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「独立行政法人及び国立大学法人等の自己収入の確保等に向けた取組の状況について」


3 検査の状況

(1)独立行政法人及び国立大学法人等の収入の状況

ア 収入額及び収入額に占める自己収入の割合

検査の対象とした独立行政法人全98法人及び国立大学法人等全90法人について、法人全体の収入額等の21年度から25年度までの推移をみると、表3のとおりとなっている。また、法人ごとの状況は別表1のとおりである。

表3 全法人の収入額等の推移(平成21年度~25年度)

(単位:百万円)

区分 収入 平成21年度 22年度 23年度 24年度 25年度
対21年度
増加率
独(
立9
行8
政法
法人
人)
自己収入 注(2) 43,104,979
(62.7%)
33,619,231
(57.6%)
34,009,113
(59.7%)
41,013,234
(62.7%)
37,241,909
(63.7%)
△13.6% 188,988,468
(61.4%)
運営費交付金 1,579,887
(2.3%)
1,516,118
(2.5%)
1,519,088
(2.6%)
1,445,497
(2.2%)
1,454,407
(2.4%)
△7.9% 7,515,000
(2.4%)
補助金等 注(3) 2,117,540
(3.0%)
1,632,309
(2.7%)
1,733,863
(3.0%)
1,491,911
(2.2%)
1,550,000
(2.6%)
△26.8% 8,525,624
(2.7%)
その他 注(4) 21,870,398
(31.8%)
21,564,394
(36.9%)
19,620,768
(34.4%)
21,444,083
(32.7%)
18,188,428
(31.1%)
△16.8% 102,688,074
(33.3%)
68,672,806 58,332,054 56,882,834 65,394,726 58,434,745 △14.9% 307,717,167
国(
立9
大0
学法
法人
人)
自己収入 1,478,803
(45.1%)
1,547,624
(51.6%)
1,582,485
(50.6%)
1,633,064
(49.1%)
1,698,854
(49.4%)
14.8%

7,940,833
(49.1%)
運営費交付金 1,206,619
(36.8%)
1,155,925
(38.5%)
1,243,416
(39.7%)
1,225,364
(36.9%)
1,176,958
(34.2%)
△2.4% 6,008,284
(37.1%)
補助金等 注(3) 402,313
(12.2%)
231,020
(7.7%)
234,347
(7.4%)
285,013
(8.5%)
479,506
(13.9%)
19.1% 1,632,202
(10.1%)
その他 注(5) 186,299
(5.6%)
63,283
(2.1%)
66,934
(2.1%)
176,106
(5.3%)
83,612
(2.4%)
△55.1% 576,235
(3.5%)
3,274,035 2,997,854 3,127,183 3,319,549 3,438,932 5.0% 16,157,555
注(1)
収入額は、各法人の決算報告書の決算額及び各法人から提出を受けた調書を基に本院が集計したものである。
注(2)
独立行政法人の「自己収入」には、受益者負担金収入、財産処分収入納付金等のように法令等により各法人が受け入れることとされている収入を含む。
注(3)
独立行政法人及び国立大学法人等の「補助金等」には、補助金収入、施設整備費補助金収入等の収入を計上している。
注(4)
独立行政法人の「その他」には、借入金・債券発行収入、出資金・出えん金、貸付回収金、前年度繰越金等の収入を計上している。
注(5)
国立大学法人等の「その他」には、借入金、貸付回収金、引当金取崩、目的積立金取崩等の収入を計上している。
注(6)
括弧書きの数字は、収入の計に占める各収入の割合を示す。

21年度から25年度までの独立行政法人全体の収入額の合計は307兆7171億余円、国立大学法人等全体の収入額の合計は16兆1575億余円となっている。

25年度における独立行政法人全体の収入額は計58兆4347億余円、国立大学法人等全体の収入額は計3兆4389億余円であり、21年度と比較して、独立行政法人全体では14.9%減少し、国立大学法人等全体では5.0%増加している。22年度の独立行政法人全体の収入額は21年度に比べて約10兆円減少しているが、これは、欧州債務危機等の影響により、年金積立金管理運用における運用収入が約9兆円減少したことなどによるものである。

21年度から25年度までの独立行政法人全体の自己収入額の合計は188兆9884億余円、国立大学法人等全体の自己収入額の合計は7兆9408億余円となっている。

25年度における自己収入は独立行政法人全体で計37兆2419億余円、国立大学法人等全体で計1兆6988億余円、収入額に占める自己収入の割合は、それぞれ63.7%及び49.4%となっており、21年度と比較して、独立行政法人全体ではほぼ横ばい、国立大学法人等全体では4.3ポイント高くなっている。また、25年度における収入額に占める運営費交付金の割合は、それぞれ2.4%及び34.2%となっている。さらに、収入額に占める自己収入の割合を法人ごとにみると、独立行政法人については、各法人が個別法等に基づき多種多様な事務・事業を実施していることを反映して、収入額に占める自己収入の割合に大きな差異が見受けられる。一方、国立大学法人等については、割合が高い法人のほとんどが、附属病院を設置して医療診療業務を行う国立大学法人となっている。

イ 法人の業務類型

独立行政法人は、前記のとおり、実施している事務・事業の内容が多種多様であり、収入額に占める自己収入の割合等も法人間で大きな差異が見受けられるが、国立大学法人等は、共通の業務として教育研究業務を行っており、附属病院を設置している法人も多いことから、国立大学法人等の業務と共通する事務・事業に着眼して独立行政法人を分類することにより、同種の事務・事業を行う法人間で相互に比較検討することができると考えられる。そこで、独立行政法人について、国立大学法人等との間で共通性が見られる事務・事業を類型化し、当該事務・事業を実施している独立行政法人を三つの業務類型に分類すると、次のとおりである。

①特定の職業人等の教育・養成等を目的として学校等を設置して文教研修業務を行う独立行政法人(以下「文教研修型」という。)

9法人

②科学技術に関する試験、研究、開発等の研究開発業務を自ら行う独立行政法人(以下「研究開発型」という。)

34法人

③病院等を設置して医療診療業務を行う独立行政法人(以下「医療診療型」という。)

9法人

    

そして、上記の①から③までの業務類型に該当する独立行政法人及びいずれの業務類型にも該当しない独立行政法人(以下「その他型」という。)56法人の一覧は表4のとおりである。なお、表4には、27年4月に施行された独立行政法人通則法の一部を改正する法律(平成26年法律第66号)において規定された独立行政法人の3分類、すなわち、中期目標管理法人(60法人)、国立研究開発法人(31法人)及び行政執行法人(7法人)との対応関係についても併せて示している。

表4 各業務類型等に該当する独立行政法人一覧と通則法に規定する各類型との関係

区分 法人名 通則法に規定する各類型
  区分 法人名 通則法に規定する各類型
中期目
標管理
国立研
究開発
行政
執行
法人数 中期目
標管理
国立研
究開発
行政
執行
法人数




日本学生支援機構

9  


国立公文書館

56
国立高等専門学校機構

北方領土問題対策協会

高齢・障害・求職者雇用支援機構

国民生活センター

労働者健康福祉機構 (*)

統計センター

国立病院機構 (*)

郵便貯金・簡易生命保険管理機構

国立国際医療研究センター (***)

国際協力機構

水産大学校

国際交流基金

海技教育機構

造幣局

航空大学校

国立印刷局





情報通信研究機構

34 国立特別支援教育総合研究所

酒類総合研究所

大学入試センター

国立科学博物館

国立青少年教育振興機構

物質・材料研究機構

国立女性教育会館

防災科学技術研究所

国立美術館

放射線医学総合研究所 (**)

国立文化財機構

理化学研究所

教員研修センター

宇宙航空研究開発機構

科学技術振興機構

海洋研究開発機構

日本学術振興会

日本原子力研究開発機構

日本スポーツ振興センター

国立健康・栄養研究所

日本芸術文化振興会

労働安全衛生総合研究所

大学評価・学位授与機構

医薬基盤研究所

国立大学財務・経営センター

国立がん研究センター(**)

勤労者退職金共済機構

国立循環器病研究センター (**)

福祉医療機構

国立精神・神経医療研究センター (**)

国立重度知的障害者総合施設のぞみの園

国立国際医療研究センター (***)

労働政策研究・研修機構

国立成育医療研究センター (**)

医薬品医療機器総合機構

国立長寿医療研究センター (**)

地域医療機能推進機構注 (3)

農業・食品産業技術総合研究機構

年金積立金管理運用

農業生物資源研究所

農林水産消費安全技術センター

農業環境技術研究所

種苗管理センター

国際農林水産業研究センター

家畜改良センター

森林総合研究所

農畜産業振興機構

水産総合研究センター

農業者年金基金

産業技術総合研究所

農林漁業信用基金

石油天然ガス・金属鉱物資源機構

経済産業研究所

土木研究所

工業所有権情報・研修館

建築研究所

日本貿易保険

交通安全環境研究所

製品評価技術基盤機構

海上技術安全研究所

新エネルギー・産業技術総合開発機構

港湾空港技術研究所

日本貿易振興機構

電子航法研究所

情報処理推進機構

国立環境研究所

中小企業基盤整備機構





放射線医学総合研究所 (**)

9 航海訓練所

労働者健康福祉機構 (*)

自動車検査

国立病院機構 (*)

鉄道建設・運輸施設整備支援機構

国立がん研究センター (**)

国際観光振興機構

国立循環器病研究センター (**)

水資源機構

国立精神・神経医療研究センター (**)

自動車事故対策機構

国立国際医療研究センター (***)

空港周辺整備機構

国立成育医療研究センター (**)

都市再生機構

国立長寿医療研究センター (**)

奄美群島振興開発基金


  日本高速道路保有・債務返済機構

住宅金融支援機構

環境再生保全機構

駐留軍等労働者労務管理機構

合計
60 31 7 98
注(1)
文教研修型には個別法等に「学校の設置及び運営」等と規定されている法人を、研究開発型には研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律(平成20年法律第63号)第2条第8項に規定する法人のうち自ら研究開発業務を実施している法人を、医療診療型には個別法等に「病院の設置及び運営」等と規定されている法人をそれぞれ分類している。
注(2)
(*)を付した法人は文教研修型と医療診療型のいずれにも該当するものであり、同様に、(**)を付した法人は研究開発型と医療診療型に、(***)を付した法人は三つの業務類型全てに該当する。法人数の合計欄については、重複分を除いているため、各業務類型の法人数の合計とは一致しない。
注(3)
地域医療機能推進機構は、平成26年3月31日以前は年金・健康保険福祉施設整理機構であり、改組前の法人の事務事業に基づいて分類している。

一方、国立大学法人等については、附属病院の設置の有無により二つの業務類型に分類すると、次のとおりである。

① 附属病院を設置せず教育研究業務のみを行っている国立大学法人及び研究業務のみを行っている大学共同利用機関法人(以下、これらを合わせて「国大教育研究型」という。)

48法人

② 教育研究業務に必要な機関として附属病院を設置している国立大学法人(以下「国大病院設置型」という。)

42法人

上記の各業務類型に該当する国立大学法人等の一覧は表5のとおりである。

表5 各業務類型に該当する国立大学法人等一覧

区分 法人名 法人数
区分 法人名 法人数






北海道教育大学 48





北海道大学 42
室蘭工業大学 旭川医科大学
小樽商科大学 弘前大学
帯広畜産大学 東北大学
北見工業大学 秋田大学
岩手大学 山形大学
宮城教育大学 筑波大学
福島大学 群馬大学
茨城大学 千葉大学
筑波技術大学 東京大学
宇都宮大学 東京医科歯科大学
埼玉大学 新潟大学
東京外国語大学 富山大学
東京学芸大学 金沢大学
東京農工大学 福井大学
東京芸術大学 山梨大学
東京工業大学 信州大学
東京海洋大学 岐阜大学
お茶の水女子大学 浜松医科大学
電気通信大学 名古屋大学
一橋大学 三重大学
横浜国立大学 滋賀医科大学
長岡技術科学大学 京都大学
上越教育大学 大阪大学
静岡大学 神戸大学
愛知教育大学 鳥取大学
名古屋工業大学 島根大学
豊橋技術科学大学 岡山大学
滋賀大学 広島大学
京都教育大学 山口大学
京都工芸繊維大学 徳島大学
大阪教育大学 香川大学
兵庫教育大学 愛媛大学
奈良教育大学 高知大学
奈良女子大学 九州大学
和歌山大学 佐賀大学
鳴門教育大学 長崎大学
福岡教育大学 熊本大学
九州工業大学 大分大学
鹿屋体育大学 宮崎大学
政策研究大学院大学 鹿児島大学
総合研究大学院大学 琉球大学
北陸先端科学技術大学院大学 合計
90
奈良先端科学技術大学院大学  
人間文化研究機構
自然科学研究機構
高エネルギー加速器研究機構
情報・システム研究機構

ウ 業務類型ごとの収入

独立行政法人における業務類型ごとの収入額等の21年度から25年度までの推移は、表6-1のとおりである。

25年度における業務類型ごとの収入額についてみると、文教研修型は9法人計3兆8518億余円、研究開発型は34法人計3兆2029億余円、医療診療型は9法人計1兆5607億余円となっている。ただし、文教研修型については国立病院機構、労働者健康福祉機構及び日本学生支援機構が、研究開発型については石油天然ガス・金属鉱物資源機構が、それぞれの業務類型の業務以外の業務に係る収入額が多額となっていることから、これらの法人をそれぞれ除くと、文教研修型は6法人計2819億余円、研究開発型は33法人計1兆3510億余円となっている。

そして、上記により業務類型ごとの収入額の21年度からの推移をみると、文教研修型においては年々増加して、対21年度比で69.4%の増加、研究開発型及び医療診療型においては毎年度変動があるものの、それぞれ同19.4%、同28.1%の増加となっている。

なお、その他型の収入額のうち多額となっている主なものとしては、郵便貯金・簡易生命保険管理機構における保険料等収入(25年度において11兆6341億余円)、年金積立金管理運用における年金積立金の運用収入(同10兆2206億余円)、日本高速道路保有・債務返済機構における高速道路資産の貸付料収入(同1兆7061億余円)、都市再生機構における賃貸住宅業務等収入(同1兆0947億余円)が挙げられる。これらはいずれも各法人に固有の事務・事業に係る収入であり、類型化による他の法人の自己収入との比較検討が困難なものである。

表6-1 独立行政法人における業務類型等ごとの収入額等の推移(平成21年度~25年度)

(単位:百万円)

区分 収 入 平成21年度 22年度 23年度 24年度 25年度
対21年度
増加率
文(
教9
研法
修人
型)

自己収入 1,159,649
(37.8%)
1,245,115
(34.6%)
1,269,824
(33.9%)
1,300,462
(34.4%)
1,427,130
(37.0%)
23.0% 6,402,181
(35.5%)
運営費交付金 175,032
(5.7%)
167,441
(4.6%)
189,307
(5.0%)
192,716
(5.1%)
183,126
(4.7%)
4.6% 907,624
(5.0%)
補助金等 127,672
(4.1%)
98,155
(2.7%)
101,629
(2.7%)
71,003
(1.8%)
89,035
(2.3%)
△30.2% 487,495
(2.7%)
その他 1,604,665
(52.3%)
2,083,856
(57.9%)
2,181,025
(58.2%)
2,211,407
(58.5%)
2,152,563
(55.8%)
34.1% 10,233,517
(56.7%)
3,067,018 3,594,568 3,741,786 3,775,589 3,851,856 25.5% 18,030,820

注(5)

6


自己収入 38,790
(23.3%)
56,327
(29.9%)
87,058
(38.2%)
100,664
(39.2%)
105,078
(37.2%)
170.8% 387,918
(34.6%)
運営費交付金 92,193
(55.4%)
96,443
(51.3%)
128,301
(56.3%)
141,509
(55.1%)
139,102
(49.3%)
50.8% 597,551
(53.3%)
補助金等 35,104
(21.1%)
19,236
(10.2%)
11,533
(5.0%)
13,645
(5.3%)
35,843
(12.7%)
2.1% 115,364
(10.2%)
その他 279
(0.1%)
15,982
(8.5%)
700
(0.3%)
620
(0.2%)
1,950
(0.6%)
599.0% 19,532
(1.7%)
166,367 187,989 227,593 256,440 281,975 69.4% 1,120,367
研(
究3
開4
発法
型人
  )
自己収入 1,021,783
(34.3%)
1,395,299
(47.9%)
898,613
(36.3%)
1,042,396
(35.8%)
1,205,752
(37.6%)
18.0% 5,563,844
(38.4%)
運営費交付金 706,626
(23.7%)
709,044
(24.3%)
701,023
(28.3%)
653,265
(22.4%)
640,491
(19.9%)
△9.3% 3,410,451
(23.5%)
補助金等 221,493
(7.4%)
219,754
(7.5%)
206,484
(8.3%)
247,515
(8.5%)
391,701
(12.2%)
76.8% 1,286,949
(8.8%)
その他 1,027,038
(34.4%)
588,271
(20.1%)
663,136
(26.8%)
966,712
(33.2%)
964,991
(30.1%)
△6.0% 4,210,149
(29.0%)
2,976,941 2,912,368 2,469,258 2,909,889 3,202,937 7.5% 14,471,395

注(6)

3
3


自己収入 204,846
(18.1%)
336,102
(25.7%)
353,710
(28.1%)
308,980
(23.9%)
321,666
(23.8%)
57.0% 1,525,305
(24.0%)
運営費交付金 682,103
(60.3%)
687,917
(52.6%)
682,877
(54.3%)
634,687
(49.1%)
620,912
(45.9%)
△8.9% 3,308,498
(52.2%)
補助金等 213,645
(18.8%)
200,247
(15.3%)
194,063
(15.4%)
241,688
(18.6%)
381,493
(28.2%)
78.5% 1,231,137
(19.4%)
その他 30,110
(2.6%)
81,608
(6.2%)
25,649
(2.0%)
107,284
(8.2%)
26,970
(1.9%)
△10.4% 271,623
(4.2%)
1,130,705 1,305,876 1,256,300 1,292,640 1,351,042 19.4% 6,336,565
医(
療9
診法
療人
型)
自己収入 1,098,732
(90.2%)
1,295,564
(85.6%)
1,311,425
(88.7%)
1,301,270
(89.5%)
1,427,884
(91.4%)
29.9% 6,434,877
(89.1%)
運営費交付金 68,377
(5.6%)
100,824
(6.6%)
90,865
(6.1%)
81,114
(5.5%)
71,342
(4.5%)
4.3% 412,525
(5.7%)
補助金等 38,699
(3.1%)
29,165
(1.9%)
50,491
(3.4%)
34,765
(2.3%)
37,291
(2.3%)
△3.6% 190,412
(2.6%)
その他 11,806
(0.9%)
87,243
(5.7%)
24,470
(1.6%)
35,898
(2.4%)
24,215
(1.5%)
105.1% 183,633
(2.5%)
1,217,615 1,512,798 1,477,251 1,453,048 1,560,734 28.1% 7,221,449
 (
そ5
の6
他法
型人
 )
自己収入 40,923,547
(65.3%)
31,002,770
(59.7%)
31,873,424
(62.8%)
38,704,652
(65.8%)
34,644,418
(67.3%)
△15.3% 177,148,813
(64.3%)
運営費交付金 698,229
(1.1%)
648,088
(1.2%)
636,271
(1.2%)
606,649
(1.0%)
637,702
(1.2%)
△8.6% 3,226,941
(1.1%)
補助金等 1,768,374
(2.8%)
1,314,448
(2.5%)
1,425,840
(2.8%)
1,174,515
(1.9%)
1,071,490
(2.0%)
△39.4% 6,754,669
(2.4%)
その他 19,238,695
(30.7%)
18,908,010
(36.4%)
16,777,306
(33.0%)
18,266,564
(31.0%)
15,072,673
(29.3%)
△21.6% 88,263,251
(32.0%)
62,628,846 51,873,318 50,712,843 58,752,382 51,426,284 △17.8% 275,393,675
注(1)
収入額は、各法人の決算報告書の決算額及び各法人から提出を受けた調書を基に本院が集計したものである。
注(2)
複数の業務類型に該当する法人に係る収入は重複して集計している。
注(3)
「自己収入」には、受益者負担金収入、財産処分収入納付金等のように法令等により各法人が受け入れることとされている収入を含む。また、「補助金等」には、補助金収入、施設整備費補助金収入等の収入を、「その他」には、借入金・債券発行収入、出資金・出えん金、貸付回収金、前年度繰越金等の収入をそれぞれ計上している。
注(4)
括弧書きの数字は、収入の計に占める各収入の割合を示す。
注(5)
文教研修業務以外の業務に係る収入額が多額となっている国立病院機構、労働者健康福祉機構及び日本学生支援機構を除く6法人
注(6)
研究開発以外の業務に係る収入額が多額となっている石油天然ガス・金属鉱物資源機構を除く(33法人)

国立大学法人等における業務類型ごとの収入額等の21年度から25年度までの推移は、表6-2のとおりである。

25年度における業務類型ごとの収入額についてみると、国大教育研究型は48法人計5899億余円、国大病院設置型は42法人計2兆8489億余円となっている。

そして、21年度からの推移をみると、共に毎年度変動があるものの、国大教育研究型は対21年度比で1.2%減少、国大病院設置型は同6.4%増加となっている。

表6-2 国立大学法人等における業務類型ごとの収入額等の推移(平成21年度~25年度)

(単位:百万円)

区分 収 入 平成21年度 22年度 23年度 24年度 25年度
対21年度
増加率

国(
大4
教8
育法
研人
究)
型 

自己収入 159,160
(26.6%)
156,685
(30.3%)
155,425
(28.9%)
153,659
(28.9%)
157,945
(26.7%)
△0.7% 782,876
(28.2%)
運営費交付金 322,022
(53.8%)
311,000
(60.3%)
336,492
(62.6%)
327,761
(61.6%)
322,156
(54.6%)
0.0% 1,619,434
(58.4%)
補助金等 87,277
(14.6%)
42,542
(8.2%)
44,259
(8.2%)
46,940
(8.8%)
105,992
(17.9%)
21.4% 327,012
(11.7%)
その他 29,081
(4.8%)
5,406
(1.0%)
1,195
(0.2%)
2,911
(0.5%)
3,849
(0.6%)
△86.7% 42,443
(1.5%)
597,541 515,634 537,373 531,273 589,944 △1.2% 2,771,767
国 
大(
病4
院2
設法
置人
型)
自己収入 1,319,643
(49.3%)
1,390,939
(56.0%)
1,427,059
(55.1%)
1,479,405
(53.0%)
1,540,909
(54.0%)
16.7% 7,157,957
(53.4%)
運営費交付金 884,596
(33.0%)
844,924
(34.0%)
906,924
(35.0%)
897,603
(32.1%)
854,802
(30.0%)
△3.3% 4,388,850
(32.7%)
補助金等 315,036
(11.7%)
188,478
(7.5%)
190,087
(7.3%)
238,073
(8.5%)
373,513
(13.1%)
18.5% 1,305,189
(9.7%)
その他 157,217
(5.8%)
57,876
(2.3%)
65,739
(2.5%)
173,194
(6.2%)
79,763
(2.7%)
△49.2% 533,791
(3.9%)
2,676,493 2,482,219 2,589,810 2,788,276 2,848,988 6.4% 13,385,788
注(1)
収入額は、各法人の決算報告書の決算額及び各法人から提出を受けた調書を基に本院が集計したものである。
注(2)
「補助金等」には、補助金収入、施設整備費補助金収入等の収入を、「その他」には、借入金、貸付回収金、引当金取崩、目的積立金取崩等の収入をそれぞれ計上している。
注(3)
括弧書きの数字は、収入の計に占める各収入の割合を示す。

