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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
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  • 平成24年4月

牛肉等関税を財源とする肉用子牛等対策の施策等に関する会計検査の結果について


2 機構、機構の補助金交付先等に造成されている資金等の状況

(1) 地方基金の状況

ア 基金の分類

 検査の対象とした基金は、国所管基金の2基金と機構所管基金の9基金、計11基金であり、使途別・運営形態別に分類すると、次のとおりである。

(ア) 使途別分類

a 貸付事業基金(1基金)貸付けや一時立替えの事業の財源として基金を使用するもの
b 債務保証事業基金(1基金)借入金に対する債務を保証し不測の事態が発生したときに生ずる費用を弁済する事業の信用力の基盤となる財源として基金を使用するもの
c 補助・補填事業基金(7基金)各種事業への補助金や農畜産物の価格差に対する補填金を交付する事業の財源として基金を使用するもの
d 調査等その他事業基金(2基金)法人自らが行う調査、研究、普及、保管等の事業の財源として基金を使用するもの

(イ) 運営形態別分類

a 取崩し型(7基金)基金を利子助成、補助・補填、調査、研究等の事業の財源に充てることによって費消していくもの
b 回転型(1基金)主として、使途別分類の貸付事業基金がこれに該当し、基金を繰り返し回転させて使用するもの
c 保有型(1基金)主として、使途別分類の債務保証事業基金がこれに該当し、基金を債務保証の信用力の基盤となる財源として保有するもの
d 運用型(2基金)基金を運用元本として、その運用益を事業の財源に充てていくもの

イ 地方基金の資金保有額等の状況

 上記の11基金については、農林水産省又は機構からの補助金等を財源として各都道府県を単位とした畜産関係団体等(以下「地方畜産団体」という。)に22年度末において519地方基金が設置造成されている。これらのうち、一部の基金について被災4県に係るものなどを除いた480地方基金の内訳をみると、図表102 のとおり、国所管基金の2基金に係る地方基金数は168地方基金(22年度末資金保有額計19億円(国庫補助金相当額6億円))、機構所管基金の9基金に係る地方基金数は312地方基金(22年度末資金保有額計734億円(機構からの補助金等相当額517億円))となっている。

図表102 地方基金の資金保有額等の状況
(単位:千円)

区分 番号 基金名 使途 運営形態 平成21年度末 22年度末
地方畜産団体数 地方基金数 資金保有額 地方畜産団体数 地方基金数 資金保有額
  補助金等相当額
国所管基金 1 耕畜連携水田活用資金 注(1) 補助・補填 取崩 43 43 72,516 - - - -
2 家畜導入特別事業 注(2) 貸付け 回転 183 183 2,003,349 168 168 1,908,873 631,800
226 226 2,075,866 168 168 1,908,873 631,800
機構所管基金 1 肉用子牛生産者積立金 注(2) 補助・補填 取崩 43 43 - 43 43 5,931,312 2,957,639
2 運営特別基金 調査等その他 運用 46 46 6,589,949 46 46 6,583,269 6,583,269
3 地域肉用牛肥育経営安定基金 注(3) 補助・補填 取崩 47 47 2,227,980 47 47 41,277,158 31,259,404
4 地域肉豚生産安定基金 注(2)  注(4) 補助・補填 取崩 39 39 16,152 39 39 3,028,858 1,530,049
5 運営基盤強化基金 調査等その他 運用 44 44 1,702,684 44 44 1,700,861 1,700,861
6 拡大基金 注(2) 債務保証 保有 41 41 2,815,954 41 41 2,787,436 661,294
7 酪農ヘルパー利用拡大基金 注(1)  注(5) 補助・補填 取崩 26 26 55,710 - - - -
8 都道府県事業基金 注(2)  注(5) 補助・補填 取崩 42 42 7,105,133 42 42 4,334,326 1,266,828
9 加工原料乳生産者積立金 補助・補填 取崩 10 10 7,816,433 10 10 7,782,458 5,812,754
338 338 28,329,998 312 312 73,425,682 51,772,100
合計 564 564 30,405,864 480 480 75,334,555 52,403,901
注(1)  耕畜連携水田活用資金及び酪農ヘルパー利用拡大基金は、平成21年度に事業を終了している。
注(2)  家畜導入特別事業には、被災4県のうち岩手県、宮城県及び福島県に係る22地方基金は含まれていない。また、肉用子牛生産者積立金、地域肉豚生産安定基金、拡大基金及び都道府県事業基金には、被災4県に係る地方基金は含まれていない。
注(3)  平成22年度末の地域肉用牛肥育経営安定基金は、新マルキン事業により造成されている肉用牛肥育経営安定特別基金の金額となっている。
注(4)  平成22年度末の地域肉豚生産安定基金は、養豚経営安定対策事業により造成されている地域基金の金額となっている。
注(5) 図表1 (参照)の「団体名」の団体数は、全国農業協同組合連合会の各県本部を合わせて1団体と整理したため、本図表の「地方畜産団体数」と異なる。

ウ 基金事業の概要と収入支出及び資金保有額の推移
 上記11基金の基金事業の概要、18年度から22年度までの各年度における補助金等の収入額、事業実績額(注21) 等の支出額、資金保有額等は次のとおりである。

 事業実績額  基金事業の内容には種々のものがあり、例えば、貸付事業基金については、基金の貸付け、貸付金の管理、貸付金の回収等が、債務保証事業基金については、債務保証の引受け、債務保証額の管理、代位弁済等がある。本報告の分析において各年度の事業実績額としているのは、基金の使用と直接に結び付くものとして、貸付事業基金については新規貸付額、債務保証事業基金については代位弁済額、補助・補填事業基金については補助金等の支払額、調査等その他事業基金については調査、研究等に係る費用の支払額としている。なお、事務の処理に要する経費は含まれていない。

(ア) 国所管基金の2基金

a 耕畜連携水田活用資金

 耕畜連携水田活用資金(21年度末の地方基金数は43)は、地域の水田状況に適した飼料作物の生産の取組を実施した水田の面積に応じて助成金を交付するなどのため、農林水産省からの補助金を財源として、都道府県水田農業推進協議会等に造成されたものであり、19年度から21年度まで基金事業として実施されている。
 本基金の19年度から21年度までの各年度における事業実績額(43地方基金の計)をみると、図表103 のとおりおおむね同額で推移している。また、同期間の各年度末における資金保有額(43地方基金の計)をみると、各地域で予定されていた飼料作物の生産の取組が実施されなかったなどのため、7251万円から2億9348万円までの間で推移している。なお、本基金による事業は21年度に終了し、都道府県水田農業推進協議会等は22年度に基金の残額7265万円を国庫に返還している。

図表103 耕畜連携水田活用資金の資金保有額等(43地方基金の合計額)の推移

(単位:千円)

年度
項目
平成18年度 19年度 20年度 21年度 22年度
期首資金保有額 - 0 293,483 102,571 72,516
収入額合計 - 5,403,841 5,404,495 5,403,641 135
  補助金 - 5,403,650 5,403,650 5,402,640 -
その他 - 191 845 1,000 135
支出額合計 - 5,110,358 5,595,407 5,433,695 72,652
  事業実績額 - 5,105,402 5,590,074 5,428,946 -
補助金返還金 - 191 - 651 72,652
その他 - 4,764 5,333 4,098 -
期末資金保有額 0 293,483 102,571 72,516 -
注(1)  平成18年度の期末資金保有額に残額があるのは、3県の水田農業推進協議会において農林水産省と協議の上、16年度から18年度までの水田飼料作物生産振興事業の実施に伴い発生した利息を耕畜連携水田活用資金へ繰り入れているためである。
注(2)  収入額合計欄の「その他」は、地域水田農業推進協議会から都道府県水田農業推進協議会への返還金及び運用益である。

b 家畜導入特別事業
 家畜導入特別事業(22年度末の地方基金数は190)は、肉用牛資源の維持・拡大等を図るため、農林水産省及び都道府県からの補助金等を財源として市町村に造成されたものである。そして、市町村は、本基金を原資として肉用繁殖雌牛を購入し、肉用繁殖雌牛を導入しようとする満60歳以上の畜産業に従事する者等(以下「導入対象者」という。)に対して一定期間(5年間又は3年間)貸し付け、貸付期間の終了時に導入対象者に譲渡している。本基金は、譲渡の際に導入対象者から納付される譲渡代金を基金に繰り入れ、再び貸付対象牛の購入費用に充てる回転型により運営されている。
 本基金の18年度から22年度までの各年度末における資金保有額(被災4県のうち岩手県、宮城県及び福島県に係る22地方基金を除いた168地方基金の計)の推移は図表104 のとおりであり、本事業は17年度末で農林水産省の事業としては終了することとされ、国庫補助金相当額は23年度末までに順次国庫に返還するとされていることから資金保有額は減少している。18年度から22年度までに返還された国庫補助金相当額は計16億7826万円であり、市町村は22年度末の資金保有額と貸付残高を合わせた基金総額38億9333万円のうち国庫補助金相当額を23年度末までに国庫に返還することになっている。

図表104 家畜導入特別事業の資金保有額等(168地方基金の合計額)の推移

(単位:千円)

年度
項目
平成18年度 19年度 20年度 21年度 22年度
期首資金保有額 2,716,230 1,922,868 1,754,728 1,894,877 2,003,349
収入額合計 1,144,717 928,129 963,132 913,669 833,430
  補助金 - - - - -
その他 1,144,717 928,129 963,132 913,669 833,430
支出額合計 1,938,079 1,096,268 822,984 805,198 927,905
  事業実績額 196,678 341,409 358,173 318,990 245,864
補助金返還金 683,106 317,707 215,558 211,452 250,439
その他 1,058,293 437,151 249,252 274,755 431,601
基金総額 6,252,287 5,592,642 5,069,834 4,563,839 3,893,339
  期末資金保有額 1,922,868 1,754,728 1,894,877 2,003,349 1,908,873
貸付残高 4,329,419 3,837,914 3,174,956 2,560,490 1,984,465
注(1)  本図表には、被災4県のうち岩手県、宮城県及び福島県に係る22地方基金は含まれていない。
注(2)  収入額合計欄の「その他」は、譲渡代金、運用益等である。

(イ) 機構所管基金の9基金

a 肉用子牛生産者積立金

 肉用子牛生産者積立金(22年度末の地方基金数は47)は、牛肉の輸入自由化により影響を受ける肉用子牛生産者に対し、肉用子牛の平均売買価格が合理化目標価格を下回った場合に、その差額を補填する肉用子牛生産者補給金を交付するため、機構及び都道府県からの助成金並びに肉用子牛生産者からの負担金を財源として、指定協会に造成されたものである。そして、本基金は、5年間の業務対象年間を設定し、業務対象年間が終了する都度、機構、都道府県及び肉用子牛生産者に基金の残額を返還することとされている(詳細については参照 )。
 本基金の18年度から22年度までの各年度における事業実績額(被災4県に係るものを除いた43地方基金の計)をみると、図表105 のとおり、18、19両年度は肉用子牛の価格が比較的堅調に推移したことなどから0円となっているが、20年度以降は景気低迷等を背景とした牛の枝肉価格の低迷等の影響で肉用子牛の価格が下落したことから、22年度は5億2123万円となっている(品種別の詳細は図表24 参照)。また、同期間の各年度末における資金保有額(被災4県に係るものを除いた43地方基金の計)をみると、第4業務対象年間(17年度から21年度まで)中の18年度から20年度までは増加し、業務対象年間が終了して残額を返還した21年度末には0円となっていて、第5業務対象年間の初年度となる22年度末は59億3131万円となっている。

図表105 肉用子牛生産者積立金の資金保有額等(43地方基金の合計額)の推移

(単位:千円)

