用費を支払い、実際には契約した物品とは異なる物品に差し替えて納入させていたもの

22県市、支払額 127,184,139円(国庫補助金相当額 54,594,890円)

<概念図〔3〕 >

<概念図〔差替え〕>

 差替えの事態が確認された22県市における年度別の支払等の状況は、表4のとおりであり、契約した消耗品の代わりに別の消耗品を納入させている県市が多くみられるが、中には消耗品ではなく、予算上、需用費では購入できない備品に差し替えて納入させているものも見受けられる。

表4 22県市の差替えの状況
(単位:千円)

区分
平成
14年度
15年度
16年度
17年度
18年度
19年度
合計
茨城県
1,529
2,741
1,343
1,295
1,279
2,403
10,593
 
消耗品→備品
866
661
252
748
876
389
3,794(35.8%)
消耗品→他の消耗品等
662
2,079
1,091
546
403
2,014
6,798(64.2%)
千葉県
2,476
5,790
7,960
7,791
9,148
33,167
 
消耗品→備品
1,548
1,054
4,091
4,412
2,263
13,370(40.3%)
消耗品→他の消耗品等
928
4,735
3,868
3,379
6,885
19,797(59.7%)
愛媛県
2,684
3,893
2,098
1,579
1,016
11,273
 
消耗品→備品
697
1,715
558
349
578
3,898(34.6%)
消耗品→他の消耗品等
1,987
2,178
1,540
1,230
438
7,374(65.4%)
熊本県
43
3,439
6,460
1,129
1,120
2,372
14,565
 
消耗品→備品
2,413
3,821
559
683
885
8,363(57.4%)
消耗品→他の消耗品等
43
1,025
2,639
570
436
1,486
6,201(42.6%)
千葉市
2,804
2,560
1,459
1,759
2,204
10,788
 
消耗品→備品
1,644
892
152
752
810
4,252(39.4%)
消耗品→他の消耗品等
1,159
1,668
1,307
1,007
1,393
6,536(60.6%)
その他の県
2,736
8,471
8,425
8,557
11,955
6,648
46,795
 
消耗品→備品
2,339
3,651
3,722
3,263
2,707
981
16,665(35.6%)
消耗品→他の消耗品等
397
4,820
4,703
5,294
9,248
5,666
30,130(64.4%)
合計
4,309
22,616
28,473
22,502
25,486
23,794
127,184
 
消耗品→備品
3,205
10,616
11,457
9,374
9,781
5,909
50,344(39.6%)
消耗品→他の消耗品等
1,104
12,000
17,016
13,127
15,705
17,885
76,839(60.4%)
注(1)
 金額は農林水産省及び国土交通省の国庫補助事務費等の合計である。
注(2)
 差替えの合計額が1000万円未満の県については「その他の県」にまとめた。

<事例>

 熊本県では、複数の部署(本庁22課室、出先機関12か所)において多額の差替えを行っており、特に消耗品を購入することとして、実際は備品に差し替えて納入させていた事態が多く見受けられた。
 このうち、本庁農林水産部(2課)、同土木部(4課)及び6地域振興局では、平成15年度から19年度までの間に、デジタルカメラやパーソナルコンピュータなどの備品計779万余円に差し替えて納入させているが、うち115万余円分については職員が自宅で保管するなどしたり、7万余円分についてはその所在が不明となったりしていた。
 さらに、本庁農林水産部(5課)、同土木部(2課)及び管下の4地域振興局では、15年度から19年度までの間に、CD/MDコンポ、焼酎、地球儀、バット等業務で使用しない物品計67万余円を納入させていた。

〔4〕  翌年度納入

物品が翌年度以降に納入されているのに、支出命令書等の書類に実際の納品日より前の日付を検収日として記載することなどにより、物品が現年度に納入されたこととして需用費を支払っていたもの

27府県市、支払額 385,003,062円(国庫補助金相当額 180,555,155円)

〔5〕  前年度納入

物品が前年度以前に納入されているのに、支出命令書等の書類に実際の納品日より後の日付を検収日として記載することなどにより、物品が現年度に納入されたこととして需用費を支払っていたもの

28府県市、支払額 49,270,275円(国庫補助金相当額 23,022,646円)

〔6〕  補助の対象外

職員録等国庫補助事業の施行とは直接関係のない物品や国庫補助事業を実施していない部署が使用する物品の購入代金等を需用費から支払っていたもの

10県市、支払額 15,061,102円(国庫補助金相当額 8,357,511円)

これらの〔1〕 から〔6〕 までの事態を府県市別、態様別に示すと表5のとおりである。

表5 不適正な経理処理等による需用費の支払の状況
(単位:千円)

府県市名
不適正な経理処理
〔6〕 補助の対象外
〔1〕 預け金
〔2〕 一括払
〔3〕 差替え
〔4〕 翌年度納入
〔5〕 前年度納入
秋田県
80
724
805
山形県
2
2,001
7,429
260
2,034
11,728
茨城県
16,779
25,980
3,506
17,237
3,132
66,636
埼玉県
180
2,571
261
3,013
千葉県
318,781
35,105
11,583
18,813
507
384,791
富山県
330
1,499
10,213
383
309
12,736
石川県
1,851
27,283
3,999
21,109
1,227
55,470
福井県
14,887
16,034
2,077
15,212
1,397
49,609
山梨県
139
2,771
111
801
3,823
三重県
10,201
685
10,886
滋賀県
183
1,414
563
2,162
大阪府
24
148
173
奈良県
152
926
10,332
79
11,491
鳥取県
2,669
805
3,341
6,816
島根県
1,557
767
263
29,078
937
32,604
岡山県
144
1,964
5,322
803
8,234
広島県
1,005
1,344
29
2,379
山口県
653
2,058
280
2,272
5,265
徳島県
104
4,066
5,186
521
9,878
香川県
967
29
997
愛媛県
5,618
3,929
5,596
4,687
4,479
24,312
高知県
2
6
3
12
福岡県
107
317
1,608
2,034
熊本県
1,376
8,228
8,013
5,719
1,081
155
24,574
鹿児島県
29
3,298
141
3,469
沖縄県
35,575
453
3,499
681
1,957
42,166
千葉市
31
312
3,671
930
229
1
5,177
大阪市
14
29
3
9
97
155
合計
平成14年度
2,596
9,395
1,698
4,670
273
18,633
15年度
57,962
21,411
9,492
32,665
6,341
1,408
129,282
16年度
62,561
23,750
12,754
32,502
4,611
2,464
138,645
17年度
110,659
27,382
9,602
42,198
3,688
1,382
194,913
18年度
93,284
19,224
10,496
39,320
4,499
702
167,527
19年度
69,513
17,136
10,550
29,196
3,608
2,399
132,405
(784,714)
396,578
(249,112)
118,299
(127,184)
54,594
(385,003)
180,555
(49,270)
23,022
(15,061)
8,357
(1,610,344)
781,408
(注)
 金額は農林水産省及び国土交通省の国庫補助金相当額の合計である。ただし、「合計」の「計」欄の( )書きは、不適正な経理処理等により支出された国庫補助事務費等の額である。