次に、業務類型ごとの収入の内訳について、25年度の状況を示すと図のとおりである。

25年度における収入額に占める自己収入の割合は、医療診療型が91.4%と最も高くなっている。また、国大教育研究型は26.7%、国大病院設置型は54.0%と、国立大学法人等の間で比較しても、附属病院を設置する業務類型の方がその割合が高くなっている。これらは、法人の収入・支出のうちの相当程度を占める病院部門について、ほとんどの病院が自己収入により収支相償又はそれ以上の経営をしているためである。一方、文教研修型、研究開発型及び国大教育研究型における収入額に占める自己収入の割合は、それぞれ37.2%、23.8%、26.7%となっており、法人の業務運営の財源について、運営費交付金や補助金を始めとする国からの収入に相当程度依存している状況となっている。

図 業務類型ごとの収入の内訳(平成25年度)

注(1) 注 (2)  
(文教研修型 6法人) (研究開発型 33法人) (医療診療型 9法人)
図 業務類型ごとの収入の内訳(平成25年度)
(国大教育研究型 48法人) (国大病院設置型 42法人)
図 業務類型ごとの収入の内訳(平成25年度)
注(1)
文教研修型の9法人のうち国立病院機構、労働者健康福祉機構及び日本学生支援機構を除く6法人
注(2)
研究開発型の34法人のうち石油天然ガス・金属鉱物資源機構を除く33法人

エ 自己収入の内容

独立行政法人の各業務類型に特有の自己収入としては、文教研修型については授業料収入、入学料収入及び検定料収入(以下、これらを合わせて「授業料等収入」という。)が、研究開発型については受託研究収入、受託事業収入及び共同研究収入(以下、これらを合わせて「受託研究等収入」という。)が、また、医療診療型については病院収入が挙げられる。同様に、国立大学法人等については授業料等収入及び受託研究等収入が、そのうち国大病院設置型については、それらに加えて病院収入が挙げられる。

そこで、上記の各収入に着目して、業務類型ごとの自己収入の内訳等の21年度から25年度までの推移を示すと表7-1及び表7-2のとおりであり、21年度から25年度までの授業料等収入、受託研究等収入及び病院収入の合計は、業務類型のいずれかに該当する独立行政法人42法人においては、それぞれ1026億余円、1兆3194億余円、5兆8853億余円、また、国立大学法人等全90法人においては、それぞれ1兆7172億余円、1兆5907億余円、4兆3715億余円となっている。

さらに、25年度の状況をみると、文教研修型及び研究開発型については、当該業務類型の業務以外の業務に係る収入額が多額になっている法人をそれぞれ除いた6法人及び33法人でみると、文教研修型においては自己収入計1050億余円のうち授業料等収入が16.0%、研究開発型においては自己収入計3216億余円のうち受託研究等収入が40.9%を占めている。また、医療診療型の9法人においては、自己収入計1兆4278億余円のうち病院収入が89.0%を占めている。そして、国大教育研究型の48法人においては、自己収入計1579億余円のうち授業料等収入及び受託研究等収入がそれぞれ60.5%、31.1%を占めており、また、国大病院設置型の42法人においては、自己収入計1兆5409億余円のうち、授業料等収入、受託研究等収入及び病院収入がそれぞれ15.5%、18.9%、62.3%を占めている。

表7-1 独立行政法人における業務類型ごとの自己収入の内訳等の推移(平成21年度~25年度)

(単位:百万円)

区分 自己収入 平成21年度 22年度 23年度 24年度 25年度
対21年度
増加率
文(
教9
研法
修人
型)
授業料等収入 18,758
(1.6%)
19,469
(1.5%)
20,843
(1.6%)
21,867
(1.6%)
21,750
(1.5%)
15.9% 102,689
(1.6%)
受託研究等収入 16,522
(1.4%)
11,827
(0.9%)
11,800
(0.9%)
10,855
(0.8%)
16,959
(1.1%)
2.6% 67,965
(1.0%)
病院収入 1,010,830
(87.1%)
1,091,691
(87.6%)
1,122,770
(88.4%)
1,157,072
(88.9%)
1,180,150
(82.6%)
16.7% 5,562,515
(86.8%)
その他の収入 113,537
(9.7%)
122,127
(9.8%)
114,409
(9.0%)
110,666
(8.5%)
208,270
(14.5%)
83.4% 669,012
(10.4%)
1,159,649 1,245,115 1,269,824 1,300,462 1,427,130 23.0% 6,402,181

注(4)

6


授業料等収入 13,815
(35.6%)
14,484
(25.7%)
15,999
(18.3%)
17,036
(16.9%)
16,856
(16.0%)
22.0% 78,193
(20.1%)
受託研究等収入 8,578
(22.1%)
3,763
(6.6%)
4,126
(4.7%)
3,455
(3.4%)
9,706
(9.2%)
13.1% 29,629
(7.6%)
病院収入 注(6)
(-%)
18,401
(32.6%)
23,749
(27.2%)
26,839
(26.6%)
28,483
(27.1%)
54.7% 97,473
(25.1%)
その他の収入 16,396
(42.2%)
19,677
(34.9%)
43,182
(49.6%)
53,332
(52.9%)
50,032
(47.6%)
205.1% 182,621
(47.0%)
38,790 56,327 87,058 100,664 105,078 170.8% 387,918
研(
究 3
開 4
発法
型人
 )
授業料等収入 注(6)
(-%)
273
(0.0%)
276
(0.0%)
281
(0.0%)
285
(0.0%)
4.3% 1,116
(0.0%)
受託研究等収入 241,640
(23.6%)
246,656
(17.6%)
256,270
(28.5%)
281,492
(27.0%)
225,998
(18.7%)
△6.4% 1,252,058
(22.5%)
病院収入 注(7) 2,443
(0.2%)
81,936
(5.8%)
102,542
(11.4%)
113,549
(10.8%)
119,859
(9.9%)
46.2% 420,331
(7.5%)
その他の収入 777,698
(76.1%)
1,066,432
(76.4%)
539,524
(60.0%)
647,073
(62.0%)
859,608
(71.2%)
10.5% 3,890,337
(69.9%)
1,021,783 1,395,299 898,613 1,042,396 1,205,752 18.0% 5,563,844

注(5)

3
3


授業料等収入 注(6)
(-%)
273
(0.0%)
276
(0.0%)
281
(0.0%)
285
(0.0%)
4.3% 1,116
(0.0%)
受託研究等収入 144,506
(70.5%)
145,275
(43.2%)
146,267
(41.3%)
126,411
(40.9%)
131,781
(40.9%)
△8.8% 694,242
(45.5%)
病院収入 注(7) 2,443
(1.1%)
81,936
(24.3%)
102,542
(28.9%)
113,549
(36.7%)
119,859
(37.2%)
46.2% 420,331
(27.5%)
その他の収入 57,895
(28.2%)
108,616
(32.3%)
104,624
(29.5%)
68,738
(22.2%)
69,740
(21.6%)
20.4% 409,614
(26.8%)
204,846 336,102 353,710 308,980 321,666 57.0% 1,525,305

医(
療 9
診法
療人
型)

授業料等収入 4,571
(0.4%)
4,929
(0.3%)
4,856
(0.3%)
4,840
(0.3%)
4,920
(0.3%)
7.6% 24,118
(0.3%)
受託研究等収入 8,138
(0.7%)
14,784
(1.1%)
15,533
(1.1%)
15,544
(1.1%)
16,142
(1.1%)
98.3% 70,143
(1.0%)
病院収入 1,013,274
(92.2%)
1,155,226
(89.1%)
1,201,562
(91.6%)
1,243,782
(95.5%)
1,271,527
(89.0%)
25.4% 5,885,373
(91.4%)
その他の収入 72,748
(6.6%)
120,624
(9.3%)
89,471
(6.8%)
37,103
(2.8%)
135,294
(9.4%)
85.9% 455,242
(7.0%)
1,098,732 1,295,564 1,311,425 1,301,270 1,427,884 29.9% 6,434,877
3(
業 4
務 2
類法
型人
計)
授業料等収入 18,758
(0.8%)
19,469
(0.7%)
20,843
(0.9%)
21,867
(0.9%)
21,750
(0.8%)
15.9% 102,689
(0.8%)
受託研究等収入 258,163
(11.8%)
258,355
(9.8%)
267,944
(12.5%)
292,229
(12.6%)
242,804
(9.3%)
△5.9% 1,319,497
(11.1%)
病院収入 1,013,274
(46.4%)
1,155,226
(44.1%)
1,201,562
(56.2%)
1,243,782
(53.8%)
1,271,527
(48.9%)
25.4% 5,885,373
(49.7%)
その他の収入 891,235
(40.8%)
1,183,408
(45.2%)
645,337
(30.2%)
750,702
(32.5%)
1,061,409
(40.8%)
19.0% 4,532,094
(38.2%)
2,181,432 2,616,461 2,135,688 2,308,581 2,597,491 19.0% 11,839,654
注(1)
自己収入の額は、各法人の決算報告書の決算額及び各法人から提出を受けた調書を基に本院が集計したものである。
注(2)
複数の業務類型に該当する法人に係る収入は重複して集計している。
注(3)
括弧書きの数字は、自己収入の計に占める各収入の割合を示す。
注(4)
文教研修業務以外の業務に係る収入額が多額となっている国立病院機構、労働者健康福祉機構及び日本学生支援機構を除く6法人
注(5)
研究開発業務以外の業務に係る収入額が多額となっている石油天然ガス・金属鉱物資源機構を除く33法人
注(6)
国立国際医療研究センターは平成22年4月に設立されたため、「対21年度増加率」欄には対22年度増加率を表示している。
注(7)
国立がん研究センター等6法人は平成22年4月に設立されたため、「対21年度増加率」欄には対22年度増加率を表示している。

表7-2 国立大学法人等における業務類型ごとの自己収入の内訳等の推移(平成21年度~25年度)

(単位:百万円)

区分 自己収入 平成21年度 22年度 23年度 24年度 25年度
対21年度
増加率
国(
大 4
教 8
育法
研人
究)
授業料等収入 100,513
(63.1%)
99,844
(63.7%)
98,056
(63.0%)
96,919
(63.0%)
95,659
(60.5%)
△4.8% 490,994
(62.7%)
受託研究等収入 50,486(31.7%) 48,247(30.7%) 48,466(31.1%) 47,252(30.7%) 49,124(31.1%) △2.6% 243,576
(31.1%)
病院収入 注(4) 109
(0.0%)
109
(0.0%)
91
(0.0%)
102
(0.0%)
111
(0.0%)
1.4% 525
(0.0%)
その他の収入 8,051
(5.0%)
8,484
(5.4%)
8,810
(5.6%)
9,383
(6.1%)
13,050
(8.2%)
62.0% 47,779
(6.1%)
159,160 156,685 155,425 153,659 157,945 △0.7% 782,876
国(
大 4
病 2
院法
設人
置)
授業料等収入 248,907
(18.8%)
249,481
(17.9%)
246,288
(17.2%)
242,694
(16.4%)
238,887
(15.5%)
△4.0% 1,226,259
(17.1%)
受託研究等収入 253,824
(19.2%)
267,902
(19.2%)
265,913
(18.6%)
267,266
(18.0%)
292,243
(18.9%)
15.1% 1,347,151
(18.8%)
病院収入 772,195
(58.5%)
833,478
(59.9%)
879,236
(61.6%)
924,697
(62.5%)
961,455
(62.3%)
24.5% 4,371,063
(61.0%)
その他の収入 44,714
(3.3%)
40,077
(2.8%)
35,620
(2.4%)
44,748
(3.0%)
48,322
(3.1%)
8.0% 213,483
(2.9%)
1,319,643 1,390,939 1,427,059 1,479,405 1,540,909 16.7% 7,157,957
国 
立(
大 9
学 0
法法
人人
等)
計 
授業料等収入 349,421
(23.6%)
349,326
(22.5%)
344,344
(21.7%)
339,613
(20.7%)
334,547
(19.6%)
△4.2% 1,717,253
(21.6%)
受託研究等収入 304,311
(20.5%)
316,149
(20.4%)
314,380
(19.8%)
314,519
(19.2%)
341,368
(20.0%)
12.1% 1,590,727
(20.0%)
病院収入 772,305
(52.2%)
833,587
(53.8%)
879,328
(55.5%)
924,800
(56.6%)
961,566
(56.6%)
24.5% 4,371,588
(55.0%)
その他の収入 52,766
(3.5%)
48,561
(3.1%)
44,431
(2.8%)
54,131
(3.3%)
61,372
(3.6%)
16.3% 261,263
(3.2%)
1,478,803 1,547,624 1,582,485 1,633,064 1,698,854 14.8% 7,940,833
注(1)
自己収入の額は、各法人の決算報告書の決算額及び各法人から提出を受けた調書を基に本院が集計したものである。
注(2)
括弧書きの数字は、自己収入の計に占める各収入の割合を示す。
注(3)
受託研究等収入には、寄附金収入等を含む。
注(4)
国大教育研究型の病院収入は、筑波技術大学保健科学部附属東西医学統合医療センターに係る収入である。

また、各独立行政法人においては、前記の授業料等収入、受託研究等収入及び病院収入以外に、各法人固有の業務に係る自己収入があるほか、業務類型にかかわらず、独立行政法人及び国立大学法人等に共通性のある自己収入として、自動販売機の設置による収入等の施設の貸付け等に係る収入、特許権に係る収入、寄附金収入、余裕金の運用に係る収入等がある。

(2)法人の業務類型ごとに特有の自己収入の状況及びその確保等に向けた取組

独立行政法人及び国立大学法人等の各業務類型の法人に特有の自己収入である授業料等収入、受託研究等収入及び病院収入の状況等を示すと、以下のとおりである。

ア 授業料等収入

(ア)授業料等収入の状況

文教研修型の独立行政法人9法人及び国立大学法人全86法人は、それぞれの法人の目的を達成するために学校等を設置して、授業料、入学料及び検定料(以下、これらを合わせて「授業料等」という。)を徴収しており、授業料等収入の内訳等の21年度から25年度までの状況は、表8のとおりとなっている。

そして、授業料等収入全体では、独立行政法人9法人及び国立大学法人全86法人共に、25年度においては前年度より減少し、対前年度比でみると、それぞれ0.6%及び1.4%の減少となっている。

表8 各法人における授業料等収入の内訳等の状況(平成21年度~25年度)

(単位:百万円)

法人名 学校
数等
区分 年度別の授業料等収入 学校等の設置目的
平成
21年度
22年度 23年度 24年度 25年度





日本学生支援機

(東京日本語教育
センターほか)
2校 授業料 324 290 232 240 227 外国人留学生のため
の日本語教育
入学料 37 31 24 25 25
検定料 9 7 6 5 6
371 329 263 271 258
国立高等専門学
校機構
(函館高等専門学
校ほか)
51校 授業料 11,602 12,024 11,805 11,652 11,596 職業に必要な知識及
び技術を有する人材
の育成
入学料 1,004 977 950 949 969
検定料 339 337 320 333 325
12,945 13,340 13,076 12,935 12,891
高齢・障害・求
職者雇用支援機構
(職業能力開発総
合大学校ほか)
12校 授業料 1,322 2,432 2,302 産業の基盤を支える
人材の育成等
入学料 434 440 417
検定料 49 69 65
1,806 2,941 2,785
労働者健康福祉
機構
(釧路労災看護専
門学校ほか)
9校 授業料 212 210 213 220 243 労災病院における医
療の推進に必要な看
護師等の養成
入学料 33 53 52 52 77
検定料 19 21 21 17 17
265 286 287 291 339
国立病院機構
(北海道医療セン
ター附属札幌看
護学校ほか)
40校 授業料 3,260 3,348 3,307 3,260 3,279 国立病院機構の病院
における看護師等の
養成
入学料 646 625 604 606 601
検定料 194 208 191 187 175
4,101 4,182 4,104 4,055 4,057
国立国際医療研
究センター
(国立看護大学
校)
1校 授業料 221 224 228 232 国立高度専門医療研
究センターの看護師
等の養成
入学料 42 42 42 42
検定料 9 10 11 10
273 276 281 285
水産大学校 1校 授業料 485 478 475 460 447 水産業を担う人材の
育成
入学料 60 58 57 60 53
検定料 23 23 23 28 29
569 560 556 549 531
海技教育機構
(国立小樽海上技
術学校ほか)
8校 授業料 168 176 190 196 209 船員の養成及び資質
の向上
入学料 8 9 11 12 14
検定料 2 2 2 3 3
180 188 204 212 226
航空大学校 1校 授業料 80 84 48 82 98 航空機の操縦に従事
する者の養成
入学料 20 20 15 15 20
検定料 18 16 14 18 17
120 121 77 116 136

(9法人125校)
授業料 16,134 16,835 17,820 18,773 18,637
入学料 1,812 1,819 2,193 2,205 2,221
検定料 607 627 641 674 651
18,554 19,282 20,655 21,654 21,511
対前年度増加率 3.9% 7.1% 4.8% △0.6%
国立大学法人
(86法人)
授業料 293,319 293,465 289,130 284,929 280,409 高等教育及び学術研
究の水準の向上と均
衡ある発展
入学料 45,428 45,075 44,855 44,450 44,218
検定料 10,673 10,785 10,358 10,234 9,919
349,421 349,326 344,344 339,613 334,547
対前年度増加率 △0.0% △1.4% △1.3% △1.4%
注(1)
各法人別の「計」欄の金額は、原則として、決算報告書に基づく表7-1の授業料等収入の金額の内訳と一致するが、国立病院機構については、損益計算書に基づく金額となっているため、一致しない。
注(2)
高齢・障害・求職者雇用支援機構は、平成23年10月に解散した雇用・能力開発機構から業務の一部を移管された。そのため、23年度の授業料等収入額は23年10月から24年3月までの収入額となる。
注(3)
国立大学法人全86法人の授業料等収入の内訳については別表2参照
(イ)授業料等収入の確保等に向けた取組
a 学生数の確保に資する取組の状況

運営費交付金の額の算定に当たり、控除対象となる授業料等収入は、各法人が定める総定員数を基に算出されることなどから、在学生数が総定員数を下回った場合は別の財源で不足分を補てんする必要が生ずることになる。

そこで、独立行政法人9法人及び国立大学法人全86法人における在学生数と総定員数の関係についてみると、表9のとおり、独立行政法人9法人の一部で定員割れを起こしている年度があるものの、独立行政法人9法人及び国立大学法人全86法人のそれぞれの合計では全ての年度で在学生数が総定員を超えている。

表9 在学生数、総定員数等の推移(平成21年度~25年度)

(単位:人)

法人名
(学校名)
区分 平成
21年度
22年度 23年度 24年度 25年度





日本学生支援機構
(東京日本語教育セン
ターほか)
入学希望者数 543 445 327 343 314
入学者数 455 388 290 327 302
入学定員数 540 540 540 540 540
在学生数 433 398 267 319 288
総定員数 745 745 745 745 745
国立高等専門学校機構
(函館高等専門学校ほ
か)
入学希望者数 17,312 17,224 17,180 18,114 17,804
入学者数 10,132 9,818 9,715 9,785 9,685
入学定員数 9,680 9,400 9,400 9,400 9,400
在学生数 53,277 53,509 53,244 52,730 52,192
総定員数 48,400 48,120 47,840 47,560 47,280
高齢・障害・求職者雇用
支援機構
(職業能力開発総合大学
校ほか)
入学希望者数 4,213 3,733 3,858
入学者数 3,161 2,877 2,907
入学定員数 3,010 2,860 2,850
在学生数 7,049 6,349 6,021
総定員数 6,440 6,190 6,030
労働者健康福祉機構
(釧路労災看護専門学校
ほか)
入学希望者数 1,381 1,766 1,864 1,894 1,516
入学者数 379 382 396 374 398
入学定員数 370 370 380 380 380
在学生数 1,116 1,113 1,125 1,139 1,139
総定員数 1,110 1,110 1,120 1,130 1,140
国立病院機構
(北海道医療センター附
属札幌看護学校ほか)
入学希望者数 8,138 9,555 10,078 9,285 9,041
入学者数 2,743 2,723 2,646 2,620 2,654
入学定員数 2,675 2,595 2,605 2,570 2,570
在学生数 7,631 7,684 7,702 7,628 7,703
総定員数 7,775 7,655 7,545 7,440 7,450
国立国際医療研究セン
ター
(国立看護大学校)
入学希望者数 630 530 575 617
入学者数 102 100 101 103
入学定員数 100 100 100 100
在学生数 399 407 412 413
総定員数 400 400 400 400
水産大学校 入学希望者数 712 885 895 888 1,102
入学者数 286 278 266 262 277
入学定員数 245 245 245 245 245
在学生数 970 960 969 941 930
総定員数 810 810 810 810 810
海技教育機構
(国立小樽海上技術学校
ほか)
入学希望者数 739 845 954 993 1,166
入学者数 513 485 475 501 500
入学定員数 560 540 510 510 520
在学生数 1,115 1,104 1,073 1,107 1,117
総定員数 1,245 1,225 1,185 1,160 1,140
航空大学校 入学希望者数 614 618 549 350 454
入学者数 72 72 72 36 72
入学定員数 72 72 72 36 72
在学生数 138 140 141 184 162
総定員数 144 144 144 144 144

(9法人)
入学希望者数 29,439 31,968 36,590 36,175 35,872
入学者数 14,580 14,248 17,121 16,883 16,898
入学定員数 14,142 13,862 16,862 16,641 16,677
在学生数 64,680 65,307 71,977 70,809 69,965
総定員数 60,229 60,209 66,229 65,579 65,139
<参考>総定員数に対する在学生数の割合 107.3% 108.4% 108.6% 107.9% 107.4%
国立大学法人
(86法人)
入学希望者数 497,972 511,042 519,829 508,711 495,628
入学者数 154,445 161,149 160,037 157,924 156,711
入学定員数 153,728 154,252 155,066 155,212 155,206
在学生数 606,147 608,637 608,697 601,714 600,175
総定員数 536,598 537,799 539,488 539,731 540,148
<参考>総定員数に対する在学生数の割合 112.9% 113.1% 112.8% 111.4% 111.1%
(注)
入学希望者とは、学校等への入学を希望して入学試験を受ける者をいう。

しかし、国立社会保障・人口問題研究所の資料(日本の将来推計人口(平成24年1月推計))によれば、近年、我が国の総人口は長期の減少過程に入るとされており、また、大学等の高等教育機関への進学率については横ばいの傾向にあることから、近い将来、学生の総数もこれに伴い減少することが見込まれる。このため、現状においては、定員を充足している法人が多数を占めるものの、今後、入学者数が減少して授業料等収入が減少することも想定されることから、各法人において、運営する個々の学校等の状況を踏まえて学生数の確保等に資する取組を行うことは重要である。

そこで、独立行政法人9法人及び国立大学法人全86法人における上記の取組状況についてみたところ、入学希望者向けの説明会の開催、ホームページでの広報活動の実施、受験会場の複数箇所の設置及び構内見学会の実施等の入学希望者の増加を図るための取組については、ほとんどの法人において実施されている。

また、例えば、信州大学においては国外に居住している外国人入学希望者に対してインターネットによる面接試験を実施したり、埼玉大学及び電気通信大学においては教員が高等学校に赴き模擬講義を実施したりするなど、各法人の実情を踏まえた独自の取組を実施している法人も見受けられる。