年度
項目
平成18年度 19年度 20年度 21年度 22年度
期首資金保有額 7,650,029 15,518,244 23,147,833 30,935,946 -
収入額合計 7,871,703 7,631,556 7,797,695 8,047,158 6,454,520
  補助金等 3,931,040 3,789,368 3,835,303 3,936,296 3,218,270
その他 3,940,662 3,842,187 3,962,392 4,110,862 3,236,250
支出額合計 3,488 1,967 9,582 38,983,105 523,208
  事業実績額 - - 7,558 89,681 521,239
補助金等返還金 - - - 19,420,751 -
その他 3,488 1,967 2,024 19,472,672 1,968
期末資金保有額 15,518,244 23,147,833 30,935,946 - 5,931,312
注(1)  本図表には、被災4県に係る4地方基金は含まれていない。
注(2)  収入額合計欄の「その他」は、肉用子牛生産者から納付された負担金、都道府県から交付を受けた生産者積立助成金等である。

b 運営特別基金

 運営特別基金(22年度末の地方基金数は46)は、補給金制度に係る業務を行う指定協会の運営基盤の強化を図るため、振興基金協会を通じた機構からの補助金等を財源として指定協会に造成されたものである。そして、本基金は、基金の運用益を機構理事長の承認を受けて補給金制度に係る業務の管理運営に要する経費に充てることができる運用型により運営されている。
 本基金の18年度から22年度までの各年度末における資金保有額(46地方基金の計)をみると、図表106 のとおりおおむね同額で推移している。

図表106 運営特別基金の資金保有額等(46地方基金の合計額)の推移
(単位:千円)

年度
項目
平成18年度 19年度 20年度 21年度 22年度
期首資金保有額 6,576,976 6,571,127 6,581,367 6,588,249 6,589,949
収入額合計 39,517 49,757 56,639 58,272 51,457
  補助金等 - - - - -
その他 39,517 49,757 56,639 58,272 51,457
支出額合計 45,366 39,517 49,757 56,572 58,137
  事業実績額 45,366 39,517 49,757 56,572 58,137
補助金等返還金 - - - - -
その他 - - - - -
期末資金保有額 6,571,127 6,581,367 6,588,249 6,589,949 6,583,269
(注)
 収入額合計欄の「その他」は、運用益である。

c 地域肉用牛肥育経営安定基金

 地域肉用牛肥育経営安定基金(22年度以降は肉用牛肥育経営安定特別基金。22年度末の地方基金数は47)は、牛の枝肉価格の低落等により、粗収益が生産費を下回った場合に生産者に補填金を交付するため、機構からの補助金(20年度までは社団法人中央畜産会を通じた機構からの補助金等、肥育牛の生産者からの積立金等を財源として、肥育牛補補填金を交付する事業を実施する県畜産協会に造成されたものである。そして、本基金は、3年間の業務対象年間を設定し業務対象年間が終了する都度、機構及び生産者に基金の残額を返還することとされている。
 本基金の18年度から22年度までの各年度における事業実績額(47地方基金の計)をみると、図表107 のとおり、配合飼料価格の高騰等により、19年度以降増加し20年度から22年度まではそれぞれ253億9215万円、331億8251万円、380億8962万円となっている。また、同期間の各年度末における資金保有額(47地方基金の計)をみると、16年度から18年度までの業務対象年間の終了に伴い18年度に補助金相当額309億4974万円を機構に返還しているが、19年度から21年度までの業務対象年間においては、20、21両年度に多額の補填金が交付されたことから資金保有額が減少し、業務対象年間の終了に伴う機構への補助金相当額の返還は1億4562万円となっている。22年度から新たな業務対象年間となり、事業の統合による補填の対象範囲の追加により積立金単価が引き上げられたこと、22年度第3、4四半期に肉専用種への補填が行われなかったことから、22年度末の資金保有額は412億7715万円となっている。なお、23年度は積立金単価の見直しにより肉専用種及び交雑種の単価が減額されている。

図表107 地域肉用牛肥育経営安定基金の資金保有額等(47地方基金の合計額)の推移

(単位:千円)

年度
項目
平成18年度 19年度 20年度 21年度 22年度
期首資金保有額 37,321,922 - 11,846,275 8,381,563 2,227,980 -
収入額合計 9,475,911 18,439,646 21,927,461 27,028,930 7,244,506 71,723,547
  補助金等 3,263,941 13,810,881 16,325,409 20,253,393 4,277,365 54,113,376
その他 6,211,970 4,628,764 5,602,051 6,775,536 2,967,140 17,610,170
支出額合計 46,797,833 6,593,370 25,392,173 33,182,512 9,472,487 30,446,388
  事業実績額 396,616 6,593,174 25,392,159 33,182,512 7,702,331 30,387,298
補助金等返還金 30,949,741 195 13 - 145,625 120
その他 15,451,475 - - - 1,624,530 58,970
期末資金保有額 - 11,846,275 8,381,563 2,227,980 - 41,277,158
注(1)  平成22年度の左側は地域肉用牛肥育経営安定基金、右側は肉用牛肥育経営安定特別基金である。
注(2)  収入額合計欄の「その他」は、生産者積立金、都道府県積立金等である。
注(3)  地域肉用牛肥育経営安定基金は、第3業務対象年間(平成19年度から21年度)までは、補填金の交付時期を基準に実績報告書が作成されていたが、22年度を初年度とする第4業務対象年間(肉用牛肥育経営安定特別基金)からは、補填金の交付対象となる肥育牛の出荷時期を基準に実績報告書を作成することに改められたため、第3業務対象年間の最終年度である21年度は22年度第1四半期(22年4月から6月(22年1月から3月までに出荷された肥育牛に係る補填金の交付時期))まで延長された。

d 地域肉豚生産安定基金

 地域肉豚生産安定基金は、豚肉の安定供給と地域の養豚経営の安定的発展のために県畜産協会が自主的に実施している肉豚価格差補填事業(生産者等の積立金により基金を造成し、肉豚の指標価格(注22) が地域保証価格(注23) を下回った場合等に、その差額の全部又は一部の額を生産者に補填金として交付する仕組み)において、補填金の財源である生産者等の積立金に不足が生ずるなどして補填金の交付が困難となった場合に、一定の要件の下で同事業の基金に資金を供給するため、機構からの補助金等を財源として県畜産協会に造成された。そして、22年度には、地域肉豚生産安定基金は廃止され、経営安定の取組として豚枝肉卸売価格の下落時に全国一本化された方法により補填金を交付するため、養豚経営安定対策事業により生産者等の積立金及び機構からの補助金を財源として県畜産協会に地域基金(22年度末の地方基金数は44)が造成された。

(注22)
 肉豚の指標価格  肉豚の実勢価格を表す価格として、食肉卸売市場等において取引される代表的な肉豚について算出される価格
(注23)
 地域保証価格  肉豚の指標価格がこの価格を下回った場合に補填金の交付が行われることとなる価格。原則として都道府県内における肉豚の生産費の動向、需給状況、価格動向その他の経済事情等を考慮して定めるものであるため、都道府県ごとに異なる。

 本基金及び地域基金の18年度から22年度までの各年度末における資金保有額(被災4県に係るものを除いた39地方基金の計)の推移をみると、図表108 のとおり、18、19両年度においては、生産者積立金の不足が生じなかったことから、地域肉豚生産安定基金からの資金供給額である事業実績額は0円となっており資金保有額に大きな変動はなく、19年度末における資金保有額は42億3899万円(補助金等相当額同額)となっていた。
 20、21両年度においては、地域保証価格の水準を引き上げたため生産者積立金の積み増しなどが必要となり地域肉豚生産安定基金からの資金供給額が増加したことから、21年度末における資金保有額は1615万円(補助金等相当額同額)となり、22年度に地域肉豚生産安定基金は廃止され、基金の残額1616万円が機構に返還されている。なお、21年度までの事業実績額は、実際に補填金を交付する別の基金へ地域肉豚生産安定基金から資金供給を行った額であり、生産者が受領した補填金の額とは一致しない。
 22年度においては、地域基金98億4861万円(補助金相当額49億7285万円)を造成したものの、補填金の交付方法を地域基金から行うものと機構が直接行うものとに分けて、これを生産者が選択する方法としたため、22年度における地域基金による補填金の交付実績額は68億1975万円、同年度末の資金保有額は30億2885万円(同15億3004万円)となっている。
 そして、23年度においては、機構が生産者等の負担金を預かり、補填金の交付を機構から直接行う方法に改められたことから、地域基金は廃止され、県畜産協会は基金の残額のうち補助金相当額15億3012万円を機構に返還している。

図表108 地域肉豚生産安定基金の資金保有額等(39地方基金の合計額)の推移

(単位:千円)

年度
項目
平成18年度 19年度 20年度 21年度 22年度
期首資金保有額 4,224,501 4,227,828 4,238,999 3,130,280 -
収入額合計 3,326 11,171 1,209,452 662,241 9,848,616
  補助金等 - - 1,193,905 656,576 4,972,852
その他 3,326 11,171 15,547 5,665 4,875,763
支出額合計 - - 2,318,172 3,776,369 6,819,757
  事業実績額 - - 2,318,172 3,219,731 6,819,757
補助金等返還金 - - - 556,638 -
その他 - - - - -
期末資金保有額 4,227,828 4,238,999 3,130,280 16,152 3,028,858
注(1)  本図表には、被災4県に係る5地方基金は含まれていない。
注(2)  平成22年度末の資金保有額は、地域基金の金額となっている。
注(3)  収入額合計欄の「その他」は、生産者等の積立金、運用益等である。

e 運営基盤強化基金

 運営基盤強化基金(22年度末の地方基金数は44)は、家畜衛生について自衛防疫事業を行う都道府県家畜畜産物衛生指導協会等(以下「県衛指協」という。)の家畜防疫対策等の実施基盤の強化等を図るため、社団法人中央畜産会を通じた機構からの補助金等を財源として県衛指協に造成されたものである。そして、本基金は、基金の運用益を家畜防疫対策に要する経費に充てることができる運用型により運営されている。
 本基金の18年度から22年度までの各年度末における資金保有額(44地方基金の計)をみると、図表109 のとおりおおむね同額で推移している。

図表109 運営基盤強化基金の資金保有額等(44地方基金の合計額)の推移
(単位:千円)

年度
項目
平成18年度 19年度 20年度 21年度 22年度
期首資金保有額 1,703,726 1,703,727 1,703,727 1,703,727 1,702,684
収入額合計 7,742 11,568 12,514 12,425 10,969
  補助金等 - - - - -
その他 7,742 11,568 12,514 12,425 10,969
支出額合計 7,741 11,568 12,514 13,468 12,792
  事業実績額 7,741 11,568 12,514 13,468 12,792
補助金等返還金 - - - - -
その他 - - - - -
期末資金保有額 1,703,727 1,703,727 1,703,727 1,702,684 1,700,861
(注)
 収入額合計欄の「その他」は、運用益である。

f 拡大基金

 拡大基金(22年度末の地方基金数は45)は、負債の償還に支障を来している畜産農家に対して低利資金の融資による既往負債の借換措置を講ずることにより、負債の償還圧力を軽減し、自力再生を図るなどのため、県基金協会において、畜産農家の借入金の償還に要する資金(畜産特別資金)に係る代位弁済等に充てることを目的として、都道府県、農業協同組合等からの出資金等と社団法人中央畜産会を通じた機構からの補助金等により農業近代化資金等に係る代位弁済等に充てるための基金を拡大強化した場合、当該出資金等と補助金等により拡大強化された基金のうち増加した部分である(参照 )。
 本基金の18年度から22年度までの各年度における収入支出及び各年度末における資金保有額(被災4県に係るものを除いた41地方基金の計)をみると、図表110 のとおり、支出額のうちの代位弁済額は大幅に減少して、収入額のうちの求償権の回収金は横ばいとなっているが、支出額合計が収入額合計を上回っていることから資金保有額は減少している。また、同期間の各年度末における資金保有額(資金保有額から代位弁済額を減じて受領保険金及び求償権の回収金を加えた額がマイナス表示の額となっている基金を除いた計)も毎年度減少している。なお、本基金による事業は22年度に終了し、県基金協会は23年度に基金の残額のうち補助金等相当額9億7203万円を機構に返還している。

図表110 拡大基金の資金保有額等(41地方基金の合計額)の推移
(単位:千円)