(イ) 事態の発生の背景

 需用費の支払について前記〔1〕 から〔5〕 までの不適正な経理処理を行っていたことについて、各府県市では、その主な理由を表6のとおりとしている。

表6 不適正な経理処理を行っていた主な理由
態様
主な理由
〔1〕  預け金
予算は使い切らなければならないという意識から、国庫補助事務費等に返還金が生じないよう経理処理を行っていた。
〔2〕  一括払
随時、納入された物品に対して、事務手続の省力化を図るために、その都度経理処理を行うことなく、後日、一括して支払っていた。
〔3〕  差替え
備品購入費の予算が不足していたことから、消耗品を購入したこととして備品を納入させていた。
〔4〕  翌年度納入
予算を全額執行するため、年度末に発注が集中し、納入が翌年度になったものについても現年度予算で処理した。
〔5〕  前年度納入
予算の執行計画の管理が不十分だったため、当該年度の予算が不足し、翌年度の予算で支払っていた。

 事態の発生原因としては、上記のとおり、公金の取扱いの重要性に対する認識が欠如していたこと、次の(ウ)及び(エ)のとおり職員の会計規則等の遵守に対する意識が希薄だったこと及び見積書の提出依頼から検収までの一連の会計事務を同一の係の者に行わせているなど内部統制が機能していなかったことが挙げられる。

(ウ) 会計規則等に反した取扱いの状況

 熊本県では、同県の用品調達規則により、1品目当たりの金額が所定の金額(本庁は3万円、出先機関は20万円)を超える物品を購入する場合には、図3のとおり、特定の調達部門が調達要求元からの購入依頼を受けて業者に発注することとなっている。一方、1品目当たりの金額が上記の所定の金額を超えない物品を購入する場合には、図4のとおり、調達要求元の各課室等が直接業者に発注ができることとなっている。
 しかし、同県の調達要求元の各課室等は、特定の調達部門を通して発注する方法では手続が煩雑になることや時間を要することなどから、特定の調達部門を通さずに各課で直接業者に発注できるようにするため、1品目当たりの金額が所定の金額を超えないようにした請求書等を業者から提出させるなど用品調達規則に反した経理処理を行い需用費を支払っていた。

図31品目当たりの金額が所定の金額を超える物品を購入する場合、図41品目当たりの金額が所定の金額を超えない物品を購入する場合

(エ) 内部統制における問題点

〔1〕 預け金、〔2〕 一括払及び〔3〕 差替えについては、業者に架空取引を行わせるなどして契約した物品が納入されていないのに関係書類上は納入されたこととして経理処理していた。また、〔4〕 翌年度納入及び〔5〕 前年度納入については、現年度には物品が納入されていないのに納入されたこととして関係書類に虚偽の日付を検収日として記載していたものである。
 これらの事態については、契約事務と検収事務を別の係の者が行うなど職務の分担による相互牽(けん)制が十分に機能していれば不適正な経理処理を継続して行うことは困難であったと考えられることから、各府県市における会計事務手続の状況について調査して、その内容を比較検証することとした。

a 不適正な経理処理の多寡による会計事務手続の比較

 28府県市に対する会計実地検査の結果、表5のとおり、不適正な経理処理の事態が比較的少なかった県があった一方、預け金等の不適正な経理処理の事態が多数見受けられた県もあったことから、これらの県の会計事務手続について具体例で比較検証したところ、次のような状況となっていた。

(a) 不適正な経理処理がほとんど見受けられなかった県における会計事務手続
 本院が会計実地検査を行った範囲において、不適正な経理処理による需用費の支払の事態がほとんど見受けられなかったものとして秋田県がある。同県の本庁における物品購入等の多くは集中調達により行われており、その会計事務手続は、図5のとおり、集中調達機関である本庁総務事務センターが、見積書の提出依頼、契約等を行い、調達要求元の各課室は本庁総務事務センターへの購入依頼、検収のみを行うこととなっている。

図5 秋田県の本庁における物品購入に係る会計事務手続

図5秋田県の本庁における物品購入に係る会計事務手続

(b) 不適正な経理処理が多数の部署で見受けられた県における会計事務手続
 千葉県では、業者と架空取引を行い、多額の資金を業者に保有させるなどしていた。同県における通常の物品調達に係る会計事務手続(本庁が配布する共通物品等を除く。)は、図6のとおりであり、調達要求元の各課室が見積書の提出依頼、契約、検収等の一連の会計事務手続を行い、会計機関である出納局は調達要求元からの支出命令により支払のみを行うこととなっていた。

図6 千葉県における通常の物品購入に係る会計事務手続

図6千葉県における通常の物品購入に係る会計事務手続

 前記のように、秋田県においては、調達要求元である各課室は、原則として業者に直接発注ができないこととなっている。また、契約事務は総務事務センターが、検収事務は調達要求元の各課室が行っていて、それぞれを行う部署が明確に分かれており、職務の分担による相互牽制が機能することになっている。
 これに対して、千葉県においては、調達要求元である各課室が見積書の提出依頼、契約、検収に至るまでの一連の会計事務を行っており、相互牽制が全く機能していなかった。

b 契約事務と検収事務の兼務等の状況

 上記のことから、28府県市における契約事務と検収事務の兼務の状況についてみたところ、表7のとおり、13県において、実務上契約事務と検収事務を兼務している場合が多くなっていた。さらに、うち9県では検収事務を行う検査職員の指定について県の財務規則や事務分掌等で明らかになっておらず、責任の所在が不明確となっており、職務の分担における相互牽制が機能しにくい状況となっていた。

表7 28府県市における契約事務と検収事務の兼務の状況

表728府県市における契約事務と検収事務の兼務の状況

c 本庁と出先機関における会計事務手続の比較

 28府県市における不適正な経理処理の状況を本庁と出先機関に分けて態様別に集計したところ、表8のとおり、本庁と比較して出先機関の方が不適正な経理処理が多く行われていた。
 出先機関では、見積書の提出依頼、契約、検収に至るまでの一連の会計事務手続が、同一の部署(係)において行われていることが多く、職務の分担による相互牽制が機能しにくい状況となっていた。
 また、出先機関の中でも、特に農林事務所、土木事務所等の単独の機関の方が、それらを統合して組織された振興局よりも、上記のような傾向が多くみられた。

表8 本庁・出先機関別の不適正経理の状況
(単位:千円)

区分
〔1〕 預け金
〔2〕 一括払
〔3〕 差替え
〔4〕 翌年度納入
〔5〕 前年度納入
本庁
262,327
48,864
37,022
129,569
4,084
481,867(30.2%)
出先機関
522,386
200,247
90,162
255,433
45,186
1,113,416(69.8%)
 
振興局
12,224
22,067
27,387
50,548
20,979
133,207(8.4%)
単独事務所
510,162
178,179
62,775
204,885
24,206
980,208(61.4%)
784,714
249,112
127,184
385,003
49,270
1,595,283(100%)
(注)
 金額は農林水産省及び国土交通省の国庫補助事務費等の合計額である。