独立行政法人9法人及び国立大学法人全86法人は、様々な分野で活躍できる優秀な人材の育成を図るなどのために、授業料等収入を確保し、教育の内容をより充実させて、将来にわたって安定的な学校運営を行っていくために、各法人の実情を踏まえて学生数の確保に資する取組を積極的に行うことが重要である。

b 授業料等の設定及びその見直しの検討状況

独立行政法人及び国立大学法人における運営費交付金の額の算定に当たっては、前記のとおり、恒常的に獲得が想定される自己収入を控除することになっており、原則として、授業料等収入は控除対象とされている。

このうち、国立高等専門学校機構及び国立大学法人における控除対象額は、国立高等専門学校の授業料その他の費用に関する省令(平成16年文部科学省令第17号)及び国立大学等の授業料その他の費用に関する省令(平成16年文部科学省令第16号。以下、これらを合わせて「費用省令」という。)において授業料等の種類ごとに定める額(以下「標準額」という。)に収容定員等を乗じて算定することになっている。標準額は、教育機会の均等を担保するなどの観点から設定されており、各法人は、標準額を基に授業料等の額を定めることとされているが、特別な事情がある場合には、標準額に120%(国立高等専門学校機構は110%)を乗じて得た額を超えない範囲で授業料等の額を設定することができるとされている。そして、標準額を超えた単価を設定するなどして運営費交付金の控除対象額を超過した額については、運営費交付金から控除されることなく、法人の教育経費等に充てることが可能な仕組みとなっている。なお、標準額を下回る金額を設定した場合には、授業料等収入の額が運営費交付金の控除対象額に満たなくなるため、法人の負担により教育経費等を賄うことになる。

そして、費用省令で定める主な区分ごとの標準額は、表10のとおりである。

表10 費用省令における主な区分ごとの標準額(平成26年4月1日現在)

(単位:円)

区  分 授業料
(年額)
入学料 検定料
国立高等専門学校 234,600 84,600 16,500
大学の学部(他の区分で定めているものを除く。) 535,800 282,000 17,000
大学の夜間において授業を行う学部(昼夜開講制であって、専ら夜間において授業を行うものを含む。) 267,900 141,000 10,000
大学院の研究科(他の区分で定めているものを除く。) 535,800 282,000 30,000
法科大学院(専門職大学院であって、法曹に必要な学識及び能力を培うことを目的とするものをいう。) 804,000 282,000 30,000
大学の専攻科(短期大学の専攻科を除く。) 特別支援教育特別専攻科 273,900 58,400 16,500
その他の専攻科 535,800 169,200 18,000
大学の別科 音楽別科 535,800 84,600 9,800
養護教諭特別別
273,900 58,400 8,300
その他の別科 390,000 84,600 9,800
短期大学の学科(専攻科を含む。) 390,000 169,200 18,000
専修学校 166,800 70,000 9,600

一方、国立高等専門学校機構を除く独立行政法人8法人の授業料等には、費用省令の適用はなく、各法人が独自に授業料等の金額の設定を行うことになっている。

そこで、独立行政法人9法人における授業料等の金額の設定状況(26年4月1日現在)についてみると、国立高等専門学校機構の授業料等は全ての学校において標準額と同額に設定されているが、それ以外の独立行政法人8法人の授業料等の金額の設定状況は、表11のとおり、独立行政法人5法人においては、授業料等の金額の設定に当たり標準額と同額としたり、各法人の実情に応じて差を設けたりするなど費用省令を参考としている。

費用省令を参考としている独立行政法人5法人をみると、航空大学校においては、検定料の金額について、受益者負担の観点から標準額を参考としつつ、それを超えた額を設定している。

また、海技教育機構においては、同機構が運営する学校等のうち、海上技術学校等7学校の入学料及び検定料について、近年不足している若手船員の確保のためなどとして無料としているが、海技大学校及び海上技術短期大学校3校の授業料については、費用省令を参考としつつ標準額未満の金額に設定しているものの、見直しの基本方針等を踏まえて段階的に引上げを実施し、30年度までに標準額と同額まで引き上げることとしている。

一方、費用省令を参考とせず、独自に授業料等の金額を設定している独立行政法人3法人をみると、労働者健康福祉機構においては、学校運営状況や他団体所属の看護学校の授業料等の金額と比較検討し、26年度から授業料等の引上げを実施している。

表11 国立高等専門学校機構を除く独立行政法人8法人における授業料等の設定状況(平成26年4月1日現在)

(単位:円)

区分 法人名 学校等 授業料
(標準額)
入学料
(同左)
検定料
(同左)
費用省
令を参
考とし
ている
法人
高齢・障害・求職者雇用支援機構 職業能力開発総合大学校 535,800
(535,800)
282,000
(282,000)
22,500
(17,000)
職業能力開発大学校ほか 390,000
(390,000)
169,200
(169,200)
18,000
(18,000)
国立国際医療研究センター 国立看護大学校(看護学部) 535,800
(535,800)
282,000
(282,000)
17,000
(17,000)
国立看護大学校(研究課程部) 535,800
(535,800)
282,000
(282,000)
30,000
(30,000)
水産大学校 水産大学校 535,800
(535,800)
282,000
(282,000)
30,000
(30,000)
海技教育機構 海上技術学校(4校) 118,800 無料 無料
海上技術短期大学校(3校) 118,800
(166,800)
無料 無料
海技大学校 336,000
(390,000)
194,900 30,500
航空大学校 航空大学校 804,000
(804,000)
282,000
(282,000)
40,000
(30,000)
費用省
令を参
考とし
ていな
い法人
日本学生支援機構 東京日本語教育センター 605,000、
912,500
80,000、
100,000
20,000
大阪日本語教育センター 625,000、
930,000
80,000、
100,000
20,000
労働者健康福祉機構 釧路労災看護専門学校ほか 340,000 180,000 10,400
国立病院機構 北海道医療センター附属札幌看護学校ほか 400,000~
698,000
180,000~
390,000
20,000~
30,000
注(1)
各独立行政法人において、費用省令を参考としている学校等が一つでもある法人については「費用省令を参考としている法人」として整理している。
注(2)
海技教育機構が運営する海技大学校及び海上技術短期大学校(3校)の授業料については費用省令を参考としており、海上技術学校(4校)の授業料においては、費用省令ではなく静岡県内の県立高校の授業料を参考としている。また、いずれの学校においても、入学料及び検定料については費用省令を参考としていない。

また、国立大学法人全86法人における授業料等の金額の設定状況は、表12のとおり、全ての学部等において標準額と同額に設定している法人がほとんどであり、授業料については7法人が、検定料については3法人が、それぞれ標準額と異なる金額を一部の学部等において設定している。

表12 国立大学法人における授業料等の金額の設定状況(平成26年4月1日現在)

(単位:法人)

設定金額 授業料 入学料 検定料
標準額と同額 79 86 83
標準額を超える金額を一部の学部等において設定 2
標準額未満の金額を一部の学部等において設定 5 3

一部の学部等において授業料等の金額を標準額と異なる金額に設定していた国立大学法人10法人の状況は、表13のとおりとなっており、提供する教育の内容等を考慮した上で、標準額と同額の授業料では不足するなどと判断して、標準額より高い授業料を設定しているところと、優秀な学生等の確保や学生の経済的な負担の軽減のためなどの理由により、標準額より低い授業料等を設定しているところがある。

表13 一部の学部等において授業料等を標準額と異なる金額に設定していた国立大学法人の状況(平成26年4月1日現在)

区分 法人名 標準額を適用していない学部等 標準額と異なる額の状況
理由等
標準額
を超え
る金額
を設定
東北大学 会計専門職大学院 授業料:589,300円
(標準額:535,800円)
他の専攻・研究科とは異なる特別の教育活動を実施しており、学内資源を最大限活用してもなお相当の財政負担を伴うため
東京農工大学 大学院工学府産業技術専攻 授業料:572,400円
(標準額:535,800円)
各職業分野で豊富な経験を有する多数の実務家教員を配置し、密度の高い教育を行うため
標準額
未満の
金額を
設定
北海道大学 外国人留学生を対象として特別に編成する学士課程教育プログラム 検定料:5,000円
(標準額:17,000円)
優秀な学生を獲得するためには、教育プログラムそのものの魅力を高め、検定料においても競争力のある金額設定をする必要があるため
北海道教育大学 大学院・教育学研究科 授業料:520,800円
(標準額:535,800円)
現職教員をはじめ大学院教育の就学希望者への門戸の拡大を図るため
北見工業大学 大学院博士後期課程のうち3専攻 授業料:520,800円
(標準額:535,800円)
学生の経済的負担を緩和し、高等教育の機会均等を図ることが重要であるため
千葉大学 大学院博士後期課程等(博士前期課程及び修士課程を除く) 授業料:520,800円
(標準額:535,800円)
予算に対する影響の解析結果を根拠に平成17年度以前の標準額の水準に据え置くことを決定したため
東京大学 博士後期課程・獣医学、医学又は薬学を履修する博士課程ほか 授業料:520,800円
(標準額:535,800円)
欧米の有力大学では博士課程の学生に潤沢な奨学金を支給していることや、博士課程は親の収入に頼らない学生の比率が高いことから学生の経済的負担の軽減を図るため
東京外国語大学 大学院総合国際学研究科 検定料:10,000円
(標準額:30,000円)
志願者は途上国出身者が多いことや、口述試験のみで選抜を行っていることから、標準額の検定料では均衡を欠くなどのため
横浜国立大学 教育人間科学部 検定料:5,000円
(標準額:17,000円)
優秀な学生の確保のため
大学院国際社会科学府 検定料:5,000円
(標準額:30,000円)
優秀な学生の確保のため
三重大学 医学系研究科博士課程ほか3課程 授業料:520,800円
(標準額:535,800円)
優秀な研究者の養成・確保のため

一方、標準額と同額に設定している国立大学法人について、その理由を確認したところ、標準額と異なる授業料等を設定する特別の事情がない、標準額より高く設定した場合の学生確保に支障を来す可能性がある、標準額と異なる授業料等の設定について特段の検討を行ったことがないなどとなっている。

そこで、独立行政法人9法人及び国立大学法人全86法人において、21年度から25年度までの間における授業料等の金額の検討状況についてみたところ、表14のとおり、検討委員会等を設置したり、学内の会議等において議題としたりして検討の実績がある法人は、独立行政法人で3法人、国立大学法人で10法人にとどまっており、授業料等の金額について積極的な検討はされていない状況が見受けられる。

表14 授業料等の金額の検討状況(平成21年度~25年度)

区分 委員会等を設置している法人における1年当たりの平均検討回数

(平成21年度~25年度)

1回未満 1~2回未満 2回以上
独立行政法人 労働者健康福祉機構 海技教育機構 国立病院機構
国立大学法人 岩手大学
東京海洋大学
お茶の水女子大学
九州大学
室蘭工業大学
山形大学
茨城大学
広島大学
長崎大学
北海道大学
c 授業料等に係る債権の状況及び未納防止対策等の取組

学生数を確保しても、これに見合った授業料等収入を確保するためには、収納を確実に行う必要があることから、授業料等に係る債権の管理を適切に行うことが重要となる。

そこで、独立行政法人9法人及び国立大学法人全86法人における21年度から25年度までの各年度末における授業料等に係る債権額についてみると、表15のとおり、25年度の授業料等収入に対する債権額の割合は、最大でも国立大学法人全86法人の1.09%となっている。

表15 各年度末における授業料等に係る債権の状況(平成21年度~25年度)

(単位:千円)

法人等名

平成
  21年度

22年度 23年度 24年度 25年度 25年度の授業料
等収入に対する
債権額の割合





日本学生支援機構(2校) -%
国立高等専門学校機構(51校) 21,515 16,841 27,562 18,607 18,178 0.14%
高齢・障害・求職者雇用支援機構(12校) -%
労働者健康福祉機構(9校) 16 32 305 0.09%
国立病院機構(40校) 1,290 1,095 929 700 1,536 0.03%
国立国際医療研究センター 267 267 267 267 0.09%
水産大学校 -%
海技教育機構(8校) 4,417 2,060 3,538 2,985 1,191 0.52%
航空大学校 1,274 318 491 0.35%
国立大学法人(86法人) 3,676,190 3,886,468 3,895,993 3,726,301 3,651,064 1.09%
(注)
債権の額には、授業料に係る債権のほか、免除予定となっている入学料に係る債権等が含まれる。

なお、表15における国立高等専門学校機構及び国立大学法人全86法人の各年度末の債権額には、入学する年度の前年度に入学予定者が免除申請を行い未納となっている入学料に係る債権が多く含まれているが、これらは入学後に免除決定されるため、入学の前年度末に一時的に計上されるものである。

また、国立高等専門学校機構及び国立大学法人においては、多くの法人において授業料の未納が半年間又は1年間継続した場合には、各法人が定めた規程等に基づき、滞納している学生に対して除籍処分を行い、同時期に授業料に係る債権を放棄することとしていることから、各年度中に放棄された債権は、原則として表15における年度末時点の債権額には計上されていない。

そこで、国立高等専門学校機構及び国立大学法人全86法人において、年度中に放棄された債権を含めた授業料に係る債権の状況等をみると、表16のとおりとなっている。

表16 年度中に放棄されたものを含めた授業料に係る債権の状況等(平成21年度~25年度)

(単位:人、千円)

法人等 区分 平成
21年度
22年度 23年度 24年度 25年度 5か年平均
国立高等専門学校機構
(51校)
未納者数
(在学生数)
13
(53,277)
7
(53,509)
23
(53,244)
20
(52,730)
45
(52,192)
21
(52,990)
授業料に係る債権額 2,070 946 2,220 1,357 3,122 1,943
国立大学法人
(86法人)
未納者数
(在学生数)
2,501
(606,147)
2,862
(608,637)
2,629
(608,697)
2,252
(601,714)
2,115
(600,175)
2,471
(605,074)
授業料に係る債権額 753,379 880,025 745,983 646,987 607,754 726,826
(注)
国立大学法人全86法人における未納者数及び授業料に係る債権額の内訳については別表3参照

次に、授業料の未納防止対策や授業料に係る債権の督促等について、国立高等専門学校機構の各学校と各国立大学法人における納付義務等の説明及び督促等の実施状況をみると、表17のとおりであり、国立高等専門学校機構においては、納付義務等の説明、督促等共に保護者(保証人)に対しての実施率が高い。一方、国立大学法人においては、納付義務等の説明の段階で学生に対する説明の実施率が高く、授業料に係る債権が発生した以降に保護者(保証人)への督促の実施率が高くなっている。

授業料等の未納については、その発生状況等を踏まえつつ、今後も引き続き授業料の未納防止対策や授業料に係る債権の督促等について適切に行う必要がある。

表17 納付義務等の説明及び授業料に係る債権の督促等の実施状況(平成25年度)

未納防止対策・督促等の実施内容 国立高等専門学
校機構(学校)
左の実施率 国立大学法人
(法人)
左の実施率
納付義務等の説明 対学生等 24 46.1% 75 87.2%
対保護者(保証人) 47 90.3% 56 65.1%
未納時の督促等 学生等への面談指導 22 42.3% 57 66.2%
保護者(保証人)への督促 47 90.3% 82 95.3%
注(1)
学校(法人)数については、複数項目に回答している法人がある。
注(2)
納付義務等の説明又は授業料に係る債権の督促等のいずれも実施していない法人はない。
注(3)
国立高等専門学校機構及び国立大学法人における法人数等の内訳については別表10参照

なお、前記のとおり、多くの法人において授業料の未納が1年間継続した場合には、各法人が定めた規程等に基づき、滞納している学生に対して除籍処分を行い、同時期に授業料に係る債権を放棄しているが、次のとおり、除籍処分と同時期に授業料に係る債権を放棄しない取扱いをしている法人も見受けられる。

<参考事例1>除籍処分と同時期に授業料に係る債権を放棄しない取扱いをしているもの

京都大学は、授業料の未納期間が2年を経過した時点で除籍処分を行うこととしている。その際、除籍した者に対して除籍後3年が経過するまで同大学への再入学の権利を与えており、除籍処分と同時期に授業料に係る債権を放棄するのではなく再入学の権利が消滅するまで債権を管理している。

上記のような取扱いは、除籍後においても学生に対して再入学の機会を与えつつ法人における授業料収入の確保にもつながる余地があると考えられる。

イ 受託研究等収入

(ア)受託研究等収入の状況

研究開発型に該当する独立行政法人34法人及び国立大学法人等全90法人は、研究開発業務及び教育研究業務を実施している。

これらの法人が実施する研究開発業務を主として財源に着目して分類すると、次の3種類に区分できる。

① 中期計画等に定められた法人の業務としての研究テーマを国等から交付を受けた資金を財源として実施する研究開発

② 法人が行う研究への相乗効果が期待できるなど法人にとって有益と考えられる場合に、国、地方公共団体等の公的機関又は民間企業等との契約に基づき委託を受けて行う研究又は事業で、これに要する経費を原則として委託者が負担する受託研究又は受託事業

③ ②と同様の場合に、独立行政法人又は国立大学法人等の研究者等が公的機関や民間企業等の研究者等と共同して共通の課題等について行う研究で、法人又は公的機関や民間企業等との経費の分担は両者が協議して定める共同研究

上記の研究開発業務のうち、受託研究、受託事業及び共同研究(以下、これらを合わせて「受託研究等」という。)については、契約件数を増やしたり、契約に基づき必要な費用を確実に請求したりすることなどにより、受託研究等収入の拡大に寄与するものである。

そして、このことは、受託研究等収入が決算報告書の決算額に計上されている文教研修型及び医療診療型の独立行政法人においても同様である。

そこで、三つの業務類型のいずれかに該当する独立行政法人42法人及び国立大学法人等全90法人において実施された受託研究等について、21年度から25年度までの各年度の契約件数及び契約金額の推移をみると、表18のとおりとなっている。

表18 受託研究等に係る契約件数及び契約金額の推移(平成21年度~25年度)

(単位:件、百万円)

区分 平成21年度 22年度 23年度 24年度 25年度
独立行政
法人
(42法人)
契約件数
注(1)
受託研究 2,846 3,005 3,209 3,214 3,265
受託事業 5,419 5,605 5,208 5,606 5,685
共同研究 2,098 2,396 2,749 3,009 2,940
10,363 11,006 11,166 11,829 11,890
対前年度増加率 6.2% 1.4% 5.9% 0.5%
契約金額
注(1)
受託研究 111,560 104,562 92,043 109,894 95,722
受託事業 112,098 207,081 108,453 167,669 129,568
共同研究 5,643 6,666 6,586 7,018 7,514
229,303 318,311 207,083 284,583 232,806
対前年度増加率 38.8% △34.9% 37.4% △18.1%
国立大学
法人等
(90法人)
契約件数
注(1)
受託研究 11,806 11,320 12,147 12,351 12,687
受託事業 5,947 5,171 5,514 5,978 6,114
共同研究 11,904 12,472 12,914 13,148 13,609
29,657 28,963 30,575 31,477 32,410
対前年度増加率 △2.3% 5.5% 2.9% 2.9%
契約金額
注(1)
受託研究 129,479 129,372 125,894 123,171 134,029
受託事業 16,271 18,659 15,303 16,746 20,338
共同研究 32,222 34,613 33,775 34,718 39,451
177,973 182,646 174,973 174,636 193,819
対前年度増加率 2.6% △4.2% △0.1% 10.9%
注(1)
受託研究等に係る契約件数は原則として受入金(契約金額のうち当該年度に受け入れた金額)の受入れの件数に基づくものであり、契約金額は受入金の金額に基づくものである。
注(2)
治験は、受託研究に含まれていない。
注(3)
国立がん研究センター等6法人は、平成22年4月に設立された。
注(4)
法人ごとの状況については別表4から別表6参照

独立行政法人42法人については、受託研究等の契約件数は年々増加する傾向となっており、25年度の契約件数は、対前年度比で0.5%の増加となっているものの、25年度の契約金額は、対前年度比で18.1%の減少となっている。

国立大学法人等全90法人については、受託研究等の契約件数及び契約金額共に、25年度において、21年度以降の5年間で最大となっており、契約件数は対前年度比で2.9%、契約金額は同10.9%のそれぞれ増加となっている。

(イ)受託研究等収入の確保等に向けた取組

a 中期計画等における受託研究等に係る目標の設定等及び受託研究等の増加に向けた取組

独立行政法人及び国立大学法人等は、業務運営に関する中期目標に従い、その目標達成のための中期計画及び年度計画を作成して、当該計画の期間における業務の実績について各府省に設置された評価委員会等により評価を受けることとされている(注1)。

(注1)
「独立行政法人通則法の一部を改正する法律」(平成26年法律第66号)の施行に伴い、27年4月以降は、独立行政法人は、中(長)期目標又は年度目標に従い、中(長)期計画又は事業計画及び年度計画を作成して、当該計画の期間における業務の実績について、主務大臣による評価を受けることとされている。

そこで、26年度を含む中期計画及び26年度計画における受託研究等に係る目標の設定状況についてみると、表19のとおりとなっている。

表19 平成26年度を含む中期計画等における受託研究等に係る目標の設定状況

(単位:法人)

区分 受託研究 受託事業 共同研究
独立行政法人
(42法人)
目標設定あり 24(57.1%) 15(35.7%) 25(59.5%)
目標設定なし(注) 18(42.8%) 27(64.2%) 17(40.4%)
42(100%) 42(100%) 42(100%)
国立大学法人等
(90法人)
目標設定あり 53(58.8%) 43(47.7%) 56(62.2%)
目標設定なし(注) 37(41.1%) 47(52.2%) 34(37.7%)
90(100%) 90(100%) 90(100%)
(注)
目標設定をしていない法人数の内訳については別表10参照

独立行政法人については、42法人のうち、26年度を含む中期計画等において、受託研究等に係る目標設定をしている法人の割合は、受託研究、受託事業及び共同研究の別に、それぞれ57.1%、35.7%、59.5%となっている。

国立大学法人等については、全90法人のうち、受託研究等に係る目標設定をしている法人の割合は、受託研究、受託事業及び共同研究の別に、それぞ58.8%、47.7%、62.2%となっており、国立大学法人等の方が、独立行政法人に比べて、受託研究等に係る目標設定をしている法人の割合が高い状況となっている。

26年度を含む中期計画等において、受託研究等に係る目標設定をしていない法人については、法人の目的に留意しつつ、可能な範囲で目標を設定して業務を実施することが、受託研究等の増加に向けた新たな機会を得ることにつながると考えられる。

また、独立行政法人及び国立大学法人等の各法人の中には、受託研究等を増加させるための取組を検討する委員会を設けるなど、積極的な取組を行っている法人がある。そこで、上記の委員会の設置状況等についてみると、表20のとおり、設置している法人は、独立行政法人では、42法人のうち7法人(設置率16.6%)、国立大学法人等では、全90法人のうち48法人(同53.3%)となっている。また、1年当たりの平均開催回数(23年度から25年度実績の平均。電子メールによる実施とする1法人を除く。)は、独立行政法人では、4回以下(四半期に1回以下)であった法人が4法人(66.6%)、4回超であった法人が2法人(33.3%)、国立大学法人等では、同15法人(31.2%)、同33法人(68.7%)となっていて、国立大学法人等は、独立行政法人に比べて、設置率が高く、1年当たりの平均開催回数が多い状況となっている。

表20 受託研究等を増加させるための取組を検討する委員会の設置状況等

(単位:法人)

