検査対象 | (1) | 外務省 |
(2) | 国際協力銀行 | |
(3) | 国際協力事業団(平成15年10月1日以降は独立行政法人国際協力機構) | |
政府開発援助の内容 | (1) | 無償資金協力 |
(2) | 円借款 | |
(3) | 技術協力 |
平成14年度実績 | (1) | 2228億5519万円 |
(2) | 6878億5756万円 | |
(3) | 515億7397万円 | |
現地調査実施国数並びに事業数及び対象事業費 | 12箇国 | |
(1) | 63事業1433億6235万円 | |
(2) | 28事業1766億3228万円 | |
(3) | 23事業195億7889万円 |
援助の効果が十分発現していないなどと認めたもの | 無償資金協力 | |
オスマニア総合病院医療機材整備事業 | ||
プロジェクト方式技術協力 | ||
産業廃棄物処理技術協力事業 | ||
草の根無償資金協力事業 | ||
債務救済無償資金協力事業 | ||
過去に決算検査報告に掲記した政府開発援助事業の現況 | 無償資金協力 | |
円借款 |
1 政府開発援助の概要
我が国は、開発途上国の健全な経済発展を実現することを目的として、その自助努力を支援するため、政府開発援助を実施している。その援助の状況は、地域別に見るとアジア、アフリカ、中南米、中近東等の地域に対して供与されており、特にアジア地域に重点が置かれている。また、分野別にみると運輸・貯蔵、水供給・衛生、教育、農林水産、エネルギー、環境保護等の各分野となっている。
そして、我が国の政府開発援助は毎年度多額に上っており、平成14年度の実績は、無償資金協力(注1)
2228億5519万余円、円借款(注2)
6878億5756万余円(注3)
、技術協力(注4)
515億7397万余円などとなっている。
2 検査の範囲及び着眼点
本院は、無償資金協力、円借款、技術協力等(以下「援助」という。)の実施及び経理の適否を検査するとともに、援助が効果を発現し、援助の相手となる開発途上国(以下「相手国」という。)の経済開発及び福祉の向上などに寄与しているか、援助の制度や方法に改善すべき点はないかなどについて検査している。この検査の範囲及び着眼点について、我が国の援助実施機関に対する検査及び相手国において行う現地調査の別に具体的に示すと、次のとおりである。
(1)我が国援助実施機関に対する検査
本院は、国内において、援助実施機関である外務省、国際協力銀行(以下「銀行」という。)及び国際協力事業団(平成15年10月1日以降は独立行政法人国際協力機構。以下「事業団」という。)に対して検査を行うとともに、海外において、在外公館、銀行の駐在員事務所及び事業団の在外事務所に対して検査を行っている。
これら我が国援助実施機関に対する検査に当たっては、次のとおり、多角的な着眼点から検査を実施している。
(ア)我が国援助実施機関は、事前の調査、審査等において、事業が相手国の実情に適応したものであることを十分検討しているか。
(イ)援助は交換公文、借款契約等に則したものになっているか、また、資金の供与などは法令、予算等に従って適正に行われているか。
(ウ)我が国援助実施機関は、援助対象事業を含む事業全体の進ちょく状況を的確に把握し、援助の効果が早期に発現するよう適切な措置を執っているか。
(エ)我が国援助実施機関は、援助実施後、事業全体の状況を的確に把握、評価し、必要に応じて援助効果発現のために追加的な措置を執っているか。
(2)現地調査
相手国に対しては、我が国援助実施機関に対する検査の場合とは異なり本院の検査権限は及ばない。しかし、援助は相手国が主体となって実施する事業に必要な資金を供与するなど、相手国の自助努力を支援するものであり、その効果が十分発現しているか、事業が計画どおりに進ちょくしているかなどを確認するためには、我が国援助実施機関に対する検査のみでは必ずしも十分ではない。このため、本院では、相手国に赴いて、我が国援助実施機関の職員等の立会いの下に相手国の協力が得られた範囲内で、次の着眼点から、事業の実施状況を中心に現地調査を実施している。
(ア)事業は計画どおり順調に進ちょくしているか。
(イ)援助の対象となった施設、機材、移転された技術等は、当初計画したとおりに十分利用されているか。
(ウ)事業は所期の目的を達成し、効果を上げているか。
(エ)事業は援助実施後においても相手国によって順調に運営されているか。
そして、毎年10箇国程度を選定して職員を派遣し、調査を要すると認めた事業について、相手国の事業実施責任者等から説明を受けたり、事業現場の状況の確認を行ったりなどし、また、相手国の保有している資料で調査上必要なものがある場合、相手国の同意が得られた範囲内で我が国援助実施機関を通じて入手している。
また、本院は、今年次の検査において、過去に決算検査報告に掲記した政府開発援助事業の現況を後述する着眼点で再度調査した。
3 検査の状況及び本院の所見
(1)現地調査の対象
本院は、15年中において上記の検査の範囲及び着眼点で検査を実施した。そして、その一環として、12箇国において次の114事業について現地調査を実施した。
〔1〕 無償資金協力の対象となっている事業のうち63事業(贈与額計1433億6235万余円)
〔2〕 円借款の対象となっている事業のうち28事業(14年度末までの貸付実行累計額1766億3228万余円)
〔3〕 技術協力事業のうちプロジェクト方式技術協力(注5)
23事業(14年度末までの経費累計額195億7889万余円)
上記の114事業を、分野別にみると、農林水産31事業、水供給・衛生16事業、保健11事業、エネルギー9事業、運輸7事業、環境保護一般7事業などとなっており、その国別の現地調査実施状況は、次表のとおりである。
国名 | 調査事業数(事業) | 援助形態別内訳 | |||||
無償資金協力 | 円借款 | プロジェクト方式技術協力 | |||||
事業数 (事業) |
援助額 (億円) |
事業数 (事業) |
援助額 (億円) |
事業数 (事業) |
援助額 (億円) |
||
バングラデシュ | 8 | 4 | 72 | 4 | 254 | − | − |
ボスニア・ヘルツェゴビナ | 2 | 2 | 45 | − | − | − | − |
ブラジル | 6 | − | − | − | − | 6 | 56 |
チリ | 15 | 8 | 42 | 1 | 64 | 6 | 51 |
インド | 15 | 7 | 65 | 8 | 651 | − | − |
カザフスタン | 7(2) | 6(2) | 11 | 1 | 71 | − | − |
マラウイ | 6 | 4 | 154 | 1 | 41 | 1 | 9 |
モロッコ | 13 | 10 | 109 | 1 | 32 | 2 | 14 |
ミャンマー | 7(1) | 5(1) | 773 | − | − | 2 | 21 |
セネガル | 11(2) | 11(2) | 130 | − | − | − | − |
タイ | 19 | 3 | 13 | 10 | 412 | 6 | 43 |
ウズベキスタン | 5 | 3 | 15 | 2 | 239 | − | − |
計 | 114(5) | 63(5) | 1,433 | 28 | 1,766 | 23 | 195 |
(2)現地調査対象事業に関する検査の概況
現地調査を実施した事業のうち、次の事業については、援助の効果が十分発現していないなどと認められた。これらの事態を分類すると次のとおりである。
〔1〕 無償資金協力の援助の効果が十分発現していないもの
〔2〕 プロジェクト方式技術協力の効果が十分発現していないもの
〔3〕 草の根無償資金協力の効果が十分発現していなかったり、その事業が実施されていなかったりしているもの
〔4〕 債務救済無償資金協力として供与された資金等の一部が相当期間使用されないまま残っているもの
(3)援助の効果が十分発現していないなどの事業
ア 無償資金協力の援助の効果が十分発現していないもの
この事業は、インドのアンドラ・プラデシュ州都ハイデラバード市に所在する高度医療病院であるオスマニア総合病院の医療機材が老朽化したため、所要の機材等を更新して機能の拡充を図るものである。
