ページトップ
  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成21年10月

各府省所管の公益法人に関する会計検査の結果について


第2 検査の結果

1 各府省所管の公益法人の財務、特に内部留保の状況

(1) 各府省所管の公益法人の概況及び国等からの支出の状況

ア 各府省所管の公益法人の概況

 各府省所管の公益法人は、図表1-1のとおり、20年4月1日現在で6,661法人となっている。このうち、複数の府省が共管する公益法人(以下「共管法人」という。)は385法人となっている。所管する公益法人の数が多い府省は、文部科学省(1,941法人)、国土交通省(1,118法人)、厚生労働省(1,078法人)の順となっている。
 会計検査院は、上記の6,661法人すべてに対して、18、19両年度の財務の状況に関する調書の作成を依頼したところ、6,604法人から提出があった。
 この調書によると、〔1〕 18、19両年度のいずれかに国等から補助金等(注7) の交付を受けているものは823法人、〔2〕 18、19両年度のいずれかに国等から契約に基づく支払を受けているものは1,579法人、〔3〕 19年度末現在で国等の補助金等を原資とした基金を保有しているものは90法人となっている。そして、〔1〕 から〔3〕 の法人の合計は、重複分を除くと2,018法人となり、上記6,604法人の30.6%を占めている(以下、〔1〕 から〔3〕 の法人を総称して「国費等交付先法人」という。)。

 補助金等  交付金、助成金、負担金等名称のいかんを問わず、相当の反対給付を受けない資金交付を含む。

 所管府省別にみると、国費等交付先法人数が多いのは、文部科学省(462法人)、国土交通省(416法人)、厚生労働省(394法人)の順となっており、また、所管する公益法人のうち国費等交付先法人の占める割合が高いのは、法務省(83.9%)、防衛省(68.2%)、環境省(63.0%)の順となっている。
 なお、6,661法人から6,604法人を差し引いた調書の提出を受けていない57法人については、各省の説明によれば、すべて、国費等交付先法人ではない法人又は調書の作成依頼時点で既に解散していた法人である。

図表1-1 各府省所管の公益法人数及び国費等交付先法人数(平成20年4月1日現在)

(単位:法人、%)

区分
所管府省
各府省所管の公益法人数
 
調書提出法人数(A)
 
うち共管法人数
うち国費等交付先法人数(B)((B)/(A))
 
補助金等の交付を受けている法人数(C)
契約に基づく支払を受けている法人数(D)
基金を保有している法人数(E)
〈参考〉(C)、(D)、(E)すべてに該当する法人数
内閣府
88
28
88
50
(56.8)
7
46
1
0
警察庁
48
17
48
15
(31.3)
4
15
0
0
金融庁
130
18
130
9
(6.9)
3
6
2
0
総務省
301
53
300
81
(27.0)
21
70
2
0
法務省
137
4
137
115
(83.9)
3
114
0
0
外務省
217
77
214
84
(39.3)
39
68
3
2
財務省
706
22
706
27
(3.8)
3
26
0
0
文部科学省
1,941
147
1,909
462
(24.2)
311
270
4
1
厚生労働省
1,078
95
1,069
394
(36.9)
161
300
6
3
農林水産省
431
70
427
200
(46.8)
133
135
50
15
経済産業省
814
158
808
325
(40.2)
123
283
14
5
国土交通省
1,118
129
1,116
416
(37.3)
89
366
18
5
環境省
93
25
92
58
(63.0)
19
57
2
2
防衛省
22
5
22
15
(68.2)
2
15
1
0
6,661
385
6,604
2,018
(30.6)
823
1,579
90
28
注(1)
 「計」欄の法人数は、共管法人の重複分を除いた実数である。
注(2)
 警察庁及び金融庁は、組織上は内閣府の外局であるが、それぞれ公益法人を所管し、指導監督等の権限を有することから、内閣府とは別に表記している。以下、図表1-44までの府省別の図表においても同じ。

検査の結果の図1

(注)
 国費等交付先法人数の2,251法人は、共管法人の重複分(233法人)を含んだ数である。

 国費等交付先法人が行っている事業の内容(複数の事業を行っている法人もある。)をみると、図表1-2のとおり、「調査・研究」(1,236法人、61.2%)が最も多く、次いで「普及・広報」(1,008法人、49.9%)、「指導・育成」(941法人、46.6%)などとなっている。

図表1-2 国費等交付先法人における事業の内容

(単位:法人、%)

事業の内容
調査・研究
普及・広報
指導・育成
振興・奨励
交流
検査・検定
その他
上記の事業を行っている法人数
1,236
1,008
941
528
307
247
404
法人数の実数(2,018)に占める割合
61.2
49.9
46.6
26.2
15.2
12.2
20.0

イ 国等からの支出の概況

 国費等交付先法人に対する国等からの補助金等の交付及び契約に基づく支払の状況をみると、図表1-3のとおり、19年度においては、1,848法人に対して8263億円(うち、補助金等の交付額3088億円、契約に基づく支払金額5175億円)が支出されており、18年度の8669億円に対して4.7%の減少となっている。
 このうち、国からは、19年度においては1,542法人に対して5764億円(うち、補助金等の交付額2233億円、契約に基づく支払金額3531億円)が支出されており、18年度の6300億円に対して8.5%の減少となっている。

図表1-3 国費等交付先法人に対する国等からの支出の状況

(単位:法人、百万円、%)

年度等
区分
平成18年度
19年度
法人数
金額(A)
法人数
金額(B)
(対18年度比)
補助金等
475
255,039
473
223,325
(△12.4)
契約
1,287
375,008
1,289
353,160
(△5.8)
1,546
630,047
1,542
576,485
(△8.5)
独立行政法人
補助金等
357
62,097
340
85,540
(37.8)
契約
729
174,813
709
164,345
(△6.0)
1,007
236,911
971
249,886
(5.5)
合計
補助金等
737
317,137
724
308,866
(△2.6)
契約
1,471
549,822
1,469
517,505
(△5.9)
1,876
866,959
1,848
826,371
(△4.7)
注(1)
 「計」欄及び「合計」欄の「法人数」は、重複分を除いた実数である。
注(2)
 「(対18年度比)」欄は、平成18年度の「金額(A)」に対する増減率である。

注(2)

 国等からの支出についてみると、図表1-4のとおりであり、各府省等の中では、18、19両年度とも、国土交通省、経済産業省、厚生労働省の順で支出額が多い。
 また、国からの支出のうち、各府省が自ら所管する公益法人(以下「自府省所管公益法人」という。)に対する支出額が、18、19両年度とも約96%を占めていて、国の支出の状況からは、公益法人と所管府省との関係が深いことがうかがえる。

図表1-4 国等からの支出の状況
上段:平成18年度(単位:法人、百万円、%)
中段:19年度(単位:法人、百万円、%)
下段:増△減率(単位:%)
区分
国等
国等からの支出
左のうち自府省所管公益法人に対する支出
支出先法人数
金額(A)
支出先法人数
金額(B)
(B)/(A)
内閣
32
1,462
32
1,494
2.2
内閣府
127
10,260
35
5,264
51.3
119
8,884
31
4,349
49.0
△13.4
△17.4
警察庁
33
310
9
53
17.3
42
390
11
36
9.4
25.5
△32.0
金融庁
9
228
1
75
32.9
10
217
1
69
32.1
△4.6
△7.1
総務省
95
28,433
52
27,786
97.7
97
18,129
50
17,744
97.9
△36.2
△36.1
法務省
93
24,455
55
23,901
97.7
95
18,461
60
18,110
98.1
△24.5
△24.2
外務省
65
21,251
37
20,911
98.4
71
8,371
37
8,023
95.8
△60.6
△61.6
財務省
87
4,458
17
2,517
56.5
76
4,020
17
2,047
50.9
△9.8
△18.7
文部科学省
251
26,102
194
24,363
93.3
256
24,673
193
22,262
90.2
△5.5
△8.6
厚生労働省
411
106,499
327
103,343
97.0
414
108,103
318
105,512
97.6
1.5
2.1
農林水産省
241
59,045
136
57,881
98.0
260
66,418
138
65,003
97.9
12.5
12.3
経済産業省
252
130,688
194
128,390
98.2
259
109,880
199
107,255
97.6
△15.9
△16.5
国土交通省
512
198,774
339
194,176
97.7
502
189,343
334
185,866
98.2
△4.7
△4.3
環境省
108
12,411
49
11,135
89.7
116
12,299
49
10,831
88.1
△0.9
△2.7
防衛省
79
4,647
14
3,660
78.8
76
4,983
14
3,950
79.3
7.2
7.9
国会
26
102
24
79
△21.7
裁判所
23
875
23
706
△19.3
会計検査院
16
40
14
28
△29.8
1,546
630,047
1,408
603,463
95.8
1,542
576,485
1,398
551,064
95.6
△8.5
△8.7
独立行政法人
1,007
236,911
971
249,886
5.5
合計
1,876
866,959
1,848
826,371
△4.7

/

注(1)
 「独立行政法人」欄は、各独立行政法人の支出先法人数及び支出金額を合計したものである。
注(2)
 「支出先法人数」に係る「計」欄及び「合計」欄は、重複分を除いた実数である。
注(3)
 「増△減率」欄は、平成18年度の支出金額に対する増減率である。図表1-5及び図表1-6においても同じ。

ウ 国等の補助金等の状況

(ア) 国等の補助金等の交付の状況

 国費等交付先法人に対する国等の補助金等の交付の状況をみると、図表1-5のとおりとなっている。
 国の補助金等についてみると、18年度においては475法人に対して2550億円、19年度においては473法人に対して2233億円がそれぞれ交付されており、このうち、自府省所管公益法人に対する交付額が、18、19両年度とも約98%を占めている。
 これを府省等別にみると、両年度とも、厚生労働省、農林水産省、経済産業省の3省の補助金等で、国の補助金等の約7割を占めている。
 そして、19年度の交付額を18年度と比較すると、農林水産省の交付額が17.0%増加するなどしている一方、外務省の交付額が82.0%、総務省の交付額が48.0%減少するなどしており、全体でも12.4%減少している。
 また、独立行政法人の補助金等についてみると、18年度においては357法人に対して620億円、19年度においては340法人に対して855億円がそれぞれ交付されており、19年度の交付額を18年度と比較すると37.8%増加している。

図表1-5 国等の補助金等の交付状況
上段:平成18年度(単位:法人、百万円、%)
中段:19年度(単位:法人、百万円、%)
下段:増△減率(単位:%)
区分
国等
補助金等の交付
左のうち自府省所管公益法人に対する交付
交付先法人数
金額(A)
交付先法人数
金額(B)
(B)/(A)
内閣
0
0
内閣府
4
3,067
1
1,788
58.3
4
3,586
1
2,413
67.3
16.9
34.9
警察庁
0
0
0
0
金融庁
0
0
0
0
総務省
9
21,504
7
21,484
99.9
8
11,181
6
11,167
99.9
△48.0
△48.0
法務省
2
94
2
94
100
2
93
2
93
100
△1.4
△1.4
外務省
12
15,380
11
15,347
99.8
12
2,768
11
2,733
98.7
△82.0
△82.2
財務省
2
261
1
167
64.2
2
201
1
126
62.7
△22.9
△24.7
文部科学省
100
8,652
91
8,534
98.6
89
9,153
79
8,406
91.8
5.8
△1.5
厚生労働省
124
62,964
112
61,477
97.6
133
63,820
120
63,057
98.8
1.4
2.6
農林水産省
100
46,211
97
46,067
99.7
99
54,069
92
53,803
99.5
17.0
16.8
経済産業省
79
74,035
73
73,634
99.5
83
54,885
76
54,450
99.2
△25.9
△26.1
国土交通省
56
17,762
52
17,717
99.7
59
18,489
55
18,449
99.8
4.1
4.1
環境省
8
4,693
4
4,657
99.2
6
4,673
2
4,634
99.2
△0.4
△0.5
防衛省
1
412
1
412
100
1
402
1
402
100
△2.4
△2.4
国会
0
0
裁判所
0
0
会計検査院
0
0
475
255,039
444
251,384
98.6
473
223,325
437
219,739
98.4
△12.4
△12.6
独立行政法人
357
62,097
340
85,540
37.8
合計
737
317,137
724
308,866
△2.6
注(1)
 「独立行政法人」欄は、各独立行政法人が交付した補助金等に係る交付先法人数及び金額を合計したものである。
注(2)
 「交付先法人数」に係る「計」欄及び「合計」欄は、重複分を除いた実数である。

(イ) 基金造成のための補助金等の交付の状況

 補助事業は、単年度で事業を実施するもののほかに、基金を造成して複数年度にわたって事業を実施するものもある。
 国等から交付された補助金等のうち、基金造成のためのものは、18年度は32法人に対して844億円、19年度は33法人に対して1285億円交付されている。
 なお、18、19両年度においては国等から補助金等の交付を受けていないが、17年度以前に交付された補助金等を原資とした基金を保有している公益法人もあり、これらを含めて、20年度末における国等の補助金等を原資とした基金の状況については、後掲第2-1-(5) に詳述している。

エ 国等との契約の状況

(ア) 国等との契約に基づく支払の状況

 国費等交付先法人に対する国等との契約に基づく支払の状況についてみると、図表1-6のとおりとなっている。
 国との契約に基づく支払金額についてみると、18年度においては1,287法人に対して3750億円、19年度においては1,289法人に対して3531億円が支払われており、このうち、自府省所管公益法人に対する支払金額が、18、19両年度とも約94%を占めている。
 これを府省等別にみると、両年度とも、国土交通省が支払金額の5割近くを占めており、次いで経済産業省、厚生労働省の順に多い。
 そして、19年度の支払金額を18年度と比較すると、ほとんどの府省等からの支払金額が減少しており、全体でも5.8%減少している。
 また、独立行政法人との契約についてみると、18年度においては729法人に対して1748億円、19年度においては709法人に対して1643億円が支払われており、19年度の支払金額を18年度と比較すると、6.0%減少している。
 なお、これらの契約のうち、国が発注している調査研究事業に係る契約の状況については、後掲第2-2 に詳述している。

図表1-6 国等との契約に基づく支払状況
上段:平成18年度(単位:法人、件、百万円、%)
中段:19年度(単位:法人、件、百万円、%)
下段:増△減率(単位:%)
区分
国等
契約に基づく支払
左のうち自府省所管公益法人に対する支払
契約先法人数
件数
金額(A)
契約先法人数
件数
金額(B)
(B)/(A)
内閣
32
108
1,462
32
112
1,494
3.7
2.2
内閣府
124
668
7,192
34
261
3,475
48.3
116
602
5,298
30
225
1,936
36.5
△9.9
△26.3
△13.8
△44.3
警察庁
33
302
310
9
80
53
17.3
42
316
390
11
97
36
9.4
4.6
25.5
21.3
△32.0
金融庁
9
15
228
1
1
75
32.9
10
18
217
1
1
69
32.1
20.0
△4.6
0.0
△7.1
総務省
88
435
6,929
47
218
6,301
90.9
91
395
6,948
46
219
6,576
94.6
△9.2
0.3
0.5
4.4
法務省
92
8,737
24,360
54
7,291
23,807
97.7
94
8,054
18,368
59
6,677
18,017
98.1
△7.8
△24.6
△8.4
△24.3
外務省
59
206
5,871
32
150
5,564
94.8
65
218
5,602
32
140
5,290
94.4
5.8
△4.6
△6.7
△4.9
財務省
85
2,717
4,196
16
1,911
2,350
56.0
74
2,928
3,818
16
2,236
1,921
50.3
7.8
△9.0
17.0
△18.2
文部科学省
173
1,249
17,450
124
419
15,828
90.7
194
1,214
15,519
139
427
13,855
89.3
△2.8
△11.1
1.9
△12.5
厚生労働省
327
9,075
43,535
255
875
41,865
96.2
322
8,759
44,282
238
813
42,455
95.9
△3.5
1.7
△7.1
1.4
農林水産省
183
3,457
12,834
81
2,040
11,814
92.1
208
2,867
12,349
91
1,567
11,200
90.7
△17.1
△3.8
△23.2
△5.2
経済産業省
212
1,684
56,653
159
1,551
54,756
96.7
218
1,532
54,994
162
1,397
52,805
96.0
△9.0
△2.9
△9.9
△3.6
国土交通省
482
29,251
181,012
313
27,147
176,459
97.5
469
28,365
170,854
305
26,429
167,416
98.0
△3.0
△5.6
△2.6
△5.1
環境省
106
710
7,718
49
480
6,477
83.9
114
685
7,626
49
477
6,196
81.3
△3.5
△1.2
△0.6
△4.3
防衛省
79
3,102
4,234
14
671
3,248
76.7
76
2,915
4,580
14
645
3,548
77.5
△6.0
8.2
△3.9
9.2
国会
26
81
102
24
89
79
9.9
△21.7
裁判所
23
3,109
875
23
1,945
706
△37.4
△19.3
会計検査院
16
30
40
14
27
28
△10.0
△29.8
1,287
64,936
375,008
1,148
43,095
352,078
93.9
1,289
61,041
353,160
1,151
41,350
331,325
93.8
△6.0
△5.8
△4.0
△5.9
独立行政法人
729
88,800
174,813
709
80,955
164,345
△8.8
△6.0
合計
1,471
153,736
549,822
1,469
141,996
517,505
△7.6
△5.9
注(1)
 「独立行政法人」欄は、各独立行政法人の契約先法人数、件数及び支払金額を合計したものである。
注(2)
 「契約先法人数」に係る「計」欄及び「合計」欄は重複分を除いた実数である。

(イ) 契約の競争性の状況

 上記の契約のうち、1件300万円以上の国との契約について、その契約方式の状況をみると、図表1-7のとおり、19年度における競争契約の割合は18年度に比べて増加しているものの、依然として件数で27.3%、支払金額で17.9%にとどまっている。また、19年度における企画随契の割合も18年度に比べて増加しており、企画競争等を経ない随意契約の割合は、件数で9.9%、支払金額で16.2%と、18年度の58.3%、68.5%に比べて大きく減少している。
 このうち、所管府省との契約についてみると、18年度から19年度への契約方式の状況の変化は、国との契約全体とほぼ同様となっている。

図表1-7 国との契約における契約方式
上段:件数、支払金額(単位:件、百万円)
下段:割合(単位:%)
区分
年度
件数
支払金額
競争契約
随意契約
 
競争契約
随意契約
 
うち企画随契
うち企画競争等を経ない随意契約
うち企画随契
うち企画競争等を経ない随意契約
国との契約
平成18
1,236
7,515
1,418
5,102
8,751
20,320
348,393
44,200
252,748
368,713
 
(A)
(14.1)
(85.9)
(16.2)
(58.3)
(100)
(5.5)
(94.5)
(12.0)
(68.5)
(100)
19
2,038
5,439
1,685
743
7,477
62,149
284,899
56,984
56,260
347,048
 
(B)
(27.3)
(72.7)
(22.5)
(9.9)
(100)
(17.9)
(82.1)
(16.4)
(16.2)
(100)
<参考>(B)-(A)(%ポイント)
13.1
△13.1
6.3
△48.4
12.4
△12.4
4.4
△52.3
うち所管府省との契約
18
1,027
6,835
1,244
4,729
7,862
16,161
331,882
41,229
241,942
348,043
 
(A)
(13.1)
(86.9)
(15.8)
(60.2)
(100)
(4.6)
(95.4)
(11.8)
(69.5)
(100)
19
1,678
4,937
1,510
586
6,615
54,853
272,470
53,557
51,772
327,324
 
(B)
(25.4)
(74.6)
(22.8)
(8.9)
(100)
(16.8)
(83.2)
(16.4)
(15.8)
(100)
<参考>(B)-(A)(%ポイント)
12.3
△12.3
7.0
△51.3
12.1
△12.1
4.5
△53.7

 また、1件300万円以上の独立行政法人との契約についても、図表1-8のとおり、19年度においては、競争契約の割合及び企画随契の割合共に、18年度に比べて増加しており、一方、企画競争等を経ない随意契約の割合は、18年度に比べて減少している。しかし、国との契約に係る契約方式の状況と比較すると、競争契約の割合は低く、企画競争等を経ない随意契約の割合が相対的に高い状況となっている。

