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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成23年10月

在外公館に係る会計経理に関する会計検査の結果について


第3 検査の結果に対する所見

1 検査の結果の概要

 会計検査院は、22年報告のフォローアップ検査を行うとともに、在外公館に係る会計経理について、正確性、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、〔1〕 会計事務の体制の状況については、会計事務の体制は適正かつ適切なものとなっていて有効に機能しているか、〔2〕 資金の受入、保管等の状況については、前渡資金等の資金の受入れや保管等は適正かつ経済的に行われているか、〔3〕 収入及び支出に係る会計処理の状況については、収入及び支出に係る会計処理は適正かつ経済的に行われているか、〔4〕 施設及び物品の管理等の状況については、施設は適正かつ経済的に管理されているか、物品の利用、保管等は適切か、〔5〕 監査の実施状況については、在外公館の監査は計画的かつ効率的に行われて実質的な効果を上げているかなどに着眼して、外務本省及びカンボジア大使館等計40公館において会計実地検査を行った。また、このほかに、フォローアップ検査のために4公館において会計実地検査を行った。
 検査の結果の概要は、以下のとおりである。

(1) 会計事務の体制の状況

ア 22年報告に記述した事項のうち、22年度の計算証明書類の提出状況についてみると、全在外公館のうち、約1割の在外公館の歳入徴収額計算書及びほとんどの在外公館の前渡資金出納計算書の会計検査院への提出が提出期限経過後3か月以上遅滞していたが、計算証明書類の早期提出に向けた改善策を講じたとしている。
 また、23年6月末現在、全在外公館のうち、約3割の在外公館において物品管理システムへのデータ入力が完了していなかった。(参照

イ 在外公館における会計経理については、平成15年度決算検査報告に「在外公館における出納事務について、内部統制等を十分機能させることなどにより、その適切及び適正な執行を図るよう是正改善の処置を要求したもの 」を掲記している。これに対し、外務省は、是正改善の処置を講じ、おおむねこの講じられた処置に沿った出納事務が行われていたが、スイス大使館において、歳出を異なる会計年度から行ったり、歳入徴収官、資金前渡官吏等が自ら行うべき事務が当該者により行われていなかったりするなどの事態が見受けられた。(参照

(2) 資金の受入、保管等の状況

ア 送金通貨から現地通貨への交換について、前渡資金等の使用残額や送金通貨による支払が多額に上ると見込まれていたのに、必要以上に現地通貨に交換したため、前渡資金等の使用残額の返納や送金通貨による支払の際に、現地通貨から送金通貨に再度交換していた在外公館が4公館あった。(参照

イ 外務本省から在外公館への送金について、在外公館に十分な資金の残額があるのに送金がなされた結果、在外公館へ送金された資金が使用されずに、年度終了後に外務本省に返納されているものがあり、送金や使用残額の返納の際に両替手数料が生じていた。(参照

(3) 収入及び支出に係る会計処理の状況

ア 収入について

(ア) 付加価値税の還付等を一部受けていない在外公館が7公館あり、また、過去に遡及して付加価値税の還付を受けることができたのに還付を受けていない在外公館が2公館あった。(参照

(イ) コロンビア大使館において、現地職員が領事手数料を領得する事態があった。(参照

イ 支出について

(ア) 現地職員の年末手当等の支給額の算定に当たり、在職期間を誤って計算するなどしたため、過大に支給している在外公館が5公館あった。(参照

(イ) 日本人学校等が現地で採用した教員等の給与に対する援助の実施に当たり、夏期休暇等で給与が支払われていないのに、日本人学校等の運営主体が援助を請求し、在外公館がその事実を十分確認しないまま援助を行ったなどのため、過大に援助を実施している在外公館が6公館あった。(参照

ウ 前渡資金の使用残額の処理について

 全在外公館の20、21両年度の前渡資金の使用残額(20年度計17億5412万余円、21年度計20億3221万余円)の国庫への返納が大幅に遅延していて、早期に活用されるべき資金が在外公館の口座に長期間滞留するなどしていた。(参照

(4) 施設及び物品の管理等の状況

ア 22年報告において酒類の在庫が過剰となっていた3公館については、ワインを今後3年程度で適正な在庫量とするため、他の在外公館へ管理換する処置を執っていた。(参照

