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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成21年9月

独立行政法人の業務、財務、入札、契約の状況について


第3 検査の結果に対する所見

1 検査の結果の概要

 独立行政法人の入札、契約の状況について、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、随意契約の見直し状況の検証を中心に、契約事務が適切に行われて、公正性、競争性及び透明性が確保されているかなどに着眼して検査を実施した。

(1) 独立行政法人の契約制度について

 21年4月1日現在の独立行政法人の契約制度の状況について、20年報告(20年4月1日現在)からの改善状況等をみると、次のとおりである。

ア 一般競争契約における公告の方法を明確に会計規程等で定めていない法人や、公告期間の下限が国の基準を下回っている法人については、規定の整備、見直しが行われていて、これらすべての法人で改善されている。また、指名競争契約限度額については、引き続き国の金額基準を上回っている法人が1法人ある(前掲 参照)。

イ 随意契約の基準については、随意契約によることができる範囲が明確かつ具体的でない包括的随契条項又は契約相手方が公益法人の場合は随意契約ができるとする公益法人随契条項を引き続き設定している法人がそれぞれ7法人、2法人ある(前掲 参照)。

ウ 企画競争又は公募を導入している法人は、それぞれ3法人、15法人増加して、95法人、85法人となっている。また、このうち実施方法に係る要領、マニュアル等を整備している法人は、それぞれ33法人、35法人増加して、70法人、61法人となっている(前掲 参照)。

エ 契約の発注に際して、予定価格を作成しなければならない旨を明確に会計規程等で定めていなかった法人については、規定の整備が行われていて、すべての法人で改善されている。また、予定価格の作成の省略に関する取扱いについて、引き続き国の場合において省略できるとされている金額基準より高額な金額基準を設定している法人が1法人ある。さらに、予定価格の作成の省略に関する取扱いについて、予定価格の作成を省略する理由や対象範囲が明確でない要件を設定している法人が18法人ある(前掲 参照)。

(2) 入札及び契約全般の状況について

ア 20年度(12月まで)の対象契約について契約方式の状況をみると、随意契約の割合は件数で57.2%(うち企画・公募を経ない随契36.2%)、支払金額で67.9%(同48.0%)となっていて、前年度同期と比較して、件数割合で17.2ポイント(同28.6ポイント)、支払金額割合で7.2ポイント(同16.5ポイント)低下しているものの、件数割合、支払金額割合共に競争契約を依然上回っている。また、平均落札率も、競争契約の89.3%に対して随意契約が97.5%と8.2ポイント高くなっていて、競争性及び経済性の面でまだ十分ではない状況となっている。(2か所参照    )。
 一方、競争契約の割合(件数42.7%、支払金額32.0%)は、前年度同期と比較して上昇しているものの、応札者数の状況をみると、1者応札の割合(件数42.4%、支払金額34.7%)は、前年度同期と比較して、件数割合で7.1ポイント、支払金額割合で6.8ポイント上昇している。そして、1者応札の場合の平均落札率(95.7%)は、複数応札の場合の平均落札率(84.0%)よりも11.7ポイント上回っているなど、落札率からみた場合、競争契約であっても1者応札については、実質的な競争性を確保しにくい状況となっている(3か所参照      )。

イ 19年度及び20年度に締結された一般競争契約の一部を抽出して、入札に係る手続の実施状況について検査したところ、公告の周知期間や見積期間の確保が十分でなかったり、入札参加要件が制限的なものとなっていたり、仕様書等の内容が明確になっていなかったりなどしていて、競争性、公正性等の確保に関して検討すべきであったと認められる事態が見受けられた(前掲 参照)。

(3) 随意契約の実施状況について

ア 対象契約のうち20年度(12月まで)の随意契約について、予定価格の作成を省略しているものの割合は29.2%となっており、前年度同期と比較して26.5ポイント低下している。しかし、このうち各法人の会計規程等では予定価格の作成を省略できることとされていないのに、これを省略しているものが3,917件見受けられた(前掲 参照)。