外務省では、これに必要な資金として、7年度に7億5700万円を贈与している。
本件事業では、合計445個の医療機材が調達され、8年2月までにすべて納品されていた。そして、これら機材の利用状況等について15年4月に現地調査したところ、心臓超音波診断装置(2444万余円)など一部の機材が使用されておらず、患者の診療に利用されていなかった。
このような状況を踏まえ、現地調査時における機材の利用状況を示す詳細な資料の提出及び説明を外務省を通じて相手国に対して求めたところ、同病院が14年7月現在で作成していた資料が提出された。この資料によると、101個の機材(2億4851万余円)は使用されていなかった。
これは、交換部品がなかったり、現地業者にこれら機材を修理する能力が不足していたり、機材を扱う同病院において医療スタッフに技術的な知識が不足していたりするなどしていたことによるものである。
本件事業については、在インド日本国大使館が11年3月に評価を実施している。その報告によると、未稼働又は故障機材の割合が供与機材全体の約2割を占め、稼働できない機材が増加しつつあり、早急な対応が必要であるとしていた。
その後、13年5月に相手国から故障及び不具合が生じているが自国で対応できない機材についてフォローアップの要請があった。そこで、事業団は、同年9月に、フォローアップのための調査を実施し、14年2月にその結果を踏まえ、予算の範囲内で、優先度の高い一部の機材について、フォローアップ事業として供与する機材、交換部品等を決定した。15年5月にこれらの機材、交換部品等は現地に到着し、事業団は、同年7月末から修理班を派遣して修理した。しかし、フォローアップは相手国の自助努力を側面から支援するもので、優先度の高いものについて行うことから対応できない機材等があり、未稼働又は故障機材の不具合をすべては解決できていない。
上記のとおり、本件事業により整備された医療機材の一部は、適切かつ効果的に維持及び使用されておらず、援助の効果が十分発現していない状況となっている。
(本件事業に対する本院の所見)
上記の事態が生じているのは、主として相手国の事情などによるものであるが、このように効果が十分発現していない事態にかんがみ、我が国としては、事態の改善に向けて相手国の自助努力を絶えず促し、供与した機材が活用され援助の効果が十分に発現されるようより一層適時適切な指導又は助言を行うことが望まれる。
イ プロジェクト方式技術協力の効果が十分発現していないもの
(ア)事業の概要
この事業は、産業廃棄物の分析及び焼却炉を利用した処理に関する技術をブラジル連邦共和国(以下「ブラジル」という。)に移転するもので、5年8月から12年8月までの7年間にわたり、サンパウロ州基礎衛生技術公社(以下「公社」という。)を事業実施受入機関としてプロジェクト方式技術協力による援助を実施したものである(経費累計額12億3753万余円)。
本件事業は、通常のプロジェクト方式技術協力と異なり、相手国政府からの要請を待たずに調査員を派遣し、案件の形成を行う「積極型環境保全協力」として実施されたものである。本件事業において、事業団では、実験用の焼却プラント(調達価格2億5441万円。以下「プラント」という。)、ガスクロマトグラフ質量分析装置(調達価格8540万余円)及びその他の測定等の機材を供与するとともに、現地指導のため専門家計20名を派遣し、また、公社から研修員計16名を日本の関連機関へ受け入れ、研修を行った。
本件事業の事業目標は、公社の技術者が産業廃棄物の焼却処理技術に関する研究ができるようになること、上位目標は、公社において産業廃棄物の焼却処理技術が確立されることとされた。そして、焼却炉の焼却条件に適合させるべく、様々な種類の産業廃棄物をどのように組み合わせ、焼却するかなどの知識を得るための実験をブラジル側が継続して行っていくことが想定された。
(イ)調査の結果
(i)プラントを使用しての技術移転
事業団では、本件事業の目的を達成するためには、様々な産業廃棄物の焼却に対応しうる流動床型焼却炉が最も適当と判断し、調達契約を6年9月に締結した。
この焼却炉の仕様書によると、設計ごみ質は重量比で水分13%、可燃分75%、灰分12%、最大発熱量は5,500kcal/kgであり、対象廃棄物は、繊維系、高分子系、汚泥スラッジ系、混合廃棄物等を想定している。そして、対象廃棄物で設計ごみ質に適合しないものについては他の廃棄物を混合して設計ごみ質に適合させることが必要であるとしていた。
当初、事業団ではプラントの特性上、焼却対象物とした産業廃棄物が設計ごみ質に適合しない場合、他の種類の産業廃棄物を混合して設計ごみ質に合致させることが必要であるとの認識を公社側に持たせるよう方策を講じていた。
しかし、本件事業の目標は、様々な特性を持った産業廃棄物を組み合わせて燃焼実験を行い、データを蓄積することであるのに、公社は、プラントの稼働に当たって、焼却対象物を、設計ごみ質と大きく性状の異なる下水、廃油等のスラッジのみとし、焼却を行った。そして、技術協力終了後、公社は、産業廃棄物焼却テストを適切に行うことが困難であると判断して、プラントを廃止した。このため、産業廃棄物の焼却処理技術に関する研究は継続して行われていない。
このように、本件事業のプラントの稼働方法及び目的に関し、公社と事業団との認識が一致しておらず、これについて、事業団が適切な対策を執っていた事実を、本院では確認できなかった。
本件事業は、積極型環境保全協力として、事業団が、ブラジルに対して提案を行っているにもかかわらず、事業開始当初に派遣した調査団の報告書では、本件事業の需要に関する具体的な数値は示されておらず、単に事業継続が確保される程度の需要は存在するとした評価を行ったにとどまっていた。また、公社がプラントの稼働を停止した後に、事業団が派遣した調査団の報告書においては、プラント活用の需要に乏しいとの評価を行っている。これは、本件事業開始時点の分析と相反するものであり、事業開始時点での需要予測の分析は具体性に乏しいものであり、結果的に十分なものではなかったと認められる。
(ii)ガスクロマトグラフ質量分析装置等供与機材の状況
ガスクロマトグラフ質量分析装置は、排ガス中のダイオキシン等の質量を測定するための機材であり、同装置を稼働させるためには、独立した空調装置、常に負圧に保つための装置を備えた分析室が必要である。そのため、ブラジル側で分析室を備えた建屋等を準備することなどが合意されていたが、建屋は建設されず、同装置は開梱されないまま公社倉庫に保管されていた。その結果、ダイオキシン分析の短期専門家は派遣されず、ダイオキシン質量の測定技術の移転に関しては、2名の研修員を日本に受け入れ、研修を行ったにとどまった。したがって、プラントから抽出されるガスのダイオキシン質量の測定技術の移転は十分になされていない。
事業団は、建屋建設に関し、装置の調達契約を行った時点で、公社から何らかの確認をとった可能性がある。しかし、15年2月の本院の調査時点でも建屋は建設されておらず、事業団は、着工が遅延していることが明らかになった時点において、早期に着工するよう、公社に強く働きかけるべきであったが、その働きかけが、結果的に、十分であったとは認められない。
したがって、本件事業は、上記のように、産業廃棄物の焼却研究が、技術協力終了後のプラントの廃止により、継続して行われていなかったり、ガスクロマトグラフ質量分析装置が全く使用されず、ダイオキシン質量の測定技術の移転が十分になされていなかったりしていて、その目的を十分達成していないと認められる。
(ウ)本件事業に対する本院の所見
事業団では、より目的に沿った事業管理を行うために、新たな評価手法を導入するなどして、プロジェクトの運営をより適切に行うように努力しているところであるが、今回の事態を踏まえ、より一層以下の点に留意する要があると認められる。
〔1〕 移転した技術が十分活用されるための社会的な需要の予測を十分に行うこと
〔2〕 供与する機材が活用されるための条件を整わせるよう十分な働きかけをすること
〔3〕 事業管理を確実に行い、長期間を要する事業実施中において、事業目標や達成手段に関する共通認識がなされていないことが判明した際には、共通認識を形成するように適切な方策を執ること
ウ 草の根無償資金協力の効果が十分発現していないものなど