図表1-8 独立行政法人との契約における契約方式
上段:件数、支払金額(単位:件、百万円)
下段:割合(単位:%)
区分
年度
件数
支払金額
競争契約
随意契約
 
競争契約
随意契約
 
うち企画随契
うち企画競争等を経ない随意契約
うち企画随契
うち企画競争等を経ない随意契約
平成18
242
2,492
350
1,889
2,734
7,193
163,426
20,602
125,804
170,619
 
(A)
(8.9)
(91.1)
(12.8)
(69.1)
(100)
(4.2)
(95.8)
(12.1)
(73.7)
(100)
19
298
2,095
423
1,325
2,393
19,159
141,471
35,504
90,666
160,630
 
(B)
(12.5)
(87.5)
(17.7)
(55.4)
(100)
(11.9)
(88.1)
(22.1)
(56.4)
(100)
<参考>(B)-(A)(%ポイント)
3.6
△3.6
4.9
△13.7
7.7
△7.7
10.0
△17.3

(2) 各府省所管の公益法人の財務の状況

ア 各府省所管の公益法人の収入支出決算の状況

(ア) 各府省所管の公益法人の収入・支出の概況

 調書の提出を受けた各府省所管の公益法人のうち、収入・支出の実績がある法人(18年度6,567法人、19年度6,579法人)の18、19両年度の年間収入額及び年間支出額の状況は、図表1-9のとおりであり、19年度においては、年間収入額が9兆6617億円、年間支出額が9兆8400億円となっており、18年度に比べてそれぞれ4.5%及び2.4%の減少となっている。
 これを1法人当たりの平均でみると、19年度においては、年間収入額が14.6億円、年間支出額が14.9億円となっている。このうち、国費等交付先法人は、年間収入額が29.2億円、年間支出額が29.3億円であり、国等からの支出を受けていない法人の年間収入額8.2億円、年間支出額8.5億円と比較すると、いずれも3倍以上の規模になっている。

図表1-9 収入・支出の実績がある法人における年間収入額及び年間支出額の状況

(単位:法人、百万円、%)

法人区分
区分
収入・支出の実績がある法人
 
うち国費等交付先法人
うち国等からの支出を受けていない法人
平成18年度
法人数
6,567
2,017
4,550
年間収入額計
10,116,046
6,249,662
3,866,383
年間支出額計
10,082,951
6,228,377
3,854,574
1法人当たりの平均
年間収入額
1,540
3,098
849
年間支出額
1,535
3,087
847
19年度
法人数
6,579
2,018
4,561
年間収入額計
9,661,726
5,897,339
3,764,387
(対18年度比)
(△4.5)
(△5.6)
(△2.6)
年間支出額計
9,840,020
5,932,704
3,907,316
(対18年度比)
(△2.4)
(△4.7)
(1.4)
1法人当たりの平均
年間収入額
1,468
2,922
825
年間支出額
1,495
2,939
856
(注)
 平成19年度の「年間収入額計」欄及び「年間支出額計」欄の「(対18年度比)」は、それぞれ18年度の年間収入額計及び年間支出額計に対する増減率である。

(イ) 国費等交付先法人の収入の状況

 国費等交付先法人のうち、1事業年度が国の1会計年度と同じ当該年の4月から翌年の3月までとなっていることから、各年度における国等からの支出額と法人の決算上の計上額とが対応している法人(18、19両年度とも1,854法人)についてみると、収入の状況は次のとおりとなっている。

a 収入の内訳

 18、19両年度の年間収入額の内訳は、図表1-10のとおりであり、1法人当たりの平均でみると、19年度においては、事業収入が20.7億円(年間収入額に占める割合67.0%)、補助金等収入が2.2億円(同7.2%)、会費収入が1.1億円(同3.6%)、財産運用収入が0.3億円(同1.2%)などとなっている。

図表1-10 国費等交付先法人(1,854法人)における収入の内訳

(単位:百万円、%)

区分
収入の内訳
平成18年度
19年度
金額
割合
1法人当たりの平均
金額
割合
1法人当たりの平均
年間収入額
6,099,271
100
3,289
5,744,186
100
3,098
 
会費収入
209,869
3.4
113
209,464
3.6
112
財産運用収入
92,306
1.5
49
70,054
1.2
37
補助金等収入
436,210
7.2
235
414,456
7.2
223
 
うち国の補助金等(〔1〕 )
253,771
4.2
136
221,559
3.9
119
うち独立行政法人の補助金等(〔2〕 )
61,196
1.0
33
84,788
1.5
45
事業収入
4,117,236
67.5
2,220
3,846,338
67.0
2,074
 
うち国との契約(〔3〕 )
341,901
5.6
184
326,404
5.7
176
うち独立行政法人との契約(〔4〕 )
170,713
2.8
92
160,276
2.8
86
その他の収入
1,243,648
20.4
670
1,203,873
21.0
649
国からの支出計(〔5〕 =〔1〕 +〔3〕 )
595,672
9.8
321
547,963
9.5
295
独立行政法人からの支出計(〔6〕 =〔2〕 +〔4〕 )
231,910
3.8
125
245,064
4.3
132
国等からの支出合計(〔7〕 =〔5〕 +〔6〕 )
827,582
13.6
446
793,028
13.8
427
(注)
 本表は、国費等交付先法人のうち、事業年度が国の会計年度と同じ4月から3月までの法人について集計している。図表1-11から図表1-13までにおいても同じ。

検査の結果の図2

b 収入に占める国等からの支出額

 上記の年間収入額のうち、国等からの支出額の状況をみると、図表1-10のとおり、1法人当たりの平均は、18年度で4.4億円(うち国からの支出額3.2億円)、年間収入額に占める割合13.6%(同9.8%)、19年度で4.2億円(同2.9億円)、年間収入額に占める割合13.8%(同9.5%)となっている。
 これを規模別にみると、図表1-11のとおり、19年度においては、国等からの支出額が1000万円未満の法人が651法人(1,854法人に占める割合35.1%)ある一方で、10億円以上の法人が148法人(同8.0%)、うち100億円以上の法人が10法人(同0.5%)となっている。
 なお、18、19両年度において、国等からの支出額が10億円以上となっている法人の一覧は巻末別表1-1 のとおりである。

図表1-11 国等からの支出額の規模別法人数
上段:法人数(単位:法人)
下段:割合(単位:%)
国等からの支出額の規模
区分
1000万円未満
1000万円以上1億円未満
1億円以上10億円未満
10億円以上
 
うち50億円以上100億円未満
うち100億円以上
平成18年度
国等からの支出額
642
603
456
153
28
13
1,854
(34.6)
(32.5)
(24.6)
(8.3)
(1.5)
(0.7)
(100)
 
国からの支出額
863
519
352
120
20
9
1,854
(46.5)
(28.0)
(19.0)
(6.5)
(1.1)
(0.5)
(100)
独立行政法人からの支出額
1,364
308
148
34
6
4
1,854
(73.6)
(16.6)
(8.0)
(1.8)
(0.3)
(0.2)
(100)
19年度
国等からの支出額
651
614
441
148
27
10
1,854
(35.1)
(33.1)
(23.8)
(8.0)
(1.5)
(0.5)
(100)
 
国からの支出額
849
550
342
113
21
5
1,854
(45.8)
(29.7)
(18.4)
(6.1)
(1.1)
(0.3)
(100)
独立行政法人からの支出額
1,380
304
138
32
5
5
1,854
(74.4)
(16.4)
(7.4)
(1.7)
(0.3)
(0.3)
(100)

 また、国等からの支出額が年間収入額の50%以上となっている法人は、図表1-12のとおり、19年度においては358法人(19.3%)となっており、このうち、3分の2以上となっている法人は206法人(11.1%)となっている。

図表1-12 年間収入額に占める国等からの支出額の割合
上段:法人数(単位:法人)
下段:割合(単位:%)
国等からの支出額の割合
年度
25%未満
25%以上50%未満
50%以上
 
うち2/3以上
平成18
1,220
254
380
220
1,854
(65.8)
(13.7)
(20.5)
(11.9)
(100)
19
1,224
272
358
206
1,854
(66.0)
(14.7)
(19.3)
(11.1)
(100)

(11.1)

 このうち、国からの支出額が年間収入額の3分の2以上となっている法人は、図表1-13のとおり、18年度においては105法人(5.7%)、19年度においては97法人(5.2%)となっている。また、このうち、所管府省からの支出額のみで3分の2以上となっている法人は、18年度においては97法人(5.2%)、19年度においては87法人(4.7%)となっている。

図表1-13 年間収入額に占める国からの支出額の割合
上段:法人数(単位:法人)
下段:割合(単位:%)
年間収入額に占める割合
区分
25%未満
25%以上50%未満
50%以上
 
うち2/3以上
国からの支出額の割合
平成18年度
1,396
227
231
105
1,854
(75.3)
(12.2)
(12.5)
(5.7)
(100)
19年度
1,390
245
219
97
1,854
(75.0)
(13.2)
(11.8)
(5.2)
(100)
 
補助金等の交付額の占める割合
18年度
1,713
77
64
18
1,854
(92.4)
(4.2)
(3.5)
(1.0)
(100)
19年度
1,717
79
58
16
1,854
(92.6)
(4.3)
(3.1)
(0.9)
(100)
契約に基づく支払金額の占める割合
18年度
1,541
158
155
77
1,854
(83.1)
(8.5)
(8.4)
(4.2)
(100)
19年度
1,542
171
141
72
1,854
(83.2)
(9.2)
(7.6)
(3.9)
(100)
うち所管府省からの支出額の割合
18年度
1,427
217
210
97
1,854
(77.0)
(11.7)
(11.3)
(5.2)
(100)
19年度
1,422
231
201
87
1,854
(76.7)
(12.5)
(10.8)
(4.7)
(100)
 
所管府省からの補助金等の交付額の占める割合
18年度
1,715
77
62
18
1,854
(92.5)
(4.2)
(3.3)
(1.0)
(100)
19年度
1,721
76
57
16
1,854
(92.8)
(4.1)
(3.1)
(0.9)
(100)
契約に基づく支払金額の占める割合
18年度
1,566
151
137
69
1,854
(84.5)
(8.1)
(7.4)
(3.7)
(100)
19年度
1,567
162
125
62
1,854
(84.5)
(8.7)
(6.7)
(3.3)
(100)

c 国からの支出額が年間収入額の3分の2以上となっている公益法人における国からの支出額の公表状況

 改革実施計画においては、「補助金依存型公益法人」(国から交付された補助金・委託費等の額が年間収入額の3分の2以上を占める公益法人)に交付される「補助金等」の必要性等を検証して、「補助金等」の廃止等の措置を講ずることにより、「補助金依存型公益法人」の解消を図ることとされている。
 そして、改革実施計画においては、国から「補助金等」の支出を受けた公益法人はその金額及び年間収入額に対する当該「補助金等」の割合を公表することとなっているが、この場合の「補助金等」は、国から交付される補助金等及び予算科目が「(目)○○委託費」から支出されたものに限定されている。改革実施計画において公益法人に国からの「補助金等」の状況を公表するよう求めていることとは視点が異なるため、一概に比較することはできないが、「補助金等」以外の支出を受けている場合も国からの支出を受けている点では同じであることから、予算科目を問わず、国からの支出すべてを対象として公表状況の分析を試みた。
 すなわち、18年度において、予算科目を問わず国からの支出額が年間収入額の3分の2以上となっている前記の105法人について、国からの支出を「補助金等」に限定した場合、当該「補助金等」の額の年間収入額に占める割合が3分の2以上となるものは32法人にすぎず、残る73法人は3分の2未満となっている。
 これらの73法人は国からの支出額が年間収入額に占める割合が高い法人であることから、さらに国からの支出に係る公表状況について分析したところ、図表1-14のとおり、18年度における国からの支出額は1708億円となっているが、国から「補助金等」の支出を受けたものとして公表されている支出額は59億円となっていて、当該73法人に対する国からの支出額全体の3.5%にとどまっている。
 そして、18年度における国からのすべての支出額のうち、「補助金等」の支出を受けたものとして公表されている支出額の割合を法人ごとに分類してみると、図表1-15のとおりとなっており、これによると、国からの支出額が年間収入額に占める割合が高い法人であるのに、公表すべき国からの支出額が全くないものが50法人(68.5%)となっている。
 このように、国からの支出に大きく依存している公益法人に対する国からの支出の状況が十分には明らかになってはおらず、国の支出の透明性を図る見地から、国からの支出の公表の更なる拡充が望まれる。

図表1-14 国からの支出を「補助金等」に限定した場合、国からの支出額の年間収入額に占める割合が3分の2以上ではなく3分の2未満となる73法人に係る国からの支出額の公表状況
上段:金額(単位:百万円)
下段:割合(単位:%)
「補助金等」の支出を受けたものとして公表された額
「補助金等」の支出を受けたものではないために公表されていない額
5,932
164,897
170,830
3.5
96.5
100

図表1-15 国からの支出を「補助金等」に限定した場合、国からの支出額が年間収入額に占める割合が3分の2以上ではなく3分の2未満となる73法人に係る国からのすべての支出額に対する「補助金等」の額の公表している割合ごとの法人数
上段:法人数(単位:法人)
下段:割合(単位:%)
0%
0%超25%未満
25%以上50%未満
50%以上
50
10
3
10
73
(68.5)
(13.7)
(4.1)
(13.7)
(100)

(ウ) 国費等交付先法人の支出の状況

 国費等交付先法人のうち、1事業年度が国の1会計年度と同じ当該年の4月から翌年の3月までとなっている法人(18、19両年度とも1,854法人)について、その支出の状況をみると、次のとおりとなっている。

a 支出の内訳

 18、19両年度の年間支出額の内訳は、図表1-16のとおりであり、1法人当たりの平均でみると、19年度においては、事業費が22.2億円(年間支出額に占める割合71.3%)、管理費が1.6億円(同5.3%)、事業に不可欠な固定資産取得費が0.8億円(同2.7%)などとなっている。
 また、1法人当たりの平均でみた19年度の年間支出額は、18年度に比べて減少しているが、人件費は、18年度の5.3億円(同16.4%)に対して、19年度は5.4億円(同17.5%)と増加している。

図表1-16 国費等交付先法人(1,854法人)における支出の内訳

(単位:百万円、%)

区分
支出の内訳
平成18年度
19年度
金額
割合
1法人当たりの平均
金額
割合
1法人当たりの平均
年間支出額
6,079,914
100
3,279
5,779,788
100
3,117
 
事業費
4,249,609
69.9
2,292
4,123,383
71.3
2,224
 
うち人件費(〔1〕 )
833,260
13.7
449
851,619
14.7
459
管理費
320,416
5.3
172
305,912
5.3
165
 
うち人件費(〔2〕 )
164,309
2.7
88
157,065
2.7
84
事業に不可欠な固定資産取得費
130,522
2.1
70
157,787
2.7
85
その他の支出
1,379,365
22.7
743
1,192,704
20.6
643
人件費(〔1〕 +〔2〕 )
997,569
16.4
538
1,008,685
17.5
544
(注)
 本表は、国費等交付先法人のうち、事業年度が国の会計年度と同じ4月から3月までの法人について集計している。図表1-17及び図表1-18においても同じ。

検査の結果の図1

b 管理費

 指導監督基準等において、管理費は、公益法人の内部に還元される傾向の強い経費であることから、当期支出合計額に占める割合が過大になり公益事業を圧迫するようなことがあってはならないとされており、可能な限り総支出額(年間支出額と次期繰越収支差額の合計)の2分の1以下にすることとされている。
 そこで、総支出額に占める管理費の割合をみると、図表1-17のとおり、50%超となっている法人が、18年度においては40法人、19年度においては34法人となっている。

図表1-17 国費等交付先法人(1,854法人)における総支出額に占める管理費の割合

(単位:法人、%)

管理費の割合
区分
25%以下
25%超50%以下
50%超
 
うち75%超
平成18年度
法人数
1,446
368
40
5
1,854
(割合)
(78.0)
(19.8)
(2.2)
(0.3)
(100)
19年度
法人数
1,471
349
34
5
1,854
(割合)
(79.3)
(18.8)
(1.8)
(0.3)
(100)

c 人件費

 運用指針において、管理費は、公益法人の運営に必要な基礎的な経費であり、その最も大きな割合を占めるのが人件費と考えられるとされており、指導監督基準において、人件費の管理費に占める割合について過大なものとならないようにすることとされている。
 そこで、19年度の管理費に占める人件費の割合をみると、図表1-18のとおり、50%以上となっている法人が1,139法人(61.4%)、このうち75%以上となっている法人が254法人(13.7%)となっている。

図表1-18 管理費に占める人件費の割合(平成19年度)

(単位:法人、%)

人件費の割合
区分
25%未満
25%以上50%未満
50%以上
 
うち75%以上
法人数
193
522
1,139
254
1,854
(割合)
(10.4)
(28.2)
(61.4)
(13.7)
(100)

 次に、19年度に国から補助金等の交付を受けた公益法人473法人について、国から交付された補助金等の人件費への充当状況をみると、図表1-19のとおりである。
 すなわち、473法人のうち321法人において、人件費に国から交付された補助金等を充当しており、その充当額は228億円となっている。この額は、321法人の人件費3702億円の6.2%に相当する。
 また、321法人について、各法人の人件費に占める国から交付された補助金等の充当額の割合をみると、50%以上となっている法人が54法人(321法人に占める割合16.8%)、このうち75%以上の法人が27法人(同8.4%)となっている。

図表1-19 国から交付された補助金等の人件費への充当状況(平成19年度)

(単位:法人、百万円、%)

国から補助金等の交付を受けている法人数
左の法人における人件費
 
うち補助金等を人件費に充当している法人数
左の法人における人件費(A)
左の法人における補助金を充当した人件費(B)
((B)/(A))
(B)/(A)別法人数及び割合
25%未満
25%以上50%未満
50%以上
 
うち75%以上
473
418,866
321
370,276
22,860
(6.2)
211
56
54
27
321
(65.7)
(17.4)
(16.8)
(8.4)
(100)

d 第三者分配型補助金等の状況

 改革実施計画において、国から公益法人に交付された補助金等のうち、交付先の公益法人において当該補助金等の5割以上を他の法人等の第三者に分配・交付するものについては、「第三者分配型補助金等」とされ、当該補助金等の廃止、国からの直接交付等の措置を講ずることにより解消を図り、また、第三者分配型補助金等となることについて特段の理由があると認められるものについては、その理由を公表することとされている。
 そこで、国費等交付先法人のうち、国から補助金等の交付を受けた公益法人が、他の法人等の第三者に当該補助金等を分配・交付(以下「再補助等」という。)している状況をみると、図表1-20のとおり、19年度においては、142法人が223件の再補助等(国の補助金等相当額361億円)を行っている。そして、国の補助金等の交付額のうち、再補助等を行った額の割合が50%以上となっているものが、24法人34件(同307億円)あり、うち14法人24件(同256億円)においては同割合が75%以上となっている。
 (再補助等の割合が50%以上の国の補助金等の一覧については、巻末別表1-2 参照)

図表1-20 再補助等の状況

(単位:法人、件、百万円、%)

再補助等の割合等
区分
国から補助金等が交付されているもの
 
再補助等を行っていないもの
再補助等を行っているもの
 
再補助等の割合
50%未満
50%以上
 
うち75%以上
平成18年度
法人数
475
382
137
118
30
19
補助金等の件数
1,616
1,401
215
172
43
31
(割合)
(100)
(86.7)
(13.3)
(10.6)
(2.7)
(1.9)
補助金等の交付額
255,039
140,350
114,689
 
うち再補助等相当額
58,797
9,296
49,500
48,730
19年度
法人数
473
375
142
125
24
14
補助金等の件数
1,501
1,278
223
189
34
24
(割合)
(100)
(85.1)
(14.9)
(12.6)
(2.3)
(1.6)
補助金等の交付額
223,325
133,197
90,128
 
うち再補助等相当額
36,150
5,424
30,726
25,628
(注)
 「法人数」に係る「国から補助金等が交付されているもの」欄及び「再補助等を行っているもの」欄は、重複分を除いた実数である。