イ 対象契約のうち20年度(12月まで)の企画随契の件数と支払金額は、前年度同期と比較して件数で77.3%、支払金額で92.2%増加している。そして、企画競争への応募者数の状況をみると、1者応募の件数割合(28.2%)は、前年度同期と比較して10.5ポイント低下しているものの、依然として高い割合となっていて、企画競争において複数の事業者の中から優れた企画を提案した者を選定する手続の実効性を確保しにくい状況となっている(前掲 参照)。
 また、19年度及び20年度に締結された企画随契の一部を抽出して、企画競争に係る手続の実施状況について検査したところ、企画競争参加要件を必要以上に限定していたり、審査に当たっての評価方法が具体的でなかったり、審査を行っている外部有識者に契約の利害関係者が含まれていたりなどしていて、競争性、公正性及び透明性の確保に関して検討すべきであったと認められる事態が見受けられた(前掲 参照)。

ウ 対象契約のうち20年度(12月まで)の公募を経た随意契約の件数と支払金額は、前年度同期と比較して、件数で362.3%、支払金額で76.7%と大幅に増加している(前掲 参照)。
 また、19年度及び20年度に公募を実施して締結された契約の一部を抽出して、公募に係る手続の実施状況について検査したところ、公募において契約予定相手方名を表示しているなど、競争性、公正性及び透明性の確保に関して検討すべきであったと認められる事態が見受けられた(前掲 参照)。

エ 20年1月から12月までの間において締結された契約のうち、点検対象随意契約と対応することが把握できた18,318件について、各法人が講じた見直し措置の状況をみると、8,279件(45.1%)がより競争性の高い契約方式に移行している。このうち、競争契約に移行したものについてみると、1者応札の割合は56.2%となっており、1者応札の場合の平均落札率(95.5%)は複数応札の場合と比べて8.9ポイント高くなっている。また、1者応札となっている契約の82.7%は、従前の随意契約と同一の契約相手方となっており、契約相手方の固定化の割合が高くなっていて、十分に競争の効果が発揮されているとはいえない状況にある(前掲 参照)。

オ 20年報告に掲記した個別の事態955件について、20年度末現在における見直し状況をみると、移行手続に相当の期間を必要とすることなどを理由に「措置未済」となっているものがあるが、これらの中には、20年報告では競争契約等へ移行したことから「措置済み」としたものについて、その後、再び随意契約を行っていることが判明したため、「措置未済」としたものも含まれている(前掲 参照)。

(4) 公益法人等を契約相手方とする随意契約について

ア 20年度(12月まで)の対象契約のうち公益法人等を契約相手方とする契約の契約方式をみると、随意契約の割合は件数で79.7%(うち企画・公募を経ない随契44.0%)、支払金額で90.3%(同49.4%)となっていて、前年度同期と比較して、件数割合で11.0ポイント(同28.8ポイント)、支払金額割合で2.4ポイント(同33.3ポイント)低下している。しかし、随意契約の割合は、依然として、契約全体でみた場合(件数57.2%、支払金額67.9%)よりも高い。また、競争契約における1者応札の件数割合は69.4%に上っており、契約全体でみた場合(42.4%)より大幅に高く、企画随契における1者応募の件数割合も55.7%と契約全体でみた場合(28.2%)より大幅に高くなっている。
 このように、公益法人等を契約相手方とする契約については、競争契約や企画随契等の割合が上昇しているものの、1者応札又は1者応募の割合は、契約全体の割合より高くなっていて、実質的に競争性を確保しにくい状況となっている(前掲 参照)。

イ 公益法人等を契約相手方とする随意契約における再委託の状況について、20年度(12月まで)でみると、契約条項において再委託に関する規定を設けていないものがなお10.1%ある。また、再委託が行われている契約の再委託率をみると、再委託率が50%以上となっているものの割合が件数で44.5%、支払金額で45.4%を占めており、再委託率が90%以上となっているものも、それぞれ6.5%、1.4%ある(前掲 参照)。