(ア)事業の概要
草の根無償資金協力は、開発途上国の多様な援助ニーズに的確かつ迅速に対応するため、開発途上国の地方政府、医療機関及び開発途上国において活動している非政府団体等(以下「団体」という。)が実施する比較的小規模のプロジェクトに対して、在外公館が資金を供与するものである。
草の根無償資金協力の実施に当たっては、在外公館は、外務本省の承認を受けたプロジェクトを実施する団体との間で、贈与契約を締結などした後、団体から物資・役務に係る請求書等の提出を受け、金額が適正であることなどを確認して、贈与契約で定められた供与限度額の範囲内で資金を団体に供与することとなっている。そして、在外公館は、案件の実施状況及び資金の使用状況を確認するため、団体から、案件の実施状況及び使用済み資金の使途等を明らかにした中間報告書と最終報告書を提出させることとなっている。
(イ)調査の結果
カザフスタン共和国及びセネガル共和国における3事業について次のような事態が見受けられた。
この事業は、カザフスタン共和国のアルマティ市において、アフガン難民女性の職業創出のため、料理器具、裁縫器具等の機材を購入して店舗を拡充することを内容とするものである。
在カザフスタン日本国大使館では、10年10月に、本件事業を実施する団体との間で贈与契約を締結し、同年11月に、資金19,944米ドル(邦貨換算額2,353,392円)を贈与している。
そして、同団体は、この資金により、機材を購入したと報告していた。
調査したところ、供与機材については所在が分からず、確認できなかった。そして、同団体は12年3月に活動を停止し、同団体の代表者はカナダヘ移住しており、同団体は活動停止後、その活動を別の団体に引き継いだとの説明を同大使館より受けた。
このため、詳細な状況について、外務本省を通じて同大使館に事実関係の確認を求めたところ、以下のとおりであった。
カナダ居住の同団体の代表者は、供与機材については、カナダヘ移住する際大部分を売却し、その資金で衣類や食料を購入し、アフガン難民に送ったとのことであった。しかし、供与機材の売却、衣類等の購入の事実は資料により確認できず、一部の機材については別の団体に引き継がれていることは判明したものの、残りの大部分の機材は確認できなかった。
また、同大使館では、同団体から贈与契約で11年4月が提出期限となっている中間報告書に代わる活動状況報告などの提出を11年5月に受けていたが、最終報告書の提出を受けていなかった。そして、同団体の活動状況、機材の現況などの事実を把握していなかった。
上記のとおり、草の根無償資金協力により購入された機材は、その大部分が確認できず、目的に沿って使用されているとは認められず、援助の効果が十分発現していない状況となっている。
この事業は、カザフスタン共和国のアルマティ市において、ムスリム女性の職業訓練及び雇用創出のため、既存の衣服製造作業場におけるニット編み機、刺繍用編み機等の機材の購入を内容とするものである。
在カザフスタン日本国大使館では、10年7月に、本件事業を実施する団体との間で贈与契約を締結し、同年9月に、資金72,320米ドル(邦貨換算額8,523,760円)を贈与している。
そして、同団体は、この資金により、機材を購入したと報告していた。
調査したところ、衣服製造作業場は13年6月に休止し、購入された機材が本院調査時(15年5月)において2年近くも使用されておらず同作業場に保管されたままとなっていた。そして、同大使館においてはこの事実を把握していなかった。
また、外務本省を通じて同大使館に詳細な状況について調査を依頼したところ、以下のとおりであった。
同大使館では、同団体から贈与契約で11年1月が提出期限となっている中間報告書及び最終報告書の提出を受けていなかった。そして、本件事業について本院の現地調査があることが判明した後の15年5月になって、その提出を受けた後、作業場の活動状況、機材の現況などの事実を把握した。
上記のとおり、草の根無償資金協力により購入された機材は、目的に沿って有効に活用されていないままとなっていて、援助の効果が十分発現していない状況となっている。
この事業は、セネガル共和国のルガ市において、女性を対象として職業訓練を実施するため、職業訓練施設の建設及び訓練用資機材の購入を内容とするものである。
在セネガル日本国大使館では、11年11月に、本件事業を実施する団体との間で贈与契約を締結し、同年12月に、資金394,106仏フラン(邦貨換算額8,670,332円)を贈与している。
調査したところ、同団体は、資金の供与を受けてから3年3箇月を経た本院調査時(15年3月)においても、職業訓練施設の建設に着工していないなど事業が全く実施されていない事態となっていた。
この施設の建設に着工できない事態の経緯は、次のとおりである。
13年2月の同団体の同大使館に対する報告によれば、同団体は、贈与契約締結日の翌日に、要請時にルガ市から土地の提供を受けることとなっていた建設予定地が適切でないとしてその変更を決定し、新たな建設用地を同市に申請することとなった。そして、新たな土地を確保するため同市の許可を得るのに時間を要したとのことであった。
また、同大使館では、同団体に対し贈与契約で提出期限が12年3月となっている中間報告書の提出を電話で督促していたが、提出を受けていなかった。そして、上記13年2月に同団体の報告を受けた後、建設用地の早期取得及び施設建設の着工を同団体に督促する一方、外務本省とも対応策を協議し、同団体に事業の早期実施を督促し、合理的な期間に進展がない場合は資金の返還請求を行い、場合によっては、裁判により対応することを決めたとしていた。
しかし、同大使館では、同団体に対し、資金の返還請求及び裁判による対応の可能性がある旨を13年10月に通報したとしているが、本院の調査時においても具体的な進展はなかった。なお、供与された資金の使途などの現況については、確認できていない状況である。
上記のとおり、本件事業は未実施であり、当該資金が供与されたままとなっている。
(ウ)本件3事業に対する本院の所見
草の根無償資金協力事業において、上記の各事態が生じているのは、主として団体が不誠実であることなどによると認められるが、このような事業の効果が十分発現していなかったり、事業が全く実施されていなかったりしている事態にかんがみ、在外公館においては、以下の点に留意する要があると認められる。
〔1〕 贈与契約の締結などの際には、贈与契約の内容を団体に十分説明し、供与した資金が贈与契約対象事業の実施以外の目的に使用されることがないよう草の根無償資金協力の趣旨を一層周知すること
〔2〕 資金供与後は、団体から贈与契約に定められている中間報告書及び最終報告書を提出させることを徹底し、提出がない場合は提出の督促を行ったり、必要に応じて団体に赴いたりして、団体の状況を把握し、事業の実施及び機材の状況についての確認などをより一層行うこと
〔3〕 供与資金の使用が贈与契約対象事業の目的に沿っていない事態が明らかになった場合は、供与した資金を適正に使用させたり、資金の返還を求めたりするなど適時適切な対応をより一層行うこと
エ 債務救済無償資金協力として供与された資金等の一部が相当期間使用されないまま残っているもの
(ア)事業の概要
後発開発途上国等に対する債務救済については、我が国では、自助努力の支援を旨とする従来からの援助理念を踏まえ、債務の帳消しは行わず、債務国に返済を求める一方、返済がなされた場合には原則として返済額と同額の無償資金を供与する債務救済無償資金協力として、主に次の枠組みにより実施してきた。
すなわち、昭和53年3月に開催された国際連合貿易開発会議(UNCTAD)の貿易開発理事会(TDB)において、先進援助国は貧困開発途上国に対して過去の二国間政府援助の条件の調整又はその他同等の措置を執るよう努力するとの決議がなされた。そして、外務省では、これを受け、53年度以降、円借款の債務がある後発開発途上国に対しては元利合計額及びオイルショックにより最も深刻な影響を受けた国に対しては金利の調整額(約定利息を相手国にとって有利な条件で調整した場合の利息差額相当分)を上限としつつ、原則として円借款の返済額と同額の無償資金を供与してきた。
そして、外務省では、53年度から平成14年度までの25年間で30箇国に対して4611億5409万余円を贈与している。