年度
項目
平成18年度 19年度 20年度 21年度 22年度
期首資金保有額 4,090,820 3,729,080 3,263,451 2,806,297 2,815,954
収入額合計 1,354,785 1,783,041 1,767,735 732,623 439,605
  受領保険金 1,201,120 1,544,161 1,403,078 496,696 314,559
求償権の回収金 33,360 123,023 148,000 134,325 125,045
その他 20,305 115,857 216,656 101,601 -
支出額合計 1,716,525 2,248,670 2,224,889 722,966 468,122
  代位弁済額 1,705,545 2,191,140 2,021,449 722,966 468,122
その他 10,980 57,530 203,440 - -
期末資金保有額 3,729,080 3,263,451 2,806,297 2,815,954 2,787,436
  マイナス表示の基金以外注(3) 29基金 28基金 25基金 29基金 29基金
4,567,713 4,321,054 4,126,403 4,011,975 3,928,654
期末債務保証残高 41,036,397 35,763,306 30,829,552 23,407,989 18,295,073
期末求償権残高 9,631,164 10,414,724 8,075,771 7,038,617 7,000,887
求償権の償却額 819,483 1,015,061 3,913,604 1,340,139 378,589
注(1)  本図表には、被災4県に係る4地方基金は含まれていない。
注(2)  収入額合計欄の「その他」は、補助金、出資金等である。
 「マイナス表示の基金以外」は、「期末資金保有額-代位弁済額+受領保険金+求償権の回収金≧0円」の基金である。

g 酪農ヘルパー利用拡大基金

 酪農ヘルパー利用拡大基金(21年度末の地方基金数は26)は、酪農ヘルパーの利用拡大を図るため、社団法人酪農ヘルパー全国協会(以下「全国協会」という。)を通じた機構からの補助金等を財源として、酪農業協同組合等に造成されたものであり、12年度から21年度まで基金事業として実施されている。そして、酪農業協同組合等は、農家が休日を確保する場合、農家に突発事故が発生した場合等に、当該都道府県に所在し農家に代わって酪農ヘルパーが家畜の飼養管理を行う事業(以下「酪農ヘルパー事業」という。)を実施する組織(以下「利用組合」という。)に対して酪農ヘルパーの利用日数の増加実績に応じた農家の利用料金を軽減するための補助金(以下「利用拡大補助金」という。)等の交付を行っている。
 本基金の18年度から21年度までの各年度における事業実績額(26地方基金の計)の推移をみると、図表111 のとおり21年度は他の年度に比べて増加している。これは、ほとんどの酪農業協同組合等が21年度に利用拡大補助金の補助単価を引き上げたことと、酪農ヘルパーの利用日数の実績が増加したことによる。なお、本基金による事業は21年度に終了し、酪農業協同組合等は21、22両年度にそれぞれ基金の残額13万円及び5578万円を機構に返還している。

図表111 酪農ヘルパー利用拡大基金の資金保有額等(26地方基金の合計額)の推移

(単位:千円)

年度
項目
平成18年度 19年度 20年度 21年度 22年度
期末資金保有額 99,397 63,847 64,739 68,357 55,710
収入額合計 83,750 116,935 122,370 140,313 71
  補助金等 83,439 116,251 120,615 139,839 -
その他 311 684 1,754 474 71
支出額合計 119,301 116,043 118,752 152,961 55,781
  事業実績額 118,639 116,043 115,314 152,826 -
補助金等返還金 661 0 3,438 134 55,781
その他 - - - - -
期首資金保有額 63,847 64,739 68,357 55,710 -
(注)
 収入額合計欄の「その他」は、運用益及び利用組合から酪農業協同組合等への返還金である。

h 都道府県事業基金

 都道府県事業基金(22年度末の地方基金数は46)は、酪農ヘルパー事業の円滑な推進を図るため、全国協会を通じた機構及び都道府県からの補助金等を財源として酪農業協同組合等に造成されたものである。そして、本基金は、酪農業協同組合等が行う酪農ヘルパー事業の普及・啓発のための都道府県推進会議の開催等に要する経費や、利用組合が行う活動に対しての補助金に充てられている。
 本基金の18年度から22年度までの各年度における事業実績額(被災4県に係るものを除いた42地方基金の計)をみると、図表112 のとおり5億0968万円から6億1196万円までの間で推移している。また、同期間の補助金等返還金(被災4県に係るものを除いた42地方基金の計)をみると、21年度に基金の見直しを実施したことにより、酪農業協同組合等は22年度に補助金等相当額20億8075万円を機構に返還している。

図表112 都道府県事業基金の資金保有額等(42地方基金の合計額)の推移
(単位:千円)

年度
項目
平成18年度 19年度 20年度 21年度 22年度
期首資金保有額 9,312,873 8,492,191 8,025,708 7,549,997 7,105,133
収入額合計 49,783 65,153 97,186 103,964 106,016
  補助金等 1,807 300 - - 145
その他 47,975 64,853 97,186 103,964 105,871
支出額合計 870,465 531,636 572,897 548,827 2,876,823
  事業実績額 509,686 521,148 557,778 542,054 611,967
補助金等返還金 - - - - 2,080,759
その他 360,779 10,488 15,119 6,773 184,097
期末資金保有額 8,492,191 8,025,708 7,549,997 7,105,133 4,334,326
注(1)  本図表には、被災4県に係る4地方基金は含まれていない。
注(2)  収入額合計欄の「その他」は、都道府県等負担分及び運用益である。

i 加工原料乳生産者積立金

 加工原料乳生産者積立金(22年度末の地方基金数は10)は、加工原料乳生産者補給金制度(注24) を補完し、加工原料乳の価格が低下した時に補填金を交付するなどの事業を実施するため、生産者からの拠出金及び社団法人中央酪農会議を通じた機構からの補助金等を財源として都道府県知事又は農林水産大臣の指定を受けた生乳生産者団体(以下「指定生乳生産者団体」という。)に造成されたものである。
 本基金の18年度から22年度までの各年度末における資金保有額(10地方基金の計)の推移をみると、実施要綱において、指定生乳生産者団体に積み立てられる上記補助金等の総額の上限が定められているため、全指定生乳生産者団体の各年度末における資金保有額の総額は、図表113 のとおり同期間を通して78億円前後となっている。

 加工原料乳生産者補給金制度  酪農経営の安定と牛乳・乳製品の安定供給を図るため、飲用向けに比べて価格が安いバターや脱脂粉乳等の乳製品の原料となる生乳(加工原料乳)を販売した生産者に対して、生産費の変動等に基づき定められる生産者補給金の単価に都道府県知事又は農林水産大臣が認定する加工原料乳の数量を乗じて得た額を加工原料乳生産者補給交付金として、指定生乳生産者団体を通じて交付する制度


図表113 加工原料乳生産者積立金の資金保有額等(10地方基金の合計額)の推移

(単位:千円)

年度
項目
平成18年度 19年度 20年度 21年度 22年度
期首資金保有額 8,151,404 7,811,870 7,826,967 7,708,581 7,816,433
収入額合計 3,254,990 3,159,528 2,976,550 3,173,010 2,882,612
  補助金等 2,431,266 2,346,932 2,206,886 2,333,721 2,150,069
その他 823,724 812,595 769,663 839,288 732,542
支出額合計 3,594,524 3,144,431 3,094,936 3,065,158 2,916,586
  事業実績額 3,336,137 2,633,628 - - -
補助金等返還金 187,072 358,984 2,309,738 2,288,944 2,174,881
その他 71,313 151,818 785,197 776,214 741,705
期末資金保有額 7,811,870 7,826,967 7,708,581 7,816,433 7,782,458
(注)
 収入額合計欄の「その他」は、生産者からの拠出金及び運用益である。

エ 基金保有倍率

 個々の基金は、設置目的、事業内容、利用対象者、基金規模等を異にするため、それぞれの資金保有量を同一の尺度で比較しにくいという面がある。そこで、本報告においては、第1次報告 と同様に、各基金を統一的に比較するために、直近の資金保有額を直近3年間(20年度から22年度まで)の平均事業実績額で除して得た数値である基金保有倍率を用いることとする。基金保有倍率は、事業実績額からみて資金保有量がどの程度の水準にあるかを表そうとするもので、この数値が1に近い基金ほど、単年度当たりの事業実績に対応した基金規模となっていると考えられる。
 前記11基金のうち、基金保有倍率の算定対象となる基金は、次の〔1〕 から〔3〕 までの5基金を除いた6基金(国所管基金の家畜導入特別事業に係る31地方基金、機構所管基金の肉用子牛生産者積立金に係る42地方基金、運営特別基金に係る46地方基金、運営基盤強化基金に係る44地方基金、拡大基金に係る21地方基金及び都道府県事業基金に係る42地方基金)となっている。

〔1〕 21年度に事業を終了した2基金(国所管基金の耕畜連携水田活用資金、機構所管基金の酪農ヘルパー利用拡大基金)
〔2〕 22年度に事業内容、制度等が変更された2基金(機構所管基金の地域肉用牛肥育経営安定基金及び地域肉豚生産安定基金)
〔3〕 直近の3年間において事業実績額がない1基金(機構所管基金の加工原料乳生産者積立金)

 22年度末の基金保有倍率の状況をみると、図表114 のとおり、10倍以上のものは家畜導入特別事業に係る4地方基金、肉用子牛生産者積立金に係る42地方基金、運営特別基金に係る46地方基金、運営基盤強化基金に係る44地方基金、拡大基金に係る2地方基金及び都道府県事業基金に係る20地方基金となっている。また、100倍以上のものは、肉用子牛生産者積立金に係る7地方基金、運営特別基金に係る33地方基金及び運営基盤強化基金に係る31地方基金となっている。これらのうち、運営特別基金及び運営基盤強化基金は運営形態が運用型であるため、近年の低金利状況下においては基金保有倍率が100倍以上となっているものが多い。
 なお、直近の3年間において事業実績額がないため基金保有倍率が算定できないものは、前記〔3〕 に係る10地方基金のほか、家畜導入特別事業に係る137地方基金、肉用子牛生産者積立金に係る1地方基金及び拡大基金に係る20地方基金となっている。

図表114 基金保有倍率(平成22年度末)
(単位:地方基金)

区分 番号 基金名 地方基金数 運営形態 基金保有倍率が算定できるもの 基金保有倍率が算定できないもの
  1倍未満 1倍以上5倍未満 5倍以上10倍未満 10倍以上     基金閉鎖 制度変更 事業実績額なし
100倍以上
国所管基金 1 耕畜連携水田活用資金注(1) 43 取崩 0 0 0 0 0 0 43 43 0 0
2 家畜導入特別事業注(2) 168 回転 31 4 17 6 4 0 137 0 0 137
31 4 17 6 4 0 180 43 0 137
機構所管基金 1 肉用子牛生産者積立金 43 取崩 42 0 0 0 42 7 1 0 0 1
2 運営特別基金 46 運用 46 0 0 0 46 33 0 0 0 0
3 地域肉用牛肥育経営安定基金 47 取崩 0 0 0 0 0 0 47 0 47 0
4 地域肉豚生産安定基金 39 取崩 0 0 0 0 0 0 39 0 39 0
5 運営基盤強化基金 44 運用 44 0 0 0 44 31 0 0 0 0
6 拡大基金 41 保有 21 1 15 3 2 0 20 0 0 20
7 酪農ヘルパー利用拡大基金注(1) 26 取崩 0 0 0 0 0 0 26 26 0 0
8 都道府県事業基金 42 取崩 42 0 5 17 20 0 0 0 0 0
9 加工原料乳生産者積立金 10 取崩 0 0 0 0 0 0 10 0 0 10
195 1 20 20 154 71 143 26 86 31
合計 226 5 37 26 158 71 323 69 86 168
注(1)  耕畜連携水田活用資金及び酪農ヘルパー利用拡大基金に係る地方基金数は平成21年度末のものである。
注(2)  家畜導入特別事業は平成17年度末で農林水産省の事業が終了していることから、137地方基金は、直近の3年間において事業実績額がないため基金保有倍率が算定できない。しかし、31地方基金において18年度以降も事業を実施している(参照 )ため基金保有倍率を算定した。

(2)地方基金に関する個別の事態

ア 基金事業の実施や基金管理状況等報告書の作成に問題があったもの

(ア) 耕畜連携水田活用資金

a 耕畜連携水田活用対策事業の概要

 耕畜連携水田活用対策事業は、19年度から21年度まで実施された事業で、地域の実情に応じた水田における飼料作物の生産を推進するため、都道府県水田農業推進協議会が農林水産省から補助金の交付を受けて基金(耕畜連携水田活用資金)を造成し、農業協同組合、農家等が行う生産振興助成事業及び取組面積助成事業の2事業の取組に対して助成金を交付するものである(43道府県水田農業推進協議会等、43地方基金、21年度末資金保有額7251万円)。このうち、生産振興助成事業は、都道府県水田農業推進協議会が事業主体となり、共同で利用する収穫機械等を導入するなどの取組に対して助成金を交付する事業である。また、取組面積助成事業は、地域水田農業推進協議会(以下「地域協議会」という。)が事業主体となり、地域の水田状況に適した飼料作物を生産するなどの取組を実施した水田の面積に応じて助成金を交付する事業である(図表115 参照)。