(5) 契約の適正化及び透明性の向上に向けた取組について

 内部監査の実施状況については、20年度の内部監査で、随意契約の妥当性の検証に係る項目を監査項目として設定している法人は20年報告から16法人増加して69法人となっている(前掲 参照)。
 また、監事監査については、99法人が、20年度の監事監査で入札及び契約の適正な実施に関する監査を実施しているとしているが、このうち、随意契約の適正化を含めた入札及び契約の適正な実施状況を監査項目として設定しているとする法人は、92法人となっている(前掲 参照)。
 さらに、契約情報の公表については、20年報告と同様で、ほとんどの法人においては、おおむね適切に公表されている(前掲 参照)。

(6) 発注元独立行政法人退職者の再就職について

 発注元独立行政法人退職者の再就職者は、21年4月1日現在で、随契先公益法人等のうち122法人に644人、主な随契先民間企業等のうち92法人に353人がそれぞれ在籍しており、20年報告の19年4月1日現在の状況と比較して随契先公益法人等では7法人、183人減少し、主な随契先民間企業等では法人数の増減はないものの、再就職者数は42人減少している。そして、発注元独立行政法人退職者の再就職者が在籍している公益法人等は、在籍していない公益法人等に比べて、1法人当たりの随意契約件数や支払金額が多い(前掲 参照)。

2 所見

 独立行政法人の運営には、運営費交付金をはじめとする多額の財政支出が充てられているが、現下の財政事情が極めて厳しい状況にあることにかんがみると、各独立行政法人は、業務運営の徹底した効率化等を図ることが必要になっている。
 このような中で、各独立行政法人は、整理合理化計画や随意契約見直し計画等に基づき、国の取組に準じて、随意契約の見直しを含む契約の適正化に取り組んでいる。
 そして、随意契約見直し計画に基づく個別の随意契約の見直し状況を検証したところ、より競争性の高い契約方式に移行したものが相当数あるものの、十分に競争の効果が発揮されているとはいえない状況にあったり、競争性等の確保に関して検討すべきであったと認められる事態が見受けられたりしていた。
 したがって、各独立行政法人においては、随意契約見直し計画に基づき適正化を進めることとされている契約の見直しについて、競争性等の確保に十分留意しつつ着実に実施するとともに、入札及び契約の公正性、競争性及び透明性の更なる向上を図るため、次の点に留意することが必要である。

(1) 独立行政法人の契約制度について

ア 随意契約の基準において、包括的随契条項又は公益法人随契条項を設定している場合や、予定価格の作成の省略に関する取扱いについて、予定価格の作成を省略する理由や対象範囲が明確でない要件を設定している場合は、し意的な運用を排除するため、各法人の業務の特性等を踏まえて、業務運営上真にやむを得ないと認められるものに限ることとし、これらに係る基準をできる限り明確かつ具体的に定める。

イ 総合評価方式、企画競争、公募、複数年契約等のように、契約の適正化及び透明性の向上に効果があると認められる取組については、積極的に活用を図るとともに、実施に当たっては、適正な執行を確保するため、要領、マニュアル等の整備を行う。

(2) 入札及び契約全般における競争性の確保について

ア 引き続き随意契約が行われているもののうち、真に随意契約によらざるを得ないと認められるもの以外は、発注する業務の内容を仕様書等において具体的に定めるなどして早急に総合評価方式を含む競争契約への移行を図る。また、業務の内容を具体的に仕様として明示することが困難な場合に限って企画随契への移行を検討することとし、競争契約が可能なものを企画随契としないよう留意する。さらに、従来、特殊な技術、設備等が不可欠であるとして、発注者の判断により、特定の者と契約していたものについても、ほかに履行可能な者がいないかを確認するため、適切に公募を実施する。