イ 国有財産台帳に記載されている価格が、改修工事による減額を反映しておらず、国有財産増減及び現在額報告書の記載に正確性を欠いていた在外公館が1公館あった。(参照

ウ 重要物品である通信機器等の購送に当たって、外務本省内での管理換の手続が行われていなかったため、外務本省の物品管理簿に記録されたままとなっているものが、5公館で計5個、451万余円あった。また、外務本省が購入時に物品管理簿に記録しておらず、外務本省の物品管理官が在外公館の物品管理官に管理換を通知していない一般物品が5公館で計140個、1827万余円あった。さらに、一般物品である通信機器等の購送に当たって、外務本省内での管理換の手続が行われていなかっため、外務本省の物品管理簿に記録されたままとなっているものが12公館で計102個、2985万余円あった。(参照

エ 他の在外公館では美術品として管理している文化功労者等の作品を美術品として管理していない在外公館が5公館あった。また、独立行政法人国際交流基金に貸し付けている美術品について、所定の手続をとらず、物品として管理していなかった在外公館が2公館あり、これらの美術品の中には同基金の倉庫に保管されたままのものもあった。(参照

オ 外務本省から購送を受けた文化啓発品をほとんど利用していなかった在外公館が3公館あった。また、購送を受けてから1年以上経過した広報啓発品を保有していた在外公館が4公館あった。(参照

カ 会計実地検査時点で取得から1年以上が経過した広報資料について、その購送部数又は印刷部数の20%以上を配布することなく保有していた在外公館が4公館あった。(参照

(5) 監査の実施状況

ア 査察使には、主として、査察担当大使や外務省大臣官房監察査察官が任命されているが、査察担当大使の在任期間は1年以内となっていて人数に変動があり、また、監察査察官は、在外公館を対象とする査察のほかに外務本省内の各部局を対象とする監察の業務にも携わっている。査察の実施日程等を決定する際には、このような査察担当大使の在任状況や監察査察官の業務の状況を勘案する必要があることなどのため、年度により査察の施行率等にばらつきが生じていた。(参照

イ 実地監査を実施する箇所の選定に当たっては、問題がある可能性が高い箇所を選定するとともに、監査の牽(けん)制機能を維持する見地から、多年にわたって監査を実施しない空白域を生じさせないようにすることが有効であるが、6年間査察が実施されていない箇所が45か所あった。(参照

ウ 22年報告と同様に、査察実施後長期間が経過しているのに査察で指摘を受けた事態が十分に改善されていない在外公館が7公館あった。(参照

2 所見

 外務省は、在外公館の会計経理に関して、これまでの会計検査院の検査の結果を踏まえるなどして改善を図ってきている。そして、会計検査院が、22年報告の検査結果に基づく改善策が確実に実施されているかを検査したところ、その多くについて既に取組が行われていた。しかし、今回の検査において、在外公館に係る会計経理に関して更に改善すべき事態が見受けられた。これらの事態の多くは、国内とは環境の異なる海外における事務処理の困難さにもよるが、外務本省の在外公館に対する指導が一部において徹底を欠いていたこと、在外公館の定期・不定期の検査等を通じて内部統制を十分機能させていなかったことなどによる。
 したがって、外務省は、今回の検査結果を踏まえ、以下の点に留意することなどにより、在外公館に係る会計経理について、その事務処理を一層適切かつ効率的に執行するよう努める必要がある。

(1) 会計事務の体制の状況

ア 計算証明書類の提出期限を遵守し、また、物品管理システムへのデータ入力を早期に完了して十分な活用を図るようにする。

イ 平成15年度決算検査報告に掲記した在外公館における出納事務についての処置要求を受けて外務省が執った処置について、更に在外公館において遵守されるよう徹底する。

 以上のようにして、会計事務の体制を整備し、その機能が十分に発揮できるようにする。

(2) 資金の受入、保管等の状況

ア 送金通貨から現地通貨への交換について、前渡資金等の使用残額や送金通貨による支払が多額に上ると見込まれる場合は、必要以上に現地通貨に交換しないようにして、両替手数料の節減に努めるようにする。