外務省は、相手国が債務救済の対象とする円借款を返済したかどうかを確認し、返済があった国については原則として返済額と同額の資金贈与に関する交換公文を締結する。そして、その後、相手国政府は交換公文ごとに開設した日本国内の銀行口座に円貨で資金を受け入れ、この資金及び利息(以下「資金等」という。)により物品を調達適格国から購入等することとなっている。
そして、交換公文及び附属文書において、次のような合意がなされている。
〔1〕 資金等の使途目的は経済開発及び国民の福祉向上に寄与するものに限定することとされている。
〔2〕 資金等は供与後合理的期間内に使用するために必要な措置を執ること。具体的には、相手国において資金供与後2年以内に可能な限り資金等を使用することとされている。
〔3〕 相手国政府は上記〔2〕の期間経過後、購入実績等を記載した使途報告書を提出することとされている。なお、外務省では、これによって、資金の使途を事後に確認する方法を採っている。
(イ)調査の結果
本院では、債務救済無償資金協力に関して、11年度決算検査報告等に、被援助国20箇国のうち14箇国において使途報告書が一回も提出されていなかったなどのため、資金使途の監視のための取組を強化するという観点から、使途報告書の提出について更に督促等を行う要があることを掲記した。
そこで、今回、使途報告書は適切に提出されているか、また、供与された資金等は交換公文等に従って、供与後2年以内に可能な限り使用されているかという点に着眼して、前記30箇国に対して実施された債務救済無償資金協力(同4611億5409万余円)を対象に関係資料の提出を受けて調査を行い、また、このうちのインドほか2箇国(注6)
に対して実施された債務救済無償資金協力(昭和53年度から平球14年度までの贈与額計1132億5486万余円)について現地調査を行ったところ、次のような状況となっていた。
(i)使途報告書の提出について
外務省では11年度決算検査報告等に掲記した検査の状況を踏まえ、上記使途報告書が提出されていない国に対し、在外公館を通じて督促等を行ってきたところである。
そして、今回、上記20箇国に、その後債務救済無償資金を供与した4箇国を加えた24箇国における使途報告書の提出状況をみると、使途報告書が一回も提出されていない国は1箇国のみとなっていた。
(ii)供与された資金等の一部が相当期間使用されないまま残っているもの
供与された資金等は、資金供与後、合理的期間として可能な限り2年以内に使用することとされているが、その使用状況を調査したところ、表1のとおり、12年度以前に交換公文が締結され、資金供与後2年以上経過しても使用されず残っているものが、アフガニスタンほか18箇国(注7)
で24億3788万余円あった。
そして、資金供与後3年以上経過したものが18箇国で15億3117万余円あり、このうちには、5年以上経過したものや10年以上経過したものが含まれていて、供与された資金等の一部が相当期間使用されないまま相手国の口座に残っていた。
表1 供与された資金等の残高状況
(単位:千円)
国数 | 贈与額計 | 口座残高計 | 左のうち資金供与後2年以上経過しているものの内訳(国数) | |||
2年以上3年未満経過 | 3年以上5年未満経過 | 5年以上10年未満経過 | 10年以上経過 | |||
19 | 409,824,673 | 17,757,974 | 906,707 | 1,008,744 | 385,960 | 136,473(8) |
522,433(13) | ||||||
1,531,178(18) | ||||||
2,437,886(19) |
このような事態となっているのは、現地調査を行ったインド及びミャンマー連邦並びに外務省の説明によれば、交換公文ごとに開設された複数の口座の資金等のうちどの口座から支払に充てるかを中央銀行に任せていたり、各口座の残余金を合算してまとめて購入費用に充てるためにそのまま留保していたりすることなどによるとしている。
(ウ)本件事業に対する本院の所見
前記のとおり、外務省において事後に資金等の使途を確認するために相手国から提出させる使途報告書の提出状況は相当改善されたものとなっていた。
一方、供与された資金等の使用状況は、18箇国において、資金等の一部が相当期間使用されないまま口座に残っている状況であった。
債務救済無償資金協力による債務救済措置は15年3月をもって廃止され、4月以降は、新たに、いわゆる債務の帳消し方法による債務救済措置が実施されることになった。しかし、前記のとおり、12年度までに交換公文が締結された多くの相手国において、口座に未使用の資金等が残されたままとなっており、また、13年度及び14年度には債務救済の対象となる19箇国との間で交換公文(贈与額計567億3769万余円)が締結されているなどの状況となっている。そして、これらの資金等については、今後とも従来の枠組みに従って、相手国及び外務省が必要な措置を講じていくこととなっている。
したがって、外務省においては、今後とも、供与した資金等の使用状況について一層留意するとともに、債務救済無償資金協力の趣旨が十分認識されるように相手国に対して適時適切な助言を行う要があると認められる。
(4)過去に決算検査報告に掲記した政府開発援助事業の現況について
ア 政府開発援助に対するこれまでの検査
本院が実施した政府開発援助事業に係る検査の結果については、毎年度の決算検査報告において「特定検査対象に関する検査状況」として掲記している。そして、本院がこれまでに援助の効果が発現していないなどとして掲記したものは27箇国における56事業となっている。これら56事業について援助の効果が十分発現していない主な原因は、主として相手国の事情などによるものであるが、我が国としては、相手国の自助努力を絶えず促し、相手国が実施する援助対象事業の効果発現を支援するための措置を一層充実させることが重要であるとしている。
イ 検査の着眼点及び対象
そこで、これまでの決算検査報告において掲記した事業について、次の点に着眼して、再度、現地調査を含む棟査を実施することとした。
(ア)我が国援助実施機関は、決算検査報告掲記後、どのような対応を行ってきたか。
(イ)前回調査時以降、相手国では、自助努力として、どのような取組を行ってきたか。
(ウ)援助は中長期的な効果を発現しているか。
そして、今年次、現地調査の対象とした12箇国において、2年度から12年度までの決算検査報告で援助の効果が十分発現していないなどとして掲記した5箇国における無償資金協力9事業、3箇国における円借款12事業、計6箇国21事業を対象として検査を実施した。
ウ 検査の結果
今回、再度の現地調査を行った事業について、決算検査報告掲記後、我が国援助実施機関が執ってきた対応は以下のとおりである。
(ア)無償資金協力
無償資金協力事業については、在外公館では、相手国事業実施機関、もしくは相手国事業実施機関を監督する立場にある主務官庁や財政当局等相手国政府の関係者に対して口上書を発するなどして、事態の解決のための申入れを行ったり、相手国政府との年次協議や政策協議の場を通じて、事業の現況の確認等を継続的に行ったりしていた。
また、事業団が、フォローアップ協力として、相手国からの要請があったものについて、追加的な協力内容等の検討などのために調査団の派遣を行っていたものが3事業あり、そのうちの2事業については交換部品等の機材供与を行っていた。
(イ)円借款
円借款事業については、銀行では、中間監理及び事後監理を行っていた。また、銀行が、コンサルタントなど専門家を雇用・派遣して行う調査業務である有償資金協力促進調査の一環として、事業の実施段階における現況分析と改善策の提案等をする案件実施支援調査を行っていたものが1事業、事業完成後の事業効果の持続や向上への課題の調査及びそれにより明らかになった問題点に対する具体的な改善策の提案等をする援助効果促進調査を行っていたものが3事業あった。
上記の21事業について、その効果の発現状況を前回の現地調査と比較して整理すると、「表2 調査の結果」のとおり、状況が改善し、当初の計画を達成したものが2事業、当初の計画は達成していないが状況は改善していたものが11事業あった。これらの13事業は、相手国が自国予算で行う周辺関連事業等が進ちょくしたり、事業運営の強化策が執られたりなどしたものである。