イ 賃金の支払

 臨時職員に対する賃金の支払について検査したところ、28府県市において、次の(ア)及び(イ)のとおり、14年度から19年度までの間に計650,869,649円(国庫補助金相当額337,666,982円)を補助の対象とならない用途に使用していた。

(ア) 国庫補助事業を実施していない部署に配属された臨時職員に対する賃金の支払
 27府県市は、14年度から19年度までの間に、国庫補助事業を実施していない部署に配属された臨時職員に対して、国庫補助事務費等の支出科目から賃金計329,409,974円(国庫補助金相当額177,777,866円)を支払っていた。
 上記の事態について、所管省庁別、27府県市の本庁・出先機関別の状況をみると、表9のとおり、国土交通省の国庫補助事業に係るものが多く、構成比でみると本庁よりも出先機関に多くみられた。

表9 (ア)の事態に係る所管省庁別、本庁・出先機関別の内訳

(単位:千円)

所管省庁名
本庁
出先機関
合計
農林水産省
61,185
(56.7%)
46,716
(43.3%)
107,901
(100%)
国土交通省
58,908
(26.6%)
162,599
(73.4%)
221,508
(100%)
合計
120,094
(36.5%)
209,315
(63.5%)
329,409
(100%)
(注)
 金額は国庫補助事務費等の額である。

(イ) 他の国庫補助事業に係る支出科目からの賃金の支払

 24府県は、14年度から19年度までの間に、臨時職員が配属された部署が所掌する国庫補助事業とは異なる事業に係る国庫補助事務費等の支出科目から賃金計321,459,675円(国庫補助金相当額159,889,116円)を支払っていた。
 上記の事態について、所管省庁別、府県市の本庁・出先機関別の状況をみると、表10のとおり、省庁別に大きな差はないが、上記(ア)と同様に、本庁よりも出先機関に多くみられた。

表10 (イ)の事態に係る所管省庁別、本庁・出先機関別の内訳

(単位:千円)

所管省庁名
本庁
出先機関
合計
農林水産省
15,041
(9.4%)
144,370
(90.6%)
159,412
(100%)
国土交通省
9,331
(5.8%)
152,715
(94.2%)
162,047
(100%)
合計
24,373
(7.6%)
297,085
(92.4%)
321,459
(100%)
(注)
 金額は国庫補助事務費等の額である。

 上記(ア)及び(イ)の事態を府県市別、態様別に示すと表11のとおりである。

表11 国庫補助事業の対象とならない用途に支払われた賃金の状況
(単位:千円)

府県市名
(ア)の事態
(イ)の事態
(ア)及び(イ)の合計
秋田県
1,675
3,663
5,339
山形県
9,081
3,870
12,951
茨城県
24,279
4,173
28,452
埼玉県
3,367
2,743
6,111
千葉県
407
395
803
富山県
39
3,904
3,944
石川県
31,964
11,920
43,884
福井県
11,888
13,301
25,189
山梨県
1,247
1,503
2,751
三重県
16,574
15,461
32,035
滋賀県
46
46
大阪府
1,436
1,461
2,898
奈良県
15,014
1,378
16,392
鳥取県
546
1,341
1,887
島根県
851
7,553
8,404
岡山県
6,762
45,811
52,574
広島県
2,345
9,574
11,920
山口県
10,917
10,917
徳島県
1,806
670
2,476
香川県
445
834
1,280
愛媛県
8,075
8,059
16,135
高知県
892
10
903
福岡県
106
1,703
1,810
熊本県
5,081
5,855
10,937
鹿児島県
397
397
沖縄県
31,307
3,779
35,087
千葉市
185
185
大阪市
1,946
1,946
合計
平成14年度
7,059
9,148
16,208
15年度
38,008
31,291
69,299
16年度
39,430
35,450
74,881
17年度
35,348
30,971
66,319
18年度
27,330
29,101
56,432
19年度
30,600
23,924
54,525
(329,409)
177,777
(321,459)
159,889
(650,869)
337,666
(注)
 金額は農林水産省及び国土交通省の国庫補助金相当額の合計である。ただし、「合計」の「計」欄の( )書きは、補助の対象とならない用途に支出された国庫補助事務費等の額である。

 前記(ア)及び(イ)の事態が生じた理由について、28府県市では、国庫補助事務費等で支払える賃金の範囲を拡大解釈していたこと、補助事業の目的どおりに使用することについての認識が十分でなかったことなどとしている。

ウ 旅費の支払

 職員の旅費の支払について検査したところ、28府県市すべてにおいて、14年度から19年度までの間に計666,228,266円(国庫補助金相当額353,949,825円)を補助の対象とならない用途に使用していた。
 上記の事態を用務内容別に分類すると次のとおりである。
〔1〕 辞令交付、あいさつ回り、人事異動に伴う事務引継等
〔2〕 府県市単独事業に係るしゅん工検査、用地交渉等
〔3〕 府県市のイベント事業等への参加
〔4〕 起工式、開通式等記念式典への出席
〔5〕 部長等の管内視察及びその随行
〔6〕 各種協議会・期成同盟会等任意団体の総会、決起集会への参加
〔7〕 新採用職員研修等国庫補助事業に関係しない研修等への出席
〔8〕 外部団体が主催するセミナー等のうち国庫補助事業に直接関係しない研修等への出席
〔9〕 その他国庫補助事業と直接の関連性が認められない出張
 上記の事態を、府県市別、用務内容別に示すと表12のとおりである。

表12 国庫補助事業の対象とならない用務で出張した職員に対する旅費の支払状況
(単位:千円)