図表115  耕畜連携水田活用対策事業における補助金等の流れ

図表115耕畜連携水田活用対策事業における補助金等の流れ

 上記2事業の資金の管理については、実施要綱等において、都道府県水田農業推進協議会は、補助金の交付を受けて造成した基金に生産振興助成事業勘定と取組面積助成事業勘定の2つの勘定を設けて、他の事業に係る経理と区分して整理するとされており、資金の流用については、生産振興助成事業勘定から取組面積助成事業勘定への流用を行ってはならないとされている(取組面積助成事業を実施するために地域協議会に交付した額を必要に応じて他の地域協議会に流用することはできるとされている。)。また、資金の繰越しについては、年度の終了時に資金に余剰が生じた場合は、勘定ごとに翌年度に繰り越すとされている。

b 検査の結果(繰越金を他勘定の支出に充てていたもの)

 43道府県水田農業推進協議会等から特別調書等の提出を受けて分析するとともに、23道県の水田農業推進協議会等において会計実地検査を行ったところ、生産振興助成事業を行うとして生産振興助成事業勘定で管理していた資金を、事業を実施しなかったなどのため次期繰越金として処理した後、農林水産省と協議した上で、翌年度に当該繰越金を取組面積助成事業勘定の支出に充てている事態が11府県(注25) の水田農業推進協議会等で見受けられた。このうち2県(注26) の水田農業推進協議会等は、翌年度に再び生産振興助成事業を行うこととして農林水産省から補助金の交付を受けていたが、このような取扱いは、翌年度への繰越しが容易であるという基金事業の利点がいかされていないと考えられる。

(注25)
 11府県  京都府、秋田、茨城、栃木、新潟、石川、静岡、兵庫、鳥取、佐賀、熊本各県
(注26)
 2県  新潟、鳥取両県

 上記について事例を示すと、次のとおりである。

<事例5>

 新潟県米政策改革推進協議会は、耕畜連携水田活用対策事業を実施するため、平成19年度から21年度までに、農林水産省から補助金計1億5500万円の交付を受けて基金を造成している。
 検査したところ、同協議会は、19年度に交付を受けた補助金5303万円のうち生産振興助成事業勘定で管理していた652万円を、同年度中に生産振興助成事業を実施しなかったことから次期繰越金として処理していた。そして、20年度は、次期繰越金として処理した652万円全額を取組面積助成事業勘定の支出に充てる一方で、改めて生産振興助成事業を行うとして生産振興助成事業分650万円を含めた補助金5236万円の交付を受けており、生産振興助成事業勘定で管理していた650万円については同年度中に支出していた。

(イ) 家畜導入特別事業

 a 家畜導入特別事業の概要

 家畜導入特別事業は、昭和50年度から平成22年度まで実施された事業で、肉用牛資源の維持・拡大等を図るため、市町村が事業主体となり、農林水産省及び都道府県の補助金等により造成した基金を原資として肉用繁殖雌牛を購入し、導入対象者に対して一定期間(5年間又は3年間)貸し付け、貸付期間の終了時に導入対象者に譲渡するものである。そして、基金は、譲渡の際に導入対象者から納付される譲渡代金を繰り入れ、再び貸付対象牛の購入費用に充てる回転型により運営されている。また、貸付期間中に導入家畜が疾病等により廃用処分となった場合等は、相当額を導入対象者に交付することが認められている(190市町村、190地方基金、被災4県のうち岩手県、宮城県及び福島県に係る22市町村を除いた22年度末資金保有額19億0887万円)。
 同事業は「家畜導入事業実施要領の制定について」(平成18年17生畜第3060号農林水産省生産局長通知)において、18年3月31日をもって終了となること、これに伴う対応として、市町村は17年度末に基金に残額を有する場合は、残額のうち国庫補助金相当額(注27) を都道府県知事の指示に従い18年度中に国庫に納付すること、19年度以降は、譲渡代金を基金に繰り入れた場合に毎年度末の基金残額のうち国庫補助金相当額を都道府県知事の指示に従い遅滞なく国庫に納付することとされている。

 国庫補助金相当額  家畜導入特別事業に係る基金の造成は補助金の交付により行われているが、通知文書における文言では国の交付金相当額となっている。

b 検査の結果

(a) 譲渡代金の滞納状況

 譲渡代金は、貸付期間の終了時に納付することとされているが、譲渡代金の滞納者が、22年度末において15県の96市町村で1,089人見受けられ、その滞納金額は計5億9260万円となっていた。

(b) 譲渡代金を無断で不納欠損処理していたもの

 譲渡代金の滞納金額を農林水産省及び県に報告することなく不納欠損として処理していて基金の債権管理が適切を欠いている事態が福島県の1村において見受けられ、その不納欠損額は171万円となっていた。

(c) 滞納者に対して他の事業で貸付けを行っていたもの

 農業協同組合が畜産農家に貸し付けるための繁殖雌牛を購入する場合には、機構が振興基金協会等を通じて実施する肉用牛繁殖基盤強化総合対策事業等により、1頭当たり4万円又は6万円の奨励金が農業協同組合に交付されることになっている。これにより、農業協同組合から繁殖雌牛の貸付けを受けた畜産農家は、貸付期間終了後、購入額から奨励金相当額を減額した額で貸付対象牛の譲渡を受けることができることになる。上記の事業等の実施要綱等では、市町村が事業主体として実施する家畜導入特別事業において譲渡代金を滞納している者に対する新規貸付けが禁止されている。しかし、大分、沖縄両県の2市町において、7人の滞納者に対して、上記の奨励金の対象となった繁殖雌牛19頭(奨励金交付額計80万円)が貸し付けられている事態が見受けられた(参照 )。

(d) 基金の目減りによる国庫補助金相当額の国庫納付額の減少

 農林水産省の補助金により各事業主体が造成した基金の額と国庫への最終納付期限である24年3月31日までに納付される額を比較すると、国庫に納付される額は、次の要因により造成した基金の額よりも少額になる可能性がある。
〔1〕 実施要綱等において、導入家畜から貸付期間中に生産された肉用育成雌牛で譲渡代金を納付したり、貸付期間中に導入家畜を疾病等により廃用処分にしたりすることを認めていることにより、基金の目減りが発生すること
〔2〕 前記の(a)及び(b)のように滞納や不納欠損があること
 上記の〔2〕 について、事業主体は、基金の目減りが発生しないよう国庫補助金相当額分を立て替えて国庫に納付するとしているが、今後の納付状況について注視する必要がある。

(e)鹿児島県の状況

 鹿児島県下の31市町村は、家畜導入特別事業が終了した18年3月31日以降においても新規に繁殖雌牛の貸付けを実施しており、18年度から22年度までにその購入費用として計14億円を充てている。そして、18年3月31日以降新規の貸付けは実施していないものの、事業が継続中であるとしている7市町村と合わせて同県下の38市町村において、18年度以降も基金の残額のうちの国庫補助金相当額を国庫に納付していない状況である(24年2月21日現在)。会計検査院は、引き続き国庫への最終納付期限である24年3月31日までの納付状況等を注視していくこととする。

(ウ) 拡大基金

a 拡大基金の概要

 機構は、負債の償還に支障を来している畜産農家に対して、低利資金の融資による既往負債の借換措置を講ずることにより、負債の償還圧力を軽減し、自力再生を図るなどのため、社団法人中央畜産会に補助金等を交付している。そして、機構から交付された補助金等により社団法人中央畜産会は、畜産農家の借入金の償還に要する資金(畜産特別資金)に係る代位弁済等に充てることを目的として、都道府県、農業協同組合等からの出資金等により農業近代化資金等に係る代位弁済等に充てるための基金を拡大強化する県基金協会に対して補助金を交付する畜産特別資金融通円滑化事業を実施している(参照 )。
 そして、実施要綱等において、県基金協会は上記の出資金等と補助金により拡大強化された基金のうち増加した部分(拡大基金)については、他の基金の部分と区別して管理するものとされており、毎年度、当該年度の管理状況等を取りまとめた基金管理状況等報告書を社団法人中央畜産会会長に提出するものとされている。

b 検査の結果(基金管理状況等報告書が正確に作成されていなかったもの)

 23県基金協会において検査したところ、いずれの県基金協会においても、21年度までの基金管理状況等報告書において、保証に付している借入金の件数、金額等の集計誤りが見受けられ、基金管理状況等報告書が正確に作成されていなかった。
 なお、畜産特別資金融通円滑化事業は22年度で終了となることから、各県基金協会は、23年度以降に拡大基金の残額のうち補助を受けた割合に応じて算出される額を機構に返還する必要があるため、実地検査の時点で、昭和57年度の拡大基金設置当初からの保証債務の確認作業を行い、基金管理状況等報告書の見直しを行っていたところであった。その後、各県基金協会は、平成22年度の基金管理状況等報告書を作成しているが、上記見直しの結果、20年度末資金保有額についてみると、被災4県を除く41県基金協会のうち、資金保有額から代位弁済額を減じて受領保険金及び求償権の回収金を加えた額がマイナス表示の額となっている県基金協会を除く合計額は41億8369万円(28県基金協会)から41億2640万円(25県基金協会)へと5729万円減少することとなった。
 そして、被災4県を除く41県基金協会における拡大基金の22年度末資金保有額は、資金保有額がマイナス表示の額となっている12県基金協会を除く29県基金協会で39億2865万円となっている。なお、県基金協会は23年度に基金の残額のうち補助金等相当額9億7203万円を機構に返還している。

(エ) 都道府県事業基金

a 酪農ヘルパー事業円滑化対策事業の概要

 酪農ヘルパー事業円滑化対策事業は、2年度から実施されている事業で、酪農後継者等の円滑な就農と酪農経営の安定的発展を図るため、酪農業協同組合等において、全国協会を通じた機構及び都道府県からの補助金等の交付を受けて基金(都道府県事業基金)を造成し、利用組合の育成・定着や熟練した酪農ヘルパーの確保・育成等を推進する事業を実施するものである(46酪農業協同組合等、46地方基金、被災4県に係るものを除いた22年度末資金保有額43億3432万円。)

b 検査の結果

(a) 補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの

 本基金について検査した結果、平成22年度決算検査報告に不当事項「酪農ヘルパー事業円滑化対策事業の実施に当たり、補助金により造成した基金が過大に使用されていたもの」を掲記した。その概要は、次のとおりである。

 都道府県知事の指定する団体である社団法人福島県酪農ヘルパー協会(以下「県協会」という。)は、県協会と7利用組合(平成16年度は12利用組合)が16年度から20年度までの間に、酪農ヘルパー事業円滑化対策事業を実施するための事業費計108,131,940円の財源の一部として、県協会が造成した基金(以下「県事業基金」という。)計106,210,000円(機構の補助金相当額53,105,000円)を取り崩したとして、全国協会に実績報告書を提出していた。
 しかし、県協会は、上記実績報告書の作成に当たり、各利用組合の支払実績額を確認することなく、各利用組合に交付した当初の額をそのまま記載していたり、取り崩した県事業基金の一部を各利用組合に交付していなかったのに交付したこととしていたり、県協会が実施した研修費に事業の対象とならない観光施設の入場料等を含めていたりなどしていて、実績報告書は実績を反映したものになっておらず、本件補助事業に係る経理が適正を欠いていた。
 このため、県協会及び各利用組合の支出に係る証ひょう類、決算資料等を提出させた上で、これらの書類から本事業の事業費を精査したところ、適正な補助対象事業費は計91,151,474円となり、前記の県事業基金の取崩額計106,210,000円との差額計15,058,526円が県事業基金から過大に取り崩されており、これに係る機構の補助金相当額計7,529,264円が不当と認められる。

(b) 実践研修補助金の交付の効果が十分に発現していないもの

 北海道農業協同組合中央会等19地方畜産団体は、酪農ヘルパーの育成等を推進するため、各道府県内の利用組合が実施する酪農ヘルパーの実践研修に要する経費として、利用組合の実績報告書に基づき、18年度計7780万円、19年度計7118万円、20年度計6750万円、21年度計5119万円、22年度計4481万円、合計3億1250万円の補助金(以下「実践研修補助金」という。)を交付していた。
 上記の実践研修補助金について検査したところ、図表116 のとおり、18年度から22年度までに実践研修補助金の交付対象となった者(23年3月1日時点で実践研修期間を継続している者を除く。)395人のうち、23年4月1日時点で207人(これに係る実践研修補助金交付額1億3103万円)が退職しており、このうち74人(これに係る実践研修補助金交付額3842万円)は実践研修期間終了後90日に満たない間に退職していた。このような状況は、実践研修補助金の交付の効果が十分に発現していないと認められる。