一方、前回調査と比較して、状況が改善していなかったものが8事業あった。このうち、相手国が現在も施設の建設等を進めているものが2事業あり、また、相手国政府の方針変更、周辺事情の変化等により、施設等の利用が低調であったり、事業の全部又は一部が中止を余儀なくされたりしたものが6事業あった。
ア | 状況が改善し、当初の計画を達成したもの | 2事業 | |||||
・前回調査では、相手国の自国予算による周辺関連事業等が遅延していたもの | |||||||
円借款 | インド | 揚水発電所建設事業 | (2年度決算検査報告) | ||||
タイ | 送水管建設事業 | (2年度決算検査報告) | |||||
イ | 当初の計画は達成していないが状況は改善していたもの | 11事業 | |||||
〔1〕 | 前回調査では、相手国の自国予算による周辺関連事業等が遅延していたもの | 8事業 | |||||
無償資金協力 | モロッコ | 小規模ダム建設用機材整備事業 | (7年度決算検査報告) | ||||
セネガル | 小売市場改修事業 | (6年度決算検査報告) | |||||
タイ | かんがい事業 | (5年度決算検査報告) | |||||
タイ | 漁港施設建設事業 | (5年度決算検査報告) | |||||
円借款 | バングラデシュ | 肥料工場改修事業 | (12年度決算検査報告) | ||||
インド | 用水路水力発電事業 | (8年度決算検査報告) | |||||
タイ | 送水管建設事業 | (11年度決算検査報告) | |||||
タイ | 北部かんがい農業開発事業 | (7年度決算検査報告) | |||||
〔2〕 | 前回調査では、援助の対象となった事業に係る施設の建設や維持管理等に支障が生じていたもの | 2事業 | |||||
無償資金協力 | バングラデシュ | 稲研究所稲遺伝資源研究施設建設事業 | |||||
(9年度決算検査報告) | |||||||
円借款 | インド | 地下鉄建設事業 | (5年度決算検査報告) | ||||
〔3〕 | 前回調査では、援助の対象となった事業への需要が低迷していたもの | 1事業 | |||||
円借款 | タイ | 鉄道建設事業 | (11年度決算検査報告) | ||||
ウ | 状況が改善していなかったもの | 8事業 | |||||
(ア) | 相手国が現在も施設の建設等を進めているもの | 2事業 | |||||
〔1〕 | 前回調査では、相手国の自国予算による周辺関連事業等が遅延していたもの | ||||||
無償資金協力 | バングラデシュ | 下水道網整備事業 | (12年度決算検査報告) | ||||
円借款 | インド | 水力発電事業 | (5年度決算検査報告) | ||||
(イ) | 相手国政府の方針変更、周辺事情の変化等により、施設等の利用が低調であったり、事業の全部又は一部が中止を余儀なくされたりしたもの | 6事業 | |||||
〔1〕 | 前回調査では、相手国の自国予算による周辺関連事業等が遅延していたもの | 1事業 | |||||
円借款 | バングラデシュ | 苛性ソーダ工場修復事業 | (12年度決算検査報告) | ||||
〔2〕 | 前回調査では、援助の対象となった事業に係る施設の建設や維持管理等に支障が生じていたもの | 3事業 | |||||
無償資金協力 | チリ | 零細漁民訓練センター建設事業 | (7年度決算検査報告) | ||||
円借款 | バングラデシュ | 発電バージ建設事業 | (6年度決算検査報告) | ||||
バングラデシュ | 発電船改修事業 | (12年度決算検査報告) | |||||
〔3〕 | 前回調査では、援助の対象となった事業への需要が低迷していたもの | 2事業 | |||||
無償資金協力 | バングラデシュ | 漁網製造機械整備事業 | (6年度決算検査報告) | ||||
バングラデシュ | 水揚・貯蔵施設建設事業 | (9年度決算検査報告) |
今回、再度、現地調査を行った21事業の調査時における個別状況は後述する[個別事業の詳細]のとおりとなっていた。
エ 所見
本院が決算検査報告に掲記した事態について再度検査したところ、我が国援助実施機関及び相手国政府は、その後、様々な対応を執ってきている。その結果、状況が改善して当初の計画を達成したものや当初の計画は達成していないが状況は改善していたものが見受けられた一方、依然として状況が改善していないものがあった。これらの中には、相手国が現在も施設の建設等を進めているものがあるが、相手国政府の方針変更、周辺事情の変化等により、施設等の利用が低調であったり、事業の全部又は一部が中止を余儀なくされたりしたものも見受けられた。
このような事態が生じているのは、主として相手国が講じた措置や施策、あるいは社会経済情勢や自然環境の変化などの要因によるものであって、我が国援助実施機関の取組だけで解決できるものではない。しかし、我が国援助実施機関としては、援助が、今後も継続して実施されること、また、我が国の財政資金により事業が実施されていることなどにもかんがみ、援助事業が終了した後にも、所期の目的を達成し援助の効果が十分発現しその持続が図られるよう、適宜、次のような取組をより一層充実させることが重要である。
〔1〕 援助の目的、供与等の対象となる施設や機材に応じた一定の期間、相手国による事業運営や維持管理の状況、周辺関連事業の実施状況等を定期的に把握し、その後の中長期的な援助効果の発現状況を継続的に確認すること。これによって得られた情報を、援助の効果を一層向上させるために、相手国への働きかけや追加的協力の検討などの際に的確に利活用すること
〔2〕 長期間にわたり援助効果の発現状況が改善されなかったり、事業の全部又は一部の中止を余儀なくされたりした事業については、重点的にその原因を究明し、同種事態の再発防止のために執り得る施策を分析し検討すること。そして、これにより得られた結果や再発防止策を関係者に周知し、将来の援助案件の計画及び実施の段階において適切かつ具体的に反映させること
これらの取組を通じて、我が国援助実施機関としては、援助の十分な効果発現とその持続が図られるよう努め、開発途上国の経済開発、福祉の向上、ひいては民生の安定により一層の貢献をすることが肝要である。
[個別事業の詳細]
ア 状況が改善し、当初の計画を達成したもの | 2事業 |
・前回調査では、相手国の自国予算による周辺関連事業等が遅延していたもの | 2事業 |
援助形態 | 国名 | 事業名 (前回掲記した決算検査報告) |
円借款 | インド | 揚水発電所建設事業 (2年度決算検査報告) |
事業の概要 | 既設のダムに揚水発電所を建設するもの | |
貸付金額等 | 13億1228万余円(昭和62年〜平成7年) | |
前回調査の結果 (3年実施) |
インド側が実施する発電所建屋の建設が遅延していたため、発電機等が倉庫に保管されたままで、発電所が稼働していなかった。 | |
今回調査の結果 | インド側は発電所建屋の建設を進め、6年5月には発電機の取付けを完了し、同発電所は稼働していて、年間計画発電量21.9GWhに対する発電量は、10年39.3GWh、11年33.0GWh、12年17.7GWhとなっていた。 | |
円借款 | タイ | 送水管建設事業 (2年度決算検査報告) |
事業の概要 | 既存貯水池から工業団地までの間に送水管を建設するもの | |
貸付金額等 | 36億0637万余円(昭和58年〜61年) | |
前回調査の結果 (3年実施) |
タイ側が実施する工業団地の建設が遅延していたことなどのため、工業団地への年間送水量は送水開始以降最も多かった平成2年でも、工業団地の予測年間水需要3000万m3 に対し768万m3 となっていた。 | |
我が国援助実施機関の対応等 | 銀行では、タイ側と毎年協議を実施し、工業団地の工場進出状況や、送水管の利用状況等を把握するなどしてきていた。 | |
