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  • 平成23年10月

独立行政法人における運営費交付金の状況について


3 検査の状況

(1) 運営費交付金の交付及び算定の状況

ア 運営費交付金の交付状況

 検査の対象とした83法人における21年度の収入額及び運営費交付金の交付額の状況は表2のとおりである。

表2 平成21年度の収入額及び運営費交付金の交付額
(単位:百万円)
番号 法人名 収入額(A) 運営費交付金の交付額(B) (B)/(A)
1 国立公文書館 2,099 2,074 98.80%
2 国民生活センター 4,216 3,201 75.92%
3 北方領土問題対策協会 918 648 70.58%
4 沖縄科学技術研究基盤整備機構 12,592 5,717 45.40%
5 情報通信研究機構 43,718 34,200 78.22%
6 統計センター 11,120 10,350 93.07%
7 平和祈念事業特別基金 2,537 698 27.51%
8 国際協力機構 480,488 161,651 33.64%
9 国際交流基金 17,833 12,568 70.47%
10 酒類総合研究所 1,241 1,141 91.94%
11 国立特別支援教育総合研究所 1,489 1,260 84.62%
12 大学入試センター 11,376 254 2.23%
13 国立青少年教育振興機構 16,277 10,137 62.27%
14 国立女性教育会館 862 629 72.96%
15 国立科学博物館 6,035 3,120 51.69%
16 物質・材料研究機構 20,429 15,048 73.65%
17 防災科学技術研究所 9,990 8,229 82.37%
18 放射線医学総合研究所 19,164 11,711 61.10%
19 国立美術館 15,342 5,773 37.62%
20 国立文化財機構 13,808 8,367 60.59%
21 教員研修センター 1,732 1,381 79.73%
22 科学技術振興機構 121,410 107,458 88.50%
23 日本学術振興会 313,348 29,167 9.30%
24 理化学研究所 117,899 59,189 50.20%
25 宇宙航空研究開発機構 246,222 143,414 58.24%
26 日本スポーツ振興センター 119,365 6,026 5.04%
27 日本芸術文化振興会 22,727 10,984 48.33%
28 日本学生支援機構 1,702,200 26,172 1.53%
29 海洋研究開発機構 48,734 38,560 79.12%
30 国立高等専門学校機構 97,958 66,982 68.37%
31 大学評価・学位授与機構 2,152 1,857 86.29%
32 国立大学財務・経営センター 176,361 481 0.27%
33 日本原子力研究開発機構 218,823 169,111 77.28%
34 国立健康・栄養研究所 946 788 83.29%
35 労働安全衛生総合研究所 2,911 2,535 87.08%
36 勤労者退職金共済機構 531,909 3,269 0.61%
37 高齢・障害者雇用支援機構 58,952 17,756 30.11%
38 福祉医療機構 289,153 4,137 1.43%
39 国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 4,258 2,382 55.94%
40 労働政策研究・研修機構 3,263 2,891 88.59%
41 雇用・能力開発機構 518,524 72,955 14.06%
42 労働者健康福祉機構 316,170 10,694 3.38%
 
番号 法人名 収入額(A) 運営費交付金の交付額(B) (B)/(A)
43 国立病院機構 882,280 45,972 5.21%
44 医薬品医療機器総合機構 32,710 569 1.73%
45 医薬基盤研究所 13,359 11,152 83.47%
46 農林水産消費安全技術センター 8,104 7,543 93.07%
47 種苗管理センター 3,706 2,939 79.30%
48 家畜改良センター 10,412 8,160 78.37%
49 水産大学校 3,523 2,042 57.96%
50 農業・食品産業技術総合研究機構 63,544 48,147 75.76%
51 農業生物資源研究所 13,704 7,209 52.60%
52 農業環境技術研究所 4,914 3,154 64.18%
53 国際農林水産業研究センター 4,743 3,755 79.16%
54 森林総合研究所 109,703 10,124 9.22%
55 水産総合研究センター 29,560 16,655 56.34%
56 農畜産業振興機構 378,129 2,221 0.58%
57 農業者年金基金 226,745 3,790 1.67%
58 経済産業研究所 1,800 1,576 87.55%
59 工業所有権情報・研修館 13,357 13,248 99.18%
60 産業技術総合研究所 114,400 66,554 58.17%
61 製品評価技術基盤機構 9,946 7,392 74.32%
62 新エネルギー・産業技術総合開発機構 310,457 190,299 61.29%
63 日本貿易振興機構 37,350 23,318 62.43%
64 原子力安全基盤機構 23,717 22,190 93.56%
65 情報処理推進機構 8,719 4,842 55.53%
66 石油天然ガス・金属鉱物資源機構 1,846,235 24,522 1.32%
67 中小企業基盤整備機構 1,620,251 21,303 1.31%
68 土木研究所 10,506 9,329 88.79%
69 建築研究所 2,468 2,010 81.44%
70 交通安全環境研究所 2,705 1,762 65.13%
71 海上技術安全研究所 4,491 2,946 65.59%
72 港湾空港技術研究所 4,172 1,337 32.04%
73 電子航法研究所 1,750 1,618 92.45%
74 航海訓練所 6,414 6,283 97.95%
75 海技教育機構 3,044 2,752 90.40%
76 航空大学校 2,889 2,660 92.07%
77 自動車検査 14,315 1,372 9.58%
78 鉄道建設・運輸施設整備支援機構 1,774,623 609 0.03%
79 国際観光振興機構 3,634 1,998 54.98%
80 自動車事故対策機構 14,393 7,819 54.32%
81 国立環境研究所 14,448 9,292 64.31%
82 環境再生保全機構 103,000 2,113 2.05%
83 駐留軍等労働者労務管理機構 3,661 3,656 99.86%
(注)
 収入額(A)及び運営費交付金の交付額(B)は、各法人の決算報告書の決算額の収入合計及び運営費交付金の額を基に本院が集計したものである。

 このように、業務に充てられる財源のほぼ全てが運営費交付金となっている法人がある一方、業務に充てられる財源として補助金や業務収入等があり、収入額に占める運営費交付金の割合が極めて低くなっている法人もあるなど、独立行政法人の収入額に占める運営費交付金の割合は区々となっている。これは、法人ごとに業務の内容や業務運営の状況が異なっていることによる。

イ 運営費交付金の額の算定方法

 運営費交付金の額の算定については、中央省庁等改革推進本部事務局が12年4月に示した「独立行政法人・中期計画の予算等について」において、そのルールが例示されるとともに、具体的な算定ルールの設定に当たっては、独立行政法人の自主性が十分発揮できるよう留意しつつ、それぞれの法人の業務内容や財務構造等に即して適当な算定ルールを定めることが望まれるとされている。そして、これを受けて、各独立行政法人は、前記のとおり中期計画において、上記の例示されたルールを基に、中期目標期間に係る運営費交付金の総額(以下「中期計画額」という。)を算定する際に用いる法人ごとの算定ルールを定めるとともに、これにより中期計画額を算定している。各独立行政法人が中期計画額を算定する際に用いている算定ルールの代表的な例は、表3のとおりである。