イ 一般競争入札の実施に当たっては、〔1〕 公告は、事業者に等しく周知できるような方法により十分な周知期間及び見積期間を確保して行うこと、〔2〕 入札参加要件は、参加者の範囲が過度に制限されることのないよう、契約の確実な履行を確保する上で必要最小限のものに限って明確に設定すること、〔3〕 入札説明書等は、特定の事業者に有利とならないように中立的な内容とするとともに、受注の可否の判断や入札金額の見積りに必要な情報について具体的かつ明確に示すことなどにより、より多くの事業者に入札への参加機会を与えるとともに、新規の事業者の参加を阻害しないようにして、実質的な競争性の確保に努める。

ウ 企画競争の実施に当たっては、募集の方法、企画競争参加要件の設定、企画競争説明書等の作成等について、上記イの一般競争入札の場合と同様に適切に行って、実質的な競争性の確保に努める。また、企画競争の審査に当たっては、あらかじめ具体的に定めた複数の評価項目により採点を行うとともに、〔1〕 評価項目の設定に当たっては、審査に不公平が生じたり、特定の事業者に著しく有利となったりしないように、適切に設定すること、〔2〕 評価に当たっては、提案内容が適切に評価に反映されるように具体的かつ客観的な判定基準を設定すること、〔3〕 審査の際には、調達要求部門だけでなく契約担当部門も関与させたり、当該契約の利害関係者を排除したりすることなどにより、入札に係る手続と同様に、契約相手方選定の際の公正性及び透明性の確保を図る。
 また、公募の実施に当たっては、参加者の募集方法、公募参加要件の設定、公募説明書等の作成等について、上記と同様に適切に行うとともに、事業者の参入意欲を阻害しないように、公募の公示や公募説明書等において、契約の確実な履行が困難となるような場合を除いて、契約予定相手方名の表示は行わないこととするなどして、手続の公正性及び透明性の一層の向上を図る。

エ 随意契約において予定価格の作成を省略するのは、業務運営上真にやむを得ない事由に該当するものに限ることとし、その場合には、会計規程等においてこれに係る基準をできる限り明確かつ具体的に定めて、これに従って適切に運用する。

(3) 公益法人等を契約相手方とする随意契約について

ア やむを得ず公益法人等を契約の相手方とした随意契約を行わざるを得ない場合においても、ほかに履行可能な者がいないかの把握等を、公募等により更に厳格に行うとともに、企画・公募を経ない随契から競争契約や企画随契等に移行する場合には、前記の(2)イ 及び と同様、実質的な競争性の確保等に努める。

イ 再委託については、契約の内容に応じて、再委託の禁止又は発注者の承認を必要とする旨の契約条項を必ず設けるとともに、特に、再委託率が高率となるものについては、再委託の妥当性や随意契約とした理由との整合性に留意する。また、契約相手方からの再委託の届出等が確実になされるように事務手続の徹底を図るとともに、適時適切に、再委託の状況を確認するように努める。

(4) 契約の適正化及び透明性の向上に向けた取組について

 随意契約の見直しを確実に実施するため、契約事務の合理化、効率化等を引き続き進めるとともに、内部監査、監事監査等における契約の適正化に向けた審査、監視体制の一層の充実に努める。また、契約の透明性の向上を図るため、契約情報を引き続き適切に公表するとともに、公表方法の一層の充実に努める。

(5) 発注元独立行政法人退職者の再就職について

 発注元独立行政法人退職者の再就職者が在籍している法人を随意契約の相手方とする場合には、特に透明性の確保に留意して、随意契約とした理由の妥当性等について十分に説明責任を果たせるようにする。

 以上のとおり報告する。

 会計検査院としては、独立行政法人制度について原点に立ち返って見直すことが求められていることを踏まえて、20年報告の検査の結果に対する所見において業務及び財務について記述した事項も含め、今後とも、各独立行政法人の業務、財務、入札、契約の状況について、多角的な観点から引き続き検査していくこととする。