平成３年度決算検査報告
| 会計名及び科目 | 道路整備特別会計 (項)北海道道路事業費 |
| 部局等の名称 | 北海道 |
| 補助の根拠 | 道路法(昭和27年法律第180号) |
| 事業主体 | 北海道 |
| 補助事業 | 苫前郡羽幌町道道上遠別霧立線特殊改良一種 |
| 補助事業の概要 | 道路を拡幅するため、平成3年度に、擁壁、パイプカルバート等を施工するもの |
| 事業費 | 85,551,800円 |
| 上記に対する国庫補助金交付額 | 42,775,900円 |
| 不当と認める事業費 | 9,538,000円 |
| 不当と認める国庫補助金交付額 | 4,769,000円 |
１ 補助事業の概要
この補助事業は、北海道が、一般道道上遠別霧立線の特殊改良一種事業の一環として、苫前郡羽幌町上羽幌地区において、道路を拡幅するため、平成３年度に、擁壁及びパイプカルバート（以下「カルバート」という。）の築造等を工事費８５，５５１，８００円（国庫補助金４２，７７５，９００円）で実施したものである。
そして、擁壁及びカルバートについては、それぞれ次のように設計し、これにより施工していた。
（ア） 擁壁延長３７．５mは、全体を５ブロック（Ｗ９擁壁〜Ｗ１３擁壁）に分け、このうち、Ｗ１０擁壁については高さ７．４６〜８．０m、底版幅６．０mの逆Ｔ型擁壁とし、そのつま先版の下面側に配置する主鉄筋については、配筋図において、径１６mmの鉄筋を２５cm間隔に配置することとしていた（参考図参照） 。
（イ） カルバート延長２３．３mは、道路下を横断する水路を付け替えるもので、最大土被り厚５．７m、管の内径を１，１００mm、埋設形式を突出型（地盤上に管を設置しその上に盛土する形式）とし、これに対する基礎形式を遠心力鉄筋コンクリート管（二種管）（以下「ＲＣ二種管」という。）、１８０度固定基礎（管底部をコンクリートにより管外周の２分の１で固定する形式）としていた。
２ 検査の結果
検査したところ、それぞれ次のようになっていた。
（ア） W１０擁壁のつま先版の主鉄筋については、設計の基礎となっている設計計算書によれば、応力計算上安全なものとなるよう径１６mmの鉄筋を１２．５cm間隔に配置することとしているのに、配筋図を作成する際に誤って２５cm間隔に配置することとしていた。
このため、つま先版と縦壁との接合部に生ずる引張応力度（注１） （常時）（注２） は、１２．５cm間隔とすれば１，１９４kg/cm2 となるのに、２５cm間隔では２，２２４kg/cm2 となり、鉄筋の許容引張応力度（注１） （常時）１，６００kg/cm2 を大幅に上回っていて、応力計算上安全な範囲を超えている。
（イ） カルバートの設計に当たっては、「道路土工 擁壁・カルバート・仮設構造物工指針」（社団法人日本道路協会編。以下「指針」という。）により行うこととされ、その基礎形式の選択は指針の「パイプカルバート基礎形式選定図」により決定することになっている。そして、この選定図は管の突出型及び溝型（地盤を溝型に掘削して管を埋設する形式）の埋設形式の別に適用図を異にしており、本件の場合は、施工箇所が道路の盛土部分であり、当然埋設形式は突出型となるので、突出型の選定図を適用（注３） すべきであるのに、誤って溝型の選定図を適用して、前記のようにRC二種管、１８０度固定基礎としていた。
そして、埋設形式が突出型の場合は、盛土量のうち土圧計算の対象となる範囲が溝型に比べて大きくなることから、その分カルバートに作用する土圧は大きくなる。このため、本件カルバート延長２３．３mのうち、最大土被り厚５．７mの影響を受ける延長１９．４４mの区間のカルバートに作用する最大の曲げモーメント（注４） は１，９６２kg・m（常時）となり、許容曲げモーメント（注４） １，２１１kg・mを大幅に上回っていて、応力計算上安全な範囲を超えている（参考図参照） 。
したがって、上記（ア）、（イ）のとおり、本件擁壁のうちＷ１０擁壁及び本件カルバートのうち延長１９．４４mの区間のカルバート（工事費相当額９，５３８，０００円）は、設計が適切でなかったため、常時においてその安定が確保できず不安定な状態になっており、これに係る国庫補助金相当額４，７６９，０００円が不当と認められる。
| （注１） | 引張応力度・許容引張応力度 「引張応力度」とは、材に外から引張力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容引張応力度」という。 |
| （注２） | 常時 地震時などに対応する表現で、土圧など常に作用している荷重及び輪荷重など作用頻度が比較的高い荷重を考慮する場合をいう。 |
| （注３） | 突出型の選定図を適用する場合、その基礎形式を、遠心力鉄筋コンクリート管（一種管）、３６０度固定基礎（管の全周をコンクリートで巻き立てる形式）とすれば、応力計算上安全なものとなる。 |
| （注４） | 曲げモーメント・許容曲げモーメント 「曲げモーメント」とは、外力が部材に加わって部材を曲げようとする力をいう。その数値が設計上許される上限を「許容曲げモーメント」という。 |
（参考図）