図表116 実践研修補助金交付対象者の退職状況
(単位:人、千円)

実践研修終了後退職までの経過日数 90日未満 90日以上 180日未満 180日以上 365日未満 365日以上 730日未満 730日以上
退職者数 74 23 35 46 29 207
上記退職者に係る実践研修補助金交付額 38,423 16,500 25,108 33,230 17,775 131,037
(注)
 本図表には、被災4県に所在する4地方畜産団体のものは含まれていない。

イ 基金の運用益により事業を実施しているため、近年の低金利の状況下において、基金事業として実施する必然性が乏しい状況になっていたもの

(ア) 運営特別基金及び運営基盤強化基金の概要

 運営特別基金は、補給金制度に係る業務を行う指定協会の運営基盤の強化を図るため、振興基金協会を通じた機構からの補助金等を財源として46指定協会に造成されたものである(22年度末資金保有額65億8326万円)。
 また、運営基盤強化基金は、家畜衛生について自衛防疫事業を行う県衛指協の家畜防疫対策等の実施基盤の強化等を図るため、社団法人中央畜産会を通じた機構からの補助金等を財源として44県衛指協に造成されたものである(22年度末資金保有額17億0086万円)。
 両基金は、基金の運用益に相当する額の範囲内で、機構理事長の承認を受けて支出する経費に充てる運用型の基金となっている。

(イ) 検査の結果

 両基金について検査した結果、平成22年度決算検査報告に意見を表示し又は処置を要求した事項「公益法人に補助金を交付して設置造成させている運用型の基金が保有する資金について有効活用を図るよう改善の処置を要求したもの 」を掲記した。その概要は、次のとおりである。

 機構の補助金の交付を受けて実施される事業には、補助金の交付を受けた地方畜産団体が、当該補助金を財源として基金を造成しているものがある。このうち運用型の基金である運営特別基金及び運営基盤強化基金を検査したところ、近年の低金利状況下において、両基金の運用益が少額になっていることなどにより多額の資金を保有して基金事業として実施する必然性が乏しい状況になっていて、運用益を事業の安定的な財源にするという基金の役割が著しく低くなっているのに、両基金に多額の資金が保有されていた。
 したがって、農林水産省及び機構において、両基金に係る補助金相当額を国又は機構に返還させた上で、これまで両基金が充てられていた経費の性質に鑑み必要に応じて年度ごとに補助金等を交付することとするなどして、財政資金の有効活用を図るよう処置を講ずる要がある。

(3) 基金の見直し、基本的事項の公表等

ア 基金に関する基準

 18年8月に、国からの補助金等の交付により造成した基金を保有する法人(独立行政法人、特殊法人、認可法人及び共済組合を除く。以下「基金法人」という。)が基金により実施している事業に関して、所管府省が補助金交付要綱等に基づく指導監督を行う場合の基準として、「補助金等の交付により造成した基金等に関する基準」(以下「国基金基準」という。)が閣議決定された。国基金基準は、基金法人が保有している基金のうち、当該基金法人において2か年度以上にわたり特定の事業を実施していくための基金を対象としている。
 一方、機構は、国基金基準の策定等を踏まえて、19年3月に、機構からの補助金の交付により造成した基金の管理に関する指導の基準として、「畜産業振興事業の実施のために独立行政法人農畜産業振興機構からの補助金の交付により造成した基金の管理に関する基準」(平成19年18農畜機第4545号)を定めており、同基準では、畜産業振興事業の事業実施主体が機構から直接交付を受けた補助金を財源として保有している基金であって、2か年度以上にわたり畜産業振興事業を実施していくための基金を対象としていた。その後、機構は、20年12月に同基準を改正し(平成20年20農畜機第3757号。以下、改正した基準を「機構基金基準」という。)、その対象を畜産業振興事業の事業実施主体等(機構から事業実施主体を経由して間接的に補助金を受けて基金を造成し、畜産業振興事業を実施する者を含む。)が機構からの補助金を財源として保有している基金であって、2か年度以上にわたり畜産業振興事業を実施していくための基金とした。
 これらの基準においては、基金の見直し、基本的事項の公表等について、以下の事項等が規定されている。

(ア) 基金の見直し

a 見直しの時期等

 団体(国基金基準における基金法人、機構基金基準における事業実施主体等をいう。「第22(3)基金の見直し、基本的事項の公表等」において以下同じ。)は、国所管基金については少なくとも5年に1回、機構所管基金については3年に1回、定期的な見直しを行うこと
 そして、団体は、実施した見直しの概要及び次回見直しの時期について、ホームページへ掲載するなど適切な手段により公表すること

b 基金の保有に関する基準

 団体は、定期的な見直しの際に、基金事業の今後の見通し又はこれまでの実績からみて基金の規模が過大となっていないかなどの状況を客観的に把握するために、「基金の保有割合(基金事業に要する費用に対する保有基金額等の割合)」を合理的な事業見通し又は実績を用いて算出すること
 そして、基金の使途、運営形態により分類された次の8つの基金それぞれについて保有割合の算出式が例示されている。
 〔1〕 貸付事業(回転型)、〔2〕 債務保証事業(保有型)、〔3〕 利子補給事業(取崩し型)、〔4〕 利子補給事業(運用型)、〔5〕 補助・補填事業(取崩し型)、〔6〕 補助・補填事業(運用型)、〔7〕 調査等その他事業(取崩し型)、〔8〕 調査等その他事業(運用型)

c 使用見込みの低い基金に関する基準

 基金の保有割合が1を大幅に上回っている基金、前回の見直し以降事業実績がない基金、直近3か年以上事業実績がない基金等使用見込みの低い基金を保有する団体は、定期的な見直しの際に、基金の財源となっている補助金等の国庫や機構への返還等基金の取扱いを検討し、検討結果について適切な手段により公表すること

(イ) 基金の基本的事項の公表

 団体は、基金の名称、基金額、基金のうち補助金等相当額、基金事業の概要、定期的な見直しの時期等の基本的事項について、基金造成後速やかに公表すること
 そして、既に設置されている基金については、初回の見直しに併せて、これらの基本的事項を公表するとともに、所管府省及び機構においても、同様の公表を行うこと

イ 基準に基づく基金の見直しの状況

 21年10月から23年6月までに、機構所管基金の7基金に係る282地方基金(139地方畜産団体)について機構基金基準に基づく21年度の見直しの結果が機構及び地方畜産団体において公表されている。そして、この見直しにより都道府県事業基金に係る46地方基金のうち44地方基金から22年度に計24億2065万円が機構に返還されている(図表117 参照)。

図表117
 機構所管基金の平成21年度の見直し
(単位:百万円)

番号 基金名 地方基金数 左のうち見直しを実施した地方基金数 地方基金の残高計
(平成21.4.1現在)
保有割合 保有割合が1を超えた地方基金数 見直しによる補助金等返還額計
 注(1) 補助金等相当額
1 地域肉用牛肥育経営安定基金 47 47 8,379 6,252 0.0〜0.6 0 -
2 都道府県事業基金 46 46 8,749 4,491 0.6〜12.5 44 2,420
3 運営特別基金 46 46 6,590 6,590 1.0 0 -
4 運営基盤強化基金 44 44 1,700 1,700 1.0 0 -
5 地域肉豚生産安定基金 43 43 3,643 3,643 0.1〜3.0 13 -
6 拡大基金 注(1)  注(2)  注(3) 45 31 4,266 1,008 0.0〜1.3 9 -
7 酪農ヘルパー利用拡大基金 注(4) 27 25 68 68 0.0〜0.6 0 -
298 282 33,395 23,752 66 2,420
注(1)  本表は公表資料等を基に作成したものであり、「計」の金額は、公表されている金額を合算したものである。
注(2)  残高がマイナス表示の額となっている14地方基金については見直しを実施していない。
注(3)  見直しを行った後に平成22年度で基金事業を廃止することが決定されたため、保有割合が1を超えたものについても補助金等の返還は実施せず、基金事業の終了後の23年9月に基金の残高がある32地方基金について補助金等相当額を返還している。
注(4)  平成21年4月1日において基金の残高がない1地方基金及び20年度で事業を終了した1地方基金については見直しを実施していない。

 なお、上記のほか、業務対象年間の最終年度が21年度である地域肉豚生産安定基金に係る43地方基金のうち23地方基金から21年度内に使用しないと見込まれる資金計6億4751万円が21年度に機構に返還されている。

ウ 基準に基づく基金の見直しにおける問題点

 機構所管基金の21年度の見直し内容等について検査したところ、以下のような事態が見受けられた。

(ア) 基金の保有割合の算出

 前記のとおり、機構基金基準は、「基金の保有割合(基金事業に要する費用に対する保有基金額等の割合)」を合理的な事業見通し又は実績を用いて算出することとしている。
 しかし、各地方畜産団体が保有割合の算出に用いた数値に基づき、その算出過程を検証したところ、都道府県事業基金(42地方基金)及び地域肉用牛肥育経営安定基金(47地方基金)は、次の事由等により、保有割合の算出が必ずしも合理的なものとなっていないと認められた。

a 「基金事業に要する費用」の算定

 機構基金基準は「基金事業に要する費用」について、補助・補填事業(取崩し型)では「事業が完了するまでに必要となる補助・補填額及び管理費」と算出式において例示している。しかし、都道府県事業基金においては「基金事業に要する費用」について、事業実施計画書の事業予定額に増加が見込まれるとして更に事業費を追加したり、全国協会の指示により過去最高の事業実績額を用いたりなどしていて、近年の事業実績額と比較して著しく額の大きい事業費を算定するなどしていた。そのため、会計検査院が直近5年間の平均事業実績額に基づいて試算すると、図表118 のとおり、被災4県に係る4地方基金を除く42地方基金の全てにおいて保有割合が1を超えており、また、各地方畜産団体が算出した保有割合を大きく上回るものも見受けられた。この地方畜産団体の「基金事業に要する費用」の算定方法について、機構は、各地方畜産団体がそれぞれの実情を踏まえて算定したものであり問題はないとしている。しかし、これらは近年の事業実績からみて合理的な事業見通しに基づいた「基金事業に要する費用」の算定になっていないと認められる。

b 「保有基金額等」の算定

 機構基金基準は、補助・補填事業(取崩し型)の基金の保有割合の算出式を「直近年度末の基金額÷(事業が完了するまでに必要となる補助・補填額及び管理費)」としている。この算出式における「事業が完了するまでに必要となる補助・補填額及び管理費」は、造成された基金から交付される補助・補填見込額等であることから、「保有基金額等」は「直近年度末の基金額」に機構からの補助金や生産者からの拠出金等の事業が完了するまでの間に確実に見込まれる収入の見込額を加えて算定することにより、合理的な基金の保有割合を算出できると考えられる。しかし、地域肉用牛肥育経営安定基金においては、全ての地方畜産団体が機構からの補助金や生産者からの拠出金等の見込額を考慮して「保有基金額等」を算定しておらず、全ての地方基金において保有割合は1を下回っていた。そのため、会計検査院が「直近年度末の基金額」に上記の収入の見込額を加えた額で試算すると、13地方基金において保有割合が1を超えていた(図表119 参照)。なお、機構は、次回見直し時までに同基金の見直し方法等を検討するとしている。
 このように、保有割合の算出が合理的なものとなっていないと認められるこれらの2基金について、会計検査院が「基金事業に要する費用」について直近5年間の平均事業実績額を用いたり「保有基金額等」について、「直近年度末の基金額」に事業が完了するまでの生産者からの拠出金の見込額を加えるなどしたりして基金事業に要する費用を超える額等を試算すると、21年度の見直しでは、21年度当初の資金保有額等のうち基金事業に要する費用を超える額の合計は2基金で計78億8334万円(補助金等相当額47億7942万円)となる。