区分 委員会の設置:
1年当たりの開催回数(平成23~25年度実績の平均) 委員会の設置:
0回 0回超~1回 1回超~2回 2回超~4回 4回超~10回 10回超
独立行政法人(42法人) 7 2 2 2 35
国立大学法人等(90法人) 48 6 6 3 15 18 42
(注)
独立行政法人で「有」と回答した法人のうち、1法人は電子メールによる実施であるため、委員会開催回数の集計は行っていない。

受託研究等を増加させるためには、対外的な情報発信等により、民間企業等への認知度を高めるなどの取組も重要であると考えられる。そこで、各法人において受託研究等の増加に向けた対外的な情報発信等に係る取組が検討されているか確認したところ、表21のとおり、検討を行っていると回答した法人は、独立行政法人では42法人のうち24法人(57.1%)、国立大学法人等では全90法人のうち76法人(84.4%)となっている。

表21 受託研究等の増加に向けた対外的な情報発信等に係る取組の検討の有無(平成25年度)

(単位:法人)

区分
独立行政法人(42法人) 24(57.1%) 18(42.8%) 42(100%)
国立大学法人等(90法人) 76(84.4%) 14(15.5%) 90(100%)

また、上記の取組を検討しているとした独立行政法人24法人及び国立大学法人等76法人における具体的な取組内容の実施状況についてみると、表22のとおり、「その他」の項目を除く「研究シーズ等の通信媒体等(ウェブサイト等)による発信」等の4項目について、それぞれ実施したとする法人数の割合は、独立行政法人では33.3%から66.6%、国立大学法人等では64.4%から86.8%となっており、いずれの項目も独立行政法人より国立大学法人等が高い割合となっている。

表22 受託研究等の増加に向けた具体的な取組の実施状況(平成25年度)

(単位:法人)

取組内容 独立行政法人 取組を検討し
ている24法人に
対する率
国立大学法人等 取組を検討し
ている76法人に
対する率
研究シーズ等の通信媒体等(ウェブサイト等)による発信 16 66.6% 66 86.8%
研究シーズ等に関係する各種会合への出展等 15 62.5% 65 85.5%
研究シーズ等の個別の民間企業に対する訪問による紹介 8 33.3% 49 64.4%
研究シーズ等の産学官連携コーディネータ等による発信 10 41.6% 53 69.7%
その他(民間企業等との意見交換の場を設けたなど) 5 20.8% 16 21.0%
特になし 3 12.5% 6 7.8%

b 民間企業からの受託研究及び受託事業の実施に要する経費の状況等

国等又は民間企業からの受託研究及び受託事業に係る契約の実施に要する費用の内訳としては、受託研究又は受託事業を担当する教授、研究者等の常勤職員(以下「研究担当者等の常勤職員」という。)の人件費、研究補助者等の非常勤職員の人件費、旅費、設備費等の当該研究等の遂行に必要な経費である直接経費と、当該研究等の遂行に関連し、直接経費以外に必要となる一般管理費等の間接経費とがある。

(a)受託研究契約及び受託事業契約における研究担当者等の常勤職員に係る人件費の取扱い

独立行政法人42法人及び国立大学法人等全90法人が民間企業の委託を受けて締結する受託研究契約及び受託事業契約においては、運営費交付金で人件費が賄われる常勤職員が研究担当者等として従事する場合がある。そこで、受託研究契約と受託事業契約の別に、委託者への請求金額において当該常勤職員の人件費を算定しているかについてみたところ、表23のとおり、受託研究契約については、上記のような場合に該当する契約があるとしている法人が、独立行政法人34法人、国立大学法人等87法人となっており、このうち、独立行政法人11法人において、研究担当者等の常勤職員の人件費を算定している。

また、同様に、受託事業契約については、該当する契約があるとしている法人が、独立行政法人17法人、国立大学法人等65法人となっており、このうち、独立行政法人5法人において算定している。

表23 委託者(民間企業)への請求金額における研究担当者等の常勤職員の人件費の算定の有無

(単位:法人)

区分 算定している 算定していない(注)
受託研究 受託事業 受託研究 受託事業 受託研究 受託事業
独立行政法人 11 5 23 12 34 17
国立大学法人等 87 65 87 65
(注)
研究担当者等の常勤職員の人件費の算定をしていない法人数の内訳については別表10参照

一方、上記以外の独立行政法人(受託研究契約について23法人、受託事業契約について12法人)及び全国立大学法人等(受託研究契約について87法人、受託事業契約について65法人)は、委託者への請求金額において研究担当者等の常勤職員の人件費を算定していない。このため、研究担当者が常勤の教授のみであった結果、契約金額は全て備品消耗品代及び間接経費で占められている契約も見受けられる。この理由について、各法人では、受託研究及び受託事業の研究内容等は当該法人の研究者等が実施している研究テーマに沿ったものであり、その研究成果等は法人の研究にも資すること、研究担当者等の常勤職員の人件費は運営費交付金で賄われていることなどによるとしている。

しかし、受託研究契約及び受託事業契約においては、研究担当者等の常勤職員が当該契約を履行するための業務に従事している。そして、委託者が国等である場合には、専ら国等が公の目的のために研究成果等を利用することになるが、委託者が民間企業である場合には、当該民間企業は委託者として自らの経済活動に研究成果等を利用することで、研究成果等に係る利益を直接享受することが可能となる。これらのことから研究担当者等の常勤職員の人件費については、受託研究及び受託事業の研究成果等に対する研究担当者等の労働提供の寄与度等を考慮するなどして、民間企業である委託者に負担を求めることを検討する余地がある。

(b)民間企業との受託研究契約における間接経費の算定状況

受託研究契約における間接経費は、受託者が契約に基づいて研究を確実に履行するために、研究者等の研究開発環境の改善や受託した法人全体の機能の向上に資するものとして必要な費用である。具体的な費用については、各法人が委託者との合意の下、契約によって定めることになるが、その際の標準とされる間接経費率は、各法人の受託研究契約に係る規程等で定められており、ほとんどの法人において、直接経費に一定の間接経費率を乗じて算定することになっている。

そこで、受託研究契約に係る標準的な間接経費率を法人の規程等に定めている独立行政法人35法人及び国立大学法人等88法人、計123法人について、受託研究契約に係る標準的な間接経費率の設定状況をみると、表24のとおりとなっている。

表24 受託研究契約に係る標準的な間接経費率の設定状況

(単位:法人)

区分 直接経費の
30%未満
直接経費の30% 直接経費の30%超

間接経費率を幅を
もって設定してい
るものなど

独立行政法人(35法人) 16(45.7%) 14(40.0%) 3(8.5%) 2(5.7%) 35(100%)
国立大学法人等(88法人) 8(9.0%) 78(88.6%) 1(1.1%) 1(1.1%) 88(100%)
計(123法人) 24(19.5%) 92(74.7%) 4(3.2%) 3(2.4%) 123(100%)

上記の123法人のうち、92法人(74.7%)において標準的な間接経費率を直接経費の30%に設定しているが、独立行政法人については、直接経費の30%未満としている法人が半数近く見受けられ、30%超としている法人も1割近く見受けられる。一方、国立大学法人等については78法人(88.6%)において標準的な間接経費率を直接経費の30%と設定している。これは、国立大学等が法人化される以前に適用されていた「受託研究の取扱いについて(通知)」(平成14年13文科振第1179号)において、「競争的資金以外の研究費について委託者の負担する額を算定する場合は、間接経費は直接経費の30%に相当する額を標準」とするとされており、現在もこれに準拠している法人が多いことによると思料されるが、30%未満としている法人も1割近く見受けられる。

そこで、各法人における受託研究契約に係る標準的な間接経費率の見直しの状況についてみると、表25のとおり、独立行政法人及び国立大学法人等のいずれにおいても「見直しなし」とする法人数が、「見直しを実施」とする法人数を上回っている。

表25 受託研究契約に係る標準的な間接経費率の見直しの状況

(単位:法人)

区分 見直しを実施 見直しなし
独立行政法人 (35法人) 14(40.0%) 21(60.0%) 35(100%)
国立大学法人等(88法人) 9(10.2%) 79(89.7%) 88(100%)
計(123法人) 23(18.6%) 100(81.3%) 123(100%)

受託研究契約に係る標準的な間接経費率については、各法人と委託者との間で契約上定める間接経費率の基となるものであることから、実態に見合った金額となる間接経費率となっているか、受託研究契約の受入れの機会促進に寄与するものとなっているかなどについて各法人において適宜検討する必要があると思料される。

(c)民間企業との受託研究契約における直接経費の精算状況

受託研究契約における直接経費については、研究補助者等の非常勤職員の人件費、旅費、設備費等の当該研究等の遂行に必要な経費の金額を算定しているが、これらの中には契約時には金額が確定できないため、金額を概算で算出している場合がある。そこで、民間企業との契約金額を契約履行のための支出額が上回る場合の精算処理の取扱いについてみると、表26のとおり、上記のような場合の取扱いを規程等に定めている独立行政法人38法人及び国立大学法人等88法人のうち、運営費交付金や自己収入等により自らが負担するとした法人が、独立行政法人で22法人(57.8%)、国立大学法人等で60法人(68.1%)見受けられる。

表26 受託研究契約における契約金額を支出額が上回る場合の各法人の取扱い

(単位:法人)

区分 委託者側に
請求 注(1)
法人側が
負担 注(2)
独立行政法人 (38法人) 16(42.1%) 22(57.8%) 38(100%)
国立大学法人等(88法人) 28(31.8%) 60(68.1%) 88(100%)
計(126法人) 44(34.9%) 82(65.0%) 126(100%)
注(1)
「委託者側に請求」には、支出額が概算額を上回ることが見込まれる場合には契約変更等を行うと回答した法人を含む。
注(2)
「法人側が負担」には、委託者と協議の結果、法人側が負担する場合があると回答した法人を含む。

受託研究契約を締結するに当たり、あらかじめ金額が確定できない経費が含まれる場合には、委託者と協議した上で、精算条項を設けることなどにより、追加負担について委託者に明示する必要がある。

c 共有に係る特許権等に関する契約内容の状況等

共同研究においては、研究に要する経費等の分担は共同研究契約において各契約当事者間の協議により定めることになる。そして、研究の結果、得られた発明の中には特許権等の知的財産権につながるものがある。そのような場合には、共同研究の相手方と協議した上で、特許権等に係る共同出願契約を締結して、権利化された後の特許権等に対する法人の発明等に係る貢献度等に基づく適切な権利の帰属割合を定め、また、出願、登録や維持等に要する費用(以下「特許出願費用等」という。)の負担について、権利の帰属割合等に基づく合理的な負担割合を定めることが重要である。

また、特許権等を共同研究の相手方である民間企業や第三者に実施させるなどした場合には、特許権等の実施や第三者に対する実施許諾に関する契約を締結して、独立行政法人又は国立大学法人等が、委託者等が特許権等を実施した場合に契約に基づいて得る収入(以下「特許権等収入」という。)について、適切な評価に基づく分配割合を確保できるよう契約内容に定めることが重要である。

そこで、独立行政法人42法人及び国立大学法人等全90法人について、共有に係る特許権等の権利の帰属割合及び特許出願費用等の負担割合並びに共有に係る特許権等から生ずる特許権等収入の分配割合等の状況をみると、次のとおりである。

(a)共有に係る特許権等の権利の帰属割合及び特許出願費用等の負担割合の状況

上記の各法人の民間企業との共同出願契約についてみたところ、共同研究によって発生した共有に係る特許権等の権利の帰属割合の決定方法については、各契約当事者間の協議に基づき、原則的には共有に係る特許権等の取得に対して法人の寄与した程度(貢献度)によるとしている法人が多く見受けられる。

また、共同研究により得られた成果について、特許出願費用等が生ずるとしていた独立行政法人23法人及び国立大学法人等69法人について、特許出願費用等に係る法人の負担割合の状況を、その法人が有する当該権利の帰属割合との関連でみると、表27のとおりとなっている(共同出願契約について1法人当たり最大10件を抽出して検査した結果による。)。これによると、特許出願費用等の負担割合を共有に係る特許権等の権利の帰属割合によるとしている法人が、独立行政法人で62.9%(件数割合68.0%)、国立大学法人等で35.7%(同25.5%)見受けられる。

表27 特許出願費用等の負担割合の状況

(単位:件、法人)

負担割合 独立行政法人 国立大学法人等
件数 法人数 件数 法人数
0% 29(30.8%) 9(33.3%) 353(73.8%) 60(61.2%)
権利の帰属割合未満(ただし0%超) 1(1.0%) 1(3.7%) 3(0.6%) 3(3.0%)
権利の帰属割合と同じ 64(68.0%) 17(62.9%) 122(25.5%) 35(35.7%)
権利の帰属割合超(ただし100%未満) -( -%) -( -%) -( -%) -( -%)
100% -( -%) -( -%) -( -%) -( -%)
94(100%) 27(100%) 478(100%) 98(100%)
(注)
法人数については、複数項目に回答している法人がある。

一方、法人の中には、特許権等を自ら事業に有効活用して収益を上げることが難しいことから、ガイドラインを設けるなどして、共同出願契約において、これらの費用負担を共同研究の相手方であり、営利性のある事業を実施する民間企業に全額求めているものがあり、その法人数の割合は、独立行政法人で33.3%(件数割合30.8%)、国立大学法人等で61.2%(同73.8%)となっている。

(b)共有に係る特許権等から生ずる特許権等収入の分配割合等

  民間企業との共有に係る特許権等から特許権等収入が生ずるなどとしていた独立行政法人12法人及び国立大学法人等32法人について、特許権等収入の共有者との分配割合の状況を、その法人が有する当該権利の帰属割合との関連でみると、表28のとおりとなっている(特許権等の実施に関する契約等について1法人当たり最大10件を抽出して検査した結果による。)。

これによると、共有に係る特許権等から生ずる特許権等収入の分配割合を、共有に係る特許権等の権利の帰属割合(前記の特許出願費用等の負担割合と同じ場合を含む。)によるとしている法人が独立行政法人及び国立大学法人等のいずれも8割を超えており、件数でみても独立行政法人で7割を超え、国立大学法人等で9割を超えている。

表28 共有に係る特許権等から生ずる特許権等収入の分配割合

(単位:件、法人)

分配割合 独立行政法人 国立大学法人等
件数 法人数 件数 法人数
0% 9(18.3%) 1(8.3%) 6(3.1%) 3(8.5%)
権利の帰属割合未満(ただし0%超) 2(4.0%) 1(8.3%) -( -%) -( -%)
権利の帰属割合と同じ 38(77.5%) 10(83.3%) 180(95.7%) 31(88.5%)
権利の帰属割合超(ただし100%未満) -( -%) -( -%) 2(1.0%) 1(2.8%)
100% -( -%) -( -%) -( -%) -( -%)
49(100%) 12(100%) 188(100%) 35(100%)
(注)
法人数については、複数項目に回答している法人がある。

一方、僅かではあるが権利の帰属割合を上回る分配割合としている場合や、収入が見込めないなどの理由から権利の帰属割合を下回る分配割合としていて、法人の貢献度に見合った収入の分配が見込まれないものも見受けられる。

また、上記の抽出して検査したものとは別に、法人の取扱いとして、法人が受け取る特許権等収入を定額の一時金のみとする場合があるとしている法人が、独立行政法人で1法人、国立大学法人等で9法人に見受けられる。これらは、当該法人において将来的に収入の発生があまり見込まれないと想定していることなどによるものであるが、共有に係る特許権等から想定を上回る特許権等収入が生じた場合にはその利益を十分に享受できない可能性がある。

その一方で、特許権等の実施に伴って、特許権等の実施に関する契約等の締結時に想定していた以上の利益をもたらす場合には、将来発生する利益の分配について改めて協議することができるよう、当該契約に、あらかじめ、「本知的財産権を契約相手方(乙)又はその指定する者が実施し、顕著な利益を上げたときには、法人(甲)は乙に対し、本知的財産権の甲の持分に応じた実施料の支払について協議を申し入れることができ、乙は協議に必ず応ずるものとする。」との条項を設け、特許権等収入の分配についての再協議を義務付けることを明示した契約を締結している法人も見受けられる。

このような状況を踏まえて、各法人においては、共有に係る特許権等の実施に関する契約等の締結に当たっては、契約相手方と協議した上で、当該特許権等の実施により生ずる特許権等収入について、法人の貢献度等に見合った収入の分配が見込まれるような契約内容を検討する必要がある。

ウ 病院収入

(ア)病院収入の状況

医療診療型の独立行政法人9法人及び国大病院設置型の国立大学法人42法人は、いずれも病院を設置し運営している。これらの法人が設置している各病院は、それぞれ国民の健康に重大な影響のある疾病に関する医療や高度の医療を提供する使命を担っており、これらの医療の提供の対価としての病院収入を確保、増加していくことは、安定的な病院運営を図る上で重要となる。

なお、多くの病院においては、病院収入を収納額ではなく損益計算ベースの病院収益として管理している。そこで、前記の独立行政法人9法人及び国立大学法人42法人について、病院収益の21年度から25年度までの推移等をみると、表29のとおり、25年度の病院収益は、独立行政法人で計1兆2464億余円、国立大学法人で計9516億余円となっており、いずれも年々増加している。

表29 病院収益の推移等(平成21年度~25年度)

(単位:百万円)

法人名 区分 注(1) 病院収益 病院の機能
平成
21年度
22年度 23年度 24年度 25年度







放射線医学総合研
究所(1病院)
注(2)
入院収益 483 425 431 490 463 放射線による人体の障害に係る医療の提供、研究等
外来収益 311 308 287 304 342
先進医療収益 1,601 1,438 1,551 2,138 2,361
2,396 2,172 2,270 2,932 3,167
労働者健康福祉機
構(34病院)
入院収益 178,899 188,975 191,786 196,605 196,641 業務災害等の被災労働者に係る医療の提供、教育、研究等
外来収益 70,250 70,743 72,243 72,101 72,853
249,150 259,718 264,029 268,707 269,495
国立病院機構
(143病院)
入院収益 618,775 661,755 673,504 685,984 700,234 重症心身障害等に係る医療の提供、教育、研究等
外来収益 129,306 137,611 144,484 152,542 160,700
748,081 799,367 817,989 838,526 860,935
国立がん研究セン
ター(2病院)
入院収益
19,328 19,417 20,832 21,720 がんその他の悪性新生物に係る医療の提供、研究等
外来収益 10,735 11,512 12,148 13,239
30,063 30,930 32,980 34,960
国立循環器病研究
センター(1病院)
入院収益
16,270 16,678 17,803 18,981 循環器病に係る医療の提供、研究等
外来収益 1,715 1,841 1,978 2,161
17,986 18,519 19,782 21,142
政国立精神・神経医
法療研究センター(1
病院)
入院収益
4,879 5,420 6,019 6,181 精神疾患、神経疾患等に係る医療の供、研究等
外来収益 1,002 1,075 1,136 1,168
5,881 6,496 7,155 7,350
国立国際医療研究
センター
(2病院)
入院収益
15,840 16,770 18,197 19,623 感染症その他の疾患に係る医療の提供、教育、研究等
外来収益 5,680 6,290 7,109 7,437
21,520 23,061 25,306 27,060
国立成育医療研究
センター(1病院)
入院収益
10,710 11,058 12,858 12,348 児童の成育のために治療を要する疾患に係る医療の提供、研究等
外来収益 3,173 3,792 4,179 4,495
13,884 14,851 17,038 16,843
国立長寿医療研究
センター(1病院)
入院収益
2,899 3,284 3,711 3,987 加齢に伴う疾患に係る医療の提供、研究等
外来収益 1,116 1,382 1,479 1,520
4,016 4,667 5,190 5,507
合計
(9法人186病院)
入院収益 798,158 921,085 938,352 962,502 980,184
外来収益 199,869 232,087 242,911 252,980 263,918
先進医療収益
1,601 1,438 1,551 2,138 2,361
999,628 1,154,611 1,182,815 1,217,621 1,246,464
対前年度増加率 15.5% 2.4% 2.9% 2.3%
国立大学法人42法人
(45病院)
入院収益 572,721 622,924 647,004 676,091 693,749 高度医療の提供、教育、研究等
外来収益 196,503 212,330 227,492 242,042 257,945
769,224 835,255 874,496 918,134 951,694
対前年度増加率 8.5% 4.6% 4.9% 3.6%
注(1)
各法人における病院収益に計上する収益の範囲は法人ごとに区々となっているため、各法人が作成、公表している病院収益の情報を用いて、各法人における勘定科目等から、入院患者の診療、療養等に係る「入院収益」及び外来患者の診療、療養等に係る「外来収益」を抽出して集計し、表示している。
注(2)
放射線医学総合研究所は、病院収益の多くが先進医療に係る収益となっており、同研究所は、会計処理上、先進医療収益を入院収益及び外来収益と別に区分して整理しているため、これらと別に記載している。
注(3)
国立大学法人42法人の病院収益の内訳については別表7参照

また、25年度における病院施設の稼働状況等を示す指標の状況について、独立行政法人は法人ごとに、国立大学法人は42法人計でみたところ、表30のとおり、病床数や入院患者延数、外来患者延数が減少傾向にある法人が一部において見受けられる。そして、ほとんどの法人において入院患者及び外来患者の1人当たり診療単価が21年度と比較して増加していることからみて、22年度及び24年度に行われた診療報酬改定が病院収益の増加要因となっていると認められる。

表30 病院施設の稼働状況等(平成25年度)

法人名 病院数 平均病床数 平均入院患
者延数
(人)
平均病床利
用率(%)
平均在院日
数(日)
入院患者1人
当たり平均診
療単価(円)
注(3)
平均外来患
者延数
(人)
外来患者1人
当たり平均診
療単価(円)
注(3)
(対21年度
増加率)
(対21年度
増加率)
(対21年度
増加率)
(対21年度
増加率)
(対21年度
増加率)
(対21年度
増加率)
(対21年度
増加率)





















放射線医学総合研究所 1 100
(-%)
20,938
(△3.1%)
57.4
(△1.8%)
14.3
(2.8%)
22,121
(△1.0%)
18,602
(3.1%)
18,419
(6.5%)
労働者健康福祉機構 34 384
(△1.5%)
108,535
(△5.8%)
80.9
(△2.6%)
14.9
(△7.4%)
54,142
(16.5%)
193,938
(△5.4%)
11,179
(9.5%)

600床以上800床未満 5 640
(△1.6%)
191,592
(△1.3%)
83.6
(0.3%)
12.1
(△6.9%)
65,674
(16.5%)
382,272
(△2.9%)
12,472
(6.8%)
400床以上600床未満 10 440
(△1.7%)
127,956
(△4.5%)
83.3
(△1.3%)
14.7
(△7.5%)
52,809
(19.1%)
218,008
(△2.6%)
11,449
(17.4%)
200床以上400床未満 16 312
(△0.9%)
82,458
(△9.7%)
77.0
(△5.3%)
16.9
(△5.0%)
48,579
(12.7%)
145,553
(△9.6%)
9,669
(3.7%)
200床未満 3 152
(-%)
44,450
(△9.5%)
79.9
(△8.4%)
39.6
(△8.9%)
39,110
(13.4%)
57,866
(△9.2%)
13,785
(11.3%)
国立病院機構 143 384
(△3.0%)
110,637
(△1.4%)
83.8
(△0.0%)
24.9
(△10.1%)
44,261
(15.6%)
83,453
(3.6%)
13,469
(20.7%)