表3 運営費交付金の算定ルールの例
 
運営費交付金=人件費+一般管理費+業務経費±特殊要因-自己収入
一般管理費 前年度一般管理費×一般管理費の効率化係数×一般管理費の政策係数×消費者物価指数
業務経費 前年度業務経費×業務経費の効率化係数×業務経費の政策係数×消費者物価指数
人件費 前年度人件費×人件費調整係数等×人件費の効率化係数+退職手当等
自己収入 前年度自己収入見積額×収入調整(政策)係数
(説明) 特殊要因 特定の年度に一時的に発生する資金の増減
効率化係数 中期目標及び中期計画に記載されている業務運営の効率化に関する事項等を踏まえ、各年度の予算編成過程において決定する値
政策係数 事業の進捗及び政策的に必要となる経費等を総合的に勘案し、予算編成過程で決定する値
人件費調整係数 給与昇給率等を勘案し、予算編成過程で決定する値
収入調整(政策)係数 過去の収入の実績を勘案し、予算編成過程で決定する値

 この算定ルールは、中期目標期間の最初の年度の予算額を基礎として、これに各係数等を乗ずることで、次年度以降の運営費交付金の額を見積もることとしている。このうち効率化係数は中期目標における業務運営の効率化に関する事項等を反映させた値であり、一般管理費で0.97程度、業務経費で0.99程度の値が多く用いられている。そして、政策係数は毎年度の予算措置の中で設定される値であり、特殊要因とともに中期計画額と実際の交付額の差が生じる要因となる。一方、消費者物価指数、人件費調整係数等については中期計画額の算定においては1.0と設定されていて、実際の交付額に対して著しい差が生じる要因にはならない。

ウ 中期計画額と実際の交付額の状況

 検査の対象とした83法人について、中期目標期間における運営費交付金の中期計画額と実際の交付額の状況は表4のとおりである。

表4 運営費交付金の中期計画額と実際の交付額の対比表
(単位:百万円)
法人名 中期目標期間 中期計画額(A) 実際の交付額(B) (B)/(A)
国立公文書館 平成
17〜21年度
9,003 9,477 105.2%
国民生活センター 15〜19年度 12,756 12,788 100.2%
北方領土問題対策協会 15〜19年度 2,763 2,808 101.6%
沖縄科学技術研究基盤整備機構 17〜20年度 15,439 15,438 99.9%
情報通信研究機構 18〜22年度 180,646 173,660 96.1%
統計センター 15〜19年度 53,936 49,012 90.8%
平和祈念事業特別基金 15〜19年度 4,603 4,342 94.3%
国際協力機構 19〜23年度 765,206 768,469 100.4%
国際交流基金 19〜23年度 62,643 64,392 102.7%
酒類総合研究所 18〜22年度 5,874 5,873 99.9%
国立特別支援教育総合研究所 18〜22年度 5,614 5,987 106.6%
大学入試センター 18〜22年度 1,752 1,696 96.8%
国立青少年教育振興機構 18〜22年度 55,125 52,811 95.8%
国立女性教育会館 18〜22年度 3,204 3,257 101.6%
国立科学博物館 18〜22年度 16,065 15,756 98.0%
物質・材料研究機構 18〜22年度 78,834 76,299 96.7%
防災科学技術研究所 18〜22年度 41,943 41,499 98.9%
放射線医学総合研究所 18〜22年度 65,433 61,552 94.0%
国立美術館 18〜22年度 29,381 30,242 102.9%
国立文化財機構 18〜22年度 43,759 43,461 99.3%
教員研修センター 19〜22年度 5,589 5,546 99.2%
科学技術振興機構 19〜23年度 514,847 523,458 101.6%
日本学術振興会 15〜19年度 129,957 133,037 102.3%
理化学研究所 15〜19年度 296,460 307,516 103.7%
宇宙航空研究開発機構 15〜19年度 590,801 608,862 103.0%
日本スポーツ振興センター 15〜19年度 23,348 23,363 100.0%
日本芸術文化振興会 15〜19年度 55,329 54,231 98.0%
日本学生支援機構 16〜20年度 111,869 108,407 96.9%
海洋研究開発機構 16〜20年度 151,372 174,761 115.4%
国立高等専門学校機構 16〜20年度 349,830 347,882 99.4%
大学評価・学位授与機構 16〜20年度 10,649 10,343 97.1%
国立大学財務・経営センター 16〜20年度 2,710 2,717 100.2%
日本原子力研究開発機構 17〜21年度 739,995 739,617 99.9%
国立健康・栄養研究所 18〜22年度 4,170 4,038 96.8%
労働安全衛生総合研究所 18〜22年度 12,354 12,118 98.0%
勤労者退職金共済機構 15〜19年度 18,178 17,902 98.4%
高齢・障害者雇用支援機構 15〜19年度 83,908 83,821 99.8%
福祉医療機構 15〜19年度 34,721 33,874 97.5%
国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 15〜19年度 12,271 12,113 98.7%
労働政策研究・研修機構 19〜23年度 14,626 14,432 98.6%
雇用・能力開発機構 19〜23年度 375,046 316,430 84.3%
労働者健康福祉機構 16〜20年度 55,197 56,102 101.6%
 