(エ) 国費等交付先法人の収支差額の状況

 公益法人の収入支出決算においては、総収入(前期繰越収支差額と年間収入額の合計)と年間支出額との差額は次期繰越収支差額として処理される。このため、年間収入額が年間支出額を上回っている場合は、前期繰越収支差額に比べて次期繰越収支差額が増加する。
 そこで、国費等交付先法人のうち、1事業年度が国の1会計年度と同じ当該年の4月から翌年の3月までとなっている法人(18、19両年度とも1,854法人)について、18、19両年度の前期繰越収支差額と次期繰越収支差額を比較したところ、図表1-21のとおりとなっている。
 これによると、1,854法人全体においては、18年度は、前期繰越収支差額に比べて次期繰越収支差額が193億円増加しているが、19年度は、356億円減少している。そして、19年度において、次期繰越収支差額が増加した法人は969法人(52.3%)、減少した法人は873法人(47.1%)となっている。

図表1-21 国費等交付先法人(1,854法人)における収支差額の状況

(単位:法人、百万円、%)

区分
年度
法人数
(A)
前期繰越収支差額計
(B)
次期繰越収支差額計
(C)
差引
((C)-(B))
前期繰越収支差額に比べて次期繰越収支差額が増加した法人数
(D)
((D)/(A))
前期繰越収支差額に比べて次期繰越収支差額が減少した法人数
(E)
((E)/(A))
前期繰越収支差額と次期繰越収支差額が同額の法人数
(F)
((F)/(A))
平成18
1,854
623,883
643,239
19,356
1,044
794
16
(56.3)
(42.8)
(0.9)
19
1,854
601,008
565,406
△35,602
969
873
12
(52.3)
(47.1)
(0.6)
注(1)
 本表は、国費等交付先法人のうち、事業年度が国の会計年度と同じ4月から3月までの法人について集計している。
注(2)
 平成19年度から会計基準を変更するなどしている法人があるため、18年度の「次期繰越収支差額計」と19年度の「前期繰越収支差額計」とは一致しない。

(オ) 国費等交付先法人における指導監督基準上の収益事業の状況

 指導監督基準においては、公益法人の事業のうち付随的に行う収益を目的とする事業(以下「指導監督基準上の収益事業」という。)について、その支出規模を可能な限り総支出額の2分の1以下にとどめることとされている。
 そこで、国費等交付先法人2,018法人における19年度の指導監督基準上の収益事業に係る収入・支出の状況をみると、図表1-22のとおり、指導監督基準上の収益事業に係る収入があるのは489法人(24.2%)であり、その収入額は1586億円、支出額は1259億円となっている。

図表1-22 指導監督基準上の収益事業の状況(平成19年度)

(単位:法人、百万円、%)

国費等交付先法人数(A)
指導監督基準上の収益事業に係る収入のない法人数(B)
((B)/(A))
指導監督基準上の収益事業に係る収入のある法人数(C)
((C)/(A))
 
収益事業収入計
(D)
収益事業支出計
(E)
差引
(D)-(E)
2,018
1,529
489
158,626
125,963
32,662
(75.8)
(24.2)

 そして、上記の489法人について、19年度の指導監督基準上の収益事業に係る収入の総収入に占める割合をみると、図表1-23のとおり、50%超となっている法人は59法人(489法人に占める割合12.1%)、このうち75%超となっている法人は19法人(同3.9%)となっている。
 また、指導監督基準において明記されている支出規模についてみると、19年度の指導監督基準上の収益事業に係る支出の総支出額に占める割合が50%超となっている法人が44法人(同9.0%)、このうち75%超となっている法人が10法人(同2.0%)となっている。

図表1-23 指導監督基準上の収益事業に係る収入及び支出の状況(平成19年度)

(単位:法人、%)

指導監督基準上の収益事業に係る収入のある法人数
収入
支出
総収入に占める収益事業収入の割合別法人数及び割合
収益事業支出のある法人数
 
収益事業支出のない法人数
総支出に占める収益事業支出の割合別法人数及び割合
25%以下
25%超50%以下
50%超
 
25%以下
25%超50%以下
50%超
 
うち75%超
うち75%超
489
359
71
59
19
454
363
47
44
10
35
(73.4)
(14.5)
(12.1)
(3.9)
(92.8)
(74.2)
(9.6)
(9.0)
(2.0)
(7.2)

(カ) 国費等交付先法人における法人税法上の収益事業の状況

 公益法人に係る税制については、第1-2-(1)-ウ-(イ) に記述したとおりであるが、国費等交付先法人2,018法人における19年度の法人税法上の収益事業に係る収入の状況をみると、図表1-24のとおり、当該収入があるのは1,237法人(61.3%)となっており、その収入額は1兆6551億円となっている。このうち、国の補助金等は197億円、国との契約による収入は2405億円、独立行政法人の補助金等は206億円及び独立行政法人との契約による収入は729億円となっている。

図表1-24 法人税法上の収益事業に係る収入の状況(平成19年度)

(単位:法人、百万円、%)

国費等交付先法人(A)
法人税法上の収益事業に係る収入のある法人数(B)
((B)/(A))
 
収益事業収入計
 
うち国等からの収入
 
うち国の補助金等
うち国との契約による収入
うち独立行政法人の補助金等
うち独立行政法人との契約による収入
2,018
1,237
1,655,176
353,986
19,788
240,578
20,653
72,965
(61.3)

 そして、上記の1,237法人について、19年度の法人税法上の収益事業に係る収入の総収入に占める割合をみると、図表1-25のとおり、50%以上となっている法人が452法人(1,237法人に占める割合36.5%)、このうち75%以上となっている法人が199法人(同16.1%)となっている。

図表1-25  法人税法上の収益事業に係る収入の総収入に占める割合の状況(平成19年度)

(単位:法人、%)

法人税法上の収益事業に係る収入のある法人数
総収入に占める収益事業収入の割合別法人数及び割合
25%未満
25%以上50%未満
50%以上
 
うち75%以上
1,237
508
277
452
199
(41.1)
(22.4)
(36.5)
(16.1)

 また、前記1,237法人の19年度における「みなし寄附金」制度の利用状況をみると、利用していない法人958法人に対して、利用している法人は279法人となっており、その額は180億円となっている。

イ 各府省所管の公益法人の資産、負債等の状況

(ア) 各府省所管の公益法人の資産、負債及び正味財産の概況

 調書の提出を受けた各府省所管の公益法人のうち、収入・支出の実績がある法人(18年度6,567法人、19年度6,579法人)の18、19両年度末の資産、負債及び正味財産(注8) の状況は、図表1-26のとおりであり、19年度末においては、資産額が41兆4015億円、負債額が29兆2278億円及び正味財産額が12兆1736億円となっており、18年度末に比べていずれも増加している。このうち、国費等交付先法人についてみると、19年度末においては、資産額が11兆4382億円、負債額が6兆6862億円及び正味財産額が4兆7520億円となっている。
 また、収入・支出の実績がある法人について1法人当たりの平均でみると、19年度末においては、資産額が62.9億円、負債額が44.4億円及び正味財産額が18.5億円となっており、このうち、国費等交付先法人における状況をみるために、国等からの支出を受けていない法人と比較してみると、国費等交付先法人の方が資産の規模は小さいが、正味財産の規模は大きくなっている。

 正味財産  公益法人には、企業と異なり資本の概念がないため、企業会計の純資産の部に当たる部分は「正味財産」として区分されている。


図表1-26 収入・支出の実績がある法人における資産、負債及び正味財産の状況

(単位:法人、百万円、%)

法人区分
区分
収入・支出の実績がある法人
 
うち国費等交付先法人
 
うち国等からの支出を受けていない法人
うち年間収入額に占める国等からの支出額の割合が50%以上の法人
平成18年度末
法人数
6,567
2,017
380
4,550
資産計(A)
40,735,794
11,071,258
1,154,944
29,664,535
負債計(B)
28,657,843
6,220,317
653,127
22,437,525
((B)/(A))
(70.4)
(56.2)
(56.6)
(75.6)
正味財産計(C)
12,077,950
4,850,940
501,816
7,227,010
((C)/(A))
(29.6)
(43.8)
(43.4)
(24.4)
1法人当たりの平均
資産
6,203
5,488
3,039
6,519
負債
4,363
3,083
1,718
4,931
正味財産
1,839
2,405
1,320
1,588
19年度末
法人数
6,579
2,018
358
4,561
資産計(D)
41,401,511
11,438,212
1,135,184
29,963,298
(増△減率)
(1.6)
(3.3)
(△1.7)
(1.0)
負債計(E)
29,227,833
6,686,201
640,072
22,541,631
(増△減率)
(2.0)
(7.5)
(△2.0)
(0.5)
((E)/(D))
(70.6)
(58.5)
(56.4)
(75.2)
正味財産計(F)
12,173,678
4,752,011
495,111
7,421,667
(増△減率)
(0.8)
(△2.0)
(△1.3)
(2.7)
((F)/(D))
(29.4)
(41.5)
(43.6)
(24.8)
1法人当たりの平均
資産
6,292
5,668
3,170
6,569
負債
4,442
3,313
1,787
4,942
正味財産
1,850
2,354
1,382
1,627
注(1)
 平成19年度末の「資産計」欄、「負債計」欄及び「正味財産計」欄の「(増△減率)」は、それぞれ18年度末の各欄に対する増減率である。
注(2)
 「うち年間収入額に占める国等からの支出額の割合が50%以上の法人」欄は事業年度が国の会計年度と同じ4月から3月までの法人について集計している。

(資産の額に対する正味財産の額の割合(平成19年度末))

〔1〕 収入・支出の実績がある法人全体 〔2〕 国費等交付先法人 〔3〕 国等からの支出を受けていない法人
検査の結果の図2

(イ) 国費等交付先法人の資産、負債及び正味財産の状況

a 資産及び負債の状況

 国費等交付先法人(18年度2,017法人、19年度2,018法人)における18、19両年度末の資産及び負債の内訳は、図表1-27のとおりとなっている。
 このうち、19年度末においては、資産11兆4382億円のうち、流動資産は2兆5632億円(うち現預金は8055億円)、固定資産は8兆8749億円(うち有価証券は4兆1180億円)となっている。また、負債6兆6862億円のうち、流動負債は1兆8184億円、固定負債は4兆8677億円となっている。
 そして、19年度末の状況を18年度末と比較すると、資産については流動資産、負債については流動負債の割合が大きく増加している。

図表1-27 国費等交付先法人の資産及び負債の状況

(単位:百万円、%)

年度末
区分
平成18
(2,017法人)
19
(2,018法人)
資産(A)
11,071,258
11,438,212
 
流動資産(B)
1,972,065
2,563,261
((B)/(A))
(17.8)
(22.4)
 
うち現預金(C)
861,198
805,550
((C)/(A))
(7.8)
(7.0)
固定資産(D)
9,099,192
8,874,951
((D)/(A))
(82.2)
(77.6)
 
うち有価証券(E)
3,716,069
4,118,044
((E)/(A))
(33.6)
(36.0)
負債(F)
6,220,317
6,686,201
 
流動負債(G)
1,114,197
1,818,422
((G)/(F))
(17.9)
(27.2)
固定負債(H)
5,106,120
4,867,779
((H)/(F))
(82.1)
(72.8)

b 正味財産の状況

 国費等交付先法人における正味財産については、図表1-26のとおり、19年度末において4兆7520億円、1法人当たりの平均で23.5億円となっているが、このうち、年間収入額に占める国等からの支出額の割合が50%以上の法人についてみると、1法人当たりの平均で13.8億円となっており、国費等交付先法人の1法人当たりの平均と比べて規模が小さくなっている。
 一方で、資産に対する正味財産の割合をみると、年間収入額に占める国等からの支出額の割合が50%以上の法人では43.6%で、国費等交付先法人の41.5%、国等からの支出を受けていない法人の24.8%に比べて高くなっている。
 また、新会計基準においては、正味財産を、寄附者等の意思によって特定の目的に使途が制限されている資産の額に相当する「指定正味財産」と指定正味財産以外の「一般正味財産」に区分して表示することとされている。
 そこで、国費等交付先法人のうち、新会計基準を18年度から適用している1,075法人の正味財産の状況をみると、図表1-28のとおりであり、19年度末においては、指定正味財産は1兆3086億円、一般正味財産は1兆8117億円となっている。

図表1-28 新会計基準を18年度から適用している1,075法人における正味財産の状況

(単位:法人、百万円、%)

年度末
区分
平成18
19
資産計(A)
7,681,647
8,022,115
1法人当たりの平均
7,145
7,462
正味財産計(B)
3,259,825
3,120,397
1法人当たりの平均
3,032
2,902
 
指定正味財産(C)
1,433,045
1,308,628
1法人当たりの平均
1,333
1,217
((C)/(B))
(44.0)
(41.9)
一般正味財産(D)
1,826,779
1,811,769
1法人当たりの平均
1,699
1,685
((D)/(B))
(56.0)
(58.1)
((D)/(A))
(23.8)
(22.6)

ウ 外部監査の導入状況

 前記の「公益法人の指導監督体制の充実等について」においては、各府省は、資産額が100億円以上若しくは負債額が50億円以上又は収支決算額が10億円以上の所管する公益法人に対して、公認会計士等による監査を受けるよう要請するとされている。
 そこで、国費等交付先法人のうち、18年度の決算で上記の基準に該当する法人における19年10月1日現在の公認会計士等による監査の導入状況をみると、図表1-29のとおりであり、上記要請の対象となる597法人のうち85.1%に当たる508法人が、公認会計士等による監査を受けている。

図表1-29 公認会計士等による監査の導入状況(平成19年10月1日現在)

(単位:法人、%)

区分
所管府省
要請の対象となる法人数(A)
公認会計士等による監査を導入している法人数(B)
(B)/(A)
内閣府
10
7
70.0
警察庁
7
7
100
金融庁
4
4
100
総務省
38
37
97.4
法務省
10
9
90.0
外務省
20
19
95.0
財務省
8
7
87.5
文部科学省
114
99
86.8
厚生労働省
112
85
75.9
農林水産省
69
55
79.7
経済産業省
130
117
90.0
国土交通省
148
131
88.5
環境省
13
13
100
防衛省
4
4
100
597
508
85.1
(注)
 「計」欄の法人数は、共管法人の重複分を除いた実数である。

エ 個別の法人における事態

 各府省及び国費等交付先法人において、国から交付された補助金等の人件費への充当状況について実地に検査したところ、以下のとおり、検討の必要があったと認められる事態が見受けられた。

<事例>

〔1〕  財団法人日本特産農産物協会は、平成19年度に国産大豆の入札取引等を行う大豆価格形成安定化事業を6811万円で実施し、入札参加者から徴収した拠出金720万円及び農林水産省から交付を受けた大豆価格形成安定化補助金6090万円を充当している。
 同財団法人は、補助対象事業費に、入札業務等に要した手当として1510万円を含めており、うち1185万円は入札業務等に従事した職員の給与等、325万円は同財団法人の社会保険料事業主負担分であるとしていた。
 しかし、入札業務等に従事した職員に係る社会保険料事業主負担分の従事割合に基づく額は151万円となることなどから、入札業務等に要した手当の額は1322万円となるが、これを超える額188万円(国庫補助金同額)を補助対象事業費に含めていた。
 なお、この超過額については、会計実地検査後、国庫に返納された。

〔2〕  財団法人食品流通構造改善促進機構は、平成18年度に食品流通効率化対策事業等6事業を計4億5196万円で実施し、農林水産省から総合食料対策事業関係補助金等計4億4914万円の交付を受けている。
 同財団法人は、補助事業に要した人件費として、計5902万円を補助対象事業費に含めていた。
 しかし、補助事業に従事した職員7人の人件費は、他事業分を除くと年間合計で4780万円であり、また、同省による6事業の補助金の交付決定は18年6月以降になされており、上記職員7人の18年6月以降の人件費を計算すると計3924万円であった。同財団法人は、〔1〕 同年4月に同省から補助金の割当内示を受けるなどしたことから、交付決定以前から事業に着手していた、〔2〕 上記職員7人以外に総務部門の職員も事業に従事していたとしているが、これらを裏付ける業務日誌等の資料がないため、人件費の計上が適切であったか確認できない状況である。
 同省は、このように実績が確認できない状況にもかかわらず、本件補助事業の審査、確認を行っていることから、事業主体に対して事業に要した人件費を裏付ける資料を整備させるよう指導すべきであったと認められる。

(3) 各府省所管の公益法人の内部留保の状況

ア 公益法人の内部留保額及び内部留保率

 公益法人の内部留保額、内部留保率の算出方法については、第1-2-(1)-エ に記述したとおりであるが、運用指針において、具体例などが示されている。
 これらの概要についてまとめると、図表1-30のとおりである。

図表1-30 内部留保額、内部留保率の算出式
計算式
計算式
番号
項目
具体例、条件等
内部留保額
〔1〕
総資産額
減算項目
〔2〕
財団法人における基本財産
〔3〕
公益事業を実施するために有している基金
事業目的が限定的であり、容易に取崩しができないものに限る。
〔4〕
法人の運営に不可欠な固定資産
法人事務所・事業所、土地、設備機器等。真に必要な水準に限られるべきであり、法人の事業内容、規模等から考えて不必要に広い法人事務所等は該当しない。
〔5〕
将来の特定の支払に充てる引当資産等
当該公益法人の運営上将来必要な特定の支払に充てることがめいりょうであり、かつ、その支払等が可能な限り明確に予定されているものに限られる。単なる積立預金や将来の予想しうる支出額を超えて積み立てられた預金(例:退職給付引当金の額を超えて積み立てられた退職給付引当預金)のその超過額は該当しない。
〔6〕
負債相当額
流動負債及び固定負債のうち将来の特定の支払がめいりょうなもの。支払内容の不明な債務や負債性引当金以外の引当金は該当しない。なお、負債相当額のうち引当資産を有している場合には、既に引当資産として控除しているため、当該負債の額は控除できない。
1事業年度における右の費用
〔7〕
事業費
〔8〕
管理費
〔9〕
当該法人が実施する事業に不可欠な固定資産取得費
資金運用等のための支出は含めない。
(注)
 指導監督基準上の内部留保額は、総資産額から事業遂行に直接必要とされる資産の額等を控除することにより算出することとされているが、例えば、法人の運営に不可欠な固定資産を借入金により取得した場合には、減算項目として、当該固定資産の額が「〔4〕  法人の運営に不可欠な固定資産」、借入金の額が「〔6〕  負債相当額」にそれぞれ該当することとなり、結果として、正味財産額(資産-負債)がプラスであっても、内部留保額がマイナスとなることがある。

イ 各府省所管の公益法人の内部留保額の状況

(ア) 各府省所管の公益法人の内部留保額の概況

 調書の提出を受けた各府省所管の公益法人のうち、収入・支出の実績がある法人(18年度6,567法人、19年度6,579法人)の18、19両年度末の内部留保額の状況は、図表1-31のとおり、18年度末においては6475億円、19年度末においては4236億円となっており、19年度末は18年度末に比べて34.6%減少している。
 これを1法人当たりの平均でみると、18年度末においては98百万円、19年度末においては64百万円となっており、このうち、国費等交付先法人についてみると、18年度末においては132百万円、19年度末においては120百万円であり、国等からの支出を受けていない法人と比較すると、19年度末は約3倍となっている。
 また、18年度末から19年度末にかけての変化をみると、国等からの支出を受けていない法人の52.5%の減少に対して、国費等交付先法人においては9.1%の減少にとどまっている。

図表1-31 収入・支出の実績がある法人における内部留保額の状況

(単位:法人、百万円、%)

区分
法人区分
平成18年度末
19年度末
法人数
内部留保額計
1法人当たりの平均
法人数
内部留保額計
(増△減率)
1法人当たりの平均
収入・支出の実績がある法人
6,567
647,522
1,223,355
△575,832
98
6,579
423,644
1,112,727
△689,082
(△34.6)
64
 