用務内容
府県市名
〔1〕
〔2〕
〔3〕
〔4〕
〔5〕
〔6〕
〔7〕
〔8〕
〔9〕
合計
秋田県
1,127
745
1,179
262
235
557
584
3,938
3,220
11,850
山形県
867
3,541
298
185
286
2,279
511
2,770
8,951
19,691
茨城県
1,327
1,779
2,068
1,062
752
3,264
2,615
4,678
1,434
18,984
埼玉県
780
2,018
1,292
249
432
415
260
588
684
6,722
千葉県
347
2,615
186
49
11
47
1,906
117
488
5,769
富山県
152
0
287
158
77
361
173
3,581
623
5,416
石川県
2,331
1,970
4,555
543
1,362
6,649
1,506
3,060
4,996
26,976
福井県
209
272
105
27
0
2,261
111
1,077
2,292
6,359
山梨県
467
1,156
909
161
239
923
640
1,622
896
7,017
三重県
1,462
12,143
832
214
293
3,036
2,105
5,895
10,390
36,375
滋賀県
2,911
3,406
4,668
442
333
1,019
1,687
2,963
1,408
18,840
大阪府
250
1,454
289
32
8
1,306
702
965
9,218
14,227
奈良県
489
967
647
360
272
927
3,924
1,301
329
9,220
鳥取県
449
104
16
7
86
654
226
705
170
2,419
島根県
351
295
46
225
90
2,434
206
4,482
2,561
10,694
岡山県
20
384
247
145
193
1,427
92
1,791
2,561
6,864
広島県
2,865
4,151
1,871
486
265
1,858
2,631
1,129
1,300
16,560
山口県
339
471
232
169
48
612
350
1,076
3,232
6,535
徳島県
136
932
40
45
0
222
760
309
508
2,957
香川県
95
189
1
81
934
209
81
212
1,805
愛媛県
7,117
702
384
256
210
1,308
1,380
2,116
2,520
15,997
高知県
1,138
284
278
188
285
4,477
1,503
2,726
7,526
18,409
福岡県
388
3,224
1,092
598
2,247
4,077
1,376
1,774
5,430
20,211
熊本県
1,118
4,896
2,712
762
1,142
2,774
2,806
5,116
5,540
26,870
鹿児島県
1,230
1,525
547
516
623
2,184
1,061
1,229
6,091
15,009
沖縄県
565
1,220
1,265
1,861
789
5,783
3,014
2,887
4,004
21,391
千葉市
4
1
54
3
10
2
4
20
5
108
大阪市
3
178
53
169
95
160
660
合計
(57,081)
28,551
(95,317)
50,456
(54,249)
26,289
(16,041)
9,021
(19,260)
10,433
(91,066)
51,973
(63,147)
32,354
(111,722)
58,105
(158,341)
86,764
(666,228)
353,949
注(1)
 金額は農林水産省及び国土交通省の国庫補助金相当額の合計である。ただし、「合計」欄の( )書きは、補助の対象とならない用途に支出された国庫補助事務費等の額である。
注(2)
 表中の〔1〕 から〔9〕 は、前ページで分類した〔1〕 から〔9〕 の用務内容である。

 このような事態が生じた理由について、28府県市は、国庫補助対象事務費等で執行できる旅費の範囲を拡大して解釈していたこと、出張の用務内容を正確に把握しないまま旅費を支払ったことなどとしている。

エ 内部調査の実施状況

 今年次、会計実地検査を実施した28府県市の中には、昨年の本院の検査結果を踏まえ、同様の観点で事務費等に係る内部調査を実施している府県市もある。28府県市における21年5月末現在の内部調査の実施状況(注6) は、表13のとおりであり、内部調査を終えたのは12府県市、実施中は10県、未実施は6県市となっている。
 そして、内部調査を終えた12府県市からの報告によれば、不適正な経理処理等により支払われた金額は計8億8079万余円、うち国庫補助金相当額は計1億6286万余円(算定中のものは除く。)となっている。
 上記の12府県市が実施した内部調査は、本院が実施した会計実地検査とは調査の対象、方法等が一致しないものがあるため、本院の会計実地検査により内部調査とは別の不適正な経理処理が判明したものもある(本院の検査結果と内部調査の結果との関係については、後掲(4)参照 )。

 21年5月末現在の内部調査の実施状況  本院では、平成20年次の検査において、20年4月末までの都道府県市の内部調査の実施状況を把握しているが、本年次においては、20年5月以降21年5月末までの実施状況を都道府県市から関係資料の提出を求めて確認した。以下同じ。


表13 28府県市のうち内部調査を終えた12府県市の状況(平成21年5月末現在)
(単位:千円)

府県市名
調査期間
調査対象
調査結果
部局
項目
年度
不適正金額等
国庫補助金等相当額
秋田県
平成20年10月〜21年3月
農林水産省及び国土交通省の補助事業の所管部局
需用費
賃金
旅費
平成18
21
農林水産省
算定中
国土交通省
算定中
埼玉県
20年10月〜12月
知事部局
需用費
賃金
旅費
15〜19
61,886
農林水産省
9,266
国土交通省
25,323
総務省
959
法務省
2,182
文部科学省
20
厚生労働省
916
経済産業省
396
(計)
39,065
三重県
20年10月〜12月
企業会計を除く全部局
需用費
賃金
旅費
19
48,185
農林水産省
算定中
国土交通省
算定中
総務省
70
文部科学省
286
厚生労働省
算定中
防衛省
317
(計)
674
大阪府
20年11月〜21年1月
本庁147所属、出先249所属
需用費
賃金
旅費
その他
15〜19
92,582
農林水産省
5,771
国土交通省
22,769
総務省
1,181
文部科学省
74
厚生労働省
43,972
経済産業省
3,050
環境省
414
(計)
77,234
奈良県
20年11月〜21年3月
警察本部を除く知事部局ほか
需用費
賃金
旅費
15〜20
158,047
農林水産省
算定中
国土交通省
算定中
総務省
6,943
文部科学省
164
厚生労働省
算定中
経済産業省
678
環境省
430
(計)
8,216
山口県
20年11月〜12月
本庁4所属、出先26所属
需用費
旅費
19
徳島県
20年10月〜21年2月
知事部局、教育委員会
需用費
賃金
旅費
19
11,700
農林水産省
算定中
国土交通省
算定中
厚生労働省
算定中
香川県
20年11月〜12月
全部局
需用費
15〜20
1,796
(全額県単費)
熊本県
20年12月〜21年3月
知事部局、教育委員会、警察本部等
需用費
15〜20
101,113
鹿児島県
20年10月〜12月
農林水産省及び国土交通省の補助事業の所管部局
需用費
賃金
旅費
19
(20年3月分)
806
農林水産省
344
国土交通省
136
(計)
480
沖縄県
20年11月〜21年4月
県庁内全部局
需用費
賃金
旅費
15〜19
19
19
27,777
農林水産省
9,461
国土交通省
9,754
厚生労働省
176
環境省
417
(計)
19,810
大阪市
20年2月〜9月
全部局
すべての経費
9〜19
376,876
農林水産省
153
総務省
14,967
文部科学省
4
厚生労働省
1,668
経済産業省
587
(計)
17,381
合計
 
 
 
 
880,794
 
162,863
注(1)
 山形、茨城、千葉、富山、石川、福井、滋賀、岡山、愛媛、高知各県は内部調査実施中
注(2)
 山梨、鳥取、島根、広島、福岡各県及び千葉市は内部調査未実施

 なお、千葉県では、知事部局全所属、行政委員会等が15年度から19年度までの間に執行した需用費について、本院の検査に準拠した内部調査を行ったが、うち農林水産省及び国土交通省の補助事業を所管する農林水産部及び県土整備部等については、本院が実施した会計検査に協力・連携しながら調査を進めたものであり、本院の会計実地検査及び本院の検査上の指示の下に行われた追加調査に基づき集計した調査結果及び千葉県が独自に実施した他の知事部局等に対する調査結果を、21年9月、千葉県の内部調査の結果として公表した。

(3) 20年次に会計実地検査を行った12道府県のその後の状況

ア 補助金等の返還状況及び再発防止策の実施状況

 本院が、20年次に会計実地検査を行い、平成19年度決算検査報告において、国庫補助事務費等に係る不適正な経理処理等について、不当事項として掲記した12道府県の21年7月末現在における補助金等の返還状況及び再発防止策の実施状況は表14のとおりとなっており、本院の指摘に対応する国庫補助金相当額の返還については、農林水産省及び国土交通省において既に返還済み又は返還の手続がとられている。