イ 外務本省から在外公館への送金について、両替手数料の節減の見地から、在外公館における資金の残額等を十分に考慮して送金するようにする。

 以上のようにして、前渡資金等の受入れ、保管等に当たっては経済性に十分配慮する。

(3) 収入及び支出に係る会計処理の状況

ア 収入について

(ア) 付加価値税等の還付等については、支払後の還付手続等を適正に行うよう改めて周知する。

(イ) コロンビア大使館における現地職員による現金領得について、同様の事態が生じないよう今後講ずるとしている再発防止策を適切に実施していくようにする。

イ 支出について

(ア) 現地職員の給与の支給に当たっては、在外公館で現地職員の在職期間等を正確に把握し、支給額を適正に算定するよう指導を徹底する。

(イ) 日本人学校等の現地採用教員等の給与への援助の実施に当たっては、在外公館及び運営主体に対して、援助額の算定方法及びその遵守について周知徹底を図る。

ウ 前渡資金の使用残額の処理について

 在外公館の会計担当者に、前渡資金出納計算書等の作成に当たり、誤りを極力なくすよう指導・監督を行ったり、提出期限をより一層厳守させたりする。
 また、外務本省での前渡資金出納計算書等の内容確認等に当たり、計算証明書類の早期提出に向けた改善策を活用するなどして一層の効率化を図ったり、日本銀行で受領されなかった小切手の記載ミス等の事例を在外公館に周知して現地で再度小切手を作成することがないようにさせたりするなどして、前渡資金の使用残額の返納が早期に行われるよう努める。

 以上のようにして、収入については、付加価値税等の還付等を適正に行うとともに、領事手数料の収納事務を適正かつ適切に行い、支出については、適正かつ経済的な会計処理を行うとともに、資金の有効活用にも努める。

(4) 施設及び物品の管理等の状況

ア 22年報告に記述した在庫が過剰になっていた酒類については、今後3年程度で削減することとした方針に基づき、更に管理換するなどの措置を確実に実施する。

イ 改修工事等による増減額を国有財産台帳価格に適切に反映できるよう、在外公館は関係資料を全て報告するとともに、外務本省で適切に国有財産増減及び現在額を算定する。

ウ 外務本省が、在外公館に重要物品又は一般物品を購送するに当たっては、調達を依頼した部署が外務本省の物品管理官に速やかに管理換の伺いを行い、できるだけ速やかに在外公館の物品管理官に管理換を通知する。

エ ガイドラインに照らして美術品として管理する必要がある作品は、美術品として適切に管理する。また、他団体に美術品を貸し出す際には、必要な貸付けの手続をとるなど適切に管理する。

オ 在外公館は、文化啓発品の有効活用を図るとともに、購送を受けてから1年以上経過している広報啓発品について、一層の活用を図る。

カ 外務本省は、在外公館における広報資料について、その配布状況及び在庫状況を的確に把握の上、在外公館に送付し、在外公館は、広報資料の在庫状況等を勘案し、適時適切に配布することにより一層の活用を図る。

 以上のようにして、国有財産の増減及び現在額を台帳に正確に記録するとともに、物品の適切な記録、管理及び効率的な使用を行う。

(5) 監査の実施状況

ア 在外公館に対する会計監査が安定的・継続的に実施できるよう監査制度の一層の充実を図る。

イ 査察を実施する箇所の選定に当たっては、長期間にわたって査察が実施されない箇所が生じないよう努める。

ウ 監査結果のフォローアップの適切な実施について一層の改善を図る。

 以上のようにして、より効率的、効果的な会計監査の実施に努める。

 在外公館における会計経理は、遠隔地である海外において、国有財産や物品を管理し、また、外務本省から送金された多額の資金を取り扱うものであり、その適正かつ適切な執行のためには、会計法令等を理解して遵守することが強く求められる。したがって、外務省は、在外公館の会計経理に対する指示や指導を適時適切に行うとともに、その執行状況を随時監視し、また、在外公館における館長及び出納官吏によるそれぞれの職責に応じた会計経理の指導・監督を適切に行わせ、これを確認する必要がある。
 そして、外務省は、今回及び22年報告の検査の結果に対する所見において記述した事項について事態の改善に向けた処置を引き続き確実に実施するほか、情報システムの活用や監査制度の一層の充実等を通じて、在外公館に係る会計経理をより適正かつ適切なものとする必要がある。

 以上のとおり報告する。
 会計検査院としては、今後とも、在外公館に係る会計経理が適正かつ適切に実施されているかについて、多角的な観点から引き続き検査していくこととする。