うち国費等支出先法人
2,017
267,578
622,931
△355,353
132
2,018
243,216
589,824
△346,607
(△9.1)
120
うち国等からの支出を受けていない法人
4,550
379,944
600,424
△220,479
83
4,561
180,428
522,903
△342,475
(△52.5)
39
注(1)
 内部留保額がマイナスとなっている法人があり、それらを相殺した額を計上している。
注(2)
 「(増△減率)」欄は、18年度末の「内部留保額計」に対する増減率である。

(イ) 国費等交付先法人の内部留保額の状況

a 内部留保額の規模

 国費等交付先法人2,018法人における19年度末の内部留保額は、上記図表1-31のとおり、2432億円(内部留保額がプラスとなっている額5898億円、マイナスとなっている額3466億円)となっているが、これを規模別にみると、図表1-32のとおりであり、内部留保額の規模が「0円以上5000万円未満」の法人数が816法人(40.4%)と最も多いが、「1億円以上」の法人も745法人(36.9%)あり、このうち「10億円以上」の法人は115法人(5.7%)となっている。
 また、環境省及び国土交通省の両所管の公益法人においては、内部留保額がマイナス100億円規模の法人があるため、1法人当たりの平均の内部留保額がマイナスになっている。
 所管府省ごとに19年度末現在の内部留保額の大きい国費等交付先法人10法人を示すと巻末別表1-3 のとおりである。

図表1-32 所管府省別の国費等交付先法人における内部留保額の規模別の状況

(単位:法人、百万円、%)

区分
所管府省
年度末
法人数
1法人当たりの平均内部留保額
内部留保額の規模別法人数及び割合
0円未満
0円以上5000万円未満
5000万円以上1億円未満
1億円以上
 
1億円以上5億円未満
5億円以上10億円未満
10億円以上
内閣府
平成18
50
196
3
25
7
15
12
0
3
(6.0)
(50.0)
(14.0)
(30.0)
(24.0)
(0.0)
(6.0)
19
50
200
5
25
6
14
11
0
3
(10.0)
(50.0)
(12.0)
(28.0)
(22.0)
(0.0)
(6.0)
警察庁
18
15
568
2
2
1
10
6
1
3
(13.3)
(13.3)
(6.7)
(66.7)
(40.0)
(6.7)
(20.0)
19
15
555
2
2
3
8
4
2
2
(13.3)
(13.3)
(20.0)
(53.3)
(26.7)
(13.3)
(13.3)
金融庁
18
9
195
2
2
1
4
1
2
1
(22.2)
(22.2)
(11.1)
(44.4)
(11.1)
(22.2)
(11.1)
19
9
310
2
2
0
5
2
1
2
(22.2)
(22.2)
(0.0)
(55.6)
(22.2)
(11.1)
(22.2)
総務省
18
80
369
9
25
6
40
25
7
8
(11.3)
(31.3)
(7.5)
(50.0)
(31.3)
(8.8)
(10.0)
19
81
283
9
26
7
39
23
8
8
(11.1)
(32.1)
(8.6)
(48.1)
(28.4)
(9.9)
(9.9)
法務省
18
115
94
3
92
6
14
10
2
2
(2.6)
(80.0)
(5.2)
(12.2)
(8.7)
(1.7)
(1.7)
19
115
87
0
94
7
14
10
2
2
(0.0)
(81.7)
(6.1)
(12.2)
(8.7)
(1.7)
(1.7)
外務省
18
84
300
5
37
10
32
24
3
5
(6.0)
(44.0)
(11.9)
(38.1)
(28.6)
(3.6)
(6.0)
19
84
158
8
35
13
28
21
4
3
(9.5)
(41.7)
(15.5)
(33.3)
(25.0)
(4.8)
(3.6)
財務省
18
27
374
1
12
3
11
6
3
2
(3.7)
(44.4)
(11.1)
(40.7)
(22.2)
(11.1)
(7.4)
19
27
385
1
13
3
10
4
2
4
(3.7)
(48.1)
(11.1)
(37.0)
(14.8)
(7.4)
(14.8)
文部科学省
18
461
28
43
199
73
146
116
15
15
(9.3)
(43.2)
(15.8)
(31.7)
(25.2)
(3.3)
(3.3)
19
462
19
41
202
71
148
114
19
15
(8.9)
(43.7)
(15.4)
(32.0)
(24.7)
(4.1)
(3.2)
厚生労働省
18
394
339
33
160
55
146
105
16
25
(8.4)
(40.6)
(14.0)
(37.1)
(26.6)
(4.1)
(6.3)
19
394
310
41
156
54
143
101
16
26
(10.4)
(39.6)
(13.7)
(36.3)
(25.6)
(4.1)
(6.6)
農林水産省
18
200
149
16
92
22
70
56
7
7
(8.0)
(46.0)
(11.0)
(35.0)
(28.0)
(3.5)
(3.5)
19
200
35
17
92
33
58
45
7
6
(8.5)
(46.0)
(16.5)
(29.0)
(22.5)
(3.5)
(3.0)
経済産業省
18
324
298
23
87
49
165
118
19
28
(7.1)
(26.9)
(15.1)
(50.9)
(36.4)
(5.9)
(8.6)
19
325
312
24
92
48
161
113
17
31
(7.4)
(28.3)
(14.8)
(49.5)
(34.8)
(5.2)
(9.5)
国土交通省
18
415
△188
29
126
62
198
132
34
32
(7.0)
(30.4)
(14.9)
(47.7)
(31.8)
(8.2)
(7.7)
19
416
△136
27
119
72
198
136
33
29
(6.5)
(28.6)
(17.3)
(47.6)
(32.7)
(7.9)
(7.0)
環境省
18
58
△260
8
27
7
16
16
0
0
(13.8)
(46.6)
(12.1)
(27.6)
(27.6)
(0.0)
(0.0)
19
58
△246
7
31
8
12
12
0
0
(12.1)
(53.4)
(13.8)
(20.7)
(20.7)
(0.0)
(0.0)
防衛省
18
15
258
0
8
1
6
5
0
1
(0.0)
(53.3)
(6.7)
(40.0)
(33.3)
(0.0)
(6.7)
19
15
253
1
8
1
5
4
0
1
(6.7)
(53.3)
(6.7)
(33.3)
(26.7)
(0.0)
(6.7)
18
2,017
132
150
817
277
773
552
104
117
(7.4)
(40.5)
(13.7)
(38.3)
(27.4)
(5.2)
(5.8)
19
2,018
120
156
816
301
745
523
107
115
(7.7)
(40.4)
(14.9)
(36.9)
(25.9)
(5.3)
(5.7)
(注)
 「計」欄の法人数は、共管法人の重複分を除いた実数である。

b 総資産額に対する内部留保額

 国費等交付先法人全体の19年度末の内部留保額の総資産額に対する割合をみると、図表1-33のとおり、2.1%となっている。また、内部留保額を算出する際に、総資産額から差し引く各減算項目の総資産額に対する割合をみると、19年度末においては、「基本財産」(財団法人における基本財産)は7.7%、「公益事業基金」(公益事業を実施するために有している基金)は34.5%、「運営固定資産」(法人の運営に不可欠な固定資産)は13.8%、「引当資産等」(将来の特定の支払に充てる引当資産等)は13.2%、「負債相当額」は28.7%となっている。
 また、国費等交付先法人全体の総資産額は、図表1-33のとおり、18年度末の11兆0712億円から19年度末の11兆4382億円に増加しているが、内部留保額は、18年度末の2675億円から19年度末の2432億円に減少している。これは、減算項目のうち、「基本財産」、「公益事業基金」、「運営固定資産」及び「引当資産等」の各項目の金額がいずれも増加しているためである。このため、内部留保額の総資産額に対する割合は18年度末より低くなっている。
 なお、減算項目のうち、最も多額に上っている「公益事業基金」についてみると、19年度末3兆9434億円のうち、61.2%に当たる2兆4115億円を経済産業省所管の法人が保有している。これは、財団法人原子力環境整備促進・資金管理センターが、使用済燃料の再処理等の費用に充てるため、「原子力発電における使用済燃料の再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律」(平成17年法律第48号)及び「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」(平成12年法律第117号)に基づき、電力事業者等からの積立金を管理している「再処理等積立金」及び「最終処分積立金」の計2兆1435億円が大きく影響している。

図表1-33 国費等交付先法人における内部留保額の状況

(単位:法人、百万円、%)

区分
所管府省
国費等交付先法人数
〔1〕 総資産額
減算項目
内部留保額(A)
((A)/〔1〕 )
〔2〕 基本財産
(〔2〕 /〔1〕 )
〔3〕 公益事業基金
(〔3〕 /〔1〕 )
〔4〕 運営固定資産
(〔4〕 /〔1〕 )
〔5〕 引当資産等
(〔5〕 /〔1〕 )
〔6〕 負債相当額
(〔6〕 /〔1〕 )
内閣府
50
192,588
25,556
(13.3)
[14]
65,424
(34.0)
43,268
(22.5)
[64]
37,802
(19.6)
10,506
(5.5)
10,029
(5.2)
警察庁
15
149,135
18,885
(12.7)
[6]
308
(0.2)
29,644
(19.9)
[28]
37,982
(25.5)
53,978
(36.2)
8,336
(5.6)
金融庁
9
64,415
1,109
(1.7)
[10]
51,322
(79.7)
3,078
(4.8)
[14]
1,483
(2.3)
4,630
(7.2)
2,791
(4.3)
総務省
81
502,712
68,945
(13.7)
[36]
80,386
(16.0)
137,848
(27.4)
[178]
88,584
(17.6)
103,963
(20.7)
22,983
(4.6)
法務省
115
39,447
3,896
(9.9)
[10]
5,338
(13.5)
4,130
(10.5)
[110]
4,936
(12.5)
11,136
(28.2)
10,008
(25.4)
外務省
84
368,066
39,540
(10.7)
[65]
64,711
(17.6)
18,818
(5.1)
[134]
218,254
(59.3)
13,454
(3.7)
13,287
(3.6)
財務省
27
140,212
46,760
(33.3)
[30]
67,035
(47.8)
5,190
(3.7)
[37]
4,770
(3.4)
6,035
(4.3)
10,419
(7.4)
文部科学省
462
1,448,330
344,579
(23.8)
[703]
114,993
(7.9)
216,186
(14.9)
[696]
562,183
(38.8)
201,327
(13.9)
9,060
(0.6)
厚生労働省
394
2,359,424
99,393
(4.2)
[156]
163,304
(6.9)
384,533
(16.3)
[833]
224,166
(9.5)
1,365,616
(57.9)
122,409
(5.2)
農林水産省
200
1,543,348
45,260
(2.9)
[245]
784,835
(50.9)
122,752
(8.0)
[348]
304,200
(19.7)
279,158
(18.1)
7,141
(0.5)
経済産業省
325
3,277,783
142,586
(4.4)
[266]
2,411,593
(73.6)
217,851
(6.6)
[660]
144,218
(4.4)
259,853
(7.9)
101,680
(3.1)
国土交通省
416
2,538,231
186,489
(7.3)
[368]
374,238
(14.7)
649,095
(25.6)
[873]
226,401
(8.9)
1,158,745
(45.7)
△56,739
(△2.2)
環境省
58
103,295
16,424
(15.9)
[72]
25,203
(24.4)
35,127
(34.0)
[94]
6,430
(6.2)
34,403
(33.3)
△14,293
(△13.8)
防衛省
15
22,056
7,922
(35.9)
[16]
1,616
(7.3)
840
(3.8)
[32]
4,555
(20.7)
3,321
(15.1)
3,800
(17.2)
平成19年度末計
2,018
11,438,212
883,806
(7.7)
[1,784]
3,943,466
(34.5)
1,578,272
(13.8)
[3,695]
1,508,847
(13.2)
3,280,603
(28.7)
243,216
(2.1)
<参考>18年度末計
2,017
11,071,258
852,477
(7.7)
3,711,567
(33.5)
1,575,435
(14.2)
1,240,453
(11.2)
3,423,746
(30.9)
267,578
(2.4)
注(1)
 「公益事業基金」欄、「引当資産等」欄の[ ]書きは、それぞれ基金、資産等の数である。
注(2)
 「平成19年度末計」欄は、共管法人の重複を除いた実数である。

総資産額に対する割合(平成19年度末)

「平成19年度末計」欄は、共管法人の重複を除いた実数である。

(ウ) 国費等交付先法人における公益事業基金の状況

 内部留保額の算出上減算項目とされている公益事業基金については、運用指針において、「事業目的が限定的であり、容易に取り崩しができないものに限る。」とされている。
 そこで、国費等交付先法人が保有する公益事業基金について、特定の事業のみに使用する旨や取崩し手続についての規定の整備状況をみると、図表1-34のとおりとなっている。
 すなわち、19年度末現在で設置されている公益事業基金1,784基金のうち、事業目的に係る規定のないものが471基金(26.4%)、また、取崩し手続についての規定のないものが606基金(34.0%)あり、必ずしも、「事業目的が限定的であり、容易に取り崩しができない」状況が担保されているとはいえない公益事業基金についても、内部留保額の減算項目とされている状況である。これらの公益事業基金を内部留保額の減算項目とすることの妥当性を再検討したり、必要な規定を整備したりする必要があると考えられる。

図表1-34 公益事業基金に係る規定の整備状況(平成19年度末)

(単位:法人、基金、%)

区分
所管府省
国費等交付先法人数
公益事業基金設置法人数
公益事業基金数(A)
 
うち事業目的に係る規定あり
うち事業目的に係る規定なし(B)
((B)/(A))
うち取崩し手続についての規定あり
うち取崩し手続についての規定なし(C)
((C)/(A))
内閣府
50
11
14
8
6
(42.9)
8
6
(42.9)
警察庁
15
4
6
5
1
(16.7)
4
2
(33.3)
金融庁
9
5
10
9
1
(10.0)
10
0
(0.0)
総務省
81
25
36
26
10
(27.8)
24
12
(33.3)
法務省
115
8
10
5
5
(50.0)
5
5
(50.0)
外務省
84
23
65
45
20
(30.8)
39
26
(40.0)
財務省
27
14
30
27
3
(10.0)
27
3
(10.0)
文部科学省
462
234
703
515
188
(26.7)
493
210
(29.9)
厚生労働省
394
89
156
99
57
(36.5)
87
69
(44.2)
農林水産省
200
85
245
237
8
(3.3)
214
31
(12.7)
経済産業省
325
129
266
171
95
(35.7)
155
111
(41.7)
国土交通省
416
170
368
273
95
(25.8)
234
134
(36.4)
環境省
58
29
72
58
14
(19.4)
38
34
(47.2)
防衛省
15
6
16
14
2
(12.5)
14
2
(12.5)
2,018
748
1,784
1,313
471
(26.4)
1,178
606
(34.0)
(注)
 「計」欄の法人数及び基金数は、共管法人の重複分を除いた実数である。

 また、公益事業基金の中には、国等の補助金等により設置造成されている基金も含まれており、19年度末においては、748法人の1,784基金のうち、76法人の138基金が国等の補助金等を原資としている。
 これらの基金による事業の実施状況等については、後掲第2-1-(5) に記述している。

ウ 各府省所管の公益法人の内部留保率の状況

(ア) 各府省所管の公益法人の内部留保率の概況

 公益法人の内部留保率は、前記第1-2-(1)-エ のとおり、運用指針において、原則として、30%程度以下であることが望ましいとされている。
 そこで、調書の提出を受けた各府省所管の公益法人のうち、収入・支出の実績がある法人(18年度6,567法人、19年度6,579法人)の18、19両年度末の内部留保率(注9) の状況をみると、図表1-35のとおり、内部留保率が30%超の法人は、19年度末において2,518法人(38.3%)となっており、18年度末の2,705法人(41.2%)に比べて減少している。また、内部留保率が100%超の法人は、18年度末において712法人(10.8%)、19年度末において635法人(9.7%)となっており、同様に減少している。
 このうち、国費等交付先法人(18年度2,017法人、19年度2,018法人)では、内部留保率が30%超の法人は、18年度末において713法人(35.3%)、19年度末で659法人(32.7%)となっており、また、100%超の法人は、18年度末において94法人(4.7%)、19年度末において91法人(4.5%)となっている。

 本報告の本文及び図表の数値は、原則として割合については表示単位未満を四捨五入しているが、内部留保率の算出に当たっては表示単位未満切り捨てとしている。


図表1-35 収入・支出の実績がある法人の内部留保率の状況

(単位:法人、%)

区分
年度等
法人数
内部留保率別法人数及び割合
0%以下
0%超30%以下
30%超
 
30%超50%以下
50%超100%以下
100%超
平成18年度末
収入・支出の実績がある法人
6,567
531
3,331
2,705
1,175
818
712
(8.1)
(50.7)
(41.2)
(17.9)
(12.5)
(10.8)
 
うち国費等交付先法人
2,017
167
1,137
713
379
240
94
(8.3)
(56.4)
(35.3)
(18.8)
(11.9)
(4.7)
うち国等から支出を受けていない法人
4,550
364
2,194
1,992
796
578
618
(8.0)
(48.2)
(43.8)
(17.5)
(12.7)
(13.6)
19年度末
収入・支出の実績がある法人
6,579
546
3,515
2,518
1,060
823
635
(8.3)
(53.4)
(38.3)
(16.1)
(12.5)
(9.7)
 
うち国費等交付先法人
2,018
172
1,187
659
343
225
91
(8.5)
(58.8)
(32.7)
(17.0)
(11.1)
(4.5)
うち国等から支出を受けていない法人
4,561
374
2,328
1,859
717
598
544
(8.2)
(51.0)
(40.8)
(15.7)
(13.1)
(11.9)

(イ) 国費等交付先法人の内部留保率の状況

a 内部留保率の状況

 国費等交付先法人の内部留保率別の分布状況をみると、図表1-36のとおり、18、19両年度末とも、「0%超10%以下」、「10%超20%以下」及び「20%超30%以下」の法人がそれぞれ約2割を占めているが、30%超の法人も3分の1程度を占めている。
 これを所管府省別にみると、19年度末現在で内部留保率が30%超の国費等交付先法人数が多いのは、文部科学省、国土交通省、経済産業省、厚生労働省の順となっている。
 所管府省ごとに19年度末現在の内部留保率の高い国費等交付先法人10法人を示すと巻末別表1-4 のとおりである。

図表1-36 所管府省別の国費等交付先法人の内部留保率の状況

(単位:法人、%)