600床以上800床未満 11 682
(△0.5%)
204,711
(△3.9%)
85.3
(△1.0%)
14.7
(△9.2%)
64,129
(15.7%)
252,560
(0.5%)
16,348
(26.7%)
400床以上600床未満 54 460
(△1.9%)
128,781
(△2.3%)
82.8
(△0.2%)
22.5
(△11.0%)
45,682
(19.0%)
103,549
(4.1%)
13,757
(19.2%)
200床以上400床未満 70 304
(△3.1%)
86,906
(△1.3%)
84.0
(0.5%)
37.4
(△9.6%)
41,626
(11.9%)
48,083
(3.4%)
11,908
(15.8%)
200床未満 8 177
(△0.5%)
52,239
(△1.2%)
88.2
(△0.4%)
80.9
(3.7%)
31,085
(7.8%)
15,790
(△16.8%)
11,959
(22.7%)
国立がん研究センター 注(1) 2 512
(-%)
160,191
(3.1%)
89.5
(3.1%)
13.1
(△7.7%)
67,796
(8.9%)
255,205
(21.2%)
25,939
(1.6%)
国立循環器病研究センター 注(1) 1 612
(△4.3%)
178,505
(△1.2%)
90.2
(6.0%)
16.7
(△12.5%)
106,339
(18.1%)
152,042
(△0.3%)
14,213
(23.2%)
国立精神・神経医療研究センター 注(1) 1 474
(-%)
145,746
(5.9%)
84.2
(4.7%)
29.4
(△43.7%)
43,750
(21.7%)
118,982
(9.5%)
10,257
(4.9%)
国立国際医療研究センター 注(1) 2 686
(△3.5%)
178,431
(8.8%)
72.7
(7.9%)
16.1
(△4.7%)
54,989
(14.0%)
309,852
(8.1%)
12,002
(19.4%)
国立成育医療研究センター 注(1) 1 490
(-%)
140,517
(1.5%)
81.2
(△1.2%)
10.6
(△12.3%)
89,824
(16.2%)
249,046
(10.3%)
19,239
(27.4%)
国立長寿医療研究センター 注(1) 1 383
(-%)
92,979
(15.1%)
79.3
(13.9%)
19.7
(△1.9%)
44,465
(20.8%)
142,612
(28.9%)
10,860
(5.7%)
国立大学法人42法人 45 727
(△0.0%)
226,020
(0.2%)
85.7
(0.5%)
15.3
(△12.5%)
68,393
(20.6%)
394,893
(5.2%)
14,668
(23.7%)

1000床以上 6 1,188
(△1.3%)
370,733
(△0.6%)
86.4
(1.1%)
15.3
(△10.5%)
69,698
(19.9%)
649,960
(3.4%)
14,918
(25.7%)
800床以上1000床未満 9 864
(△0.1%)
272,600
(△0.6%)
86.8
(△0.5%)
16.3
(△11.4%)
69,083
(20.4%)
475,091
(2.4%)
14,771
(24.0%)
600床以上800床未満 27 650
(0.4%)
201,250
(0.8%)
85.1
(0.6%)
15.0
(△13.2%)
67,578
(21.1%)
329,807
(7.5%)
14,942
(23.6%)
200床以上600床未満
(-%)

(-%)

(-%)

(-%)

(-%)

(-%)

(-%)
200床未満 3 78
(-%)
19,784
(14.6%)
69.2
(8.9%)
11.9
(△9.8%)
65,711
(18.2%)
229,933
(4.3%)
9,077
(5.5%)
<参考>全国(平均)値 注(2) 8,540 184 54,508 81.0 30.6
59,407
注(1)
国立がん研究センター等6法人は平成22年4月に設立されたため、22年度からの増加率を示している。
注(2)
「医療施設調査」(厚生労働省大臣官房統計情報部)等に基づく全国の病院の総数や平均値を示している。
注(3)
入院患者又は外来患者に係る診療収益の総額をそれぞれの患者延数で除して算出している。

各法人における病院収入は、その多くが診療報酬の対象となる診療行為に係るものとなっているが、それ以外に各病院が自主的な判断により単価設定を行い、患者から料金を徴収して収入を得るものがある。

その主な例として、独立行政法人9法人の186病院及び国立大学法人42法人の45病院について、室料差額料金の徴収状況及びセカンドオピニオンの実施状況をみたところ、表31及び表32のとおり、ほとんどの病院において、室料差額料金の徴収やセカンドオピニオンを実施しており、これらに係る収入額は、21年度又は22年度と比較してそれぞれ増加している。

表31室料差額料金の徴収状況(平成25年度)

法人名

徴収実

施病院

対象病
床数
対象病
床増加
数(対21
年度)
対象病
床増加
率(対21
年度)
収入額(千
円)
収入増加額
(千円)(対21
年度)
収入増加
率(対21
年度)
1病床当
たりの収
入額(千
円)





放射線医学総合研究所
(1病院)
1 16 2 14.2% 51,177 8,862 20.9% 3,198
労働者健康福祉機構
(34病院)
34 3,519 339 10.6% 5,724,105 81,991 1.4% 1,626
国立病院機構
(143病院)
130 6,110 1,303 27.1% 11,421,483 2,388,138 26.4% 1,869
国立がん研究センター
(2病院)(注)
2 138 -% 1,121,341 117,485 11.7% 8,125
国立循環器病研究センター
(1病院)(注)
1 87 -% 320,690 48,122 17.6% 3,686
国立精神・神経医療研究センター
(1病院)(注)
1 150 19 14.5% 134,484 79,422 144.2% 896
国立国際医療研究センター
(2病院)(注)
2 350 68 24.1% 1,022,816 41,348 4.2% 2,922
国立成育医療研究センター
(1病院)(注)
1 85 22 34.9% 149,971 27,559 22.5% 1,764
国立長寿医療研究センター
(1病院)(注)
1 78 41 110.8% 136,213 66,638 95.7% 1,746
国立大学法人42法人(45病院) 45 5,494 956 21.0% 10,588,869 1,943,959 22.4% 1,927
(注)
国立がん研究センター等6法人は平成22年4月に設立されたため、22年度からの増加件数、増加額及びそれぞれの増加率を記載している。

表32 セカンドオピニオンの実施状況(平成25年度)

法人名 実施病
院数
実施件
実施増
加件数
(対21年
度)
実施件
数増加
率(対21
年度)
収入額
(千円)
収入増
加額(対
21年度)
(千円)
収入額
増加率
(対21年
度)





放射線医学総合研究所
(1病院)
1 171 4 2.3% 2,236 483 27.5%
労働者健康福祉機構
(34病院)
29 173 50 40.6% 2,809 793 39.3%
国立病院機構(143病院) 132 2,350 296 14.4% 26,184 3,687 16.3%
国立がん研究センター
(2病院)注(1)
2 3,205 639 24.9% 60,784 11,424 23.1%
国立循環器病研究センター
(1病院)注(1)
1 125 10 8.6% 2,656 231 9.5%
国立精神・神経医療研究センター
(1病院)注(1)
1 122 61 100.0% 1,830 915 100.0%
国立国際医療研究センター
(2病院)注(1)注(2)
1 612

5,200

国立成育医療研究センター
(1病院)注(1)
1 176 149 551.8% 2,646 2,241 554.5%
国立長寿医療研究センター
(1病院)注(1)
1 4 -% 63 -%
国立大学法人42法人(45病院) 44 4,529 1,367 43.2% 110,483 38,207 52.8
注(1)
国立がん研究センター等6法人は平成22年4月に設立されたため、22年度からの増加件数、増加額及びそれぞれの増加率を記載している。
注(2)
当該法人が管理しているシステムの更新により平成23年度までの実績が不明のため、実施増加件数等の欄は斜線を付している。

このうち、セカンドオピニオンの実施開始時期及び1時間当たりの実施単価についてみたところ、表33のとおり、多くの病院が21年度以前から実施していたが、実施単価については、各病院の機能・役割や診療内容が相違していること、同地域内の他の病院における実施単価との兼ね合いもあることなどから、ばらつきが見受けられる。

表33 セカンドオピニオンの実施開始時期及び実施単価

(単位:病院)

項目 独立行政法人
(169病院)
国立大学法人
(44病院)
開始時期 平成21年度以前 138 42
22年度 12
23年度 4 1
24年度 7
25年度 7 1
1時間当たり
単価
1万円未満 12 1
1万円以上2万円未満 123 19
2万円以上3万円未満 30 4
3万円以上 4 20
(注)
国立国際医療研究センターの開始時期は、同センターが管理するシステムの更新により不明となっている。
(イ)病院収入の確保等に向けた取組
a 病院施設を効率的に稼働させるための取組の状況

前記のとおり医療診療型の独立行政法人及び国大病院設置型の国立大学法人は、収入額に占める自己収入の割合が高くなっている。また、各病院はそれぞれ重要な使命を担っていることから、安定的な病院運営を図ることは重要である。そして、病床利用率等の指標により適切に経営管理を行うなどして、病院施設を効率的に稼働させたり、医療サービスの質の向上を図るなどの取組を行ったりすることは、ひいては病院収入の増加につながることになる。

そこで、前記の各病院について、このような病院施設の稼働状況を測る上で有用と考えられる指標に係る目標値の設定状況をみたところ、表34のとおり、多くの病院では全ての指標について目標値を設定しているが、目標値を設定していない病院も一部見受けられる。

表34 病院施設の稼働状況等の指標に係る目標値の設定状況(平成25年度)

法人名 目標値を設定している病院数
病床利用率 在院日数 入院患者1
人当たり診
療単価
外来患者数 外来患者1
人当たり診
療単価
独立行政法人 放射線医学総合研究所(1病院) 1 1
労働者健康福祉機構(34病院) 34 34 34 34 34
国立病院機構(143病院) 138 112 134 138 134
国立がん研究センター(2病院) 1 1 1 1
国立循環器病研究センター(1病院) 1 1 1 1 1
国立精神・神経医療研究センター(1病院) 1 1 1 1 1
国立国際医療研究センター(2病院) 2 2 2 2
国立成育医療研究センター(1病院) 1 1 1 1 1
国立長寿医療研究センター(1病院) 1 1 1 1
国立大学法人42法人(45病院) 39 23 28 25 26
(注)
目標値を設定している病院を有している法人及び病院数の内訳については別表10参照

各病院においては、病院ごとに目標設定の有無に差異が生じている状況等を十分に考慮した上で、それぞれの設置目的に応じた適切な目標設定がされているか適宜検討を行う必要がある。

また、病院収入の確保や増加につながる取組を行っているかについて、各法人の状況をみたところ、上記の取組について検討を行う委員会等を設置したり、病院内の会議等において議題としたりするなどして、定期的に検討を行っているとしているが、次のとおり、病院に勤務する職員全体で、提供する医療サービスの質の向上を図るなどして病院収入の確保や増加につながる取組を行っている病院も見受けられる。

<参考事例2>病院に勤務する職員全体で、提供する医療サービスの質の向上を図るなどして病院収入の確保や増加につながる取組を行っているもの

労働者健康福祉機構の燕労災病院は、平成26年4月から同病院に勤務する全職員に対して増収・支出削減対策に係る提言を募集している。26年度においては「勉強会を開くなどして指導料等の診療報酬の算定方法等を理解したり、薬剤師による指導等の医療サービスの質の更なる向上を図ったりなどして、提供した医療サービスに対する収入を確実に得ること」との提言が多数あったことから、担当部局間で合同の勉強会を実施するなどして担当職員に対する研修を行うなどの取組を実施した。その結果、各種の指導料等に係る収入は、いずれも前年度実績に比べて増加した。

上記のような職員全体での取組は、職員に対する意識付けや意欲の向上等の様々な効果が期待され、病院が提供する医療サービスの質の向上に資するとともに、病院収入の確保等にも有効な取組と考えられる。

b 病院収入に係る債権の状況及び債権の回収等の取組

(a)患者に対する未収診療費債権の状況及び債権の回収に向けた取組

患者の診療費については、支払方法の多様化や支払に関する相談窓口の設置等、各病院が患者の実情等に応じた方策を講ずるなどして、未収診療費の発生防止を図ることが重要である。さらに、診療を行った患者から期日までに診療費の支払が行われない場合には、各病院は、当該患者に対する未収診療費を回収するために債権管理を行うことになるが、患者に対する未収診療費に係る債権(以下「未収診療費債権」という。)は、長期に未収となっているものの割合が増加すると、債権管理に要する経費や労力が増加する上、回収不能となった場合は当該診療に対する病院収入が確保されないことになる。このため、適切な管理体制を整備し、未収診療費債権の早期回収に努めることも重要である。

そこで、各法人における未収診療費債権の残高について、21年度末から25年度末までの推移等をみたところ、表35のとおり、25年度末における未収診療費債権の残高は、独立行政法人で計102億余円、国立大学法人で計90億余円となっており、病院収入が増加している中、独立行政法人及び国立大学法人共に全体としては24年度末から減少傾向となっている。そして、25年度末の債権残高のうち債権の発生から1年以上が経過している債権は、独立行政法人で計33億余円、国立大学法人で計47億余円となっており、当該債権の金額が債権残高の50%以上を占めている法人も見受けられる。

表35 未収診療費債権の残高の推移等(平成21年度末~25年度末)

(単位:千円)

法人等名 平成
21年度末
22年度末 23年度末 24年度末 25年度末 25年度末債
権のうち1年
以上経過
左の25年度末
債権に占める
割合





放射線医学総合研究所(1病院) 12,161 9,496 75,998 34,389 38,079 3,484 9.1%
労働者健康福祉機構(34病院) 3,441,390 3,339,471 3,127,075 3,024,108 2,897,452 1,212,628 41.8%
国立病院機構(143病院) 8,049,096 7,563,302 8,395,430 6,567,528 6,437,862 1,904,480 29.5%
国立がん研究センター(2病院)
168,388 186,723 167,147 222,914 19,315 8.6%
国立循環器病研究センター(1病院)
43,388 51,360 60,696 49,944 5,759 11.5%
国立精神・神経医療研究センター(1病院)
24,655 19,006 13,866 13,433 12,083 89.9%
国立国際医療研究センター(2病院)
483,305 468,739 472,865 450,438 164,265 36.4%
国立成育医療研究センター(1病院)
138,350 139,472 173,114 135,187 33,892 25.0%
国立長寿医療研究センター(1病院)
39,522 45,886 45,141 44,328 23,660 53.3%

(9法人186病院)
11,502,648 11,809,882 12,509,692 10,558,859 10,289,642 3,379,569 32.8%

対前年度増加率 2.6% 5.9% △15.5% △2.5%

国立大学法人42法人
(45病院)
9,797,387 10,011,015 9,923,530 9,342,715 9,010,854 4,772,081 52.9%

対前年度増加率 2.1% △0.8% △5.8% △3.5%

(注)
国立大学法人42法人の内訳については別表8参照

また、各法人において債務者の死亡や時効の成立等により債権の回収が不能になり貸倒処理を行った未収診療費債権の貸倒額について21年度から25年度までの推移をみると、表36のとおり、25年度においては、独立行政法人で計6億余円、国立大学法人で計4億余円となっており、独立行政法人全体としては減少傾向となっているが、国立大学法人全体では年度ごとに増減がみられる。

表36 未収診療費債権の貸倒額の推移(平成21年度~25年度)

(単位:千円)

法人等名 平成
21年度
22年度 23年度 24年度 25年度






放射線医学総合研究所(1病院) 496 219 716
労働者健康福祉機構(34病院) 222,098 191,977 223,474 156,900 226,904 1,021,355
国立病院機構(143病院) 707,669 632,782 583,669 605,411 409,301 2,938,834
国立がん研究センター(2病院)
39,392 12,493 3,060 337 55,283
国立循環器病研究センター(1病院)
20,773 1,441 4,283 9,036 35,534
国立精神・神経医療研究センター(1病院)
6,492 1,427 1,235 752 9,908
国立国際医療研究センター(2病院)
23,789 43,207 20,820 42,799 130,616
国立成育医療研究センター(1病院)
12,303 6,032 7,929 2,618 28,885
国立長寿医療研究センター(1病院)
3,316 132 3,448

(9法人186病院)
929,768 928,008 875,062 799,993 691,750 4,224,582

対前年度増加率 △0.1% △5.7% △8.5% △13.5%
国立大学法人42法人
(45病院)
476,329 426,011 611,585 671,058 464,742 2,649,727

対前年度増加率 △10.5% 43.5% 9.7% △30.7%
(注)
国立大学法人42法人の内訳については別表9参照

未収診療費債権の回収手続は、全ての法人において、診療費の請求等に必要となる基本的事項を規程等に定めているが、さらに、債権のより具体的な請求や督促の方法等について定めたマニュアル等(以下「債権管理マニュアル等」という。)を整備して、債権の回収に当たっている法人がある。

そこで、債権管理マニュアル等の整備状況についてみたところ、表37のとおり、債権管理マニュアル等を整備している法人は、独立行政法人は8法人、国立大学法人は35法人となっている。

表37 債権管理マニュアル等の整備状況(平成25年度)

(単位:法人)

回収の方法 区分 債権管理
マニュア
ル 等に明
実施条件等の記載
具体的な
実施時期
具体的な
実施対象
金額
その他の
具体的な
条件等
記載なし
(必要に
応じて実
施)
電話督促
独立行政法人 8 5 2 1 1
国立大学法人 33 26 15 6 3
文書督促
独立行政法人 8 5 2 2 1
国立大学法人 35 35 21 4
戸別訪問
独立行政法人 5 1 3 1
国立大学法人 16 6 8 6 5
内容証明郵便による請求書等の送付 独立行政法人 2 2
国立大学法人 11 7 6 2 4
債権回収会社等の専門業者への委託 独立行政法人 2 1 1
国立大学法人 24 17 20 8 2
裁判所の支払督促
独立行政法人 6 1 2 2 3
国立大学法人 9 4 5 4 3
少額訴訟の提起
独立行政法人 6 2 1 3
国立大学法人 8 2 1 5
債権管理マニュアル等を整備している法人数 独立行政法人8法人、国立大学法人35法人

そして、債権管理マニュアル等を整備している計43法人について、その内容をみると、規定している債権の回収方法に各法人間でばらつきが見受けられたり、一部の法人において督促等の実施時期等の条件を具体的に定めていなかったりしている。

また、未収診療費債権は、民法(明治29年法律第89号)第170条の規定により、診療等に関する債権として3年間行使しないときは消滅することから、収納されないまま3年を経過すると消滅時効が完成し、患者等が消滅時効を援用すれば、債権の履行の請求はできないこととなる。このため、収納されていない債権について時効の中断を図ることが必要であり、滞納者からの承認書の徴取や裁判所の支払督促、少額訴訟の提起等の措置(以下「債権の保全措置」という。)を実施する必要がある。

そこで、各病院の25年度における未収診療費債権に係る債権の保全措置の実施状況についてみると、これを実施していたのは、独立行政法人9法人の186病院のうち76病院、国立大学法人42法人の45病院のうち21病院となっている。

各法人においては、支払方法の多様化等、診療費の支払時における患者の利便性向上等により、債権の発生防止を図ることも重要であるが、発生した債権の回収に当たっては、規程等や債権管理マニュアル等を整備して確実に債権管理を行い督促等を実施することが重要である。また、各病院における未収診療費債権の発生、回収等の状況を踏まえて、より実効性のある請求や督促の方法等を債権管理マニュアル等に定めたり、債権の保全措置を実施していない病院についてはその必要性について検討したりすることにより、可能な限り多くの債権を回収するよう努める必要がある。

具体的な手順等を定めた債権管理マニュアル等がなく、規程等に基づいた督促等が実施されていない事例を示すと、次のとおりである。

<事例1>未収診療費債権の回収について具体的な手順等を定めた債権管理マニュアル等がなく、規程等に基づいた督促等が実施されていないもの

千葉大学では、「千葉大学医学部附属病院における診療費等の再請求手続きに関する取扱要項」(以下「取扱要項」という。)において未収診療費債権の回収に係る督促等の手続を定めており、具体的には、請求を行ったにもかかわらず、未収診療費債権が一定期間入金されない場合には、「診療費請求のお知らせ」を送付し督促すること、更に一定期間入金がない場合には「催告状」や「特別催告状」を送付すること、「特別催告状」を送付してもなお一定期間入金がない場合には債権回収委託等を検討することを定めている。

しかし、平成25年度に貸倒れとなった金額上位5件の滞納債権の回収状況をみたところ、より具体的な手順等を定めた債権管理マニュアル等がなく、督促等の進捗管理方法等が定められていないため、取扱要項どおりに督促等が実施されたかどうかの確認が十分に行われておらず、5件中3件で取扱要項に定められている時期に督促等が実施されていなかった。そして、このうち債権額が300万円を超える入院患者(22年に退院した外国人患者)については、退院前に40万円の入金を受けたものの退院後の入金がなされなかったため、当該患者に対して「診療費請求のお知らせ」を取扱要項どおりの時期に送付したが、「催告状」は取扱要項に定める期間(3か月)を超えて7か月後に送付しており、「催告状」送付先の住人の通報により患者が既に帰国していることが発覚した。また、他の2件も、取扱要項に定める期間を超えて、7か月以上の間をおいて「催告状」を送付していた。

なお、千葉大学では、これまで、支払方法の多様化(デビットカード、銀行振込等)や高額療養費制度等の公的制度の利用促進といった未収診療費債権の発生を防ぐための取組を行ってきたとしているが、今後は、規程等に定められている事務の取扱いを明確にして、債権回収強化のための取組について、取扱要項等に基づく請求書や催告状等の確実な送付を徹底したり、現在、債権発生から3年経過後に行っている債権回収業者への委託時期の前倒しを検討したりするなど、更に積極的に行っていくとしている。

(b)基金等に対する債権の状況

保険診療を行った医療機関は、患者負担分以外の診療報酬について、診療報酬請求書又は調剤報酬請求書に、診療報酬等の明細を明らかにした診療報酬明細書又は調剤報酬明細書(以下、これらを合わせて「レセプト」という。)を添付して、診療した月の翌月10日までに社会保険診療報酬支払基金及び国民健康保険団体連合会(以下、これらを合わせて「基金等」という。)に請求することとなっている。そして、基金等でこれを審査した上、請求月の翌月に診療報酬が医療機関に支払われる仕組みとなっている。しかし、診療は行われたものの、医師によるレセプトの点検が未了である場合や、患者が生活保護費の受給者で請求に必要となる医療券が未提出であるなどの場合には、準備が整うまでの間、病院において基金等への請求を保留することがある(以下、請求を保留されたレセプトを「保留レセプト」という。)。また、基金等における審査の結果、適用外の請求等、レセプトの記載内容に誤りや不備があることが判明したものについては支払が行われず、当該レセプトは医療機関に返戻されることになる(以下、基金等から返戻されたレセプトを「返戻レセプト」という。)。そして、保留レセプト及び返戻レセプトが発生すると、それに係る診療報酬の入金が遅れることになる。

また、未収診療費債権と同様に、レセプトが基金等に受理されないまま3年を経過すると消滅時効が完成し、診療報酬の入金そのものがなされないことになる。

そこで、保留レセプト及び返戻レセプトに係る未処理額について、21年度から25年度までの年度末残高の推移をみたところ、表38のとおり、独立行政法人は計60億円前後、国立大学法人は計190億円前後で推移している。

保留レセプト及び返戻レセプトに係る未処理額については、各病院の機能・役割や診療内容の相違による影響に留意する必要があるが、例えば、国立大学法人では保険請求を一時的に保留せざるを得ない移植医療を始めとした高難度で複雑な医療を多く実施しており、こうした医療は請求額が多額となることが、レセプトの未処理額が増える一因であると考えられる。