今回調査の結果 | 重化学工業プラントなどの大型プロジェクトが本格稼働し、工業団地への入居も進んだことから、実績送水量は、毎年増加してきていて、さらに11年度にはタイ側が同区間に新たに送水管を増設した結果、14年度の送水量は計8341万m3 となっていた。 |
イ 当初の計画は達成していないが状況は改善していたもの | 11事業 |
〔1〕 前回調査では、相手国の自国予算による周辺関連事業等が遅延していたもの | 8事業 |
援助形態 | 国名 | 事業名 (前回掲記した決算検査報告) |
無償資金協力 | モロッコ | 小規模ダム建設用機材整備事業 (7年度決算検査報告) |
事業の概要 | かんがい用水等の供給を目的とする小規模多目的ダムを建設するためのダム建設用機材を調達するもの | |
贈与金額等 | 〔1〕 5億4999万余円(昭和62年度) 〔2〕 8億7075万余円(平成2年度) |
|
前回調査の結果 (8年実施) |
本件機材により、かんがい用水の供給を主目的として8箇所でダムが建設されていたが、そのうちの最大規模のサヘラダムにおいてモロッコ側が建設するとしていたかんがい用水路が着工されていなかった。このため、8ダムで計5,680haのかんがいを実施する計画に対して、サヘラダムによる4,800haのかんがいが全く行われていなかった。 | |
我が国援助実施機関の対応 | 事業団では、モロッコ側の要請に基づき、平成5年に援助の対象となった建設用機材等の稼働状況を確認し、必要とされる交換部品を検討するなどのフォローアップ調査を行った結果、8年11月に機材の稼働率を向上させることを目的として、必要な交換部品を供与している。 | |
今回調査の結果 | サヘラダムに貯水された水は、11年に完成した送水・給水施設によって近隣のタウナット市へ供給される生活用水などに活用されていた。また、未着工であったかんがい用水路等についても、モロツコ側では14年に欧州連合(EU)の援助を受けて建設することを決定していて、15年に公開入札を実施し、その後、約3年の工期で着工する予定となっている。 | |
無償資金協力 | セネガル | 小売市場改修事業 (6年度決算検査報告) |
事業の概要 | 既設の小売市場を全面改修するもの | |
贈与金額等 | 2億3600万円(平成4、5両年度) | |
前回調査の結果 (7年実施) |
無償資金協力の対象となった日常雑貨等販売用ブース型店舗は15店のうち4店が利用されているのみであり、生鮮食品を貯蔵するための冷蔵倉庫(3室構造)1棟は1度も利用されていなかった。また、セネガル側が自国予算で実施するとしていた工事については着工していなかった。 | |
我が国援助実施機関の対応 | 事業団では、セネガル側から故障が発生した冷蔵庫についてフォローアップの要請を受け、フォローアップ調査を行い、13年12月に交換部品を供与した。 | |
今回調査の結果 | 援助対象施設のブース型店舗はすべて利用されていた。また、修理された冷蔵倉庫は、調査時点では3室のうち1室が利用されているのみであったが、残り2室についても利用予定者があるとのことであった。なお、セネガル側が自国予算で建設する施設のうち、屋根付販売台はいまだ着工に室っていないが、ブース型店舗は前回調査時未着工であった156店のうち116店が完成していた。 | |
無償資金協力 | タイ | かんがい事業 (5年度決算検査報告) |
事業の概要 | 河川を淡水化するための防潮水門を建設するもので、流域のほ場に淡水化さた水を揚水ポンプでかんがいを行うもの | |
贈与金額等 | 39億6094万余円(昭和63年度〜平成2年度) | |
前回調査の結果 (6年実施) |
タイ側が流域のほ場に建設するとしていたかんがい施設が完成していなかったなどのため、標高2m未満の地域では、小型ポンプの193台により、3,870haのかんがいを行う計画に対して、小型ポンプが76台により1,174haのかんがいを行うにとどまっていた。さらに、標高2m以上の地域では、3箇所の水ポンプ場を建設するなどして、約1,240haのかんがいを行う計画に対して、ポンプ場の建設が遅延したために、この計画面積のかんがいは全く行われていなかった。 | |
今回調査の結果 | 標高2m未満の地域では、79台の小型ポンプが設置され、1,395haのかんがいが行われていた。また、標高2m以上の地域では、揚水ポンプ場が5箇所建設され、このため1,224haのかんがいが行われていた。 | |
無償資金協力 | タイ | 漁港施設建設事業 (5年度決算検査報告) |
事業の概要 | 新たに漁港施設を建設するもの | |
贈与金額等 | 25億1200万円(昭和62年度〜平成元年度) | |
前回調査の結果 (6年実施) |
タイ側が実施する橋梁等の漁港周辺関連施設の整備が遅延したなどのため、魚問屋20店分が入居可能な施設には10店の入居に、また、漁港の年間入港漁船数は計画の約6,000隻に対して約960隻、さらに年間水揚量は計画の約120,000tに対して約10,000tとなっていた。 | |
今回調査の結果 | 漁港と近隣都市とを結ぶ橋梁をタイ側が6年に建設し、供用を開始していた。また、調査時点においては、魚問屋が入居可能な施設はすべて利用されていた。 また、漁港の年間入港漁船数については、11年から14年までの間の平均で約1,982隻に、年間水揚量は約37,527tへと増加していた。 さらに、タイ側では、漁港の利用を促進するなどのため、11年8月に近隣の海域で養殖されているエビの取引市場を本漁港に設立すると閣議決定し、12年4月にタイ国内で2番目となる養殖エビの取引市場が開設され、12年から14年までの年間取引量は平均で約19,318tとなっていた。 |
|
円借款 | バングラデシュ | 肥料工場改修事業 (12年度決算検査報告) |
事業の概要 | 尿素肥料工場の老朽化した設備の改修などを行うもの | |
貸付金額等 | 102億8626万余円(平成元年〜6年) | |
前回調査の結果 (13年実施) |
既設の自家発電機の故障のために電力供給が不安定となっていて、しばしば操業停止を余儀なくされていた。そのため、改修後の工場の年間生産能力47万tに対して、7年度から12年度までの6年間の平均生産量は32.1万tとなっていた。 | |
我が国援助実施機関の対応等 | 13年9月には既設の自家発電機等を対象とした円借款事業「「改修事業(II)」の工事が完了し、銀行では、14年に案件実施支援調査を行って保守管理について提言を行った。それを受けて、工場では故障記録管理のためのコンピュータを導入するとともに、予防的メンテナンス小委員会を立ち上げるなどしている。 | |
今回調査の結果 | 「改修事業(II)」で自家発電機等が設置されたことから、電力供給は安定し、操業停止の事態も解消したため工場の稼働状況は好転していた。また、尿素生産量は14年度32.5万t、15年度途中で32.2万tとなっていた。 | |
円借款 | インド | 用水路水力発電事業 (8年度決算検査報告) |
事業の概要 | かんがい用の幹線水路に、発電所を3箇所建設するもの | |
貸付金額等 | 140億0296万余円(昭和63年〜平成11年) | |
前回調査の結果 (9年実施) |
インド側の予算手当が十分でなかったり、用地取得の問題解決に長期間を要したりなどしたため、発電機等の機器は現場に搬入されたものの設置されていなかった。 | |
我が国援助実施機関の対応等 | 銀行では、10年5月、9月及び11年8月に中間監理調査団を派遣して、インド側と今後の作業スケジュールの確定やフォロー策の提言を行うとともに、借款期間の延長を行うなどして、インド側実施機関に早期事業完了の申入れを行った。 | |
今回調査の結果 | 各発電所は11年までにすべて完成し、順次操業を開始したが、降雨量の不足等を原因とする用水量の不足のため、全体の発電量実績は計画発電量320GWhに対して、12年度118.9GWh、13年度169.1GWh、14年度164.2GWhと計画の37%〜53%程度となっていた。 なお、1箇所の発電所については、3台ある発電機のうちの1台のコントロール機器に火災が発生したため、14年1月より運転を中止していた。 |
|
円借款 | タイ | 送水管建設事業 (11年度決算検査報告) |