表14 12道府県における補助金等の返還状況及び再発防止策の実施状況
(平成21年7月末現在)

道府県名
補助金等の返還状況
主な再発防止策
再発防止策の実施状況
北海道
59,447千円
国に返還済み
〔1〕 職員の意識改革と資質の向上
〔2〕 予算執行の適正化
〔3〕 牽制機能の強化
〔1〕 財務会計事務執行方針に国庫補助事業事務費の適正執行確保のための改善策の着実な実行を図ることを定め、各種会議・研修会等で改善策を周知徹底
〔2〕 関係省庁からの使途基準を周知徹底、国庫補助事業事務費と道単独事務費を明確にして予算配当、執行状況を定期的に調査
〔3〕 納品書の添付、納品検査員の指定方法等について、物品購入等事務取扱要領を改正するなどして周知徹底
青森県
25,002千円
国に返還済み
〔1〕 物品購入の制度・運用の見直し
〔2〕 国庫補助事務費の適正な執行に係る措置
〔3〕 監視機能の強化
〔1〕 検査機関の分離、物品購入の計画的執行
〔2〕 使途基準を確認し、旅費については用務欄に国庫補助事業名を記入
〔3〕 巡回指導、財務事務検査の強化
岩手県
99,806千円
国に返還済み
〔1〕 物品調達システムの見直し
〔2〕 内部統制の強化
〔3〕 職員教育(意識改革)
〔1〕 会計規則の運用を改正し、契約事務と検収事務の相互牽制の強化
〔2〕 出納局による物品等に係る抜き打ち検査を実施
〔3〕 会計職員等研修会を開催し、会計の基本を周知
福島県
26,112千円
国に返還済み
(国土交通省所管分は一部協議中)
〔1〕 適正な予算執行について職員への周知徹底
〔2〕 審査機能・牽制機能の強化
〔3〕 財務事務検査の充実強化
〔1〕 「公共事務費担当者の手引き」を策定し、説明会を開催
〔2〕 随時確認調査の実施
〔3〕 実施要領を改正し、補助金の適正支出に係る検査項目の追加
栃木県
5,240千円
国に返還済み
(国土交通省所管分は協議中)
〔1〕 職員の意識改革の徹底
〔2〕 財務会計事務検査の充実
〔3〕 物品購入等に係る履行確認等の明確化
〔1〕 各所属長への通知を始め様々な機会を通した職員の意識改革の徹底。また、会計職員が自らの権限と役割を自覚するとともに的確な財務会計事務を執行するための研修の充実
〔2〕 物品検収を重点検査項目に加えるなど、厳格な検査の実施
〔3〕 財務規則等の一部改正
群馬県
5,097千円
国に返還済み
(国土交通省所管分は協議中)
〔1〕 法令遵守と職員の意識改革の徹底
〔2〕 物品検査確認の徹底、納品書の添付
〔3〕 国庫補助対象となる旅費の範囲の周知徹底
〔1〕 〔2〕 通知を発して、周知徹底
〔1〕 〔2〕 会計局審査課における指導検査体制の強化
〔3〕 旅費使途協議調書等を作成するなど旅行目的等を厳密かつ的確に判断した上で旅行命令を行い支出するよう通知を発して、周知徹底
長野県
51,506千円
国に返還済み
〔1〕 会計規則等を遵守した予算執行の徹底
〔2〕 完了検査の強化
〔3〕 公金支出の際のチェック強化
〔1〕 通知や会議での周知・徹底
〔2〕 購入起案者と給付完了検査職員とを明確に分離し、相互の牽制強化
〔3〕 給付完了検査について出納機関が実地調査
岐阜県
11,512千円
国に返還済み
(国土交通省所管分は一部協議中)
19年次の再発防止に加え
〔1〕 経理年度区分の徹底
〔2〕 補助事業目的にあった使途の適正化
〔3〕 財源に注意した旅費の執行
〔1〕 物品の計画的な発注の徹底
〔2〕 出納審査時の雇用職員の業務内容と予算執行科目の整合性の確認
〔3〕 出張時に補助対象用務であることが、明らかになるよう内容を記載
愛知県
129,904千円
国に返還済み
〔1〕 職員の意識改革
〔2〕 物品調達体制等の見直し
〔3〕 予算執行等の見直し
〔1〕 研修や通知を通じてコンプライアンスの徹底、公益通報制度の周知徹底
〔2〕 納品書の徴取・保存、受領印の押印、計画的な物品の購入、契約状況の確認強化、物品調達体制の拠点化、契約制度の見直し、電子調達システムを用いたオープンカウンタの利用拡大
〔3〕 年度当初の90%予算配当・配分の実施、予算執行の実績を踏まえた地方機関への定期的な予算配分の見直し、不測の事態での流用制度の活用
京都府
48,081千円
国に返還済み
〔1〕 事務費の年間執行計画の策定
〔2〕 財務会計事務の指導・助言の強化
〔3〕 財務会計執行体制の強化に向けた組織体制の在り方の検討
〔1〕 「年間事務費執行計画」を策定し、毎月の執行状況も併せて公表
〔2〕 財務指導員(5名)の配置
〔3〕 外部委員も加えた財務会計改革委員会の設置・運営
和歌山県
31,300千円
国に返還済み
(国土交通省所管分は一部協議中)
〔1〕 職員の意識改革
〔2〕 予算措置と執行システムの改善
〔3〕 内部牽制によるチェック機能の強化
〔1〕 会計法令、財務規則等の遵守及び公金の取扱いの重要性に対する認識を改めて徹底させるための職員研修等の実施
〔2〕 適切な予算配当の実施とより計画的な予算執行への改善
〔3〕 会計年度や会計事務手続に対して厳正に対処するため、課室内での相互チェックや内部審査等の確実な実施
大分県
10,592千円
国に返還済み
〔1〕 国庫補助事業の執行適正化の周知徹底
〔2〕 補助事務費の使途基準の遵守を徹底
〔3〕 納品検査体制の改善
〔1〕 〔2〕 会議や通知を通して周知徹底
〔3〕 通知を発して物品要求課が検査を行うよう体制を改善し、早期発注、年度内納品の指導を強化
(注)
 上記の補助金等の返還額の中には、より詳細に個別に補助事業を特定した上で当該補助金等に係る補助率を乗じて算出しているものなどがあるため、道府県の予算科目の目レベルで国庫補助事務費等の総額に占める各補助金等の割合を乗じて算出した本院の指摘金額とは完全には一致しない。

イ 内部調査の実施状況

 12道府県では、昨年の本院の検査結果を踏まえ、会計実地検査を実施していない他の部局に係る事務費等の経理を中心として内部調査を実施している。12道府県における21年5月末現在の内部調査の実施状況は、表15のとおりであり、11道府県が既に内部調査を終えたとしている(大分県は実施中)。
 そして、内部調査を終えた11道府県からの報告によれば、新たに判明した不適正な経理処理等により支払われた金額は計14億5538万余円、うち国庫補助金相当額は計1億1178万余円(算定中のものは除く。)となっている。