表38 保留レセプト及び返戻レセプトに係る未処理額の推移(平成21年度~25年度)

(単位:百万円)

区分 平成21年度 22年度 23年度 24年度 25年度
独立行政法人
(9法人)
保留 入院 3,129 4,006 5,072 4,687 4,772
外来 173 225 257 220 252
小計 3,302 4,232 5,330 4,907 5,024
返戻 入院 812 1,049 1,288 1,043 1,038
外来 72 88 140 117 130
小計 884 1,138 1,429 1,161 1,168
合計 5,965 6,426 7,087 6,373 6,252
国立大学法人
(42法人)
保留 入院 12,071 14,686 15,078 15,387 15,428
外来 522 610 713 769 979
小計 12,594 15,297 15,792 16,157 16,408
返戻 入院 2,536 3,444 3,042 3,249 3,071
外来 161 202 232 368 387
小計 2,697 3,646 3,274 3,618 3,459
合計 15,291 18,944 19,066 19,775 19,867
総計 21,257 25,371 26,154 26,149 26,119
注(1)
独立行政法人のうち国立がん研究センター等6法人に係る未処理額については、設立された平成22年度以降の額を集計している。また、国立大学法人の群馬大学及び長崎大学の21年度の未処理額は把握できなかったため集計していない。
注(2)
独立行政法人のうち労働者健康福祉機構の平成21年度から25年度まで、国立病院機構の21年度から24年度まで及び国立国際医療研究センターの22年度については、未処理額の保留及び返戻の区別ができない病院があるため、合計欄のみに計上している。そのため、独立行政法人の保留及び返戻それぞれの小計欄を合計しても合計欄とは一致しない。

また、基金等への診療報酬請求額に対する保留レセプト及び返戻レセプトに係る未処理額の割合について、21年度から25年度までの推移をみたところ、各病院の機能・役割や診療内容の相違による影響に留意する必要があるが、表39のとおり、独立行政法人では0.5%前後、国立大学法人では2.3%前後で推移している。

表39 保留レセプト及び返戻レセプトに係る未処理額の診療報酬請求額に対する割合の推移(平成21年度~25年度)

(単位:百万円)

区分 平成21年度 22年度 23年度 24年度 25年度
独立行政法人
(9法人)
未処理額 5,965 6,426 7,087 6,373 6,252
診療報酬請求額 872,141 1,020,503 1,047,268 1,088,731 1,113,980
未処理率 0.6% 0.6% 0.6% 0.5% 0.5%
国立大学法人
(42法人)
未処理額 14,739 18,944 19,066 19,775 19,867
診療報酬請求額 650,198 766,865 811,189 855,302 890,470
未処理率 2.2% 2.4% 2.3% 2.3% 2.2%
(注)
平成22年4月に設立された独立行政法人6法人及び21年度の未処理額又は診療報酬請求額が把握できない国立大学法人3法人については、21年度の未処理額及び診療報酬請求額に含めていない。

さらに、25年度末時点のレセプト未処理額を発生(診療)年度別にみたところ、表40のとおり、25年度末におけるレセプト未処理額のうち、23年度以前に発生したレセプトの割合は、独立行政法人では0.2%、国立大学法人では0.8%である。

国立大学法人が多く行っている高難度医療に関しては、1件当たりのレセプト請求額が高額化する傾向があるが、高額なレセプトは、基金等での審査が厳しく、通常の審査より返戻に要する期間が長くなるため、返戻後の再審査請求に時間を要することもレセプト未処理の状態が長期化する一因であると考えられる。

表40 保留レセプト及び返戻レセプトの発生年度別の状況(平成25年度末未処理分)

(単位:百万円)

区分 平成23年度以前
診療分
24年度診療分 25年度診療分
独立行政法人
(9法人)
保留 入院 5 19 4,694
外来 3 6 240
小計 8 25 4,934
返戻 入院 8 36 891
外来 0 4 120
小計 8 40 1,011
合計
(構成率)
17
(0.2%)
66
(1.0%)
6,005
(98.6%)
国立大学法人
(42法人)
保留 入院 80 229 14,718
外来 19 8 938
小計 99 238 15,657
返戻 入院 62 376 2,575
外来 11 42 332
小計 74 419 2,907
合計
(構成率)
173
(0.8%)
657
(3.3%)
18,565
(95.7%)
総計 191 723 24,571
注(1)
独立行政法人のうち労働者健康福祉機構において、平成25年度診療分の未処理額が保留及び返戻の区別なく合計のみで把握している病院があるため、当該年度の独立行政法人の保留及び返戻それぞれの小計欄の和は合計欄とは一致しない。
注(2)
独立行政法人のうち国立病院機構、国立大学法人のうち東京大学及び山口大学において、平成25年度末のレセプト未処理額を診療年別に把握していないため、表40の23年度以前診療分から25年度診療分までの金額を合計しても、表38の25年度の金額とは一致しない。
注(3)
(構成率)は平成23年度以前診療分から25年度診療分までの合計に対する各年度診療分の占める割合である。

そこで、25年度末における保留レセプト及び返戻レセプトのうち、23年度以前診療分に係る未処理額が50万円以上となっている21法人の25病院を対象に、レセプト未処理の状態が長期化している理由を調査した。主な理由としては、保険資格喪失後の受診でその後再訪がなく患者と連絡が取れない、労働災害や公務災害の認定の有無が判明するまでの間は請求ができないといったもののほか、移植医療に係るレセプトは、移植ドナー側の移植後の検査を含む全ての診療行為が終了するまでの間は請求を行うことができず、いまだ請求できる状況に至っていないなど、病院側に起因するとはいえないものも見受けられた。しかし、その一方で、レセプトに記載する診療内容等について医師に確認や詳記を依頼しているが実行されないままになっていたり、自治体等から特別な給付がある自立支援医療等に係る患者の資格や、入院中に他病院で受診した内容の確認に時間を要していたりするなど、病院側における事務処理の遅延に起因するものも見受けられた。

以上のことから、移植医療等の高難度かつ高額な医療を多く行う場合等、各病院の機能・役割や診療内容の相違が保留レセプト及び返戻レセプトの増加や処理の遅延等に影響することには留意が必要であるが、保留レセプト及び返戻レセプトの発生とその処理の長期化が法人の収入に与える影響に鑑み、その改善のために、各病院内において定期的に注意喚起を行ったり、他機関への確認等が必要な場合には、手続等を速やかに行い早期処理を図ったりするなど組織的な取組を強化していくことが必要である。

(c)査定レセプトの状況

基金等ではレセプトを審査し、記載された病名と薬品名等が標準的な組合せではないような病名不適応や、過剰診療に当たると判断したものなどは、請求を認めず診療報酬を減額している(以下、診療報酬を減額されたレセプトを「査定レセプト」という。)。しかし、査定レセプトの中には病名の誤記によるものなど、医療機関が適切に対応すれば、査定されない可能性があったものなども含まれており、診療報酬請求事務の適切な実施に努めることは、診療報酬の確保にとって重要である。

そこで、基金等による査定額及び査定率(診療報酬請求額に対する査定額の割合)について、21年度から25年度までの推移をみたところ、表41のとおり、全体として独立行政法人及び国立大学法人の査定率は共に上昇傾向にある。審査基準の厳しい高難度で複雑な医療を多く実施した場合には、査定率上昇の一因となることがあるが、25年度の査定率は独立行政法人で0.36%、国立大学法人で0.59%、厚生労働省の調査に基づく民間病院を含めた全国平均の査定率は0.22%である。

表41 査定額及び査定率の推移(平成21年度~25年度)

(単位:百万円)

区分 平成21年度 22年度 23年度 24年度 25年度
独立行政法人
(9法人)
査定額 2,048 3,227 3,293 3,690 4,115
診療報酬請求額 872,141 1,020,503 1,047,268 1,088,731 1,113,980
査定率 0.23% 0.31% 0.31% 0.33% 0.36%
国立大学法人
(42法人)
査定額 3,020 3,458 4,059 4,827 5,303
診療報酬請求額 668,216 766,865 811,189 855,302 890,470
査定率 0.45% 0.45% 0.50% 0.56% 0.59%
全国平均 査定率 0.14% 0.15% 0.16% 0.19% 0.22%
注(1)
平成22年4月に設立された独立行政法人6法人及び21年度の査定額又は診療報酬請求額が把握できない国立大学法人2法人については、21年度の査定額及び診療報酬請求額に含めていない。
注(2)
全国平均の査定率は厚生労働省のデータに基づき算定している。

そして、独立行政法人9法人の186病院及び国立大学法人42法人の45病院について、病院ごとに25年度の査定率をみたところ、表42のとおり、独立行政法人では25年度の全国平均の査定率である0.22%未満の病院が76病院(41.0%)あり、0.22%以上0.5%未満の病院79病院(42.7%)と合わせて査定率0.5%未満の病院が全体の83.7%となっている。また、国立大学法人では査定率0.22%未満の病院は2病院(4.4%)となっており、0.22%以上0.5%未満の19病院(42.2%)と合わせて査定率0.5%未満の病院は全体の46.6%となっている。

表42 査定率ごとの病院数(平成25年度)

(単位:病院)

区分 0.22%未満 0.22%以上0.5%未満 0.5%以上1%未満 1%以上
独立行政法人
(9法人)
76(41.0%) 79(42.7%) 24(12.9%) 6(3.2%) 185(100%)
国立大学法人
(42法人)
2(4.4%) 19(42.2%) 23(51.1%) 1(2.2%) 45(100%)
注(1)
平成20年4月に国立病院機構のまつもと医療センターとして統合された松本病院と中信松本病院は1病院として集計している。
注(2)
括弧内は独立行政法人及び国立大学法人の病院計に対する区分ごとの病院の割合である。

査定率は、各病院における高難度で複雑な医療の実施状況によっては、高くなることがあるものの、査定率の引下げは収入の増加要因となることから、各法人は現状を十分に分析し、事務手続等に改善の余地がある場合には、引下げに向けた定量的な目標の設定、レセプトの詳細な記述の徹底や複数人によるチェック体制の構築、査定内容の分析と分析結果の医師や職員へのフィードバック、積極的な再審査請求の徹底等の取組を実施することにより、診療報酬請求事務の適切な実施を更に図る必要がある。

(3)各法人に共通性のある自己収入の状況及びその確保等に向けた取組

検査の対象とした独立行政法人全98法人及び国立大学法人等全90法人の自己収入には、各法人に共通性のあるものがあり、これらの中には、各法人が自己収入の拡大に向けて検討する余地があるものも見受けられる。

このような自己収入の状況等を示すと、以下のとおりである。

ア 施設の貸付け等に係る収入

(ア)食堂及び売店の運営による収入
a 食堂及び売店の運営による収入の状況

独立行政法人及び国立大学法人等の中には、勤務する職員、学生、通院する患者等のために食堂及び売店の運営を行っている法人がある。25年度末において、独立行政法人全98法人のうち51法人は、業者に敷地を貸し付けたり、使用許可(以下、敷地の貸付けと使用許可を合わせて「敷地貸付け等」という。)をしたりするなどして食堂又は売店を設置しているが、残りの47法人は、法人が建物の一部区画を賃貸借契約により所有者から借り受けていたり、必要性が低いなどの理由により、食堂及び売店を設置していなかったりしている。一方、国立大学法人等全90法人のうち89法人は、業者に敷地貸付け等をするなどして食堂又は売店を設置している。

そして、独立行政法人及び国立大学法人等が食堂及び売店を設置するために敷地貸付け等をすることによって得た貸付料等収入をみたところ、表43のとおり、25年度において、独立行政法人では計7億余円、国立大学法人等では計4億余円と多額に上っており、このうち、医療診療型の独立行政法人及び国大病院設置型の国立大学法人の二つの業務類型で全体の7割以上を占める状況となっている。

表43 食堂及び売店の貸付料等の状況(平成25年度)

(単位:件、千円)

区分

契約件数



(A)


うち貸付料等が
無償の契約
うち貸付料等が
有償の契約
件数
(B)
割合
(B/A)
件数
(C)
割合
(C/A)
貸付料
等収入
独立行政法人(51法人) 688 184 26.7% 504 73.2% 763,629

うち医療診療型 296 7 2.3% 289 97.6% 523,260
国立大学法人等(89法人) 464 232 50.0% 232 50.0% 419,251

うち国大病院設置型 342 133 38.8% 209 61.1% 395,597
1,152 416 36.1% 736 63.8% 1,182,880
b 食堂及び売店の運営による収入の確保等に向けた取組

食堂及び売店の契約方式について、貸付料等が無償の契約又は有償の契約の契約件数の割合についてみたところ、表43のとおり、業務類型によって次のような状況が見受けられる。

医療診療型の独立行政法人及び国大病院設置型の国立大学法人の病院のように、職員以外の外部の利用者が多数見込まれる法人においては、多額の売上げが見込まれることなどから、食堂又は売店の運営のために業者に有償で敷地貸付け等をしている契約の割合が、25年度において、医療診療型の独立行政法人で97.6%、国大病院設置型の国立大学法人で61.1%と高い状況となっている。一方、無償で敷地貸付け等をしている契約の割合は、独立行政法人で26.7%、国立大学法人等で50.0%、うち国大病院設置型の国立大学法人で38.8%である。これは、利用者が職員等の一定数に限られているなど売上見込みが低く有償では参入する業者がいないことから無償で敷地貸付け等をしている場合のほか、利用者に対する安価なサービスの提供を条件に貸付料等を徴収しない取扱いとしていたり、法人の業務上必要な施設であるとの位置付けから、利用者数の規模等にかかわらず、貸付料等は徴収しない取扱いとしていたりする場合等があることによる。

しかし、無償で敷地貸付け等をしている法人においては、外部の利用者の増加や参入業者の増加等の状況の変化によっては有償で敷地貸付け等をすることが可能となる場合もあることから、利用者へのサービス内容等への影響に留意しつつ、有償による敷地貸付け等の可能性についても検討する必要がある。

(イ)自動販売機の設置による収入
a 自動販売機の設置による収入の状況

独立行政法人全98法人のうち72法人及び国立大学法人等全90法人においては、業者に敷地貸付け等をするなどして自動販売機を設置している。

自動販売機の設置に当たっての契約方式についてみると、一般競争入札や随意契約でも企画公募によるなど競争性のある契約方式を採用することにより、敷地の貸付料等において有利な条件を示した業者と契約を締結して収入を得ていたり、契約金額が少額であることなどから競争性のある契約方式を採用せず随意契約により業者に有償で敷地貸付け等をする契約を締結して定額の収入を得ていたり、販売価格を下げる代わりに貸付料等を無償とする契約を行っていたりするなど、法人によって様々となっている。

また、法人の中には、敷地の貸付料等とは別に、売上に一定率を乗ずるなどして算出した額(以下「手数料」という。)を徴収することにより自己収入の拡大を図っている法人も見受けられる。

前記の独立行政法人72法人及び国立大学法人等全90法人における25年度の自動販売機の設置に係る契約件数、敷地貸付け等をすることにより得た貸付料等収入及び手数料収入をみたところ、表44のとおり、貸付料等収入はいずれも計1億余円となっており、業務類型では医療診療型の独立行政法人及び国大病院設置型の国立大学法人における貸付料等収入が多くを占めている。また、手数料収入は、独立行政法人及び国立大学法人等でいずれも計5億余円と貸付料等収入を大きく上回る収入を得ている状況となっている。

表44 自動販売機の契約方式別の貸付料等収入及び手数料収入の状況(平成25年度)

(単位:件、千円)

区分 貸付料等が
無償の契約
貸付料等が
有償の契約
合計
件数 金額 件数 金額 件数 金額
独立行政法人(72法人) 552
(123)

(95,513)
867
(231)
128,420
(490,175)
1,419
(354)
128,420
(585,688)

うち医療診療型 5
(4)

(19,914)
231
(205)
87,808
(447,884)
236
(209)
87,808
(467,798)
国立大学法人等(90法人) 238
(142)

(262,988)
487
(110)
125,892
(303,911)
725
(252)
125,892
(566,900)

うち国大病院設置型 130
(73)

(194,446)
322
(81)
89,520
(231,875)
452
(154)
89,520
(426,321)
790
(265)

(358,501)
1,354
(341)
254,312
(794,086)
2,144
(606)
254,312
(1,152,588)
(注)
手数料を受け取っている契約件数及び手数料収入については括弧で記載し、件数は内数で、手数料収入は外数で計上している。

b 自動販売機の設置による収入の確保等に向けた取組

前記のとおり、自動販売機の設置に当たっては、一般競争入札や随意契約であっても企画公募によるなど競争性のある契約方式を採用することにより、敷地の貸付料等において有利な条件を示した業者と契約を締結して収入の増加を図っている法人も見受けられる。そこで、25年度において、競争性のある契約方式と競争性のない契約方式の別に手数料を得ている契約件数をみると、表45のとおり、競争性ありでは計479件(68.9%)となっており、競争性なしの場合の計127件(8.7%)を大きく上回っている状況となっている。また、競争性のない契約方式のうち貸付料等を無償とし、かつ手数料を得ていない契約は計447件(30.8%)であり、このうち独立行政法人の件数は353件となっている。

表45 競争性の有無による手数料等を得ている契約件数の割合(平成25年度)

(単位:件)

区分 競争性あり 競争性なし
件数 割合 件数 割合
独立行政
法人
手数料なし 貸付料等が無償の契約 76 15.9% 353 37.4%
貸付料等が有償の契約 94 19.7% 542 57.5%
手数料あり 貸付料等が無償の契約 102 21.3% 21 2.2%
貸付料等が有償の契約 205 42.9% 26 2.7%
477 100% 942 100%
国立大学
法人等
手数料なし 貸付料等が無償の契約 2 0.9% 94 18.5%
貸付料等が有償の契約 44 20.1% 333 65.6%
手数料あり 貸付料等が無償の契約 82 37.6% 60 11.8%
貸付料等が有償の契約 90 41.2% 20 3.9%
218 100% 507 100%
全法人 手数料なし 貸付料等が無償の契約 78 11.2% (注)447 30.8%
貸付料等が有償の契約 138 19.8% 875 60.3%
手数料なしの計 216 31.0% 1,322 91.2%
手数料あり 貸付料等が無償の契約 184 26.4% 81 5.5%
貸付料等が有償の契約 295 42.4% 46 3.1%
手数料ありの計 479 68.9% 127 8.7%
合計 695 100% 1,449 100%
(注)
競争性のない契約方式を採用して、貸付料等を無償とし、かつ、手数料を得ていない契約に該当がある法人については別表10参照

このように、競争性のない契約方式を採用して、貸付料等を無償とし、かつ手数料を得ていない契約計447件については、契約条件等の変更による利用者の便宜への影響等に留意しつつ、競争性のある契約方式に移行するなどして、貸付料等収入や手数料収入の増加を図ることが重要である。

<参考事例3>自動販売機の設置について、貸付料等に加えて手数料を徴収することとして競争性のある契約方式を採用したことにより収入が増加したもの

北海道大学では、自動販売機の設置について、平成24年度までは随意契約により業者に敷地を貸し付けることで、年間69万余円の貸付料収入を得ていた。しかし、25年度からは貸付料に加えて手数料を徴収する方式に改めた上で一般競争入札に付した結果、手数料収入で6192万余円の増収となった。

(ウ)駐車場の使用料収入

a 駐車場の使用料収入の状況

独立行政法人59法人及び国立大学法人等88法人においては、敷地内に業務運営上必要な駐車場を設置しており、駐車場の利用者は法人によって様々であるが、職員、関係業者、その他来訪者等のほか、医療診療型の独立行政法人及び国大病院設置型の国立大学法人の病院においては、患者、見舞い人、職員等が利用している。また、劇場、博物館、研修施設等を有する独立行政法人においては、職員以外の施設利用者のための駐車場を設置している法人もある。これらの駐車場における料金徴収の状況をみると、表46のとおり、独立行政法人と国立大学法人等で、収入額はそれぞれ計26億余円及び計27億余円となっており、有料駐車場の割合はそれぞれ13.5%及び24.9%となっている。そして、市街地にあって職員以外の利用者が多い駐車場の場合は、周辺の駐車場の料金徴収の状況を参考にして、駐車ゲートを設置するなどして有料としているのに対し、公共交通機関等の利便性が高くない郊外にある駐車場の場合は、利用者の利便を確保するなどのため無料とする傾向が見受けられる。

表46 駐車場の料金徴収の状況(平成25年度)

(単位:箇所、千円)

区分

駐車場箇所数


(A)

うち
無料駐車場
うち
有料駐車場
箇所数
(B)
割合
(B/A)
箇所数
(C)
割合
(C/A)
収入額
独立行政法人 754 652 86.4% 102 13.5% 2,656,372

うち医療診療型 188 102 54.2% 86 45.7% 2,398,882
国立大学法人等 441 331 75.0% 110 24.9% 2,721,264

うち国大病院設置型 58 11 18.9% 47 81.0% 1,845,880
1,195 983 82.2% 212 17.7% 5,377,636
注(1)
駐車場箇所数については、同一の所在地であっても、料金徴収の状況や利用者が異なることなどによって、法人の管理方法が異なる場合には複数箇所として計上している場合がある。
注(2)
法人が保有する車両のためだけに設置している駐車場については、駐車場箇所数から除いている。
b 駐車場の使用料収入の確保等に向けた取組

職員以外の利用者の多い病院を設置している医療診療型の独立行政法人及び国大病院設置型の国立大学法人の駐車場(国立大学法人については病院駐車場に限る。以下同じ。)の状況をみると、表46のとおり、有料駐車場の割合がそれぞれ45.7%、81.0%と高くなっている。これら病院の有料駐車場は、業務運営上の必要から設置されているものであり、患者サービス等の一環として、診察を受けた患者に対しては一定時間の駐車料金を無料にするなどの措置を執るとともに、利用者が多いことなどから、駐車場の設置目的に合わない利用を抑制するなどのため、ゲートを設置するなどして、駐車場を有料化している場合が多く見受けられる。

そして、法人の敷地内にある駐車場は、業務運営上の必要から設置されているものの、法人の敷地を使用するだけでなく、守衛による監視や駐車ゲートの設置に伴って管理に要する経費が少なからず発生している。

このため、現在無料としている駐車場においても、公共交通機関等の利便性や駐車場の利用状況等を十分に考慮し、駐車場の管理に要する経費、周辺駐車場の料金徴収の状況等を勘案しながら、料金を徴収することが可能かどうか検討する余地がある。

また、駐車場の運営が適切に行われているかについて確認したところ、京都大学において、職員等駐車場の駐車整理業務により生ずる利益を享受できるようにするなどの適切な処置を執る必要があると認められる事態が見受けられた。

<事例2>職員等駐車場の駐車整理業務により生ずる利益を享受していないもの

京都大学では、医学部附属病院敷地内に外来患者等が利用する駐車場(以下「患者等駐車場」という。)と、職員等が利用する駐車場(以下「職員等駐車場」という。)をそれぞれ設置している。このうち職員等駐車場については、駐車区域における車両の誘導、適正駐車の指導、パスカードの発行、駐車整理料の収納・管理等の整理業務(以下「駐車整理業務」という。)は第三者に委託して行うこととされていることから、職員等駐車場に係る駐車整理業務について、毎年度一般財団法人和進会(平成23年7月以前は財団法人和進会。以下「和進会」という。)と委託契約を随意契約により無償で締結している。同委託契約によると、①和進会は駐車区域に駐車する者から駐車整理料を徴収することができること、②駐車整理料は職員等駐車場に係る駐車整理業務に要する最低限度の費用相当額とすること、③駐車整理料をもって職員等駐車場に係る駐車整理業務に必要な一切の経費を賄うこと、④和進会は駐車整理業務の収支に係る会計において剰余金が生じたときは、京都大学と協議した上で、職員等駐車場の施設又は設備の整備、その他職員等駐車場に係る駐車整理業務等に必要な経費に充てることなどとなっている。