法人名 中期目標期間 中期計画額(A) 実際の交付額(B) (B)/(A)
国立病院機構 16〜20年度 255,218 251,738 98.6%
医薬品医療機器総合機構 16〜20年度 3,554 3,723 104.7%
医薬基盤研究所 17〜21年度 56,526 56,685 100.2%
農林水産消費安全技術センター 18〜22年度 38,727 38,092 98.3%
種苗管理センター 18〜22年度 15,091 14,716 97.5%
家畜改良センター 18〜22年度 41,733 40,803 97.7%
水産大学校 18〜22年度 11,033 10,376 94.0%
農業・食品産業技術総合研究機構 18〜22年度 247,543 243,885 98.5%
農業生物資源研究所 18〜22年度 37,178 36,393 97.8%
農業環境技術研究所 18〜22年度 15,806 15,948 100.8%
国際農林水産業研究センター 18〜22年度 17,626 17,582 99.7%
森林総合研究所 18〜22年度 50,981 50,941 99.9%
水産総合研究センター 18〜22年度 85,662 84,874 99.0%
農畜産業振興機構 15〜19年度 11,738 10,078 85.8%
農業者年金基金 15〜19年度 18,248 18,150 99.4%
経済産業研究所 18〜22年度 7,994 7,965 99.6%
工業所有権情報・研修館 18〜22年度 66,538 66,698 100.2%
産業技術総合研究所 17〜21年度 332,387 332,031 99.8%
製品評価技術基盤機構 18〜22年度 37,726 37,227 98.6%
新エネルギー・産業技術総合開発機構 15〜19年度 724,483 745,365 102.8%
日本貿易振興機構 19〜22年度 94,220 94,456 100.2%
原子力安全基盤機構 19〜23年度 110,284 108,360 98.2%
情報処理推進機構 15〜19年度 22,434 22,481 100.2%
石油天然ガス・金属鉱物資源機構 15〜19年度 119,397 153,319 128.4%
中小企業基盤整備機構 16〜20年度 100,375 103,260 102.8%
土木研究所 18〜22年度 41,314 40,754 98.6%
建築研究所 18〜22年度 10,069 10,019 99.5%
交通安全環境研究所 18〜22年度 9,621 8,600 89.3%
海上技術安全研究所 18〜22年度 15,319 14,919 97.3%
港湾空港技術研究所 18〜22年度 7,389 6,824 92.3%
電子航法研究所 18〜22年度 8,315 8,226 98.9%
航海訓練所 18〜22年度 33,370 31,973 95.8%
海技教育機構 18〜22年度 14,236 13,756 96.6%
航空大学校 18〜22年度 14,045 13,829 98.4%
自動車検査 19〜22年度 13,019 11,927 91.6%
鉄道建設・運輸施設整備支援機構 15〜19年度 3,375 3,252 96.3%
国際観光振興機構 15〜19年度 10,248 10,114 98.6%
自動車事故対策機構 19〜23年度 42,556 38,916 91.4%
国立環境研究所 18〜22年度 51,253 50,391 98.3%
環境再生保全機構 16〜20年度 12,896 12,776 99.0%
駐留軍等労働者労務管理機構 18〜22年度 20,261 19,404 95.7%
実際の交付額が中期計画額を下回る法人数 56法人
注(1)  「実際の交付額」には、中期目標期間に交付された総額を記載しているが、平成23年度交付分については、当初予算額のみ計上している。なお、雇用・能力開発機構は23年10月で解散したため、23年度交付分は、第1次補正予算による4月から9月までの分である。
注(2)  「中期計画額」には、各独立行政法人の中期計画に記載されている数値を記載しているが、各法人により、端数処理の方法が異なっている。

 このように、実際の交付額が、効率化の目標を踏まえて算定された中期計画額を下回る法人が多数見受けられた。また、特に増減が大きくなっている法人の状況は、表5のとおりである。

表5 増減が大きくなっている法人の状況
区分 法人名 実際の交付額/中期計画額 中期計画額と差が生じた主な要因
中期計画額よりも実際の交付額が減少している法人
(2法人)
農畜産業振興機構 85.8% 中期計画額に見込んでいた以上に自己収入が増加したことにより毎年度交付されることとなる運営費交付金が減少したなどのため
交通安全環境研究所 89.3% 中期計画額に業務経費として見込んでいた審査に係る機器購入費等が減少したため
中期計画額よりも実際の交付額が増加している法人
(2法人)
石油天然ガス・金属鉱物資源機構 128.4% ロシアにおける海外地質構造等調査事業に係る特殊要因が増加したため
海洋研究開発機構 115.4% 地球深部探査船「ちきゅう」の運用費に係る事業経費が増加したため

エ 自己収入の状況

 独立行政法人は、その業務運営の財源として、運営費交付金のほか、自己収入を充てて事務・事業を実施しており、また、特定の業務については補助金収入、受託収入等を充てている。
 そして、前記の「独立行政法人・中期計画の予算等について」において、運営費交付金の額の算定に当たって自己収入が想定される場合は、その額を控除(以下、控除する自己収入を「控除対象自己収入」という。)するとされている(表3「運営費交付金の算定ルールの例」 を参照)。19年度から22年度までの間に各法人が控除対象自己収入としていた収入項目について、調書により検査したところ、表6のとおりとなっている。

表6 控除対象自己収入(平成19年度〜22年度)
番号 法人名 控除対象自己収入
1 国立公文書館 刊行物売払収入、複写利用収入、土地建物貸付料
2 国民生活センター 図書雑誌出版収入、研修・宿泊収入、財務収益、雑益
3 北方領土問題対策協会 預金利息、その他(敷金)
4 沖縄科学技術研究基盤整備機構 -
5 情報通信研究機構 知的財産収入
6 統計センター -
7 平和祈念事業特別基金 運用収入
8 国際協力機構 事業収入
9 国際交流基金 著作権収入、連続理解講座受講料、カタログ・文化映画貸出収入、入場料・チケット販売収入
10 酒類総合研究所 鑑評会収入等
11 国立特別支援教育総合研究所 資産貸付収入
12 大学入試センター 検定料、成績提供手数料、成績開示提供手数料、適性試験受験料、高等学校卒業程度認定試験答案読取手数料、第三種電気主任技術者試験答案読取手数料、その他
13 国立青少年教育振興機構 事業収入、事業外収入(財産貸付収入)、基金運用益
14 国立女性教育会館 -
15 国立科学博物館 入場料等収入
16 物質・材料研究機構 貸付収入、寄付金、特許権実施料収入、研究助成金、研究雑収入、雑収入、受取利息
17 防災科学技術研究所 施設利用収入、雑収入
18 放射線医学総合研究所 病院収入、研修収入、その他(特許収入等)
19 国立美術館 入場料収入、その他事業収入
20 国立文化財機構 展示事業等収入
21 教員研修センター 宿泊料等収入
22 科学技術振興機構 開発費回収金、開発成果実施料等機構収入、開発成果実施料等発明者収入、外国人宿舎等収入、免許更新受講料収入、日本科学未来館入場料等収入、その他の収入
23 日本学術振興会 事業収入
24 理化学研究所 特許権収入、寄附金収入、バイオリソース分譲収入、技術研修収入、NMR共用促進事業収入、研究雑収入、医務室診療収入、借上職員宿舎・構内職員住宅等家賃収入、利息収入、不動産賃貸料等雑収入
25 宇宙航空研究開発機構 知的財産権収入、提供事業収入、宿舎等使用料収入、受取利息、その他
26 日本スポーツ振興センター 国立競技場運営収入、国立スポーツ科学センター収入、ナショナルトレーニングセンター運営収入、国立登山研修所運営収入、スポーツ及び健康教育普及事業収入、営業外収入、利息収入
27 日本芸術文化振興会 養成事業収入等、雑収入等
28 日本学生支援機構 寄附金収入、留学生宿舎収入、日本語学校収入、第一種学資金延滞金収入、受験料収入、財産使用料、利息収入、「大学と学生」著作権料、奨学事業雑収入、留学生事業雑収入、返納金収入、留学生会館雑収入
29 海洋研究開発機構 民間出資金及び寄附金、共用施設収入、研修収入、情報業務等収入、知的財産権収入、預金利子、雑収入、地球シミュレータ利用等収入
30 国立高等専門学校機構 入学料収入、授業料収入、検定料収入、雑収入
31 大学評価・学位授与機構 大学評価手数料、学位授与審査手数料、その他
32 国立大学財務・経営センター 宿舎貸付料収入
33 日本原子力研究開発機構 寄附金、施設利用収入、廃棄物処理事業収入、研修授業料収入、特許許諾料等収入、その他事業収入、預金利子、補償金収入、住宅賃料、雑収入、共同研究事業収入、ガラス固化技術開発施設収入、濃縮ウラン売却収入、廃棄物処理処分負担金収入
34 国立健康・栄養研究所 印税収入、設備使用料収入
35 労働安全衛生総合研究所 成果物頒布収入
36 勤労者退職金共済機構 -
37 高齢・障害者雇用支援機構 宿舎使用料、実習収入
38 福祉医療機構 経営指導事業収入、福祉保健医療情報サービス事業収入、利息収入、雑収入、手数料収入
39 国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 介護給付費・訓練等給付費収入等、地域生活支援事業費収入、診療収入、実習生等受入負担金収入等
40 労働政策研究・研修機構 出版物販売収入、受講料収入、雑収入
41 雇用・能力開発機構 授業料収入、入校料収入、受験手数料収入、在職者訓練収入、事業内援助収入、施設使用料収入、寄宿舎使用料・宿泊料、その他雑収入、職員宿舎使用料、JICA人件費、情報公開手数料、債務保証費回収金収入、私のしごと館収入
 