表15 12道府県のうち内部調査を終えた11道府県の状況(平成21年5月末現在)
(単位:千円)

道府県名
調査期間
調査対象
調査結果
部局
項目
年度
不適正金額等
国庫補助金等相当額
北海道
平成20年11月〜21年2月
本庁(農政部、水産林務部、建設部)、全支庁(土木現業所及び森づくりセンターを含む。)
需用費
賃金
旅費
平成19
35,535
農林水産省
8,165
国土交通省
9,769
(計)
17,935
青森県
(1)20年10月〜11月
(2)20年12月〜21年2月
(1)知事部局
(2)知事部局及び教育庁ほか7機関
(1)需用費
賃金
旅費
(2)需用費
(消耗品)
15〜19
49,438
農林水産省
7,636
国土交通省
10,449
文部科学省
2,454
厚生労働省
1,379
経済産業省
214
環境省
2,104
(計)
24,238
岩手県
20年10月〜11月
全部局(警察本部は実施中)
需用費
賃金
旅費
14〜20
19
19
61,312
農林水産省
8,125
国土交通省
4,010
法務省
3
厚生労働省
258
(計)
12,397
福島県
20年11月
全部局
需用費
賃金
旅費
19
28,142
農林水産省
7,854
国土交通省
6,445
文部科学省
37
厚生労働省
139
環境省
17
(計)
14,493
栃木県
20年11月〜12月
環境森林部、農政部、県土整備部の本庁各課及び出先機関
需用費
旅費
19
6,173
農林水産省
1,221
国土交通省
2,330
(計)
3,551
群馬県
20年10月〜11月
環境森林部、農政部、県土整備部の本庁各課、出先機関等
需用費
賃金
19
2,017
農林水産省
712
国土交通省
612
(計)
1,324
長野県
20年10月〜11月
環境部、農政部、林務部、建設部の本庁各課及び出先機関
需用費
賃金
旅費
19
2,386
農林水産省
221
国土交通省
1,269
(計)
1,491
岐阜県
20年11月〜21年3月
全部局(警察本部を除く。)
需用費
賃金
旅費
14〜20
49,509
農林水産省
2,747
国土交通省
10,252
内閣府
20
総務省
6
厚生労働省
1,641
環境省
73
(計)
14,741
愛知県
20年10月〜21年2月
全部局(警察本部を除く。)
需用費
賃金
旅費
13〜20
15〜19
15〜19
1,179,258
農林水産省
算定中
国土交通省
算定中
総務省
1,728
文部科学省
算定中
厚生労働省
算定中
環境省
算定中
(計)
1,728
京都府
20年11月
農林水産省及び国土交通省所管補助事業関係所属
需用費
賃金
旅費
19
26,261
農林水産省
5,631
国土交通省
6,858
(計)
12,489
和歌山県
20年10月〜11月
全部局(警察本部を除く。)
需用費
賃金
旅費
19、20
15,345
農林水産省
3,575
国土交通省
2,830
厚生労働省
941
環境省
42
(計)
7,390
合計
 
 
 
 
1,455,381
 
111,782
(注)
 大分県は内部調査実施中

(4) 都道府県及び政令市に係る本院の検査及び内部調査の状況

ア 9都県及び16政令市における内部調査の実施状況

 全47都道府県及び18政令市のうち、前記(2)エの28府県市及び(3)イの12道府県以外の9都県及び16政令市の中にも、昨年の本院の検査結果を踏まえ、同様の観点で事務費等に係る内部調査を実施している都県市がある。9都県及び16政令市(注7) における21年5月末現在の内部調査の実施状況は、表16のとおり、内部調査を終えたのは11都県市、実施中は2政令市、未実施は12県市となっている。
 そして、内部調査を終えた11都県市からの報告によれば、不適正な経理処理等により支払われた金額は計6億4352万余円、うち国庫補助金相当額は計7100万余円(算定中のものは除く。)となっている。

 9都県及び16政令市  東京都、宮城、神奈川、新潟、静岡、兵庫、佐賀、長崎、宮崎各県、札幌、仙台、さいたま、横浜、川崎、新潟、静岡、浜松、名古屋、京都、堺、神戸、岡山、広島、北九州、福岡各政令市


表16 9都県及び16政令市のうち内部調査を終えた11都県市の状況(平成21年5月末現在)

(単位:千円)

都県市名
調査期間
調査対象
調査結果
部局
項目
年度
不適正金額等
国庫補助金等相当額
東京都
平成20年11月
農林水産省及び国土交通省所管の国庫補助金に係る執行局のうち3局
需用費
賃金
旅費
平成
18、19
1,766
(全額都単費)
20年11月〜21年3月
国庫補助金等の受入実績があるすべての局
需用費
賃金
旅費
15〜19
神奈川県
20年10月〜11月
全部局(病院事業庁、教育委員会、警察本部を含む。)
需用費
賃金
旅費
備品購入費
19
16,628
農林水産省
算定中
国土交通省
算定中
環境省
算定中
20年10月〜21年4月
農林水産省及び国土交通省所管の補助事業の所管部局
需用費
賃金
旅費
備品購入費
15〜19
230,655
農林水産省
算定中
国土交通省
算定中
20年10月〜21年3月
総務部統計課
国庫委託事業に係るすべての経費
14〜19
25,364
農林水産省
1,170
内閣府
3
総務省
13,350
文部科学省
1,084
厚生労働省
673
経済産業省
9,082
(計)
25,364
新潟県
20年10月〜21年2月
全部局(公共事業部門92所属、非公共事業部門310所属)
需用費
賃金
(謝金を含む。)
旅費
15〜19
166,683
農林水産省
8,135
国土交通省
30,489
厚生労働省
2,782
環境省
2,818
防衛省
263
(計)
44,490
静岡県
20年10月
全部局(教育委員会及び警察本部を除く。)
費目を指定していない
20
さいたま市
20年10月
全部局
需用費
賃金
旅費
15〜19
横浜市
20年10月〜12月
農林水産省及び国土交通省の補助事業の所管部局
需用費
賃金
旅費
※農林水産省、国土交通省所管の国庫補助事業事務費分
18、19
川崎市
20年11月〜21年3月
全部局
需用費
役務費
備品購入費
19
静岡市
20年11月〜21年2月
12局、3独立機関事務局
需用費
賃金
旅費
使用料
賃借料
備品購入費
15〜19
200,183
農林水産省
算定中
国土交通省
算定中
総務省
算定中
文部科学省
算定中
厚生労働省
算定中
浜松市
20年10月〜21年2月
農林水産省及び国土交通省の補助事業の所管部局
需用費
賃金
旅費
18、19
2,240
農林水産省
152
国土交通省
992
(計)
1,145
京都市
20年6月〜7月
全部局
経費全般
20
堺市
20年6月
全部局
需用費
賃金
旅費
その他
18〜20
合計
 
 
 