図表118  「基金事業に要する費用」の算定が合理的なものとなっていないもの
<都道府県事業基金>
(単位:百万円)
番号 地方畜産団体名 地方基金の残高
(平成21.4.1現在)
見直しの結果の保有割合 21年度の見直しによる補助金等返還額 会計検査院の試算
  補助金等相当額 保有割合 基金事業に要する費用 基金事業に要する費用を超える額 左のうち補助金等相当額
1 北海道農業協同組合中央会 1,074 687 0.6 1.8 756 311 308
2 全国農業協同組合連合会青森県本部 113 57 4.5 44 5.0 22 90 45
3 全国農業協同組合連合会岩手県本部 436 218 2.0 110 注(3)
4 みやぎの酪農農業協同組合 292 144 3.6 105
5 全国農業協同組合連合会秋田県本部 86 43 3.3 29 4.8 17 68 34
6 全国農業協同組合連合会山形県本部 274 137 2.8 90 4.4 62 211 105
7 (社)福島県酪農ヘルパー協会 160 80 1.3 21 注(3)
8 (社)酪農ヘルパー茨城県協会 308 154 2.9 102
9 酪農とちぎ農業協同組合 418 209 2.6 131 2.8 145 272 136
10 (社)群馬県畜産協会 413 206 4.2 158 4.5 90 321 160
11 全国農業協同組合連合会埼玉県本部 188 93 6.4 79 8.1 22 165 81
12 千葉県酪農農業協同組合連合会 213 115 1.1 18 1.2 170 43 29
13 東京都酪農業協同組合 100 50 12.5 46 13.7 7 92 46
14 (社)神奈川県畜産会 131 61 6.8 52 6.9 18 112 52
15 新潟県酪農業協同組合連合会 308 154 2.4 90 2.7 113 194 97
16 全国農業協同組合連合会富山県本部 91 45 4.1 34 8.7 10 80 40
17 石川県酪農業協同組合 148 65 3.7 46 3.9 37 111 47
18 福井県酪農農業協同組合連合会 108 53 5.1 42 9.9 10 97 47
19 山梨県酪農業協同組合 55 29 2.3 17 3.8 14 40 21
20 全国農業協同組合連合会長野県本部 367 164 3.9 118 4.4 83 284 122
21 岐阜県酪農農業協同組合連合会 165 83 4.1 63 4.5 36 129 64
22 (社)静岡県畜産協会 174 74 2.0 31 2.8 61 112 43
23 愛知県酪農農業協同組合 133 66 2.1 34 2.7 47 84 42
24 三重県酪農業協同組合連合会 73 41 3.3 30 4.0 18 55 32
25 (社)滋賀県畜産振興協会 82 41 4.8 32 7.8 10 71 35
26 (社)京都府畜産振興協会 59 28 1.8 12 2.4 3 35 16
27 大阪府酪農ヘルパー協会 47 26 5.2 21 6.1 7 39 22
28 兵庫県酪農農業協同組合連合会 223 112 1.7 49 2.7 82 140 70
29 奈良県酪農農業協同組合 28 14 1.1 1 1.4 19 8 4
30 大山乳業農業協同組合 165 83 3.9 62 4.4 37 128 64
31 全国農業協同組合連合会島根県本部 96 48 2.8 30 3.5 26 68 34
32 (社)岡山県畜産協会 248 124 2.5 76 3.0 80 167 83
33 (社)広島県酪農協会 252 126 3.8 94 4.4 56 195 97
34 山口県酪農農業協同組合 176 88 4.1 67 6.1 28 147 73
35 徳島県酪農業協同組合 73 37 2.2 20 2.6 27 45 22
36 香川県農業協同組合 125 62 5.4 50 10.2 12 112 56
37 愛媛県酪農業協同組合連合会 136 68 5.9 56 6.9 19 116 58
38 全国農業協同組合連合会高知県本部 70 35 1.9 17 4.5 15 54 27
39 ふくおか県酪農業協同組合 270 135 2.2 75 2.9 93 176 88
40 佐賀県農業協同組合 99 50 3.8 37 4.4 22 76 38
41 長崎県酪農業協同組合連合会 84 42 3.8 31 4.9 16 67 33
42 熊本県酪農業協同組合連合会 177 89 2.2 49 2.6 67 109 54
43 (社)大分県酪農ヘルパー協会 135 67 2.5 40 3.2 42 92 45
44 宮崎県経済農業協同組合連合会 228 114 2.1 61 3.0 73 154 77
45 鹿児島県酪農業協同組合 83 41 0.9 1.1 68 13 6
46 沖縄県酪農農業協同組合 65 33 9.2 28 10.1 6 58 29
8,749 4,491 2,420 2,587 4,962 2,600
会計検査院の試算によると保有割合が1を超えるものの合計 2,587 4,962 2,600
注(1)  地方畜産団体名の(社)は社団法人の略称である。
注(2)  地方畜産団体名、地方基金の残高、見直しの結果の保有割合については、公表資料により作成した。
 被災4県については、特別調書の提出を受けていないため、試算を行っていない。


図表119  「保有基金額等」の算定が合理的なものとなっていないもの
<地域肉用牛肥育経営安定基金>
(単位:百万円)
番号 地方畜産団体名 地方基金の残高
(平成21.4.1現在)
見直しの結果の保有割合 21年度の見直しによる補助金等返還額 会計検査院の試算
  補助金等相当額 保有割合 事業が完了するまでの間に見込まれる収入 基金事業に要する費用 基金事業に要する費用を超える額 左のうち補助金等相当額
1 (社)北海道酪農畜産協会 807 602 0.1 1.1 3,945 4,219 534 397
2 (社)青森県畜産協会 244 183 0.3 1.2 645 738 151 113
3 (社)岩手県畜産協会 252 189 0.2 0.9 752 1,095
4 (社)宮城県畜産協会 122 91 0.1 0.7 709 1,072
5 (社)秋田県農業公社 74 56 0.3 0.9 117 207
6 (社)山形県畜産協会 368 274 0.4 0.9 430 833
7 (社)福島県畜産振興協会 210 154 0.2 1.0 675 813 72 51
8 (社)茨城県畜産協会 315 235 0.3 1.0 662 917 59 44
9 (社)栃木県畜産協会 310 232 0.2 1.1 1,044 1,178 175 131
10 (社)群馬県畜産協会 50 37 0.0 0.9 915 1,042
11 (社)埼玉県畜産会 115 85 0.3 1.0 272 355 31 22
12 (社)千葉県畜産協会 95 71 0.1 1.1 506 517 84 62
13 (財)東京都農林水産振興財団 6 4 0.4 0.8 7 14
14 (社)神奈川県畜産会 19 14 0.2 0.9 64 84 0 0
15 (社)新潟県畜産協会 43 32 0.2 1.0 154 185 11 8
16 (社)富山県畜産振興協会 29 22 0.6 1.6 44 43 30 22
17 (社)石川県畜産協会 10 8 0.2 1.0 28 37 0 0
18 (社)福井県畜産協会 14 11 0.2 1.0 45 58 1 1
19 (社)山梨県畜産協会 39 30 0.2 1.0 93 132 0 0
20 (社)長野県畜産会 76 55 0.1 0.9 317 397
21 (社)岐阜県畜産協会 128 95 0.1 0.9 500 655
22 (社)静岡県畜産協会 110 82 0.2 1.0 347 435 21 15
23 (社)愛知県畜産協会 131 95 0.1 1.1 745 760 114 83
24 (社)三重県畜産協会 177 133 0.4 0.9 225 422
25 (社)滋賀県畜産振興協会 76 57 0.2 0.9 272 369
26 (社)京都府畜産振興協会 15 11 0.3 0.9 24 41
27 (社)大阪府畜産会 8 6 0.5 1.0 8 15 1 1
28 (社)兵庫県畜産協会 236 175 0.3 1.0 460 682 13 8
29 (社)奈良県畜産会 37 28 0.4 0.9 41 81
30 (社)畜産協会わかやま 11 8 0.2 1.1 30 36 4 3
31 (社)鳥取県畜産推進機構 108 81 0.3 1.0 231 316 22 16
32 (社)島根県畜産振興協会 163 122 0.4 1.0 252 380 34 25
33 (社)岡山県畜産協会 142 106 0.2 1.1 427 516 53 40
34 (社)広島県畜産協会 36 27 0.1 1.1 291 283 43 32
35 (社)山口県畜産振興協会 107 80 0.3 1.0 200 300 6 4
36 (社)徳島県畜産協会 75 56 0.1 0.9 361 446
37 (社)香川県畜産協会 86 64 0.2 1.0 241 302 25 18
38 (社)愛媛県畜産協会 32 24 0.1 1.1 234 227 39 29
39 (社)高知県肉用子牛価格安定基金協会 26 20 0.3 0.9 48 76
40 (社)福岡県畜産協会 20 15 0.0 0.8 450 583
41 (社)佐賀県畜産協会 446 333 0.2 0.8 919 1,536
42 (社)長崎県畜産協会 201 145 0.1 1.0 840 1,022 18 17
43 (社)熊本県畜産協会 60 45 0.0 0.9 1,504 1,661
44 (社)大分県畜産協会 42 31 0.1 1.1 341 343 40 30
45 (社)宮崎県畜産協会 1,168 874 0.4 1.4 2,701 2,739 1,130 845
46 (社)鹿児島県畜産協会 1,520 1,139 0.3 1.1 3,559 4,562 516 386
47 (社)沖縄県畜産会 20 15 0.1 0.8 143 200
8,379 6,252 26,842 32,946
会計検査院の試算によると保有割合が1を超えるものの合計 14,519 16,166 2,921 2,179
注(1)  地方畜産団体名の(社)は社団法人、(財)は財団法人のそれぞれ略称である。
注(2)  地方畜産団体名、地方基金の残高、見直しの結果の保有割合については、公表資料により作成した。

 これらについて事例を示すと、次のとおりである。

<事例6>

 [基金事業に要する費用の算定が合理的なものとなっていないもの]

 都道府県事業基金(全国農業協同組合連合会山形県本部、機構所管基金)
 平成21年度の見直しにおいて、全国農業協同組合連合会山形県本部は、事業が完了するまでに必要となる事業費の算定に用いる事業見込額について、事業完了までの5年間のうち、21、22両年度については、21年度事業実施計画書の21年度事業予定額とし、23、24、25各年度については、実践研修補助金及び修学資金の増加が見込まれることなどから21年度事業予定額に相当額を追加して算定し、これにより保有割合を2.8としていた。
 しかし、21年度事業実施計画書の事業予定額には既に実践研修補助金が含まれており、また、同本部における修学資金の過去5年間の交付実績は1回のみであった。したがって、上記事業見込額のうち、実践研修補助金及び修学資金については、同本部の近年の交付実績を大きく上回っていて合理的なものとなっていないことから、事業見込額について、直近5年間の平均事業実績額を用いて保有割合を試算すると次表のとおり4.4となる。

表 平成21
 年度の見直しに係る保有割合の算出

地方畜産団体の算出 会計検査院の試算
直近年度末の基金残高(a) 274百万円 平成20年度末 274百万円 20年度末
事業が完了するまでに必要となる補助額及び管理費(b) 95百万円 21年度事業実施計画書の事業予定額に実践研修補助金及び修学資金を追加して23、24、25各年度の事業見込額を算定 62百万円 直近5年間の事業実績額の平均を用いて事業の終期までの5年間を対象として算定
保有割合(a)/(b) 2.8 4.4

<事例7>

 [保有基金額等の算定が合理的なものとなっていないもの]

 地域肉用牛肥育経営安定基金(社団法人富山県畜産振興協会、機構所管基金)
 平成21年度の見直しにおいて、社団法人富山県畜産振興協会は、直近年度末の基金額を本基金の業務対象年間が終了する21年度末までの補填金交付見込額で除するなどして算定し、保有割合を0.6としていた。
 しかし、本基金は、機構からの補助金や生産者からの拠出金等により基金を造成し補填金を交付する事業であるため、直近年度末の基金額に事業が完了するまでの生産者からの拠出金見込額を加えるなどして保有割合を試算すると次表のとおり1.6となる。

表 平成21
 年度の見直しに係る保有割合の算出

地方畜産団体の算出 会計検査院の試算
直近年度末の基金残高(a) 29百万円 直近年度末(平成20年度末)の基金残高 73百万円 20年度末の基金残高に生産者からの拠出金見込額等を加えたもの
事業が完了するまでに必要となる補助額及び管理費(b) 43百万円 21年度事業実施計画書の事業予定額に実践研修補助金及び修学資金を追加して23、24、25各年度の事業見込額を算定 43百万円 直近5年間の事業実績額の平均を用いて事業の終期までの5年間を対象として算定
保有割合(a)/(b) 0.6 1.6