そこで、24年度から26年度までの同委託契約に係る収支の状況をみたところ、駐車整理料による収入が駐車整理業務に必要な経費を上回っていて、和進会が管理する駐車整理業務の収支に係る会計において23年度以前の剰余金と合わせて、26年度末現在で4239万余円の剰余金が生じていた。そして、患者等駐車場と同様に職員等駐車場に係る駐車整理料を京都大学の収入として受け入れることとしていれば、上記の剰余金に相当する計4239万余円の利益を得ることができたと認められる。このように、駐車整理業務により利益が生じているのに、これを享受していない事態が見受けられた。

本件について、会計検査院は、27年12月に、会計検査院法第34条の規定により、「職員等駐車場に係る駐車整理業務の委託契約の見直し等について」として、京都大学学長に対して是正改善の処置を求めた。

(エ)宿舎使用料収入
a 宿舎使用料収入の状況

独立行政法人及び国立大学法人等は、職員の利用に供するため宿舎を保有し、法人が個別に宿舎使用料を決定して入居する職員から宿舎使用料を徴収している。そして、「「独立行政法人の職員宿舎の見直しに関する実施計画」の実施状況について」(平成27年2月内閣官房行政改革推進本部事務局)によると、25年度における独立行政法人45法人の宿舎使用料収入は計40億余円となっている。また、国立大学法人等89法人の25年度の宿舎使用料は計31億余円となっている。

b 宿舎使用料収入の確保等に向けた取組

独立行政法人の職員宿舎については、「独立行政法人の職員宿舎の見直しに関する実施計画」(平成24年12月行政改革担当大臣)等により宿舎に係る費用に見合う収入を得るためには、全体として、現行の1.9倍程度増加させる必要があるとの方針が示されたことから、宿舎を保有している各独立行政法人において、国家公務員宿舎の宿舎使用料の引上げ方法(注2)を参考にしつつ、個別に宿舎使用料の引上げなどの見直しが行われている。

(注2)
国家公務員宿舎の宿舎使用料の引上げ方法「「国家公務員宿舎の削減計画」に基づくコスト比較等による個別検討結果及び宿舎使用料の見直しについて」(平成24年財務省公表)等に基づき、26年4月から、宿舎に係る歳出におおむね見合う歳入(使用料収入)を得る水準まで使用料の段階的な引上げが行われている。

他方、国立大学法人等の職員宿舎については、前記の独立行政法人のように統一的な宿舎使用料の見直しの取組は行われていない。

そこで、宿舎を保有している国立大学法人等89法人が定めた規程等についてみたところ、多数の国立大学法人等では、法人化以前に適用されていた国家公務員宿舎法(昭和24年法律第117号)及び国家公務員宿舎法施行令(昭和33年政令第341号。以下、これらを合わせて「宿舎法等」という。)の規定に倣って宿舎使用料を算定していた。

そして、国立大学法人等の宿舎使用料の水準についてみたところ、表47のとおり、宿舎法等の規定に倣った規程により宿舎使用料を算定している計86法人のうち、43法人においては宿舎法等の引上げ方法に準じて見直した宿舎使用料とし、残る43法人においては一部の国立大学法人等で法人化後に新築、改修した宿舎について宿舎使用料の引上げなどの措置を執っていたものの、ほとんどの宿舎については、従前の宿舎使用料のままとなっている。

また、法人独自に規程を作成して宿舎使用料を算定している法人は計3法人であり、そのうち1法人では宿舎法等より高い宿舎使用料を設定していたものの、2法人では宿舎の老朽化等の理由から宿舎法等の引上げ方法に準じて見直した宿舎使用料より低い宿舎使用料を設定している。

表47 国立大学法人等の宿舎使用料の設定状況(平成26年度末)

(単位:法人)

宿舎使用料の設定状況の区分 法人数
宿舎法等の規定に倣った規程により宿舎使用料を算定して いる法人 宿舎法等の宿舎使用料の引上げ方法に準じて見直した宿舎使用料を設定している法人 43
従前の宿舎使用料のままとなっている法人 43
独自の規程を作成して宿舎使用料を算定している法人 宿舎法等より高い宿舎使用料を設定している法人 1
宿舎法等の引上げ方法に準じて見直した宿舎使用料より低い宿舎使用料を設定している法人 2

イ 公開施設に係る入場料収入

(ア)公開施設に係る入場料収入の状況

独立行政法人及び国立大学法人等においては、国立科学博物館のように法人の主たる業務として博物館等を設置している法人のほか、法人の業務内容等の広報、法人が実施した研究の成果の国民一般への還元等のために、資料館、展示・体験コーナーを含む展示館等の公開施設を設置している法人がある。

25年度末現在で上記のような公開施設を設置している法人数及び施設数は、表48のとおり、独立行政法人16法人で計51施設、国立大学法人等41法人で計73施設となっている。

また、上記のうち入場者から入場料等を徴する有料施設として運営されている施設は、独立行政法人で計20施設(39.2%)、国立大学法人等で計16施設(21.9%)となっている。

表48 公開施設を設置している法人数及び施設数(平成25年度末)

(単位:法人、施設)

区分 公開施設を設置している法人数 公開施設数

うち有料施設を設置している法人
うち有料施設
独立行政法人 16 7 51 20(39.2%)
国立大学法人等 41 11 73 16(21.9%)
注(1)
独立行政法人の「公開施設を設置している法人数」及び「公開施設数」には、主たる業務として博物館等を設置している国立科学博物館、国立美術館及び国立文化財機構並びにその公開施設が含まれており、また、業務の一環として日本科学未来館を運営している科学技術振興機構及び同館が含まれている。
注(2)
施設の一部を展示スペース等として利用している場合は公開施設から除いている。

前記の公開施設における21年度から25年度までの開館日数、入場者数及び入場料収入は、表49のとおりである。有料施設についてみると、独立行政法人が運営する有料施設では、1施設当たりの平均開館日数は280日前後、入場者数は22年度までは1000万人を超えていたが、21年度以降変動はあるものの減少傾向となっている。また、入場料収入は毎年度計20億円を超えているが、入場者数と同様に減少傾向となっている。一方、国立大学法人等が運営する有料施設では、1施設当たりの平均開館日数は約242日から約285日、入場者数は23年度を除き100万人を超える程度となっており、入場料収入は23年度を除き計2億円を超える状況となっている。

また、無料施設についてみると、独立行政法人が運営する無料施設では、1施設当たりの平均開館日数は毎年度290日前後、入場者数は毎年度100万人を超える程度となっており、国立大学法人等が運営する無料施設では、1施設当たりの平均開館日数は毎年度210日を超える程度、入場者数は24年度までは約36万人から約52万人で推移していたが、25年度には130万人を超え前年度の2倍超となっている。これは、25年3月に新たに設置された東京大学のインターメディアテクの入場者数が約78万人に上ったことによるものである。

表49 開館日数、入場者数及び入場料収入の推移(平成21年度~25年度)

区分 平成21年度 22年度 23年度 24年度 25年度
独立行政
法人
(16法人)
有料施設
(7法人)
開館日数(施設平均) 291.8 283.0 283.2 281.5 279.5
入場者数 12,602 10,752 9,317 9,845 9,452

入場者数(有料) 8,903 7,600 6,331 6,521 6,400
入場者数(無料) 3,698 3,151 2,986 3,324 3,051
入場料収入 2,787,612 2,480,348 2,087,674 2,221,216 2,142,897

無料施設

(10法人)

開館日数(施設平均) 289.2 296.6 292.6 294.4 293.1
入場者数 1,000 1,428 1,150 1,389 1,310
国立大学
法人等
(41法人)
有料施設
(11法人)
開館日数(施設平均) 285.4 272.0 242.3 268.2 260.5
入場者数 1,064 1,127 861 1,115 1,084

入場者数(有料) 709 770 532 663 687
入場者数(無料) 355 356 328 451 397
入場料収入 251,868 269,254 187,228 226,568 234,791
無料施設
(34法人)
開館日数(施設平均) 213.4 212.1 212.2 211.1 213.0
入場者数 361 462 446 521 1,302
(注)
独立行政法人1法人及び国立大学法人等4法人は有料施設と無料施設の両方を設置している。
(イ)公開施設に係る入場料収入の確保等に向けた取組

独立行政法人16法人及び国立大学法人等41法人が運営する有料及び無料の公開施設に係る入場者数規模ごとの施設数についてみると、表50のとおり、独立行政法人の公開施設では、入場者数が10万人を超えている施設は有料施設13施設、無料施設4施設となっている。このうち有料施設13施設は、主たる業務として博物館等を設置している国立科学博物館、国立美術館及び国立文化財機構が運営する施設並びに科学技術振興機構が業務の一環として運営する日本科学未来館である。また、国立大学法人等の公開施設では、入場者数が10万人を超えている施設は有料施設4施設、無料施設2施設となっており、1万人以下の施設は計44施設となっている。

表50 入場者数規模ごとの施設数(平成25年度)

(単位:施設)

区分 入場者数
10万人超 10万人以下
~1万人超
1万人以下
独立行政
法人
(16法人)
有料施設
(7法人)
13 7 20
無料施設
(10法人)
4 16 11 31
国立大学
法人等
(41法人)
有料施設
(11法人)
4 8 4 16
無料施設
(34法人)
2 15 40 57
注(1)
独立行政法人1法人及び国立大学法人等4法人は有料施設と無料施設の両方を設置している。
注(2)
施設の一部を展示スペース等として利用している場合は公開施設から除いている。

公開施設の入場料の取扱いについてみると、当該施設を設置する趣旨や展示内容等から入場料を徴収しないこととしている無料施設も比較的多い状況が見受けられ、特に入場者数が1万人以下の施設はほとんどが無料施設となっている。一方、有料施設では、施設清掃、施設案内者等に係る経費等、当該施設の維持及び管理に必要な経費の一部に充当するために入場料を徴収する取組が見受けられる。

ウ 受託研究等により取得した研究用機器の貸付け等に係る収入

(ア)受託研究等により取得した研究用機器の所有等の状況

独立行政法人及び国立大学法人等においては、国等又は民間企業からの受託研究や共同研究のため研究用機器を購入等することがある。

国等からの受託研究等のため購入等した研究用機器については、その目的に沿って利用し、終了後は国等に引き渡すなど受託研究契約書等に定められた内容に基づく管理等が行われることになるが、民間企業からの受託研究等のため購入した研究用機器については、受託研究等の終了後、契約の規定により受託者の所有とされるものもある。そして、このような研究用機器(以下「受託研究等により取得した研究用機器」という。)については、維持・管理の費用を要することなどから、法人内において活用されなくなった場合には、貸付け、譲渡又は廃棄による処分についても検討する必要がある。

そこで、受託研究等により取得した研究用機器を所有している独立行政法人38法人及び国立大学法人等79法人について、当該研究用機器(取得価額が100万円以上のものに限る。以下同じ。)に係る25年度末の固定資産残高等の状況をみると、表51のとおり、独立行政法人38法人では計403億余円、国立大学法人等79法人では計2094億余円といずれも多額に上っている。

表51 受託研究等により取得した研究用機器に係る固定資産残高等(平成25年度末)

(単位:法人、個、百万円)

区分 法人数 数量 金額
独立行政法人 38 19,402 40,351
国立大学法人等 79 48,599 209,410
117 68,001 249,762
(イ)受託研究等により取得した研究用機器の貸付け等に係る収入の確保等に向けた取組

受託研究等により取得した研究用機器の25年度における貸付けや、譲渡及び廃棄による処分の状況をみると、表52のとおりである。

このうち有償で貸付けを行っている法人に係る取得価額500万円以上の研究用機器の民間企業に対する貸付額は、独立行政法人3法人で計1278万余円、国立大学法人1法人で計13万余円となっている。

そして、譲渡及び廃棄により処分を行っている研究用機器についてみると、研究後に受託先の民間企業や研究者の異動先に無償で譲渡したり、廃棄したりする法人が多く見受けられる一方、有償で譲渡を行っている事例も独立行政法人1法人及び国立大学法人2法人において見受けられる。

表52 受託研究等により取得した研究用機器の貸付け及び処分の状況(平成25年度)

(単位:法人、個、千円)

区分 法人数 数量 うち取得価額500万円以上の民間企業
に対する研究用機器の貸付額
独立行政法人 貸付(有償) 3 145 12,781
貸付(無償) 2 244
譲渡及び廃棄 19 1,180
国立大学法人等 貸付(有償) 4 201 130
貸付(無償) 26 281
譲渡及び廃棄 49 1,287

エ 特許権に係る収入

(ア)特許権収入と特許料等の費用の状況

独立行政法人及び国立大学法人等は、研究開発を始め法人の実施する事業等の結果得られた発明を出願し、登録することで特許権を取得し、保有している。そして、21年度から25年度までの5年間において、特許権の出願、登録又は保有の実績がある法人は、独立行政法人では55法人、国立大学法人等では83法人となっている。

各法人における特許権は、研究成果の社会への普及還元を促進したり、他国や特定の企業に権利を主張されることを防ぎ安定的な研究開発環境や事業環境を確保したりするなどの目的で保有されている。また、独立行政法人及び国立大学法人等が保有する特許権が企業等で活用されて事業化につながった場合に得られる収入が自己収入の拡大につながることから、特許権は法人にとって重要な権利である。

特許権に係る収入としては、実施許諾契約に基づき特許対象技術を使用した企業が事業化に成功した場合に、売上げ等に応じて発生する実施許諾収入や、特許権を他者へ譲渡することにより発生する譲渡収入等がある。

一方、特許権には、出願、登録、維持等に要する費用(以下「特許料等の費用」という。)が発生する。このため、特許権の取得及び維持・活用に当たっては、その必要性について、当該発明の技術的価値と共に、特許権として登録した場合に当該特許権の実施許諾、譲渡等により得られる収入と特許料等の費用を総合的に評価して判断を行う必要がある。

そこで、前記の独立行政法人55法人及び国立大学法人等83法人における21年度から25年度までの実施許諾収入及び譲渡収入(以下、これらを合わせて「特許権収入」という。)と各年度の特許料等の費用についてみると、特許権の保有目的は様々であることに留意が必要であるが、表53のとおり、独立行政法人全体及び国立大学法人等全体では、いずれも特許料等の費用が特許権収入を上回っていて赤字となっている。

また、これを法人別にみると、25年度において特許権収入が特許料等の費用を上回っている法人は、独立行政法人12法人、国立大学法人等10法人となっている。

表53 特許権収入と特許料等の費用の状況(平成21年度~25年度)

(単位:百万円)

区分 各年度の特許権収入及び費用等
平成21年度 22年度 23年度 24年度 25年度
独立行政法人
(55法人)
収入A
1,767 1,580 2,003 1,491 1,729
実施許諾収入 1,765 1,575 1,994 1,458 1,688
譲渡収入 2 5 8 32 40
費用B 3,274 3,367 3,030 2,862 3,082
差引A-B △1,506 △1,786 △1,027 △1,371 △1,353

収入が費用を上回る法人数(A>B)

6 7 7 7 12

収入が費用以下の法人数(A≦B)

49 48 48 48 43
国立大学法人等
(83法人)
収入A
628 1,133 881 1,087 1,818
実施許諾収入 481 700 701 823 1,458
譲渡収入 147 433 179 263 360
費用B 1,373 1,729 2,018 2,390 2,661
差引A-B △744 △658 △1,137 △1,303 △842

収入が費用を上回る法人数(A>B)

15 19 4 7 10

収入が費用以下の法人数(A≦B)

68 64 79 76 73

そして、独立行政法人及び国立大学法人等が保有する特許権について、企業等における事業化を通じた研究成果の社会への普及還元や自己収入の拡大を目的とする場合には、有望な特許権の取得につながる研究テーマを選定し、更にその中から事業化の可能性が高い発明を出願したり、取得した特許権について事業化機会の拡大への積極的な取組を行ったりすることが必要である。また、費用の削減のためには、出願に当たって共有企業等が費用負担する発明を優先することに留意したり、事業化が見込めない特許権や陳腐化するなどした特許権について保有の見直しを図ったりすることが必要である。

(イ)特許権収入の確保等に向けた取組
a 特許権取得までの取組の状況等

価値ある研究成果を埋もれさせず、有効活用するためには、研究者から積極的に発明を届出させることで特許権の取得につながる発明の掘起し等を図ることが重要である。

そこで、前記の独立行政法人55法人及び国立大学法人等83法人の計138法人における特許権出願件数について、21年度から25年度までの推移をみたところ、表54のとおり、特許権出願件数は年々増加傾向にあり、25年度の出願件数は、対21年度比で3.4%の増加となっている。

そして、25年度において特許権収入が特許料等の費用を上回っていた前記の独立行政法人12法人及び国立大学法人等10法人のうち、収入と費用の差が1000万円を超える10法人(注3)においては、25年度の出願件数は、対21年度比で28.3%の増加となっている。この10法人においては、法人によって内容は異なるが、特許権の取得につながる発明をより多く掘り起こすために、研究者等への教育・啓もう、特許権の出願や届出手続の標準化や体制強化、特許権につながる発明をした研究者に対する報奨金の支給等の取組が行われている。

(注3)
10法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構、物質・材料研究機構、新エネルギー・産業技術総合開発機構、港湾空港技術研究所、土木研究所、国立精神・神経医療研究センター、国立がん研究センター、東京大学、京都大学、九州工業大学

表54 特許権出願件数の推移等(平成21年度~25年度)

(単位:件)

区分 平成21年度 22年度
(対前年度増加率)
23年度
(対前年度増加率)
24年度
(対前年度増加率)
25年度
(対前年度増加率)
21年度と25年度の比較
(25年度の対21年度増加率)
138法人 11,304 11,317
(0.1%)
11,413
(0.8%)
11,455
(0.3%)
11,698
(2.1%)
394
(3.4%)
うち10法人(注) 1,937 2,330
(20.2%)
2,329
(△0.0%)
2,226
(△4.4%)
2,486
(11.6%)
549
(28.3%)
(注)
平成25年度において収入が費用を上回り、その差が1000万円を超える法人

他方、特許権に係る収入確保及び費用削減のためには、届け出られた発明について、事業化の可能性や技術的価値と共に、特許権の取得に伴う収入・費用を総合的に評価して、これを法人として慎重に判断した上で出願や審査請求をする必要がある。

そこで、前記の10法人の取組状況についてみたところ、共有企業が出願費用を負担する発明や、ライセンス先が決まっているなど活用の見込みのある発明を優先的に出願したり、事業性を重視した特許権取得を推進するために、研究の初期段階から知的財産担当者と研究者が連携して、進捗状況をモニタリングする体制づくりを図ったりするなどの取組が行われている。

事業性を重視した特許権取得を推進する取組の参考事例を示すと、次のとおりである。

<参考事例4>事業性を重視した特許権取得を推進する取組を行っているもの

石油天然ガス・金属鉱物資源機構では、天然ガスを液体燃料化する実証研究に関して特許群を形成し、複数の産油国に出願して特許権の事業化を図るなど、知的財産を活用することを、研究成果の実証・商業化のための一手段として位置付けている。また、産油国等が抱える技術課題に対して、我が国企業と一体となって解決策を提供する事業に関しては、産油国等の技術課題に沿った研究開発テーマの選定等に当たって、積極的に特許権情報を活用している。

そして、知的財産担当が、研究開発案件の採択の審査委員や研究開発の副担当として参加したり、研究成果の中間・最終報告会に出席したりするなど、研究の進捗状況をモニタリングする体制づくりを進めており、さらに、事業性を重視した特許権取得の推進等のため、技術開発担当部署と知的財産担当部署の双方向で、個別の発明を、「戦略面」、「技術面」及び「活用面」の三つの観点で定量的に総合評価して、特許出願の可否等について意思決定している。

b 事業化機会の拡大を図る取組の状況等

事業化を見込んでいたものの、それが図られていない特許権については、ライセンス先を見つけ、実施許諾契約等を締結することで、研究成果の社会還元や法人の収入の拡大につなげる必要がある。

そこで、前記の10法人について、各法人が特許権の事業化に向けてどのような取組を行っているかについてみたところ、知的財産や産学連携に関する様々なイベントの機会を利用して各法人の技術を参加企業等に発信したり、関連する特許を組み合わせてパッケージライセンスとして提案したり、TLO(注4)、科学技術振興機構の知財活用支援事業、工業所有権情報・研修館の「開放特許情報データベース」等を活用したりすることで、積極的にライセンス先を探す取組が進められている。また、企業の研究開発課題に対し総合的な支援を行うなどの多様な企業連携の仕組みを設けたり、技術の性質によっては、特定の企業に技術が独占されないように非独占で実施許諾を提供し、多数の企業等への技術提供を行ったりして、事業化機会の拡大を図る取組が行われている。

(注4)
TLO TechnologyLicensingOrganization(技術移転機関)の略称、大学の研究者の研究成果を特許化し、それを企業へ技術移転する法人である。
c 特許権の保有の見直し状況等

特許権は、実施許諾契約等を締結し事業化を図ることにより法人の収入拡大につながる一方で、特許権の維持等には特許料等の費用を要することから、特許権収入に比べ特許料等の費用が多額となっていたり、事業化が見込めなかったりする場合には、権利を放棄するなど保有する特許権を引き続き保有する必要があるかの見直しが必要となる。

前記の独立行政法人55法人及び国立大学法人等83法人が保有する特許権のうち実施許諾契約がない特許権について、25年度末における特許権の出願から経過した期間等の状況をみたところ、表55のとおり、「出願から10年超」の特許権は独立行政法人で10,847件(保有特許権件数に占める割合は37.8%)、国立大学法人等で1,962件(同9.9%)となっており、独立行政法人は、国立大学法人等に比べて件数が多く割合も高くなっている。これは、国立大学法人等では、16年の法人化以前は特許権が原則として研究者個人に帰属していたことから、「出願から10年超」の特許権の保有数は少ないことによると考えられる。

表55 実施許諾契約がない特許権の出願から経過した期間等の状況(平成25年度末)

(単位:件)

区分 実施許諾契約がない特許権件数 保有特許権件数
出願から10年以下 出願から10年超
独立行政法人
(55法人)
10,281(35.9%) 10,847(37.8%) 28,632(100%)
国立大学法人等
(83法人)
14,289(72.4%) 1,962(9.9%) 19,720(100%)

これら「出願から10年超」の特許権には、産業技術力強化法(平成12年法律第44号)附則第3条、特許法の一部を改正する法律(平成15年法律第47号)附則第2条等に基づき特許料等の費用が免除される特許権が(注5)多く含まれるが、今後、特許料等の費用が免除されている特許権が存続期間(出願から20年)の満了により減少していく中で、独立行政法人では16年度以降、国立大学法人等では19年度以降の出願分について、特許料等の費用を要する新たな特許権を取得していくことが見込まれる。

(注5)
特許料等の費用が免除される特許権 独立行政法人(平成16年3月31日時点の特許法施行令(昭和35年政令第16号)第13条の4により指定された法人に限る。)が16年3月31日までに出願した特許権に係る特許料等の費用及び国立大学法人等が19年3月31日までに出願した特許権に係る特許料等の費用は原則免除されている。