番号 法人名 控除対象自己収入
42 労働者健康福祉機構 宿舎料収入等、授業料収入、入学金収入等、入院・外来収入等、雑医療収入他、指導料収入等
43 国立病院機構 -
44 医薬品医療機器総合機構 -
45 医薬基盤研究所 -
46 農林水産消費安全技術センター 検査手数料収入、検定手数料収入、試験場製品等売払代、建物及び物件貸付料、講習事業収入
47 種苗管理センター 原原種売却収入、その他収入
48 家畜改良センター 売払収入
49 水産大学校 授業料、入学料、入学検定料、建物等貸付料、寄宿料
50 農業・食品産業技術総合研究機構 知的所有権収入、生産物等売払収入、製剤売払収入、授業料収入、外国人招へい研究員受入協力費、土地・建物貸付収入、土地及び水面貸付料、建物及び物件貸付料、不要物品売払収入、保険事務手数料、保険金収入、文献複写料、寄付金収入、延滞金、違約金等、検査事業収入、鑑定事業収入、製品売払収入、施設利用収入、運用収入、財産賃貸収入、雑収入
51 農業生物資源研究所 知的所有権収入、文献複写料、生産物売払収入、原蚕種等配布事業収入、依頼照射事業収入、遺伝資源配布事業収入、リソース等配布収入、受入研究協力金等、土地・建物貸付料、境界立会謝金、給与控除業務代行受取事務費
52 農業環境技術研究所 知的所有権収入、生産物売払収入、不用物品売払収入、土地・建物貸付収入、焼却炉使用料
53 国際農林水産業研究センター 知的所有権収入、生産物売払収入、古紙売払収入、土地・建物貸付収入、境界立会謝金、文献複写料、旅費戻入、海外保険戻入、車輌売払代
54 森林総合研究所 特許料、種子鑑定料、木材鑑定料等、文献複写料、多摩森林科学園入園料、新品種等種苗・林木遺伝資源種苗配布代、不動産貸付料、受託出張経費、古紙売却料
55 水産総合研究センター 知的財産権収入、観覧料収入、土地及び水面貸付収入、建物及び物件貸付収入、研修宿泊施設貸付収入、原子力立地給付金収入、漁獲物売却収入、広報・情報公開収入、水揚奨励金収入
56 農畜産業振興機構 宿舎貸付料、敷金戻入(借上宿舎)、保証金戻入(本部事務所)、受取利息、雑入
57 農業者年金基金 宿舎使用料、利息収入、雑収入、保険料被保険者負担金
58 経済産業研究所 普及業務及びシンポジウム収入
59 工業所有権情報・研修館 複写手数料収入、研修受講料収入
60 産業技術総合研究所 受取利息、為替差益
61 製品評価技術基盤機構 受取利息
62 新エネルギー・産業技術総合開発機構 利息収入
63 日本貿易振興機構 展示会出展料収入等
64 原子力安全基盤機構 受取利息、保険代行手数料、特定求職者助成金
65 情報処理推進機構 評価・認証料
66 石油天然ガス・金属鉱物資源機構 特許料等収入、運用収入
67 中小企業基盤整備機構 -
68 土木研究所 知的所有権収入、財産賃貸収入、技術指導等収入
69 建築研究所 技術指導等収入
70 交通安全環境研究所 手数料収入、受託収入、受取利息、財産賃貸収入、雑益
71 海上技術安全研究所 受託収入、知的財産収入、財産賃貸収入
72 港湾空港技術研究所 受託収入、特許収入、技術指導料収入、講演料収入、財産賃貸収入、研修生受入収入
73 電子航法研究所 受託収入
74 航海訓練所 財産賃貸収入、運航実務研修料、証明書再発行手数料、講師派遣料、航海訓練受託料収入、受取利息、教科書販売収入、社船実習負担金収入
75 海技教育機構 入学検定料収入、入学料収入、授業料収入、寄宿料収入、雑収入、受託収益、財務収益
76 航空大学校 授業料収入、入学料収入、検定料収入、土地及水面貸付料、建物及物件貸付料、寄宿舎使用料収入
77 自動車検査 受託収入、雑収入、審査手数料収入
78 鉄道建設・運輸施設整備支援機構 信用基金の運用益のうち政府出資に係る額
79 国際観光振興機構 観光宣伝事業賛助金等に係る収入、コンベンション協賛金等にかかる収入、受託業務にかかる収入、観光情報提供事業にかかる収入、通訳案内士試験事業にかかる収入
80 自動車事故対策機構 指導講習手数料収入、適性診断手数料収入、その他収入
81 国立環境研究所 雑収入、寄附金収益
82 環境再生保全機構 宿舎使用料収入、地球環境基金運用収入、遅延損害金収入
83 駐留軍等労働者労務管理機構 -

 このように、控除対象自己収入が法人により区々となっているのは、前記のとおり、法人ごとにその業務の内容や業務運営の状況が異なっていることが背景にある。
 そして、表6によると、25法人(注2) が利息収入や運用収入等(以下、併せて「利息収入等」という。)を控除対象自己収入としている。このうち、運営費交付金の額の算定に当たり、控除した利息収入等の額と実績額との間に著しいかい離が生じている法人が2法人あり、その状況は次のとおりである。