区分
所管府省
年度末
法人数
内部留保率別法人数及び割合
0%以下
0%超10%以下
10%超20%以下
20%超30%以下
30%超
30%超40%以下
40%超50%以下
50%超60%以下
60%超70%以下
70%超80%以下
80%超90%以下
90%超100%以下
100%超
内閣府
平成18
50
3
9
6
14
18
3
9
2
2
0
0
0
2
(6.0)
(18.0)
(12.0)
(28.0)
(36.0)
(6.0)
(18.0)
(4.0)
(4.0)
(0.0)
(0.0)
(0.0)
(4.0)
19
50
5
8
8
10
19
5
5
2
3
1
0
1
2
(10.0)
(16.0)
(16.0)
(20.0)
(38.0)
(10.0)
(10.0)
(4.0)
(6.0)
(2.0)
(0.0)
(2.0)
(4.0)
警察庁
18
15
2
2
2
5
4
4
0
0
0
0
0
0
0
(13.3)
(13.3)
(13.3)
(33.3)
(26.7)
(26.7)
(0.0)
(0.0)
(0.0)
(0.0)
(0.0)
(0.0)
(0.0)
19
15
2
3
1
8
1
1
0
0
0
0
0
0
0
(13.3)
(20.0)
(6.7)
(53.3)
(6.7)
(6.7)
(0.0)
(0.0)
(0.0)
(0.0)
(0.0)
(0.0)
(0.0)
金融庁
18
9
2
1
1
4
1
0
0
0
0
0
1
0
0
(22.2)
(11.1)
(11.1)
(44.4)
(11.1)
(0.0)
(0.0)
(0.0)
(0.0)
(0.0)
(11.1)
(0.0)
(0.0)
19
9
2
1
1
4
1
0
0
0
0
0
1
0
0
(22.2)
(11.1)
(11.1)
(44.4)
(11.1)
(0.0)
(0.0)
(0.0)
(0.0)
(0.0)
(11.1)
(0.0)
(0.0)
総務省
18
80
9
13
8
21
29
12
5
2
4
1
1
2
2
(11.3)
(16.3)
(10.0)
(26.3)
(36.3)
(15.0)
(6.3)
(2.5)
(5.0)
(1.3)
(1.3)
(2.5)
(2.5)
19
81
9
15
12
23
22
6
4
5
3
1
1
1
1
(11.1)
(18.5)
(14.8)
(28.4)
(27.2)
(7.4)
(4.9)
(6.2)
(3.7)
(1.2)
(1.2)
(1.2)
(1.2)
法務省
18
115
3
44
26
9
33
11
1
4
3
0
2
2
10
(2.6)
(38.3)
(22.6)
(7.8)
(28.7)
(9.6)
(0.9)
(3.5)
(2.6)
(0.0)
(1.7)
(1.7)
(8.7)
19
115
0
52
20
13
30
4
4
4
0
0
2
3
13
(0.0)
(45.2)
(17.4)
(11.3)
(26.1)
(3.5)
(3.5)
(3.5)
(0.0)
(0.0)
(1.7)
(2.6)
(11.3)
外務省
18
84
7
17
16
10
34
7
10
5
2
1
0
2
7
(8.3)
(20.2)
(19.0)
(11.9)
(40.5)
(8.3)
(11.9)
(6.0)
(2.4)
(1.2)
(0.0)
(2.4)
(8.3)
19
84
10
21
13
12
28
7
6
3
3
1
0
1
7
(11.9)
(25.0)
(15.5)
(14.3)
(33.3)
(8.3)
(7.1)
(3.6)
(3.6)
(1.2)
(0.0)
(1.2)
(8.3)
財務省
18
27
1
3
6
6
11
6
1
0
3
0
0
0
1
(3.7)
(11.1)
(22.2)
(22.2)
(40.7)
(22.2)
(3.7)
(0.0)
(11.1)
(0.0)
(0.0)
(0.0)
(3.7)
19
27
1
4
7
6
9
2
1
2
1
0
1
1
1
(3.7)
(14.8)
(25.9)
(22.2)
(33.3)
(7.4)
(3.7)
(7.4)
(3.7)
(0.0)
(3.7)
(3.7)
(3.7)
文部科学省
18
461
47
74
86
68
186
49
43
34
16
13
4
5
22
(10.2)
(16.1)
(18.7)
(14.8)
(40.3)
(10.6)
(9.3)
(7.4)
(3.5)
(2.8)
(0.9)
(1.1)
(4.8)
19
462
44
81
79
80
178
55
44
19
12
12
6
7
23
(9.5)
(17.5)
(17.1)
(17.3)
(38.5)
(11.9)
(9.5)
(4.1)
(2.6)
(2.6)
(1.3)
(1.5)
(5.0)
厚生労働省
18
394
37
94
69
63
131
53
40
7
9
5
4
0
13
(9.4)
(23.9)
(17.5)
(16.0)
(33.2)
(13.5)
(10.2)
(1.8)
(2.3)
(1.3)
(1.0)
(0.0)
(3.3)
19
394
45
87
70
79
113
40
29
15
7
2
2
3
15
(11.4)
(22.1)
(17.8)
(20.1)
(28.7)
(10.2)
(7.4)
(3.8)
(1.8)
(0.5)
(0.5)
(0.8)
(3.8)
農林水産省
18
200
21
52
40
41
46
15
10
7
3
3
1
0
7
(10.5)
(26.0)
(20.0)
(20.5)
(23.0)
(7.5)
(5.0)
(3.5)
(1.5)
(1.5)
(0.5)
(0.0)
(3.5)
19
200
23
40
48
42
47
22
8
5
4
4
0
1
3
(11.5)
(20.0)
(24.0)
(21.0)
(23.5)
(11.0)
(4.0)
(2.5)
(2.0)
(2.0)
(0.0)
(0.5)
(1.5)
経済産業省
18
324
27
55
54
67
121
37
21
17
16
10
1
6
13
(8.3)
(17.0)
(16.7)
(20.7)
(37.3)
(11.4)
(6.5)
(5.2)
(4.9)
(3.1)
(0.3)
(1.9)
(4.0)
19
325
25
52
68
59
121
38
20
18
15
8
2
8
12
(7.7)
(16.0)
(20.9)
(18.2)
(37.2)
(11.7)
(6.2)
(5.5)
(4.6)
(2.5)
(0.6)
(2.5)
(3.7)
国土交通省
18
415
30
67
73
91
154
46
29
19
18
7
7
6
22
(7.2)
(16.1)
(17.6)
(21.9)
(37.1)
(11.1)
(7.0)
(4.6)
(4.3)
(1.7)
(1.7)
(1.4)
(5.3)
19
416
28
67
76
104
141
49
20
22
15
9
5
2
19
(6.7)
(16.1)
(18.3)
(25.0)
(33.9)
(11.8)
(4.8)
(5.3)
(3.6)
(2.2)
(1.2)
(0.5)
(4.6)
環境省
18
58
8
14
13
8
15
2
4
3
1
0
4
1
0
(13.8)
(24.1)
(22.4)
(13.8)
(25.9)
(3.4)
(6.9)
(5.2)
(1.7)
(0.0)
(6.9)
(1.7)
(0.0)
19
58
7
17
8
11
15
0
7
1
1
3
3
0
0
(12.1)
(29.3)
(13.8)
(19.0)
(25.9)
(0.0)
(12.1)
(1.7)
(1.7)
(5.2)
(5.2)
(0.0)
(0.0)
防衛省
18
15
0
3
6
3
3
1
0
1
1
0
0
0
0
(0.0)
(20.0)
(40.0)
(20.0)
(20.0)
(6.7)
(0.0)
(6.7)
(6.7)
(0.0)
(0.0)
(0.0)
(0.0)
19
15
1
2
5
4
3
1
1
0
1
0
0
0
0
(6.7)
(13.3)
(33.3)
(26.7)
(20.0)
(6.7)
(6.7)
(0.0)
(6.7)
(0.0)
(0.0)
(0.0)
(0.0)
18
2,017
167
409
371
357
713
225
154
94
66
36
25
19
94
(8.3)
(20.3)
(18.4)
(17.7)
(35.3)
(11.2)
(7.6)
(4.7)
(3.3)
(1.8)
(1.2)
(0.9)
(4.7)
19
2,018
172
403
376
408
659
205
138
85
56
39
23
22
91
(8.5)
(20.0)
(18.6)
(20.2)
(32.7)
(10.2)
(6.8)
(4.2)
(2.8)
(1.9)
(1.1)
(1.1)
(4.5)
(注)
 「計」欄の法人数は、共管法人の重複分を除いた実数である。

b 18年度末の内部留保率が30%超となっている法人の19年度末の状況

 国費等交付先法人のうち、18年度末において内部留保率が30%超となっている713法人について、19年度末の内部留保率の状況をみると、内部留保率が低下しなかった法人は281法人、低下した法人は432法人となっており、このうち、内部留保率が30%以下となった法人は182法人である。
 上記の19年度末において内部留保率が30%以下となった182法人について、内部留保率の算出項目ごとに18年度末と19年度末の状況を比較すると、図表1-37のとおりとなっている。
 これによると、内部留保額の算出項目は、総資産額が10.2%減少している一方で、減算項目のうち、引当資産等が53.1%、運営固定資産が15.5%、基本財産が14.7%及び公益事業基金が5.4%それぞれ増加している。この結果、内部留保率の分子となる内部留保額自体は、51.3%減少している。一方で、内部留保率の分母となる額は27.0%増加しており、内部留保率の低下要因となっているが、この中でも、事業に不可欠な固定資産取得費が3.3倍の増加となっている。

図表1-37 平成19年度末に内部留保率が30%以下となった182法人の内部留保率の算出項目

(単位:百万円、%)

年度末
区分
平成18
19
(増△減率)
総資産額
1,377,628
1,236,759
(△10.2)
減算項目
基本財産
172,160
197,440
(14.7)
公益事業基金
147,625
155,637
(5.4)
運営固定資産
74,700
86,274
(15.5)
引当資産等
43,982
67,325
(53.1)
負債相当額
838,810
681,235
(△18.8)
内部留保額
100,350
48,845
(△51.3)
 
事業費
140,497
151,630
(7.9)
管理費
26,153
26,209
(0.2)
事業に不可欠な固定資産取得費
10,925
47,606
(335.8)
177,575
225,447
(27.0)
(注)
 「(増△減率)」欄は、平成18年度末の各欄に対する増減率である。

エ 国等からの支出規模と内部留保の状況

 国費等交付先法人2,018法人について、19年度の国等からの支出額に応じて、おおむね法人数が同規模となるように3グループに分類して、それぞれの内部留保額の状況をみると、図表1-38のとおりとなっている。
 すなわち、国等からの支出額が1000万円未満のグループ(708法人)においては、内部留保額が1億円以上の法人は24.3%であるのに対して、国等からの支出額が1億円以上のグループ(620法人)においては、56.8%と高い割合となっている。
 なお、国等からの支出を受けていない法人(4,561法人)においては、内部留保額1億円以上の法人は15.7%にとどまっている。

図表1-38 国等からの支出規模と内部留保額の状況(平成19年度)
上段:法人数(単位:法人)
下段:割合(単位:%)
内部留保額の規模
国等からの支出額
1000万円未満
1000万円以上1億円未満
1億円以上
1000万円未満
184
352
172
708
(26.0)
(49.7)
(24.3)
(100)
1000万円以上1億円未満
128
341
221
690
(18.6)
(49.4)
(32.0)
(100)
1億円以上
107
161
352
620
(17.3)
(26.0)
(56.8)
(100)
419
854
745
2,018
(20.8)
(42.3)
(36.9)
(100)
<参考>国等からの支出 を受けていない法人
1,987
1,857
717
4,561
(43.6)
(40.7)
(15.7)
(100)

 次に、国費等交付先法人のうち、19年度に国等から補助金等の交付を受けている724法人について、補助金等の交付額に応じて、上記の図表1-38と同じ3グループに分類して、それぞれの内部留保額の状況をみると、図表1-39のとおりとなっている。
 すなわち、補助金等の交付額が1000万円未満のグループ(249法人)においては、内部留保額が1億円以上の法人は22.9%であるのに対して、補助金等の交付額が1億円以上のグループ(189法人)においては、65.6%と高い割合となっている。

図表1-39 国等から交付された補助金等の規模と内部留保額の状況(平成19年度)
上段:法人数(単位:法人)
下段:割合(単位:%)
内部留保額の規模
補助金等の交付額
1000万円未満
1000万円以上1億円未満
1億円以上
1000万円未満
56
136
57
249
(22.5)
(54.6)
(22.9)
(100)
1000万円以上1億円未満
60
124
102
286
(21.0)
(43.4)
(35.7)
(100)
1億円以上
24
41
124
189
(12.7)
(21.7)
(65.6)
(100)
140
301
283
724
(19.3)
(41.6)
(39.1)
(100)

 また、国費等交付先法人のうち、19年度に国等から契約に基づく支払を受けている1,469法人について、契約に基づく支払金額に応じて、前記図表1-38と同じ3グループに分類して、それぞれの内部留保額の状況をみると、図表1-40のとおりとなっている。
 すなわち、契約に基づく支払金額が1000万円未満のグループ(441法人)においては、内部留保額が1億円以上の法人は31.5%であるのに対して、契約に基づく支払金額が1億円以上のグループ(465法人)においては、56.1%と高い割合となっている。

図表1-40 国等との契約に基づく支払金額の規模と内部留保額の状況(平成19年度)
上段:法人数(単位:法人)
下段:割合(単位:%)
内部留保額の規模
契約に基づく支払金額
1000万円未満
1000万円以上1億円未満
1億円以上
1000万円未満
113
189
139
441
(25.6)
(42.9)
(31.5)
(100)
1000万円以上1億円未満
100
270
193
563
(17.8)
(48.0)
(34.3)
(100)
1億円以上
82
122
261
465
(17.6)
(26.2)
(56.1)
(100)
295
581
593
1,469
(20.1)
(39.6)
(40.4)
(100)

 なお、国等からの支出規模と内部留保率との関係についてみたところ、特に相関関係はみられなかった。また、国等からの支出額が年間収入額に占める割合と内部留保との関係についても、特に相関関係はみられなかった。

オ 個別の法人における事態

 国費等交付先法人において、内部留保額等の算出過程や内部留保の発生の背景等について実地に検査したところ、以下のような事態が見受けられた。なお、国の補助金により設置造成された基金の運用益が内部留保の増加に影響していると考えられるものが見受けられていたが、これについては、後掲第2-1-(5)-オ-<事例>〔16〕 に記載している。

(ア) 内部留保額の算出上減算項目としている公益事業基金及び引当資産等の妥当性に疑義があるもの

<事例>

〔3〕  社団法人電波産業会は、平成19年度末の内部留保額3億4567万円及び内部留保率8.6%の算出に当たり、事業資金積立資産(8年設置。19年度末現在2億8012万円)を引当資産等として内部留保額の減算項目としていた。
 しかし、同社団法人は、同積立資産の使途についての規定を整備しておらず、その額の根拠も明確でないことから、その全額を内部留保額の減算項目とすることの妥当性について検討すべきであった。
 なお、その全額を内部留保額に含めるとともに、事業に不可欠な固定資産取得費の誤りを修正して計算すると、19年度末の内部留保率は15.6%となる。

〔4〕  財団法人東洋文庫は、平成19年度末の内部留保額6202万円及び内部留保率19.8%の算出に当たり、建物等修繕引当資産(13年設置。19年度末現在6307万円)を引当資産等として内部留保額の減算項目としていた。
 しかし、同財団法人は、19年度末時点において、所有する建物の修繕計画を定めておらず、同引当資産の額も修繕計画に基づいて見積もられたものではなかった。このため、同引当資産については、額の根拠が明確でなく、その全額を内部留保額の減算項目とすることの妥当性について検討すべきであった。
 なお、その全額を内部留保額に含めると、19年度末の内部留保率は40.0%となる。

〔5〕  財団法人国際医学情報センターは、平成19年度末の内部留保額4億2801万円及び内部留保率24.6%の算出に当たり、事務所拡充引当資産(昭和55年設置。平成19年度末現在7200万円)を引当資産等として内部留保額の減算項目としていた。
 しかし、同財団法人は、同引当資産について、既に予定していた使途目的がなくなっていることから、15年度以降、毎年度取り崩して収入に計上しており、特定の支払に充てるために取り崩されているものではないことから、内部留保額の減算項目としての妥当性について検討すべきであった。
 なお、これを内部留保額に含めると、19年度末の内部留保率は28.7%となる。

〔6〕  財団法人防衛施設周辺整備協会は、平成19年度末の内部留保額△6413万円及び内部留保率△4.2%の算出に当たり、運営安定化資金(昭和58年設置。平成19年度末現在9億8157万円)を公益事業基金として内部留保額の減算項目としていた。
 しかし、同資金については、事業目的及び運用益の使途についての規定が整備されておらず、その額の根拠が明確でないことから、その全額を内部留保額の減算項目とすることの妥当性について検討すべきであった。
 なお、その全額を内部留保額に含めると、19年度末の内部留保率は60.2%となる。

(イ) 内部留保額の算出上控除すべき資産等の額を控除していないもの

<事例>

〔7〕  財団法人日韓文化交流基金は、平成19年度末の内部留保額39億6232万円及び内部留保率453.1%の算出に当たり、内部留保額の減算項目である公益事業基金を保有していないとしていた。
 しかし、同財団法人は、東アジア青少年交流基金(19年設置。19年度末現在38億0377万円)を保有しており、同基金は事業目的が限定的であり、容易に取崩しができない公益事業基金に該当するものであることから、内部留保額の減算項目とすべきであった。
 なお、これを内部留保額から控除すると、19年度末の内部留保率は18.1%となる。

〔8〕  財団法人ベンチャーエンタープライズセンターは、平成19年度末の内部留保額4億0205万円及び内部留保率160.5%の算出に当たり、内部留保額の減算項目である引当資産等は退職給付引当資産1363万円のみであるとしていた。
 しかし、同財団法人は、求償権償却引当金(昭和51年設置。平成19年度末現在3億7556万円)を保有しており、同引当金は、将来の特定の支払に充てる引当資産等に該当するものであることから、内部留保額の減算項目とすべきであった。
 なお、これを内部留保額から控除するとともに事業費及び管理費の誤りを修正して計算すると、19年度末の内部留保率は8.8%となる。

(ウ) 国への補助金の返納が遅延しているもの

 事業終了後、国に返納すべき補助金が、手続が遅れるなどして交付先の公益法人に滞留している事態が、以下のとおり見受けられた。これらについては、公益法人において「未払金」として負債計上されている場合には、内部留保の算出に当たって、負債相当額として減算項目となっていることから、内部留保には含まれないが、結果として、公益法人に余剰な資金が留保されている状況となっていた。

<事例>

〔9〕  厚生労働省は、平成15年度から19年度までに、社団法人国民健康保険中央会等4法人に、後期高齢者医療準備事業費補助金等計71億3308万円を交付している。
 上記4法人は、国庫補助対象事業費が予定より減少するなどしたため、これらの国庫補助金のうち計4億7750万円について国庫返納の必要がある旨の内容の実績報告書を同省に提出していた。しかし、同省において、額の確定等の手続が遅れるなどしたため、下表のとおり、国に返納すべき補助金が4法人に滞留していた。
 なお、これらのうち、会計実地検査時に国庫返納の処置が執られていなかった補助金については、会計実地検査後、国庫返納の処置が執られた。

交付先公益法人名
年度
返納手続が遅れるなどしていた国庫補助金(千円)
社団法人国民健康保険中央会
平成18
6,889
19
215,517
財団法人友愛福祉財団
18
89,128
19
88,657
財団法人日本公衆衛生協会
15
8,229
16
12,493
17
16,887
18
1,866
19
7,985
財団法人日本腎臓財団
19
29,851
15年度計
8,229
16年度計
12,493
17年度計
16,887
18年度計
97,883
19年度計
342,010
合計
477,502

(4) 所管府省の指導監督の状況及び所管府省退職者の再就職者の状況

ア 所管府省による公益法人に対する指導監督の状況

(ア) 指導監督の体制

 各府省は、公益法人の指導監督を統一的かつ効果的・効率的に推進するために、指導監督の事務を総括する総括公益法人指導監督官を設置し、また、指導監督に関する府省内連絡会議を開催するなどしている。

(イ) 立入検査の実施状況及びフォローアップの状況

 前記の「公益法人の指導監督体制の充実等について」において、各府省は、立入検査の結果、公益法人の業務運営に改善すべき事項が認められた場合には、当該公益法人に対して、速やかに文書等により、期限を付して必要な改善を指示するとともに、これに基づき講じた措置について報告を求めるものとされた。
 各府省が18、19両年度に立入検査を実施した法人数は、図表1-41のとおり、18年度においては延べ2,884法人、19年度においては延べ3,056法人となっている。
 このうち、19年度立入検査分3,056法人についてみると、立入検査の結果、財務・会計面で改善すべき事項があるとされた法人数は980法人(32.1%)となっており、うち国費等交付先法人は233法人となっている。
 これらの国費等交付先法人233法人のうち、各府省が文書により改善の指示を行った法人は115法人(49.4%)となっており、これに対して、講じた措置を文書により報告した法人は21年6月末現在で87法人(115法人に対する割合75.7%)となっている。
 これを所管府省ごとにみると、文部科学省等4省庁は、財務・会計面で改善すべき事項があるとされた国費等交付先法人すべてに対して文書により改善の指示を行っている。

図表1-41 所管府省別の立入検査及び文書による指示の状況

(単位:法人、%)

区分
所管府省
平成18年度
19年度
立入検査実施法人数(A)
うち財務・会計面で改善すべき事項があるとされた法人数(B)
((B)/(A))
 
立入検査実施法人数(F)
うち財務・会計面で改善すべき事項があるとされた法人数(G)
((G)/(F))
 
うち国費等交付先法人数(C)
((C)/(B))
 
うち国費等交付先法人数(H)
((H)/(G))
 
うち文書により改善の指示が行われた法人数(D)
((D)/(C))
 