事業の概要 | 貯水池のあるマプタプット地区からバンチャン地区を経てサタヒップ地区に至る送水管及びポンプ等の関連施設を建設するもの | |
貸付金額等 | 10億5195万余円(平成2年〜6年) | |
前回調査の結果 (12年実施) |
タイ側が自国予算で行うとしていたバンチャン、サタヒップ両地区の新規の浄水場の建設やそれらに接続する配水管の布設が遅延していたなどのため、実際の送水量は、計画送水量1400万m3 に対して、10年度220万m3 、11年度277万m3 となっていた。 | |
我が国援助実施機関の対応等 | 銀行では、タイ側と毎年協議を実施し、浄水場の運営について現場訪問を実施し確認するなどしていた。 | |
今回調査の結果 | 建設が遅れていた浄水場及び配水管網は12年までに供用を開始し、実際の送水量は、12年度278.9万m3 、13年度352.3万m3 、14年度458.9万m3 と増加しつつあった。 | |
円借款 | タイ | 北部かんがい農業開発事業 (7年度決算検査報告) |
事業の概要 | かんがい用水の供給を主目的とするダムの建設及び水路網の整備を行うもの | |
貸付金額等 | 65億9768万余円(昭和61年〜平成6年) | |
前回調査の結果 (8年実施) |
タイ側が自国予算で建設するとしていた末端水路が完成していなかったなどのため、かんがい面積は、計画の28,000haに対して、7年で15,403ha(米・野菜の作付面積)となっていた。 | |
我が国援助実施機関の対応等 | 銀行では、10年3月に援助効果促進調査を行い、援助の対象となった施設の改善や有効利用を図るための提言を行った。 | |
今回調査の結果 | 7年に米・野菜の作付面積15,403haを含む20,227haとなっていたかんがい面積は、9年に24,806haに達していた。また、建設が遅れていた末端水路は12年9月に完工したが、地域の都市化の影響などにより、14年には米・野菜の作付面積17,537haを含む21,737haとなっていた。 |
援助形態 | 国名 | 事業名 (前回掲記した決算検査報告) |
無償資金協力 | バングラデシュ | 稲研究所稲遺伝資源研究施設建設事業 (9年度決算検査報告) |
事業の概要 | 稲遺伝資源研究施設を建設し、研究や種子貯蔵に必要な大型冷蔵庫等を整備するもの | |
贈与金額等 | 5億5000万円(昭和59年度) | |
前回調査の結果 (10年実施) |
研究員数は、計画の32名に対して、昭和60年3月の研究所開設時点の36名が9名と大幅に減少していて、また、中期貯蔵室の保存原種数は計画の約10,000品種に対して約5,000品種となっていて、設置した大型冷蔵庫も十分には活用されていなかった。 | |
我が国援助実施機関の対応等 | 平成11年以降、我が国とバングラデシュ側との定期協議等の場において、研究員の確保や本施設の利用状況を確認するとともに施設の有効活用につき申入れを行っていた。 | |
今回調査の結果 | 研究員数は38名に増加し、大型冷蔵庫の使用状況も改善されていて、中期貯蔵室の保存原種数については約5,200品種と微増であったものの、保存原種となり得る種子が約3,000品種あった。 また、バングラデシュ側は、当研究所の強化、拡充を図る取組を12年から5箇年計画で展開している。 |
|
円借款 | インド | 地下鉄建設事業 (5年度決算検査報告) |
事業の概要 | 延長16.4kmの地下鉄を建設するもので、当初、インド側が独自に事業を行うこととしていた全17工区のうち5工区の工事が技術的に困難なものであること、請負業者が十分な建設機械を有していなかったことなどから、インド側は、57年にこれら5工区の工事の進ちょくを図るため我が国に対して借款の要請を行ったもの | |
貸付金額等 | 46億7142万余円(昭和60年〜平成4年) | |
前回調査の結果 (6年実施) |
この種の工事に不慣れな現地業者が主たる請負業者となったことや、雨期の現場の冠水などのため度々工事の中断を余儀なくされたことのため、完成予定の昭和62年8月から7年以上経過した調査時点においても完成に至っていなかった。 | |
我が国援助実施機関の対応等 | 銀行では、平成8年から9年3月まで援助効果促進調査を行い、援助の対象となった施設の改善や有効利用を図るための提言を行った。 | |
今回調査の結果 | 本事業は7年に完成し、全線が開通していた。そして、1日平均旅客数は計画の60万人に対して、14年度実績では26万人となっていた。 |
円借款 | タイ | 鉄道建設事業 (11年度決算検査報告) |
事業の概要 | マプタプット港と国有鉄道の既設線の駅との間に鉄道を建設するもの | |
貸付金額等 | 28億2609万余円(平成3年〜8年) | |
前回調査の結果 (12年実施) |
計画で見込まれていた貨物を十分に確保できなかったため、本件鉄道が計画された時点で予測した12年度の計画量514.8万tに対して、11年度の実績貨物輸送量は55.6万tとなっていた。 | |
我が国援助実施機関の対応等 | 銀行では、13年以降、事後監理の一環として、現状の輸送量と今後の見通しを確認しており、状況の改善について申入れを行っていた。 | |
今回調査の結果 | 12年度の実績貨物輸送量は67.4万tになっていた。また、その後、取扱貨物のうちの石油の輸送量が増加しつつあること、新たに鉄鋼製品の輸送を開始したことなどのため、14年度の実績貨物輸送量は85.9万tとなっていた。 |
ウ 状況が改善していなかったもの | 8事業 |
(ア)相手国が現在も施設の建設等を進めているもの | 2事業 |
〔1〕 前回調査では、相手国の自国予算による周辺関連事業等が遅延していたもの | 2事業 |
援助形態 | 国名 | 事業名 (前回掲記した決算検査報告) |
無償資金協力 | バングラデシュ | 下水道網整備事業 (12年度決算検査報告) |
事業の概要 | 下水処理場の拡張、老朽化した中継ポンプ場の改修等を実施するもの | |
贈与金額等 | 51億9703万円(昭和63年度〜平成3年度) | |
前回調査の結果 (13年実施) |
バングラデシュ側が自国予算で行うこととしていた下水管きょの破損箇所の補修や下水管きょ等の清掃が十分行われなかったため、計画処理能力1日当たり120,000m3 に対して12年の1日当たりの下水処理量は40,977m3 となっていた。 | |
今回調査の結果 | バングラデシュ側では、自らの予算により16年に完成させる予定でダッカ南部及び中部を対象とする下水管きょの破損箇所の補修事業、下水道網の整備事業の進ちょくを図っているところであり、状況の改善に向けた取組を行っていた。しかし、今回データが得られた13年時点では上記の補修事業等は完成前であり、1日当たりの下水処理量は37,452m3 となっていた。 | |
円借款 | インド | 水力発電事業 (5年度決算検査報告) |
事業の概要 | 取水堰及び発電用水路を新設し、その水路にそれぞれ出力8MWの発電機2基からなる4つの発電所(合計出力64MW)を2つの工区に分けて建設するもの | |
貸付金額等 | 32億4440万余円(昭和55年〜平成元年) | |
前回調査の結果 (6年実施) |
第2工区において、河川両岸の2州の間で水利権の調整がつかず、インド側が自国予算で実施する取水堰及び発電用水路の着工が大幅に遅延していたため、第2工区の発電機2基は、倉庫に保管されたまま据え付けられていなかった。 | |
我が国援助実施機関の対応等 | 銀行では、7年4月に、インド側にフォローアップ調査団を派遣し、本件事業完成のための資金調達について8年次の円借款要請案件として、我が国に要請することをインド側に提言を行った。 また、9年9月に、援助効果促進調査を行い、建設された発電所の維持管理について調査、提言を行った。 さらに、13年2月に、再度、援助効果促進調査を行い、納入された発電機のオーバーホールを行うことなどについて提言を行った。 |
|