<事例1>

 新エネルギー・産業技術総合開発機構は、運営費交付金の利息収入を控除対象自己収入としており、その額については、四半期ごとに運営費交付金の交付を受けていることから、交付から3か月間でこれを使い切ると仮定し、この間に普通預金で運用するとして、当該預金の利率を用いて算出し、平成19年度20万余円、20年度3871万余円、21年度3635万余円としている。
 しかし、実際の運用方法をみると、同機構が策定した「定期預金等運用マニュアル」に基づき、定期預金又は譲渡性預金により運用していた。そして、その預入先は大手3銀行から引き合いを取ることとしていて、最も有利な利率を提示した銀行を選定していた。また、実際の運用に当たっては、四半期ごとに交付を受ける当年度の運営費交付金のほかに、前年度以前に交付を受けた運営費交付金の未使用額も運用するなどしていた。この前年度以前に交付を受けた運営費交付金の未使用額は、研究開発委託事業等において、当該研究開発を年度内に終えることが困難になったことなどに伴い、運営費交付金の支出額が計画を下回り、翌年度に繰り越したものなどである。
 このように、実際の運用に係る利率、元本の額等が控除対象自己収入の算定に用いた利率、元本の額等を大幅に上回った結果、実際の利息収入は、研究資産の売却収入等を運用したことによる利息収入が若干含まれるものの、19年度3億8800万余円、20年度4億7142万余円、21年度2億7122万余円となっていた。

<事例2>

 石油天然ガス・金属鉱物資源機構は、運営費交付金の運用収入を控除対象自己収入としており、その額については、四半期ごとに運営費交付金の交付を受けていることから、交付から3か月間でこれを使い切ると仮定し、この間に普通預金で運用するとして、当該預金の利率を用いて算出し、平成19年度45万余円、20年度154万余円、21年度250万余円としている。
 しかし、実際の運用方法をみると、同機構が策定した「独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構の資金運用要領」に基づき、定期預金により運用していた。そして、その預入先は原則として競争入札により決定することとしていて、最も有利な利率を提示した銀行を選定していた。また、実際の運用に当たっては、四半期ごとに交付を受ける当年度の運営費交付金のほかに、前年度以前に交付を受けた運営費交付金の未使用額も運用するなどしていた。この前年度以前に交付を受けた運営費交付金の未使用額は、産油国との調整の継続等により、当初予定された事業を実施する環境が整わなかったことなどに伴い、運営費交付金の支出額が計画を下回り、翌年度に繰り越したものである。
 このように、実際の運用に係る利率、元本の額等が控除対象自己収入の算定に用いた利率、元本の額等を大幅に上回った結果、実際の運用収入は19年度5億1917万余円、20年度6779万余円、21年度7666万余円となっていた。

 これら2法人は、運営費交付金の額の算定に当たり控除した利息収入等の額と実績額との間に著しいかい離が生じていることから、控除対象自己収入の額の算定に当たっては実態を考慮したものとする必要があると認められる。
 なお、控除対象自己収入の額の算定に当たっては、当該収入の性格等に応じて、法人における自己収入の増加に対する動機付けにも留意する必要がある。
 前記2法人の場合、実際に運用に充てていた運営費交付金の額が控除対象自己収入の額の算定の際に用いた額より多額であったのは、前年度以前に交付された運営費交付金が、予定していた事業を年度内に終えることが困難になったことなどに伴い、翌年度に繰り越されたことなどによって生じたものであり、上記の動機付けに影響を及ぼすものではないと認められる。一方で、複数の銀行から引き合いを取るなどして利息収入等の増加を図ったことについては、これを控除対象自己収入の額の算定にそのまま反映させた場合、上記の動機付けに影響を及ぼす可能性があると考えられる。
 独立行政法人の業務運営の財源は、主に国からの運営費交付金と法人の自己収入であることから、個々の法人の状況も踏まえ、あらかじめ見込まれる自己収入については法人における自己収入の増加に対する動機付けにも留意しつつ、控除対象自己収入の額を適切なものとし、運営費交付金の額の算定に反映させる必要がある。

(2) 運営費交付金の収益化の状況

ア 運営費交付金に係る収益化基準の概要

 運営費交付金債務を業務の進行に応じて収益化する基準(以下「収益化基準」という。)として、独立行政法人会計基準注解(平成12年2月独立行政法人会計基準研究会策定。以下「独法会計基準注解」という。)及び「「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」に関するQ&A」(平成12年8月公表)は、表7のとおり、三つの収益化基準を示しており、法人の業務内容からみてその業務の進捗状況を最も適切に反映して、法人にできるだけ成果達成への動機付けを与える基準を法人ごとに定める必要があるとしている。

表7 運営費交付金の収益化基準
(ア) 業務達成基準 一定の業務と運営費交付金との対応関係が明らかにされている場合に、当該業務の達成度に応じて、財源として予定されている運営費交付金債務の収益化を行うもの。例えば、一定のプロジェクトの実施や退職一時金の支払について、交付金財源との対応関係が明らかにされている場合等がこれに該当する。
(イ) 期間進行基準 上記の場合において、業務の実施と運営費交付金財源とが期間的に対応している場合に、一定の期間の経過を業務の進行とみなし、運営費交付金債務の収益化を行うもの。例えば、管理部門の活動等がこれに該当する。
(ウ) 費用進行基準 上記(ア)及び(イ)のような業務と運営費交付金との対応関係が示されない場合に、業務のための支出額を限度として、運営費交付金債務の収益化を行うもの。

 独法会計基準注解においては、業務達成基準又は期間進行基準を採用できる場合の前提となるような業務と運営費交付金との対応関係が示されない場合に、費用進行基準を採用するものとされている。そして、独法会計基準注解の19年11月の改訂により、費用進行基準を採用した場合には、その理由を財務諸表の重要な会計方針に注記しなければならないこととなっている。