うち文書により改善の指示が行われた法人数(I)
((I)/(H))
 
うち講じた措置を文書により報告した法人数(E)
((E)/(D))
うち講じた措置を文書により報告した法人数(21年6月末現在)(J)
((J)/(I))
内閣府
29
9
4
3
2
38
13
7
5
3
(31.0)
(44.4)
(75.0)
(66.7)
(34.2)
(53.8)
(71.4)
(60.0)
警察庁
47
7
0
-
-
48
8
3
1
-
(14.9)
(0.0)
-
-
(16.7)
(37.5)
(33.3)
-
金融庁
44
29
3
3
3
40
21
1
1
1
(65.9)
(10.3)
(100)
(100)
(52.5)
(4.8)
(100)
(100)
総務省
120
32
8
1
1
69
29
4
2
2
(26.7)
(25.0)
(12.5)
(100)
(42.0)
(13.8)
(50.0)
(100)
法務省
68
6
4
4
4
64
11
6
4
4
(8.8)
(66.7)
(100)
(100)
(17.2)
(54.5)
(66.7)
(100)
外務省
78
5
0
-
-
72
8
4
4
4
(6.4)
(0.0)
-
-
(11.1)
(50.0)
(100)
(100)
財務省
327
84
6
1
1
489
149
5
0
-
(25.7)
(7.1)
(16.7)
(100)
(30.5)
(3.4)
(0.0)
-
文部科学省
624
203
31
28
14
648
245
46
46
25
(32.5)
(15.3)
(90.3)
(50.0)
(37.8)
(18.8)
(100)
(54.3)
厚生労働省
364
121
30
27
25
404
124
36
34
34
(33.2)
(24.8)
(90.0)
(92.6)
(30.7)
(29.0)
(94.4)
(100)
農林水産省
322
154
57
15
15
268
101
49
11
11
(47.8)
(37.0)
(26.3)
(100)
(37.7)
(48.5)
(22.4)
(100)
経済産業省
317
99
35
3
3
284
79
13
1
1
(31.2)
(35.4)
(8.6)
(100)
(27.8)
(16.5)
(7.7)
(100)
国土交通省
506
72
17
0
-
591
178
48
2
0
(14.2)
(23.6)
(0.0)
-
(30.1)
(27.0)
(4.2)
(0.0)
環境省
29
10
6
4
-
37
13
10
3
1
(34.5)
(60.0)
(66.7)
-
(35.1)
(76.9)
(30.0)
(33.3)
防衛省
9
0
-
-
-
4
1
1
1
1
(0.0)
-
-
-
(25.0)
(100)
(100)
(100)
2,884
831
201
89
68
3,056
980
233
115
87
(28.8)
(24.2)
(44.3)
(76.4)
(32.1)
(23.8)
(49.4)
(75.7)
(注)
 「計」欄の法人数は、共管法人の重複分を含んだ数である。

(ウ) 内部留保についての指導監督の状況

 内部留保についての指導監督の状況をみたところ、図表1-42のとおり、18年度末における内部留保率が30%超となっている国費等交付先法人で、所管府省ごとの内部留保率の高い上位10法人に該当する延べ118法人のうち、19年度の立入検査等の結果、各府省が文書による改善の指示を行っていたのは15法人(12.7%)であった。
 これを所管府省ごとにみると、農林水産省は内部留保率の高い10法人のうち5法人に対して文書により改善の指示を行っているが、内閣府等7府省は文書により改善の指示を行っていなかった。
 次に、文書による改善の指示が行われた15法人について、19年度末における内部留保率をみると、図表1-42のとおり、内部留保率が30%以下に低下したのは3法人(20.0%)となっている。一方、文書による改善の指示が行われていなかった103法人について、19年度末における内部留保率をみると、内部留保率が30%以下に低下したのは16法人(15.5%)にとどまっている。

図表1-42 内部留保率の高い法人に対する文書による指示の状況

(単位:法人、%)

区分
所管府省
平成18年度末内部留保率30%超の国費等交付先法人数
 
うち内部留保率上位10法人等の法人数(A)
 
うち文書により内部留保の改善の指示が行われた法人数(B)
((B)/(A))
 
うち文書により改善の指示が行われていなかった法人数(E)
((E)/(A))
 
19年度末内部留保率
19年度末内部留保率
30%以下に低下した法人数(C)
((C)/(B))
引き続き30%超の法人数(D)
((D)/(B))
30%以下に低下した法人数(F)
((F)/(E))
引き続き30%超の法人数(G)
((G)/(E))
内閣府
18
10
0
10
0
10
(0.0)
(100)
(0.0)
(100)
警察庁
4
4
1
1
0
3
3
0
(25.0)
(100)
(0.0)
(75.0)
(100)
(0.0)
金融庁
1
1
0
1
0
1
(0.0)
(100)
(0.0)
(100)
総務省
29
10
0
10
1
9
(0.0)
(100)
(10.0)
(90.0)
法務省
33
10
1
0
1
9
0
9
(10.0)
(0.0)
(100)
(90.0)
(0.0)
(100)
外務省
34
10
1
1
0
9
2
7
(10.0)
(100)
(0.0)
(90.0)
(22.2)
(77.8)
財務省
11
10
2
0
2
8
3
5
(20.0)
(0.0)
(100)
(80.0)
(37.5)
(62.5)
文部科学省
187
10
4
1
3
6
1
5
(40.0)
(25.0)
(75.0)
(60.0)
(16.7)
(83.3)
厚生労働省
131
10
1
0
1
9
2
7
(10.0)
(0.0)
(100)
(90.0)
(22.2)
(77.8)
農林水産省
46
10
5
0
5
5
3
2
(50.0)
(0.0)
(100)
(50.0)
(60.0)
(40.0)
経済産業省
121
10
0
10
0
10
(0.0)
(100)
(0.0)
(100)
国土交通省
154
10
0
10
1
9
(0.0)
(100)
(10.0)
(90.0)
環境省
15
10
0
10
0
10
(0.0)
(100)
(0.0)
(100)
防衛省
3
3
0
3
0
3
(0.0)
(100)
(0.0)
(100)
787
118
15
3
12
103
16
87
(12.7)
(20.0)
(80.0)
(87.3)
(15.5)
(84.5)
(注)
 「計」欄の法人数は、共管法人の重複分を含んだ数であり、図表1-36の「内部留保率30%超」の「計」欄の法人数とは異なる。

イ 国費等交付先法人における所管府省退職者の再就職者の状況

(ア) 所管府省退職者の再就職者の概況

 国費等交付先法人のうち、所管府省から18、19両年度のいずれかに補助金等の交付又は契約に基づく支払を受けている公益法人(以下「所管府省国費交付先法人」という。)は、1,521法人となっている。
 これらの所管府省国費交付先法人1,521法人について、20年4月1日現在における所管府省退職者の再就職者(注10) の状況をみると、図表1-43のとおりとなっている。
 これによると、所管府省退職者の再就職者が在籍している法人数は、76.5%に当たる1,163法人である。そして、この1,163法人における所管府省退職者の再就職者数は9,900人(1法人当たりの平均8.5人)となっている。これを所管府省別にみると、所管府省退職者の再就職者が在籍している法人数及び再就職者数共に多いのは、国土交通省、厚生労働省等となっている。
 このうち、所管府省から補助金等の交付を受けている499法人についてみると、所管府省退職者の再就職者が在籍している法人数は74.3%に当たる371法人で、所管府省退職者の再就職者数は2,399人となっている。これを所管府省別にみると、所管府省退職者の再就職者が在籍している法人数及び再就職者数共に多いのは、厚生労働省、農林水産省等となっている。
 また、所管府省から1件300万円以上の随意契約に基づく支払を受けている957法人についてみると、所管府省退職者の再就職者が在籍している法人数は80.5%に当たる770法人で、所管府省退職者の再就職者数は7,425人となっている。これを所管府省別にみると、所管府省退職者の再就職者が在籍している法人数及び再就職者数共に多いのは、国土交通省、厚生労働省等となっている。

 所管府省退職者の再就職者  所管府省に常勤の職員として職務に従事した者で、国家公務員を退職し、所管府省国費交付先法人に再就職した者をいい、人事交流による出向等は含まない。


図表1-43 所管府省国費交付先法人における所管府省退職者の再就職者の状況

(単位:法人、%、人、百万円)

区分
所管府省
所管府省国費交付先法人数(A)
 
(A)のうち所管府省退職者の再就職者の在籍の有無別法人数
(D)における所管府省退職者の再就職者数(G)
 
1法人当たりの平均再就職者数
(G)/(D)
(D)の所管府省国費交付先法人への支出額
うち補助金等の交付を受けている法人数(B)
うち随意契約に基づく支払を受けている法人数(C)
「有」(D)
((D)/(A))
 
「無」
うち補助金等の交付を受けている法人の再就職者数(H)
うち随意契約に基づく支払を受けている法人の再就職者数(I)
平成18年度
19年度
うち補助金等の交付を受けている法人数(E)
((E)/(B))
うち随意契約に基づく支払を受けている法人数(F)
((F)/(C))
内閣府
35
1
27
23
(65.7)
-
22
(81.5)
12
101
-
100
4.3
3,177
1,642
警察庁
11
-
4
11
(100)
-
4
(100)
-
100
-
54
9.0
53
36
金融庁
1
-
1
1
(100)
-
1
(100)
-
1
-
1
1.0
75
69
総務省
54
7
23
46
(85.2)
7
(100)
21
(91.3)
8
354
22
174
7.6
27,701
17,673
法務省
63
2
41
18
(28.6)
2
(100)
9
(22.0)
45
314
54
239
17.4
22,525
16,443
外務省
42
14
29
30
(71.4)
10
(71.4)
20
(69.0)
12
71
23
41
2.3
20,612
7,744
財務省
19
1
9
16
(84.2)
1
(100)
9
(100)
3
83
1
68
5.1
2,495
2,018
文部科学省
228
103
126
104
(45.6)
34
(33.0)
69
(54.8)
124
278
84
202
2.6
19,738
19,091
厚生労働省
340
128
207
288
(84.7)
100
(78.1)
188
(90.8)
52
2,153
979
1,599
7.4
97,391
99,714
農林水産省
147
104
83
139
(94.6)
99
(95.2)
78
(94.0)
8
1,095
656
632
7.8
57,068
64,271
経済産業省
223
86
149
174
(78.0)
72
(83.7)
115
(77.2)
49
744
271
541
4.2
124,437
103,350
国土交通省
353
57
242
298
(84.4)
47
(82.5)
214
(88.4)
55
3,685
243
3,254
12.3
192,236
183,934
環境省
52
4
44
36
(69.2)
3
(75.0)
31
(70.5)
16
128
16
120
3.5
10,788
10,538
防衛省
14
1
5
14
(100)
1
(100)
5
(100)
-
793
50
400
56.6
3,660
3,950
[1,582]
1,521
[508]
499
[990]
957
[1,198]
1,163
(76.5)
[376]
371
(74.3)
[786]
770
(80.5)
[384]
358
9,900
2,399
7,425
8.5
581,962
530,478
注(1)
 「所管府省国費交付先法人数(A)」及び「(A)のうち所管府省退職者の再就職者の在籍の有無別法人数」の「計」欄は、共管法人の重複分を除く実数であり、[ ]書きは延べ数である。
注(2)
 本表で集計の対象としている随意契約は、1件300万円以上の契約である。図表1-45においても同じ。
注(3)
 (B)(E)(H)の「補助金等の交付」、(C)(F)(I)の「随意契約に基づく支払」は、いずれも所管府省からのものである。
注(4)
 「(D)の所管府省国費交付先法人への支出額」は、再就職者が在籍している所管府省国費交付先法人への所管府省からの支出額である。
注(5)
 (B)と(C)の両者に該当する法人が189法人、(E)と(F)の両者に該当する法人が160法人あり、また、(H)と(I)の両者に含まれる再就職者が1,418人いる。

 次に、20年4月1日現在における所管府省退職者の再就職者数を職員及び役員に区分すると、図表1-44のとおり、職員は全体で6,288人(うち常勤数5,881人)となっている。また、役員は全体で3,612人(うち常勤数1,386人)となっている。

図表1-44 所管府省国費交付先法人における所管府省退職者の再就職者の内訳

(単位:法人、人)

区分
所管府省
所管府省退職者の再就職者が在籍している所管府省国費交付先法人数(A)
所管府省国費交付先法人における所管府省退職者の再就職者数
1法人当たりの平均再就職者数
職員数
役員数
(B)/(A)
(C)/(A)
(D)/(A)
(B)
常勤数
(C)
常勤数
(D)
常勤数
内閣府
23
101
35
46
25
55
10
4.3
2.0
2.3
警察庁
11
100
78
60
59
40
19
9.0
5.4
3.6
金融庁
1
1
1
1
1
0
0
1.0
1.0
0.0
総務省
46
354
236
218
179
136
57
7.6
4.7
2.9
法務省
18
314
254
265
240
49
14
17.4
14.7
2.7
外務省
30
71
25
13
11
58
14
2.3
0.4
1.9
財務省
16
83
52
41
39
42
13
5.1
2.5
2.6
文部科学省
104
278
96
68
58
210
38
2.6
0.6
2.0
厚生労働省
288
2,153
1,744
1,608
1,496
545
248
7.4
5.5
1.8
農林水産省
139
1,095
709
547
513
548
196
7.8
3.9
3.9
経済産業省
174
744
464
254
242
490
222
4.2
1.4
2.8
国土交通省
298
3,685
2,935
2,485
2,436
1,200
499
12.3
8.3
4.0
環境省
36
128
49
26
23
102
26
3.5
0.7
2.8
防衛省
14
793
589
656
559
137
30
56.6
46.8
9.7
[1,198]
1,163
9,900
7,267
6,288
5,881
3,612
1,386
8.5
5.4
3.1
(注)
 「所管府省退職者の再就職者が在籍している所管府省国費交付先法人数(A)」の「計」欄は、共管法人の重複分を除く実数であり、[ ]書きは延べ数である。

(イ) 所管府省退職者の再就職者の在籍状況と所管府省からの支出状況

 所管府省国費交付先法人のうち、19年度に所管府省から支出を受けている法人について、20年4月1日現在における所管府省退職者の再就職者が在籍しているもの(延べ1,123法人)と在籍していないもの(延べ329法人)とに区分し、所管府省からの支出との関係についてみると、次のとおりである。
 すなわち、1法人当たりの所管府省からの支出額は、図表1-45のとおり、再就職者が在籍している法人においては472百万円となっていて、在籍していない法人の62百万円に対して約7倍となっている。
 このうち、補助金等の交付額と再就職者の在籍の有無との関係についてみると、1法人当たりの所管府省からの補助金等の交付額は、再就職者が在籍している法人においては616百万円となっていて、在籍していない法人の87百万円に対して約7倍となっている。
 また、1件300万円以上の随意契約に基づく支払金額と再就職者の在籍の有無との関係についてみると、1法人当たりの所管府省からの支払金額は、再就職者が在籍している法人においては413百万円となっていて、在籍していない法人の59百万円に対して約7倍となっている。

図表1-45 再就職者の在籍の有無別にみた所管府省国費交付先法人への所管府省からの支出状況(平成19年度)

(単位:法人、百万円)

区分
所管府省退職者の再就職者の在籍の有無
法人数
(A)
所管府省からの支出額
(B)
1法人当たりの所管府省からの支出額
(B)/(A)
所管府省からの支出
在籍あり
1,123
530,478
472
在籍なし
329
20,586
62
 
うち所管府省からの補助金等の交付
在籍あり
342
210,673
616
在籍なし
104
9,065
87
うち所管府省との随意契約に基づく支払
在籍あり
637
263,623
413
在籍なし
148
8,846
59

 さらに、19年度の所管府省からの支出額について、常勤の再就職者数との関係についてみると図表1-46のとおりであり、常勤の再就職者の在籍人数が多いほど1法人当たりの所管府省からの支出額も多くなる傾向が見受けられる。

図表1-46 常勤の再就職者の在籍状況別にみた所管府省からの支出状況(平成19年度)

(単位:法人、百万円)

区分
法人数
(A)
所管府省からの支出額
(B)
1法人当たりの所管府省からの支出額
(B)/(A)
所管府省退職者の再就職者在籍あり計
1,123
530,478
472
 
常勤再就職者在籍数
5人以上
278
321,847
1,157
4人
84
54,551
649
3人
114
43,491
381
2人
178
46,285
260
1人
279
52,048
186
常勤再就職者在籍なし
190
12,254
64
所管府省退職者の再就職者在籍なし
329
20,586
62

 また、年間収入額に占める所管府省からの支出額の割合と再就職者の在籍の有無との関係についてみると、図表1-47のとおりであり、再就職者が在籍している法人では、「50%超」となっている法人の占める割合が16.6%(179法人)となっていて、在籍していない法人における4.7%(13法人)と比べて高い割合となっている。

図表1-47 所管府省退職者の再就職者の在籍の有無別にみた年間収入額に占める所管府省からの支出額の割合(平成19年度)
上段:法人数(単位:法人)
下段:割合(単位:%)
年間収入額に占める所管府省からの支出額の割合
区分
25%以下
25%超50%以下
50%超
 
うち2/3超
所管府省退職者の再就職者在籍あり
712
187
179
79
1,078
(66.0)
(17.3)
(16.6)
(7.3)
(100)
所管府省退職者の再就職者在籍なし
230
33
13
5
276
(83.3)
(12.0)
(4.7)
(1.8)
(100)
942
220
192
84
1,354
(69.6)
(16.2)
(14.2)
(6.2)
(100)
(注)
 所管府省国費交付先法人のうち、事業年度が国の会計年度と同じ4月から3月までとなっている1,354法人を対象とした。

 このように、所管府省退職者の再就職者が在籍している所管府省国費交付先法人については、在籍していない所管府省国費交付先法人に比べて、補助金等交付先及び随意契約の相手方のいずれのケースでも、法人数が3倍以上となっていて、国の支出先としては、再就職者が在籍している法人の占める割合が高い。
 そして、1法人当たりの平均でみると、所管府省からの支出額は、再就職者が在籍している法人の方が在籍していない法人に比べて多くなっており、さらに、常勤の再就職者数が多いほど所管府省からの支出額も多くなっている。
 また、再就職者が在籍している法人においては、年間収入額に占める所管府省からの支出額の割合が高い法人が多く見受けられる。

(ウ) 所管府省退職者の再就職者の在籍状況と内部留保の状況

 所管府省国費交付先法人のうち19年度に所管府省から支出を受けている法人について、上記の(イ)と同様に20年4月1日現在において所管府省退職者の再就職者が在籍しているもの(延べ1,123法人)と在籍していないもの(延べ329法人)とに区分し、それぞれの法人の19年度末現在の内部留保額についてみると、図表1-48のとおりである。
 すなわち、再就職者が在籍している法人では、内部留保額の規模が「1億円以上」となっている法人の占める割合が44.7%(502法人)となっていて、在籍していない法人における31.6%(104法人)と比べて高い割合となっている。

図表1-48 所管府省退職者の再就職者の在籍の有無別にみた所管府省国費交付先法人における内部留保額の規模(平成19年度末)
上段:法人数(単位:法人)
下段:割合(単位:%)
内部留保額の規模
区分
1000万円未満
1000万円以上1億円未満
1億円以上
所管府省退職者の再就職者在籍あり
188
433
502
1,123
(16.7)
(38.6)
(44.7)
(100)
所管府省退職者の再就職者在籍なし
75
150
104
329
(22.8)
(45.6)
(31.6)
(100)
263
583
606
1,452
(18.1)
(40.2)
(41.7)
(100)

(5) 国等の補助金等により各府省所管の公益法人に設置造成された基金の状況

 各府省所管の公益法人の内部留保の状況については、前記第2-1-(3) のとおりであり、国等の補助金等により公益法人に設置造成された基金については、内部留保額等の算出に当たっては、補助金等の交付要綱等で事業目的が限定されており、基本的には公益事業基金として内部留保額の減算項目となっていることから、基金の保有額は内部留保に含まれていない。
 しかし、これらの基金が設置目的に沿って有効に活用されていない場合には、内部留保額の減算項目である公益事業基金として計上されていても、公益法人に余剰な資金が留保されることにもつながりかねない。
 以上のようなことから、各府省所管の公益法人の財務の状況の一環として、これらの基金の状況についても分析することとする。