そこで、前記の独立行政法人55法人及び国立大学法人等83法人における特許権の保有の見直しを行うための委員会等に係る体制整備の有無についてみたところ、25年度末において、委員会等の体制整備が行われている独立行政法人は39法人(70.9%)、国立大学法人等は70法人(84.3%)となっており、このうち、独立行政法人15法人(38.4%)、国立大学法人等52法人(74.2%)では、25年度において、2か月に1回を上回る頻度で委員会が開催されている。

また、特許権の登録から保有の見直しを行うまでの期間の設定状況についてみたところ、表56のとおり、特許権登録から3年以内に保有の見直しを行うこととしている法人は、独立行政法人で15法人(27.2%)、国立大学法人等で38法人(45.7%)である一方で、見直しを行うまでの期間を設定していない法人も、独立行政法人で30法人(54.5%)、国立大学法人等では35法人(42.1%)見受けられる。

表56 特許権の登録から見直しを行うまでの期間の設定状況(平成25年度末)

(単位:法人)

区分 見直し期間の設定有り 設定無し(注)
3年以内 3年超
独立行政法人 15(27.2%) 10(18.1%) 30(54.5%) 55(100%)
国立大学法人等 38(45.7%) 10(12.0%) 35(42.1%) 83(100%)
(注)
特許権の登録から見直しを行うまでの期間を設定していない法人数の内訳については別表10参照

出願から相当期間を経過して保有している特許権について、その維持に要する費用が負担となっている事例を示すと、次のとおりである。

<事例3>出願から相当期間を経過した特許権の維持に要する費用が負担となっているもの

農業・食品産業技術総合研究機構(以下「機構」という。)では、平成25年度末において、実施許諾契約がない特許権のうち、出願から10年を超える特許権を法人全体で644件保有している。機構において特許権を有する法定勘定は、農業技術研究業務勘定、基礎的研究業務勘定及び農業機械化促進業務勘定の3勘定あるが、そのうち基礎的研究業務勘定に係る特許権は125件あり、これらは15年に機構に組織統合された特別認可法人が出願し保有していた特許権であるため、特許料等の費用の免除対象となっていない。これらは研究委託で生じた委託先との共有特許権であるが、機構では、委託先から特許権の放棄等の申請を受けた場合に限って放棄していた。そのため、特許権の維持に要する費用が25年度において364万余円生じていた。

現在、機構では、登録から一定期間経過した特許権については、その維持に要する費用の納付期日に先立ち委託先と相談し、放棄等を行うことの適否を判断する方式に変更するなど、運用の改善を図っており、上記125件のうち31件(25年度における特許権の維持に要する費用は131万余円)については27年8月までに放棄している。

以上のことから、特許権の保有目的に留意しつつ、特許権に係る事業化の拡大を図ることと併せて、取得した特許権について収入と比較して費用が多額であったり、事業化が見込めなかったりする場合や、特許権の内容が陳腐化した場合等には、特許権の維持に要する費用の負担を軽減する観点から、各法人において保有する特許権の見直しを引き続き積極的に進めていくことが必要である。

オ 寄附金に係る収入

独立行政法人及び国立大学法人等の中には、運営費交付金や、授業料等収入、受託収入等のほか、民間企業、団体、個人等の国以外の者から無償で提供される寄附金収入を比較的大きな財源としている法人がある。

前記のとおり、国立大学法人等については、獲得した寄附金を運営費交付金の額の算定に影響させない取扱いとされており、また、独立行政法人についても、法人の事務・事業等の状況に応じて、その額が予見できない性質の寄附金については、運営費交付金の額の算定において控除対象外とすることなどの方針が示されている。このように、寄附金収入は、各法人の業務運営において重要な収入と位置付けられている。

(ア)寄附金収入の状況

独立行政法人及び国立大学法人等の業務類型等ごとに21年度から25年度までの寄附金受入額の推移等をみると、表57のとおり、寄附金の受入実績がある法人は、独立行政法人では全98法人のうち59法人、国立大学法人等では全90法人となっている。そして、25年度の寄附金受入額は、独立行政法人は計94億余円、5か年平均で132億余円となっており、寄附金の性質上、年度ごとに増減がみられるが、文教研修型及び医療診療型の独立行政法人では増加傾向となっている。また、国立大学法人等は計758億余円、5か年平均で761億余円となっており、独立行政法人と同様に年度ごとの増減がみられるが、21年度に比べて25年度は35億余円増加している。

表57 業務類型等ごとの寄附金受入額の推移等(平成21年度~25年度)

(単位:法人、千円)

区 分 寄附金受入実績のある法人 受入実績
のない法
人数(B)
受入実績のない
法人割合(c)=
(B)/((A)+(B))
法人数(A) 平成21年度(a) 22年度(b) 23年度(c) 24年度(d) 25年度(e) 5か年平均(f) 法人当たり平均
(g)=(f)/(A)





文教研修型 6 1,037,299 1,034,303 1,947,629 1,767,745 2,689,455 1,695,286 282,547 -%
研究開発型 21 697,630 746,042 1,269,769 830,338 621,611 833,078 39,670 6 22.2%
医療診療型 9 1,011,646 834,294 952,665 1,194,730 1,886,388 注(3)
1,265,792
140,643 -%
その他型 23 15,624,416 2,188,209 1,896,678 23,570,101 4,236,255 9,503,132 413,179 33 58.9%
59 18,370,993 4,802,850 6,066,744 27,362,915 9,433,710 注(3)
13,297,290
225,377 39 39.7%







国大教育研究型 48 8,417,644 8,610,803 8,026,510 7,738,158 7,678,930 8,094,409 168,633 -%
国大病院設置型 42 63,891,258 68,496,410 67,283,599 72,220,127 68,216,404 68,021,560 1,619,560 -%
90 72,308,903 77,107,213 75,310,109 79,958,286 75,895,335 76,115,969 845,732 -%
合 計 149 90,679,896 81,910,064 81,376,853 107,321,202 85,329,045 注(3)
89,413,260
39 20.7%
注(1)
寄附金受入額は、当該年度に現金で受け入れた寄附金の総額である。
注(2)
医療診療型に該当する放射線医学総合研究所等9法人については、他の業務類型にも該当するが、ここでは医療診療型にのみ計上している。
注(3)
平成22年4月に設立された国立がん研究センター等6法人に係る22年度から25年度までの4か年平均を用いて算出しているため、21年度から25年度までの計を5で除した数値とは一致しない。

次に、全法人に受入実績がある国立大学法人等について、寄附金受入額の5か年平均を法人数で除した1法人当たりの平均額をみると、90法人全体では8億余円であるのに対し、国大教育研究型は1億余円、国大病院設置型は16億余円となっている。また、25年度の国大教育研究型の法人全体の寄附金受入額は計76億余円であるのに対し、国大病院設置型の法人全体では計682億余円となっており、国大病院設置型の国立大学法人が獲得する寄附金受入額が大きな比率を占めている。

さらに、国大病院設置型の国立大学法人と医療診療型の独立行政法人の寄附金受入額の1法人当たりの平均額を比較してみると、国大病院設置型の国立大学法人が上記のとおり16億余円であるのに対し、医療診療型の独立行政法人が1億余円と、国大病院設置型の国立大学法人の方が大きくなっている。これは、独立行政法人と異なり、教育研究業務を行っている国立大学法人においては、医学部及び理工系学部の研究パートナーとなる企業等からの寄附金を始め、卒業生や保護者からも寄附金を得ていることによる。

(イ)寄附金収入の確保等に向けた取組

独立行政法人のうち寄附金の受入実績のある法人及び国立大学法人等における寄附金収入の確保等に向けた取組の状況をみると、特定の研究の推進等を目的とした企業等からの寄附金の獲得に積極的に取り組んだり、職員等が企業等に対し定期的に訪問や電話等を行ったりしている。

また、法人のホームページ等で研究等の内容を説明するなどして寄附を募集したり、賛助会等寄附者の会員制度を設けて寄附金の額に応じた特典を付したり、寄附金を充てた事業の進捗状況や寄附金の収支状況等を寄附者等にホームページや機関誌で公表したりするなどの取組を積極的に行って、新規の寄附金獲得及び継続的な寄附金の獲得を図っている。

国立大学法人等においては、今後も引き続き産学連携や地域連携等の推進等を通じて、より一層の寄附金獲得のための取組を行っていくことが必要であり、また、寄附金の獲得が可能な独立行政法人においては、他の法人が実施する寄附金獲得のための取組を参考としたりして、法人の業務の特性に留意しつつ、より一層の寄附金獲得を図っていくことが必要である。

カ 余裕金の運用に係る収入

独立行政法人及び国立大学法人等の中には、四半期ごとに交付される運営費交付金を経費等の支払に充てるまでの間保有している資金や、不要財産を処分した売却収入を国庫返納するまでの間保有している資金等(以下、これらの資金を「余裕金」という。)について、これを支出するまでの間、金融資産により運用し、利息等の運用益(普通預金に係るものを除く。以下同じ。)を得ている法人がある。余裕金を運用する場合には、通則法第47条又は国立大学法人法による同条の読替規定により、銀行その他主務大臣の指定する金融機関への預金や、国債、地方債、政府保証債その他主務大臣の指定する有価証券の取得、及び信託銀行を営む金融機関への金銭信託に限ることとされている。また、改革基本方針では、取得できる有価証券を主務大臣が指定する際は安全資産であることを十分確認して行うこととされている。

(ア)余裕金の運用状況

郵便貯金・簡易生命保険管理機構及び年金積立金管理運用を除く独立行政法人96法人及び国立大学法人等全90法人について、25年度における余裕金の運用状況をみると、表58のとおり、独立行政法人においては、96法人のうち62法人が余裕金を運用しており、運用に係る収入は計344億余円、運用に係る収入の1法人当たりの平均は5億余円、運用に係る収入計を運用額平均で除した運用利回りは0.4%となっている。また、国立大学法人等においては、全90法人のうち89法人が余裕金を運用しており、運用に係る収入は計19億余円、運用に係る収入の1法人当たりの平均は2224万余円、運用に係る収入計を運用額平均で除した運用利回りは0.3%となっている。そして、25年度に独立行政法人及び国立大学法人等が保有する金融資産については、いずれも通則法及び各大臣の指定に基づく範囲で運用されている。

表58 余裕金の運用状況(平成25年度)

(単位:法人、千円)

区 分 運用実績のある法人 運用実
績のな
い法人
数(F)
運用実績
のない法
人割合
(F)/
(A)+(F)
金融資産取扱種類別順位
(上位3位)
法人
数(A)
運用原資平均(B) 運用額平均(C) 運用に係る収入(D) 運用利回り
(E)=(D)/(C)
1位 2位 3位

独立行政法人計

62 8,709,751,177 7,431,879,906 34,492,738 0.4% 34 35.4% 定期預金 譲渡性預金 国債
(1法人平均) (140,479,857) (119,869,030) (556,334)

国立大学法人等計

89 882,922,509 517,408,520 1,979,383 0.3% 1 1.1%
(1法人平均) (9,920,477) (5,813,578) (22,240)
合 計 151 9,592,673,686 7,949,288,426 36,472,121 0.4% 35 18.8%
(1法人平均) (63,527,640) (52,644,294) (241,537)
注(1)
運用原資平均は、保有している現金(信託資金を含む。)、普通預金、当座預金、定期預金、譲渡性預金、有価証券(運用のため保有しているもの)等の平成25年度各月末の帳簿残高を合計したものを12で除して算出しているものであり、直ちにその全額を運用できる性質のものではない。
注(2)
運用額平均は、保有する金融資産(定期預金、譲渡性預金、有価証券等)ごとに平成25年度各月末の保有残高を合計したものを12で除して算出しており、普通預金に係る額を除いている。また、共同運用に係るものについては、各法人単位の金融資産に含めている。
注(3)
運用に係る収入は、共同運用に係るものを含めており、普通預金に係るものは除いている。
注(4)
独立行政法人の余裕金の運用実績については、通則法第47条により運用することが法律等により求められている資金の運用実績を含んでいる。
(イ)余裕金の運用に係る収入の確保等に向けた取組

独立行政法人が、主に国からの運営費交付金を原資として運用益を得る場合には、運営費交付金の額の算定時に当該運用益の計画額が控除されるなどしている。そして、独立行政法人の中には、資金の安全性及び流動性を重視する観点から、余裕金を普通預金等で保有している法人が見受けられる。

一方、国立大学法人等においては、四半期ごとに交付される運営費交付金や授業料等の自己収入のように、受け入れてから支出するまで1年以下の短期間生ずる余裕金のほか、一部の寄附金のように、収入の性質により受け入れてから支出するまで1年超の長期間生ずる余裕金があり、これら余裕金を短期と長期に分けて運用している。そして、国立大学法人等においては、法人化当初から、これら余裕金を運用することによって運用益を得る場合でも、翌期の運営費交付金の額の算定に影響を与えない取扱いとされるなど、自己収入の拡大のための環境が整えられており、25年度においては、ほとんどの法人において余裕金の運用を行っている。

そこで、独立行政法人及び国立大学法人等の25年度における余裕金の運用実績の有無を運用原資平均の金額規模別にみると、表59のとおり、運用原資平均が最も少ない10億円未満となっている法人は、独立行政法人では22法人で、そのうち運用を行っているのは2法人(9.0%)となっている。また、国立大学法人等では9法人で、そのうち運用を行っているのは8法人(88.8%)となっている。

表59 運用原資平均の金額規模別の運用実績の状況(平成25年度)

(単位:法人)

運用原資平均

法人区分

0円以上
10億円未満
10億円以上
20億円未満
20億円以上
30億円未満
30億円以上
40億円未満
40億円以上
50億円未満
50億円以上
60億円未満
60億円以上
うち10億円以上の法人
独立行政法人
(96法人)
運用あり 2
(9.0%)
4 4 2 1 2 47 62
(64.5%)
60
(81.0%)
運用なし 20
(90.9%)
5 2 2 2 2 1 34
(35.4%)
14
(18.9%)
22
(100%)
9 6 4 3 4 48 96
(100%)
74
(100%)
国立大学法人等
(90法人)
運用あり 8
(88.8%)
14 10 4 5 3 45 89
(98.8%)
81
(100%)
運用なし 1
(11.1%)
1
(1.1%)

(-%)
9
(100%)
14 10 4 5 3 45 90
(100%)
81
(100%)

また、運用原資平均が10億円以上で、余裕金の運用を行っていない法人は、国立大学法人等に該当がない一方で、独立行政法人において14法人ある。

しかし、前記のとおり、国立大学法人等においては、運営費交付金等を短期で運用することにより運用益を上げていることから、独立行政法人においても、四半期ごとに交付される運営費交付金や利益剰余金等の比較的安定していると認められる運用原資がある場合については、可能な限り短期による運用も含めて、運用の可否を検討する必要がある。

なお、余裕金の運用を行っていなかった独立行政法人34法人のうち、余裕金の運用を行う場合の権限等を定めた要領等を定めていない法人は24法人あり、これらの法人においては、できる限り要領等を定めるなどして、運用可能な余裕金が生じた場合に対応できるようにする必要がある。

25年度において運用を行っていなかった独立行政法人の事例を示すと、次のとおりである。

<事例4>余裕金の運用を行っていなかったもの

国立成育医療研究センター(平成25年度運用原資平均6,144,928,640円)では、23年度に余裕金の資金運用要領を定め、同年度中に四半期ごとに交付される運営費交付金や病院収入等の一部を原資に定期預金で約6か月間運用し収入を得ていたものの、24年度以降は運用を行っていない。

キ その他の収入

(ア)各種証明書等の発行手数料等の収入の状況及びその確保等に向けた取組

学校を設置し、運営を行っている文教研修型の独立行政法人9法人及び国立大学法人全86法人においては、在学生及び卒業生等(以下「学生等」という。)からの依頼に基づき、在学証明書、成績証明書、卒業見込証明書、卒業・修了証明書、学生証明書(再発行)(以下、これら5種類の証明書を「主な証明書」という。)等の各種証明書等を窓口で直接発行したり、証明書自動発券機により発行したり、また、希望する学生等に対しては、郵送料を徴して郵送により発行したりしている。そして、これら各種証明書等の発行に当たり、学生等から発行手数料等を徴収している法人がある。

そこで、上記の独立行政法人9法人及び国立大学法人全86法人について、計95法人が共通して発行している主な証明書の種類別及び在学生、卒業生等の対象者別に、25年度における発行手数料の徴収状況等をみると、表60のとおり、発行手数料を徴収している法人は独立行政法人が4法人、国立大学法人が41法人となっている。これらの法人では、発行手数料を徴収する理由について、受益者負担の観点から証明書発行に係る経費として徴収しているとしている。

表60 主な証明書の種類別及び対象者別の発行手数料の徴収状況等(平成25年度)

種 類 独立行政法人(9法人) 国立大学法人(86法人) 合計
在学生 卒業生等 在学生 卒業生等
在  学
証明書
3法人
(300~500円)
3法人 3法人
成 績
証明書
3法人
(300~600円)
4法人
(300~1000円)
4法人 8法人
(200~400円)
8法人 12法人
卒業見込
証 明 書
3法人
(300~500円)
3法人 3法人
卒業・修了
証 明 書
1法人
(500円)
4法人
(300~1000円)
4法人 8法人
(200~400円)
8法人 12法人
学生証明書
(再発行)
2法人
(500~600円)
2法人 39法人
(600~3000円)
39法人 41法人
合計 3法人 4法人 4法人 39法人 8法人 41法人 45法人
(注)
「計」欄の計数は純計であり、各欄の計数と合計しても一致しない。

そして、発行手数料を徴収している独立行政法人4法人及び国立大学法人41法人のうち、21年度から25年度までの発行手数料等の合計がそれぞれ上位3位までの法人に係る発行手数料等の徴収額の推移及びその在学生の平均人数をみると、表61のとおりとなっている。

表61 発行手数料等の徴収額の推移(平成21年度~25年度)

(単位:千円、人)

区分 法人名 平成
21年度
22年度 23年度 24年度 25年度 合計 (参考)
平均在学
生数
独立行
政法人
国立病院機構 14,384 15,119 14,616 14,038 13,390 71,548 7,670
労働者健康福祉機構 917 686 706 698 659 3,668 1,126
日本学生支援機構 285 217 205 230 210 1,148 341
国立大
学法人
東京学芸大学 2,488 2,570 2,492 2,619 2,638 12,809 6,126
埼玉大学 1,260 1,376 1,322 1,323 1,938 7,221 9,025
群馬大学 1,451 1,284 1,266 1,452 1,374 6,829 6,703
注(1)
徴収額には、表60における主な証明書に係る発行手数料のほか、入学試験の成績開示書面の請求手数料を含む。
注(2)
群馬大学は、主な証明書の他に推薦書や調査書においても発行手数料を徴収している。

一方、主な証明書の発行手数料を徴収していない独立行政法人5法人及び国立大学法人45法人では、徴収していない理由として、学生サービスの一環であること、収納事務が煩さになることが想定されることなどを挙げている。

現在、発行手数料を徴収していない法人のうち、今後、在学生や卒業生等に対する発行手数料等を、発行に要する経費等を勘案するなどして徴収することを検討している法人もあるが、検討していない法人においては、各種証明書等の種類や発行対象者等に留意した上で、発行に要する経費と事務負担を十分に勘案するなどして、受益者負担の観点から発行手数料等の徴収について検討する余地がある。

(イ)農産物等の売却、ブランド等商品の販売、広告掲載等による収入の状況及びその確保等に向けた取組

独立行政法人及び国立大学法人等の中には、事業を実施した結果として産出された農産物や副産物を売却したり、その農産物や副産物を利用した加工品を製造・販売したりすることにより収入を得ている法人や、使用済みとなっても価値のある金属が含まれているレントゲンフィルム等の不要物品を売却することにより収入を得ている法人が見受けられる。このような農産物等の産出及び不要物品の処分の実績がある法人数並びにその収入額の状況は、表62のとおりであり、農産物等の産出等の実績がある法人の大半で売却を行っており、自己収入の確保に努めている。

表62 農産物等の産出及び不要物品の処分の実績がある法人数並びにその収入額の状況(平成25年度)

(単位:法人、百万円)

区分 種類 産出等の実績がある法人数

うち売却の実績が
ある法人数
収入額
独立行政法人 農産物(米、野菜、果実、肉類、林産物等) 10 8 2,855
加工品(ジャム、ジュース、ハム等) 3 3 5
不要物品(レントゲンフィルム、パソコン等) 42 30 352
45 33 3,213
国立大学法人等 農産物(米、野菜、果実、肉類、林産物等) 47 46 941
加工品(ジャム、ジュース、ハム等) 27 27 155
不要物品(レントゲンフィルム、パソコン等) 76 69 487
79 73 1,584
注(1)
「計」欄の計数は純計であり、各欄の計と一致しない。
注(2)
収入額は法人ごとに1品目で年間で100万円を超える売却がある農産物等の額のみを集計したものである。

農産物の売却により自己収入を得ている参考事例を示すと、次のとおりである。

<参考事例5>農産物の売却により自己収入を得ているもの

家畜改良センターは、家畜の改良及び増殖等の事業を実施した結果産出された農産物の売却により自己収入を得ている。平成25年度には、農協との契約による生乳の売却で5億余円の売上げを計上し、また、家畜(肉牛)については近隣の市場価格を用いて見積り競争や、枝肉価格の高い市場への出荷・競売等により3億余円の売上げを計上するなどした結果、計12億余円の自己収入を得ている。

また、独立行政法人及び国立大学法人等においては、その法人の知名度を生かして、法人等のロゴマークを入れるなどしたブランド商品を開発して自ら販売したり、他の業者にロゴマークの使用を認めた商品の販売実績に応じたロイヤリティ(使用料)を徴収したりして収入を得ている法人が見受けられる。

ブランドを利用した商品により自己収入を得ている参考事例を示すと、次のとおりである。

<参考事例6>商標使用権許諾契約により自己収入を得ているもの

北海道大学は、商標使用権許諾契約を製造業者と締結し、ブランドを利用した様々な商品のロイヤリティ(使用料)により自己収入を得ており、平成25年度には計1209万余円の自己収入を得ている。特にブランド名をつけた菓子は、大学構内の店舗のみならず空港や通信販売等でも北海道土産として販売されている。

さらに、独立行政法人及び国立大学法人等においては、自らの事業の状況等を世間の人々に広く知ってもらうために作成し、公開しているホームページ、法人等が発行する広報誌やパンフレット等、封筒等の配布物への広告掲載を行うことにより、収入を得ている法人が見受けられる。

広告掲載により自己収入を得ている参考事例を示すと、次のとおりである。

<参考事例7>バナー広告を掲載することにより自己収入を得ているもの

福祉医療機構では、同機構が運営する情報サイト「WAMNET」に掲載するバナー広告により広告収入を得ており、平成25年度には計804万余円の自己収入を得ている。広告掲載の募集は情報サイト「WAMNET」及びメールマガジン(会員向けメール)で行い、掲載料金はバナー広告を取り扱っている官公庁、都道府県等の公的機関の価格を参考にして設定している。

以上のように、事業を実施した結果として産出された農産物等の売却、ブランドを利用した商品の販売、広告掲載等を行うことにより、様々な自己収入を得ている法人がある。各法人においては、各法人の目的に十分に留意しつつ、自己収入の拡大につなげることができる取組について可能な限り検討することが重要である。