(イ) 見直しの対象とならなかったもの

 国所管基金である耕畜連携水田活用資金に係る41地方基金及び家畜導入特別事業に係る234地方基金は、これらを保有している団体がそれぞれ都道府県水田農業推進協議会及び市町村であり基金法人ではないことから、国基金基準に基づく見直しの対象とならなかった。
 機構所管基金のうち、肉用子牛生産者積立金に係る47地方基金は、当該基金事業が畜産業振興事業ではないことから、機構基金基準に基づく見直しの対象とならなかった。肉用子牛生産者積立金を見直しの対象としていないことについて、機構は、事業の要件等が全て法令等に規定されており、機構における基金の見直しの対象になじまないためとしている。また、所管府省の農林水産省は、同基金に係る補給金制度における生産者積立金の負担金(1頭当たり)の決定は、肉用子牛特措法等に基づき同省生産局長が承認するものであることから、機構が関与できるものでないとしている。そして、農林水産省は、肉用子牛生産者積立金は、5年間の業務対象年間が終了した時点で基金に残余がある場合には残余を機構に返還し、その後改めて新しい業務対象年間で積み立てる仕組みであり、法令に基づき定期的な見直しを行っていて、上記の負担金を引き下げた時には生産者向けパンフレットにより公表しているとしている。
 しかし、国基金基準及び機構基金基準に基づく見直しは、基金事業の今後の見通し及びこれまでの実績からみて、基金の規模が過大となっていないかなどの状況を客観的に把握するとともに、実施した見直しの概要及び次回の見直し時期について、ホームページへ掲載するなどして国民が容易にその内容を把握できるよう公表するものであることから、これらの基準に準じて見直しを実施するか、上記の見直しを行っていない理由をホームページにおいて公表することが適切であると考えられる。

エ 基準に基づく基本的事項の公表の状況

 前記のとおり、団体は、基金の基本的事項を基金造成後速やかに、また、既に設置されている基金については初回の見直しに併せて、公表することとされている。
 国所管基金である耕畜連携水田活用資金に係る41地方基金、家畜導入特別事業に係る234地方基金を保有する計275地方畜産団体は、これらの基金が国基金基準に基づく見直しの対象となっていないことから、国基金基準に基づく公表を行っていない。
 機構所管基金のうち、肉用子牛生産者積立金に係る47地方基金を保有する47地方畜産団体は、同基金が機構基金基準に基づく見直しの対象となっていないことから、機構基金基準に基づく公表を行っていない。このことについて、農林水産省は、地方畜産団体の総会資料により基本的事項を公表しているとしているが、見直しの結果と同様に、ホームページへ掲載するなどして国民が容易にその内容を把握できるよう基本的事項の公表を行うことが適切であると考えられる。また、加工原料乳生産者積立金に係る10地方基金を保有する10地方畜産団体は、事業の制度上、社団法人中央酪農会議が保有する全国基金である加工原料乳生産者経営安定基金と合算して機構基金基準に基づく見直しを実施しており、基金を造成している地方畜産団体ごとには機構基金基準に基づく基本的事項の公表を行っていない。しかし、基本的事項は基金を造成している団体が公表することとされていることから、地方畜産団体ごとに公表することが必要であった。
 なお、加工原料乳生産者積立金については、機構及び10地方畜産団体は、会計検査院の検査を踏まえて、23年12月までに基本的事項を公表している。

(4) 第1次報告に検査の結果を記述した資金及び基金の状況

 第1次報告に検査の結果を記述した機構に造成されている調整資金及び畜産業振興資金の22年度末の状況は、図表7 (参照)のとおりとなっている。
 21年度の両資金の収入額は、3、13両年度と同様に計1500億円を超える額となっている。これは、畜産業振興資金の収入において一般交付金及び基金見直しなどによる補助金等返還金が増加していることによる。また、調整資金の支出額は、緊急対策の実施等により1000億円を超えている。このため、21年度末の資金保有額は、20年度と比較すると調整資金で減少し、畜産業振興資金で増加している。22年度は、畜産業振興資金の収入額が大幅に減少しているものの、両資金とも収支に大きな差はないことから、同年度末の資金保有額は21年度と同程度となっている。
 また、第1次報告 において検査の結果を記述した60基金(国所管基金4基金及び機構所管基金56基金)の22年度末の状況は、図表120 のとおりとなっている。21、22両年度に実施された基金の廃止及び統合の結果、22年度末では16基金が継続している。このうち4基金が23年度中に廃止されたことから、23年度末に継続している基金は12基金(貸付金の回収のために継続している4基金を含む。)となっている。
 なお、21、22両年度に廃止された31基金のうち、21基金については基金事業を終了しているが、10基金に係る事業は引き続き単年度の補助事業として実施されている。

図表120 60基金の平成22年度末の状況
(単位:千円)

所管 番号 基金名 団体名 平成22年度末資金保有額 〔1〕 〔2〕 〔3〕 〔4〕 〔5〕
  補助金等相当額
1 畜産経営維持安定特別対策基金 (社)全国畜産経営安定基金協会 3,434,857 3,434,857
 
 
 
 
2 畜産生産技術高度化機械リース助成基金 (社)中央畜産会 105 105
 
 
 
3 異常補填積立基金 (社)配合飼料供給安定機構 30,972,776 19,446,550
 
 
 
 
4 備蓄基金 (社)配合飼料供給安定機構 157,433 157,092
 
 
 
 
機構 1 改良増殖基金 (社)家畜改良事業団
 
 
21
 
2 肥育素牛導入基金 (社)全国畜産経営安定基金協会 686,321 686,321
 
 
 
3 融資準備財産 (社)全国肉用牛振興基金協会 5,248,901 5,248,901
 
 
 
 
4 子牛生産拡大奨励事業基金 (社)全国肉用牛振興基金協会
 
 
 
22
 
5 増頭振興基金 (社)全国肉用牛振興基金協会
 
 
 
21
6 畜産新技術開発活用促進基金 (社)畜産技術協会
 
 
 
21
 
7 畜産特別資金融通円滑化基金 (社)中央畜産会
 
 
 
22
8 畜産特別資金融通円滑化特別基金 (社)中央畜産会
9 大家畜経営体質強化基金 (社)中央畜産会
10 大家畜経営活性化基金 (社)中央畜産会
11 養豚経営活性化基金 (社)中央畜産会
12 大家畜経営改善支援基金 (社)中央畜産会
13 養豚経営改善支援基金 (社)中央畜産会
14 大家畜特別支援基金 (社)中央畜産会
15 養豚特別支援基金 (社)中央畜産会
16 畜産経営支援指導機能強化基金 (社)中央畜産会
 
 
 
21
 
17 大規模公共牧場肉用牛資源供給拡大対策基金 (社)中央畜産会
 
 
 
22
18 肉用牛肥育経営安定基金 (社)中央畜産会
 
 
 
21
19 産業動物獣医師修学資金基金 (社)中央畜産会
 
 
 
22
20 肥育牛生産者収益性低下緊急対策基金 (社)中央畜産会
 
 
 
21
21 家畜疾病経営維持基金 (社)中央畜産会 23,671 23,671
 
 
 
22 家畜飼料特別支援基金 (社)中央畜産会 9,350,505 9,350,505
 
 
 
23 家畜飼料債務保証円滑化基金 (社)中央畜産会
24 家畜防疫互助基金 (社)中央畜産会 1,495,747 984,409
 
 
 
 
25 鳥インフルエンザ防疫強化対策基金 (社)中央畜産会
 
 
 
22
26 広域生乳需給調整基金 (社)中央酪農会議
 
 
 
22
 
27 加工原料乳生産者経営安定基金 (社)中央酪農会議
 
 
 
22
 
28 生乳需要構造改革基金 (社)中央酪農会議
 
 
 
21
 
29 広域生乳流通体制確立基金 (社)中央酪農会議
 
 
 
22
 
30 保証基金 (社)日本家畜商協会 1,351,854 1,125,369
 
 
 
31 経営基盤強化利子補給基金(20年度造成) (社)日本食肉市場卸売協会
 
 
 
22
 
32 経営基盤強化利子補給基金(19年度造成) (社)日本食肉市場卸売協会
 
 
 
21
 
33 草地資源活用増頭振興基金 (社)日本草地畜産種子協会
 
 
 
21
 
34 貸付機械取得資金 (社)日本ハンバーグ・ハンバーガー協会 294,290 141,289
 
 
 
35 中堅外食事業者資金融通円滑化基金 (社)日本フードサービス協会
 
 
 
21
 
36 事業準備財産 (社)配合飼料供給安定機構
 
 
 
37 酪農ヘルパー事業円滑化対策基金(全国事業基金) (社)酪農ヘルパー全国協会
 
 
 
22
 
38 酪農ヘルパー利用拡大中央基金 (社)酪農ヘルパー全国協会
 
 
 
22
 
39 食肉価格安定基金 (財)沖縄県畜産振興基金公社 10,819,361 7,212,907
 
 
 
 
40 畜産関係情報提供衛星通信推進事業基金 (財)競馬・農林水産情報衛星通信機構
 
 
 
22
 
41 たい肥調整・保管施設リース基金 (財)畜産環境整備機構 6,760,067 6,760,067
 
 
 
 
42 畜産経営生産性向上支援リース基金 (財)畜産環境整備機構
43 生乳流通効率化リース基金 (財)畜産環境整備機構
44 食肉リース基金 (財)畜産環境整備機構
45 畜産環境整備リース基金 (財)畜産環境整備機構
46 生乳検査精度管理強化基金 (財)日本乳業技術協会
 
 
 
22
47 乳製品国際規格策定活動支援基金 (財)日本乳業技術協会
 
 
 
22
48 卸売経営体質強化基金(20年度造成) 全国食肉業務用卸協同組合連合会
 
 
 
22
 
49 卸売経営体質強化基金(19年度造成) 全国食肉業務用卸協同組合連合会
 
 
 
21
 
50 食肉小売経営体質強化基金(20年度造成) 全国食肉事業協同組合連合会
 
 
 
22
 
51 食肉小売経営体質強化基金(19年度造成) 全国食肉事業協同組合連合会
 
 
 
21
 
52 リース基金 全国肉牛事業協同組合
 
 
 
21
 
53 リース基金 全国農業協同組合連合会
 
 
 
21
 
54 リース基金 全国酪農業協同組合連合会
 
 
 
21
 
55 貸付機械取得資金 日本ハム・ソーセージ工業協同組合 2,281,712 1,140,856
 
 
 
 
56 リース基金 ホクレン農業協同組合連合会 9 9
 
 
 
72,877,614 55,712,913 16基金 4基金 4基金 31基金 10基金
注(1)  網掛けしているものは、改善の処置を要求した16基金である。
注(2)  基金名は平成20年度末現在のものを記載しており、団体名の(社)は社団法人、(財)は財団法人のそれぞれ略称である。
注(3)  機構所管の基金番号7から15までの9基金は、平成21年度に統合されたものである。
注(4)  機構所管の基金番号22及び23の2基金は、平成21年度に統合されたものである。
注(5)  機構所管の基金番号41から45までの5基金は、平成22年度に統合されたものである。
注(6)  〔1〕 は、平成22年度末に継続している基金である(16基金)。
注(7)  〔2〕 は、〔1〕 のうち平成23年度中に廃止された基金である(4基金)。
注(8)  〔3〕 は、〔1〕 のうち平成23年度末において貸付金の回収のために継続している基金である(4基金)。
注(9)  〔4〕 は、平成21、22両年度に廃止された基金であり、数字は廃止された年度を表している(31基金)。
注(10)  〔5〕 は、〔4〕 のうち基金の廃止後も引き続き単年度の補助事業として実施されているものである(10基金)。

 上記の60基金のうち、農林水産大臣及び機構理事長に対して、22年8月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した16基金(図表120 で網掛けしている基金)については、農林水産省及び機構は、会計検査院の指摘の趣旨に沿い、改善の処置を執っていた。
 上記の16基金に係る基金ごとの改善の処置及び22年度末において基金事業を継続している異常補填積立基金についての状況は、次のとおりである。

ア 畜産経営維持安定特別対策基金(国1(図表120 の所管及び番号。以下同じ。))