ア 政府における見直し

 会計検査院は、17年10月に、国が公益法人等に補助金等を交付して設置造成させている資金等についての会計検査の結果を報告したところである(第1-2-(2)-イ参照 )が、その後、政府においては、次のような見直しが行われている。
 すなわち、18年8月に「補助金等の交付により造成した基金等に関する基準」(平成18年8月閣議決定。以下「基金基準」という。)が定められ、既に設置されている基金については、原則として27年度末を超えない範囲内で事業を終了する時期を設定することとされて、基金法人(国の補助金等の交付により造成した基金等を保有する法人で、独立行政法人、特殊法人、認可法人及び共済組合を除く。)は、少なくとも5年に1回は定期的に見直しを行うこととされた。また、使用見込みの低い基金については、基金の財源となっている国からの補助金等の国庫への返納等、その基金の取扱いを検討するとされた。
 そして、18年度に132事業を実施している121基金(各府省所管の公益法人以外の法人に設置されている16基金を含む。)について見直しが行われ、数年間で33基金から約1700億円を国庫に返納させること、19事業を廃止すること、原則としてすべての事業について定量的な目標を設定すること、3年後の21年度においても見直しを行うことなどが決定された(平成18年12月行政改革推進本部決定)。
 さらに、21年度において実施するとされていた見直しが1年前倒しされて、20年度に127基金(各府省所管の公益法人以外の法人に設置されている19基金を含む。)について実施され、20年度から23年度までに22基金から総額1076億円を国庫に返納させること、9基金を廃止すること、23年度に改めて見直しを行うことなどが決定された(平成20年12月行政改革推進本部決定)。
 これらの見直しの結果、20年度末までに、各府省所管の公益法人から3293億円が国庫に返納されている。

イ 基金の設置、保有の状況

(ア) 基金の概況

 国の補助金等により各府省所管の公益法人に設置されている基金(以下「国所管基金」という。)は、図表1-49のとおり、20年度末現在で68法人の110基金(設置から1年未満の基金については除いている。)となっており、これらの20年度末現在の基金保有額は9120億円(うち国庫補助金等相当額8497億円)となっている。その設置根拠をみると、法律に基づき設置されているものは6基金であり、それ以外の104基金は補助金交付要綱等に基づき設置されている。
 また、補助金等の交付省別にみると、農林水産省、国土交通省及び経済産業省がそれぞれ交付した補助金等により設置されている基金が全体の約9割を占めている。
 さらに、独立行政法人の補助金等により各府省所管の公益法人に設置されている基金(以下「独法所管基金」という。)は、20年度末現在で18法人の35基金(設置から1年未満の基金については除いている。)となっており、これらの20年度末現在の基金保有額は1751億円(うち独立行政法人の補助金等相当額1694億円)となっている。
 そして、国所管基金と独法所管基金の20年度末現在の基金保有額は計1兆0872億円(うち国等の補助金等相当額計1兆0191億円)となっている。

図表1-49 基金造成のための補助金等を交付している各省等別の法人数、基金数及び基金保有額の状況(平成20年度末)

(単位:法人、基金、百万円、%)

補助金等の交付省等名
法人数
(割合)
基金数
(割合)
基金保有額(平成20年度末)
(割合)
 
うち国等の補助金等相当額
(割合)
外務省
2
(2.9)
2
(1.8)
9,021
(1.0)
9,021
(1.1)
文部科学省
1
(1.5)
1
(0.9)
670
(0.1)
670
(0.1)
厚生労働省
3
(4.4)
3
(2.7)
42,643
(4.7)
41,260
(4.9)
農林水産省
30
(44.1)
61
(55.5)
573,814
(62.9)
563,627
(66.3)
経済産業省
11
(16.2)
14
(12.7)
154,230
(16.9)
138,021
(16.2)
国土交通省
18
(26.5)
23
(20.9)
112,857
(12.4)
81,039
(9.5)
環境省
2
(2.9)
5
(4.5)
18,567
(2.0)
15,932
(1.9)
防衛省
1
(1.5)
1
(0.9)
245
(0.0)
200
(0.0)
68
(100)
110
(100)
<75.9>
912,051
(100)
<83.9>
849,772
(100)
<83.4>
独立行政法人
平和祈念事業特別基金
1
(5.6)
1
(2.9)
306
(0.2)
306
(0.2)
農畜産業振興機構
17
(94.4)
34
(97.1)
174,887
(99.8)
169,109
(99.8)
18
(100)
35
(100)
<24.1>
175,194
(100)
<16.1>
169,415
(100)
<16.6>
合計
84
145
<100>
1,087,245
<100>
1,019,188
<100>
注(1)
 (割合)欄の< >内は、国、独立行政法人の合計に対する比率である。
注(2)
 2法人においては、国から補助金等の交付を受けて設置している基金と独立行政法人から補助金等の交付を受けて設置している基金の両方を有しており、「合計」欄の法人数はこの重複分を控除したものである。図表1-50においても同じ。

 国所管基金及び独法所管基金に係る17年度から20年度までの各年度末における法人数、基金数及び基金保有額(17年度及び20年度)の推移は、図表1-50のとおりとなっている。基金数は19年度まではほぼ同数で推移しているが、20年度に減少に転じ、基金保有額も20年度は17年度に比べて減少している。これは、基金基準に従った見直しなどにより、基金の廃止・統合が進んだことや基金の原資として交付されていた補助金等が国庫に返納されたことなどによるものである。

図表1-50 平成17年度から20年度までの各年度末における法人数、基金数及び基金保有額(17年度及び20年度)

(単位:法人、基金、百万円)

補助金等の交付省等名
平成17年度末
18年度末
19年度末
20年度末
法人数
基金数
基金保有額
法人数
基金数
法人数
基金数
法人数
基金数
基金保有額
外務省
0
0
2
2
2
2
2
2
9,021
文部科学省
1
1
1,478
1
1
1
1
1
1
670
厚生労働省
3
3
221,123
3
3
3
3
3
3
42,643
農林水産省
30
58
633,067
30
64
31
69
30
61
573,814
経済産業省
13
18
136,987
12
14
12
15
11
14
154,230
国土交通省
16
26
108,576
18
23
18
23
18
23
112,857
環境省
2
5
13,151
2
5
2
5
2
5
18,567
防衛省
1
1
239
1
1
1
1
1
1
245
〔うち国庫補助金等相当額〕
66
112
1,114,624
〔1,003,513〕
69
113
70
119
68
110
912,051
〔849,772〕
独立行政法人
平和祈念事業特別基金
1
1
311
1
1
1
1
1
1
306
農畜産業振興機構
25
54
176,741
24
50
21
44
17
34
174,887
〔うち独立行政法人の補助金等相当額〕
26
55
177,052
〔171,326〕
25
51
22
45
18
35
175,194
〔169,415〕
合計
〔うち国等の補助金等相当額〕
90
167
1,291,677
〔1,174,839〕
92
164
90
164
84
145
1,087,245
〔1,019,188〕

(イ) 基金の分類

 基金については、基金の使途及び運営形態ごとに複数の態様に分類できる。各分類の内容及び各分類ごとの国所管基金及び独法所管基金の数は以下のとおりである。

a 使途別分類

造成された基金を財源として使用する事業の種類をみると、次のように分類できる。

〔1〕  貸付事業基金(国所管基金10基金、独法所管基金7基金)

 貸付けや一時立替えの事業の財源として基金を使用するもの

〔2〕  債務保証事業基金(国所管基金16基金、独法所管基金2基金)

 借入金に対する債務を保証するなどの事業の信用力の基盤となる財源として基金を使用するもの

〔3〕  利子助成事業基金(国所管基金12基金、独法所管基金2基金)

 借入金に係る利子の一部を助成するなどの事業の財源として基金を使用するもの

〔4〕  補助・補てん事業基金(国所管基金55基金、独法所管基金16基金)

 各種事業への補助金を交付したり、不慮の事故による被害者に対して給付金を支給したりする事業の財源として基金を使用するもの

〔5〕  調査等その他事業基金(国所管基金17基金、独法所管基金8基金)

 法人自らが行う調査、研究等の事業の財源として基金を使用するもの

b 運営形態別分類

 造成された基金の運営形態をみると、次のように分類できる。

〔1〕  取崩し型(国所管基金65基金、独法所管基金27基金)

 基金を利子助成、補助・補てん、調査・研究等の事業の財源に充てることによって費消していくもの

〔2〕  回転型(国所管基金12基金、独法所管基金7基金)

 主として、使途別分類の貸付事業基金がこれに該当し、基金を繰り返し回転させて使用するもの

〔3〕  保有型(国所管基金17基金、独法所管基金1基金)

 主として、使途別分類の債務保証事業基金がこれに該当し、基金を債務保証等の信用力の基盤となる財源として保有するもの

〔4〕  運用型(国所管基金16基金、独法所管基金0基金)

 基金を運用元本として、その運用益を利子助成、補助・補てん、調査・研究等の事業の財源に充てていくもの

 国所管基金及び独法所管基金の計145基金について、基金の使途及び運営形態から分類すると、図表1-51のとおりとなる。

図表1-51 基金の使途別及び運営形態別の分類

(単位:法人、基金、百万円)

使途別
法人数
基金数
平成20年度末基金保有額
左の運営形態別
取崩し型
回転型
保有型
運用型
貸付け
12
17
413,005
0
17
413,005
0
0
債務保証
17
18
72,822
1
4
0
17
72,817
0
利子助成
10
14
125,841
12
105,389
0
0
2
20,451
補助・補てん
43
71
303,474
66
301,624
0
0
5
1,850
調査等その他
21
25
172,101
13
75,779
2
24,910
1
6,548
9
64,862
84
145
1,087,245
92
482,798
19
437,916
18
79,365
16
87,164
注(1)
 一つの基金が複数の使途別分類又は運営形態別分類に該当する場合は、事業実績額の多い分類に区分している。
注(2)
 分類の異なる複数の基金を有する法人があるため、各欄の法人数を加えても「計」欄の数とは一致しない。

(ウ) 基金設置経過年数

 図表1-52のとおり、145基金のうち、近年設置されている基金もある一方、設置から30年以上経過しているものが26基金(17.9%)ある。
 近年設置されている基金で、設置後5年未満の基金は38基金(26.2%)あり、このうち見直しにより統合・再編されるなどして新たな基金となったものは5基金ある。また、設置後5年未満の38基金のうち、新規に造成された運用型は1基金のみであり、低金利のもとで運用益による事業を行うには多額の基金を要することから、運用型の基金の設置は困難になっていると考えられる。

図表1-52 運営形態別の基金設置経過年数

(単位:基金)

運営形態
経過年数
取崩し型
回転型
保有型
運用型
30年以上
7
7
8
4
26
25年以上30年未満
3
3
1
4
11
20年以上25年未満
6
0
0
2
8
15年以上20年未満
4
3
2
1
10
10年以上15年未満
14
0
3
2
19
5年以上10年未満
30
0
2
1
33
5年未満
28
6
2
2
38
92
19
18
16
145

ウ 基金事業の運営の状況

(ア) 使途別及び運営形態別の基金数、事業実績額及び基金保有額

 20年度末現在において設置されている基金全体について、17年度以降の基金数、事業実績額(注11) 及び基金保有額の推移についてみると、図表1-53のとおり、17年度から20年度にかけて、基金数では122基金から145基金に、事業実績額(各年度の新規貸付額、新規債務保証額、利子助成支払額、補助・補てん支払額等)では、2945億円から4324億円になっている。また、基金保有額は1兆1646億円から1兆0872億円になっている。

 事業実績額  基金事業の内容には種々のものがあり、例えば、貸付事業基金については、基金の貸付け、貸付金の管理、貸付金の回収等が、債務保証事業基金については、債務保証の引受け、債務保証額の管理、代位弁済等がある。本報告の分析において、各年度の事業実績額としているのは、保有基金の使用と直接に結び付くものとして、貸付事業基金については新規貸付額、債務保証事業基金については新規債務保証額、利子助成事業基金については利子助成支払額、補助・補てん事業基金については補助金等の支払額、調査等その他事業基金については調査・研究等に係る費用の支払額としている。

 これらを使途別及び運営形態別にみると、それぞれ図表1-53、図表1-54のとおりとなっている。

a 使途別にみた状況

〔1〕  貸付事業基金については、基金保有額は、17年度以降ほぼ同様の水準で推移しているが、事業実績額は、農地保有合理化事業関係の事業実績が伸びていることなどから、増加する傾向となっている。

〔2〕  債務保証事業基金については、新規に造成された基金が少なかったことなどから、基金保有額はほぼ同様の水準で推移しているが、事業実績額は、揮発油販売業者に対する債務保証が増加していることなどから、増加する傾向となっている。

〔3〕  利子助成事業基金については、基金保有額、事業実績額共にほぼ同様の水準で推移している。これは、近年、貸付金利が低水準で推移していることから、大きく増加する状況にはなかったためと考えられる。

〔4〕  補助・補てん事業基金については、19、20両年度において事業実績額が大幅に増加している。これは、19年度は1基金、20年度は3基金において、飼料価格や原油価格の高騰により、緊急避難的に補てん事業を行ったことによるものである。

〔5〕  調査等その他事業基金については、基金保有額が増加する傾向となっている。これは、都市再生に係る調査事業等を行うための基金に毎年度追加造成が行われたことが要因の一つである。

図表1-53 使途別の基金数、事業実績額及び基金保有額の推移

図表1-53使途別の基金数、事業実績額及び基金保有額の推移

b 運営形態別にみた状況

 基金保有額は、17年度以降、運用型は増加傾向にあるが、取崩し型は減少傾向にある。取崩し型が減少しているのは、前記の基金の国庫返納によるものと考えられる。また、事業実績額についてみると、取崩し型は、その大部分の使途が上記aの〔4〕 補助・補てん事業基金に該当するものであるため、実績の傾向はこれと同様となっている。運用型は、低金利を反映して、事業実績は低迷している。
 なお、回転型及び保有型は、一部の基金を除いて、それぞれ前記aの〔1〕 貸付事業基金及び〔2〕 債務保証事業基金に該当するため、これらとほぼ同様の推移となっている。

図表1-54 運営形態別の基金数、事業実績額及び基金保有額の推移

図表1-54運営形態別の基金数、事業実績額及び基金保有額の推移

(イ) 各基金の事業実績率及び基金保有倍率

 個々の基金は、設置目的、事業内容、利用対象者、基金規模等を異にするため、それぞれの事業実績や基金保有量を同一の尺度で比較しにくいという面はあるが、本報告において、各基金を統一的に比較するに当たっては、前記17年10月の報告と同様、次の事業実績率及び基金保有倍率という指標を用いている。

〔1〕  事業実績率は、直近3年間の平均事業実績額を元年度以降におけるピーク時の事業実績額で除して得た率である。これは、基金事業に対する需要が現在どの程度の水準にあるかを表そうとするもので、この率が高い基金は、事業に対する近年の需要がピーク時に近いことを示している。

〔2〕  基金保有倍率は、直近の基金保有額を直近3年間の平均事業実績額で除して得た数値である。これは、事業実績からみて基金保有量がどの程度の水準にあるかを表そうとするもので、この数値が1倍に近い基金ほど、単年度当たりの事業実績に対応した基金保有規模となっていると考えられる。

 20年度末において設置されている国所管基金110基金それぞれの事業実績率及び基金保有倍率は巻末別表1-5 に記載のとおりである。

a 事業実績率

 図表1-55のとおり、国所管基金110基金のうち、事業の新規受付を終了して事業実績額が算定できないなどのため、事業実績率の算定になじまない33基金を除いた77基金についてみると、事業実績率が30%未満となっているものが27基金あり、このうち22基金は、設置後10年以上経過している。他方、80%以上の高い事業実績率となっているものは12基金あり、このうち7基金は経過年数が10年未満となっている。

図表1-55 平成20年度末における事業実績率の状況

(単位:基金)

運営形態
区分
取崩し型
回転型
保有型
運用型
80%以上
5
1
2
4
12
50%以上80%未満
13
5
2
5
25
30%以上50%未満
9
0
2
2
13
10%以上30%未満
6
1
2
1
10
10%未満
8
0
6
3
17
事業実績率の算定になじまないもの
24
5
3
1
33
65
12
17
16
110

 また、上記110基金のうち、前記17年10月の報告において検査の対象としたのは68基金であるが、このうち、事業実績率の比較になじまない基金を除いた38基金について、16年度末と20年度末の事業実績率を比較してみると、事業実績率が上昇しているものが15基金(39.5%)、低下しているものが23基金(60.5%)となっている。

b 基金保有倍率

 図表1-56のとおり、国所管基金110基金のうち、事業の新規受付を終了して事業実績額が算定できないなどのため、基金保有倍率の算定になじまない40基金を除いた70基金についてみると、基金保有倍率が50倍以上となっているものが19基金あるが、このうち基金保有倍率が高くなる傾向のある運用型基金は11基金となっている。他方、10倍未満となっているものが32基金あり、運用型を除いて、図表1-56の区分のうち「1倍以上10倍未満」の基金数が最も多くなっている。

図表1-56 平成20年度末における基金保有倍率の状況

(単位:基金)

運営形態
区分
取崩し型
回転型
保有型
運用型
100倍以上
3
0
1
8
12
50倍以上100倍未満
3
0
1
3
7
30倍以上50倍未満
4
0
0
0
4
10倍以上30倍未満
10
2
2
1
15
1倍以上10倍未満
18
5
6
0
29
1倍未満
2
0
1
0
3
基金保有倍率の算定になじまないもの
25
5
6
4
40
65
12
17
16
110

 また、前記17年10月の報告において検査の対象とした68基金のうち、基金保有倍率の比較になじまない基金を除いた38基金について、16年度末と20年度末の基金保有倍率を比較してみると、低下しているものが23基金(60.5%)、上昇しているものが15基金(39.5%)となっている。

(ウ) 運営形態別の基金の保有形態

 国所管基金及び独法所管基金の計145基金の20年度末の保有形態を運営形態別にみると、図表1-57のとおりとなっている。

図表1-57 運営形態別の基金の保有形態

(単位:基金、百万円、%)

運営形態
基金数
基金の保有形態
預金(割合)
債券(割合)
債券の内訳<割合>
国債
地方債
社債
仕組み債
外国債(円建て)
その他
取崩し型
92
288,159
(58.6)
203,591
(41.4)
<28.6>
<43.0>
<7.9>
<1.2>
<0.9>
<18.5>
491,751
(100)
回転型
19
119,181
(47.6)
131,373
(52.4)
<39.9>
<52.7>
<2.9>
<0.0>
<0.1>
<4.5>
250,555
(100)
保有型
18
21,977
(33.2)
44,226
(66.8)
<43.5>
<24.0>
<18.1>
<2.7>
<2.6>
<9.2>
66,204
(100)
運用型
16
8,716
(10.0)
78,434
(90.0)
<37.3>
<46.8>
<4.1>
<2.0>
<4.8>
<5.1>
87,150
(100)
145
438,035
(48.9)
457,625
(51.1)
<34.8>
<44.6>
<6.8>
<1.1>
<1.5>
<11.3>
895,661
(100)
(注)
 各運営形態別の「計」の額は、基金の取崩しにより貸付金に充てられている額や、未払・未収金の額等を除いているため、それぞれの基金保有額とは一致しない。

検査の結果の図1

 取崩し型の92基金についてみると、流動性の高い普通預金及び定期預金での保有額が保有総額の58.6%を占めており、このうち、66基金がすべてを普通預金又は定期預金で保有している。一方で、保有額の半分以上を国債等の債券で保有している基金も16基金見受けられる。
 回転型の19基金についてみると、普通預金及び定期預金での保有額が保有総額に占める割合は47.6%で、すべてを普通預金又は定期預金で保有しているのは10基金となっている。一方で、保有額の半分以上を債券で保有している基金も5基金見受けられ、保有債券の中には償還期限が34年に到来するものも見受けられる。
 保有型の18基金及び運用型の16基金についてみると、保有総額のそれぞれ66.8%、90.0%の額を国債等の債券で保有していて、それぞれ約7割、約8割を国債及び地方債が占めている。一方、仕組み債や円建ての外国債で保有して、金利収入の確保を図っている基金もあるが、国債や地方債と比較すると元本割れのリスクが大きくなっている。また、基金によっては、事業終了の際に国庫補助金の返納が必要となる場合があるが、保有債券によっては満期償還前の売却による損失が発生して、返納に必要な額を確保できない可能性もある。