 
643,522
 
71,000
注(1)
 新潟、名古屋両政令市は内部調査実施中
注(2)
 宮城、兵庫、佐賀、長崎、宮崎各県及び札幌、仙台、神戸、岡山、広島、北九州、福岡各政令市は内部調査未実施

イ 47都道府県及び18政令市に係る本院の検査及び内部調査の状況

 本院が行った都道府県及び政令市における国庫補助事務費等の経理についての検査結果と都道府県及び政令市が行った事務費等の経理についての内部調査の状況は表17のとおりである。
 このうち、「本院の検査結果」には、農林水産省及び国土交通省所管の国庫補助事務費に係る不適正な経理処理等の事態(20年次に検査を行い平成19年度決算検査報告に掲記した12道府県及び21年次に検査を行い前掲(2)に記述した28府県市の事態)のほか、3都県警察(注8) の警察事務等(内閣府(警察庁)所管)に係る不適正な会計経理の事態(前掲不当事項 参照)及び総務省等5省(注9) の6府県(注10) に対する指定統計調査等の事務の委託費に係る不適正な会計経理の事態(前掲不当事項 参照)を含めている。

 3都県警察  警視庁、岩手、香川両県警察本部
 総務省等5省  総務、文部科学、厚生労働、農林水産、経済産業各省
 6府県  京都府、岩手、埼玉、大分、宮崎、沖縄各県

表17 47都道府県及び18政令市に係る本院の検査及び内部調査の状況
(単位:千円)

都道府県・政令市名
本院の検査結果
内部調査の結果
(平成20年5月から21年5月末まで)
(参考)計
不適正金額等
国庫補助金等相当額
不適正金額等
国庫補助金等相当額
不適正金額等
国庫補助金等相当額
20年次検査
21年次検査
北海道
97,123
60,294
35,535
17,935
132,658
78,230
青森県
50,950
25,121
49,438
24,238
100,389
49,359
岩手県
203,744
11,737
〔10,650〕
<1,086>
113,572
〔4,739〕
<1,086>
61,312
12,397
276,794
〔10,650〕
<1,086>
125,970
〔4,739〕
<1,086>
宮城県
未実施
秋田県
34,452
17,995
21
算定中
34,474
17,995
山形県
69,963
44,371
実施中
69,963
44,371
福島県
72,816
33,005
28,142
14,493
100,958
47,499
茨城県
243,523
114,073
実施中
243,523
114,073
栃木県
24,006
9,839
6,173
3,551
30,179
13,390
群馬県
19,738
9,919
2,017
1,324
21,756
11,243
埼玉県
30,603
<884>
16,732
<884>
61,886
39,065
86,535
<884>
52,195
<884>
千葉県
827,664
391,364
実施中
827,664
391,364
東京都
3,683
〔3,683〕
848
〔848〕
1,766
5,450
〔3,683〕
848
〔848〕
神奈川県
272,649
25,364
272,649
25,364
新潟県
166,683
44,490
166,683
44,490
富山県
47,603
22,097
実施中
47,603
22,097
石川県
261,883
126,332
実施中
261,883
126,332
福井県
152,067
81,158
実施中
152,067
81,158
山梨県
26,874
13,592
未実施
26,874
13,592
長野県
105,728
51,242
2,386
1,491
108,114
52,734
岐阜県
55,319
31,834
49,509
14,741
104,828
46,576
静岡県
愛知県
310,466
130,070
1,179,258
1,728
1,489,725
131,799
三重県
150,544
79,298
48,185
674
182,023
79,972
滋賀県
43,364
21,049
実施中
43,364
21,049
京都府
97,409
10
<10>
49,267
<10>
26,261
12,489
123,682
<10>
61,756
<10>
大阪府
30,363
17,299
92,582
77,234
99,838
77,445
兵庫県
未実施
奈良県
79,448
37,103
158,047
8,216
173,299
45,320
和歌山県
79,385
36,242
15,345
7,390
94,731
43,632
鳥取県
25,574
11,124
未実施
25,574
11,124
島根県
95,294
51,703
未実施
95,294
51,703
岡山県
144,737
67,673
実施中
144,737
67,673
広島県
67,425
30,860
未実施
67,425
30,860
山口県
45,294
22,718
45,294
22,718
徳島県
33,162
15,312
11,700
算定中
41,110
15,312
香川県
7,591
〔323〕
4,242
〔158〕
1,796
9,387
〔323〕
4,242
〔158〕
愛媛県
109,937
56,444
実施中
109,937
56,444
高知県
34,879
19,325
実施中
34,879
19,325
福岡県
46,727
24,057
未実施
46,727
24,057
佐賀県
未実施
長崎県
未実施
熊本県
120,206
62,381
101,113
210,599
62,381
大分県
20,445
156
<156>
11,588
<156>
実施中
20,602
<156>
11,588
<156>
宮崎県
42
<42>
42
<42>
未実施
42
<42>
42
<42>
鹿児島県
38,030
18,876
806
480
38,512
19,156
沖縄県
144,221
<4,329>
102,975
<4,329>
27,777
19,810
157,279
<4,329>
112,418
<4,329>
都道府県計
1,137,134
2,927,071
〔14,657〕
<6,510>
農林水産省   910,403
国土交通省  1,110,849
内閣府        —
内閣府(警察庁) 5,746
総務省      4,306
法務省        —
文部科学省     271
厚生労働省     284
経済産業省    1,192
環境省        —
防衛省        —
 (計)   2,033,054
2,400,398
農林水産省  80,043
国土交通省  143,301
内閣府      23
内閣府(警察庁) —
総務省    24,239
法務省     2,185
文部科学省   4,121
厚生労働省  52,881
経済産業省  13,422
環境省     6,319
防衛省      580
 (計)   327,119
6,325,123
〔14,657〕
<6,510>
農林水産省   984,405
国土交通省  1,228,933
内閣府        23
内閣府(警察庁) 5,746
総務省      28,546
法務省      2,185
文部科学省    4,393
厚生労働省    53,166
経済産業省    14,614
環境省      6,319
防衛省       580
 (計)   2,328,915
札幌市
未実施
仙台市
未実施
さいたま市
千葉市
15,884
5,471
未実施
15,884
5,471
横浜市
川崎市
新潟市
実施中
静岡市
200,183
算定中
200,183
算定中
浜松市
2,240
1,145
2,240
1,145
名古屋市
実施中
京都市
大阪市
5,655
2,762
376,876
17,381
382,443
20,099
堺市
神戸市
未実施
岡山市
未実施
広島市
未実施
北九州市
未実施
福岡市
未実施
政令市計
21,540
農林水産省    52
国土交通省   8,181
内閣府      —
内閣府(警察庁) —
総務省      —
法務省      —
文部科学省    —
厚生労働省    —
経済産業省    —
環境省      —
防衛省      —
 (計)    8,234
579,300
農林水産省    305
国土交通省    992
内閣府      —
内閣府(警察庁) —
総務省    14,967
法務省      —
文部科学省     4
厚生労働省   1,668
経済産業省    587
環境省      —
防衛省      —
 (計)   18,526
600,751
農林水産省    313
国土交通省   9,174
内閣府      —
内閣府(警察庁) —
総務省    14,967
法務省      —
文部科学省     4
厚生労働省   1,668
経済産業省    587
環境省      —
防衛省      —
 (計)   26,716
合計
1,137,134
2,948,611
〔14,657〕
<6,510>
農林水産省   910,456
国土交通省  1,119,030
内閣府       —
内閣府(警察庁) 5,746
総務省      4,306
法務省       —
文部科学省     271
厚生労働省     284
経済産業省    1,192
環境省       —
防衛省       —
 (計)   2,041,288
2,979,698
農林水産省  80,348
国土交通省  144,294
内閣府      23
内閣府(警察庁) —
総務省    39,207
法務省     2,185
文部科学省   4,125
厚生労働省  54,550
経済産業省  14,009
環境省     6,319
防衛省      580
 (計)   345,646
6,925,874
〔14,657〕
<6,510>
農林水産省   984,719
国土交通省  1,238,107
内閣府       23
内閣府(警察庁) 5,746
総務省     43,513
法務省      2,185
文部科学省    4,397
厚生労働省   54,835
経済産業省   15,202
環境省      6,319
防衛省       580
 (計)   2,355,631
注(1)
 「本院の検査結果」欄における〔 〕書きは、内閣府(警察庁)所管の警察事務等の不適正金額に係るもので内書きである。また、〈 〉書きは、総務省等5省の指定統計調査等に係る事務の委託費で内書きである。
注(2)
 大阪府、埼玉、三重、奈良、徳島、熊本、鹿児島、沖縄各県及び大阪市については、本院の検査結果と府県市の内部調査の結果と一部金額が重複しているため合計欄の額はそれぞれの額の計と合わない。
注(3)
 内部調査の結果の「国庫補助金等相当額」欄のうち、神奈川、愛知、三重、奈良各県の金額については、部分的に算定が終わった額のみを記載したものであり、このほかに算定中となっているものがある。

