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  • 昭和41年度|
  • 第3章 政府関係機関その他の団体の会計|
  • 第2節 各機関別の事項

日本国有鉄道


改善の意見を表示した事項

検修庫等の鉄骨工事の設計等について

 (昭和42年11月15日付42検第436号)

 日本国有鉄道の工事局等において、車両運行の安全を確保するなどのため、昭和41年度中に車両の検修庫、乗換こ線人道橋等の鉄骨構造の施設を新設した工事は21億余円に上っているが、このうち42年3月から9月までの間に本院において実地に検査した52工事14億余円の構造部材の設計および積算についてみると、部材の選定にあたり製品化された形鋼を採用して経済的な施行を図る配慮が十分でなかったり、積算が実情にそっていなかったりしているため不経済となっていると認められるものが多数見受けられる状況である。
 すなわち、近年H形鋼、鋼管、T形鋼等の形鋼は多種類にわたって製品化され、そのまま柱、はり等に一般に使用されているのであるから、これらの形鋼のうち所要の目的に適合するものを選定して使用することとすれば、鋼板を切断して柱、はり等の鉄骨部材を製作する場合に比べて鋼材使用量が少なくてすむばかりでなく、形取り、切断、溶接、ひずみ直し等の加工量が減少することとなるので、形鋼を使用した場合の鋼材費の増こうを勘案しても工事費を相当節減できるものと認められるのに、鋼板を切断しこれをH形または四角形に溶接して使用することとして設計したり、トラス(注) の上弦材および下弦材には等辺山形鋼等を組み合わせて断面をT形とすることとして設計しT形鋼の使用を考慮しなかったりなどして不経済となっていると認められるものがある。また、形鋼を使用することとして設計しているものの積算についてみると、これら形鋼は特別の加工をしないでそのまま使用できるものであるから、これを使用する場合には鋼板等を加工して部材を製作する場合に比べて加工人工が低減することを考慮して積算すべきであると認められるのに、H形鋼を使用する場合だけについて加工人工を低減しており、その他の形鋼を使用する場合には鋼板等を加工して部材を製作する場合と同一の加工費を積算していて、不経済となっていると認められるものがある。そのおもな事例をあげると下記のとおりである。

 このような事態を生じているのは、各設計担当者および設計を請け負わせた相手方のうちには、設計にあたり形鋼の市場の実態をは握、検討のうえこれら形鋼を活用して合理的、経済的な構造設計を行なう配慮が十分でなく、従来の設計方法をそのまま踏襲しているものがあること、本社において、H形鋼以外の形鋼を使用する場合は鋼板等を加工して部材を製作する場合と同一の加工費を積算することとして定めた積算基準を実情に即して改訂していないことなどによるものと認められる。
 ついては、輸送力の増強、車両基地の整備等に伴い検修庫等鉄骨構造物の新設工事が今後多数施行され、また、これに伴う設計の外注も増加することが予想されるので、これら工事の設計については、形鋼の活用を図るためその標準設計の作成を促進し、これに基づいて設計を実施するように努めるとともに、設計を外注するものについてはその内容について適切な指示を与え、その設計の結果を十分審査するなど適切な処置を講じ、また、これら工事費の積算については、鋼管等の形鋼の使用割合に応じて基本加工人工を低減することとするなど積算基準を実情に即して改訂する要があると認められる。

 記

(1) 下関工事局が施行した大分電気機関車検修庫新築その他工事は、延面積2,576平方メートルの鉄骨上家を新築するものであって、柱および主ばり(鉄骨設計重量72トン)は鋼板を切断しこれをH形に溶接して使用することとして設計し、また、鉄骨加工は所要人工トン当り9.67人と積算しているが、市販されているH形鋼のうちから所要のものを選定して使用すれば、鋼材重量は約5トン低減し、加工人工も本社で定めた積算基準によって計算するとトン当り5.34人に低減することができるものと認められる。

(2) 東京鉄道管理局が施行した恵比寿、川崎両駅の乗換こ線人道橋新設工事の鉄骨主要部材であるけたおよび脚柱(鉄骨設計重量は両工事で66トン)についてみると、乗換こ線人道橋についてはけたにはH形鋼を、脚柱には鋼管をそれぞれ使用することとして標準設計が本社から示されているのに、前項同様鋼板を切断しこれをH形または四角形に溶接して使用することとして設計しているが、標準設計に準じてけたについては所要のH形鋼を、脚柱については所要の鋼管をそれぞれ使用すれば鋼材重量は両工事で5トン低減し、また、所要加工人工も、H形鋼については本社で定めた積算基準により計算し、鋼管については鋼板のように特別の加工をしないでそのまま使用できるのであるから仮にH形鋼を使用する場合に準じて加工人工を低減することとして計算すると、トン当り17.3人および10.6人を12.3人および8.4人に低減することができるものと認められる。

(3) 信濃川工事局が施行した上沼垂信号場貨物上家新築その他工事は延面積9,234平方メートルの鉄骨造り貨物上家を新築するものであって、おもな鉄骨構造部材である主ばり(鉄骨設計重量155トン)はすべてトラス構造とし、トラスの上弦材および下弦材は等辺山形鋼等を組み合わせて断面をT形にすることとして設計しているが、上記部材に代えて一般に市販されているT形鋼のうちから所要強度を有するものを選定して使用することとすれば、鋼材重量は約7トン低減し、また、T形鋼は前項同様特別の加工をしないでそのまま使用できるのであるから仮にH形鋼を使用する場合に準じて計算すると、所要加工人工もトン当り8.89人を7.19人に低減することができるものと認められる。

(4) 大阪鉄道管理局が施行した宝塚、三田両駅の乗換こ線人道橋新設工事の鉄骨主要部材であるけたおよび脚柱については標準設計に準じけたについてはH形鋼を、脚柱については鋼管をそれぞれ使用することとして設計しているが、その積算についてみると、H形鋼については加工人工を低減しているが、H形鋼と同様特別の加工をしないでそのまま使用できると認められる鋼管については加工人工を低減しておらず、所要加工人工を各工事ともトン当り7.8人と積算している。仮に鋼管についてもH形鋼を使用する場合に準じて加工人工を低減することとして計算すると、所要加工人工はトン当り6.4人に低減することができるものと認められる。

(注)  〔トラス〕 鉄橋のけた、柱間の長い鉄骨建物のはりなどによくみられるような三角形の単位形をいくつか組み合わせて作られたけた組みの一種

 

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