イ 業務達成基準又は期間進行基準と費用進行基準の差異

 前記三つの収益化基準のうち、業務達成基準は業務の達成度に応じて、期間進行基準は一定の期間の経過を業務の進行とみなして、それぞれ業務の財源として予定されている運営費交付金債務の額を収益化するものである。このため、事故等があって予定されていた業務が達成されないなどの場合を除き、交付された運営費交付金の全額が収益化されることから、法人が効率的な業務運営に努め、運営費交付金を業務の財源として予定されている額より効率的に使用した結果生じた節減額は、損益計算上の利益に計上されることになるが、業務のための支出額が業務の財源として予定されている額を上回った場合には損失を計上することになる。
 そして、利益を計上した場合において、当該利益のうち独立行政法人の経営努力により生じた額は、独立行政法人が自らその根拠を示し、主務大臣が独立行政法人評価委員会の意見を聴くとともに、財務大臣に協議を行った上で、目的積立金として主務大臣の承認を受けた場合には、翌年度以降に法人が中期計画に定められた剰余金の使途の範囲内において使用することができることとなる。
 一方、費用進行基準は、業務のための支出額を限度として運営費交付金債務の収益化を行うことになるため、運営費交付金を業務の財源として予定されている額より効率的に使用した結果生じた節減額は、予定していた事務・事業が計画どおりに進捗せずに翌年度に繰り越した額及び計画の中止等により生じた不用額等の支出しなかった額とともに、中期目標期間の最終年度を除いた各年度の貸借対照表に運営費交付金債務のまま残ることになり、損益計算上の利益としては計上されず、また、業務のための支出額が業務の財源として予定されている額を上回った場合でも、当期に収益化できる運営費交付金債務が残っている場合には、この損失は減少するか又は損益計算上の損失としては計上されないことになる。
 以上のように、運営費交付金を効率的に使用した結果生じた節減額は費用進行基準では運営費交付金債務のままであるが、業務達成基準又は期間進行基準では利益として計上され、独立行政法人の成果達成への動機付けを与えることになる。

ウ 運営費交付金の収益化基準の採用状況

 会計検査院は、国会からの検査要請を受けて17年10月に報告した「独立行政法人の業務運営等の状況に関する会計検査の結果についての報告書 」において、13年4月に国から出資を受けて設立された独立行政法人で、中期目標の期間が5年間となっている45法人の収益化基準の採用状況について検査しており、それによると費用進行基準のみを採用している法人が16年度において40法人(88.9%)となっていた。
 今回、検査の対象とした83法人が採用している収益化基準の状況をみると別表1(後掲 )のとおりであり、これを法人数で整理すると表8のとおりとなっていて、21年度において費用進行基準のみを採用している法人は61法人(73.4%)となっている。

表8 運営費交付金の収益化基準の採用状況(平成19年度〜21年度)
  平成19年度 20年度 21年度
  法人数 割合(%) 法人数 割合(%) 法人数 割合(%)
費用進行基準のみを採用している法人 67 80.7 65 78.3 61 73.4
業務達成基準のみを採用している法人 2 2.4 2 2.4 2 2.4
期間進行基準のみを採用している法人 1 1.2 1 1.2 0
業務達成基準と期間進行基準とを使い分けている法人 7 8.4 7 8.4 8 9.6
期間進行基準と費用進行基準とを使い分けている法人 1 1.2 2 2.4 6 7.2
三つの基準全てを使い分けている法人 5 6.0 6 7.2 6 7.2
83 100.0 83 100.0 83 100.0

 費用進行基準以外の基準を採用する法人が次第に増加しており、前記17年10月 の報告書で記述した状況と比べ費用進行基準のみを採用している法人の割合も減少しているものの、依然として費用進行基準のみを採用している法人が多い状況となっている。
 費用進行基準を採用する場合には、財務諸表の重要な会計方針においてその理由を注記することとされているが、多くの法人では、他の収益化基準を採用する際に必要となる業務と運営費交付金との対応関係を明らかにすることが困難であることを記している。

エ 業務達成基準又は期間進行基準の採用

 検査の対象とした83法人のうち8法人は、従来は費用進行基準のみを採用していたが、19年度から21年度までの間に収益化基準の見直しを行い、業務のうちの全部又は一部について、業務達成基準又は期間進行基準に変更していた。これらは、19年11月に独法会計基準注解が改訂されたことや、主務省の独立行政法人評価委員会において評価委員から収益化基準について費用進行基準以外の基準の採用を検討すべきである旨の意見があったことを契機に、法人内部において検討を行った結果、収益化基準の変更を行ったものである。
 前記のとおり、業務達成基準又は期間進行基準を採用した場合には、法人が効率的な業務運営に努めた結果生じた節減額は利益に計上されることになる。
 そこで、前記8法人のうち、中期目標期間の最終年度以外の年度に収益化基準を変更した6法人について、収益化基準を変更してから初めて作成した損益計算書に計上された利益のうち、変更に伴う利益への影響額をみたところ、表9のとおり、全ての法人で利益の額が増加している。

表9 収益化基準の変更に伴う利益への影響額
(単位:円)
法人名 収益化基準 利益への影響額
平成18年度 19年度 20年度 21年度
国立青少年教育振興機構 注(1) 費用進行 業務達成
期間進行
524,248
国立科学博物館 注(1) 費用進行 業務達成
期間進行
費用進行
2,279,150
国立健康・栄養研究所 注(2) 費用進行 期間進行
費用進行
28,585,391
高齢・障害者雇用支援機構 注(2) 費用進行 期間進行
費用進行
10,479,170
労働政策研究・研修機構 注(2) 費用進行 期間進行
費用進行
6,380,713
雇用・能力開発機構 注(2) 費用進行 期間進行
費用進行
1,104,406,429
注(1)  国立青少年教育振興機構及び国立科学博物館の利益への影響額は法人に提出を求めた資料を基に本院で試算したものである。
注(2)  国立健康・栄養研究所、高齢・障害者雇用支援機構、労働政策研究・研修機構及び雇用・能力開発機構の利益への影響額は、各法人の財務諸表の附属明細書に記載されている計数である。

オ 教育・養成を目的とする独立行政法人が採用している収益化基準の状況

 類似した業務を行っている法人について、採用している収益化基準の状況を検査したところ、教育・養成を目的とした業務を行っている5法人について、表10のとおり、法人間で異なる収益化基準を採用している状況となっていた。

表10 教育・養成を目的とする独立行政法人が採用している収益化基準の状況
法人名 収益化基準 個別法による目的
国立高等専門学校機構 業務達成基準
期間進行基準
費用進行基準
職業に必要な実践的かつ専門的な知識及び技術を有する創造的な人材を育成するとともに、我が国の高等教育の水準の向上と均衡ある発展を図ること
航海訓練所 業務達成基準
期間進行基準
費用進行基準
商船に関する学部を置く国立大学、商船に関する学科を置く国立高等専門学校及び海技教育機構の学生及び生徒等に対し航海訓練を行うことにより、船舶の運航に関する知識及び技能を習得させること
水産大学校 費用進行基準 水産に関する学理及び技術の教授及び研究を行うことにより、水産業を担う人材の育成を図ること
海技教育機構 費用進行基準 船員に対し船舶の運航に関する学術及び技能を教授すること等により、船員の養成及び資質の向上を図り、もって安定的かつ安全な海上輸送の確保を図ること
航空大学校 費用進行基準 航空機の操縦に関する学科及び技能を教授し、航空機の操縦に従事する者を養成することにより、安定的な航空輸送の確保を図ること