 なお、政令市以外の市町村のうち13市を対象として、農林水産省及び国土交通省所管の国庫補助事業に係る事務費等の経理について検査したところ、すべての市において不適正な経理処理等が見受けられ、これらについても第3章に記述している(前掲不当事項2か所参照    )が、それを市別、所管別、費目別に整理すると、表18のとおりとなっている。

表18 13市における国庫補助事務費等に係る不適正経理の状況
(単位:千円)

市名
所管省庁名
需用費
賃金
旅費
人件費
役務費等
旭川市
農林水産省
国土交通省
106
3,265
164
1,157
4,693
北見市
農林水産省
国土交通省
617
617
青森市
農林水産省
1,832
30
1,862
国土交通省
6,595
349
3,998
2,384
13,327
八戸市
農林水産省
61
61
国土交通省
2,438
973
3,412
盛岡市
農林水産省
3,069
3,069
国土交通省
22,576
4,285
255
27,117
北上市
農林水産省
2,548
4,595
11
7,155
国土交通省
2,069
4,167
104
6,340
八幡平市
農林水産省
1,463
1,463
国土交通省
396
12,011
2,820
15,228
長野市
農林水産省
514
109
92
715
国土交通省
1,479
9
1,489
松本市
農林水産省
1,084
1,084
国土交通省
3,189
64
261
3,514
豊橋市
農林水産省
国土交通省
12,706
931
10
8,260
9,497
31,406
豊田市
農林水産省
228
228
国土交通省
132
2
135
和歌山市
農林水産省
6,765
35
6,801
国土交通省
3,361
1,323
9
4,694
田辺市
農林水産省
1,505
133
1,639
国土交通省
3,051
380
45
1,898
485
5,860
合計
農林水産省
(32,779)
17,610
(11,036)
6,168
(597)
303
(—)
(—)
(44,413)
24,081
国土交通省
(117,719)
58,105
(42,430)
25,105
(8,367)
4,117
(31,409)
18,144
(24,828)
12,367
(224,754)
117,840
(注)
 金額は国庫補助金相当額である。ただし、「合計」欄の( )書きは、不適正な経理処理等により支出された国庫補助事務費等の額である。

4 本院の所見

 21年次は、20年次の12道府県に対する検査に続き、28府県市を対象として、国庫補助事業に係る事務費等の経理の状況について検査したところ、検査の対象とした19年度まで、不適正な経理処理により需用費を支払ったり、補助の対象とならない用途に需用費、賃金又は旅費を支払ったりしている事態が多数見受けられた。さらに、一部の県では、業者に預けた需用費の一部を現金で返金させるなどして、これを別途に経理して業務の目的外の用途に使用するなど公金を不正に使用した事態も見受けられた。
 これらの原因としては、上記の府県市において、会計経理の業務に携わる者の会計法令等の遵守及び公金の取扱いの重要性に対する認識が欠如していたこと、また、契約事務と検収事務が調達要求元により行われているなど物品の購入等に係る内部統制がほとんど機能していなかったことなどが挙げられる。
 会計実地検査で判明した前記の各事態は、会計法令等に抵触した不適正な経理処理等が行われていたということだけでなく、地方公共団体における会計事務手続について職務の分担による相互牽制が有効に機能していないことを示すものであり、ひいては公金の使用に対する国民の信頼を著しく損なう極めて遺憾な事態である。
 関係府県市及び関係省庁においては、国庫補助事業に係る事務費等が、国民の税金その他の貴重な財源で賄われるものであることに留意して、次のような措置を講ずるとともに、これらが交付されている都道府県等の会計経理の適正化及び規律の確保に努めるなど、その透明性の向上を図ることが重要である。
ア 前記の事態が明らかとなった各府県市においては、不適正な事態に係る国庫補助金相当額について速やかに返還等の所要の措置を執るとともに、今回の本院の検査により明らかとなった事態を重く受け止めて、予算執行の適正化、会計事務手続における職務の分担による相互牽制機能の強化、職員に対する基本的な会計法令等の遵守に関する研修指導の徹底を図るなどして、内部統制を機能させることによる再発防止を推進すること
イ 国庫補助金等を交付している関係省庁においては、不適正な事態の対象となった国庫補助金相当額について速やかに返還の措置等を執るとともに、都道府県等に対して、国庫補助事業に係る事務費等の経理の適正化について引き続き指導の徹底を図ること
 また、財政当局においては、第64回補助金等適正化中央連絡会議幹事会(平成20年11月21日)において、国庫補助事業に係る事務費等の不適正な経理処理等の実態について注意を喚起するなどしているが、引き続き、補助金等に係る予算執行の適正化に留意することが望まれる。
 近年、本院の検査結果等を踏まえ、事務費等の経理に関し内部調査を行い、その結果を公表している地方公共団体も見受けられるが、まだ内部調査を実施していない地方公共団体においても、速やかに内部調査を行うなどして、会計経理の適正化に関する取組を自主的に行うことが望まれる。

 本院は、国庫補助事務費等の経理について、これまでに会計実地検査を実施したすべての道府県市において不適正な会計経理等が行われていたことを踏まえ、引き続きその他の県等についても検査を実施していくこととする。