今回調査の結果 | インド側は、第2工区に係る資金が不足したため、9年11月に我が国政府に対し第2工区の実施に係る追加の円借款を要請したが、10年5月のインドの核実験を受けて、我が国は援助を停止することを決定し、本事業への貸付けも見合わせることとした。 発電機については、現地調査時には据付けには至っておらず、倉庫に保管されていたが、インド側では、世界銀行等の融資を受け、12年から上記発電機2基を利用するための第2工区の工事を開始しており、その完成予定は16年4月となっている。 そして、現地調査時の全体の発電量実績は、当初計画発電量336.15GWhに対して13年度228.1GWh、14年度246.6GWhとなっていた。 |
(イ)相手国政府の方針変更、周辺事情の変化等により、施設等の利用が低調であったり、事業の全部又は一部が中止を余儀なくされたりしたもの | 6事業 |
〔1〕 前回調査では、相手国の自国予算による周辺関連事業等が遅延していたもの | 1事業 |
円借款 | バングラデシュ | 苛性ソーダ工場修復事業 (12年度決算検査報告) |
事業の槻要 | 苛性ソーダの製造工程で環境対策を講じる一方、老朽化している苛性ソーダ工場の設備を環境負荷の低い製造設備に更新するもの | |
貸付金額等 | 20億7131万余円(平成元年〜9年) | |
前回調査の結果 (13年実施) |
工場及び周辺地域の環境問題は改善されていたが、安定した電力の供給がなされていなかったなどのため、工場が十分稼働していなかった。 | |
我が国援助実施機関の対応等 | 銀行では、14年に短期専門家による工場の現況に係る調査を実施し、その結果をバングラデシュ側に報告していた。 | |
今回調査の結果 | バングラデシュ側は、工場の閉鎖を決定し14年12月に稼働を停止していた。これは、同政府が、国有企業改革の一環として民営化を計画し14年に入札を実施したが、応札価格が想定価格よりも大幅に低かったため、売却を断念せざるを得なくなり、経営不振の工場の存続に経済的合理性がないと判断して閉鎖を決定したとのことであった。 |
無償資金協力 | チリ | 零細漁民訓練センター建設事業 (7年度決算検査報告) |
事業の概要 | 零細漁民訓練センター(以下「センター」という。)を建設するとともに、訓練機材を調達するもの | |
贈与金額等 | 6億8000万円(昭和57年度) | |
前回調査の結果 (8年実施) |
センターの施設のうち、漁労技術の訓練のために建設された船揚場が、漂砂の堆積により完成後1年で使用できなくなっていた。また、水産物の加工技術の訓練のため設置された製氷・貯氷庫、冷凍庫、冷蔵庫等が、センターの運営資金を捻出するため民間業者への氷の販売や同業者の製品の保管等に利用されていた。このため、漁船陸揚法及び船体の保守技術という漁労上重要な技術を訓練対象から除外せざるを得ず、また、加工技術を訓練するための設備が訓練目的以外に利用されていた。 | |
今回調査の結果 | センターの船揚場は依然として漂砂が堆積していて、全く機能していないため、当該施設を利用した漁労技術の訓練が行われていなかった。また、センターの施設の一部は研修に利用されていたが、製氷・貯氷庫、冷凍庫、冷蔵庫等の加工技術を訓練するための機材は13年に故障が発生していた。 一方、チリ側では、同センターで実施することとしていた研修について、地元大学が同センターを利用して実施することで合意していた。しかし、漁獲割当てをめぐり14年11月に発生した零細漁民の暴動により、センターは放火で全焼し、機材は焼失、略奪され、今回の現地調査実施時点においても、センターは使用不可能な状態となっていた。 |
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円借款 | バングラデシュ | 〔1〕 発電バージ建設事業 (6年度決算検査報告) 〔2〕 発電船改修事業 (12年度決算検査報告) |
事業の概要 | 〔1〕 発電船を建設しチッタゴンに設置するもの 〔2〕 クルナ、チッタゴンに設置された発電船を改修するもの |
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貸付金額等 | 〔1〕 60億5605万円(昭和60年〜63年) 〔2〕 15億6099万余円(平成7年〜12年) |
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(チッタゴンに設置された発電船について) | ||
前回調査の結果(7年実施) | 発電船が、故障による運転停止を繰り返し、2年余に及ぶ運転停止状態にあった。そして、円借款による発電船改修事業の対象となった。 | |
今回調査の結果 | 改修工事が完了後、計画に沿っておおむね順調に発電していたが、故障のため、1号機が14年9月に、2号機が13年12月に、運転を停止していた。バングラデシュ側は、逼迫していた電力需給の緩和など地域経済に一定の役割を果たしたとの判断の下、費用対効果の観点から、修復工事の実施を断念していた。 | |
我が国援助実施機関の対応等 | 銀行では、15年に事後監理の一環として、現地駐在員事務所の職員が現場を視察し、バングラデシュ側に対して修理の要望や修復工事の実施計画を照会した。 | |
(クルナに設置された発電船について) | ||
前回調査の結果 (13年実施) |
改修工事後、発電を開始したが、火災を起こしたり、故障や異常が発生したりしたなどのため、十分に稼働していなかった。 | |
我が国援助実施機関の対応等 | 銀行では、13年度以降の事後監理の一環として、バングラデシュ側に対して修復工事の実施計画を照会し、外部専門家の派遣による保守管理に係る提言を行っていた。 | |
今回調査の結果 | 1号機は火災以降、運転を停止したままとなっていた。また、2号機は異常振動が生じていることから、出力を抑えて稼働していた。バングラデシュ側は、13年8月までに修復工事に係る入札を3回行ったが不調に終わったとのことであり、発電船については電力需給の緩和に一定の役割を果たしたとの判断の下、費用対効果の観点から、修復工事の実施を断念していた。なお、2号機については、通常の保守点検のみで可能な限り使用することとしている。 |
無償資金協力 | バングラデシュ | 漁網製造機械整備事業 (6年度決算検査報告) |
事業の概要 | チッタゴン及びモングラ両地方都市に建設された漁網製造工場に有結節漁網の編網機等を設置するもの | |
贈与金額等 | 2億0970万余円(昭和59年度) | |
前回調査の結果 (7年実施) |
漁民の需要が無結節網に移行するなどして、本件の漁網製造機械で生産される有結節網に対する需要が少なくなったことなどのため、その漁網生産量の実績が5年度において、チッタゴン工場で計画の84tに対して34.7t、モングラ工場で計画の136tに対して59tとなっていて、漁網製造機械は総じて十分に利用されていなかった。 | |
我が国援助実施機関の対応等 | 事業団では、7年12月にフォローアップ調査団を派遣し、漁網製造機械の有効活用に対する方策等につき意見を聴取し販売拡大等の改善について申入れを行った。 | |
今回調査の結果 | バングラデシュ側では、自助努力として交換部品等を整備し、機材は適切に稼働させるなどしてきた。しかし、需要の変化等により生産量は低迷しており、チッタゴンエ場では、漁網生産量は、11年度29.2t、12年度38.3t、13年度29.0tであった。一方、モングラ工場に設置された漁網製造機械の多くは、より需要が見込まれるコミラに所在する工場に移設されて稼働していたが、当該機械に係る漁網生産量は確認できなかった。 | |
無償資金協力 | バングラデシュ | 水揚・貯蔵施設建設事業 (9年度決算検査報告) |
事業の概要 | 水揚施設等を建設するもの | |
贈与金額等 | 13億4250万円(平成4、5年度) | |
前回調査の結果 (10年実施) |
漁港近辺で条例に違反して営業している民間の水揚施設の影響や、乱獲による漁獲量の減少などのため、水揚量が計画の30,475tに対して7年度では4,195tとなっていた。 | |
今回調査の結果 | 政府所有の水揚場から一定範囲で民間水揚施設の営業を制限する漁場管理条例の取締りを強化して本件水揚施設の利用を促してはいるものの、従来からの乱獲の影響や度重なるサイクロンによる大洪水に起因する環境の変化などのため、水揚量は12年度978t、13年度833tとなっていた。 |