 これら5法人は、特定の分野における教育・養成を目的とする同種の業務を行っているが、国立高等専門学校機構及び航海訓練所は、年度ごとに実施する特定の政策目的に係る業務等についてのみ費用進行基準を採用したもので、ほとんどの業務には業務達成基準及び期間進行基準を採用していた。これに対し、水産大学校、海技教育機構及び航空大学校は費用進行基準のみを採用していた。そこで、費用進行基準のみを採用しているこれら3法人について、業務と運営費交付金との対応関係について、業務に係る費用の見積りが行われていて、かつ、業務の達成度を確認することが可能であるかを検査した。この結果は、表11のとおりであり、いずれの法人も、業務に係る費用の見積りについては、法人の長等により相当程度細分化された経費単位ごとに運営費交付金の充当の有無を含めて毎年度決定しており、また、業務の達成度については、学校又は教育課程ごとに修業期間、授業科目、単位数、履修方法等が定められ、それぞれ所定の定員に対して、計画的に履修させて所定の単位を修得した者を卒業又は修了させている。したがって、これら3法人は、業務の全部又は一部について、業務と運営費交付金との対応関係が明らかで、業務によっては期間的な対応関係があることから、業務達成基準又は期間進行基準が採用できると認められた。

表11 3法人の業務と運営費交付金との対応関係
  水産大学校 海技教育機構 航空大学校
業務に係る費用の見積り 理事長、理事、校長等をもって構成される運営会議で決定 理事長及び理事をもって構成される理事会で決定 理事長及び監事をもって構成される役員会で決定
設置されている学校又は教育課程 高等学校卒業者を対象とした本科、本科卒業生のうち一定の要件を満たす者等を対象とした専攻科、学士の学位を有する者を対象とした水産学研究科 中学校を卒業した者等を対象とした海上技術学校(本科、乗船実習科等)を4校、高等学校を卒業した者を対象とした海上技術短期大学校(専修科等)を3校、本科、専修科等を卒業した者を対象とした海技大学校(海技専攻課程等) 修業年限4年以上の大学に2年以上在学し、62単位以上を修得した者等を対象とした飛行機操縦科
業務の達成度(修業期間) 本科で4年、専攻科で1年、水産学研究科で2年 海上技術学校で3年、海上技術短期大学校で2年、海技大学校では目的に応じて置かれたコースごとに2日から2年半等 2年

 これら3法人について、業務達成基準又は期間進行基準を採用したとして、18年度から21年度までの各年度の損益計算書に計上される利益又は損失を試算したところ、表12のとおり、特段の事情があって損失が計上される場合を除き、法人が効率的な業務運営に努めた結果生じた節減額等が、利益として計上されることとなる。

表12 収益化基準を変更した場合の利益及び損失の額(試算)
(単位:円)
水産大学校   平成18年度 19年度 20年度 21年度
当期総利益(△総損失)
(A)
12,080,681 2,183,422 2,219,473 9,428,525
収益化基準を変更した場合の
当期総利益(△総損失)
(B)
171,781,186 71,557,739 △56,207,271 64,712,039
増加するとみられる利益の額
(△損失の額)
(B)-(A)
159,700,505 69,374,317 △58,426,744 55,283,514

海技教育機構   平成18年度 19年度 20年度 21年度
当期総利益(△総損失)
(A)
4,772,901 △2,397,333 △3,914,814 △1,092,879
収益化基準を変更した場合の
当期総利益(△総損失)
(B)
225,177,050 152,876,367 133,896,021 103,862,739
増加するとみられる利益の額
(△損失の額)
(B)-(A)
220,404,149 155,273,700 137,810,835 104,955,618

航空大学校   平成18年度 19年度 20年度 21年度
当期総利益(△総損失)
(A)
△111,703 △371,577 △262,150 84,588
収益化基準を変更した場合の
当期総利益(△総損失)
(B)
101,610,348 △82,669,781 45,190,005 23,613,964
増加するとみられる利益の額
(△損失の額)
(B)-(A)
101,722,051 △82,298,204 45,452,155 23,529,376
(注)
 航空大学校の平成19年度及び水産大学校の20年度の試算結果が損失となるのは、原油価格の高騰により、計画額を上回る経費を支出したことなどによるものである。

 これら3法人は、本院の検査を踏まえて、収益化基準を変更した場合に、費用進行基準を採用していた際と同様の評価を得ることができるか、国民その他の利害関係者の判断を誤らせることにならないかなどに留意しつつ、収益化基準の変更に向けた検討を行うとしている。

カ 費用進行基準のみを採用している法人における節減・節約等の額について

 前記のとおり、費用進行基準を採用した場合には、運営費交付金を財源とする業務における節減・節約等の効率化により生じた額は損益計算上の利益とならず、運営費交付金債務のまま残ることとなる。
 そこで、費用進行基準のみを採用している法人について、業務費等の支出に充てられることなく運営費交付金債務のまま残されている額について調書により検査したところ、節減・節約等の効率化により生じた額として法人が回答した額は、19年度は27法人(注3) 69億3011万余円、20年度は36法人(注4) 140億9938万余円、21年度は32法人(注5) 89億9225万余円となっている(後掲の別表2参照 )。
 収益化基準については、費用進行基準のみを採用している法人が多い状況となっており、このうち多くの法人では、他の収益化基準を採用する際に必要となる業務と運営費交付金との対応関係を明らかにすることが困難であるとしている。しかし、前記のように、費用進行基準のみを採用している法人のうちにも、業務の全部又は一部について、業務と運営費交付金との対応関係が明らかであることなどから、業務達成基準又は期間進行基準が採用できると認められる法人が見受けられた。したがって、法人の業務内容からみてその業務の進捗状況を最も適切に反映して、法人にできるだけ成果達成への動機付けを与える基準を定める必要があることを踏まえて、費用進行基準のみを採用している法人は、業務と運営費交付金との対応関係を検証するなど、収益化基準の見直しに努めることが重要である。

(3) 中期目標期間の最終年度における運営費交付金の処理と積立金の国庫納付の状況

 会計検査院では、国会からの検査要請を受けて20年11月に報告した「独立行政法人の業務、財務、入札、契約の状況に関する会計検査の結果について 」において、18年度末までに中期目標期間が終了した65法人の79勘定(勘定を設けずに業務を経理している法人については1勘定としている。以下同じ。)について、その精算収益化額が計438億5169万余円となっている事態を報告している。
 検査の対象とした83法人のうち19年度から21年度までの間に中期目標期間が終了した法人は35法人あり、これら35法人で運営費交付金の交付を受けている63勘定について、その精算収益化額は計1115億3236万余円となっている。このうち、中期目標期間の最終年度に係る利益処分又は損失処理を行った後の積立金(以下「精算対象積立金」という。)を計上したものは、33法人56勘定であり、これらを総括した状況は表13のとおりである(後掲別表3参照 )。