(エ) 運用益の使途の状況

 図表1-58のとおり、145基金の運用益の使途に関する規定の有無及びその内容についてみると、運用益の使途に関する規定がない15基金を除いた130基金において、基金本体への繰入れ、基金事業に係る経費への充当等を内容とする規定があるが、このうち2基金については、基金事業のほか、それ以外の事業にも充当できるとする内容の規定も設けている。

図表1-58 運用益の使途に関する規定の有無及び内容

(単位:基金、%)

運営形態
規定上の使途(繰入先又は充当先)
基金
基金・基金事業に係る経費
基金事業に係る経費
基金事業・それ以外の事業に係る経費
なし
取崩し型
46
28
14
0
4
92
回転型
8
5
3
1
2
19
保有型
4
6
6
1
1
18
運用型
0
1
7
0
8
16
(割合)
58
(40.0)
40
(27.6)
30
(20.7)
2
(1.4)
15
(10.3)
145
(100)

 また、145基金の20年度における運用益の額は、図表1-59のとおり、計100億円となっている。
 その使途別金額についてみると、運用型においては、全額が基金事業への充当額となっているが、運用型以外の運営形態においては、当該法人の他会計・他勘定への繰入額や、当該法人の経費全般への充当額も一部見受けられる。

図表1-59 運用益の使途別金額(平成20年度)

(単位:基金、百万円、%)

運営形態
平成20年度末基金数
実際の運用益の使途
基金事業
基金事業以外
法人の計経費全般
基金会計・基金勘定
事業費
人件費
事務費等
他会計・他勘定へ繰入
取崩し型
92
3,710
451
157
71
195
4,586
回転型
19
826
1,605
227
92
419
3,171
保有型
18
267
425
190
57
11
953
運用型
16
295
590
287
123
1,296

(割合)
145
5,100
(51.0)
3,073
(30.7)
863
(8.6)
344
(3.4)
207
(2.1)
419
(4.2)
10,007
(100)
1,207

 なお、前記運用益の使途に関する規定がない15基金のうち、運用益がない1基金を除く14基金の実際の運用益の使途について分類すると、図表1-60のとおりとなっており、すべて基金事業に充当されている状況である。

図表1-60 14基金の実際の運用益の使途(平成20年度)

(単位:基金、%)

運営形態
実際の運用益の使途
〔1〕
基金会計・基金勘定
〔2〕
事業費
〔3〕
基金事業に係る人件費等(人件費、事務費等)
〔2〕 及び〔3〕
〔1〕 、〔2〕 及び〔3〕
取崩し型
2
1
1
0
0
4
回転型
1
0
0
0
0
1
保有型
0
0
0
0
1
1
運用型
0
0
3
1
4
8
(割合)
3
(21.4)
1
(7.1)
4
(28.6)
1
(7.1)
5
(35.7)
14
(100)

(オ) 基金事業の運営に要する人件費等の財源

 145基金の20年度の基金事業の運営に当たって必要となった人件費、事務費等(以下「人件費等」という。)の額は計35億円となっており、運営形態別にその財源についてみると、図表1-61のとおりである。
 取崩し型以外の運営形態においては、人件費等の財源は、基金の運用益が占める割合が最も高くなっており、特に保有型と運用型では人件費等の80%以上を基金の運用益で賄っている状況である。一方、取崩し型における人件費等の財源は、基金の取崩しによるものが68.0%を占めている。

図表1-61 運営形態別の人件費等の財源の状況(平成20年度)
上段:金額(単位:百万円)
下段:割合(単位:%)
運営形態
基金数
基金の運用益
基金の取崩し
自主財源
その他
取崩し型
92
228
1,364
229
183
2,006
(11.4)
(68.0)
(11.4)
(9.1)
<56.7>
回転型
19
320
177
250
0
748
(42.8)
(23.7)
(33.4)
(0.0)
<21.1>
保有型
18
248
2
29
26
307
(80.8)
(0.7)
(9.4)
(8.5)
<8.7>
運用型
16
410
12
38
16
477
(86.0)
(2.5)
(8.0)
(3.4)
<13.5>
145
1,207
1,557
548
227
3,540
(34.1)
(44.0)
(15.5)
(6.4)
<100>
(注)
 各運営形態の「計」欄の割合< >は、基金事業に係る人件費等全体に占める割合である。

エ 基金の見直し体制の整備状況

(ア) 見直しの状況

 国所管基金については、前記第2-1-(5)-ア のとおり、政府において、18年の基金基準を受けて、18年度及び20年度に見直しが行われているところであるが、基金事業を所管する府省による基金事業の目標の策定及び当該基金法人による目標達成度の評価や、余裕基金の返納規定の設定について、20年度末現在におけるそれぞれの状況をみると、次のとおりである。

a 目標の策定及び目標達成度の評価の状況

 前記17年10月の報告においては、基金事業の目的達成について判定し、最終的に基金事業がその役割を終えたかどうかの目的達成度を測るための基準を策定している基金はなかった。
 そして、今回、国所管基金110基金について、公表資料等により、基金事業が効率的・効果的に実施されているかどうかを検証するための目標の策定及び目標達成度の評価の状況をみると、図表1-62のとおりとなっている。
 すなわち、20年度末現在では、基金基準を受けて、81基金において基金事業の目標が策定されており、このうち評価を実施したとしているものは33基金ある。また、目標が策定されている81基金のうち定量的な目標が設定されているものは38基金あるが、定量的な目標を設定した上で目標達成度の評価を実施したとしている基金は17基金にとどまっている。
 一方、目標が策定されておらず、目標達成度の評価も行われていない基金が26基金あるが、これは、新規事業の受付を終了していること、事業内容等からみて目標達成度を評価することにはなじまないことなどによるものである。

図表1-62 目標の策定及び目標達成度の評価の状況(国所管基金)

(単位:基金)

補助金等の交付省名
基金数
目標策定
 
目標未策定・評価未実施
 
目標未策定・評価実施
当該目標の達成度を評価
定量的な目標
 
理由
当該目標の達成度を評価
新規事業受付終了
事業内容等からみて評価等になじまない
外務省
2
2
2
2
2
0
0
文部科学省
1
0
0
1
1
0
0
厚生労働省
3
3
0
2
0
0
0
農林水産省
61
45
17
23
13
16
10
6
0
経済産業省
14
14
11
2
2
0
0
国土交通省
23
12
1
7
0
9
0
9
2
環境省
5
4
2
1
0
0
1
防衛省
1
1
0
1
0
0
0
110
81
33
38
17
26
11
15
3

b 余裕基金の返納規定の設定状況

 前記17年10月の報告においては、補助金交付要綱等において、事業の途中で余裕基金を国庫へ返納することに関する規定が設けられているのは、116基金のうち12基金にとどまっていたが、20年度末現在では、110基金のうち53基金においてその規定が設けられている。しかし、数年のうちに事業終了時期が到来することから精算はその時に行うとしていること、事業実施期間中は基金が余剰との判断が困難であることなどの理由で、余裕基金の返納規定が設けられていない基金も見受けられる。

(イ) 基金法人が見直しで算定した保有割合の内容

 基金基準においては、基金の規模が過大になっていないかなどの状況を客観的に把握するため、基金法人は基金の保有割合を算出することとされており、保有割合は、直近の基金保有額等を今後基金事業に要する費用(以下「必要見込額」という。)で除して算出することとなっている。そして、これに沿って20年度の見直しにおいて算出された100基金の保有割合をみると、2倍未満と算出している基金が94基金に上っており、基金の保有額と使用見込額が同額となる1倍と算出している基金は32基金となっている。
 そこで、保有割合の算出に当たって使用した必要見込額の算出方法について、事故等に対応するための基金であるためその算定の当否を判断することになじまない基金や事業終了が確定していて残事業分を必要見込額としている基金等を除いた59基金の状況をみると次のとおりとなっている。
 すなわち、59基金のうち、27基金は過去の実績を基に、残りの32基金は過去の実績以外の指標等を基に、それぞれ必要見込額を算出しているが、この32基金の中には、必要見込額をより合理的な指標を用いて算出すべきものが1基金見受けられる。なお、上記32基金のうち5基金は、単年度当たりの必要見込額が、計算上、直近3年間の平均事業実績額の10倍を超えている。

オ 個別の基金の状況

(ア) 17年10月の報告において検討すべき事態が見受けられた基金のその後の状況

 前記17年10月の報告において、検討すべき事態が見受けられた33基金のその後の状況についてみると、基金を廃止又は統合したものが10基金(これに伴い国庫に返納された額75億円)、基金の一部を20年度までに国庫に返納したものが16基金(同2670億円)、21年度以降基金を廃止する予定のものが1基金となっている。
 これら以外の6基金についても、事業目標の達成度の評価を行うなど、基金事業の適切な実施に向けて、見直しを行っている状況である。

(イ) 基金事業の運営において検討すべき事態

 13法人25基金の基金事業の運営について各法人を実地に検査した結果、8基金(同一の基金で複数の事態を掲記しているものがあるため、延べ基金数では9基金)において次のような事態が見受けられた。


[事業実績が継続的に少ない状況となっているもの]
〔10〕  社団法人漁業信用基金中央会は、農林水産省から補助金の交付を受けて、「漁業運転資金融通円滑化対策事業資金」(平成14年度設置。20年度末保有額2億0972万円(国庫補助金相当額同額))、「中小漁業関連資金融通円滑化事業資金」(平成17年度設置。20年度末保有額4億7137万円(国庫補助金相当額同額))及び「認定漁協資金融通円滑化基金」(平成18年度設置。20年度末保有額8821万円(国庫補助金相当額同額))を設置している。
 各基金による事業は、漁業者等の資金の借入れに係る債務保証を行う漁業信用基金協会に対して、保証実施の円滑化を図るための出えんを行うものである。そして、出えんの条件として、原則として、都道府県が同社団法人と同額の負担を行うこととされている。
 しかし、3基金事業の17年度から20年度までの各年度の事業実績をみると、都道府県において、財政状況の悪化により負担を行うことが困難となっていることなどから、出えん件数が全くないか年間数件という状況である。
 なお、3基金事業においては、21年度をもって事業採択を終了する方向とされている。



[計画的かつ速やかに国庫返納がなされるべきもの]
〔11〕  財団法人新エネルギー財団は、経済産業省から補助金の交付を受けて「中小水力発電事業に係る利子補給事業のための利子補給基金」を設置している(昭和60年度設置。平成20年度末保有額12億2478万円(国庫補助金相当額同額))。
 本基金による事業は、再生可能エネルギーである水力発電の開発、利用の促進を図るため、中小水力発電施設を設置しようとする公営電気事業者等の借入れに対して利子補給を行うものである。
 本基金事業は、14年度に新規受付を終了していて、利子補給の対象として残っている最後の発電施設の設置が完了して運転を開始することとされている22年度中に、利子補給に係る後年度負担額が確定するとされている。
 しかし、20年度末において、後年度負担額は未確定なものの、既にその上限額は10億8489万円と確定したことから、この結果、少なくとも、20年度末の基金保有額12億2478万円との差額1億3988万円が利子補給に使用されない見込額となる。
 このようなことから、使用見込みのない基金については、運用のため保有している債券の満期償還の時期を勘案するなどして、計画的かつ速やかに国庫返納がなされることが必要であると考えられる。



[基金を一時的に他事業の財源として使用していたもの]
〔12〕  財団法人ベンチャーエンタープライズセンターは、経済産業省から補助金の交付を受けて「債務保証基金」を設置している(昭和50年度設置。平成20年度末保有額9億7615万円(うち国庫補助金相当額4億7194万円))。
 本基金による事業は、新たな事業分野の創造を促し、我が国経済の活力を維持、増進するため、ベンチャー企業が新技術、新製品等の研究開発等を行うのに必要な借入れについて債務保証を行うものである。
 同財団法人は、本基金による事業のほかに補助事業も実施しており、これに要する経費については別途国庫補助金の交付を受けているが、15、16両年度の補助事業の実施に当たり、補助金の交付を受ける前の経費の支払について本基金を使用し、補助金の交付を受けた後に基金に戻し入れるという経理処理を2か年連続して行っていた。
 しかし、本基金は、前記のとおり、ベンチャー企業の借入れに係る債務保証を行う事業の財源に充てるために設置されたものであることから、このような経理処理はその趣旨に沿わないものと認められる。
 なお、同財団法人は、17年度から短期借入金をもって補助事業の経費の支払に充てる経理処理を行っている。



[基金規模の見直しによる基金の取崩額と国庫補助金の返納額に差額が生じたもの]
〔13〕  財団法人海外漁業協力財団は、農林水産省から補助金の交付を受けて「貸付事業資金」を設置している(昭和48年度設置。平成20年度末保有額794億6171万円(国庫補助金相当額同額))。
 本基金による事業は、海外漁場の確保と海外漁業協力を一体的に推進するため、海外漁業協力事業を行う本邦法人等に対して、貸付けを行うものである。
 本基金については、17年10月の会計検査院の報告(前記第1-2-(2)-イ )等を踏まえて、基金規模の見直しが行われ、その結果、以後の必要見込額が795億円、使用見込みの低い額が122億円と算出された。そして、18年8月に、農林水産大臣の承認を経て、上記の122億円が取り崩されて、補助金相当額として106億円が国庫に返納されている。
 取崩額と返納額に差額が生じたことについて、同財団法人は、海外漁業協力事業の安定的な実施のため、基金保有額のうち貸付金充当額を除いた額の大半を元本が保証され安定収入が見込まれる国債等の債券で運用している中で、当初想定していなかった国庫返納を速やかに行うためには、満期償還の時期に到達していない国債をそのまま国庫返納に使用することができないことから、保有している債券のうち同年7月時点で売却が可能で、かつ、上記取崩額に見合った額面の国債(運用期間15年又は20年)を市場価格で売却せざるを得ず、これにより約15億円の差額が発生したとしている。

 各基金事業においては、基金規模の見直しなどにより、基金の原資となっている国庫補助金等の返納を行うことが既に決まっていたり、今後想定されたりすることから、取崩額と返納額の差額発生の可能性がある場合にはこれを回避する手段について十分に検討する必要がある。



[国庫補助金の返納に当たり差額が生ずるおそれのあるもの]
〔14〕  社団法人国民健康保険中央会は、厚生労働省から補助金の交付を受けて「国保特別対策基金」を設置している(平成5年度設置。20年度末保有額50億円(国庫補助金相当額同額))。
 本基金による事業は、医療費適正化対策を強化し、国保財政の安定化に資するため、対策会議、研修会の実施等を行うためのもので、基金の運用益をこれらの財源としている。
 本基金による事業の実施期間については、18年の基金基準を受けて行われた同年の見直しにより27年度末までとされていて、同社団法人は事業終了時には、国庫補助金相当額を国庫に返納することとなっている。そして、同社団法人は、安全性のほか収益性の確保を理由として、保有額の半分以上を満期償還までの期間が長い債券で運用しているが、これらの債券は、満期償還日が28年度以降に到来し、また、近年の金融情勢の影響を受けて、時価評価額が帳簿価額を下回っている状況である。
 このようなことから、現状では、事業終了後の国庫返納の際に、保有債券の途中売却による回収額と要返納額に差額が生ずるおそれがある。
 このため、運用益を財源とした事業の円滑な実施に引き続き努める一方、事業終了後において当該国庫補助金相当額を全額返納することができるよう、十分に検討する必要があると考えられる。

〔15〕  社団法人潤滑油協会は、経済産業省から補助金の交付を受けて「潤滑油製造業近代化基金」を設置している(昭和53年度設置。平成20年度末保有額28億5500万円(国庫補助金相当額同額))。
 本基金による事業は、潤滑油製造業の合理化、高度化対策に関する事業が円滑に行われるようにするため、潤滑油に関する品質、性能の試験研究等を実施するもので、基金の運用益をこれらの財源としている。
 本基金による事業の実施期間については、18年の基金基準を受けて行われた同年の見直しにより27年度末までとされていて、同社団法人は事業終了時には、国庫補助金相当額を国庫に返納することとなっている。そして、同社団法人は、安全性のほか収益性の確保を理由として、保有額の半分以上を満期償還までの期間が長い債券で運用しているが、これらの債券の大半は満期償還日が28年度以降に到来し、また、近年の金融情勢の影響を受けて、時価評価額が帳簿価額を下回っている債券もある状況である。
 このようなことから、現状では、事業終了後の国庫返納の際に、保有債券の途中売却による回収額と要返納額に差額が生ずるおそれがある。
 このため、運用益を財源とした事業の円滑な実施に引き続き努める一方、事業終了後において当該国庫補助金相当額を全額返納することができるよう、十分に検討する必要があると考えられる。



[運用益の処理について検討すべきもの]
〔16〕  財団法人海外漁業協力財団は、海外漁場の確保と海外漁業協力事業とを一体的に推進するための貸付事業を行っており、この事業のために設置している「貸付事業資金」(前記〔13〕 参照 )の運用益については、農林水産省が制定した国際漁業振興協力事業実施要領(昭和48年6月制定)において、同財団法人の人件費及び管理に要する経費並びに海外漁業協力事業の円滑な促進を図るために要する経費に充てることができるとされている。そして、平成7年度以前は、人件費、関連する事業の経費等に充当した残りの額は剰余金として処理し、毎年度基本財産に繰り入れていたが、9年3月に、旧総務庁行政監察局からの勧告を受けて、本基金の運用益と上記のようにして増額した基本財産の運用益について、8年度決算から、人件費、関連する事業の経費等に充当した残りの額を本基金に繰り入れるようにした。
 その後、同財団法人は、13年度決算からこの繰入れを行わないこととしているが、この理由について、同財団法人は、公益法人会計基準には剰余金という科目がないことから、繰越収支差額として扱うこととして、基金への繰入れを行わないこととしたとしている。
 前記のとおり、本基金の運用益については、当該法人の経費全般へ充当できるとする内容の規定が設けられているが、本基金は国庫補助金(累計交付額906億円)を原資としているものであることから、本基金事業の円滑な実施に留意しつつ、貸付事業に直接関係する諸経費や関連する事業の経費を賄ってなお余りがある場合には、その処理について再度検討する必要があると考えられる。
 また、13年度決算から剰余金の本基金(内部留保額の算出上減算項目である公益事業基金に該当する。)への繰入れを行わなくなったため、下表のとおり、本基金を経理している一般会計における正味財産から基本財産及び貸付事業資金を控除した額は年々増加し、16年度末で19億7532万円となり、12年度末の10億9819万円と比べて8億7712万円増加している。
 これに伴い、同財団法人の内部留保額も12年度末8億7764万円から16年度末17億7444万円に増加しており、剰余金の処理方法の変更が同財団法人の内部留保の増加に大きく影響していると考えられる。また、事業費等の減少もあり、内部留保率も12年度末11.2%から16年度末55.6%に増加している。
 なお、同財団法人においては、低金利の影響等により、本基金に係る運用益収入が減少するなどしたことから、内部留保は減少しており、19年度末の内部留保額は16億5712万円、内部留保率は63.0%となっている。(注)

 同財団法人は、平成18年度決算から、貸付事業資金に係る貸倒引当金の会計処理方法を変更しており、17年度以前の会計処理方法に基づいて試算した19年度末の内部留保額は11億9107万円、内部留保率は45.2%になる。


表 財団法人海外漁業協力財団における内部留保等の状況
(単位:百万円、%)
年度
区分
平成12
13
14
15
16
17
18
19
正味財産から基本財産及び貸付事業資金を控除した額
1,098
1,509
1,615
1,953
1,975
1,811
1,993
1,843
内部留保額
877
1,331
1,359
1,653
1,774
1,651
1,835
1,657
内部留保率
11.2
30.8
31.2
47.9
55.6
52.0
64.8
63.0