 畜産経営維持安定特別対策基金(20年度末資金保有額35億8978万円(補助金相当額同額))は、社団法人全国畜産経営安定基金協会が、BSE等の重大な家畜疾病の発生等により経済的に影響を受けた畜産経営の維持・安定に必要な資金を円滑に融通することを目的として、家畜疾病経営維持基金(機構21)及び家畜飼料特別支援基金(機構22)に係る融資を受けている畜産経営者が返済不能に陥った場合に、これらの融資について債務保証を行う県基金協会に対して保証債務の代位弁済に伴う損失を補填するために保有するものである。
 基金の見直しの結果等により、22年度中に9億4110万円を国に返還することととしていたが、22年4月の口蹄疫の発生に伴い、これに対応するために家畜疾病経営維持基金に係る融資枠が20億円から300億円に拡大されたことから、必要額を再度見直して、22年12月に1億1520万円が国に返還された。なお、今後は、必要額を適宜見直しながら事業を実施することとしている。

イ 備蓄基金(国4)

 備蓄基金(20年度末資金保有額3億0477万円(補助金相当額3億0415万円))は、安定機構が、配合飼料の安定的供給を確保することを目的として、備蓄用飼料穀物の保管、備蓄用飼料穀物の買入に係る借入金の管理、飼料用備蓄穀物災害保険の加入手続等を実施するとともに、年度途中における借入金金利の大幅な上昇及び災害時の備蓄穀物の移転といった年度当初では予測することが困難である事態に対応するために保有するものである。
 基金の見直しの結果等により、22年度の備蓄事業費の予算額を減額し、基金の保有額を22年度の備蓄事業費に充当することとされたことから、22年度末資金保有額は1億5743万円(補助金相当額1億5709万円)と縮減されている。なお、今後は、必要額を適宜見直しながら事業を実施することとしている。

ウ 肥育素牛導入基金(機構2)

 肥育素牛導入基金(20年度末資金保有額8億4290万円(補助金等相当額同額))は、社団法人全国畜産経営安定基金協会が、肥育牛生産の安定的発展を図ることを目的として、肥育農家が肥育素牛を導入する際、農業協同組合及び融資機関を通じて資金を供給するために保有するものである。
 基金の見直しの結果等により、22年度で新規貸付けを終了し、23年度以降は貸付金の回収業務のみを行うこととされたことから、23年7月に事務費相当額を除く6億5362万円が機構に返還された。

エ 融資準備財産(機構3)

 融資準備財産(20年度末資金保有額535億3555万円(補助金等相当額同額))は、振興基金協会が、補給金制度の健全な運営を図ることを目的として、指定協会において肉用子牛生産者補給金の一部に充てるための積立金に不足が生じた場合に、指定協会に対して資金の貸付けを行うために保有するものである。
 基金の見直しの結果等により、22年3月に437億3827万円が機構に返還され、21年度末資金保有額は105億9620万円となった。さらに、行政刷新会議による事業仕分けの結果等により、必要額を除いた額を返還することとされ、22年6月に4742万円が同年7月に53億0420万円がそれぞれ機構に返還された。なお、今後は、必要額を適宜見直しながら24年度まで事業を実施することとしている。

オ 家畜疾病経営維持基金(機構21)

 家畜疾病経営維持基金(20年度末資金保有額10億3532万円(補助金等相当額同額))は、社団法人中央畜産会が、家畜疾病の発生時等において畜産経営の継続及び維持や再開を図り、家畜の導入、飼料等資材の購入等に要する資金の融通を円滑にすることを目的として、畜産経営者に対して貸付けを行った農業協同組合等の融資機関に対して利子補給等を行うために保有していたものである。
 基金の見直しの結果等により、基金事業は22年度で終了し、23年度から単年度の補助事業として実施することとされた。なお、22年7月に10億5609万円が、23年7月に2367万円がそれぞれ機構に返還され、基金は23年度をもって廃止された。

カ 家畜飼料特別支援基金(機構22)、家畜飼料債務保証円滑化基金(同23)

 家畜飼料特別支援基金(20年度末資金保有額76億5744万円(補助金等相当額同額))は、社団法人中央畜産会が、畜産の生産基盤の維持と安定的発展を図ることを目的として、配合飼料価格が一定の水準を上回った場合に畜産経営者等に対して飼料購入に必要な家畜飼料特別支援資金を貸し付ける農業協同組合等の融資機関に対して利子補給を行うために、20年度まで保有していたものである。
 また、家畜飼料債務保証円滑化基金(20年度末資金保有額24億7668万円(補助金等相当額同額))は、社団法人中央畜産会が、畜産の生産基盤の維持と安定的発展を図ることを目的として、県基金協会が行う家畜飼料特別支援資金に係る代位弁済に伴って生ずる損失の一部を補填するために、20年度まで保有していたものである。
 そして、家畜飼料特別支援基金及び家畜飼料債務保証円滑化基金は、21年度に、家畜飼料特別支援資金融通事業基金として統合された。
 基金の見直しの結果等により、基金事業は22年度で終了し、23年度から単年度の補助事業として実施することとされた。なお、23年7月に93億5105万円が機構に返還され、基金は23年度をもって廃止された。

キ 家畜防疫互助基金(機構24)

 家畜防疫互助基金(20年度末資金保有額32億5226万円(補助金等相当額17億3742万円))は、社団法人中央畜産会が、機構からの補助金及び生産者からの積立金を財源として基金を造成し、家畜伝染病のうち口蹄疫、高病原性鳥インフルエンザなどの対象疾病が発生した場合に、生産者の経済的損失を補償するために保有するものである。
 基金の見直しの結果等により、22年度から基金への繰入額は生産者に対する互助金の交付に充てるための額等に限定し、事務費相当額は単年度の補助事業により交付することとされた。22年度以降の口蹄疫及び高病原性鳥インフルエンザの発生を受けて多額の資金が必要となったことから、基金の枯渇を防ぐため、22年度に機構が単独で47億0545万円の追加造成をし、22年度末資金保有額は14億9574万円(補助金等相当額9億8440万円)となっている。なお、機構による追加造成額のうち生産者負担分相当額21億2494万円は、今後、生産者積立金の残高から機構に返還する予定となっている。

ク 保証基金(機構30)

 保証基金(20年度末資金保有額13億3042万円(補助金等相当額11億0369万円))は、社団法人日本家畜商協会が、傘下の会員組合による肉用子牛の導入に必要な資金の融通の円滑化を図るための債務保証及び代位弁済に充てるために保有していたものである。
 基金の見直しの結果等により、基金事業は22年度で終了し、23年度から単年度の補助事業として実施することとされた。なお、23年6月に11億2808万円が機構に返還され、基金は23年度をもって廃止された。

ケ 貸付機械取得資金(機構34、55)

 貸付機械取得資金(20年度末資金保有額は、それぞれ3億4124万円(補助金等相当額1億6111万円)、31億6349万円(補助金等相当額15億8174万円))は、社団法人日本ハンバーグ・ハンバーガー協会及び日本ハム・ソーセージ工業協同組合が、食肉加工業者等に対して、国産食肉及び畜産副生物の新規用途開発、製品等の品質・衛生管理並びに環境対策のために必要な成型機等の機械施設の貸付けを行うために保有するものである。
 基金の見直しの結果等により、実質的な資金の集約を目指すとして、社団法人日本ハンバーグ・ハンバーガー協会においては、貸付けは22年度までに申出のあったものまでとして23年度以降は貸付金の回収業務のみを行うこととされ、23年度以降の貸付けは全て日本ハム・ソーセージ工業協同組合において行うこととされた。なお、両団体において資金規模の見直しを行った結果、23年6月に、社団法人日本ハンバーグ・ハンバーガー協会から1億3544万円が、日本ハム・ソーセージ工業協同組合から2億5000万円がそれぞれ機構に返還された。

コ 食肉価格安定基金(機構39)

 食肉価格安定基金(20年度末資金保有額107億7582万円(補助金等相当額71億8388万円))は、財団法人沖縄県畜産振興基金公社が、沖縄県産食肉の安定供給、県内食肉価格の安定及び県内食肉生産基盤の拡大を図るための事業に対して補助するために保有するものである。
 基金の見直しの結果等により、沖縄県の特殊事情に鑑み、23年度から基金の運用益を財源とする運用型から取崩し型の基金とした上で、事業内容を大幅に拡大し、同県の食肉生産基盤の飛躍的な改善を図るための事業に対して補助するものとされた。なお、実施期間は23年度から27年度までの5年間とされており、22年度末の資金保有額は108億1936万円(補助金等相当額72億1290万円)となっている。
 また、本基金の13年度から20年度までの各年度における事業実績額の平均は7010万円であることから、23年度から27年度までの基金からの支出額は飛躍的に増加すると見込まれる。

サ 畜産関係情報提供衛星通信推進事業基金(機構40)

 畜産関係情報提供衛星通信推進事業基金(20年度末資金保有額1億3913万円(補助金等相当額同額))は、財団法人競馬・農林水産情報衛星通信機構が、畜産経営の健全な発展と畜産物の安定的な供給を図ることを目的として、自給飼料の増産を始めとする畜産の振興に必要な気象情報の提供を衛星通信システムにより行うため保有していたものである。
 行政刷新会議による事業仕分けの結果等により、基金事業は22年度で終了することとされ、22年8月に1億0625万円が、23年3月に247万円がそれぞれ機構に返還され、基金は22年度をもって廃止された。

シ 生乳流通効率化リース基金(機構43)、食肉リース基金(同44)、畜産環境整備リース基金(同45)

 生乳流通効率化リース基金(20年度末資金保有額11億3828万円(補助金等相当額同額))は、集送乳の合理化及び生乳等の流通の効率化を図ることを目的として、生乳輸送業者に対して、生乳等の輸送等に必要なミルクタンクローリー等の機械施設の貸付けを行うものである。
 食肉リース基金(20年度末資金保有額13億7594万円(補助金等相当額同額))は、食肉流通の合理化を図ることを目的として、食肉販売業者等に対して、必要な機械施設の貸付けを行うものである。
 畜産環境整備リース基金(20年度末資金保有額50億7001万円(補助金等相当額同額))は、堆肥化施設等の整備の推進を図ることなどを目的として、畜産経営者に対して、堆肥化施設等の機械施設の貸付けを行うものである。
 これらの3基金は、いずれも財団法人畜産環境整備機構が保有しており、借受者から回収する基本貸付料等を新たな貸付けの財源とする回転型の基金である。
 基金の見直しの結果等により、22年度に、同機構が保有するたい肥調整・保管施設リース基金(機構41)及び畜産経営生産性向上支援リース基金(機構42)とこれらの3基金は、畜産高度化支援リース基金として統合され、22年度末資金保有額は67億6006万円(補助金等相当額同額)となっている。なお、たい肥調整・保管施設リース基金及び畜産経営生産向上支援リース基金は、取崩し型の補助付きリース事業を行っていたことから、統合後の畜産高度化支援リース基金の資金保有額は、事業の進展に伴い減少することになる。

ス 異常補填積立基金(国3)

 異常補填積立基金(20年度末資金保有額70億8453万円(補助金相当額76億0237万円)(注28) )は、安定機構が、輸入原料価格が著しく高騰して配合飼料価格が大幅に値上がりした場合に畜産経営者に及ぶ影響を緩和することを目的として、異常補填交付金を交付するなどのために保有するものである。
 19、20両年度の配合飼料価格の高騰により多額の異常補填交付金(19年度479億8500万円、20年度420億4878万円)を交付したため、20年度末資金保有額は70億8453万円と減少していたが、今後も配合飼料価格の高騰により、異常補填交付金の交付が見込まれることから、過去の発動実績及び今後の発動見込みを勘案して、21年度に270億円を追加造成し、22年度末資金保有額は309億7277万円(補助金相当額194億4655万円)となっている。なお、23年度においても配合飼料価格は高騰しているため、第1四半期に53億9276万円、第2四半期に46億7661万円の異常補填交付金が交付されている。

 異常補填積立基金は、農林水産省からの補助金と社団法人全国配合飼料供給安定基金等3法人から納付される積立金とにより造成されており、それぞれ補助金勘定及び積立金勘定で経理されている。このうち積立金勘定において、平成20年度末に一時的に資金不足が生じたため、補助金相当額(補助金勘定残高)が資金保有額(補助金勘定残高+積立金勘定残高(△5億1783万円)を上回っている。)