表13 精算収益化額及び国庫納付の状況
(単位:円)
区分 精算対象積立金 次期繰越積立金
(B)
国庫納付額
(C)=(A)-(B)
(A) うち精算収益化額
33法人56勘定 941,926,723,889 109,350,955,363 852,506,957,200 89,419,766,689
(注)
 勤労者退職金共済機構の各勘定は、それぞれ業務経理のみを集計している。

 一方、中期目標期間の最終年度に係る利益処分又は損失処理を行った結果、次の中期目標期間に欠損金を繰り越すことになった法人の状況は表14のとおりである。

表14 次の中期目標期間に繰り越すこととなった欠損金の状況
(単位:円)
法人名 勘定名 中期目標期間最終年度 中期目標期間最終年度の利益処分 次の中期目標期間に繰り越す欠損金(△)
前期からの繰越欠損金(△)   (A)+(B)
中期目標期間最終年度の未処分利益又は未処理損失(△) うち精算収益化額  
(A) (B)  
勤労者退職金共済機構 一般の中小企業退職金共済事業等勘定 平成
19
△14,774,975,289 △141,263,822,284 0 △156,038,797,573
林業退職金共済事業等勘定 19 △1,395,745,954 39,302,551 0

△1,356,443,403

福祉医療機構 保険勘定 19 △42,497,458,981 △6,434,136,484 520,631 △48,931,595,465
労働者健康福祉機構 - 20 △28,738,794,909 △2,702,454,114 1,572,382,764 △31,441,249,023
医薬品医療機器総合機構 審査等勘定 20 △1,064,007,449 △43,380,041 76,848,444 △1,107,387,490
農畜産業振興機構 砂糖勘定 19 △50,073,270,770 7,391,917,923 280,927,344 △42,681,352,847
生糸勘定 19 △5,807,674,883 1,123,575,837 154,522,305 △4,684,099,046
中小企業基盤整備機構 小規模企業共済勘定 20 △675,613,034,199 △314,711,048,130 83,071,309 △990,324,082,329
鉄道建設・運輸施設整備支援機構 海事勘定 19 △51,916,104,524 1,117,058,963 13,136,852 △50,799,045,561
△871,881,066,958 △455,482,985,779 2,181,409,649 △1,327,364,052,737
(注)
 勤労者退職金共済機構の「一般の中小企業退職金共済事業等勘定」及び「林業退職金共済事業等勘定」は、それぞれ業務経理以外の経理を計上しているため、表13と表14の勘定数を単純に合計すると65勘定となる。

 中期目標期間の最終年度末まで業務運営の財源に充てられずに残った運営費交付金債務の額(精算収益化額に相当)は、次の中期目標期間に繰り越すことができず、これを全額収益に振り替えることにより精算し、基本的には国庫納付することとなっている。しかし、中期目標期間の最終年度において精算収益化額を上回る前期からの繰越欠損金があるなどの場合は精算対象積立金を計上できないことになり、中期目標期間中に交付された運営費交付金のうち業務運営の財源に充てられなかった金額が法人内部に留保され、国庫納付されないこととなる。
 中期目標期間の終了時点における運営費交付金の精算の状況について検査した結果、中期目標期間の最終年度末まで業務運営の財源に充てられずに残った運営費交付金債務の額等が、前期からの繰越欠損金があるなどのため国庫納付されず、法人内部に留保されていて、業務の財源に充てることができない資金となっていると認められるものが次のとおり見受けられた。

<事例3>

 労働者健康福祉機構では、平成20年度末の第1期中期目標期間の終了に伴う期末処理において、精算収益化額等15億9481万余円が発生していた。一方、同機構の経理は「独立行政法人労働者健康福祉機構の業務運営並びに財務及び会計に関する省令」(平成16年厚生労働省令第56号)において三つの経理単位に区分しなければならないこととされていて、このうち病院勘定において42億7963万余円の当期総損失が生じていたことから、同機構全体としては27億0245万余円の当期総損失を計上することとなった。このため、精算収益化額に相当する額等の資金のうち現金の裏付けのある資金15億8867万余円は、国庫納付ができないことになっていた。しかし、同機構においては、病院勘定の費用は医療事業収入等で賄うこととしていて運営費交付金を充当しないこととしていることから、上記の資金15億8867万余円は使用されることなく、その全額が法人内部に留保されている状況になっていた。
 なお、同機構は、本院の検査を踏まえて、23年9月に、厚生労働大臣に対して、不要財産の国庫納付に係る認可申請書を提出し、上記の資金15億8867万余円について、国庫納付することとなるようにした。

<事例4>

 中小企業基盤整備機構の小規模企業共済勘定では、平成20年度末の第1期中期目標期間の終了に伴う期末処理において、精算収益化額8307万余円が発生していた。一方、同勘定は「独立行政法人中小企業基盤整備機構の業務(産業基盤整備業務を除く。)に係る業務運営、財務及び会計に関する省令」(平成16年経済産業省令第74号)において三つの経理単位に区分しなければならないこととされていて、このうち給付経理において損失を生じていたことから、同勘定全体としては3147億1104万余円の当期総損失を計上することとなった。このため、精算収益化額に相当する額の資金8307万余円は国庫納付ができないことになっていた。そして、省令により小規模共済業務等経理から給付経理への資金融通をしてはならないこととされ、また、給付経理に係る費用は共済事業掛金等の収入等で賄うことにしていて、運営費交付金を給付経理で発生した欠損の補填に充てることはできないこととなっていることから、上記の資金8307万余円は使用されることなく、その全額が法人内部に留保されている状況になっていた。
 なお、同機構は、本院の検査を踏まえて、23年9月に、経済産業大臣に対して、不要財産の国庫納付に係る認可申請書を提出し、上記の資金8307万余円について、国庫納付することとなるようにした。

 これらのほかに、18年度末に第1期中期目標期間を終了した雇用・能力開発機構の財形勘定において、同様の状況が見受けられた。同機構は、23年10月をもって解散することとなっており、その権利及び義務は国及び他の独立行政法人が承継することとされていることから、業務の財源に充てることができないと認められる資金については、本院の検査を踏まえて、同機構の解散の際に国に承継されることとなるよう23年9月に厚生労働大臣に申請するなどした。
 法人内部に留保され、国庫納付されないこととなっている資金については、22年に改正された通則法において不要財産を処分しなければならないとされていることを踏まえて、精算収益化額に相当する額の資金等を国庫納付している他の法人との均衡を失しないように、法人において、速やかに当該資金等が不要財産であるか否かを検討し、不要財産と認められた場合には遅滞なく国庫納付する必要があると認められる。